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【問題文】
特許無効審判及びその審決等に対する訴えに関し、次のうち、誤っているものは、いくつあるか。
(イ) 特許無効審判の被請求人は、通常実施権を有すると自称する者が参加を申請し、この参加を許可する旨の決定がされた場合、当該決定に対して、不服を申し立てることができる。
(ロ) 特許無効審判における当該審判の請求に理由がある旨の審決に対する訴えの提起があり、裁判所が当該審決を取り消した場合、その後、更に審理を行う審判官は、当該審判の請求に理由がある旨の審決をすることはできない。
(ハ) 特許権者は、2以上の請求項を無効にすべき旨の審決がなされ、当該審決に対する訴えを提起する場合、当該審決において無効とされた全ての請求項を対象としなければならない。
(ニ) 特許庁長官は、特許無効審判の審決に対する訴えの提起があったときは、訴訟当事者として当該訴訟に参加する方法によって、当該事件に関する特許法の適用その他の必要な事項について意見を述べることができる。
(ホ) 特許庁長官は、特許無効審判の被請求人から、その保有する営業秘密が答弁書に記載されている旨の申出がなされた場合であっても、第三者による当該答弁書の閲覧の請求を認めることができる。
1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ
5 5つ
出典:特許庁「令和8年度弁理士試験短答式筆記試験問題」、特許・実用新案第14問(PDF18頁)。改行・字間を整理し、赤字の強調を編集上追加しています。
【解説】
特許無効審判では、特許庁の審判官が特許を無効にするかを判断します。その審決に不服があれば、裁判所に審決の取消しを求めます。本問では、この二つの手続を行き来しながら、「誰が」「何に対して」「どの範囲で」手続をできるかを確かめます。
以下の表は本問の判断に必要な範囲を整理した自作の表です。根拠条文は試験日(2026年5月17日)と2026年10月4日時点の内容を照合しています。
(イ)参加を許可する決定に、不服を申し立てられるか
根拠:特許法149条5項。関連:148条3項、149条2項、178条2項。
無効審判の結果に利害関係を持つ者は、当事者の一方を補助するために参加できます。参加申請があると、審判長は当事者らに意見を述べる機会を与え、審判官が参加の許否を決定します。
ただし、参加の許否の決定や、その不作為に対しては不服を申し立てられません。「通常実施権を有すると自称する」という記述が気になっても、参加許可決定を不服申立ての対象にできるかは別の問題です。被請求人が参加に反対する意見を述べられることと、決定後に不服を申し立てられることを分けます。
〔表1〕参加に関する三つの場面
| 場面 | できること・できないこと |
|---|---|
| 参加申請がされたとき | 当事者らに意見を述べる機会が与えられる(149条2項) |
| 参加の許否が決まったとき | その決定自体への不服申立てはできない(149条5項) |
| 参加を拒否された者が、後の審決を争うとき | 審決等に対する訴えを提起できる者に含まれる(178条2項) |
参加拒否者にも審決取消訴訟の原告となる道はありますが、それは参加拒否決定自体を争う制度ではありません。本肢は「不服を申し立てることができる」とするため、誤りです。
(ロ)無効審決が取り消されたら、再び無効とは判断できないか
根拠:特許法181条2項、行政事件訴訟法33条1項。
無効審決を取り消す判決が確定すると、審判官は更に審理を行い、改めて審決をします。取消判決には拘束力があるので、審判官はその判断に反する審決をすることはできません。
しかし、取り消されたことだけで、以後の結論が必ず「無効にしない」に決まるわけではありません。取消判決の拘束力に反しない別の理由などによって、再び審判請求に理由がある、つまり無効にすべきだと判断できる場合があります。
例えば、ある無効理由についての判断が誤りだとして審決が取り消されたときに、その取消判決の判断と矛盾しない別の無効理由が成立する場合を考えると分かりやすくなります。逆に、判決で否定された判断を、そのまま繰り返してよいという意味ではありません。
〔表2〕取消判決後の再審理
| 判断の内容 | 考え方 |
|---|---|
| 取消判決の拘束力に反する判断 | できない |
| 拘束力に反しない別の理由などによる判断 | 再び無効とする審決が可能な場合がある |
| 審決が取り消されたという事実だけ | 特許の有効が最終確定したことにはならない |
表は拘束力と結論の関係を示したものです。個々の理由・主張が再審理で認められるかは、取消判決の内容や審判手続に即して判断します。本肢は再度の無効審決を一律に否定しているため、誤りです。
(ハ)無効とされた請求項を、全部まとめて争う必要があるか
根拠:特許法123条1項後段、178条、180条2項。関連:181条2項後段。
特許無効審判は、二つ以上の請求項について、請求項ごとに請求できます。審決取消訴訟でも、無効とされた請求項のうち、一部を対象として争うことができます。180条2項も、訴えに係る請求項を特定するための書類を、裁判所から特許庁長官に送ることを定めています。
