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小学生でも分かる特許法|特許法第113条〜第120条の8 特許異議の申立て ― 特許になった直後に「誰でも」異議を言える制度

小学生でもわかる特許法:特許異議の申立て(特許法第113条〜第120条の8)

小学生でも分かる特許法 / D. 審判・訴訟 #39

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特許掲載公報の発行から6か月以内なら、誰でも特許庁に「この特許はおかしい」と申し立てられます。無効審判と違って利害関係は不要、書面審理で簡易、特許庁が職権で見直す「査定系」の手続です。平成26年改正で復活しました。この記事では第113条から第120条の8までを1本で扱います。

条文:特許法第113条、第114条、第118条、第120条の2、第120条の4、第120条の5、第120条の7、第120条の8(第115条〜第117条、第119条〜第120条、第120条の3、第120条の6は概観)関連:第123条、第126条、第178条参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

「合格発表」の直後に、みんなでチェック

特許が登録されると、特許掲載公報で「この発明に特許が出ました」と発表されます。この発表から6か月の間は、誰でも(利害関係がなくても)「この特許はおかしい」と特許庁に申し立てることができます。これが特許異議の申立てです。

無効審判(第123条)は「利害関係人が、いつでも、相手と対決する」手続でしたが、異議申立ては「誰でも、6か月以内に、特許庁に見直しを促す」手続です。審査官が見落とした先行技術を、世の中の目でチェックしてもらうイメージです。

特許掲載公報の発行 6月以内:何人も異議申立てができる 6月経過 以後は無効審判(利害関係人)のみ 申立人 → 特許庁(審判官3人または5人)→ 特許権者に取消理由を通知 → 訂正の機会 → 決定 申立人と特許権者が直接対決するのではなく、特許庁が職権で見直す(査定系)

【図1】異議申立ての期間と構造。

レベル1のまとめ
  • 特許掲載公報の発行から6月以内なら、誰でも特許異議の申立てができる。
  • 特許庁が職権で見直し、取り消すか維持するかを決定する。特許権者には訂正の機会がある。

※申し立てられる理由、決定の効果、不服申立ての可否、無効審判との使い分けは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第113条 ― 誰が・いつ・何を理由に

特許法第113条柱書(原文)何人も、特許掲載公報の発行の日から六月以内に限り、特許庁長官に、特許が次の各号のいずれかに該当することを理由として特許異議の申立てをすることができる。この場合において、二以上の請求項に係る特許については、請求項ごとに特許異議の申立てをすることができる。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
号異議申立て理由(要旨)
第1号第17条の2第3項(新規事項追加)に違反する補正をした出願に対する特許(外国語書面出願を除く)
第2号第25条・第29条・第29条の2・第32条・第39条第1項〜第4項に違反した特許
第3号条約に違反した特許
第4号第36条第4項第1号または第6項(第4号を除く)の要件を満たさない出願に対する特許
第5号外国語書面出願で、明細書等の記載事項が外国語書面の範囲内にない

〔表1〕第113条各号。無効理由(第123条第1項)と比べると、第38条違反・冒認・後発的事由・訂正要件違反が含まれない。

第114条 ― 合議体と決定

特許法第114条(原文)1 特許異議の申立てについての審理及び決定は、三人又は五人の審判官の合議体が行う。
2 審判官は、特許異議の申立てに係る特許が前条各号のいずれかに該当すると認めるときは、その特許を取り消すべき旨の決定(以下「取消決定」という。)をしなければならない。
3 取消決定が確定したときは、その特許権は、初めから存在しなかつたものとみなす。
4 審判官は、特許異議の申立てに係る特許が前条各号のいずれかに該当すると認めないときは、その特許を維持すべき旨の決定をしなければならない。
5 前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。

