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小学生でも分かる意匠法|意匠法第46条 拒絶査定不服審判 ― 「登録できません」の査定に納得できないときの、3月の期限と審判の流れ

小学生でもわかる意匠法 30:拒絶査定不服審判(第46条)

小学生でも分かる意匠法 / D. 審判・訴訟 #30

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意匠登録出願を審査した審査官が「この意匠は登録できません」と決めることを拒絶査定といいます。出願人がこれに納得できないときは、査定の謄本が送られてきた日から3月以内に、特許庁の審判官に「もう一度見直してください」と求めることができます。これが拒絶査定不服審判です。意匠法第46条は、この審判を「誰が」「いつまでに」請求できるか、そして期限に間に合わなかったときの救済(追完)を定めています。特許法第121条とほぼ同じ文言ですが、意匠法では「前置審査」の規定が準用されていない点が、受験生にとっての最大の対比ポイントです。

条文:意匠法第46条(第1項・第2項)、関連:第50条・第52条・第59条・第68条、特許法第121条・第158条〜第164条審査基準:第VI部 第2章「補正の却下」、第VIII部 第4章「補正後の意匠についての新出願」(審判段階の読替えの前提として参照)参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「登録できません」は、いちばん最後の答えではない

たとえば、あなたが「持ち手が星の形をしたマグカップ」のデザインを考えて、特許庁に意匠登録出願をしたとします。特許庁の審査官(しんさかん)は、そのデザインが新しいか、簡単に思いつくものではないかなどを調べます。そして「似た形のマグカップが、もう雑誌にのっていました。だから登録できません」という手紙を送ってきました。これが拒絶査定(きょぜつさてい)です。「拒絶」は「ことわる」、「査定」は「特許庁の最終的な決め」という意味です。

でも、あなたは「雑誌のカップとは持ち手の形がぜんぜんちがう!」と思っています。そんなとき、「審査官とは別の人に、もう一度見直してほしい」と頼むことができます。これが拒絶査定不服審判(きょぜつさてい ふふく しんぱん)です。「不服」は「納得できない」、「審判」は「特許庁の中で行う裁判のような手続」という意味です。

出願人 星の持ち手のカップ

審査官(1人) 審査して「査定」を出す

審判官(3人か5人) もう一度見直す

出願

拒絶査定 「登録できません」 謄本が届く

3月以内に「拒絶査定不服審判」を請求 「納得できないので、もう一度見直してください」 審判官に送られる 凡例: 手続にかかわる人・機関 出願人がする手続(審判請求) 拒絶査定(登録できないという結論)

図は左右にスクロールできます。

【図1】拒絶査定から拒絶査定不服審判までの流れ。審査官とは別の「審判官」のチームが見直す。審判官の人数(3人か5人)は、意匠法第52条で準用する特許法第136条第1項による(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。

期限は「手紙が届いた日から3か月」

「もう一度見て」と頼めるのは、いつまでも、ではありません。拒絶査定の手紙(正確には「査定の謄本」=査定の正式な写し)が届いた日から3月(3か月)以内です。この期限をすぎると、原則として頼めなくなります。

ただし、たとえば大きな災害で郵便がとまってしまい、どうしても3か月以内に頼めなかった、というような「自分のせいではない理由」があるときは、その理由がなくなった日から14日(外国に住んでいる人は2月)以内であれば、あとから頼むことができます。これを追完(ついかん)といいます。ただし、追完にも「3か月の期限がすぎてから6月まで」という上限があります。

timeline
    title 拒絶査定を受けてからの時間の流れ(イメージ)
    査定の謄本が届いた日 : ここからカウント開始
    3月以内 : 拒絶査定不服審判を請求できる期間
    3月をすぎたら : 原則もう請求できない
    自分のせいでない理由があった場合 : 理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内 : ただし3月の期限から6月以内まで

図は左右にスクロールできます。

【図2】期限と追完のイメージ。正確な要件はレベル2・レベル3で確認。(時間軸は縮尺なし)

