MENU

小学生でも分かる特許法|特許法第66条・第67条 設定登録・存続期間・延長登録 ― 特許権の「誕生」と「寿命」

小学生でもわかる特許法:設定登録・存続期間・延長登録(特許法第66条・第67条)

小学生でも分かる特許法 / B. 出願・審査の手続 #24

PR この記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

特許権は、特許査定が出た瞬間ではなく、特許料を納めて「設定登録」された時に生まれます。寿命は出願の日から20年。ただし、審査に時間がかかりすぎた場合(期間補償)と、医薬品などの承認を待たされた場合(処分に基づく延長)には、寿命を延ばすことができます。

条文:特許法第66条、第67条(第67条の2〜第67条の8を概観)関連:第107条・第108条(特許料)、第68条参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

「合格」と「誕生」は別

審査官から「特許にします」(特許査定)と言われても、まだ特許権は生まれていません。特許権が生まれるのは、決められたお金(特許料)を納めて、特許庁の帳簿(特許原簿)に登録された時です。これを設定登録といいます。人でいえば、出生届が受理された瞬間です。

寿命は「出願の日から20年」

特許権はずっと続くわけではありません。出願の日から20年で終わります。「登録の日から」ではなく「出願の日から」なので、審査に時間がかかると、そのぶん特許権として使える期間は短くなります。

出願 設定登録 特許権の誕生(第66条第1項) 出願から20年 存続期間の満了(第67条第1項) 審査中(特許権はまだない) 特許権が存続する期間 審査が長引くほど、色の付いた期間は短くなる → そのための「延長」がある

【図1】特許権のタイムライン。20年の起算は「出願の日」。

寿命を延ばせる2つの場合

出願から20年が基本ですが、2つの場合には延ばせます。

  • 審査に時間がかかりすぎた場合(期間補償):特許庁側の事情で登録が遅れたぶんを取り戻す。
  • 薬などの承認を待たされた場合(処分に基づく延長):薬は国の承認がないと売れないので、承認を待っていた期間を最大5年まで取り戻す。
レベル1のまとめ
  • 特許権は設定登録で生まれる。特許査定だけでは生まれない。
  • 寿命は出願の日から20年。
  • 審査が遅すぎた場合と、薬などの承認を待たされた場合は、延長できる。

※登録の条件(特許料)、延長できる条件と期間の計算方法は、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第66条 ― 特許権の発生と設定登録

特許法第66条第1項・第2項(原文) 特許権は、設定の登録により発生する。
第百七条第一項の規定による第一年から第三年までの各年分の特許料の納付又はその納付の免除若しくは猶予があつたときは、特許権の設定の登録をする。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。第2項は自動取得の表記に基づく。
項内容(要旨)
第1項特許権は設定の登録により発生する
第2項第1年〜第3年分の特許料の納付(または免除・猶予)があったときに設定登録をする
第3項設定登録があったときは、特許権者の氏名等、出願番号・年月日、発明者、明細書・特許請求の範囲・図面の内容、要約書、特許番号・登録年月日等を特許公報に掲載(特許掲載公報)。要約書の事項は出願公開済みなら除く
第4項要約書の差替え(第64条第3項)を準用

〔表1〕第66条の項ごとの内容。

flowchart LR
  A["特許査定の謄本の送達"] --> B["30日以内に第1年〜第3年分の特許料を納付
(第108条第1項)"] B --> C["設定登録(第66条第2項)"] C --> D["特許権の発生(第66条第1項)"] C --> E["特許掲載公報の発行(第66条第3項)"] style D fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

【図2】特許査定から特許権発生までの流れ。第108条第1項の「30日」は特許料の記事で条文確認。

第67条 ― 存続期間と2種類の延長

特許法第67条第1項(原文) 特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する。
項内容(要旨)
第1項存続期間は特許出願の日から20年
第2項期間補償のための延長:設定登録が「出願の日から5年を経過した日」または「出願審査の請求があった日から3年を経過した日」のいずれか遅い日(基準日)以後にされたときは、延長登録の出願により延長できる
第3項延長できる期間=基準日から設定登録の日までの期間から、第1号〜第10号の期間(重複部分を二重に数えない)を控除した期間(延長可能期間)を超えない範囲
第4項処分に基づく延長:安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分(政令で定めるもの)を受ける必要があるため特許発明を実施できない期間があったときは、5年を限度として延長登録の出願により延長できる

〔表2〕第67条の項ごとの内容(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。第2項・第3項は平成28年のTPP関連改正で導入。

