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小学生でも分かる意匠法|特許法・実用新案法・意匠法の違い一覧(早見表) ― 三つの法律を「一枚の表」で見比べる

小学生でもわかる意匠法 36:三法の違い早見表(総まとめ)

小学生でも分かる意匠法 / D. 審判・訴訟 #36(総まとめ)

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シリーズ35本で見てきた意匠法を、特許法・実用新案法と横に並べて一気に見比べます。「守るもの」「登録の条件」「審査のしくみ」「権利の長さと強さ」「登録後に争う手続」を、条文番号付きの早見表にまとめました。受験生向けには、三法をまたぐ横断論点(出願の変更、分割、新規性喪失の例外、優先権、間接侵害、損害額の推定、拒絶理由と無効理由のズレ)も表にしています。

条文:意匠法(法令ID 334AC0000000125)、特許法(334AC0000000121)、実用新案法(334AC0000000123)の各条本記事は各条文をe-Gov法令検索で確認した範囲で作成参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

同じ「コップ」でも、守るところがちがう

あなたが新しいコップを作ったとします。そのコップには、3種類の「がんばったところ」があるかもしれません。

  • 割れにくい新しい素材の作り方を考えた ― これは目に見えない「しくみ」の工夫です。難しくて高度なものは特許法が守ります。
  • 持ち手に指が入りやすいように、みぞをつけた ― これは「物の形や組み立て方」の小さな工夫です。実用新案法が守ります。
  • 星の形の持ち手で、見た目がかっこいい ― これは「見た目のデザイン」です。意匠法が守ります。

つまり、一つのコップの中に、特許・実用新案・意匠の3つが同時に入っていることもあります。どの法律を使うかは、「何を守りたいか」で決まります。

特許法 守るもの:しくみ(発明)

割れない素材の 作り方(高度なもの) 特許法第2条第1項

実用新案法 守るもの:形・構造の工夫(考案) 持ち手のみぞなど 「物品の形状、構造又は組合せ」 実用新案法第3条第1項柱書

意匠法 守るもの:見た目(意匠)

形・模様・色の 「視覚を通じて美感を起こさせるもの」 意匠法第2条第1項

凡例|コップは3つとも同じ形。色のついた部分=その法律が守るところ。 特許法=しくみ(発明) 実用新案法=形・構造の工夫 意匠法=見た目(美感)

図は左右にスクロールできます。

【図1】同じコップでも、三つの法律は「守るところ」がちがう。特許=しくみ、実用新案=形や構造の工夫、意匠=見た目。

「調べ方」「見せる時期」「守る長さ」もちがう

三つの法律は、守るものだけでなく、特許庁の「調べ方」もちがいます。

  • 特許は、「調べてください」とお願い(出願審査請求)をした出願だけを、特許庁が中身までしっかり調べます。しかも、出願から1年6月たつと、まだ調べている途中でも中身が公開されます。
  • 実用新案は、中身をほとんど調べずに登録します(無審査登録)。そのかわり、権利を使って相手に文句を言うときには、特許庁が作った「技術評価書」という通知表を見せなければなりません。
  • 意匠は、お願いをしなくても全部の出願を特許庁が調べます。そして、登録されるまでは中身が公開されません。

守る長さも、特許は出願から20年、実用新案は出願から10年、意匠は出願から25年で、意匠がいちばん長くなっています。

出願の日5年10年15年20年25年

特許 出願の日から20年(特許法第67条第1項) ① ② ①1年6月:出願公開 ②3年:出願審査請求の期限

実用新案 出願の日から10年(第15条) 中身の実体審査なしで登録(無審査登録)。出願公開の制度なし

意匠 出願の日から25年(意匠法第21条第1項) 全部の出願を審査・登録まで非公開。出願審査請求の制度なし

帯の長さ=存続期間(1目盛り=5年、三法共通) 丸=時点(①②)

図は左右にスクロールできます。

【図2】三法の「調べ方」「見せる時期」「守る長さ」のイメージ。3本の棒は同じレーン構造・同じ高さ・同じ目盛り(1目盛り=5年、起点はどれも「出願の日」)で並べてあり、長さの差がそのまま存続期間の差になる。目盛りは【図4】と共通。数値は2026年9月時点の条文による。

まねされたときの「なわばり」の広さもちがう

意匠権は、登録したデザインと「そっくり同じ」だけでなく「似ている」デザインまで止められます(意匠法第23条)。特許権と実用新案権の条文には「これに類似する」という言葉がなく、権利の範囲は書類(特許請求の範囲)に書かれた内容で決まります。

特許:しくみ ― 審査請求で審査 ― 20年 ― 公開あり
実用新案:形の工夫 ― 無審査 ― 10年 ― 評価書が必要
意匠:見た目 ― 全件審査 ― 25年 ― 似たものまで守る
レベル1のまとめ

  • 特許法=しくみ(発明)、実用新案法=物の形や構造の小さな工夫(考案)、意匠法=見た目(意匠)を守る。
  • 特許はお願いした出願だけ審査して途中で公開、実用新案は無審査で登録、意匠は全部審査して登録まで非公開。
  • 守る長さは出願の日から、特許20年・実用新案10年・意匠25年。
  • 意匠権だけは「似ているデザイン」まで止められる。

※特許の存続期間には延長の制度があること、実用新案でも基礎的な要件は審査されること、意匠の「類似」の決め方などは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