審判で見直してもらえること

審査官の判断が正しかったか、審判官が見直す
審判の途中でも、図面などを直す(補正する)ことができる
見直しの結果、登録OKになることも、やっぱりダメになることもある
審判でもダメなら、次は裁判所(東京高等裁判所)に訴えられる
レベル1のまとめ

  • 拒絶査定=審査官の「登録できません」という決め。
  • 拒絶査定不服審判=納得できないとき、審判官のチームに「もう一度見直して」と頼む手続。
  • 期限は、査定の謄本が届いた日から3月以内。自分のせいでない理由で遅れたときは追完できる(14日/在外者2月、上限6月)。

※誰が請求できるか、期限の数え方、審判の中で何が起きるか、特許法との違いは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第1項 ― 誰が・いつまでに請求できるか

意匠法第46条第1項(原文)
拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、その査定に不服があるときは、その査定の謄本の送達があつた日から三月以内に拒絶査定不服審判を請求することができる。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
要素 条文の文言 意味
請求人 「拒絶をすべき旨の査定を受けた者」 拒絶査定を受けた出願人。第三者は請求できない
要件 「その査定に不服があるとき」 査定の結論に納得できないこと
起算点 「その査定の謄本の送達があつた日」 査定の日ではなく、謄本が送達された日から数える
期間 「三月以内」 3月(暦による計算。→レベル3)
効果 「拒絶査定不服審判を請求することができる」 請求は任意(請求しなければ拒絶査定が確定する)

〔表1〕意匠法第46条第1項の要素分解。

第2項 ― 期限に間に合わなかったときの追完

意匠法第46条第2項(原文)
拒絶査定不服審判を請求する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内にその請求をすることができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその請求をすることができる。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
要素 条文の文言 意味
救済の条件 「その責めに帰することができない理由により……請求をすることができないとき」 請求人に責任のない理由で3月以内に請求できなかった場合に限る
追完期間(国内) 「その理由がなくなつた日から十四日……以内」 理由が消滅した日から14日
追完期間(在外者) 「(在外者にあつては、二月)」 在外者は14日ではなく2月
上限 「その期間の経過後六月以内」 3月の請求期間が過ぎてから6月を超えると、理由が続いていても請求できない

〔表2〕意匠法第46条第2項(追完)の要素分解。「14日/2月」と「6月」の両方を満たす必要がある。

時間軸は縮尺なし

査定謄本の送達 3月経過 理由がなくなった日 3月経過後6月

第1項 審判請求期間 3月

第2項 追完の上限 6月(この枠の外では請求できない)

第2項 追完期間(国内) 14日

第2項 追完期間(在外者) 2月

(×の例)在外者で 理由の消滅が遅いとき 理由がなくなった日(遅い例)

凡例: 第1項の請求期間 第2項の追完期間 第2項の上限(6月) ×=請求できない範囲

図は左右にスクロールできます。

【図3】第46条第1項・第2項の期間(手続名を左、期間を横棒にしたガント型)。「理由がなくなった日から14日(在外者2月)」と「3月経過後6月」の両方の枠内でなければならない。下段は、在外者で理由の消滅が遅く、2月の枠が6月の上限をはみ出す例で、×の部分では請求できない。丸=時点、横棒=期間。(時間軸は縮尺なし)図では期間計算の細則(初日不算入など。特許法第3条)と第1項の期間の延長(特許法第4条)を省略している。参照時点:2026年9月。

第50条 ― 審判に準用される「審査の規定」

意匠法第46条だけを読んでも、審判の中で何が起きるかは分かりません。審判で審査の規定をどう使うかは第50条が定めています(第50条・第52条の詳細は同シリーズの「意匠法第50条・第52条」の記事で扱いますが、拒絶査定不服審判の理解に必要な範囲をここで見ます)。

