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小学生でも分かる特許法|特許法第121条 拒絶査定不服審判 ―「ダメ」と言われた後の、もう一度のチャンス

小学生でもわかる特許法:拒絶査定不服審判(特許法第121条)

小学生でも分かる特許法 / D. 審判・訴訟 #40

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審査官に「特許にできません」(拒絶査定)と言われても、それで終わりではありません。3か月以内なら、特許庁の中の別のチーム(審判官の合議体)にもう一度見てもらえます。それが拒絶査定不服審判です。

条文:特許法第121条(第1項・第2項)関連:第159条〜第160条、第162条〜第164条、第132条第3項参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

「不合格」と言われたら

特許庁に出願して、審査官に見てもらったら「この発明は特許にできません」と言われました。これを拒絶査定(きょぜつさてい)といいます。テストで「不合格」と言われたようなものです。

でも、「採点がまちがっているかもしれない」と思うことはありますよね。そんなとき、特許の世界には「別の先生たちに、もう一度採点し直してもらう」しくみがあります。それが拒絶査定不服審判(きょぜつさてい ふふく しんぱん)です。

審査官(1人) 最初の採点 拒絶査定 「特許にできません」 3か月以内に「もう一度見て」 審判官の合議体(3人または5人) 拒絶査定不服審判で、はじめから見直す 「特許にします」か「やっぱりダメ」かを決める(審決)

【図1】審査官1人の「拒絶査定」に対して、審判官の合議体がもう一度見直す。合議体の人数は第136条第1項による(3人または5人)。

3か月以内に申し込む

このチャンスには期限があります。「不合格」の通知(拒絶査定の謄本)が届いた日から3か月以内に申し込まなければなりません。過ぎてしまうと、原則としてもう申し込めません。

申し込むときに、答案を直すこともできる

「もう一度見て」と申し込むのと同時なら、出願書類(答案)を直すこと(補正)もできます。直したときは、まず元の審査官がもう一度見て、「直したから合格」と判断すれば、そこで特許になります。これを前置審査(ぜんちしんさ)といいます。

レベル1のまとめ
  • 拒絶査定に納得できなければ、拒絶査定不服審判で、審判官の合議体にもう一度見てもらえる。
  • 期限は拒絶査定の謄本が届いた日から3か月。
  • 申し込みと同時に書類を直せる。直したときは、まず元の審査官が見直す(前置審査)。

※期限を過ぎた場合の救済、共同出願のときの請求のしかた、審判で直せる範囲などは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

条文を読む

特許法第121条第1項(原文) 拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、その査定に不服があるときは、その査定の謄本の送達があつた日から三月以内に拒絶査定不服審判を請求することができる。
特許法第121条第2項(原文) 拒絶査定不服審判を請求する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内にその請求をすることができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその請求をすることができる。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。

部品に分解する

部品条文意味
だれが拒絶をすべき旨の査定を受けた者拒絶査定を受けた出願人。共有なら全員で(第132条第3項)
何に不服かその査定に不服があるとき拒絶査定そのもの
いつまでに査定の謄本の送達があった日から3月以内起算点は「謄本の送達があった日」
何を拒絶査定不服審判を請求する審判請求書を提出(第131条)
救済(第2項)責めに帰することができない理由があるとき、理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内で、期間経過後6月以内第30条第4項・第46条第5項などと同じ型

〔表1〕第121条の分解。「3月/14日(2月)/6月」の数字を区別する。

timeline
    title 拒絶査定不服審判の請求期間(第121条)
    拒絶査定の謄本の送達 : ここから3月以内に請求(第1項)
    3月経過 : 原則、請求できない
    責めに帰することができない理由が消滅 : 消滅日から14日(在外者は2月)以内かつ期間経過後6月以内なら請求できる(第2項)