第115条〜第120条の8 ― 手続の流れ

条文内容(要旨)
第115条異議申立書の記載事項(申立人、特許の表示、理由・証拠)、補正の要旨変更禁止(期間内の理由・証拠の補正は可)、副本の送付
第116条・第117条審判官の指定、審判長、除斥・忌避の準用
第118条第1項審理は書面審理による(原文取得済み)
第118条第2項共有特許権者の一人に中断・中止の原因があれば全員に効力
第119条参加(特許権者側への補助参加)
第120条証拠調べ・証拠保全(第150条・第151条の準用)
第120条の2第1項:申し立てない理由も審理できる(職権審理)。第2項:申し立てられていない請求項は審理できない
第120条の3申立ての併合・分離(複数の申立ては原則併合)
第120条の4申立ての取下げは、取消理由の通知(第120条の5第1項)があった後はできない。請求項ごとの取下げ(第155条第3項準用)
第120条の5取消理由の通知と意見書(第1項)、訂正の請求(第2項〜第9項)
第120条の6決定の方式(文書・理由・謄本送達)
第120条の7決定は異議申立事件ごとに確定。請求項ごとの申立てなら請求項ごと(一群の請求項ごとの訂正があれば一群ごと)
第120条の8第133条・第133条の2・第134条第4項・第135条・第152条・第168条・第169条第3項〜第6項・第170条を準用。第135条の却下決定には不服申立て不可(第114条第5項準用)

〔表2〕第115条〜第120条の8の概観(第118条・第120条の2・第120条の4・第120条の7・第120条の8は原文取得済み、他は要旨)。

flowchart TB
  A["特許掲載公報の発行から6月以内に異議申立て(第113条)"] --> B["方式審査(第120条の8で第133条等を準用)/副本を特許権者へ"]
  B --> C["合議体(3人または5人)の書面審理(第114条第1項、第118条)
職権審理可、ただし申立てのない請求項は不可(第120条の2)"] C --> D{"取消理由があるか"} D -- "ない" --> M["維持決定(第114条第4項)→ 不服申立て不可(第5項)"] D -- "ある" --> E["取消理由の通知+意見書の機会(第120条の5第1項)
特許権者は訂正の請求ができる(第2項)"] E --> F["訂正請求書の副本を申立人に送付+意見書の機会(第5項)"] F --> G{"訂正後も取消理由があるか"} G -- "ない" --> M2["維持決定(訂正を認めて維持)"] G -- "ある" --> H["取消決定(第114条第2項)→ 確定で初めから不存在(第3項)"] H --> I["特許権者は審決取消訴訟(第178条、30日)"] style M fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style M2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style H fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

【図2】特許異議の申立ての流れ。

レベル2のまとめ
  • 何人も、特許掲載公報発行から6月以内、第113条各号の理由で、請求項ごとに申立て可。
  • 3人または5人の合議体が書面審理。取消理由があれば通知→訂正の請求の機会→取消決定または維持決定。維持決定には不服申立て不可。
  • 取消決定確定で特許権は初めから不存在。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 無効審判との比較

特許異議の申立て(第113条〜)特許無効審判(第123条〜)
申立人・請求人何人も利害関係人(第38条違反・冒認は真の権利者)
期間特許掲載公報発行の日から6月以内いつでも(消滅後も可)
理由第113条第1号〜第5号(公益的理由)第123条第1項第1号〜第8号(第38条・冒認・後発的事由・訂正違反を含む)
構造査定系(申立人は当事者でない。特許庁が職権で審理)当事者系(請求人 vs 特許権者)
審理方式書面審理(第118条)口頭審理が原則(第145条第1項)
申立人の関与申立書の提出、訂正請求に対する意見書(第120条の5第5項)に限られる答弁書への反論、証拠提出、口頭審理への出席など全面的
結論取消決定/維持決定無効審決/請求不成立審決
不服申立て取消決定:特許権者が審決取消訴訟。維持決定:不可(第114条第5項)いずれの審決にも当事者が審決取消訴訟
訴訟の被告特許庁長官(第179条本文)審判の相手方(第179条ただし書)
一事不再理なし(第167条は無効審判のみ)あり(第167条)
取下げ取消理由通知後は不可(第120条の4)審決確定まで可(答弁書後は承諾要:第155条)

