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小学生でも分かる意匠法|意匠法第13条・第13条の2 出願の変更 ― 特許出願・実用新案登録出願を「意匠登録出願」に乗り換える

小学生でもわかる意匠法 15:出願の変更(第13条・第13条の2)

小学生でも分かる意匠法 / B. 出願・審査・登録の手続 #15

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「技術」として特許出願や実用新案登録出願をしたけれど、本当に守りたかったのは「見た目のデザイン」だった。そんなとき、出願を丸ごと意匠登録出願に乗り換えられるのが「出願の変更」です。乗り換えると新しい意匠登録出願は元の出願の日にしたものとみなされ、元の出願は取り下げたものとみなされます。ただし、乗り換えができる時期には限りがあります。

条文:意匠法第13条(第1項〜第6項)・第13条の2(第1項・第2項)審査基準:第VIII部 第2章「出願の変更」・第3章「特許協力条約に基づく国際出願に係る出願の変更の特例」対比:特許法第46条・実用新案法第10条参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「技術の切符」と「デザインの切符」

特許庁には、大きく分けて3種類の「切符」があります。特許と実用新案は「しくみ・技術」を守る切符、意匠は「見た目のデザイン」を守る切符です。

たとえば、新しい形のコップを考えた人が「持ちやすいしくみ」として特許出願をしたとします。ところが審査で「そのしくみは前からある」と言われてしまいました。でもよく考えると、このコップの本当の魅力は「形のかっこよさ」でした。そんなとき、特許出願という「技術の切符」を、意匠登録出願という「デザインの切符」に交換できます。これが「出願の変更」です。

特許出願 「持ちやすいしくみ」の切符 元の出願(出願日:4月1日) 実用新案登録出願 「ちょっとした工夫」の切符 元の出願(出願日:4月1日)

変更(交換)

意匠登録出願 「かっこいい形」の切符 出願日は4月1日のまま(さかのぼる)

交換したら、元の切符は「取り下げた」ことになる(1枚しか持てない)

枠の箱=もとの出願 塗りつぶしの箱=変更後の意匠登録出願 破線=取下げ擬制

図は左右にスクロールできます。

【図1】出願の変更のイメージ。元の切符(特許出願・実用新案登録出願)を、デザインの切符(意匠登録出願)に交換する。出願日は元のまま、元の切符は消える。

交換のルールは3つ

① 交換できる「時期」が決まっている(特許出願は「ダメです」と言われてから3か月以内など)
② 交換すると、元の切符はなくなる(取り下げたものとみなす)
③ 新しい切符の日付は、元の切符の日付になる(出願日がさかのぼる)

なぜ日付がさかのぼるかというと、デザインの世界では「誰が先に出願したか」がとても大事だからです。もし交換したときの日付になってしまうと、その間に他の人が同じ形を出願していたら負けてしまいます。それではかわいそうなので、最初の日付を引き継げるようにしています。

ただし、交換なので「中身が同じ」でなければいけません。特許出願に書いてあった図面のコップと違う形のコップを意匠登録出願にしても、それは交換ではなく「新しい出願」です。その場合、日付はさかのぼりません。

レベル1のまとめ

  • 出願の変更=特許出願や実用新案登録出願を、意匠登録出願に交換すること。
  • 交換できる時期には限りがある。特許出願は「拒絶」と言われた後3か月以内でも交換できる。
  • 交換すると元の出願はなくなり、新しい意匠登録出願の日付は元の出願の日付になる。

※交換できる時期の細かい決まり、日付がさかのぼらない例外、外国からのPCT出願の場合など、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第13条の全体像

意匠法第13条は6つの項からできています。「誰が・何を・いつまでに変更できるか」(第1項〜第3項、第5項)、「変更したらどうなるか」(第4項、第6項)という2つのまとまりで読むと分かりやすくなります。

項 内容 キーワード
第1項 特許出願→意匠登録出願への変更。ただし最初の拒絶査定謄本送達日から3月経過後は不可 時期制限(特許)
第2項 実用新案登録出願→意匠登録出願への変更 条文上の時期制限なし
第3項 第1項ただし書の3月は、審判請求期間が延長されたら、その分だけ延長されたものとみなす 期間の連動
第4項 変更があったときは、もとの出願は取り下げたものとみなす 取下げ擬制
第5項 特許出願に仮専用実施権者がいるときは、その承諾がなければ変更できない 仮専用実施権者の承諾
第6項 分割の規定(第10条の2第2項・第3項)を準用=出願日の遡及、書面提出の擬制 遡及効の準用

