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小学生でも分かる特許法|特許法第126条 訂正審判 ― 特許になった後で、自分の特許を「小さく直す」手続

小学生でもわかる特許法:訂正審判(特許法第126条)

小学生でも分かる特許法 / D. 審判・訴訟 #43

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特許になった後、特許権者が明細書・特許請求の範囲・図面を直したいときの手続が訂正審判です。ただし、直せるのは「範囲をせばめる」「誤記を正す」など4つの目的に限られ、新しい内容を足したり、権利を広げたりすることはできません。無効審判に対する防御手段としても重要です。

条文:特許法第126条、第128条関連:第134条の2(訂正の請求)、第120条の5(異議申立てでの訂正)、第123条第1項第8号、第17条の2参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

賞状をもらった後で直したい

特許は「この範囲の発明を独占していいですよ」という賞状のようなものです。もらった後で「範囲の書き方に間違いがあった」「この部分は先行技術とかぶっていて、無効にされそうだ」と気づくことがあります。

そんなとき、特許権者は訂正審判を請求して、賞状の中身を直すことができます。ただし、直せるのはせばめる方向だけです。範囲を広げたり、新しい発明を足したりすることはできません。すでに世の中に公開され、みんながその範囲を前提に行動しているからです。

訂正前の特許請求の範囲 訂正後 せばめる → OK 減縮・誤記訂正・釈明 訂正前 広げる → NG 拡張・変更・新規事項は不可

【図1】訂正の方向。せばめるのはよいが、広げる・変えるのはダメ。

レベル1のまとめ
  • 特許権者は、特許になった後でも訂正審判で明細書等を直せる。
  • 直せるのは、範囲をせばめる・誤記を正す・不明りょうな記載をはっきりさせる、など。広げることはできない。

※請求できる時期、請求項ごとの単位、直した後も特許要件を満たす必要があること、などは正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

特許法第126条第1項(原文)特許権者は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすることについて訂正審判を請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 特許請求の範囲の減縮
二 誤記又は誤訳の訂正
三 明瞭でない記載の釈明
四 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
項役割内容(要旨)
第1項だれが・何を・目的特許権者が、明細書・特許請求の範囲・図面の訂正を請求。目的は①減縮、②誤記・誤訳の訂正、③明りょうでない記載の釈明、④引用請求項を独立形式にすること、の4つに限る
第2項時期の制限特許異議の申立て・特許無効審判が特許庁に係属した時から、その決定・審決が確定するまでは、請求できない(その間は手続内の「訂正の請求」による)
第3項単位2以上の請求項に係る場合は請求項ごとに請求できる。ただし一群の請求項があるときはその一群ごと
第4項単位(明細書・図面)明細書・図面の訂正を請求項ごとにする場合は、関係する全請求項について行う
第5項範囲①新規事項願書に添付した明細書等(誤記・誤訳の訂正なら当初明細書等、外国語書面出願なら外国語書面)に記載した事項の範囲内
第6項範囲②拡張・変更禁止実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものであってはならない
第7項独立特許要件減縮(第1号)・誤記誤訳訂正(第2号)を目的とする訂正は、訂正後の発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものでなければならない
第8項消滅後特許権の消滅後も請求できる。ただし取消決定・無効審決により取り消され・無効にされた後は不可

〔表1〕第126条の項ごとの内容(e-Gov、2026年9月参照。第2項〜第4項は要旨)。

flowchart TB
  A["訂正審判の請求(特許権者)"] --> B{"異議申立て・無効審判が係属中か(第2項)"}
  B -- "係属中" --> X["請求できない → その手続内で訂正の請求(第120条の5・第134条の2)"]
  B -- "係属していない" --> C{"目的は4つのいずれかか(第1項ただし書)"}
  C -- "いいえ" --> N1["訂正不可"]
  C -- "はい" --> D{"明細書等の範囲内か(第5項)
実質上の拡張・変更でないか(第6項)"} D -- "いいえ" --> N2["訂正不可"] D -- "はい" --> E{"減縮・誤記誤訳訂正なら
独立特許要件を満たすか(第7項)"} E -- "いいえ" --> N3["訂正不可"] E -- "はい" --> OK["訂正を認める審決 → 確定で訂正後の内容で出願・査定・登録がされたものとみなす(第128条)"] style OK fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style N1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N3 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style X fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F

【図2】訂正審判の要件の分岐図。

特許法第128条(原文)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすべき旨の審決が確定したときは、その訂正後における明細書、特許請求の範囲又は図面により特許出願、出願公開、特許をすべき旨の査定又は審決及び特許権の設定の登録がされたものとみなす。
レベル2のまとめ
  • 訂正の目的は4つ(減縮/誤記・誤訳の訂正/釈明/引用形式の解消)。範囲内(第5項)、拡張・変更禁止(第6項)、減縮等は独立特許要件(第7項)。
  • 異議・無効審判係属中は訂正審判不可(第2項)。消滅後も可、ただし取消・無効後は不可(第8項)。
  • 訂正審決の確定で、訂正後の内容で出願・登録されたものとみなす(第128条:遡及効)。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 補正(第17条の2)との比較

