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小学生でも分かる実用新案法|実用新案法第6条の2・第2条の2・第2条の3 基礎的要件審査・補正命令・手続の却下 ― 「テストなし」で登録される無審査登録制度のしくみ

小学生でもわかる実用新案法:基礎的要件審査(6条の2)

小学生でも分かる実用新案法 / B. 出願・登録・評価の手続 #9

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実用新案は、特許とちがって「新しいか」「かんたんに思いつくか」という中身のテスト(実体審査)をしないで登録されます。そのかわり、「保護できるものか」「書類の体をなしているか」という最低限のチェック(基礎的要件の審査)だけをして、足りなければ「直しなさい」(補正命令)、直さなければ「受け付けません」(却下)となります。この記事は、実用新案法の一番の特徴である「無審査登録制度」の入口を、第6条の2・第2条の2・第2条の3の3つの条文でつかむ記事です。

条文:実用新案法第6条の2、第2条の2、第2条の3関連:実用新案法第3条第1項柱書、第4条、第5条第6項第4号、第6条、第12条、第14条の3、第37条第1項第1号/特許法第17条の2第3項参照時点:2026年9月

目次

LEVEL 1イメージでつかむ

特許は「入学テストあり」、実用新案は「テストなしで合格証」

特許をとるには、特許庁の審査官が「この発明は本当に新しいか」「だれでもかんたんに思いつくものではないか」をきびしく調べます。合格するまでに何年もかかることもあります。

ところが実用新案は、この中身のテストをしません。書類をきちんと出して、最低限のチェックに通れば、すぐに「合格証」(登録)がもらえます。これを無審査登録制度(むしんさとうろくせいど)といいます。特許庁の入門テキストも、実用新案制度は「早期権利付与の観点から形式的な審査のみを行う無審査主義を採用」していると説明しています。

特許(入学テストあり) 実用新案(テストなし) ① 出願 ① 出願(登録料もいっしょに払う) ② 中身のテスト(実体審査) 新しい? かんたんに思いつかない? ② 最低限のチェック(基礎的要件) 守れる物か? 書類の体をなしているか? ③ 査定(合格・不合格を決める) ✕ ③ 査定はない ④ 特許査定・納付後に登録 ④ 設定登録 → 実用新案権 凡例 特許の段階 実用新案の段階 ✕=その段階がない ①〜④=段の番号。左右の同じ番号どうしが対応する段です。

図は左右にスクロールできます。

【図1】特許と実用新案の「入口」の違い。左右の①〜④は対応する段で、実用新案には③の査定がない。特許は中身のテスト(実体審査)に合格してから権利になるが、実用新案は最低限のチェック(基礎的要件の審査)だけで登録される。※説明の都合上、特許の出願審査の請求、拒絶理由通知・意見書、実用新案の補正命令・却下は図から省略した(→【図2】【図4】)。(2026年9月時点)

「テストなし」でも、ゼロチェックではない

テストがないといっても、なんでも登録されるわけではありません。たとえば次のようなものは、「直してください」と言われます。

  • 実用新案で守れるのは「物の形・つくり・組み合わせ」だけ。「作り方(方法)」や「薬(化学物質)」は守れない。
  • 人にめいわくをかけるもの、健康に悪いもの(公序良俗に反するもの)はダメ。
  • 書類に書くべきことが書かれていない、読んでもさっぱり分からない書類はダメ。

「直してください」と言われて期限までに直さないと、その出願は受け付けてもらえません(却下)。これが第6条の2(直しなさいという命令)と第2条の3(直さないなら受け付けない)のしくみです。

「あとで実力を調べられる」ことも覚えておこう

テストなしで合格証をもらえるのは便利ですが、そのかわり「本当は新しくなかった」という実用新案も登録されてしまいます。そこで、あとから特許庁に「この実用新案の実力を調べてください」とたのむしくみ(実用新案技術評価。第12条)があります。合格証はすぐもらえるけれど、実力は後から調べられる――これが実用新案のルールです。

レベル1のまとめ

  • 実用新案は、「新しいか」「かんたんに思いつくか」の中身のテスト(実体審査)をしないで登録される(無審査登録制度)。
  • そのかわり、「守れる物か」「書類の体をなしているか」の最低限のチェック(基礎的要件)はある。足りなければ「直しなさい」(補正命令)、直さなければ「受け付けない」(却下)。
  • 合格証はすぐもらえるが、実力(新しさなど)はあとから調べられる(実用新案技術評価)。

※「最低限のチェック」の中身は条文で4つに決まっており、「直す」ときにも守らなければならないルールがあります。正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。