〔表1〕意匠法第13条の各項の役割。

第1項・第2項 ― 誰が何を変更できるか

意匠法第13条第1項(原文)
特許出願人は、その特許出願を意匠登録出願に変更することができる。ただし、その特許出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月を経過した後は、この限りでない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
意匠法第13条第2項(原文)
実用新案登録出願人は、その実用新案登録出願を意匠登録出願に変更することができる。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

変更できるのは出願人(特許出願人・実用新案登録出願人)です。第1項には「ただし書」で時期制限がありますが、第2項の実用新案登録出願にはただし書がありません。これは、実用新案登録出願が実体審査を経ずに設定登録される(実用新案法第14条第2項)ため、「拒絶査定」という時点を基準にできないことと関係します。実用新案登録出願が特許庁に係属している間に変更する必要がある点は、レベル3で扱います。

特許出願から意匠登録出願への変更ができる期間(第13条第1項)

変更できる (審査中。拒絶理由通知の前後を問わない) まだ変更できる (3月以内)

✕ 変更できない

3月

特許出願 (例:4月1日) 最初の拒絶査定の謄本送達 (例:翌年10月1日) 3月経過 (例:翌々年1月1日)

実線の帯=変更できる期間 破線の帯+✕=変更できない期間 丸=時点/両矢印=期間の幅

図は左右にスクロールできます。

【図2】特許出願からの変更の時期。日付は架空の例。「3月」は暦の3か月を意味し、審判請求期間の延長(第3項)があればその分だけ延びる(図では延長分を描いていない)。参照時点:2026年9月。(時間軸は縮尺なし)

第3項 ― 3月は審判請求期間と連動する

意匠法第13条第3項(原文)
第一項ただし書に規定する期間は、特許法第四条の規定により同法第百二十一条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

特許法第121条第1項は拒絶査定不服審判の請求期間(拒絶査定謄本送達日から3月)を定める規定で、特許法第4条は特許庁長官がその期間を延長できる旨の規定です。「変更できる3月」と「審判を請求できる3月」は同じ長さで走っており、後者が延長されれば前者も同じだけ延びます。出願人は「審判で争うか、意匠に乗り換えるか」を同じ期間内で選べる仕組みです。

第4項 ― 元の出願は取り下げたものとみなす

意匠法第13条第4項(原文)
第一項又は第二項の規定による出願の変更があつたときは、もとの出願は、取り下げたものとみなす。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

変更は「乗り換え」であって「コピー」ではありません。変更があった時点で、元の特許出願・実用新案登録出願は取り下げたものとみなされ、その後は元の出願を続けることはできません。これは同じ内容について特許と意匠の両方の出願を並存させないための規定です。

第5項 ― 仮専用実施権者の承諾

意匠法第13条第5項(原文)
特許出願人は、その特許出願について仮専用実施権を有する者があるときは、その承諾を得た場合に限り、第一項の規定による出願の変更をすることができる。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

特許出願の段階で「特許になったら独占的に使わせる」という約束(仮専用実施権)をしている相手がいる場合、勝手に意匠登録出願に変えてしまうと、その相手が将来得るはずだった特許権上の地位が消えてしまいます。そのため、仮専用実施権者の承諾が条件になっています。実用新案登録出願には仮専用実施権の制度がないため、第5項は特許出願からの変更(第1項)にだけかかっています。

第6項 ― 分割の規定を準用(出願日の遡及)

意匠法第13条第6項(原文)
第十条の二第二項及び第三項の規定は、第一項又は第二項の規定による出願の変更の場合に準用する。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

第13条自体には「出願日がさかのぼる」とは書いてありません。それは、分割の規定である第10条の2第2項・第3項を「準用」することで実現しています。準用される第10条の2第2項の本文は次のとおりです。

意匠法第10条の2第2項 本文(原文)
前項の規定による意匠登録出願の分割があつたときは、新たな意匠登録出願は、もとの意匠登録出願の時にしたものとみなす。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。ただし書は〔表2〕で扱います。