例えば、請求項1と2が無効とされた場合に、請求項1に関する部分だけの取消しを求めることは可能です。「一通の審決で判断されたから、全部を訴えなければならない」と考えないようにします。
〔表3〕争う請求項の範囲(説明用の例)
| 無効審決の対象 | 訴えの対象に選ぶ範囲 |
|---|---|
| 請求項1・2 | 請求項1・2の両方を争うことができる |
| 請求項1・2 | 請求項1に関する部分だけを争うこともできる |
なお、訂正の請求がされた「一群の請求項」の一部について取消判決が確定した場合には、181条2項後段による他の請求項の審決取消しの扱いがあります。これは取消判決後の審理の規定であり、訴えを提起する時点で全請求項を対象にする義務とは区別します。
本肢の「全ての請求項を対象としなければならない」は、誤りです。
(ニ)特許庁長官は、訴訟当事者になって意見を述べるのか
根拠:特許法179条ただし書、180条の2。
無効審判の審決を争う訴訟では、審判の請求人又は被請求人が被告になります。拒絶査定不服審判の審決取消訴訟のように、特許庁長官を被告にする場面と混同しないことが大切です。
長官が意見を述べる仕組みはあります。裁判所が長官に意見を求める場合と、長官が裁判所の許可を得て意見を述べる場合です。そのために長官が訴訟当事者として参加する仕組みではありません。
〔表4〕無効審決取消訴訟の当事者と長官
| 立場・場面 | 役割 |
|---|---|
| 審判の請求人・被請求人 | 審決取消訴訟の当事者となる(179条ただし書) |
| 裁判所から長官に意見を求める | 180条の2第1項の仕組み |
| 長官から意見を述べる | 裁判所の許可を得る(同条2項) |
長官は指定した特許庁職員に意見を述べさせることもできます(同条3項)。本肢は意見を述べる「方法」を取り違えているため、誤りです。
(ホ)営業秘密の申出があれば、必ず閲覧を拒むのか
根拠:特許法186条1項ただし書・5号、同条2項。
特許関係の書類は、原則として誰でも閲覧等を請求できます。無効審判の答弁書に営業秘密が記載されているとして当事者から申出があった場合、その書類は秘密保持のため閲覧を制限できる書類に該当します。
ここで必要なのは、申出に加えて、特許庁長官が秘密を保持する必要があると認めることです。申出だけで、必ず閲覧が禁止されるわけではありません。長官が秘密保持の必要を認めない場合には、閲覧の請求を認めることができます。
〔表5〕営業秘密が記載されたという申出と閲覧
| 確認する点 | 結果 |
|---|---|
| 当事者等から営業秘密記載の申出がある | 186条1項5号の対象書類となる |
| 長官が秘密保持の必要があると認める | 同項ただし書により、閲覧等の原則公開から除かれる |
| 長官が閲覧の請求を認める | 書類提出者に、その旨と理由を通知する(186条2項) |
「申出があった」という要件と「長官が必要と認める」という判断を、二段階で確認します。本肢は申出があっても閲覧を認められる場合があるとしているので、正しいです。
参照した一次資料
e-Gov法令検索「特許法」の123・148・149・178・179・180・180の2・181・186条と、行政事件訴訟法33条を参照しています。2026年5月17日と2026年10月4日時点の条文を確認しました。
【解答】
正答は「4」(誤っているものは4つ)です。
〔表6〕各肢の正誤
| 肢 | 正誤 | 判断の決め手 |
|---|---|---|
| (イ) | 誤り | 参加の許否の決定自体には不服申立てができない |
| (ロ) | 誤り | 取消判決の拘束力に反しない範囲で、再び無効審決が可能な場合がある |
| (ハ) | 誤り | 無効とされた請求項の一部を対象とする訴えも可能 |
| (ニ) | 誤り | 長官の意見陳述は、訴訟当事者として参加する制度ではない |
| (ホ) | 正しい | 営業秘密記載の申出だけで、必ず閲覧が禁止されるわけではない |
出典:特許庁「令和8年度弁理士試験短答式筆記試験問題解答」、特許・実用新案第14問。保存済み公式PDFで正答番号を照合しています。
5肢のうち、いくつ自信を持って判定できましたか
正答を選べたかだけでなく、根拠条文を思い浮かべて判定できた肢の数で、次に取り組むことを選んでください。
〔表7〕無効審判と審決取消訴訟の自己診断
| 自信を持って判定できた肢 | 今の状態 | 次にやること |
|---|---|---|
| 5肢すべて | 本問の参加・訴えの範囲・長官の役割・閲覧の条件を区別できている | 次の問題へ進む |
| 3〜4肢 | 手続の主体や、「できる」と「必ずそうなる」の違いにあいまいな部分がある | あいまいだった肢だけ、枝別の過去問で潰す |
| 2肢以下 | 無効審判から訴え、取消判決後の再審理までの流れがまだつながっていない | 過去問を回す前に、流れを一度整理する |
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