【図2】請求期間のタイムライン。

審判の流れ ― 補正の有無で道が分かれる

flowchart TB
  A["拒絶査定の謄本の送達"] --> B["3月以内に拒絶査定不服審判を請求"]
  B --> C{"請求と同時に
明細書等の補正をしたか?"} C -- "した" --> D["前置審査(第162条)
特許庁長官が審査官に審査させる"] D --> E{"審査官の判断"} E -- "特許にできる" --> F["特許査定+拒絶査定の取消し
(第164条第1項)"] E -- "特許にできない" --> G["査定をせず、審査の結果を
特許庁長官に報告(第164条第3項)"] G --> H["審判官の合議体による審理"] C -- "しない" --> H H --> I{"審決"} I -- "請求に理由あり" --> J["特許審決
(第159条第3項で第51条を準用)"] I -- "請求に理由あり・差戻し" --> K["さらに審査に付すべき旨の審決
(第160条第1項)"] I -- "請求に理由なし" --> L["拒絶審決"] L --> M["審決取消訴訟(第178条)へ"] style F fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style J fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style L fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

【図3】拒絶査定不服審判の全体フロー。補正をしたときだけ前置審査に入る。

レベル2のまとめ
  • 拒絶査定を受けた者が、謄本送達日から3月以内に請求。責めに帰することができない理由があれば14日(在外者2月)/6月の救済。
  • 請求と同時に補正をすると前置審査(第162条)。審査官が特許査定するなら拒絶査定を取り消す(第164条第1項)。
  • 審判官の合議体の審決は、特許審決/差戻し審決/拒絶審決。拒絶審決には審決取消訴訟。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 請求人の要件 ― 共有の場合

第132条第3項は、特許を受ける権利の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するときは、共有者の全員が共同して請求しなければならないと定めています。共同出願の拒絶査定に対する拒絶査定不服審判は、出願人全員で請求する必要があります。

特許法第132条第3項(原文) 特許権又は特許を受ける権利の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するときは、共有者の全員が共同して請求しなければならない。

2. 審判での補正 ― 第17条の2第1項第4号

拒絶査定不服審判の請求と同時にする補正は、第17条の2第1項第4号の補正です。この補正には、第3項(新規事項)・第4項(シフト補正)・第5項(目的の制限)・第6項(独立特許要件)のすべてがかかります(補正の記事〔表4〕参照)。

論点結論根拠
審判請求後に補正できるか原則できない。請求と同時のみ(第17条の2第1項第4号)。ただし審判で新たな拒絶理由が通知された場合はその指定期間内に可(第159条第2項で第50条を準用→第17条の2第1項第1号・第3号)第17条の2第1項、第159条第2項
要件違反の補正の扱い補正却下(第159条第1項で第53条を準用。読み替えにより第4号の補正が対象に加わる)第159条第1項
前置審査での補正却下前置審査の審査官は、特許査定をする場合を除き、補正却下の決定をしてはならない第164条第2項

〔表2〕審判段階の補正。前置審査で「補正は認められないから却下、拒絶査定維持」とはせず、報告に回す(第164条第2項・第3項)。

3. 前置審査(第162条〜第164条)

平成20年改正解説書(第2章)は、拒絶査定不服審判の請求期間の延長(30日→3月)とあわせて、審判請求時の補正の時期を「請求と同時」に限定した経緯を説明しています(要旨)。前置審査は、この「同時の補正」を、事件をよく知る元の審査官にまず見せて、早期に特許査定できるものを拾い上げる制度です。

条文内容(原文の要点)
第162条審判の請求と同時に明細書等の補正があったときは、特許庁長官は審査官にその請求を審査させなければならない
第163条前置審査に審査の規定(第48条、第53条、第54条、第50条、第50条の2、第51条、第52条)を準用(各項の適用条件は下記)
第164条第1項審査官が特許査定をするときは、審判の請求に係る拒絶査定を取り消さなければならない
第164条第2項第1項の場合を除き、審査官は補正却下の決定をしてはならない
第164条第3項第1項の場合を除き、査定をすることなく審査の結果を特許庁長官に報告しなければならない

〔表3〕前置審査の条文。審査官の選択肢は「特許査定+拒絶査定取消し」か「報告」の二つ。前置審査で拒絶査定を維持する査定はしない。

第163条第1項は第48・53・54条、第2項は査定と異なる拒絶理由について第50・50条の2、第3項は請求に理由がある場合に第51・52条を準用します。第163条。平成20年改正により、2009年4月1日から、審判請求期間は原則30日から3月へ、審判請求に伴う補正時期は請求後30日以内から請求と同時へ変更されました。特許庁・平成20年改正に伴う審査基準改訂。