変更の場合は「分割」を「変更」、「もとの意匠登録出願」を「もとの特許出願又は実用新案登録出願」と読み替えて適用します。第10条の2第2項にはただし書があり、一定の規定の適用については遡及しません(〔表2〕)。第10条の2第3項は、元の出願で提出済みの書面が新たな出願と同時に提出されたものとみなす規定です。

準用される規定 変更の場面での意味 効果の向き
第10条の2第2項 本文 変更による新たな意匠登録出願は、もとの特許出願・実用新案登録出願の時にしたものとみなす 遡及する
第10条の2第2項 ただし書 第4条第3項(新規性喪失の例外の証明書提出期限)、第15条第1項で準用する特許法第43条第1項・第2項(パリ条約による優先権主張の手続・書類提出期限)等の適用については遡及しない 遡及しない
第10条の2第3項 もとの出願で提出された書面・書類のうち、新たな出願で第4条第3項・特許法第43条第1項・第2項等により提出すべきものは、新たな出願と同時に提出されたものとみなす 再提出不要

〔表2〕第13条第6項で準用される第10条の2第2項・第3項の内容。「遡及しない」規定は、手続期限を新たな出願の実際の出願日から数えるためのもの(第3項で書面の再提出は不要となる)。

時間 元の出願日 拒絶査定謄本送達 変更(3月以内)

もとの出願(特許出願/実用新案登録出願) 取り下げたものとみなす (第13条第4項)

変更

新たな意匠登録出願

出願日の遡及(第13条第6項で準用する第10条の2第2項本文)

枠の箱=もとの出願 塗りつぶしの箱=新たな意匠登録出願 破線矢印=出願日の遡及

図は左右にスクロールできます。

【図3】出願の変更の効果の相関図。変更と同時に、元の出願の取下げ擬制と、新たな出願の出願日の遡及が起こる。※新規性喪失の例外の証明書提出期限・優先権主張の手続期限は遡及しない(第10条の2第2項ただし書。〔表2〕)。参照時点:2026年9月。(時間軸は縮尺なし)

第13条の2 ― PCT国際出願からの変更の特例

特許協力条約(PCT)に基づく国際出願のうち日本を指定国とするものは、特許法第184条の3第1項により国際出願日にされた特許出願とみなされます(実用新案の場合は実用新案法第48条の3第1項)。この「みなし特許出願」「みなし実用新案登録出願」も第13条により意匠登録出願に変更できますが、国内手続を済ませる前に変更されると特許庁に日本語の内容がない状態になるため、第13条の2が「いつから変更できるか」を制限しています。

意匠法第13条の2第1項(原文)
特許法第百八十四条の三第一項又は第百八十四条の二十第四項の規定により特許出願とみなされた国際出願の意匠登録出願への変更については、同法第百八十四条の六第二項の日本語特許出願にあつては同法第百八十四条の五第一項、同法第百八十四条の四第一項の外国語特許出願にあつては同項又は同条第四項及び同法第百八十四条の五第一項の規定による手続をし、かつ、同法第百九十五条第二項の規定により納付すべき手数料を納付した後(同法第百八十四条の二十第四項の規定により特許出願とみなされた国際出願については、同項に規定する決定の後)でなければすることができない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
意匠法第13条の2第2項(原文)
実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第四十八条の三第一項又は第四十八条の十六第四項の規定により実用新案登録出願とみなされた国際出願の意匠登録出願への変更については、同法第四十八条の五第四項の日本語実用新案登録出願にあつては同条第一項、同法第四十八条の四第一項の外国語実用新案登録出願にあつては同項又は同条第四項及び同法第四十八条の五第一項の規定による手続をし、かつ、同法第五十四条第二項の規定により納付すべき手数料を納付した後(同法第四十八条の十六第四項の規定により実用新案登録出願とみなされた国際出願については、同項に規定する決定の後)でなければすることができない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
元の国際出願 変更の前に必要な手続(第13条の2) 根拠条文(特許法/実用新案法)
日本語特許出願(日本語でされた国際特許出願) 国内書面(出願人・発明者の氏名等、国際出願日等を記載した書面)の提出+手数料の納付 特許法第184条の5第1項/第195条第2項
外国語特許出願(外国語でされた国際特許出願) 翻訳文の提出+国内書面の提出+手数料の納付 特許法第184条の4第1項(又は第4項)・第184条の5第1項/第195条第2項
特許法第184条の20第4項の決定により特許出願とみなされた国際出願 同項の決定の後 特許法第184条の20第4項
日本語実用新案登録出願 国内書面の提出+手数料の納付 実用新案法第48条の5第1項/第54条第2項
外国語実用新案登録出願 翻訳文の提出+国内書面の提出+手数料の納付 実用新案法第48条の4第1項(又は第4項)・第48条の5第1項/第54条第2項
実用新案法第48条の16第4項の決定により実用新案登録出願とみなされた国際出願 同項の決定の後 実用新案法第48条の16第4項

