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小学生でも分かる特許法|特許法第107条〜第112条の3 特許料・追納・回復 ― 特許権を「維持する」ためのお金のルール

小学生でもわかる特許法:特許料・追納・回復(特許法第107条〜第112条の3)

小学生でも分かる特許法 / B. 出願・審査の手続 #25

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特許権は登録されたら終わりではなく、毎年「特許料」を納めないと消えてしまいます。第107条は金額の枠、第108条は納付の期限、第112条は期限を過ぎた後の追納(割増つき)、第112条の2・第112条の3はそれでも納められなかった場合の回復とその効力の制限を定めています。

条文:特許法第107条、第108条、第109条・第109条の2(概観)、第112条、第112条の2、第112条の3関連:第66条(設定登録)、第67条(存続期間)参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

特許権は「年会費制」

特許権をもらったら、ずっとタダで持っていられるわけではありません。毎年特許料というお金を特許庁に納めないと、特許権はなくなってしまいます。スポーツクラブの年会費のようなものです。

しかも、年会費は年を追うごとに高くなります。「本当に大事な特許だけ残して、使わない特許は手放してね」という仕組みです。

設定登録 1〜3年分を先払い 4年目分 前の年までに納める 5年目分 払い忘れ 6か月は追納OK 原則、同額の割増も納付 消滅 さかのぼって 年会費を払い続ける限り、出願から20年まで特許権は続く

【図1】特許料のタイムライン。払い忘れても6か月は追納できるが、割増がつく。

払い忘れたら?

うっかり払い忘れても、すぐには消えません。期限から6か月以内なら、2倍の金額(本来の特許料+同じ額の割増特許料)を納めれば大丈夫です。これを追納といいます。

6か月も過ぎてしまうと、特許権は「期限の時にさかのぼって消えた」ことになります。ただし、わざとではなかった場合には、さらに一定期間内なら回復させる道が残されています。

レベル1のまとめ
  • 特許権を維持するには毎年特許料を納める。年を追うごとに高くなる。
  • 払い忘れても6か月以内なら2倍の金額で追納できる。
  • 6か月を過ぎると特許権はさかのぼって消える。わざとでなければ回復の道がある。

※1〜3年分の納付期限、4年目以降の期限、割増が免除される場合、回復の要件と回復後の制限は、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

条文の役割分担

flowchart LR
  A["第107条
いくら(金額の枠・政令委任)"] --> B["第108条
いつまでに(納付期限)"] B --> C["第112条
遅れたら(追納・割増・消滅)"] C --> D["第112条の2
それでも遅れたら(回復)"] D --> E["第112条の3
回復した権利の効力の制限"] F["第109条・第109条の2
減免・猶予"] -.-> B

【図2】特許料に関する条文の相関図。

第107条 ― 金額

特許法第107条第1項(原文) 特許権の設定の登録を受ける者又は特許権者は、特許料として、特許権の設定の登録の日から第六十七条第一項に規定する存続期間(同条第四項の規定により延長されたときは、その延長の期間を加えたもの)の満了までの各年について、一件ごとに、六万千六百円を超えない範囲内で政令で定める額に一請求項につき四千八百円を超えない範囲内で政令で定める額を加えた額を納付しなければならない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
項内容(要旨)
第1項設定登録の日から存続期間の満了までの各年について、1件ごとに「基本額+請求項の数×加算額」を納付。法律は上限(基本額61,600円、加算額4,800円)を定め、実際の額は政令で定める
第2項国に属する特許権には適用しない
第3項国または減免を受ける者との共有で持分の定めがあるときは、国以外の各共有者ごとに持分割合を乗じた額を合算した額を、国以外の者が納付

〔表1〕第107条の項ごとの内容。

根拠と補足:通常の特許料は各年、1〜3年が4,300円+請求項数×300円、4〜6年が10,300円+同800円、7〜9年が24,800円+同1,900円、10〜25年が59,400円+同4,600円です。第107条第1項の金額は上限であり、実際の料金は特許法施行令第8条の2が定めます。旧出願等の経過措置・減免がある場合は別です(2026年9月20日確認)。出典:特許庁・手続料金表(特許料)。

第108条 ― 納付期限

項内容(要旨)期限
第1項第1年〜第3年分は、特許査定または審決の謄本の送達があった日から30日以内に一時に納付30日
第2項本文第4年以後の各年分は、前年以前に納付前年以前
第2項ただし書延長登録(処分に基づく延長)の査定・審決の謄本の送達が、延長前の存続期間満了の年の前年に相当する日以後にあったときは、その年の次の年から謄本送達日の属する年までの各年分を、謄本送達日から30日以内に一時に納付30日
第3項特許庁長官は、請求により第1項の期間(または第2項ただし書の期間)を30日以内を限り延長できる+30日
第4項責めに帰することができない理由により第1項等の期間内に納付できないときは、理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内で、期間経過後6月以内に納付できる14日/2月/6月