LEVEL 2条文の骨格

3つの条文の役割分担

条文 見出し 役割(要旨)
実用新案法第2条の2 手続の補正 出願人などが自分で手続を直す(補正する)ときのルール。第2項が「最初の明細書等に書いた範囲内で」という新規事項追加の禁止。第4項が方式違反などに対する補正命令。
実用新案法第6条の2 (基礎的要件の)補正命令 4つの基礎的要件のどれかに当てはまるとき、特許庁長官が期間を決めて明細書等の補正を命じることができる。
実用新案法第2条の3 手続の却下 第2条の2第4項・第6条の2・第14条の3の補正命令を受けた者が、指定期間内に補正しないとき、特許庁長官はその手続を却下できる。

〔表1〕3つの条文の役割分担(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。

第6条の2 ― 4つの基礎的要件

実用新案法第6条の2(柱書)特許庁長官は、実用新案登録出願が次の各号の一に該当するときは、相当の期間を指定して、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面について補正をすべきことを命ずることができる。
実用新案法第6条の2第1号その実用新案登録出願に係る考案が物品の形状、構造又は組合せに係るものでないとき。
実用新案法第6条の2第2号その実用新案登録出願に係る考案が第四条の規定により実用新案登録をすることができないものであるとき。
実用新案法第6条の2第3号その実用新案登録出願が第五条第六項第四号又は前条に規定する要件を満たしていないとき。
実用新案法第6条の2第4号その実用新案登録出願の願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲若しくは図面に必要な事項が記載されておらず、又はその記載が著しく不明確であるとき。
号 基礎的要件(通称) 参照される条文 やさしく言うと
第1号 保護対象 (第3条第1項柱書の「物品の形状、構造又は組合せ」) 守れるのは「物の形・つくり・組み合わせ」だけ。方法や化学物質はダメ。
第2号 公序良俗等 実用新案法第4条 公の秩序・善良の風俗・公衆の衛生を害するおそれがある考案はダメ。
第3号 委任省令要件・単一性 実用新案法第5条第6項第4号(経済産業省令で定める記載方法)、第6条(考案の単一性) 請求項の書き方のきまり(番号の付け方など)と、「1つの願書に入れてよい考案のまとまり」のきまり。
第4号 明細書等の著しい記載不備 ― 必要な事項が書かれていない、または読んで一見して分からない。

〔表2〕第6条の2各号と参照条文の対応。「通称」の欄は審査基準 第X部第1章の見出し(2.1〜2.5)に合わせた整理。

実用新案法第4条公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある考案については、第三条第一項の規定にかかわらず、実用新案登録を受けることができない。
実用新案法第6条二以上の考案については、経済産業省令で定める技術的関係を有することにより考案の単一性の要件を満たす一群の考案に該当するときは、一の願書で実用新案登録出願をすることができる。

第2条の3 ― 直さなければ却下

実用新案法第2条の3特許庁長官は、前条第四項、第六条の二又は第十四条の三の規定により手続の補正をすべきことを命じた者がこれらの規定により指定した期間内にその補正をしないときは、その手続を却下することができる。

第2条の3は、3種類の補正命令(第2条の2第4項=方式などの補正命令、第6条の2=基礎的要件の補正命令、第14条の3=訂正に係る補正命令)をまとめて受けています。どの補正命令でも、「指定した期間内に補正しない」→「その手続を却下することができる」という同じ流れです。

flowchart TD
  subgraph LA["レーン:出願人がすること"]
    A["① 実用新案登録出願
出願と同時に第1年から第3年までの
各年分の登録料を納付(第32条第1項)"] HOS["② 指定された期間内に補正をする"] end subgraph LB["レーン:特許庁がすること"] B{"方式審査
第2条の2第4項各号の
いずれにも当たらないか"} C{"基礎的要件の審査
第6条の2第1号〜第4号の
いずれにも当たらないか"} MEI["補正命令(相当の期間を指定)
第2条の2第4項・第6条の2"] end subgraph LC["終端(結論)"] D["○ ③ 設定登録
第14条第2項"] E["実用新案掲載公報の発行
第14条第3項"] G["× 手続の却下
第2条の3"] end A --> B B -->|"はい(不備なし)"| C B -->|"いいえ(不備あり)"| MEI C -->|"はい(いずれにも当たらない)"| D C -->|"いいえ(いずれかに当たる)"| MEI MEI --> HOS HOS --> C MEI -->|"期間内に補正をしないとき"| G D --> E E -.->|"④ 任意"| HYO["実用新案技術評価の請求(任意)
出願中・登録後に何人も請求できる 第12条"] style D fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style G fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style HYO fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
○ 権利が生まれる(設定登録)
× 却下
登録後のしくみ
必須の手続
任意の手続(しなくてもよい)
①〜④手続の順番