〔表3〕第13条の2の分解。「これらの手続をし、手数料を納付した後でなければ」変更できない。各手続の内容の要約は意匠審査基準 第VIII部 第3章の説明に基づく。

flowchart TB
  A["PCT国際出願(日本を指定)
特許出願・実用新案登録出願とみなされる"] --> B{"外国語でされた
国際出願か?"} B -- "はい(外国語出願)" --> D1["① 翻訳文の提出"] D1 --> D2["② 国内書面の提出"] D2 --> D3["③ 手数料の納付"] D3 --> E["意匠登録出願への変更ができる状態になる
(第13条の2)"] B -- "いいえ(日本語出願)" --> C1["① 国内書面の提出"] C1 --> C2["② 手数料の納付"] C2 --> E E --> G["意匠法第13条の要件(時期・出願人の同一性・
仮専用実施権者の承諾等)は別途必要"] style E fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図4】PCT国際出願から意匠登録出願への変更の流れ(第13条の2)。同じ形の枝分かれで2ルートを並べており、箱の数の差(外国語ルートは翻訳文の提出が1つ多い)がそのまま手間の差になる。第13条の2は「入口の解錠」であり、第13条の要件が免除されるわけではない。凡例:緑=変更ができる状態になる時点。なお、特許法第184条の20第4項・実用新案法第48条の16第4項の決定により出願とみなされた国際出願は、この枝ではなく「その決定の後」が基準となる(〔表3〕)。

レベル2のまとめ

  • 第1項:特許出願→意匠登録出願。最初の拒絶査定謄本送達日から3月経過後は不可。第3項でこの3月は審判請求期間の延長と連動。
  • 第2項:実用新案登録出願→意匠登録出願。条文上のただし書はない。
  • 第4項:変更があれば、もとの出願は取り下げたものとみなす。
  • 第5項:特許出願に仮専用実施権者がいれば、その承諾が必要。
  • 第6項:第10条の2第2項・第3項を準用。新たな意匠登録出願はもとの出願の時にしたものとみなす(ただし書の例外あり)、提出済み書面は同時提出とみなす。
  • 第13条の2:PCT国際出願は、国内書面・翻訳文の提出と手数料納付の後でなければ変更できない。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 制度趣旨 ― 審査基準の説明

意匠審査基準 第VIII部 第2章は、出願の変更の制度趣旨を、出願形式の選択を誤った場合や、技術的効果を期待して特許出願をしたが拒絶されたため、その形状の美的側面について意匠登録を受けようとする場合などにおける「出願人の救済を図ったもの」と説明しています。特許・実用新案・意匠は保護対象が異なるだけで、ひとつの製品が技術的側面と美的側面の両方を持つことは普通にあるため、出願形式の乗り換えを認めつつ、出願日の遡及効で先願上の地位を守るのがこの制度です。

逐条解説の説明:逐条解説は、第13条を特許法第46条・実用新案法第10条と同じく出願の変更について規定したものと位置づけたうえで、旧法(大正10年法)では特許出願からの変更を規定していなかったが昭和34年の現行法制定時に新たにその場合も認めたとし、ある新しい形状の発明をしてそれが技術的に効果があるものと考えて特許出願をしたところ拒絶されたので、その形状の美的な面について意匠登録を受けようとする場合などに本条が利用されることになる、と説明しています(特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』1290頁)。審査基準の説明と同じ場面を挙げているとみてよいでしょう。

