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小学生でも分かる特許法|特許法第125条の2・第125条の3 延長登録無効審判 ― 「延長」が間違っていたときに、延長だけを取り消す

小学生でもわかる特許法:延長登録無効審判(特許法第125条の2・第125条の3)

小学生でも分かる特許法 / D. 審判・訴訟 #42

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存続期間の延長登録(第67条)にも、無効審判があります。特許そのものではなく「延長」の部分だけを無効にする手続で、期間補償の延長(第125条の2)と処分に基づく延長(第125条の3)で無効理由が異なります。延長が長すぎた場合は、超えた期間だけが無効になります。

条文:特許法第125条の2、第125条の3関連:第67条〜第67条の8、第123条、第167条、第178条参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

「寿命の延長」にもチェックがある

特許権の寿命(存続期間)は出願から20年ですが、審査が遅すぎた場合や薬の承認を待った場合には延長できる、という話を第66条・第67条の記事でしました。でも、その延長が「本当は延長できないケースだった」「延長の期間が長すぎた」ということもあります。

そこで、延長登録に対しても無効審判があります。ポイントは、特許そのものは無効にならないことです。取り消されるのは「延長」の部分だけ。しかも、期間が長すぎただけなら、超えた分だけが無効になります。

本来の存続期間(出願から20年) 正しい延長 超過分 無効に 特許そのものは残る 延長の一部だけ無効(第125条の2第4項ただし書)

【図1】延長登録無効審判のイメージ。超過分だけ無効になる。

レベル1のまとめ
  • 延長登録が間違っていたら、延長登録無効審判で延長だけを無効にできる。特許そのものは残る。
  • 期間が長すぎただけなら、超えた分だけ無効になる。

※2種類の延長ごとの無効理由、誰が請求できるか、効果などは正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第125条の2 ― 期間補償のための延長登録の無効審判

特許法第125条の2(原文)1 第六十七条の三第三項の延長登録が次の各号のいずれかに該当するときは、その延長登録を無効にすることについて延長登録無効審判を請求することができる。
一 その延長登録が基準日以後にされていない場合の出願に対してされたとき。
二 その延長登録により延長された期間がその特許権の存続期間に係る延長可能期間を超えているとき。
三 その延長登録が当該特許権者でない者の出願に対してされたとき。
四 その延長登録が第六十七条の二第四項に規定する要件を満たしていない出願に対してされたとき。
2 前項の延長登録無効審判は、利害関係人に限り請求することができる。
3 第百二十三条第三項及び第四項の規定は、第一項の規定による延長登録無効審判の請求について準用する。
4 第六十七条の三第三項の延長登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、その延長登録による特許権の存続期間の延長は、初めからされなかつたものとみなす。ただし、延長登録が第一項第二号に該当する場合において、その特許権の存続期間に係る延長可能期間を超える期間の延長登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、当該超える期間について、その延長がされなかつたものとみなす。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。

第125条の3 ― 処分に基づく延長登録の無効審判

号無効理由(要旨)
第1号特許発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められない出願に対する延長登録
第2号特許権者・専用実施権者・通常実施権者が処分を受けていない出願に対する延長登録
第3号延長された期間が、実施をすることができなかった期間を超えている
第4号特許権者でない者の出願に対する延長登録
第5号共有者全員で出願していない(第67条の5第4項で準用する第67条の2第4項)出願に対する延長登録
第2項・第3項利害関係人に限る、第123条第3項・第4項を準用、確定の効果(超過分のみ無効の特則を含む)― 第125条の2と同じ構造(第125条の3に第4項はない)

〔表1〕第125条の3第1項各号(e-Gov、2026年9月参照)。第2項・第3項は自動取得で本文を確認できていない。

第125条の2(期間補償の延長)第125条の3(処分に基づく延長)
対象第67条の3第3項の延長登録第67条の7第3項の延長登録
無効理由①基準日以後の登録でない、②延長可能期間超過、③特許権者以外の出願、④共有者全員でない①処分が必要でなかった、②処分を受けていない、③実施不能期間超過、④特許権者以外の出願、⑤共有者全員でない
請求人利害関係人
消滅後・通知第123条第3項(消滅後も可)・第4項(実施権者等への通知)を準用
効果延長は初めからされなかったものとみなす。期間超過の理由(第125条の2第2号、第125条の3第3号)なら超過分のみ

〔表2〕2つの延長登録無効審判の比較。

flowchart TB
  A["延長登録無効審判の請求(利害関係人)"] --> B{"無効理由は?"}
  B -- "延長要件を欠く(基準日・処分の必要性・出願人など)" --> C["延長登録を無効にする審決 → 確定で延長は初めからされなかったものとみなす"]
  B -- "期間が長すぎる(延長可能期間・実施不能期間の超過)" --> D["超える期間についてのみ延長がされなかったものとみなす(一部無効)"]
  B -- "理由なし" --> E["請求不成立"]
  C --> F["特許権自体は影響を受けない(本来の存続期間は残る)"]
  D --> F
  style C fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F
  style D fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F
  style E fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