ここからは、三つの法律の条文を横に並べます。各表の条文番号は、本記事作成時にe-Gov法令検索(2026年9月参照)で確認したものです。原文を引用している箇所は「」でくくり、それ以外は要旨です。

1. 守る対象と定義条文

特許法第2条第1項(原文)
この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
実用新案法第2条第1項(原文)
この法律で「考案」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作をいう。
意匠法第2条第1項(原文)
この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。次条第二項、第三十七条第二項、第三十八条第七号及び第八号、第四十四条の三第二項第六号並びに第五十五条第二項第六号を除き、以下同じ。)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121・334AC0000000123・334AC0000000125)、2026年9月参照。
項目 特許法 実用新案法 意匠法
目的条文 第1条(発明の保護及び利用→発明の奨励→産業の発達) 第1条(物品の形状、構造又は組合せに係る考案の保護及び利用→考案の奨励→産業の発達) 第1条(意匠の保護及び利用→意匠の創作の奨励→産業の発達)
保護対象の名前 発明 考案 意匠
定義条文 第2条第1項 第2条第1項 第2条第1項
定義の中身 自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの 自然法則を利用した技術的思想の創作(「高度」の要件なし) 物品・建築物の形状等、又は画像であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの
対象の絞り込み 物の発明・方法の発明・物を生産する方法の発明(第2条第3項) 「物品の形状、構造又は組合せに係るもの」に限る(第3条第1項柱書)。方法は対象外 物品(部分を含む)、建築物(部分を含む)、画像(部分を含む)。令和元年改正(令和2年4月1日施行)で建築物・画像が追加
「実施」の定義 第2条第3項(物/方法/物を生産する方法ごとに列挙) 第2条第3項(物品の製造、使用、譲渡等) 第2条第2項(物品/建築物/画像ごとに列挙)

〔表1〕三法の「守る対象」と定義条文の対比。特許と実用新案は同じ「技術的思想の創作」で「高度」の有無が違い、意匠だけが「美感」を要件とする。

2. 登録(特許)要件

要件 特許法 実用新案法 意匠法
利用可能性 「産業上利用することができる発明」(第29条第1項柱書) 「産業上利用することができる考案であつて物品の形状、構造又は組合せに係るもの」(第3条第1項柱書) 「工業上利用することができる意匠」(第3条第1項柱書)
新規性 第29条第1項第1号〜第3号(公知・公然実施・刊行物記載等) 第3条第1項第1号〜第3号(同じ構造) 第3条第1項第1号・第2号(公知・刊行物記載等。「公然実施」の号はない)+第3号「前二号に掲げる意匠に類似する意匠」
進歩性/創作非容易性 進歩性:「容易に発明をすることができたとき」(第29条第2項) 「きわめて容易に考案をすることができたとき」(第3条第2項) 創作非容易性:公知の「形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたとき」(第3条第2項)
拡大先願(先願の一部との同一) 第29条の2(同一出願人・同一発明者の例外あり) 第3条の2(同一出願人の例外あり) 第3条の2(先の出願の意匠の一部と同一又は類似。同一出願人で先の出願の意匠公報の発行前などの例外あり)
先願 「同一の発明」(第39条第1項・第2項)。同日は協議 「同一の考案」(第7条第1項)。特許出願との間は第7条第3項 「同一又は類似の意匠」(第9条第1項・第2項)。同日は協議
不登録事由 公序良俗・公衆衛生(第32条) 公序良俗・公衆衛生(第4条) 第5条:公序良俗(第1号)、他人の業務に係る物品等との混同(第2号)、機能を確保するために不可欠な形状のみ等(第3号)。「公衆の衛生」の文言はない
一出願の単位 発明の単一性(第37条:「経済産業省令で定める技術的関係を有することにより発明の単一性の要件を満たす一群の発明」は一の願書で出願できる) 考案の単一性(第6条:「経済産業省令で定める技術的関係を有することにより考案の単一性の要件を満たす一群の考案」は一の願書で出願できる) 一意匠一出願(第7条)、組物(第8条)、内装(第8条の2)
新規性喪失の例外 第30条(1年以内) 第11条第1項で特許法第30条を準用 第4条(1年以内)

〔表2〕登録要件の対比。意匠法は「類似」が新規性・先願の両方に組み込まれている点と、進歩性ではなく「創作非容易性」である点が特徴。

「きわめて容易」と「容易」 実用新案法第3条第2項は「きわめて容易に考案をすることができたとき」、特許法第29条第2項は「容易に発明をすることができたとき」です。意匠法第3条第2項は「容易に意匠の創作をすることができたとき」で、その判断の基礎は「前項各号に掲げる発明」ではなく「公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた形状等又は画像」です(各条e-Gov法令検索、2026年9月参照)。