2. 変更の時期 ― 特許出願と実用新案登録出願の違い

元の出願 条文上の時期制限 実際に変更できる期間 根拠
特許出願 最初の拒絶査定謄本送達日から3月経過後は不可(審判請求期間が延長されたときはその分延長) 出願係属中〜最初の拒絶査定謄本送達日から3月(延長分を含む)。拒絶査定不服審判に係属中でも上記期間内なら可。変更の対象は出願であり、設定登録後の特許権を意匠登録出願に変更することはできない 意匠法第13条第1項・第3項
実用新案登録出願 ただし書なし 実用新案登録出願が特許庁に係属している間。実用新案登録出願は放棄・取下げ・却下の場合を除き設定登録される(実用新案法第14条第2項)ため、設定登録後は変更できない 意匠法第13条第2項、意匠審査基準 第VIII部 第2章 2.(2)

〔表4〕変更の時期。特許法第46条・実用新案法第10条にある「出願日から○年」型の上限は、意匠法第13条にはない。

「最初の」査定に注意。第1項ただし書は「最初の」拒絶査定の謄本送達日を起算点にしています。拒絶査定不服審判で審査に差し戻され(特許法第160条第1項)、再び拒絶査定を受けた場合、2回目の拒絶査定は起算点になりません。また、意匠法第13条には特許法第46条第5項のような「責めに帰することができない理由」による期間徒過の救済規定はありません。意匠法第68条(特許法の準用)が準用するのは特許法第3条から第5条まで(第1項)、第6条から第9条まで・第11条から第16条まで・第17条第3項及び第4項・第18条から第24条まで・第194条(第2項)、第25条(第3項)、第26条(第4項)、第189条から第192条まで(第5項)、第195条の3(第6項)、第195条の4(第7項)であり、特許法第46条は準用対象に含まれていません(出典:e-Gov法令検索・法令ID 334AC0000000125、2026年9月参照)。したがって、第46条第5項に相当する救済が意匠法第13条の3月の期間に及ぶという条文上の根拠は見当たりません。

3. 審査基準の5要件 ― 出願日の遡及が認められる条件

意匠審査基準 第VIII部 第2章 2.は、変更による新たな意匠登録出願が「もとの特許出願又は実用新案登録出願の時にしたものとみなされるため」の要件として、次の5つをすべて満たすことを求めています。

# 要件(審査基準 第VIII部 第2章 2.) 審査基準の文言 補足
(1) 特許出願からの変更の時期 「もとの特許出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から3か月以内であること」 意匠法第13条第1項ただし書に対応
(2) 実用新案登録出願からの変更の時期 「もとの実用新案登録出願が特許庁に係属していること」 条文にはない要件だが、取り下げるべき「もとの出願」が存在しないと変更は観念できない
(3) 出願人の同一性 「変更による新たな意匠登録出願の出願人と、もとの特許出願人又はもとの実用新案登録出願人とは同一であること」 意匠登録を受ける権利の承継が適法にされている場合は、審査官は出願人が同一であると判断する(審査基準)
(4) 記載要件 「もとの特許出願又は実用新案登録出願の最初の明細書及び図面中に、変更による新たな意匠登録出願の意匠が明確に認識し得るように具体的に記載されていること」 基準は「最初の」明細書・図面。補正で追加された内容は基礎にならない
(5) 同一性要件 「変更による新たな意匠登録出願の意匠が、もとの特許出願又は実用新案登録出願の最初の明細書及び図面に表された意匠と同一であること」 類似では足りず「同一」

〔表5〕出願日の遡及が認められるための5要件(意匠審査基準 第VIII部 第2章 2.、令和5年12月改訂版、2026年9月参照)。

flowchart TB
  S["特許出願・実用新案登録出願から意匠登録出願への変更の手続"] --> T{"時期は適法か?
特許:最初の拒絶査定送達前、又は送達から3月以内
(第13条第3項の延長あり。登録後は対象外)
実用新案:特許庁に係属中"} T -- "はい" --> U{"出願人は同一か?
(適法な承継を含む)"} U -- "はい" --> V{"もとの出願の最初の明細書・図面に
意匠が明確に認識し得るよう具体的に記載?"} V -- "はい" --> W{"新たな出願の意匠は
もとの明細書・図面の意匠と同一か?"} W -- "はい" --> Y["もとの出願の時にしたものとみなす
(出願日の遡及)"] T -- "いいえ" --> X1["変更は不適法"] U -- "いいえ" --> X2["遡及しない"] V -- "いいえ" --> X2 W -- "いいえ" --> X2 X2 --> Z["変更のあった時にしたものとして取り扱う
(審査基準 第VIII部 第2章 5.)"] style Y fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style X1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style X2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style Z fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図5】変更の要件の分岐図(審査基準 第VIII部 第2章 2.〜5.を本記事作成者がフロー化したもの。要件の判断順序は審査基準が定めるものではない)。「はい」で下(主経路)、「いいえ」で右に進む。凡例:緑=出願日が遡及する/赤=変更が不適法、又は遡及しない結果になる。要件不備自体は拒絶理由ではない(〔表6〕)。