意匠法第50条第1項(原文)
第十七条の二及び第十七条の三の規定は、拒絶査定不服審判に準用する。この場合において、第十七条の二第三項及び第十七条の三第一項中「三月」とあるのは「三十日」と、第十七条の二第四項中「補正却下決定不服審判を請求したとき」とあるのは「第五十九条第一項の訴えを提起したとき」と読み替えるものとする。
意匠法第50条第2項(原文)
第十八条の規定は、拒絶査定不服審判の請求を理由があるとする場合に準用する。ただし、第五十二条において準用する特許法第百六十条第一項の規定によりさらに審査に付すべき旨の審決をするときは、この限りでない。
意匠法第50条第3項(原文)
特許法第五十条(拒絶理由の通知)の規定は、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
項 準用される規定 審判での意味 読替え
第1項 意匠法第17条の2(補正の却下)・第17条の3(補正後の新出願) 審判官も、要旨を変更する補正を決定で却下できる。却下後に新出願もできる 「三月」→「三十日」。審判での補正却下決定に不服なら、補正却下決定不服審判ではなく第59条第1項の訴え(審決等取消訴訟)
第2項 意匠法第18条(登録査定) 審判の請求に理由があれば「登録審決」をする ただし、特許法第160条第1項の「さらに審査に付すべき旨の審決」(差戻し)をするときは除く
第3項 特許法第50条(拒絶理由の通知) 査定の理由と異なる拒絶理由を見つけたら、審判でも拒絶理由通知をして意見書提出の機会を与える ―

〔表3〕意匠法第50条が拒絶査定不服審判に準用する審査規定。

第52条 ― 特許法の審判規定の準用(要旨)

審判官の合議体、審判請求書の記載、書面審理、審決の方式、審査でした手続の効力(特許法第158条)、差戻審決とその拘束力(特許法第160条第1項・第2項)などは、意匠法第52条が特許法の規定を準用することで意匠法にも適用されます。第52条の原文はレベル3の「前置審査の有無」で引用します。

レベル2のまとめ

  • 第46条第1項:拒絶査定を受けた者は、査定の謄本の送達があった日から3月以内に拒絶査定不服審判を請求できる。
  • 第46条第2項:責めに帰することができない理由で請求できなかったときは、理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内、かつ3月の期間経過後6月以内に請求できる。
  • 第50条:審判にも補正却下(第17条の2)・補正後の新出願(第17条の3)・登録査定(第18条)・拒絶理由通知(特許法第50条)が準用される(「三月」は「三十日」に読替え)。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

逐条解説は、第46条の趣旨については特許法第121条の解説を参照するよう示したうえで、平成15年の一部改正で「拒絶査定不服審判」という独立した名称を規定したこと、平成20年の一部改正前は請求期間が査定の謄本の送達日から30日以内だったが、拒絶査定を受けた出願人に対する手続保障を充実させる観点から同改正で3月に拡大したこと、を説明しています(特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』1359〜1360頁)。

1. 請求人適格 ― 「拒絶をすべき旨の査定を受けた者」

請求できるのは拒絶査定を受けた出願人です。出願が共有(意匠登録を受ける権利が共有)の場合は、意匠法第52条で準用される特許法第132条第3項により、「共有者の全員が共同して請求しなければならない」ことになります。

特許法第132条第3項(原文・意匠法第52条で準用)
特許権又は特許を受ける権利の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するときは、共有者の全員が共同して請求しなければならない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。意匠法への読替え(「特許を受ける権利」→「意匠登録を受ける権利」等)は意匠法第52条の準用によるものと理解されますが、読替え文言そのものは第52条の条文には明記されていません。
ケース 請求できるか 根拠
拒絶査定を受けた出願人(単独) できる 意匠法第46条第1項
共同出願人のうち1人だけで請求 できない(全員で共同) 意匠法第52条で準用する特許法第132条第3項
第三者(出願人でない者) できない 「査定を受けた者」に当たらない
登録査定に対して 対象外 「拒絶をすべき旨の査定」のみが対象