3. 審査・出願公開・登録の流れ

flowchart TB
  subgraph P["特許法"]
    P1["特許出願"] --> P2["出願公開
出願の日から1年6月(第64条第1項)"] P1 --> P3["出願審査の請求
出願の日から3年以内(第48条の3第1項)"] P3 --> P4["審査官が審査(第47条)
拒絶理由通知(第50条)"] P4 --> P5["特許査定 → 登録料(第1年〜第3年分)納付 → 設定登録"] P5 --> P6["特許掲載公報"] P6 --> P7["特許異議の申立て
公報発行の日から6月以内(第113条)"] end subgraph U["実用新案法"] U1["実用新案登録出願"] --> U2["基礎的要件の審査のみ(第6条の2)
実体審査なし"] U2 --> U3["設定登録(第14条第2項)
登録料は第1年〜第3年分を一時に(第32条第1項)"] U3 --> U4["実用新案公報"] U1 -. "何人も請求できる" .-> U5["実用新案技術評価(第12条第1項)"] end subgraph D["意匠法"] D1["意匠登録出願"] --> D2["全件を審査官が審査(第16条)
審査請求なし・出願公開なし"] D2 -- "拒絶理由がある場合" --> D3["拒絶理由通知(第19条で準用する特許法第50条)"] D3 -- "拒絶理由が解消した場合" --> D4["登録査定(第18条) → 第1年分の登録料を30日以内に納付(第43条第1項) → 設定登録(第20条)"] D4 --> D5["意匠公報(秘密意匠は一部を秘密期間経過後に掲載)"] end

図は左右にスクロールできます。

【図3】三法の「出願から登録まで」の流れ。三法を同じレーン構造(法律ごとのsubgraph)で上から順に並べ、箱の数の差がそのまま手続の多さの差になる。実線=必要な手続、点線=任意の手続(実用新案技術評価の請求)。特許だけが出願公開と審査請求を持ち、実用新案だけが実体審査を持たず、意匠だけが全件審査・登録まで非公開。数値・条文は2026年9月時点のもの。

項目 特許法 実用新案法 意匠法
実体審査の有無 あり なし(基礎的要件のみ、第6条の2) あり(全件、第16条)
出願審査請求 必要。「その日から三年以内に」(第48条の3第1項) ―(制度なし) 不要(制度なし)
出願公開 あり。「特許出願の日から一年六月を経過したとき」(第64条第1項) なし(設定登録後に実用新案公報、第14条第3項) なし(設定登録後に意匠公報、第20条)
出願公開に伴う補償金請求権 あり(第65条第1項。警告後・設定登録前の実施に対する補償金) ― ―
拒絶理由の限定列挙 第49条第1号〜第7号 ―(拒絶査定の制度なし。基礎的要件違反は補正命令等) 第17条第1号〜第4号(第6条の記載要件は含まれない)
拒絶理由通知 第50条。「最後に受けた拒絶理由通知」に係る補正時期の制限(第17条の2第1項第3号)あり ― 第19条で特許法第50条を準用。「最後の拒絶理由通知」に相当する制度なし
登録料(最初の納付分) 第1年から第3年までの各年分を一時に(第108条第1項) 第1年から第3年までの各年分を一時に(第32条第1項) 第1年分のみ。「査定又は審決の謄本の送達があつた日から三十日以内」(第43条第1項)
拒絶査定不服審判 「その査定の謄本の送達があつた日から三月以内」(第121条第1項) ― 「その査定の謄本の送達があつた日から三月以内」(第46条第1項)
登録後の技術評価 ― 実用新案技術評価。「何人も」請求できる(第12条第1項) ―(判定制度は第25条)

〔表3〕審査・公開・登録の手続の対比。登録料の一括納付分(1〜3年分/第1年分)の違いにも注意。

4. 存続期間と起算日

特許法第67条第1項(原文)
特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する。
実用新案法第15条(原文)
実用新案権の存続期間は、実用新案登録出願の日から十年をもつて終了する。
意匠法第21条第1項・第2項(原文)
意匠権(関連意匠の意匠権を除く。)の存続期間は、意匠登録出願の日から二十五年をもつて終了する。
関連意匠の意匠権の存続期間は、その基礎意匠の意匠登録出願の日から二十五年をもつて終了する。

出典:e-Gov法令検索(各法令ID)、2026年9月参照。

出願の日5年10年15年20年25年

特許権 20年(特許法第67条第1項) 延長登録

実用新案権 10年(実用新案法第15条)

意匠権 25年(意匠法第21条第1項)延長なし

実線の帯=条文に定める存続期間 破線の帯=延長登録(特許権のみ)

図は左右にスクロールできます。

【図4】存続期間の長さの比較。3本は同じレーン構造・同じ帯の高さ・同じ目盛り(1目盛り=5年、起点はどれも「出願の日」で、登録の日ではない)にそろえてあり、【図2】と同じ目盛りで測れる。特許権だけに延長登録の制度(特許法第67条第2項・第4項)があり、実用新案権・意匠権にはない。破線の帯の長さは図示上の目安で、延長できる期間の長さは本記事のスコープ外。数値は2026年9月時点の条文による。

項目 特許法 実用新案法 意匠法
長さ 20年 10年 25年(関連意匠も25年)
起算日 特許出願の日 実用新案登録出願の日 意匠登録出願の日。関連意匠は基礎意匠の意匠登録出願の日(第21条第2項)
根拠条文 第67条第1項 第15条 第21条第1項・第2項
延長 あり(第67条第2項:審査遅延等による延長、第4項:医薬品等の処分による延長。要旨) なし なし
改正前との違い ― ― 平成19年4月1日〜令和2年3月31日の出願:設定登録の日から20年。平成19年3月31日以前の出願は設定登録の日から15年(改正解説書 第8章の説明に基づく要旨)/現行:出願の日から25年

〔表4〕存続期間と起算日の対比。意匠の関連意匠は「本意匠」ではなく「基礎意匠」の出願日が起算点。

5. 権利の効力(「類似」まで及ぶか)と権利行使の要件

特許法第68条本文・実用新案法第16条本文・意匠法第23条本文(原文)
特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。
実用新案権者は、業として登録実用新案の実施をする権利を専有する。
意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する。

