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小学生でも分かる特許法|特許法第178条・第181条 審決取消訴訟・審決の取消し ― 特許庁の結論に納得できなければ、裁判所へ

小学生でもわかる特許法:審決取消訴訟(特許法第178条・第181条)

小学生でも分かる特許法 / D. 審判・訴訟 #50

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審判の結論(審決)に不服があれば、裁判所に訴えることができます。管轄は東京高等裁判所(知的財産高等裁判所)、期間は審決謄本の送達から30日。裁判所が審決を取り消せば、特許庁はもう一度審理をやり直します。第178条が「訴え方」、第181条が「取り消された後」を定めています。

条文:特許法第178条、第179条、第181条関連:第157条、第167条、第104条の4、行政事件訴訟法第33条、知的財産高等裁判所設置法参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

審判の次は裁判

特許庁の審判で「拒絶」「無効」「訂正を認めない」と言われても、まだ終わりではありません。「特許庁の判断はまちがっている」と思えば、裁判所に訴えることができます。これが審決取消訴訟です。

ただし、どの裁判所でもいいわけではありません。特許は専門的なので、東京高等裁判所の中の知的財産高等裁判所だけが担当します。そして、審決の書類(謄本)が届いてから30日以内に訴えなければなりません。

特許庁の審決 拒絶・無効・不成立… 30日以内 知的財産高等裁判所 審決取消訴訟 審決が違法か審理 (さらに最高裁へ上告も) 審決を取り消す 請求棄却(確定は別) 取消判決が確定したら特許庁が再び審理(第181条第2項)

【図1】審決取消訴訟の流れ。裁判所は審決を取り消すだけで、自分で特許にしたり無効にしたりはしない。

裁判所は「やり直し」を命じるだけ

裁判所が「審決はまちがっている」と判断しても、裁判所自身が「特許にします」と決めるのではありません。審決を取り消して、特許庁に「もう一度審理しなさい」と戻します。特許庁は、裁判所の判断に従ってやり直します。

レベル1のまとめ
  • 審決に不服なら、審決謄本の送達から30日以内に知的財産高等裁判所に訴える(審決取消訴訟)。
  • 裁判所は審決を取り消すだけで、特許庁がやり直す。特許庁は裁判所の判断に拘束される。

※誰が原告・被告になるか、どの範囲を審理するか、拘束力の意味などは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

特許法第178条(原文)1 取消決定又は審決に対する訴え及び特許異議申立書、審判若しくは再審の請求書又は第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正の請求書の却下の決定に対する訴えは、東京高等裁判所の専属管轄とする。
2 前項の訴えは、当事者、参加人又は当該特許異議の申立てについての審理、審判若しくは再審に参加を申請してその申請を拒否された者に限り、提起することができる。
3 第一項の訴えは、審決又は決定の謄本の送達があつた日から三十日を経過した後は、提起することができない。
4 前項の期間は、不変期間とする。
5 審判長は、遠隔又は交通不便の地にある者のため、職権で、前項の不変期間については附加期間を定めることができる。
6 審判を請求することができる事項に関する訴えは、審決に対するものでなければ、提起することができない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
特許法第179条(原文)前条第一項の訴えにおいては、特許庁長官を被告としなければならない。ただし、特許無効審判若しくは延長登録無効審判又はこれらの審判の確定審決に対する第百七十一条第一項の再審の審決に対するものにあつては、その審判又は再審の請求人又は被請求人を被告としなければならない。
特許法第181条(原文)1 裁判所は、第百七十八条第一項の訴えの提起があつた場合において、当該請求を理由があると認めるときは、当該審決又は決定を取り消さなければならない。
2 審判官は、前項の規定による審決又は決定の取消しの判決が確定したときは、更に審理を行い、審決又は決定をしなければならない。
要素内容根拠
対象取消決定(異議申立て)、審決、各種請求書・訂正請求書の却下の決定第178条第1項
管轄東京高等裁判所の専属管轄(知的財産高等裁判所が取り扱う)第178条第1項、知的財産高等裁判所設置法第2条
原告当事者、参加人、参加を拒否された者第178条第2項
被告原則:特許庁長官。無効審判・延長登録無効審判(とその再審):審判の相手方(請求人または被請求人)第179条
出訴期間審決・決定の謄本送達から30日(不変期間。遠隔地等には附加期間)第178条第3項〜第5項
審決前置審判を請求できる事項は、審決を経なければ訴えられない第178条第6項
判決請求に理由があれば審決・決定を取り消す(裁判所は自判しない)第181条第1項
取消判決確定後審判官は更に審理して審決・決定をする第181条第2項

〔表1〕審決取消訴訟の骨格。

flowchart TB
  A["審決・決定の謄本の送達"] --> B{"30日以内に訴え(第178条第3項)"}
  B -- "しない" --> C["審決確定 → 無効審決なら第125条、一事不再理(第167条)"]
  B -- "した" --> D{"どの審決か"}
  D -- "査定系(拒絶査定不服・訂正審判・異議の取消決定)" --> E["被告:特許庁長官(第179条本文)"]
  D -- "当事者系(無効審判・延長登録無効審判)" --> F["被告:審判の相手方(第179条ただし書)"]
  E --> G["知財高裁の審理"]
  F --> G
  G --> H{"判決"}
  H -- "請求棄却" --> I["棄却判決の確定後、審決確定"]
  H -- "審決取消し(第181条第1項)" --> J["確定後、審判官が更に審理して審決(第181条第2項)
判決の判断に拘束される(行政事件訴訟法第33条)"] style J fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