〔表3〕異議申立てと無効審判の比較。第145条・第155条・第167条・第179条は各記事で条文確認済み。

2. 第120条の5 ― 取消理由通知と訂正の請求

項内容(要旨)
第1項取消決定をしようとするときは、特許権者・参加人に取消理由を通知し、意見書提出の機会を与える(必須)
第2項指定期間内に訂正の請求ができる。目的は減縮・誤記誤訳訂正・釈明・引用形式の解消の4つ
第3項・第4項請求項ごと(申立てが請求項ごとなら請求項ごとに必須)、一群の請求項ごと
第5項訂正請求書等の副本を申立人に送付し、意見書提出の機会を与える(申立人が希望しない場合等を除く)
第6項訂正が要件に適合しないときは、特許権者に理由を通知し意見書の機会
第7項後の訂正の請求で先の請求は取下げ擬制
第8項訂正の請求の取下げは補正可能期間内のみ。請求項ごとにした場合は全部
第9項第126条第4項〜第7項、第127条、第128条、第131条第1項・第3項・第4項、第131条の2第1項、第132条第3項・第4項、第133条第1項・第3項・第4項を準用。独立特許要件(第126条第7項)は「特許異議の申立てがされていない請求項」に係る訂正についてのみ

〔表4〕第120条の5の整理(要旨)。無効審判の訂正の請求(第134条の2)とほぼ同じ構造。

第120条の5第9項は、第126条第4〜7項、第127・128条、第131条第1・3・4項、第131条の2第1項、第132条第3・4項、第133条第1・3・4項を準用します。第126条第7項の独立特許要件は、異議が申し立てられていない請求項の減縮・誤記誤訳訂正に限って適用されます。無効審判の第134条の2第9項は、第126条第8項まで準用する点も異なります。第120条の5第9項・第134条の2第9項。

3. 決定の確定範囲(第120条の7)と取下げ(第120条の4)

論点内容
確定の単位原則:異議申立事件ごと。請求項ごとの申立て:請求項ごと(一群の請求項ごとの訂正があれば一群ごと)(第120条の7)
一部取消し請求項ごとに申し立てられていれば、一部の請求項だけ取り消し、他は維持できる
取下げの制限取消理由通知後は取り下げられない(第120条の4第1項)。特許庁が職権で見直す段階に入った以上、申立人の意思で止められない
請求項ごとの取下げ第155条第3項を準用(第120条の4第2項)

〔表5〕確定範囲と取下げ。

4. 制度の沿革

時期制度
平成6年改正前付与前異議(出願公告後の異議申立て)
平成6年改正(平成8年施行)付与後異議に転換
平成15年改正(平成16年施行)付与後異議を廃止し、無効審判に一本化(無効審判の請求人を「何人も」に)
平成26年改正(平成27年4月施行)特許異議の申立てを復活。無効審判の請求人は「利害関係人」に戻す

〔表6〕異議申立て制度の沿革。付与後異議は1996年、廃止・無効審判への一本化は2004年、現行異議制度は2015年4月1日施行。青本第113条の解説・特許庁の平成26年改正施行案内による。

5. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「申立人は利害関係が必要か(不要)」「期間(6月)」「冒認・第38条違反は理由になるか(ならない)」「書面審理か口頭審理か」「維持決定に不服申立てできるか(不可)」「取消理由通知後の取下げ」「取消決定の効果(遡及)」「訂正の請求と独立特許要件」「複数申立ての併合」〔表1〕〔表3〕〔表4〕〔表5〕
論文式特許取得直後の第三者の対抗手段として、異議申立てと無効審判の使い分けを論じさせる〔表3〕
口述「異議申立てと無効審判の違いは」〔表3〕

〔表7〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

問13は書面審理、併合、条約違反、取下げ、申立期間中の審理開始、問18は通知先、取消しの遡及効、訴訟、請求項ごとの取消し、再度の訂正請求が論点です。 公式正解番号:問13=5、問18=5。 公式問題/公式正解。
レベル3のまとめ
  • 異議申立て=何人も・6月以内・公益的理由・書面審理・査定系。無効審判=利害関係人・いつでも・全理由・口頭審理・当事者系。
  • 取消理由通知(必須)→訂正の請求(第120条の5)→取消決定または維持決定。維持決定に不服申立て不可、取消決定には審決取消訴訟(被告は特許庁長官)。
  • 取消理由通知後は取下げ不可。決定は請求項ごとに確定しうる。

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