出典:e-Gov法令検索(各法令ID)、2026年9月参照。いずれも専用実施権を設定した範囲についてのただし書がある。

特許発明 特許法第68条 「特許請求の範囲」=同一

登録実用新案 実用新案法第16条 「実用新案登録請求の範囲」=同一

これに類似する意匠 登録意匠 意匠法第23条 登録意匠+類似する意匠まで

外側の破線の円=「類似」の範囲 =条文に「これに類似する」の文言がない

図は左右にスクロールできます。

【図5】効力の範囲の比較。3つとも内側の円(=登録された内容そのもの)の大きさ・中心の高さ・説明文の位置を完全にそろえ、外側の破線の円(=「類似」の範囲)が塗られているかどうかだけを変えてある。条文に「これに類似する」と書かれているのは意匠法第23条だけで、特許法第68条・実用新案法第16条にはその文言がない(✕)。円の大きさは概念図で、権利範囲の広さを量的に表したものではない。条文は2026年9月時点のもの。

項目 特許法 実用新案法 意匠法
効力の条文 第68条 第16条 第23条
専有の対象 「特許発明」 「登録実用新案」 「登録意匠及びこれに類似する意匠」
権利範囲の決め方 「願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて」(第70条第1項) 実用新案登録請求の範囲の記載に基づく(第26条で特許法第70条を準用) 願書の記載及び図面等に現された意匠に基づく(第24条第1項)。類否は「需要者の視覚を通じて起こさせる美感」(第24条第2項)
差止請求 第100条 第27条 第37条第1項
権利行使の前提となる警告 なし 実用新案技術評価書を提示して警告した後でなければ権利行使できない(第29条の2) 原則なし。ただし秘密意匠は、第20条第3項各号の事項を記載した書面で特許庁長官の証明を受けたものを提示して警告した後でなければ差止請求できない(第37条第3項)
過失の推定 あり(第103条) なし(かわりに第29条の3:無効審決確定時の権利者の賠償責任) あり(第40条本文)。ただし秘密意匠には適用しない(第40条ただし書)
侵害とみなす行為(間接侵害) 第101条第1号〜第6号 第28条第1号〜第3号 第38条第1号〜第9号
損害額の推定等 第102条(第1項〜第5項) 第29条(第1項〜第5項) 第39条(第1項〜第5項)
侵害訴訟での無効の抗弁(特許法第104条の3) 第104条の3 第30条で準用 第41条で準用

〔表5〕権利の効力と権利行使の要件の対比。実用新案の「評価書提示警告」と意匠の「秘密意匠の証明書面提示警告」は、条文の場所も要件も別物。

6. 登録後に争う手続(審判・異議・訂正)

項目 特許法 実用新案法 意匠法
無効審判の条文 第123条 第37条 第48条
無効理由の号数 第1項第1号〜第8号 第1項第1号〜第7号 第1項第1号〜第4号
請求人適格(原則) 「利害関係人」に限り(第123条第2項) 「何人も」(第37条第2項) 「何人も」(第48条第2項)
請求人適格(共同出願違反・冒認) 特許を受ける権利を有する者 実用新案登録を受ける権利を有する者(第37条第2項ただし書) 意匠登録を受ける権利を有する者(第48条第2項ただし書)
登録異議の申立て あり。「特許掲載公報の発行の日から六月以内に限り」「何人も」(第113条第1項柱書) なし なし
訂正審判・訂正 訂正審判(第126条)、無効審判中の訂正の請求(第134条の2) 訂正(第14条の2第1項:「一回に限り」。請求項の削除を目的とする訂正は第7項)。訂正審判の制度はない なし(第52条は特許法第126条・第134条の2を準用していない)
拒絶査定不服審判 第121条 ―(拒絶査定がない) 第46条
補正却下決定不服審判 ―。補正の却下の決定に対しては「不服を申し立てることができない。ただし、拒絶査定不服審判を請求した場合における審判においては、この限りでない。」(第53条第3項) ― あり(第47条)
審決等に対する訴え 第178条第1項(東京高等裁判所の専属管轄) 第47条第1項(東京高等裁判所の専属管轄。第2項で特許法第178条第2項〜第6項等を準用) 第59条

〔表6〕登録後の争いに関する手続の対比。「利害関係人に限り」は特許法だけ、異議申立ては特許法だけ、訂正がまったくないのは意匠法だけ。

レベル2のまとめ

  • 対象:発明(高度)/考案(高度不要・物品の形状等に限る)/意匠(視覚を通じて美感)。
  • 要件:意匠法は新規性・先願に「類似」が入り、「進歩性」ではなく「創作非容易性」。実用新案は「きわめて容易」。
  • 審査:特許=審査請求+出願公開、実用新案=無審査+技術評価、意匠=全件審査+非公開。
  • 存続期間:出願の日から20年/10年/25年。延長は特許のみ。
  • 効力:意匠権だけ「類似する意匠」まで。実用新案は評価書提示警告、秘密意匠は証明書面提示警告が権利行使の前提。
  • 審判:無効審判の請求人適格は特許だけ「利害関係人」。異議申立ては特許のみ。訂正は特許・実用新案にあり、意匠にはない。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

レベル3では、短答式・論文式で「三法をまたいで」問われやすい論点を、条文番号と期間つきで整理します。各条文はe-Gov法令検索(2026年9月参照)で確認したものです。「(要旨)」と付した箇所は、原文を引用せず要件を整理した要約です。

