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小学生でも分かる特許法|特許法第153条〜第157条 職権審理・審決 ― 審判官はどこまで自分で調べ、どう結論を出すか

小学生でもわかる特許法:職権審理・審決(特許法第153条〜第157条)

小学生でも分かる特許法 / D. 審判・訴訟 #46

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審判は裁判に似ていますが、特許庁の審判官は当事者が主張していない理由も自分で調べることができます(職権審理)。ただし「求められていないこと」を判断することはできません。審理の併合・分離、請求の取下げ、審理の終結、そして審決の方式まで、審判の「中盤から結末」をまとめます。

条文:特許法第153条、第154条、第155条、第156条、第157条関連:第145条(口頭審理・書面審理)、第150条(証拠調べ)、第164条の2(審決の予告)、第167条参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

裁判とちょっと違う「審判」

民事裁判では、裁判官は当事者が持ってきた主張と証拠だけで判断するのが原則です。でも特許の審判では、特許が有効か無効かは、当事者だけでなく世の中全体に関係します。だから審判官は、当事者が言っていない理由も自分で調べることができます(職権審理)。

ただし、限度があります。「請求項1を無効にしてほしい」と頼まれたのに、頼まれていない請求項2まで無効にすることはできません。「何を求めるか」は当事者が決め、「なぜか」は審判官も調べられる、という分担です。

請求の趣旨(何を求めるか) 「請求項1を無効に」 当事者が決める 審判官は超えられない(第153条第3項) 理由(なぜか) 「引用例Aから進歩性なし」 審判官も調べられる ただし当事者に意見の機会を与える(第153条第2項)

【図1】職権審理の範囲。趣旨は当事者、理由は職権でも可。

途中でやめることもできる

審判を頼んだ人は、結論(審決)が確定するまでは取り下げられます。ただし、相手がすでに反論(答弁書)を出していたら、相手の承諾が必要です。相手も「無効でないと確認したい」と思っているかもしれないからです。

レベル1のまとめ
  • 審判官は当事者が主張していない理由も調べられるが、求められていない趣旨は判断できない。
  • 審判の請求は審決確定まで取り下げられる。答弁書が出た後は相手の承諾が必要。

※併合・分離、審理の終結と再開、審決の記載事項などは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第153条 ― 職権審理

特許法第153条(原文)1 審判においては、当事者又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができる。
2 審判長は、前項の規定により当事者又は参加人が申し立てない理由について審理したときは、その審理の結果を当事者及び参加人に通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えなければならない。
3 審判においては、請求人が申し立てない請求の趣旨については、審理することができない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。

第154条〜第157条

条・項内容
第154条第1項当事者の双方または一方が同一である2以上の審判は、審理を併合できる
第154条第2項併合した審理は、さらに分離できる
第155条第1項審判の請求は、審決が確定するまで取り下げられる
第155条第2項答弁書の提出があった後は、相手方の承諾がなければ取り下げられない
第155条第3項2以上の請求項について無効審判を請求したときは、請求項ごとに取り下げられる
第155条第4項請求項ごと・一群の請求項ごとに訂正審判を請求したときは、取下げは全部について
第156条第1項無効審判以外の審判では、事件が審決をするのに熟したときに審理の終結を通知
第156条第2項無効審判では、審決の予告(第164条の2)をしないとき、または予告後の指定期間内に訂正の請求・補正がないときに、審理の終結を通知
第156条第3項必要があれば、終結通知後でも申立てまたは職権で審理を再開できる
第156条第4項審決は終結通知を発した日から20日以内にする(事件が複雑等のときを除く)
第157条第1項審決があったときは審判は終了
第157条第2項審決は文書で、①審判番号、②当事者・参加人・代理人、③事件の表示、④結論及び理由、⑤年月日を記載
第157条第3項特許庁長官は審決の謄本を当事者・参加人・参加を拒否された者に送達

〔表1〕第154条〜第157条の内容(e-Gov、2026年9月参照)。

flowchart TB
  A["請求書・答弁書の交換(第131条〜第134条)"] --> B["審理
口頭審理(無効審判)/書面審理(その他):第145条
職権審理:第153条 証拠調べ:第150条"] B --> C{"無効審判か"} C -- "はい" --> D["審決の予告(第164条の2)→ 訂正の請求の機会"] D --> E["審理の終結の通知(第156条第2項)"] C -- "いいえ" --> E2["審理の終結の通知(第156条第1項)"] E --> F["20日以内に審決(第156条第4項)"] E2 --> F F --> G["審決の謄本の送達(第157条第3項)→ 審判終了(第1項)"] G --> H["30日以内に審決取消訴訟(第178条)/確定"] E -. "必要があれば再開(第156条第3項)" .-> B E2 -. "再開" .-> B

【図2】審理から審決までの流れ。

レベル2のまとめ
  • 職権審理:理由は職権でも審理できるが意見の機会を与える。趣旨は請求人の申立てに拘束される。
  • 併合・分離(第154条)。取下げは審決確定まで、答弁書後は承諾要、無効審判は請求項ごと、訂正審判は全部(第155条)。
  • 審理終結の通知→20日以内に審決(再開可)。審決は文書で結論・理由等を記載し、謄本を送達。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 職権主義と処分権主義