補正(第17条の2)訂正(第126条)
時期特許査定の謄本送達前(審査・審判段階)特許権の設定登録後(消滅後も可)
だれが特許出願人特許権者
新規事項の基準当初明細書等(第3項)願書に添付した明細書等=特許時の明細書等。誤記・誤訳の訂正のみ当初明細書等(第5項)
目的の制限最後の拒絶理由通知後等のみ4目的(第5項)常に4目的(第1項ただし書)
拡張・変更「特許請求の範囲の減縮」等に限る場面あり実質上の拡張・変更は常に禁止(第6項)
独立特許要件限定的減縮のとき(第6項)減縮・誤記誤訳訂正のとき(第7項)
効果出願時にさかのぼって補正後の内容出願・公開・査定・登録が訂正後の内容でされたものとみなす(第128条)

〔表2〕補正と訂正の比較。第5項の「願書に添付した」が「最初に添付した」でない点(誤記誤訳訂正を除く)に注意。

2. 訂正審判・訂正の請求(無効審判内)・訂正の請求(異議申立て内)

訂正審判(第126条)無効審判内の訂正の請求(第134条の2)異議申立て内の訂正の請求(第120条の5第2項)
時期第126条第2項の禁止期間外(異議申立て・無効審判請求から決定・審決確定までを除き、取消訴訟係属中も不可)答弁書提出期間等、審判長が指定した期間内取消理由通知の指定期間内
目的・範囲・独立特許要件第126条第1項ただし書・第5項〜第7項目的は第134条の2第1項ただし書に規定。範囲等は第126条第5〜7項を準用(第134条の2第9項)。ただし独立特許要件は無効審判の請求対象でない請求項についてのみ同様に準用(第120条の5第9項)
審理訂正審判として審理無効審判の中で審理異議申立ての中で審理

〔表3〕3つの訂正手続の比較。第134条の2・第120条の5の準用関係と読み替えは各記事・条文で確認。

第134条の2第9項・第120条の5第9項は第126条第7項を読み替えます。独立特許要件が適用されるのは、無効審判・異議の対象でない請求項についての減縮又は誤記誤訳訂正です。対象請求項の有効性は、その無効審判・異議の手続で判断します。第126条第7項・第134条の2第9項・第120条の5第9項。

3. 「一群の請求項」(第3項)

平成23年改正で、訂正審判は請求項ごとに請求できるようになりました。ただし、ある請求項を引用する請求項がある場合など、訂正の影響が及ぶ請求項のまとまり(一群の請求項)については、その一群ごとに請求しなければなりません(第3項後段)。

現行法の「一群の請求項」の定義は第120条の5第4項にあり、第126条第3項後段が訂正審判での一群ごとの請求を定めています。引用関係等にある請求項を別々に確定させると矛盾が生じるため、一体として扱います。平成23年改正解説では第5章「審決の確定の範囲等に係る規定の整備」の事項です。第120条の5第4項・第126条第3項/改正解説の章立て。

4. 第123条第1項第8号 ― 訂正要件違反は無効理由

第126条第1項ただし書・第5項〜第7項(訂正の請求で準用される場合を含む)に違反した訂正は、無効理由になります(第123条第1項第8号)。訂正審判で認められても、後から無効審判で争えるということです。

5. 訂正の遡及効(第128条)と侵害訴訟

訂正審決が確定すると、訂正後の内容で出願・登録がされたものとみなされます。侵害訴訟の判決確定後に訂正審決が確定した場合の再審の制限(第104条の4)は、権利行使の制限の記事で扱います。

6. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「無効審判係属中に訂正審判を請求できるか」「特許権消滅後の訂正審判」「無効にされた後の訂正審判」「誤記の訂正の範囲の基準(当初明細書等)」「釈明に独立特許要件はかかるか(かからない)」「一群の請求項」〔表1〕〔表2〕
論文式無効審判を請求された特許権者の対応(訂正の請求)と、訂正の要件の当てはめ【図2】〔表3〕
口述「訂正審判の目的を4つ挙げよ」「訂正審決確定の効果は」第126条第1項各号、第128条

〔表4〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

問8の肢3は、訂正審判の訂正拒絶理由通知期間内に補正できる書類を問います。願書の原本と訂正審判請求書に添付した訂正書類を区別します。問18(ホ)は、次の訂正請求の基準が先の訂正書類に当然切り替わるかという論点で、第120条の5第9項が準用する第126条第5項との関係です。 公式正解番号:問8=1、問18=5。 公式問題/公式正解。
レベル3のまとめ
  • 訂正の4目的+範囲内+拡張変更禁止+独立特許要件(減縮・誤記誤訳のみ)。新規事項の基準は特許時の明細書等(誤記誤訳は当初)。
  • 異議・無効審判係属中は訂正審判不可(手続内の訂正の請求へ)。消滅後は可、取消・無効後は不可。
  • 訂正要件違反は無効理由(第123条第1項第8号)。訂正審決確定は遡及(第128条)。

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