期間補償のための延長(第67条第2項・第3項)処分に基づく延長(第67条第4項)
趣旨審査の遅延で失われた存続期間の補償医薬品等の承認待ちで実施できなかった期間の回復
要件設定登録が基準日(出願から5年/審査請求から3年の遅い方)以後政令で定める処分(医薬品医療機器等法の承認、農薬取締法の登録など)を受けるために実施できない期間があった
延長の上限延長可能期間(基準日〜登録日 − 控除期間)5年
出願期間設定登録の日から3月以内、かつ20年の存続期間満了前(第67条の2第3項)処分を受けた日から3月以内(第67条の5第3項)。存続期間満了後は不可
審査第67条の3(拒絶理由)、第67条の4以下第67条の7(拒絶理由)以下

〔表3〕2種類の延長登録の比較。

根拠と補足:処分による延長出願は処分を受けた日から3月以内、かつ存続期間(期間補償で延長されている場合はその期間を加えます)の満了前に行います。対象は特許法施行令第2条が列挙する農薬の登録、医薬品・体外診断用医薬品・再生医療等製品の所定の承認、体外診断用医薬品の所定の認証です。承認等のすべてが対象ではなく、第2条の列挙と除外によります。第67条の3は期間補償の延長について基準日・延長可能期間・権利者・共同出願要件を、第67条の7は処分の必要性、処分を受けた者、実施不能期間、権利者・共同出願要件を審査します。出典:特許法(第67条の3・第67条の5・第67条の7)。出典:特許法施行令を含む審査基準関連規定。
レベル2のまとめ
  • 第66条:特許権は設定登録で発生。登録は第1〜3年分の特許料納付が条件。登録後に特許掲載公報。
  • 第67条第1項:出願の日から20年。第2項・第3項:期間補償の延長(基準日以後の登録)。第4項:処分に基づく延長(5年限度)。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 期間補償のための延長 ― 基準日の決め方

flowchart TB
  A["出願の日から5年を経過した日"] --> C{"どちらが遅いか"}
  B["出願審査の請求があった日から3年を経過した日"] --> C
  C --> D["遅い方=基準日"]
  D --> E{"設定登録の日は基準日以後か"}
  E -- "基準日より前" --> N["延長できない"]
  E -- "基準日以後" --> F["延長可能期間 =(基準日〜設定登録の日)- 控除期間(第3項各号)"]
  F --> G["設定登録から3月以内かつ20年の存続期間満了前
救済の条件は下記(第67条の2第3項)"] style F fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style N fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

【図3】期間補償のための延長の分岐図。「5年」と「3年」の遅い方が基準日。

出願 審査請求 基準日 出願+5年/審査請求+3年の遅い方 設定登録 基準日〜登録日 控除 延長可能期間 = 青の部分 − 赤の部分(出願人側の事情で遅れた期間)

【図4】延長可能期間の計算の模式図(第67条第3項)。

2. 控除される期間(第67条第3項第1号〜第10号)

号控除される期間(要旨)性格
第1号特許庁長官・審査官の通知・命令(第39条第6項・第50条の通知を除く)があった日から、その対応手続の日まで出願人の応答期間
第2号手続を執るべき期間の延長があった場合の、本来の期間経過日から手続日までの期間出願人による期間延長
第3号期間経過後でも手続を執ることができる場合に、期間経過後に手続をしたときのその期間期間徒過後の手続
第4号出願人の申出により処分・通知を保留した期間出願人の申出
第5号特許料・手数料の軽減・免除・猶予の申請日から決定日までの期間減免申請
第6号明細書等補完書の提出日から取下げ日までの期間補完手続
第7号特許審決・取消差戻審決・前置審査の特許査定があった場合の、拒絶査定の謄本送達日からその謄本送達日まで審判に要した期間
第8号行政不服審査法による審査請求日から裁決謄本の送達日まで不服申立て
第9号行政事件訴訟法による訴えの提起から判決確定までの期間訴訟
第10号手続が中断・中止した期間中断・中止

〔表4〕第67条第3項各号(e-Gov、2026年9月参照、要旨)。重複する期間は二重に控除しない。

根拠と補足:控除期間が重なる部分を二重に差し引くことはありません。第7号は、特許すべき審決、取消差戻審決、または前置審査での特許査定があった場合に、拒絶査定の謄本送達日からその謄本送達日までを控除する規定です。第8号の行政審査請求は裁決謄本の送達日まで、第9号の訴訟は判決確定日までです。出典:特許法(第67条第3項)。

3. 延長登録の出願の手続(第67条の2・第67条の5)