〔表4〕請求人適格の整理。

2. 期間の計算と延長

「3月」「14日」「6月」の計算は、意匠法第68条第1項が準用する特許法第3条(期間の計算)によります。また、意匠法第68条第1項の読替えにより、特許法第4条(期間の延長)が意匠法第46条第1項の期間にも適用されます。

意匠法第68条第1項(原文)
特許法第三条から第五条まで(期間及び期日)の規定は、この法律に規定する期間及び期日に準用する。この場合において、同法第四条中「第四十六条の二第一項第三号、第百八条第一項、第百二十一条第一項又は第百七十三条第一項」とあるのは、「意匠法第四十三条第一項、第四十六条第一項若しくは第四十七条第一項又は同法第五十八条第一項において準用する第百七十三条第一項」と読み替えるものとする。
特許法第4条(原文)
特許庁長官は、遠隔又は交通不便の地にある者のため、請求により又は職権で、第四十六条の二第一項第三号、第百八条第一項、第百二十一条第一項又は第百七十三条第一項に規定する期間を延長することができる。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125/334AC0000000121)、2026年9月参照。
期間 起算点 長さ 延長の可否
審判請求期間(第46条第1項) 査定の謄本の送達があった日 3月 遠隔又は交通不便の地にある者のため、請求により又は職権で延長可(第68条第1項で読み替えて準用する特許法第4条)
追完期間(第46条第2項) 責めに帰することができない理由がなくなった日 14日(在外者2月) 条文上、特許法第4条の対象に挙げられていない
追完の上限(第46条第2項) 3月の期間の経過後 6月 同上
審決取消訴訟の出訴期間(第59条第2項で準用する特許法第178条第3項) 審決の謄本の送達があった日 30日(不変期間) 審判長が職権で附加期間を定めることができる(特許法第178条第5項)

〔表5〕拒絶査定不服審判をめぐる期間の一覧。「初日不算入」など計算の細則は特許法第3条による。

期間計算と在外者(条文の確認結果):特許法第3条第1項は、期間の初日は算入しないこと(ただし、その期間が午前零時から始まるときは算入する)、月又は年で定めた期間は暦に従い、最後の月又は年において起算日に応当する日の前日に満了すること(最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了)を定めています。同条第2項は、手続についての期間の末日が行政機関の休日に関する法律第1条第1項各号に掲げる日に当たるときは、その翌日を期間の末日とすると定めています。「在外者」は、特許法第8条第1項で、日本国内に住所又は居所(法人にあっては、営業所)を有しない者と定義されています(意匠法第68条第2項で準用)。出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。

3. 審判の審理の流れ

flowchart TB
  A["拒絶査定の謄本送達"] --> B["3月以内に拒絶査定不服審判を請求
(意匠法第46条第1項)"] B --> C["審判官の合議体が審理
(意匠法第52条で準用する特許法の審判規定)"] C --> C2["審査でした手続は審判でも効力あり
(特許法第158条準用)"] C2 --> D{"査定の理由は
正しいか?"} D -- "査定の理由は誤り、他に拒絶理由なし" --> E["登録審決
(第50条第2項で準用する第18条)"] D -- "査定の理由は誤りだが、さらに審査が必要" --> F["さらに審査に付すべき旨の審決(差戻し)
(特許法第160条第1項準用)"] D -- "査定の理由と異なる拒絶理由を発見" --> G["拒絶理由通知・意見書の機会
(第50条第3項で準用する特許法第50条)"] G --> H{"解消したか?"} H -- "はい" --> E H -- "いいえ" --> I["拒絶審決"] D -- "査定の理由は正しい" --> I I --> J["30日以内に東京高等裁判所へ審決取消訴訟
(第59条)"] style E fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style I fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図4】拒絶査定不服審判の審理の流れ(条文から整理したフロー)。審判の途中の補正(第60条の24)と補正却下(第50条第1項で準用する第17条の2)は図5で扱う。凡例:緑=登録審決(出願人に有利な終わり方)/赤=拒絶審決(出願人に不利な終わり方)。

