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【問題文】
特許無効審判に関し、次のうち、正しいものは、いくつあるか。
(イ) 特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした外国語書面出願に対して特許がされたとき、当該要件を満たしていないことを理由として特許無効審判を請求することはできない。
(ロ) 特許無効審判の請求書の副本を被請求人に送達する前に請求の理由の要旨を変更する手続補正書が提出された場合、当該補正は許可されることがある。
(ハ) 特許無効審判の口頭審理において、証人は、離婚した元配偶者に著しい利害関係のある事項について尋問を受けるときは、宣誓を拒むことができない。
(ニ) 特許無効審判の口頭審理において、宣誓した証人は、特許庁に対し虚偽の陳述をしたときでも、罰金刑に処されることはない。
(ホ) 特許無効審判に関する費用の負担及びその額は、審判が審決により終了するときはその審決をもって、審判が審決によらないで終了するときは審判による決定をもって、職権で、定めなければならない。
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出典:特許庁「令和8年度弁理士試験短答式筆記試験問題」【特許・実用新案】20(PDF25頁)。改行・字間を整理し、赤字の強調を編集上追加しています。
【解説】
無効審判の問題では、無効理由だけでなく、請求書の補正、証人の扱い、費用の決め方まで問われます。本問は「外国語書面出願」「送達する前」「元配偶者」「罰金刑」「負担及びその額」という短い表現で判断が分かれます。
以下の表は各肢の条件を整理した自作表です。試験日(2026年5月17日)と2026年10月10日の法令を照合しています。特許法151条と169条2項にはその間の改正がありますが、本問で用いる民事訴訟法196条・201条の準用、費用負担の169条1項、費用額の同条5項について判断は変わりません。
(イ)外国語書面出願でも、補正違反はそのまま無効理由になるか
この肢は正しいです。根拠は特許法123条1項1号の括弧書と、同項5号です。
17条の2第3項は、補正によって追加できる事項の範囲を定めています。しかし、補正に違反があることと、それが特許後の無効理由になることは、別に確認しなければなりません。
123条1項1号は、17条の2第3項の要件を満たさない補正をした出願に特許がされた場合を無効理由としつつ、外国語書面出願を除いています。したがって、本肢のように外国語書面出願について、その補正要件違反を理由に無効審判を請求することはできません。
〔表1〕外国語書面出願では、何を超えたかを区別する
| 問題となる事項 | 無効理由の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 17条の2第3項に違反する補正 | 外国語書面出願は1号から除外 | 123条1項1号括弧書 |
| 特許された明細書等の事項が外国語書面の範囲外 | 別の無効理由となる | 123条1項5号 |
青本第22版452頁は、外国語書面の範囲内なのに、誤訳訂正書によるべき手続を手続補正書で行ったという書面選択の誤りまで無効理由とするのは酷である、という趣旨を説明しています。補正手続の違反を全て、特許そのものを失わせる理由とするわけではありません。
ただし、外国語書面出願なら新規事項がどこまで追加されても問題ない、という意味ではありません。元の外国語書面にない事項が特許の明細書等に含まれるなら、5号を別に検討します。本肢はあくまで「当該要件を満たしていないこと」を無効理由にできるかを問うため、正しいと判断します。
(ロ)副本送達前なら、請求理由を大きく補正してもよいか
この肢は誤りです。根拠は特許法131条の2第2項・第3項です。
無効審判の請求理由を、別の無効理由へ入れ替えるなどして要旨変更する補正は、原則として認められません。131条の2第2項は、例外として審判長が許可できる場合を設けています。
その共通条件は、補正によって審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかなことです。それに加え、訂正請求によって理由を補正する必要が生じた場合、または、当初記載しなかったことに合理的理由があり被請求人が同意した場合、という要件が必要です。
ところが、第3項にはさらに時期の制限があります。手続補正書を請求書副本の送達前に提出した場合、第2項の許可はできません。
〔表2〕要旨変更補正の許可と、副本送達の関係
| 手続補正書の提出時期 | 131条の2第2項の許可 | 確認する点 |
|---|---|---|
| 請求書副本の送達前 | 許可できない | 第3項の制限に当たる |
| 請求書副本の送達後 | 要件を満たせば許可できる | 不当な遅延のおそれがないこと+〔訂正に伴う必要性、又は合理的理由と相手方同意〕 |
青本486頁は、請求の理由が実質的に記載されていないような、著しい欠陥のある請求書の提出を抑える趣旨を説明しています。「相手にまだ届いていないのだから、自由に直してよい」と考えると逆になります。
これは請求理由の要旨変更に対する許可の話です。要旨を変えない補正まで一切禁止するという意味ではありません。また、送達後になれば自動的に許可されるわけでもありません。本肢は送達前の提出なのに許可されることがあるとしているので、誤りです。
(ハ)離婚した元配偶者も、宣誓拒絶の対象となる関係に含まれるか
この肢は誤りです。根拠は特許法151条が準用する民事訴訟法201条4項・196条1号です。
審判の証人の扱いは、特許法だけで完結しません。151条が民事訴訟法の証拠に関する規定を準用しているため、準用先までたどります。
