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小学生でも分かる特許法|特許法第131条〜第134条 審判の請求・請求書の補正・答弁 ― 審判はどう始まり、どう反論するか

小学生でもわかる特許法:審判請求・補正・答弁(特許法第131条〜第134条)

小学生でも分かる特許法 / D. 審判・訴訟 #45

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審判は「審判請求書」を出すところから始まります。請求書に何を書くか(第131条)、後から書き直せるか(第131条の2)、複数人で・共有者に対してどう請求するか(第132条)、不備があったらどうなるか(第133条・第133条の2)、相手はどう反論するか(第134条)。審判手続の入口をまとめて扱います。

条文:特許法第131条、第131条の2、第132条、第133条、第133条の2、第134条関連:第123条、第134条の2、第135条参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

審判は「手紙」から始まる

審判を起こしたい人は、特許庁に審判請求書という手紙を出します。「誰が」「どの特許について」「何を求めるのか」「なぜか」を書きます。特許無効審判なら、「この特許は、この証拠のこの部分から見て、こういう理由で無効だ」と具体的に書かなければなりません。

相手(特許権者)には、その手紙のコピーが送られ、「反論があれば書いてください」と期間が指定されます。相手が出す反論の手紙が答弁書です。

請求人 審判請求書を提出 特許庁(審判長) 不備があれば補正命令 請求書の副本を相手に送達 答弁書の副本を請求人に送達 被請求人 答弁書を提出 答弁書の副本が請求人へ

【図1】審判の開始と答弁の流れ(当事者系審判の場合)。

手紙の中身は、後から大きく変えられない

いったん出した請求書の「理由」を、後からまったく別の理由に書き換えることは、原則としてできません。相手が反論の準備をしているのに、途中で攻め方を変えられたら不公平だからです。ただし、相手が特許の内容を訂正したときなどには、審判長の許可を得て理由を変えられます。

レベル1のまとめ
  • 審判は請求書の提出から始まり、相手には副本が送られて答弁の機会が与えられる。
  • 請求書の「理由」は後から大きく変えられない(要旨変更の禁止)。例外的に審判長の許可で変えられる。

※請求書に書くべき事項、共有者が請求する場合、不備の場合の却下、補正許可の要件などは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第131条 ― 審判請求書の記載事項

特許法第131条(原文)1 審判を請求する者は、次に掲げる事項を記載した請求書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 当事者及び代理人の氏名又は名称及び住所又は居所 二 審判事件の表示 三 請求の趣旨及びその理由
2 特許無効審判を請求する場合における前項第三号に掲げる請求の理由は、特許を無効にする根拠となる事実を具体的に特定し、かつ、立証を要する事実ごとに証拠との関係を記載したものでなければならない。
3 訂正審判を請求する場合における第一項第三号に掲げる請求の趣旨及びその理由は、経済産業省令で定めるところにより記載したものでなければならない。
4 訂正審判を請求するときは、請求書に訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面を添付しなければならない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。

第131条の2 ― 請求書の補正(要旨変更の禁止)

項内容(要旨)
第1項本文請求書の補正は、その要旨を変更するものであってはならない
第1項ただし書 第1号例外①:特許無効審判以外の審判における「請求の理由」の補正
第1項ただし書 第2号例外②:第2項の審判長の許可があった補正
第1項ただし書 第3号例外③:第133条第1項の補正命令を受けた事項についての補正
第2項審判長は、特許無効審判の請求の理由の補正が要旨を変更するものでも、審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかで、次のいずれかに該当するときは許可できる:①訂正の請求により請求の理由を補正する必要が生じた、②請求時に記載しなかったことに合理的な理由があり、被請求人が同意した
第3項請求書の副本の送達前に提出された手続補正書については、第2項の許可はできない。送達前でも要旨変更禁止が原則
第4項許可の決定・不作為には不服申立てできない