特許法第158条(原文・意匠法第52条で準用)
審査においてした手続は、拒絶査定不服審判においても、その効力を有する。
特許法第160条第1項・第2項(原文・意匠法第52条で準用)
拒絶査定不服審判において査定を取り消すときは、さらに審査に付すべき旨の審決をすることができる。
前項の審決があつた場合における判断は、その事件について審査官を拘束する。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。特許法第160条第3項(「第一項の審決をするときは、前条第三項の規定は、適用しない。」)は意匠法第52条の準用対象に含まれていません。

4. 審判の中での補正と補正却下

意匠法では、手続の補正は「事件が審査、審判又は再審に係属している場合に限り」できます(意匠法第60条の24)。つまり、拒絶査定不服審判の係属中も補正は可能です。ただし、要旨を変更する補正は審判官が決定で却下します(第50条第1項で準用する第17条の2第1項)。

意匠法第60条の24(原文)
意匠登録出願、請求その他意匠登録に関する手続をした者は、事件が審査、審判又は再審に係属している場合に限り、その補正をすることができる。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
flowchart TB
  A["審判係属中に補正
(第60条の24)"] --> B{"要旨変更か?
(審査基準 第VI部 第2章)"} B -- "はい" --> D["審判官が決定で補正を却下
(第50条第1項で準用する第17条の2第1項)"] D --> E["決定謄本の送達から30日は審決できない
(第17条の2第3項、「三月」→「三十日」読替え)"] E -.-> F1["30日以内に補正後の意匠で新出願
(第17条の3、「三月」→「三十日」読替え)"] E -.-> F2["第59条第1項の訴えを提起
(第17条の2第4項の読替え:審判ではなく訴え)"] E --> F3["何もしない → 補正前の内容で審理続行"] B -- "いいえ" --> C["補正が有効。審理続行"] style D fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図5】審判段階での補正却下と、その後の3つの道。審査段階(3月・補正却下決定不服審判)との違いは〔表6〕。凡例:赤=補正却下の決定/点線の矢印=出願人が選べる任意の手続(新出願・訴えの提起)、実線=手続をとらない場合。

項目 審査段階(第17条の2・第17条の3そのまま) 拒絶査定不服審判の段階(第50条第1項の読替え後)
補正を却下する主体 審査官 審判官(合議体)
却下決定後、査定・審決をしてはならない期間 決定謄本の送達から3月 決定謄本の送達から30日
補正後の意匠で新出願できる期間 決定謄本の送達から3月 決定謄本の送達から30日
却下決定に対する不服申立て 補正却下決定不服審判(第47条) 第59条第1項の訴え(東京高等裁判所)
不服申立て中の審理 審判の審決確定まで審査を中止(第17条の2第4項) 訴えの判決確定まで審判を中止(第17条の2第4項の読替え)

〔表6〕補正却下をめぐる審査段階と審判段階の対比(意匠法第50条第1項の読替え)。

5. 意匠法に「前置審査」はあるか ― 第52条の準用範囲から確認

特許法では、拒絶査定不服審判の請求と同時に明細書等の補正があったときは、審判官ではなくまず審査官が再審査します(特許法第162条〜第164条、いわゆる前置審査)。意匠法にこの制度があるかは、意匠法第52条がどの特許法の条文を準用しているかを見れば確認できます。