民事訴訟法201条4項によれば、自己や一定の関係者に著しい利害関係のある事項について尋問される証人は、宣誓を拒むことができます。その「一定の関係者」は196条各号を参照します。196条1号は、配偶者などの関係に現在ある人だけでなく、その関係にあった人も含めています。
〔表3〕元配偶者について、準用先を順にたどる
| 確認の順序 | 条文 | 本肢への当てはめ |
|---|---|---|
| ① 審判で使える規定か | 特許法151条 | 民訴196条・201条が準用される |
| ② 宣誓を拒める事項か | 民訴201条4項 | 関係者に著しい利害関係のある事項 |
| ③ 元配偶者を含むか | 民訴196条1号 | 配偶者の関係に「あった」者も含む |
関係者との結び付きが強く証言に利害が関わる場面について、宣誓を拒む余地を認める仕組みです。本肢の元配偶者は、離婚によって現在の配偶者ではなくなっていても、対象から外れません。
ここで区別したいのは、宣誓を拒むことと、証言そのものを拒むことです。196条の証言拒絶権には、刑事訴追・有罪判決のおそれや名誉を害する事項という別の要件があります。本肢は201条4項の宣誓拒絶を問うており、その要件を満たすため、「拒むことができない」は誤りです。
(ニ)罰金刑がないということは、処罰されないということか
この肢は正しいです。根拠は特許法199条1項です。
法律により宣誓した証人が特許庁に虚偽の陳述をすると、199条1項の偽証等の罪が問題になります。同項の法定刑は、3月以上10年以下の拘禁刑です。罰金刑は定められていません。
〔表4〕「罰金刑はない」と「刑罰はない」を分ける
| 読み取る事項 | 199条1項の内容 |
|---|---|
| 本肢の主体・行為 | 法律により宣誓した証人が、特許庁に虚偽の陳述 |
| 定められた刑 | 3月以上10年以下の拘禁刑 |
| 罰金刑 | 同項には定められていない |
本肢は「処罰されない」とは書いていません。「罰金刑に処されることはない」という刑の種類を限定した文章です。偽証が重い違反であることを思い出しても、それだけで誤りにしてはいけません。
青本706頁は、虚偽の陳述を証人の記憶に反する陳述と説明しています。客観的事実と違う発言なら全て直ちに偽証になる、という説明ではありません。また、199条2項には、審決確定前などの所定の時点までに自白した場合、刑を減軽・免除できる規定があります。
青本第22版705〜706頁の刑名は旧法の「懲役」ですが、本問の試験時点と今回確認した現行条文は、いずれも「拘禁刑」です。古い解説の刑名をそのまま覚えないようにしてください。罰金刑が定められていないという本肢は、正しいと判断できます。
(ホ)費用を誰が負担するかと、いくら支払うかは同時に決まるか
この肢は誤りです。根拠は特許法169条1項・第5項です。
169条1項は、特許無効審判の費用の負担を職権で定める規定です。審決で終わるときはその審決で、審決によらず終わるときは審判による決定で定めます。例えば審判請求の取下げによって終わった場合でも、費用負担の処理は必要です。
一方、費用の額は第5項で別に定めています。請求により、審決または決定が確定した後に、特許庁長官が決定します。
〔表5〕費用の負担と額の違い
| 区別 | 決める時期・方法 | 職権か請求か |
|---|---|---|
| 費用の負担 | 審判終了時。審決、又は審判による決定 | 職権(169条1項) |
| 費用の額 | 審決・決定の確定後。特許庁長官の決定 | 請求による(169条5項) |
青本567〜568頁は、対立当事者がいる無効審判の費用負担と、その後の費用額の決定を分けて説明しています。誰が費用を負担するのかという判断と、具体的な金額を確定する手続は別です。
本肢の後半は第1項に沿っていますが、冒頭で「負担及びその額」と一括りにした点が誤りです。「職権で」という語だけを見て判断せず、何を決める規定なのかまで確認します。
【解答】
正しいものは(イ)と(ニ)の2つです。正答は「2」です。
〔表6〕各肢の正誤と決め手
| 肢 | 正誤 | 決め手 |
|---|---|---|
| イ | 正しい | 123条1項1号は外国語書面出願を除外。原文の範囲超過は別途5号 |
| ロ | 誤り | 副本送達前に提出された要旨変更補正は、131条の2第2項の許可不可 |
| ハ | 誤り | 元配偶者も民訴196条1号の関係に含まれ、201条4項の宣誓拒絶が可能 |
| ニ | 正しい | 199条1項は拘禁刑を定め、罰金刑を定めていない |
| ホ | 誤り | 負担は職権。額は確定後に請求により特許庁長官が決定 |
特許庁の公式正答の「特許・実用新案20」と照合しています。
確認した資料:e-Govの特許法17条の2第3項、123条1項1号・5号、131条の2、151条、169条1項・5項、199条、民事訴訟法196条・201条。青本第22版452〜454頁、482〜486頁、527〜529頁、566〜568頁、705〜706頁。法令確認日:2026年10月10日。
5肢のうち、いくつ自信を持って判定できましたか
正答を選べたかだけでなく、根拠条文を思い浮かべて判定できた肢の数で、次に取り組むことを選んでください。
〔表7〕無効審判の自己診断
| 自信を持って判定できた肢 | 今の状態 | 次にやること |
|---|---|---|
| 5肢すべて | 無効理由の例外、補正の時期、宣誓・刑罰・費用の区別ができている | 次の問題へ進む |
| 3〜4肢 | 制度は分かるが、括弧書や準用先、負担と額の違いに迷いがある | あいまいだった肢だけ、枝別の過去問で潰す |
| 2肢以下 | 無効審判の請求から審理・終了までの手続がまだつながっていない | 過去問を回す前に、流れを一度整理する |
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