原則内容審判での現れ方
職権探知(職権審理)当事者の主張しない事実・理由も審理できる第153条第1項。ただし第2項の意見申立ての機会が手続保障。無効審判では、請求人が主張しない無効理由を職権で採用することもできるが、審判便覧51-18では補完的な運用とする
職権進行手続の進行を審判長が主導する第152条(当事者等が手続せず・出頭しなくても進行可)、第154条の併合・分離
処分権主義の残存審判を起こすか、何を求めるかは当事者が決める第153条第3項(趣旨に拘束)、第155条(取下げ)
職権証拠調べ当事者の申立てによらず証拠調べができる第150条第1項。職権の証拠調べ・保全後は当事者・参加人に結果を通知し意見の機会を与える(同第5項)

〔表2〕審判における職権主義の整理。第150条・第152条を現行条文と照合。

2. 取下げのルールの整理

flowchart TB
  A["審判の請求を取り下げたい"] --> B{"審決は確定したか"}
  B -- "確定済み" --> N["取り下げられない(第155条第1項)"]
  B -- "未確定" --> C{"当事者系(無効審判等)で答弁書は提出済みか"}
  C -- "提出済み" --> D{"相手方の承諾があるか"}
  D -- "ある" --> OK["取下げ可(第2項)"]
  D -- "ない" --> N2["取り下げられない"]
  C -- "未提出/査定系審判" --> OK2["取下げ可"]
  OK --> E{"無効審判で複数請求項?"}
  E -- "はい" --> F["請求項ごとに取下げ可(第3項)
訂正の請求も連動して取下げ擬制(第134条の2第8項)"] OK2 --> G{"訂正審判を請求項ごとにした?"} G -- "はい" --> H["全部を取り下げなければならない(第4項)"] style OK fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style OK2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style N fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

【図3】取下げの分岐図。無効審判は「請求項ごと」、訂正審判は「全部」という対比。

3. 審理の終結と再開

論点内容
「審決をするのに熟した」審理を尽くし、これ以上の主張立証が不要と審判長が判断した状態
無効審判の特則(第2項)審決の予告(第164条の2)との関係で、予告をしない場合か、予告後に訂正の請求・補正がない場合に終結通知
終結後の再開(第3項)申立てまたは職権。終結通知後に提出された主張・証拠を採用するには再開が必要
20日(第4項)訓示規定(超えても審決は無効にならない)。「事件が複雑であるとき、その他やむを得ない理由があるとき」は例外

〔表3〕審理終結の論点。

第156条第4項は、審理終結の通知を発した日から20日以内に審決をする旨を定め、複雑な事件等を例外とします。青本第22版542頁は、この期間を訓示規定とし、期間を過ぎただけでは手続の違法は生じないと説明しています。審決の予告は、無効審判で請求に理由がある場合等の第164条の2第1項の場面に行います。第156条・第164条の2/特許庁・青本第22版。

4. 審決の種類と「結論及び理由」

審判認容審決棄却審決却下審決
拒絶査定不服審判特許審決(第159条第3項)/差戻し審決(第160条)請求不成立(拒絶審決)不適法な請求(第135条)
特許無効審判無効審決(請求項ごと)請求不成立(維持審決)同上
訂正審判訂正認容審決(第128条の効果)訂正拒絶(不成立)審決同上

〔表4〕審決の種類。第157条第2項第4号の「理由」は、審決取消訴訟で審理される判断の根拠となる。

5. 口頭審理と書面審理(第145条)

審判原則変更公開
特許無効審判・延長登録無効審判口頭審理(第1項)申立てまたは職権で書面審理に口頭審理は公開(第6項。公序良俗を害するおそれがあるときを除く)
その他の審判(拒絶査定不服・訂正等)書面審理(第2項)申立てまたは職権で口頭審理に―

〔表5〕審理方式(第145条、要旨)。

6. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「申し立てない請求の趣旨を審理できるか(不可)」「職権審理の結果の通知は義務か(義務)」「答弁書提出後の取下げに承諾は必要か」「無効審判の請求項ごとの取下げ」「訂正審判の一部取下げ(不可)」「審理終結後の再開」「審決は20日以内か」「審決謄本の送達先」〔表1〕【図3】〔表3〕
論文式審判手続の流れの中で職権審理と手続保障を論じさせる【図1】【図2】
口述「職権審理の限界は」「審判請求の取下げができる時期は」第153条第3項、第155条

〔表6〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

問2(ロ)(ハ)(ニ)は審理終結通知・審決謄本送達・認諾、問11の肢5は審尋と口頭審理、問15(イ)は審決謄本送達後の審判請求の取下げが論点です。 公式正解番号:問2=2、問11=4、問15=2。 公式問題/公式正解。
レベル3のまとめ
  • 理由は職権審理可(意見の機会が必須)、趣旨は当事者に拘束。証拠調べも職権で可。
  • 取下げ:審決確定まで/答弁書後は承諾/無効審判は請求項ごと/訂正審判は全部。
  • 終結通知→20日以内に審決(訓示規定)、再開可。無効審判は審決の予告と連動。審決は文書で結論・理由を記載し謄本送達。

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