〔表1〕第131条の2の整理(e-Gov、2026年9月参照。第2項の許可は「不当に遅延させるおそれがないことが明らか」が共通要件)。

flowchart TB
  A["請求書を補正したい"] --> B{"要旨を変更するか"}
  B -- "しない" --> OK["補正できる"]
  B -- "する" --> C{"どの審判か"}
  C -- "無効審判以外(訂正審判・拒絶査定不服審判等)" --> D{"補正するのは『請求の理由』か"}
  D -- "はい" --> OK2["補正できる(第1号)"]
  D -- "いいえ(請求の趣旨など)" --> NG["補正できない"]
  C -- "特許無効審判" --> E{"副本送達前か"}
  E -- "送達前" --> OK3["第2項の許可は不可。要旨変更禁止が原則"]
  E -- "送達後" --> F{"不当な遅延のおそれなし+審判長の許可(第2項)
①訂正対応/②合理的理由+同意"} F -- "許可あり" --> OK4["補正できる(第2号)"] F -- "許可なし" --> NG A --> G["補正命令を受けた事項(第3号)→ 補正できる"] style OK fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style OK2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style OK3 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style OK4 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style NG fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

【図2】請求書の補正の分岐図。

第132条 ― 共同審判

特許法第132条(原文)1 同一の特許権について特許無効審判又は延長登録無効審判を請求する者が二人以上あるときは、これらの者は、共同して審判を請求することができる。
2 共有に係る特許権について特許権者に対し審判を請求するときは、共有者の全員を被請求人として請求しなければならない。
3 特許権又は特許を受ける権利の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するときは、共有者の全員が共同して請求しなければならない。
4 第一項若しくは前項の規定により審判を請求した者又は第二項の規定により審判を請求された者の一人について、審判手続の中断又は中止の原因があるときは、その中断又は中止は、全員についてその効力を生ずる。
項場面「できる」か「しなければならない」か
第1項複数の請求人が同一特許権に無効審判等を請求共同して請求できる(任意)
第2項共有特許権に対する請求共有者全員を被請求人としなければならない(必要)
第3項共有者が自己の共有権利について請求(訂正審判・拒絶査定不服審判など)全員が共同して請求しなければならない(必要)
第4項中断・中止一人に事由があれば全員に効力

〔表2〕第132条の整理。「できる」(第1項)と「しなければならない」(第2項・第3項)の区別が頻出。

第133条・第133条の2 ― 補正命令と却下

条・項内容(要旨)対象
第133条第1項請求書が第131条に違反しているときは、審判長は期間を指定して補正を命じなければならない請求書の記載不備
第133条第2項手続が方式(第7条第1項〜第3項・第9条、法令の方式、手数料)に違反しているときは、補正を命ずることができる方式違反
第133条第3項指定期間内に補正しない、または補正が第131条の2第1項(要旨変更禁止)に違反するときは、決定でその手続を却下できる補正命令への不応答等
第133条の2第1項審判事件に係る手続(審判の請求を除く)で、不適法で補正できないものは、決定で却下できる請求以外の手続
第133条の2第2項・第3項却下前に理由を通知し弁明書提出の機会を与える。決定は文書・理由付記
(参考)第135条不適法な審判の請求で補正できないものは、答弁書提出の機会を与えずに審決で却下できる審判の請求

〔表3〕補正命令と却下の整理。「決定で却下」(第133条第3項・第133条の2)と「審決で却下」(第135条)の違い。第135条は職権審理・審決の記事で扱う。

第134条 ― 答弁書

項内容(要旨)
第1項審判長は、請求があったときは請求書の副本を被請求人に送達し、相当の期間を指定して答弁書を提出する機会を与えなければならない
第2項請求書の補正を許可したときは、その副本を被請求人に送達し答弁の機会を与える(特別の事情があるときを除く)
第3項答弁書を受理したときは、その副本を請求人に送達する
第4項審判長は当事者・参加人を審尋できる

〔表4〕第134条(要旨)。

レベル2のまとめ
  • 請求書には当事者・事件の表示・請求の趣旨と理由。無効審判では理由を事実・証拠ごとに具体的に(第131条第2項)。
  • 要旨変更は禁止。無効審判以外の「理由」、審判長の許可、補正命令事項は例外(第131条の2)。
  • 共同請求は任意、共有者への請求・共有者からの請求は全員(第132条)。不備は補正命令→決定却下(第133条)。答弁書の機会は必須(第134条)。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 第131条第2項 ― 無効審判の請求理由の特定