1. 出願の変更 ― 三法の相互関係と時期の制限

出願の変更は「特許→実用新案」「特許→意匠」「実用新案→特許」「実用新案→意匠」「意匠→特許」「意匠→実用新案」の6方向すべてに条文があります。ただし、条文の置き場所は変更先の法律で、時期の制限がそれぞれ違います。

特許出願 実用新案登録出願 意匠登録出願

特→実:実用新案法第10条第1項 最初の拒絶査定謄本送達から3月 又は出願の日から9年6月を経過した後は不可

実→特:特許法第46条第1項 出願の日から3年を 経過した後は不可

特→意:意匠法第13条第1項 最初の拒絶査定謄本送達から 3月を経過した後は不可

意→特:特許法第46条第2項 原則:最初の拒絶査定送達後3月 又は出願後3年を過ぎると不可

実→意:意匠法第13条第2項(条文上の時期制限なし)

意→実:実用新案法第10条第2項(拒絶査定謄本送達から3月/出願の日から9年6月)

凡例|矢印の色・線種=変更先の法律(=根拠条文の置き場所) →特許出願(破線) →実用新案登録出願 →意匠登録出願 意→特:3年経過後でも最初の拒絶査定送達後3月以内は変更可。期間延長の特則あり。 各変更は元出願の係属中に行う。特→意・特/意→実にも法律による期間延長の特則あり。

図は左右にスクロールできます。

【図6】出願の変更の相関図。条文は必ず「変更先の法律」にある(特許法第46条、実用新案法第10条、意匠法第13条)。矢印の色は変更先の法律を表し、特許出願へ向かう2本は破線にして上向きの経路を見分けられるようにしている。変更後、もとの出願は取り下げたものとみなされる。数値・条文は2026年9月時点のもの。

変更の方向 根拠条文 時期の制限(条文の要旨) 備考
特許出願 → 意匠登録出願 意匠法第13条第1項 「その特許出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月を経過した後は、この限りでない。」(原文ただし書) 出願の日からの年数制限は条文上ない。仮専用実施権者がいるときはその承諾が必要(第13条第5項、要旨)
実用新案登録出願 → 意匠登録出願 意匠法第13条第2項 「実用新案登録出願人は、その実用新案登録出願を意匠登録出願に変更することができる。」(原文。ただし書なし) もとの出願が特許庁に係属していることが前提
実用新案登録出願 → 特許出願 特許法第46条第1項 「その実用新案登録出願の日から三年を経過した後は、この限りでない。」 登録後は「実用新案登録に基づく特許出願」(特許法第46条の2第1項)という別制度
意匠登録出願 → 特許出願 特許法第46条第2項 最初の拒絶査定の謄本送達から3月を経過した後、又は出願の日から3年を経過した後(送達から3月以内の期間を除く)は不可 意匠は審査請求がないため「3年」の意味が特許・実用新案と異なる点に注意
特許出願 → 実用新案登録出願 実用新案法第10条第1項 最初の拒絶査定の謄本送達から3月を経過した後、又は出願の日から9年6月を経過した後は不可 「9年6月」は実用新案権の存続期間(出願の日から10年)との関係で置かれた上限
意匠登録出願 → 実用新案登録出願 実用新案法第10条第2項 最初の拒絶査定の謄本送達から3月を経過した後、又は出願の日から9年6月を経過した後は不可 同上
共通の効果 意匠法第13条第4項・第6項(第10条の2第2項準用)、特許法第46条第4項・第6項、実用新案法第10条第5項・第7項 新しい出願はもとの出願の時にしたものとみなす(例外あり)。もとの出願は取り下げたものとみなす 存続期間の起算日も「もとの出願の日」になる(→B #18)

〔表7〕出願の変更の6方向と時期制限。拒絶査定謄本送達後の「3月」が定められる方向と、実用新案登録出願からの変更の違い、「3年」「9年6月」「制限なし」の違いが短答式のひっかけになりやすい。

2. 分割 ― 「時期」の書き方が三法で違う

項目 特許法(第44条) 実用新案法(第11条第1項で特許法第44条を準用) 意匠法(第10条の2)
分割できる時期 第1項第1号:明細書等の「補正をすることができる時又は期間内」/第2号:「特許をすべき旨の査定の謄本の送達があつた日から三十日以内」/第3号:「拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内」 特許法第44条を準用(実用新案法第11条には読替規定がないことをe-Gov法令検索で確認、2026年9月参照)。実用新案は査定を行わないため、第1号の補正可能な時又は期間内が対象。第2条の2による補正可能期間などの制限を受ける 「意匠登録出願が審査、審判又は再審に係属している場合に限り」(第10条の2第1項)。特許法のような「30日」「3月」の数字はない
分割の対象 「二以上の発明を包含する特許出願の一部」 同じ構造(考案) 「二以上の意匠を包含する意匠登録出願の一部を一又は二以上の新たな意匠登録出願」
遡及効 第44条第2項(もとの出願の時にしたものとみなす。例外あり) 同上(準用) 第10条の2第2項(同じ構造。特許法第43条等の適用については例外あり)
書面の提出擬制 第44条第4項(要旨) 同上(準用) 第10条の2第3項(要旨)