意匠法第52条(原文)
特許法第百三十一条第一項及び第二項、第百三十一条の二(第一項第三号及び第二項第一号を除く。)から第百三十四条まで、第百三十五条から第百五十四条まで、第百五十五条第一項及び第二項、第百五十六条第一項、第三項及び第四項、第百五十七条、第百五十八条、第百六十条第一項及び第二項、第百六十一条並びに第百六十七条から第百七十条まで(審判の請求、審判官、審判の手続、訴訟との関係及び審判における費用)の規定は、審判に準用する。この場合において、同法第百五十六条第一項中「特許無効審判以外の審判においては、事件が」とあるのは「事件が」と、同法第百六十一条中「拒絶査定不服審判」とあり、及び同法第百六十九条第三項中「拒絶査定不服審判及び訂正審判」とあるのは「拒絶査定不服審判及び補正却下決定不服審判」と読み替えるものとする。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
特許法の条文 内容 意匠法第52条での準用
第158条 審査においてした手続の効力 準用あり
第159条 審判における補正却下(第53条準用)・拒絶理由通知(第50条準用)・特許審決(第51条準用) 準用なし(意匠法は第50条で独自に規定)
第160条第1項・第2項 差戻審決と審査官の拘束 準用あり
第160条第3項 差戻審決のときは第159条第3項を適用しない 準用なし
第161条 拒絶査定不服審判に適用しない当事者系の規定 準用あり(読替え:「拒絶査定不服審判及び補正却下決定不服審判」)
第162条 前置審査(審査官による再審査) 準用なし
第163条 前置審査における審査規定の準用 準用なし
第164条 前置審査の結果(査定の取消し・長官への報告) 準用なし

〔表7〕特許法第158条〜第164条の意匠法第52条における準用の有無。第162条〜第164条が列挙されていないため、意匠法には前置審査の規定がない。

条文からの帰結:意匠法第52条の準用対象は「第百五十七条、第百五十八条、第百六十条第一項及び第二項、第百六十一条並びに第百六十七条から第百七十条まで」であり、特許法第162条〜第164条(前置審査)は含まれていません。したがって、意匠法の拒絶査定不服審判では、請求と同時に補正があっても審査官による前置審査は行われず、審判官の合議体が審理します。

逐条解説は、第52条の解説で、昭和45年の一部改正において特許法で採用された審査前置制度は意匠法においては採用しないこととしたので、該当条文を準用規定から除外する旨の改正を行った、と説明しています(青本〔第22版〕1369頁)。

意匠法第52条の準用範囲に特許法第162条〜第164条は含まれず、意匠には前置審査がありません。青本1369頁も、昭和45年改正で前置審査の該当条文を準用から除いたことを説明しています。制度を採用しなかった理由については、この説明を超えて推測を加えません。第52条/青本第22版・意匠法1369頁

6. 特許法第121条との対比

特許法第121条第1項(原文)
拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、その査定に不服があるときは、その査定の謄本の送達があつた日から三月以内に拒絶査定不服審判を請求することができる。
特許法第121条第2項(原文)
拒絶査定不服審判を請求する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内にその請求をすることができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその請求をすることができる。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
項目 特許法 意匠法 実用新案法
拒絶査定不服審判の根拠条文 第121条 第46条 規定なし(実体審査がなく拒絶査定が存在しない)
請求期間 査定謄本の送達から3月 査定謄本の送達から3月 ―
追完 理由消滅から14日(在外者2月)、期間経過後6月以内 同じ(第46条第2項) ―
前置審査 あり(第162条〜第164条) なし(第52条が第162条〜第164条を準用していない) ―
審判段階での補正の時期 拒絶理由通知を受けた後は、第17条の2第1項各号の時期(拒絶査定不服審判の請求と同時にするとき〔第4号〕など)に限定 審判係属中はいつでも可(第60条の24) ―
審判段階での補正却下 第159条第1項で第53条を準用 第50条第1項で第17条の2を準用(「三月」→「三十日」) ―
審判段階で新たな拒絶理由を発見した場合 第159条第2項で第50条・第50条の2を準用 第50条第3項で特許法第50条を準用 ―
差戻審決 第160条第1項・第2項 第52条で特許法第160条第1項・第2項を準用 ―
審決取消訴訟 第178条(30日、東京高等裁判所) 第59条(第178条第2項〜第6項を準用、30日、東京高等裁判所) ―