【図2】審決取消訴訟の分岐図。

レベル2のまとめ
  • 管轄は東京高裁(知財高裁)、原告は当事者・参加人等、被告は原則特許庁長官(無効審判等は相手方)、期間は30日(不変期間)。
  • 裁判所は審決を取り消すのみ。取消判決確定後、審判官は更に審理して審決する。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 査定系と当事者系の違い

査定系(拒絶査定不服・訂正・異議)当事者系(無効・延長登録無効)
被告特許庁長官審判の相手方(請求人または被請求人)
訴訟の性格行政処分の取消訴訟(抗告訴訟)形式的当事者訴訟に近い(当事者間で争う)
特許庁の関与被告として主張立証特許庁長官は裁判所の許可を得て意見を述べることができ、裁判所は意見を求めることができる(第180条の2)
共有の場合拒絶査定不服・訂正では全員提起が原則。異議の取消決定は共有者1人でも提起可(最高裁2002年3月25日)無効審決に対する取消訴訟は、共有権の消滅を防ぐため共有者の一人でも提起できる。2002年3月25日判決の直接の対象は左欄の異議取消決定

〔表2〕査定系と当事者系の比較。第180条は長官への出訴通知等、第180条の2は意見の求め・陳述。長官を訴訟当事者として参加させる制度とは異なる。

2. 審理範囲 ― 「審決で判断されなかった理由」は主張できない

最高裁昭和51年3月10日大法廷判決〔メリヤス編機事件〕は、審決取消訴訟の審理範囲について、審判で審理判断されなかった無効理由(公知事実)を訴訟で主張することは許されない、と判示しました(要旨)。審決取消訴訟は「審決の当否」を審理する場であり、新たな無効理由を持ち込む場ではない、という考え方です。

メリヤス編機事件(最高裁大法廷1976年3月10日、昭和42年(行ツ)第28号)は、審判で審理判断されなかった公知事実との対比による無効原因を、審決取消訴訟で新たに主張することはできないとしました。同じ無効原因についての立証の補充まで一律に禁ずるという意味ではありません。最高裁判決。

3. 取消判決の拘束力(行政事件訴訟法第33条)

論点内容
拘束力の根拠行政事件訴訟法第33条第1項(取消判決は関係行政庁を拘束する)。第181条第2項の「更に審理」はこの拘束の下で行う
拘束される範囲判決の理由中の判断(審決取消しの理由となった判断)。最高裁平成4年4月28日判決〔高速旋回式バレル研磨法事件〕は、審判官は同一の引用例から同一の発明を認定して同じ結論に至ることはできない、と判示(要旨)
新たな理由拘束力の及ばない別の理由(別の引用例等)で同じ結論の審決をすることは可能

〔表3〕取消判決の拘束力。最高裁1992年4月28日・昭和63年(行ツ)第10号判決(理由三)は、取消判決の主文に必要な事実認定・法律判断に拘束力が及ぶとする。

4. 訴訟提起後の訂正審判の制限と「審決の予告」

かつては、無効審決の取消訴訟中に訂正審判を請求して審決を取り消させる「キャッチボール」が問題でした。平成23年改正で、①審判段階で審決の予告(第164条の2)により訂正の請求の機会を与え、②訴訟提起後は訂正審判を請求できないこととし(第126条第2項)、③侵害訴訟の判決確定後の訂正審決等による再審を制限しました(第104条の4)。

5. 期間の計算と附加期間

論点内容
起算日審決・決定の謄本の送達があった日。初日不算入(行政事件訴訟法第7条・民事訴訟法第95条・民法第140条)
不変期間裁判所が伸縮できない期間。ただし審判長が職権で附加期間を定めることができる(第178条第5項)
在外者附加期間の対象になりうる(運用上、在外者には附加期間を付与)

〔表4〕期間の論点。出訴期間の計算は行政訴訟の手続規定による。特許庁への手続の期間計算と区別する。

6. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「管轄裁判所」「出訴期間(30日)と不変期間」「無効審判の審決取消訴訟の被告」「特許庁長官の意見陳述」「共有者の一人による提起」「訂正請求書の却下決定に対する訴え」「拒絶査定に対して直接訴えられるか(不可:審決前置)」〔表1〕〔表2〕
論文式審決取消訴訟の審理範囲(メリヤス編機事件)と取消判決の拘束力を論じさせる〔表3〕
口述「審決取消訴訟の管轄と出訴期間は」「被告は誰か」第178条、第179条

〔表5〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

問14(ロ)は取消し後の審理、同(ハ)は取消訴訟の対象請求項、同(ニ)は長官が訴訟当事者として参加することと意見陳述の区別、問18(ハ)は取消決定・維持決定への不服が論点です。 公式正解番号:問14=4、問18=5。 公式問題/公式正解。
レベル3のまとめ
  • 東京高裁(知財高裁)専属管轄、30日の不変期間、審決前置。被告は特許庁長官(無効審判等は相手方)。
  • 審理範囲は審決で判断された理由に限る(メリヤス編機事件)。取消判決の拘束力により、審判官は同じ理由で同じ結論に戻れない。
  • 平成23年改正で審決の予告・訂正審判の制限・再審制限を導入し、キャッチボールを防止。

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