4. 審判の審理 ― 第159条の準用

項準用する規定意味
第159条第1項第53条(補正の却下)。読み替えで第17条の2第1項第4号の補正を対象に加え、第1号・第3号の補正は審判請求前にしたものを除く審判請求時の補正が要件違反なら、審判で却下できる。審査段階の補正を審判で蒸し返して却下することはしない
第159条第2項第50条(拒絶理由の通知)、第50条の2(既通知の拒絶理由と同一である旨の通知)。査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合審判で新しい拒絶理由を使うときは、出願人に反論・補正の機会を与える
第159条第3項第51条(特許査定)、第67条の3第2項〜第4項、第67条の7第2項〜第4項請求に理由があるときは特許審決(延長登録の出願の拒絶査定不服審判も同様)

〔表4〕第159条の準用関係(e-Gov、2026年9月参照)。

5. 審決の種類と差戻し(第160条)

審決内容根拠その後
特許審決請求に理由がある → 特許をすべき旨の審決第159条第3項(第51条準用)特許料納付→設定登録
差戻し審決査定を取り消し、さらに審査に付すべき旨の審決。その判断は審査官を拘束する第160条第1項・第2項審査官が再審査。第159条第3項は適用しない(第160条第3項)
拒絶審決請求に理由がない → 請求は成り立たない旨の審決第157条審決取消訴訟(第178条、知的財産高等裁判所)

〔表5〕審決の3類型。

審決は第157条に従い理由を記載した文書で行い、謄本を所定の者に送達します。取消訴訟の出訴期間は、謄本の送達があった日から30日(不変期間)で、審判長が職権で附加期間を定める場合があります。第157条・第178条第3〜5項。

6. 審査と審判の比較

審査拒絶査定不服審判
判断する人審査官(1人)審判官の合議体(3人または5人:第136条第1項)
結論の名前査定(特許査定・拒絶査定)審決(特許審決・差戻し審決・拒絶審決)
審理の範囲出願全体審査の続き(第158条:審査でした手続は審判でも効力を有する)。査定の理由と異なる拒絶理由を発見すれば通知(第159条第2項)
補正の時期第17条の2第1項第1号〜第3号請求と同時(第4号)+審判での拒絶理由通知への応答
不服申立て拒絶査定不服審判(3月)審決取消訴訟(謄本送達から原則30日(附加期間は別))

〔表6〕審査と審判の比較。

審判は3人又は5人の審判官の合議体が行い、過半数で決します。審査で行った手続は、拒絶査定不服審判でも効力を持ちます。第136条第1・2項・第158条。

7. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「請求期間の起算点と長さ」「利害関係人は請求できるか(できない:査定を受けた者のみ)」「共有者の一部による請求」「前置審査で審査官ができること」「前置審査の結果の通知」「審判請求後の補正の可否」3月/14日/6月。前置審査は特許査定か報告のみ(第164条)。補正は請求と同時
論文式拒絶査定を受けた出願人が取り得る手段(審判請求+補正、分割出願)と、その期限・効果を論じさせる第44条第1項第3号(拒絶査定謄本送達から3月以内の分割)とセットで整理する
口述「拒絶査定不服審判の請求期間は」「前置審査とは」〔表1〕〔表3〕を口頭で言えるようにする

〔表7〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

問8の肢4は審判請求後の補正時期、問11は前置審査の開始・報告・補正却下・審尋、問15は取下げ・補正命令・審判費用・差戻し等が論点です。 公式正解番号:問8=1、問11=4、問15=2。 公式問題/公式正解。
レベル3のまとめ
  • 請求できるのは「拒絶査定を受けた者」。共有なら全員で(第132条第3項)。期間は謄本送達日から3月、救済は14日(在外者2月)/6月。
  • 補正は請求と同時(第17条の2第1項第4号)。補正があれば前置審査。審査官は特許査定+拒絶査定取消し(第164条第1項)か報告(第3項)のみで、補正却下はしない(第2項)。
  • 審判では第53条・第50条・第50条の2・第51条を準用(第159条)。審決は特許審決/差戻し審決(第160条、判断は審査官を拘束)/拒絶審決。

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