4. 要件を満たさない場合の取扱い ― 「拒絶」ではなく「遡及しない」

意匠審査基準 第VIII部 第2章 5.は、変更の要件を満たさない新たな意匠登録出願について、「審査官は、新たな意匠登録出願を、もとの特許出願又は実用新案登録出願の時にしたものとはみなさず、変更のあった時にしたものとして取り扱う。」と定めています。

ここが分割(第10条の2)と共通する重要ポイントです。意匠法第17条の拒絶理由は限定列挙であり、「変更の要件を満たさないこと」自体は拒絶理由ではありません。要件不備の効果は出願日が遡及しないことであり、その結果として、実際の変更日を基準に新規性(第3条第1項)・先願(第9条)等が判断されます。特許出願は出願日から1年6月経過後に出願公開(特許法第64条)されるため、元の特許出願が公開済みであれば、遡及しない新たな意匠登録出願は自らの元出願の公開によって新規性を失うことになります。

場面 出願日の遡及 その後の審査で起こり得ること 17条の拒絶理由か
5要件をすべて満たす 遡及する もとの出願日を基準に新規性・先願等を判断 ―
もとの明細書・図面に意匠が具体的に記載されていない 遡及しない 変更日を基準に判断。元出願の公開・公報等が引用され得る 要件不備自体は拒絶理由でない
新たな出願の意匠がもとの意匠と同一でない(例:記載のない内容を付加) 遡及しない 同上 同上
時期を徒過している(特許出願:3月経過後) ― 変更自体ができない(第13条第1項ただし書) ―

〔表6〕要件不備の効果の整理。意匠審査基準 第VIII部 第2章 3.は、適法な変更と認められない例として、元の出願に記載のない内容を付加した場合等を挙げている。

5. 部分意匠への変更

意匠審査基準 第VIII部 第2章 4.は、特許出願・実用新案登録出願から「物品等の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願」への変更を認めています。もとの出願の最初の明細書・図面中に、変更による新たな部分意匠が明確に認識し得るような具体的な記載があり、変更の前後の内容が同一と認められる場合には、審査官は新たな意匠登録出願をもとの出願の時にしたものとみなします。特許の明細書・図面は通常、物品全体の構造を示すため、そのうち特定の部分について意匠登録を求めることが実務上は多いと考えられます。

6. 新規性喪失の例外・優先権の手続との関係

第13条第6項で準用する第10条の2第2項ただし書により、第4条第3項(新規性喪失の例外の証明書提出)と、第15条第1項で準用する特許法第43条第1項・第2項(パリ条約による優先権主張とその書類提出)の適用については、出願日は遡及しません。つまり、これらの手続期限は新たな意匠登録出願の実際の出願日(変更日)から数えます。一方で、同条第3項の準用により、もとの出願で提出済みの書面は新たな出願と同時に提出されたものとみなされ、審査基準 第VIII部 第2章 6.もこの取扱いを説明しています。

変更前の特許出願で新規性喪失の例外を受けるための申出書面・証明書を適法に提出している場合、その書面は、変更後の意匠登録出願と同時に提出されたものとみなされます。改めて同じ書面を提出する必要はありません(第13条第6項で準用する第10条の2第3項、審査基準第VIII部第2章6)。もとの出願で提出していない書面まで提出済みになるわけではなく、例外の適用に必要な実体要件も別に満たす必要があります。審査基準・出願の変更、3頁。