〔表8〕拒絶査定不服審判の三法対比。実用新案法は無審査登録制度のため拒絶査定不服審判の規定がない。

実用新案法第2条の3による出願の却下は、拒絶査定不服審判の対象ではありません。第55条第5項が行政不服審査法による審査請求を制限する審決・審判請求書の却下等にも当たらず、行政不服審査法第2条に基づく特許庁長官への審査請求の対象になります。補正命令そのものと、命令に応答しないことによる却下処分とは区別します。実用新案法第2条の3・第55条/審査ハンドブック11304・32頁

7. 審判の審理方式と合議体

意匠法第52条で準用される特許法第145条第2項により、拒絶査定不服審判は書面審理が原則です(審判長は当事者の申立てにより又は職権で口頭審理にできます)。

特許法第145条第2項(原文・意匠法第52条で準用)
前項に規定する審判以外の審判は、書面審理による。ただし、審判長は、当事者の申立により又は職権で、口頭審理によるものとすることができる。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
特許法第136条(原文・意匠法第52条で準用)
審判は、三人又は五人の審判官の合議体が行う。
2 前項の合議体の合議は、過半数により決する。
3 審判官の資格は、政令で定める。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。

審判請求書の記載事項(当事者及び代理人の氏名又は名称及び住所又は居所、審判事件の表示、請求の趣旨及びその理由)は、意匠法第52条で準用する特許法第131条第1項に定められています。

第52条で準用する特許法第131条の2では、審判請求書の要旨変更は原則禁止です。ただし、拒絶査定不服審判の「請求の理由」の補正は第1項第1号の例外に当たります。意匠法は第1項第3号と第2項第1号を準用しておらず、特許の訂正手続に伴う例外を持ち込みません。意匠法第52条/特許法第131条の2

8. 試験での問われ方

試験種別 学習用の問いの例 気をつける点
短答式 「意匠法には前置審査があるか」「追完期間は14日か30日か」「審判段階の補正却下に対する不服は審判か訴えか」の正誤 第52条の準用列挙に第162条〜第164条がないこと、第50条第1項の「三月」→「三十日」「第五十九条第一項の訴え」の読替えを正確に
論文式 拒絶査定を受けた出願人が取り得る措置(審判請求、審判中の補正、補正却下後の新出願、審決取消訴訟)を時系列で答えさせる 期間(3月・30日・30日)とその起算点を条文番号とともに書く
口述 「意匠法と特許法の拒絶査定不服審判の違いを述べよ」 前置審査の有無、補正時期の違い(第60条の24)、審判段階の補正却下への不服申立ての違い

〔表9〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

意匠問7の公式正解は5です。補正却下後の新出願では、単に通常の出願をしただけで第17条の3の出願日遡及・もとの出願の取下げ擬制が生じるわけではなく、同条の適用を受けるための手続を区別します。問7は補正却下・新出願が主題で、第46条自体を直接問う問題ではありません。 令和8年度・問題PDF/公式解答PDF。肢の説明と公式の正解番号を区別して確認しています。
レベル3のまとめ

  • 請求人は拒絶査定を受けた出願人。共有なら全員で共同して請求(意匠法第52条で準用する特許法第132条第3項)。
  • 3月の請求期間は、遠隔・交通不便の地にある者のため延長できる(第68条第1項で読み替えて準用する特許法第4条)。追完期間・上限(14日/2月・6月)は延長の対象として条文に挙げられていない。
  • 意匠法第52条は特許法第162条〜第164条を準用していないので、意匠法に前置審査はない。審判段階の補正却下に対する不服は、補正却下決定不服審判ではなく第59条第1項の訴え(第50条第1項の読替え)。
  • 審判では登録審決(第50条第2項で準用する第18条)・拒絶審決・差戻審決(特許法第160条第1項準用)があり、拒絶審決には30日以内に東京高等裁判所へ審決取消訴訟(第59条)。

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