〔表8〕分割の対比。意匠は「係属中ならいつでも」、特許は3つの時期を号で限定している。逐条解説は、昭和45年の一部改正で特許・実用新案の分割の時期に制限が加えられた際、意匠の分割には制限を加えないこととしたため、特許法を準用せず意匠法第10条の2を設けたこと、平成8年の一部改正で分割できる時期を「審査、審判又は再審に係属している場合」に改めたこと、訴訟係属中の分割は認めないこととしたことを説明しています(特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』(以下「青本〔第22版〕」)意匠法1287〜1288頁。実用新案登録出願の分割の時期の制限については同 実用新案法981頁)。

3. 新規性喪失の例外 ― 期間は三法とも同じ、対象の号が違う

項目 特許法(第30条) 実用新案法(第11条第1項で特許法第30条を準用) 意匠法(第4条)
意に反した公知(第1項) 「その該当するに至つた日から一年以内」 準用 「その該当するに至つた日から一年以内」
行為に起因した公知(第2項) 同じく1年以内。公報掲載によるものは除く 準用 同じく1年以内。公報掲載によるものは除く
例外の対象になる号 第29条第1項「各号のいずれか」(公知・公然実施・刊行物等の全部) 第3条第1項各号(準用) 第3条第1項第1号又は第2号(意匠法には「公然実施」の号がなく、第3号の「類似」は第1号・第2号を通じて処理される)
手続(第3項) 出願と同時に書面、証明書は「出願の日から三十日以内」(要旨) 準用 出願と同時に書面、証明書は出願の日から30日以内(要旨)。同一又は類似の意匠について二以上の公開行為があったときは、最先の日に行われた一の行為について証明書を提出すれば足りるとするただし書が令和5年改正(令和5年法律第51号)で追加され、令和6年1月1日に施行、施行日以後にする意匠登録出願に適用(改正法附則第1条第2号・第4条。特許庁「産業財産権法の解説(令和5年改正)」第5章、2026年9月参照)
証明書の救済(第4項) 責めに帰することができない理由:理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内で、期間経過後6月以内(要旨) 準用 同じ構造(要旨)

〔表9〕新規性喪失の例外の対比。「1年」「30日」「14日・2月・6月」の数字は三法共通で、違いは対象となる号の書き方。

gantt
  title 新規性喪失の例外・優先権証明書の期間(三法共通部分と意匠の読替え)
  dateFormat YYYY-MM-DD
  axisFormat %m/%d
  section 新規性喪失の例外
  公開の日 :milestone, k0, 2026-01-01, 0d
  出願できる期間(公開から1年以内) :k1, 2026-01-01, 2027-01-01
  section 例外の証明書
  出願(例:2026-06-01) :milestone, s0, 2026-06-01, 0d
  証明書提出(出願の日から30日以内) :s1, 2026-06-01, 2026-07-01
  section パリ条約優先権証明書(意匠)
  意匠登録出願 :milestone, p0, 2026-06-01, 0d
  「意匠登録出願の日から三月」(意匠法第15条第1項の読替え) :p1, 2026-06-01, 2026-09-01

図は左右にスクロールできます。

【図7】期間のイメージ。手続を左、期間を横棒にしたガント型で、論点ごとにセクションで仕切っている。◆=時点(起算日)、横棒=期間。日付は説明用の仮の値。優先権証明書の「三月」は意匠法の読替え後の期間で、特許法本則は「最先の日から一年四月」。〔表9〕の「14日・2月・6月」(証明書提出が間に合わなかったときの救済)は図では省略している。数値は2026年9月時点の条文による。(時間軸は縮尺なし)

4. 優先権 ― パリ条約優先権と国内優先権

項目 特許法 実用新案法 意匠法
パリ条約による優先権の主張の手続 第43条第1項:主張の書面を「経済産業省令で定める期間内」に提出 第11条第1項で特許法第43条〜第44条を準用。第11条には読替規定がない(e-Gov法令検索、2026年9月参照) 第15条第1項で特許法第43条〜第43条の3を準用。読替え:「経済産業省令で定める期間内」→「意匠登録出願と同時」
優先権証明書類等の提出期限 「次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内」(第43条第2項柱書) 準用(読替規定がないため、特許法第43条第2項の期間がそのまま準用される) 読替え:「意匠登録出願の日から三月」(第15条第1項)
パリ条約の例による優先権 第43条の2・第43条の3 準用 第15条第1項で準用
国内優先権 あり(第41条。先の特許出願又は実用新案登録出願に基づく) あり(第8条。先の実用新案登録出願又は特許出願に基づく) なし(第15条第1項は特許法第41条を準用していない)

〔表10〕優先権の対比。意匠法には国内優先権がなく、パリ条約優先権の証明書提出は「出願の日から三月」に読み替えられる。

5. 間接侵害(侵害とみなす行為)の構造差

三法とも柱書は「次に掲げる行為は、当該○○権又は専用実施権を侵害するものとみなす。」で同じ構造ですが、号の数が6・3・9と違います。号の数は「保護対象の種類」×「行為の型(のみ品型/不可欠品・知りながら型/所持型)」で決まります。

flowchart LR
  subgraph P["特許法第101条(6号)"]
    P1["物の発明
第1号 のみ品
第2号 不可欠品・知りながら
第3号 譲渡等・輸出目的の所持"] P2["方法の発明
第4号 のみ品
第5号 不可欠品・知りながら
第6号 物を生産する方法により生産した物の所持"] end subgraph U["実用新案法第28条(3号)"] U1["登録実用新案に係る物品
第1号 のみ品
第2号 不可欠品・知りながら
第3号 所持"] end subgraph D["意匠法第38条(9号)"] D1["物品の意匠
第1号〜第3号"] D2["建築物の意匠
第4号〜第6号"] D3["画像の意匠
第7号〜第9号"] end