〔表2〕第108条の納付期限(e-Gov、2026年9月参照、要旨)。第2項ただし書は延長登録の場合の特例。

第112条 ― 追納・割増・消滅

特許法第112条第1項(原文) 特許権者は、第百八条第二項に規定する期間又は第百九条若しくは第百九条の二の規定による納付の猶予後の期間内に特許料を納付することができないときは、その期間が経過した後であつても、その期間の経過後六月以内にその特許料を追納することができる。
項内容(要旨)
第1項第4年以後の特許料(第108条第2項の期間)または猶予後の期間内に納付できないときは、期間経過後6月以内に追納できる
第2項追納するときは、特許料と同額の割増特許料を納付。ただし、責めに帰することができない理由により期間内に納付できなかったときは割増不要
第3項割増特許料は特許印紙(省令で定める場合は現金)で納付
第4項追納期間内に第108条第2項本文の特許料と割増特許料を納付しないときは、特許権は同項本文の期間の経過の時にさかのぼって消滅したものとみなす
第5項追納期間内に第108条第2項ただし書の特許料(延長登録分)と割増特許料を納付しないときは、特許権は延長登録がないとした場合の存続期間の満了の日の属する年の経過の時にさかのぼって消滅したものとみなす
第6項追納期間内に第109条・第109条の2により猶予された特許料と割増特許料を納付しないときは、特許権は初めから存在しなかったものとみなす

〔表3〕第112条の項ごとの内容(e-Gov、2026年9月参照)。第4項〜第6項で「いつの時点で消えるか」が3パターンに分かれる。

第112条の2・第112条の3 ― 回復と効力の制限

条・項内容(要旨)
第112条の2第1項第112条第4項〜第6項により消滅・不存在とみなされた特許権の原特許権者は、経済産業省令で定める期間内に限り、特許料と割増特許料を追納できる。ただし故意に追納期間内に納付しなかったと認められる場合は除く
第112条の2第2項追納があったときは、特許権は、期間経過の時等にさかのぼって存続していたもの、または初めから存在していたものとみなす
第112条の3第1項回復した特許権(物の発明)の効力は、追納期間の経過後・回復の登録前に、輸入し、または日本国内で生産・取得した当該物には及ばない
第112条の3第2項回復した特許権の効力は、追納期間の経過後・回復の登録前にした発明の実施行為、および第2項各号の行為(生産・使用に用いる物の生産等や、譲渡等・輸出のための所持。第101条の要件に限定しない)には及ばない

〔表4〕回復(第112条の2)と回復後の効力制限(第112条の3)。

レベル2のまとめ
  • 第107条:金額は「基本額+請求項数×加算額」、上限を法律、実額を政令で定める。
  • 第108条:1〜3年分は査定謄本送達から30日以内に一時納付。4年目以降は前年以前。延長30日、責めに帰することができない理由の救済あり。
  • 第112条:期間経過後6月以内の追納(割増同額。責めに帰することができない理由なら割増不要)。追納しなければ、期間経過時にさかのぼって消滅(第4項)等。
  • 第112条の2:故意でなければ省令期間内に回復可。第112条の3:回復前の実施品・実施行為には効力が及ばない。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 全体の分岐図

flowchart TB
  A["第4年以後の特許料の納付期限(前年以前)"] --> B{"期限内に納付したか"}
  B -- "した" --> OK["特許権は存続"]
  B -- "しなかった" --> C{"期限経過後6月以内に追納したか(第112条第1項)"}
  C -- "した(+割増特許料)" --> OK2["特許権は存続
割増は責めに帰することができない理由があれば不要(第2項ただし書)"] C -- "しなかった" --> D["特許権は期限経過の時にさかのぼって消滅(第112条第4項)"] D --> E{"故意でなく、省令期間内に追納したか(第112条の2第1項)"} E -- "した" --> R["特許権は回復(さかのぼって存続していたものとみなす)
ただし回復前の実施品・実施行為には効力が及ばない(第112条の3)"] E -- "しなかった/故意" --> X["消滅が確定"] style OK fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style OK2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style R fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style D fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style X fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

【図3】納付→追納→消滅→回復の分岐図。

2. 消滅の効果の3パターン(第112条第4項〜第6項)