項目期間補償(第67条の2)処分に基づく延長(第67条の5)
願書の記載出願人、特許番号、延長を求める期間、出願番号・年月日、審査請求の年月日出願人、特許番号、延長を求める期間(5年以下)、処分の内容
添付書類期間の算定の根拠を記載した書面延長の理由を記載した資料
出願期間設定登録の日から3月以内(責めに帰することができない理由があるときは理由消滅から14日〔在外者2月〕以内、かつ登録日から9月以内。ただし20年の存続期間満了後は不可)処分を受けた日から3月以内。存続期間(期間補償の延長分を含む)満了後は不可
共有共有者全員で出願同じ(第67条の2第4項を準用)
みなし延長出願があったときは、拒絶査定確定または延長登録まで存続期間が延長されたものとみなす同じ(準用)

〔表5〕延長登録の出願の手続(要旨)。

根拠と補足:期間補償の出願は登録から3月以内。責めに帰せない理由があるときは、その解消から14日(在外者2月)以内で登録から9月が上限となり、20年の存続期間満了後には出願できません。医薬品等の延長では、満了6月前の前日までに処分を受けられない見込みのとき、その日までに第67条の6第1項の書面を提出します。必要な書面を出さなければ満了前6月以後の延長出願ができないのであり、同期間の出願が一律に禁止されるわけではありません。第67条の6の書面期限は、第67条第1項の出願から20年の期間を基準として、その満了6月前の前日までです。処分延長出願自体の最終期限(第67条の5第3項ただし書)とは区別します。処分後3月の期限に責めに帰せない理由があるときは、理由消滅から14日(在外者2月)以内、かつ処分日から9月以内という施行令第3条の救済があります。出典:特許法(第67条の2第3項・第67条の5第3項・第67条の6)。

4. 延長された特許権の効力(第68条の2)

処分に基づいて延長された特許権の効力は、その処分の対象となった物(用途が定められている場合はその用途に使用される物)についての特許発明の実施にしか及びません。延長の理由となった医薬品の承認と無関係な実施態様には、延長期間中の効力は及ばないということです。期間補償のための延長にはこの制限はありません。

根拠と補足:医薬品等の処分による延長の効力は、第68条の2が定める処分対象の物・用途についての特許発明の実施に限られます。オキサリプラチン判決は成分・分量・用法・用量・効能・効果で特定した物と、一定の実質同一の範囲を扱っています。延長を認めるかという審査と、延長後の権利が及ぶ範囲は別の問題です。出典:特許法(第68条の2)。出典:知財高裁大合議平成29年1月20日・平成28年(ネ)第10046号、27〜34頁。

5. 実用新案・意匠・商標との比較

権利発生存続期間延長
特許権設定登録出願の日から20年期間補償/処分に基づく延長(5年限度)
実用新案権設定登録出願の日から10年なし
意匠権設定登録出願の日から25年(関連意匠は基礎意匠の出願日から)なし
商標権設定登録設定登録の日から10年更新登録(何度でも)

〔表6〕四法の存続期間の比較。根拠:実用新案法第15条、意匠法第21条、商標法第19条。意匠権25年は令和2年4月1日以後の出願に適用する。

6. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「特許権はいつ発生するか(登録)」「存続期間の起算日(出願日)」「基準日の決め方」「拒絶査定不服審判の期間は控除されるか」「延長登録の出願期間」「処分に基づく延長の上限(5年)」「延長された特許権の効力の範囲」〔表3〕〔表4〕〔表5〕
論文式タイムラインを与えて延長可能期間を計算させる、延長の可否を論じさせる【図3】【図4】
口述「特許権の存続期間は」「延長できる場合は」第67条第1項・第2項・第4項

〔表7〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

過去問との対応:令和8年度短答式試験について、問3ロは存続期間の末日が1月1日でも休日による満了日の繰下げはない点を扱います(第3条第2項は手続期間の規定)。問3の正解番号は2です。 出典:公式問題・特許/実用新案の部、公式正解。公式正解は問題単位の番号です。個々の肢の論点説明は条文との照合によります。
レベル3のまとめ
  • 特許権は設定登録で発生(第66条第1項)。登録の条件は第1〜3年分の特許料納付(第2項)。
  • 存続期間は出願の日から20年(第67条第1項)。期間補償の延長は「基準日(出願+5年/審査請求+3年の遅い方)以後の登録」が要件で、延長可能期間から出願人側の事情による期間(第3項各号)を控除。
  • 処分に基づく延長は5年限度(第4項)。延長された特許権の効力は処分対象の物・用途に限られる(第68条の2)。

関連記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人