7. 特許法第46条・実用新案法第10条との対比

出願の変更は三法それぞれに規定があります。方向ごとに時期制限・救済規定・準用先が異なるため、対比表で整理します。

項目 意匠法第13条
(特許・実用新案→意匠)
特許法第46条
(実用新案・意匠→特許)
実用新案法第10条
(特許・意匠→実用新案)
変更できる者 特許出願人/実用新案登録出願人 実用新案登録出願人/意匠登録出願人 特許出願人/意匠登録出願人
時期制限:特許出願から 最初の拒絶査定謄本送達日から3月経過後は不可 ― 最初の拒絶査定謄本送達日から3月経過後、又は特許出願の日から9年6月経過後は不可
時期制限:実用新案登録出願から 条文上なし(審査基準:特許庁に係属中) 実用新案登録出願の日から3年経過後は不可 ―
時期制限:意匠登録出願から ― 最初の拒絶査定謄本送達日から3月経過後、又は意匠登録出願の日から3年経過後(謄本送達日から3月以内の期間を除く)は不可 最初の拒絶査定謄本送達日から3月経過後、又は意匠登録出願の日から9年6月経過後は不可
3月の期間の延長との連動 あり(第3項:特許法第4条による第121条第1項の期間延長) あり(第3項:意匠法第68条第1項で準用する特許法第4条による意匠法第46条第1項の期間延長) あり(第6項・第7項)
責めに帰することができない理由による救済 規定なし あり(第5項:理由消滅日から14日(在外者は2月)以内かつ期間経過後6月以内) 規定なし(e-Gov法令検索で取得した実用新案法第10条の全10項に、責めに帰することができない理由による救済の規定は見当たりません。法令ID 334AC0000000123、2026年9月参照)
もとの出願の取下げ擬制 あり(第4項) あり(第4項) あり(第5項)
出願日の遡及の根拠 第6項で意匠法第10条の2第2項・第3項を準用 第6項で特許法第44条第2項〜第4項を準用 第3項で直接規定(ただし書で第3条の2・特許法第29条の2等の適用を除外)
仮専用実施権者の承諾 あり(第5項:特許出願からの変更) 規定なし(元の出願が実用新案・意匠のため) あり(第9項:特許出願からの変更)
実用新案登録に基づく特許出願(特許法第46条の2)との関係 規定なし ― 第1項・第2項で、実用新案登録に基づく特許出願等からの変更を除外

〔表7〕三法の出願の変更の対比(意匠法第13条、特許法第46条、実用新案法第10条。いずれもe-Gov法令検索、2026年9月参照)。

特許出願 実用新案登録出願 意匠登録出願

意匠法第13条第1項 拒絶査定謄本送達から3月まで

意匠法第13条第2項 係属中(設定登録前)

特許法第46条第2項

特許法第46条第1項

実用新案法第10条第1項

実用新案法第10条第2項

実線の矢印=本記事の対象(意匠登録出願への変更) 点線の矢印=他法への変更(対比表のみ)

図は左右にスクロールできます。

【図6】三法間の出願の変更の方向と根拠条文。6方向すべてに規定があるが、時期制限はそれぞれ異なる(〔表7〕)。矢印の向き=変更の方向(もとの出願→新たな出願)。参照時点:2026年9月。

8. 令和元年改正との関係

令和元年法律第3号(令和2年4月1日施行。一部の規定は令和3年4月1日施行。出典:特許庁「令和元年意匠法改正特設サイト」、2026年9月参照)による意匠法改正は、意匠の定義(画像・建築物・内装)や関連意匠、存続期間などを変更しましたが、第13条・第13条の2の骨格(変更の主体・時期制限・取下げ擬制・遡及効の準用構造)はこの改正で変わっていません。青本〔第22版〕(令和4年10月刊)が第13条・第13条の2の各項に付している改正履歴の注記にも、令和元年法律第3号による改正は掲げられていません(青本〔第22版〕1289〜1292頁)。意匠の定義や第17条第1号などは、令和元年法律第3号附則第2条第1項により、2020年4月1日以後の出願に新規定を適用し、それより前の出願には従前の例を適用します(改正法附則)。ただし、意匠の対象が拡大したことで「もとの明細書・図面に記載された画像や建築物の意匠」への変更が観念できるようになった点は、改正後の出願に固有の論点です。