項納付されなかった特許料消滅の時点理由
第4項第4年以後の各年分(第108条第2項本文)納付期間の経過の時にさかのぼって消滅納付済みの年までは有効だったので、その後から消える
第5項延長登録分(第108条第2項ただし書)延長登録がないとした場合の存続期間満了の年の経過の時にさかのぼって消滅延長分だけが消える
第6項第109条・第109条の2で猶予された特許料(第1年〜第3年分の猶予)初めから存在しなかったものとみなす設定登録の条件(第66条第2項)であった特許料が結局納付されなかったため

〔表5〕消滅の効果の3パターン。第6項の「初めから存在しなかった」は、補償金請求権(第65条第5項)にも波及する。

3. 回復(第112条の2)の要件と期間

要素内容
だれが原特許権者
要件故意に追納期間内に納付しなかったと認められる場合でないこと(「故意でない」基準。令和3年改正で「正当な理由」基準から変更)
期間手続可能日から2月以内、かつ追納期間の経過後1年以内(特許法施行規則第69条の2)
納付するもの特許料+割増特許料+原則として回復手数料212,100円
効果さかのぼって存続していたもの/初めから存在していたものとみなす(第2項)

〔表6〕回復の要件。

根拠と補足:令和5年4月1日以降に追納期限を徒過した案件では、故意でない基準により回復を求められます。手続可能になった日から2月以内かつ追納期限経過後1年以内に、納付手続と回復理由書を提出し、原則として特許の回復手数料212,100円も納付します。災害等の事情による免除手続があります。出典:特許庁・期間徒過後の救済(3・5・8)。

4. 第112条の3 ― 回復前の第三者の保護

納付期限経過 追納期間(6月)経過 特許権は消滅したとみなされる 回復の登録 この間の所定の行為等には効力が及ばない 「消えた」と信じて実施を始めた第三者を守る(第112条の3)

【図4】第112条の3の効力制限の期間。「追納期間の経過後・回復の登録前」が対象。

項効力が及ばないもの(要旨)
第1項(物の発明)その期間内に輸入し、または日本国内で生産・取得した当該物
第2項その期間内にした発明の実施行為、および第2項各号の行為(生産・使用に用いる物の生産等や、譲渡等・輸出のための所持。第101条の要件に限定しない)

〔表7〕第112条の3の内容(要旨)。第48条の3第8項(審査請求の回復時の通常実施権)や第176条(再審により回復した特許権の効力の制限)と比較して覚える。

5. 第109条・第109条の2 ― 減免・猶予(概観)

条文内容(要旨)
第109条特許庁長官は、資力を考慮して政令で定める要件に該当する者が特許料を納付することが困難であるときは、特許料を軽減・免除または猶予できる(対象年分等は政令)
第109条の2中小企業等(政令で定める者)の特許料の軽減・免除・猶予

〔表8〕減免・猶予の概観。第109条・第109条の2は減免・猶予の授権規定。現行の施行令第9〜12条では、生活保護受給者・市町村民税非課税者は第1〜3年分免除と第4〜10年分半額、所定の低所得者等は第1〜10年分半額、中小企業等は類型により第1〜10年分の半額・3分の2・4分の3軽減を定める。支配関係等の個別要件と申請が必要。根拠:特許庁・減免制度、特許法施行令第9〜12条。

6. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「1〜3年分の納付期限(30日)と延長(30日)」「追納期間(6月)」「割増が不要な場合」「消滅の時点(第4項・第5項・第6項)」「回復の要件(故意でない)」「回復前の実施品への効力」「利害関係人による納付(第110条)」〔表2〕〔表3〕〔表5〕〔表7〕
論文式納付を怠ったタイムラインで、権利の消滅時点・回復の可否・第三者の実施の扱いを論じさせる【図3】【図4】
口述「特許料の追納ができる期間は」「追納しなかった場合の効果は」第112条第1項・第4項

〔表9〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。第110条(利害関係人による納付)・第111条(既納の特許料の返還)は本記事では扱っていません。

過去問との対応:令和8年度短答式試験について、問6の肢4は実用新案登録料の返還に関する関連問題です。特許料と実用新案登録料は、各法の返還要件を分けて考えます。問6の正解番号は3です。 出典:公式問題・特許/実用新案の部、公式正解。公式正解は問題単位の番号です。個々の肢の論点説明は条文との照合によります。
レベル3のまとめ
  • 1〜3年分:査定謄本送達から30日以内に一時納付(延長30日、救済14日/2月/6月)。4年目以降:前年以前。
  • 追納:期間経過後6月以内、割増同額(責めに帰することができない理由なら不要)。追納なしなら、4年目以降分は期間経過時にさかのぼって消滅、延長分は延長前の満了年の経過時に消滅、猶予分は初めから不存在。
  • 回復:故意でなければ省令期間内に追納で回復。回復前(追納期間経過後〜回復登録前)の実施品・実施行為には効力が及ばない(第112条の3)。

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