図は左右にスクロールできます。

【図8】間接侵害の号立ての構造。三法を同じレーン構造(法律ごとのsubgraph)で並べ、箱の数(2・1・3)と号の数(6・3・9)の差だけを見せている。実用新案には方法の考案がないので3号のみ、意匠は物品・建築物・画像の3種類×3型で9号。各号の内容は要旨で、条文は2026年9月時点のもの。

行為の型 特許法第101条 実用新案法第28条 意匠法第38条
「のみ」用いる物の生産・譲渡等 第1号(物)、第4号(方法) 第1号 第1号(物品)、第4号(建築物)、第7号(画像)
課題の解決に不可欠な物を、知りながら生産・譲渡等 第2号(物)、第5号(方法) 第2号 第2号(物品)、第5号(建築物)、第8号(画像)
譲渡等・輸出のための所持 第3号(物)、第6号(物を生産する方法により生産した物) 第3号 第3号(物品)、第6号(建築物)、第9号(画像)
令和元年改正との関係 ― ― 改正解説書 第9章は、意匠法の間接侵害規定の対象を拡大したと説明(→C #28)

〔表11〕間接侵害の号の対応表(各号の内容は要旨)。

6. 損害額の推定・過失の推定・無効の抗弁の準用関係

項目 特許法 実用新案法 意匠法
損害額の推定等(譲渡数量×単位利益/侵害者利益/実施料相当額/協議対価の考慮/故意・重過失がない場合の参酌) 第102条第1項〜第5項 第29条第1項〜第5項(独自規定。構造は特許法と同じ) 第39条第1項〜第5項(独自規定。構造は特許法と同じ)
過失の推定 第103条 なし 第40条本文。秘密意匠には適用しない(ただし書)
無効審決確定時の権利者の賠償責任 ― 第29条の3(技術評価書の評価に基づき、又は相当の注意をもって権利行使したときは免責。要旨) ―
具体的態様の明示義務・無効の抗弁・書類提出等(特許法第104条の2〜第105条) 直接適用 第30条で準用 第41条で準用
損害計算のための鑑定・相当な損害額の認定・秘密保持命令等(特許法第105条の2の11〜第106条の範囲) 直接適用 第30条で準用(第105条の2の11〜第106条) 第41条で準用(準用範囲の細部は→C #29)

〔表12〕損害額推定・過失推定・準用関係の対比。「損害額の推定は三法とも独自条文、無効の抗弁は特許法の準用」という置き方の違いを押さえる。

7. 拒絶理由と無効理由のズレ

意匠法では、拒絶理由(第17条)と無効理由(第48条第1項)が完全には一致しません。「拒絶理由にはあるが無効理由にはない」規定と「無効理由にしかない」規定を区別しておく必要があります。

規定 拒絶理由(意匠法第17条) 無効理由(意匠法第48条第1項) 補足
第3条・第3条の2・第5条・第9条第1項・第2項 ○ ○ 両方
第7条(一意匠一出願) ○(第3号) × 拒絶のみ
第8条(組物)・第8条の2(内装) ○(第1号) × 拒絶のみ
第10条第1項・第4項(関連意匠の要件) ○(第1号) × 拒絶のみ
第10条第6項(本意匠に専用実施権があるとき) ○(第1号) ○(第1号) 両方
第15条第1項で準用する特許法第38条(共同出願) ○ ○ 無効理由は、第26条の2第1項の請求に基づく移転登録があったときを除く
冒認(意匠登録を受ける権利を有しない者の出願) ○(第4号) ○(第3号) 無効理由は移転登録があったときを除く
条約違反 ○(第2号) ○(第2号) 両方
後発的な特許法第25条違反・条約違反 × ○(第4号) 無効のみ(登録後に生じる事由)
第6条(願書・図面の記載要件) × × どちらにもない(特許法の記載要件が第49条・第123条の両方にあるのと対照的)

〔表13〕意匠法の拒絶理由と無効理由の対応。特許法では補正要件違反・記載要件違反・訂正要件違反も無効理由(第123条第1項第1号・第4号・第5号・第8号)になる点が意匠法と異なる。

特許法側のズレの例 特許法第37条(発明の単一性)は拒絶理由(第49条)にはあるが、無効理由(第123条第1項第1号〜第8号)には含まれません。第37条違反は特許法第49条第4号(「その特許出願が第三十六条第四項第一号若しくは第六項又は第三十七条に規定する要件を満たしていないとき。」)に当たります(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。