改正 第13条への影響(逐条解説の説明)
昭和34年(現行法制定) 旧法(大正10年法)では特許出願からの変更を規定していなかったが、現行法制定時に新たにその場合も認めた
昭和45年改正 特許出願・実用新案登録出願から意匠登録出願に変更した際、その意匠登録出願は原出願をしたときにされたものとみなす規定(一部改正前第3項)及び原出願がみなし取下げとなる規定(一部改正前第4項)を削り、分割の規定を準用する規定を新設した(現行の第6項)
平成5年改正 実用新案法が実体的要件の審査を行わずに登録する制度に改正されたことに伴い、実用新案登録出願の拒絶査定が行われることを前提とした箇所を削除し(第1項・第2項の該当部分及び第4項)、実用新案登録出願の場合は、出願として特許庁に係属している間は特許出願の場合のような制限(第1項ただし書)なく意匠登録出願への変更ができることとした(第2項)
平成10年改正 それまで準用していた第11条第2項が削除されたことに伴い、変更があった場合にもとの特許出願・実用新案登録出願は取り下げられたものとみなす旨を新たに第4項に規定した
平成20年改正 拒絶査定不服審判の請求期間を30日から3月に拡大したことに伴い、出願の変更をすることができる期間も同様に3月とする改正を行った(第1項)。あわせて、特許出願について仮専用実施権又は登録した仮通常実施権を有する者があるときは、特許出願の放棄・取下げと同様に、意匠登録出願への変更についてもその承諾を要件とする第5項を設けた
平成23年改正 仮通常実施権の登録制度を廃止したことに伴い、仮通常実施権者の承諾を不要とし、第5条の2第3項において承諾に代わる措置を設けた

〔表8〕第13条の沿革。出典:青本〔第22版〕1290〜1291頁。各欄は逐条解説の説明の要約であり、原文の逐語引用ではありません。

第13条の2の趣旨:逐条解説は、第13条の2について、特許協力条約に基づく国際特許出願による特許出願(第1項)又は国際実用新案登録出願(第2項)から意匠登録出願への出願変更が認められるには、当該出願が我が国において手続的に確定している必要がある旨を規定したものであると説明しています(青本〔第22版〕1292頁)。手続的に確定するとは、特許出願であれば特許法第184条の5第1項の書面を提出し(外国語で出願した場合はこれに加えて同法第184条の4の翻訳文を提出)、かつ同法第195条第2項により納付すべき手数料を納付することを指します(同1292頁)。

9. 試験での問われ方

試験種別 学習用の問いの例 気をつける点
短答式 「特許出願について拒絶査定の謄本送達後、審判請求と出願の変更のどちらができるか」「実用新案登録出願からの変更に時期制限があるか」「変更後に元の出願を維持できるか」の正誤 「最初の」査定、3月(延長との連動)、取下げ擬制、遡及しない例外(第10条の2第2項ただし書)を条文どおりに
短答式(三法横断) 特許法第46条・実用新案法第10条との時期制限の違い(3年・9年6月・3月) 〔表7〕で方向ごとに整理。意匠法第13条には「出願日から○年」型の上限がない
論文式 特許出願が拒絶された出願人が意匠登録を受けるための手段を問う事例。出願日の遡及と新規性の関係(元出願の公開)まで論じさせる 要件(審査基準5要件)→効果(遡及・取下げ擬制)→要件不備時の効果(遡及しない、拒絶理由ではない)の順で
口述 「出願の変更の時期的要件を述べよ」「変更後、もとの出願はどうなるか」 第1項ただし書と第4項を原文に近い形で

〔表9〕学習用の問いと確認点。出題実績や頻度の集計ではありません。

過去問との対応:令和8年度短答式〔意匠〕全10問の本文では、第13条の出願変更を直接問う肢は確認されませんでした。本記事の比較表は、出題頻度ではなく、条文の条件を整理するためのものです。出典:公式問題・公式解答。正解番号は問題全体の答えです。
レベル3のまとめ

  • 審査基準 第VIII部 第2章の5要件(時期・係属・出願人同一・具体的記載・同一性)をすべて満たすと、もとの出願の時にしたものとみなされる。
  • 要件不備は拒絶理由ではなく「変更のあった時にしたもの」として扱われる(遡及しない)。元出願の公開により新規性を失い得る。
  • 特許出願からの変更は「最初の」拒絶査定謄本送達日から3月(審判請求期間の延長と連動)。実用新案登録出願からは係属中。「出願日から○年」型の上限はない。
  • PCT国際出願からの変更は、国内書面・翻訳文の提出と手数料納付の後(第13条の2)。
  • 意匠法第13条には特許法第46条第5項のような期間徒過の救済規定はない。

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