平成15年改正で、無効審判の請求理由は「無効にする根拠となる事実を具体的に特定し、かつ、立証を要する事実ごとに証拠との関係を記載」することが要求されました。これと第131条の2の要旨変更禁止がセットになって、「最初に主張を出し切らせ、後出しを防ぐ」構造になっています。

平成15年改正では、無効審判の請求理由について、無効の根拠事実を具体的に特定し、証拠との関係を記載する規律を整えました。他方、訂正に対応する必要がある場合等には、不当な遅延のおそれがないことが明らかであることを前提に、理由の要旨変更を例外的に許可できるようにしました。副本送達前の手続補正書には第2項の許可をできず、「送達前なら自由」ではありません。第131条第2項・第131条の2/特許庁・青本第22版(第131条・第131条の2)。

2. 「要旨の変更」とは

補正の内容要旨変更か(一般的整理)
新たな無効理由(条文)の追加要旨変更
新たな証拠(主引用例)の追加による新規性・進歩性主張要旨変更(許可がなければ不可)
既に提出した証拠の補強、周知技術の立証のための証拠追加要旨変更でないとされることが多い
誤記の訂正、当事者の表示の補正要旨変更でない
請求の趣旨の変更(対象請求項の追加)要旨変更(新たな請求として扱う)

〔表5〕要旨変更の該当性(審判便覧・裁判例の一般的整理)。要旨変更かは補正前後の請求理由の同一性で判断する。新たな無効理由や主要証拠の追加と、誤記訂正・補充説明とを区別する。

3. 補正許可(第131条の2第2項)の2類型

flowchart LR
  A["無効審判の請求理由を要旨変更したい(副本送達後)"] --> B{"審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかか"}
  B -- "いいえ" --> N["許可されない"]
  B -- "はい" --> C{"理由は?"}
  C -- "①被請求人の訂正の請求により、理由を補正する必要が生じた" --> Y1["許可できる"]
  C -- "②請求時に記載しなかったことに合理的理由があり、被請求人が同意" --> Y2["許可できる"]
  C -- "それ以外" --> N
  style Y1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style Y2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style N fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

【図3】補正許可の要件。許可・不許可には不服申立てできない(第4項)。

4. 却下の3類型

類型根拠対象形式手続保障
補正命令不応答・要旨変更補正第133条第3項請求書その他の手続決定補正命令が先行
不適法で補正不能な手続(請求を除く)第133条の2審判の請求以外の手続(参加申請、証拠申出など)決定(文書・理由付記)弁明書提出の機会
不適法で補正不能な審判の請求第135条審判の請求そのもの(請求人適格なし、期間徒過など)審決答弁書提出の機会を与えずにできる

〔表6〕却下の3類型。第135条は、補正できない不適法な請求を、答弁の機会を与えず審決で却下できると定める。

5. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「訂正審判の請求理由の要旨変更は可か(可)」「無効審判の請求理由の要旨変更を許可できる場合」「副本送達前の補正」「許可の決定に不服申立てできるか(不可)」「共有者の一人に対する無効審判請求」「答弁書提出の機会を与えずに却下できる場合」〔表1〕〔表2〕〔表6〕【図2】
論文式無効審判の手続の流れを、請求人・被請求人・審判長の行為ごとに時系列で書かせる【図1】
口述「審判請求書の記載事項は」「要旨変更が許される場合は」第131条第1項、第131条の2第1項ただし書

〔表7〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

問14(ホ)は営業秘密を記載した答弁書の閲覧、問15(ロ)は前置審査で審査官が審判請求書の補正命令をできるか、問20(ロ)は副本送達前の要旨変更補正の許可が論点です。 公式正解番号:問14=4、問15=2、問20=2。 公式問題/公式正解。
レベル3のまとめ
  • 無効審判の請求理由は事実・証拠ごとに具体的に(第131条第2項)。要旨変更は禁止、例外は無効審判以外の理由/審判長の許可(訂正対応・合理的理由+同意)/補正命令事項。
  • 共同請求は任意、共有者関係は全員必須(第132条)。中断・中止は全員に及ぶ。
  • 却下は「決定」(第133条第3項・第133条の2)と「審決」(第135条)を区別。答弁書の機会は原則必須(第134条)。

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