8. 意匠法固有の制度 ― 特許法・実用新案法に対応物がないもの

制度 意匠法の条文 要点(数値は条文) 特許法・実用新案法での対応
部分意匠 第2条第1項(「物品の部分を含む」「建築物の部分を含む」「画像の部分を含む」) 物品等の部分の形状等も意匠 対応物なし(請求項で範囲を書く制度)
画像の意匠 第2条第1項 「機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り」。令和元年改正で物品から独立 プログラムは「物」の発明(特許法第2条第3項第1号の「物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明」。「プログラム等」の定義は同条第4項。e-Gov法令検索、2026年9月参照)
建築物の意匠 第2条第1項 令和元年改正で追加 ―
組物の意匠 第8条 「同時に使用される二以上の物品、建築物又は画像であつて経済産業省令で定めるもの」で「組物全体として統一があるとき」は一意匠 ―
内装の意匠 第8条の2 店舗・事務所その他の施設の内部の設備及び装飾で「内装全体として統一的な美感を起こさせるとき」は一意匠 ―
関連意匠 第10条 本意匠の出願日以後、基礎意匠の出願日から10年経過前が出願可能な期間。関連意匠にのみ類似する意匠も可(第4項)。存続期間は基礎意匠の出願日から25年(第21条第2項) ―(特許には「類似」の概念がない)
秘密意匠 第14条 「意匠権の設定の登録の日から三年以内の期間を指定して」秘密請求。効果:差止めに証明書面提示警告が必要(第37条第3項)、過失推定なし(第40条ただし書) ―(特許は出願公開、実用新案は登録後公報で公開)
新規性の「類似」 第3条第1項第3号、第9条、第23条、第24条第2項 新規性・先願・効力のすべてに「類似」が入る ―
判定 第25条 登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲についての判定(要旨) 特許法・実用新案法にも判定制度あり(特許法第71条第1項「特許発明の技術的範囲については、特許庁に対し、判定を求めることができる。」、実用新案法第26条で特許法第70条から第71条の2までを準用。e-Gov法令検索、2026年9月参照)
先出願による通常実施権 第29条の2 意匠法固有の法定通常実施権(→C #26) ―

〔表14〕意匠法固有の制度一覧。「関連意匠=10年・基礎意匠の出願日から25年」「秘密意匠=登録日から3年」の2つの数字は要暗記。

9. 三法を比較するときの練習課題

試験種別 横断出題の型 気をつける点
短答式(意匠) 「特許法と同様に…」「実用新案法と異なり…」の形で、意匠法の条文にない制度(出願審査請求・出願公開・国内優先権・異議申立て・訂正審判・存続期間の延長)をあるかのように述べる枝 〔表3〕〔表6〕〔表10〕で「なし」の欄を確認する
短答式(意匠) 数字の入れ替え:存続期間(20/10/25年)、変更の時期(3月/3年/9年6月)、関連意匠の10年、秘密意匠の3年、登録料の30日、優先権証明書の3月/1年4月 〔表4〕〔表7〕〔表14〕。起算日が「出願の日」か「登録の日」かも一緒に確認
短答式(特許・実用新案) 実用新案の無審査・技術評価書・訂正の「一回に限り」・請求人適格「何人も」・過失推定なし 〔表3〕〔表5〕〔表6〕〔表12〕。意匠法と実用新案法は「何人も」で共通、特許法だけ「利害関係人」
論文式 デザインと技術の両面を持つ製品(例:新しい形の容器)について、どの法律で何を守れるか、出願の変更・分割・優先権をどう組み合わせるかを問う事例 【図6】の変更の方向と時期、〔表8〕の分割の時期、〔表10〕の優先権の有無を根拠条文つきで書く
論文式 侵害事例で、意匠権(類似まで)と特許権(同一)の効力範囲の違い、秘密意匠・実用新案の権利行使要件、損害額の推定の根拠条文を書かせる 〔表5〕〔表12〕。意匠法第39条・実用新案法第29条は「独自条文」、無効の抗弁は「準用」
口述 「意匠法に出願公開制度はあるか」「意匠権の存続期間は」「意匠登録無効審判は誰が請求できるか」「特許法との違いは」 原文どおりの数字と、「特許法と異なり」の一言を添える

〔表15〕三法を比較するときの練習課題の整理。実際の出題頻度の集計ではなく、本記事で提案する練習課題です。確認した実際の出題は下記の令和8年度問題を参照。

令和8年度意匠の公式正解は、問1から順に5・4・1・1・2・4・5・3・1・5です。問題本文を照合すると、定義(問1)、組物・内装(問2)、侵害(問3)、新規性喪失例外等(問4)、実施権(問5)、ハーグ(問6)、補正却下・新出願(問7)、協議・関連意匠(問8)、関連意匠(問9)、利用抵触等(問10)を扱っています。 令和8年度・問題PDF/公式解答PDF。肢の説明と公式の正解番号を区別して確認しています。
各比較表の法的内容は、意匠法と準用元の特許法・実用新案法の現行条文に照合しました。「要旨」は条文の逐語引用ではなく、条件を整理した要約という意味です。制度趣旨の説明と、条文が定める要件・効果を区別して読んでください。意匠法/特許法/実用新案法
レベル3のまとめ

  • 出願の変更の条文は「変更先の法律」にある。時期は変更の方向によって異なり、特許へは「出願から3年」、実用新案へは「出願から9年6月」、意匠への実用新案からの変更は条文上の時期制限なし。
  • 分割は特許が「補正可能時/特許査定から30日/拒絶査定から3月」の3つ、意匠は「審査・審判・再審に係属中」。
  • 新規性喪失の例外は三法とも1年・証明書30日。意匠は第3条第1項第1号・第2号のみが対象。
  • 優先権:国内優先権は特許・実用新案のみ。意匠のパリ条約優先権証明書は「出願の日から三月」。
  • 間接侵害の号数は6(特許)・3(実用新案)・9(意匠)。損害額推定は三法とも独自条文で5項構成、過失推定は特許・意匠のみ(秘密意匠を除く)。
  • 意匠法の拒絶理由と無効理由はズレる(第7条・第8条・第8条の2・第10条第1項・第4項は拒絶のみ、後発的事由は無効のみ)。

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