【図2】延長登録無効審判の分岐図。

レベル2のまとめ
  • 期間補償の延長は第125条の2(4理由)、処分に基づく延長は第125条の3(5理由)。いずれも利害関係人が請求。
  • 確定すれば延長は初めからなかったものとみなす。期間超過の理由なら超過分のみ。特許自体は残る。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 特許無効審判との比較

特許無効審判(第123条)延長登録無効審判(第125条の2・第125条の3)
対象特許(請求項ごと)延長登録(延長の部分)
請求人利害関係人(第38条違反・冒認は真の権利者)利害関係人
効果特許権は初めから存在しなかったものとみなす(後発的理由は該当時から)延長は初めからされなかったものとみなす(超過分のみの一部無効あり)
訂正の請求あり(第134条の2)なし(延長期間を短縮する「訂正」の制度はない)
一事不再理あり(第167条)あり(第167条は延長登録無効審判を含む)
審決取消訴訟の被告審判の相手方(第179条ただし書)審判の相手方(第179条ただし書は延長登録無効審判を含む)
審理方式口頭審理(第145条第1項)口頭審理(第145条第1項は延長登録無効審判を含む)

〔表3〕特許無効審判との比較。第145条・第167条・第179条は各記事で条文確認済み。

2. 延長登録の出願の拒絶理由との対応

延長の種類拒絶理由(出願段階)無効理由(登録後)
期間補償第67条の3第1項各号(基準日、延長可能期間超過、出願人、共有)第125条の2第1項各号(ほぼ対応)
処分に基づく第67条の7第1項各号(処分の必要性、処分を受けた者、期間超過、出願人、共有)第125条の3第1項各号(ほぼ対応)

〔表4〕拒絶理由と無効理由の対応。第67条の3第1項・第67条の7第1項の各号を現行条文と照合。

期間補償の延長の拒絶理由は、第67条の3第1項の4号(基準日、期間超過、出願人、共同出願)です。処分に基づく延長は第67条の7第1項の5号(処分の必要性、処分を受けた者、期間超過、出願人、共同出願)です。第125条の3は3項までで、第2項が請求人等、第3項が確定の効果を定めます。第4項はありません。第67条の3・第67条の7・第125条の3。

3. 処分に基づく延長の「処分が必要であったとは認められない」の判断

第125条の3第1項第1号は、延長登録の拒絶理由(第67条の7第1項第1号)と同じ文言で、医薬品等の承認が「その特許発明の実施」に必要であったかを問います。この判断基準は、最高裁平成23年4月28日判決〔パシーフカプセル事件〕、平成27年11月17日判決〔ベバシズマブ事件〕で示されています(両判決の判断枠組みは下記のとおり異なり、発明特定事項だけで判断するものではありません)。

パシーフカプセル事件(最高裁2011年4月28日、平成21年(行ヒ)第326号)は、先行医薬品が当該特許のどの請求項の技術的範囲にも属さない場合、同じ有効成分・効能効果の先行承認があるだけでは、後の承認が不要だったとはいえないとしました。特許庁掲載の最高裁判決・理由3。ベバシズマブ事件(最高裁2015年11月17日、平成26年(行ヒ)第356号)は、医薬品の実質的同一性に直接関わる審査事項で両処分を比較し、先行処分で可能な製造販売が後の処分の製造販売を包含するかを判断するとしました。最高裁判決・理由3〜4。

4. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「延長登録無効審判の請求人(利害関係人)」「延長期間超過の場合の効果(超過分のみ)」「延長登録無効審判に一事不再理は及ぶか(及ぶ)」「特許権消滅後に請求できるか(できる)」「延長登録無効審判の審決取消訴訟の被告」〔表2〕〔表3〕
論文式延長登録の要件と無効理由をセットで論じさせる(医薬品の事例)〔表4〕
口述「延長登録無効審判の無効理由を挙げよ」第125条の2第1項各号

〔表5〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

令和8年度の特許・実用新案20問を照合した範囲では、第125条の2・第125条の3の延長登録無効審判を直接問う肢はありません。 公式問題/公式正解。
レベル3のまとめ
  • 2種類の延長に対応する2つの無効審判。無効理由は延長登録の拒絶理由とほぼ対応。請求人は利害関係人。
  • 効果は「延長は初めからされなかったものとみなす」。期間超過の理由なら超過分のみ一部無効。特許自体は残る。
  • 一事不再理・口頭審理・審決取消訴訟の被告は特許無効審判と同じ扱い。訂正の請求はない。

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