【図2】実用新案登録出願から登録までのフロー。分岐は「はい」を下、「いいえ」を右に統一し、主経路を左、例外処理(補正命令・却下)を右に置いた。新規性・進歩性を調べる実体審査の箱はどこにもない。基礎的要件に該当すれば補正命令、期間内に補正しなければ却下。実用新案技術評価の請求(第12条)は任意なので点線で示した。※説明の都合上、第14条の3(訂正に係る補正命令)は登録後の手続のため図から省略した。(2026年9月時点)

特許庁の入門案内は、出願後に方式審査と基礎的要件審査を行い、双方を通過したものが設定登録されると説明しています。図2はこの確認事項を順に並べた模式図であり、審査の処理順を法定したものではありません。なお、技術評価の請求は図の登録後の場面だけでなく、出願中にもできます(第12条第1項)。 特許庁・実用新案出願のいろは 実用新案法第12条

第2条の2 ― 自分で直すときのルール(新規事項の追加禁止)

実用新案法第2条の2第1項実用新案登録出願、請求その他実用新案登録に関する手続(以下単に「手続」という。)をした者は、事件が特許庁に係属している場合に限り、その補正をすることができる。ただし、経済産業省令で定める期間を経過した後は、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲、図面若しくは要約書又は第八条第四項若しくは第十一条第一項において準用する特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第四十三条第一項(第十一条第一項において準用する同法第四十三条の二第二項(第十一条第一項において準用する同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)に規定する書面について補正をすることができない。
実用新案法第2条の2第2項前項本文の規定により明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面について補正をするときは、願書に最初に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
実用新案法第2条の2第3項第一項の規定にかかわらず、第十四条の二第一項の訂正に係る訂正書に添付した訂正した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面については、その補正をすることができない。
実用新案法第2条の2第4項特許庁長官は、次に掲げる場合は、相当の期間を指定して、手続の補正をすべきことを命ずることができる。一 手続が第二条の五第二項において準用する特許法第七条第一項から第三項まで又は第九条の規定に違反しているとき。二 手続がこの法律又はこの法律に基づく命令で定める方式に違反しているとき。三 手続について第三十二条第一項の規定により納付すべき登録料を納付しないとき。四 手続について第五十四条第一項又は第二項の規定により納付すべき手数料を納付しないとき。
実用新案法第2条の2第5項手続の補正(登録料及び手数料の納付を除く。)をするには、手続補正書を提出しなければならない。
項 内容(要旨) ポイント
第1項本文 手続をした者は、事件が特許庁に係属している間に限り補正できる 補正できるのは「係属中」だけ
第1項ただし書 経済産業省令で定める期間を経過した後は、明細書・実用新案登録請求の範囲・図面・要約書・優先権主張書面等の補正はできない 原則として出願日から1月(施行規則第1条。起算点の特則は下記)
第2項 明細書等の補正は、願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でしなければならない 新規事項の追加禁止。違反すると無効理由(第37条第1項第1号)
第3項 第14条の2第1項の訂正に係る訂正書に添付した訂正明細書等は補正できない 登録後の「訂正」の書類は補正の対象外(訂正に係る補正命令は第14条の3)
第4項 行為能力等の違反、方式違反、登録料・手数料の不納付のとき、特許庁長官は期間を指定して補正を命じることができる いわゆる方式審査の補正命令
第5項 補正(登録料・手数料の納付を除く)は手続補正書を提出してする 書面主義

〔表3〕第2条の2の項ごとの整理(要旨)。

自主的な補正の期間は、実用新案法施行規則第1条により原則として出願日から1月です。分割・変更出願の優先権主張書面の補正は現実の当該出願日を起算点とし、第48条の16第4項により実用新案登録出願とみなされた国際出願では所定の決定日から1月です。補正命令に応じる場合は、長官が指定する期間内に補正します。 実用新案法施行規則第1条 実用新案法第2条の2・第6条の2

レベル2のまとめ

  • 第6条の2:4つの基礎的要件(保護対象/公序良俗等/委任省令要件・単一性/明細書等の著しい記載不備)のいずれかに該当すると、特許庁長官は相当の期間を指定して明細書等の補正を命じることができる。
  • 第2条の3:第2条の2第4項・第6条の2・第14条の3の補正命令に対し、指定期間内に補正しないと、その手続は却下されることがある。
  • 第2条の2第2項:明細書等の補正は「願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内」で(新規事項の追加禁止)。違反は無効理由(第37条第1項第1号)。
  • 登録までに新規性・進歩性の実体審査はない(無審査登録制度)。


LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 審査基準 第X部第1章「基礎的要件」の判断枠組み

審査基準 第X部第1章は、「1. 概要」「2. 基礎的要件についての判断(2.1〜2.5)」「3. 基礎的要件違反の場合の取扱い」で構成されています。概要では、実用新案法が「考案の早期権利保護を図る観点から、一定の要件を満たす実用新案登録出願に対して実体審査を経ることなく実用新案権の設定登録をする」体系であること、第6条の2の基礎的要件は「実用新案法の保護対象でない考案について実用新案権が設定されること」や「実質的に出願書類の体をなしていない出願がそのまま登録されること」を防止するために設けられたものであると説明されています。出願が2.1〜2.5のいずれにも該当しない場合に、基礎的要件を満たすと判断されます。

審査基準の節 根拠条文 判断対象・基準(審査基準の要旨)
2.1 保護対象違反 第6条の2第1号(第14条の3第1号) 請求項に係る考案が「考案」(自然法則を利用した技術的思想の創作)でない場合、または「物品の形状、構造又は組合せ」に係るものでない場合。例:方法のカテゴリーの考案、組成物・化学物質、一定の形状を有しない物、動物品種・植物品種、コンピュータプログラム自体。
2.2 公序良俗等違反 第4条、第6条の2第2号(第14条の3第2号) 請求項に係る考案が公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するものであることが明らかな場合。第III部第5章(不特許事由)の基準に準じて判断。
2.3 委任省令要件違反 第6条の2第3号(第14条の3第3号)、第5条第6項第4号、実用新案法施行規則第4条 請求項が行を改め一の番号を付して記載されていない/番号が連続していない/他の請求項の引用が番号によらない/引用する請求項より前に記載されている/択一的引用の多重など、請求項の記載形式の違反。
2.4 考案の単一性違反 第6条、第6条の2第3号(第14条の3第3号) 基本的に第II部第3章(発明の単一性)に準じて判断。ただし基礎的要件の審査では先行技術調査を行わないため、「特別な技術的特徴」は明細書等の記載と出願時の技術常識に基づいて認定する。
2.5 明細書等の著しい記載不備 第6条の2第4号(第14条の3第4号) 必要な事項が記載されていない場合、または記載が「著しく不明確」(一見して記載が不明確であると判断される場合)。請求項に販売地域・販売先など技術的事項でない事項のみが記載されている、目的・作用・効果のみが記載されている、句点で区切られた複数の文章にそれぞれ異なる考案が記載されている、など。

〔表4〕審査基準 第X部第1章 2.1〜2.5と第6条の2各号の対応(審査基準10_0100.pdf、2026年9月参照、要旨)。

flowchart TD
  S["請求項に係る考案・明細書等を見る"] --> Q1{"2.1 物品の形状、構造又は
組合せに係る考案か"} Q1 -->|"はい"| Q2{"2.2 公序良俗等を害することが
明らかでないか"} Q1 -->|"いいえ"| N1["△ 第6条の2第1号に該当"] Q2 -->|"はい"| Q3{"2.3 請求項の記載形式が省令どおりで、
2.4 考案の単一性を満たすか"} Q2 -->|"いいえ"| N2["△ 第6条の2第2号に該当"] Q3 -->|"はい"| Q4{"2.5 必要な事項が記載され、
一見して不明確でないか"} Q3 -->|"いいえ"| N3["△ 第6条の2第3号に該当"] Q4 -->|"はい"| OK["○ 基礎的要件を満たす
→ 設定登録へ(第14条第2項)"] Q4 -->|"いいえ"| N4["△ 第6条の2第4号に該当"] N1 --> CMD N2 --> CMD N3 --> CMD N4 --> CMD["補正命令(相当の期間を指定)
第6条の2"] CMD --> HAN{"指定された期間内に補正をしたか"} HAN -->|"はい"| OK HAN -->|"いいえ"| REJ["× 手続の却下
第2条の3"] style OK fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style REJ fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style N1 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F style N2 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F style N3 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F style N4 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
○ 基礎的要件を満たす(設定登録へ)
△ 基礎的要件に該当する(補正命令へ)
× 却下
必須の手続

【図3】基礎的要件の判断の分岐図(審査基準 第X部第1章 2.1〜2.5および3.を本記事作成者が整理)。分岐は「はい」を下、「いいえ」を右に統一した。実際の審査で各項目を確認する順序を定めたものではない。※補正の後に再び2.1〜2.5が判断される点は、図では「補正をしたか」の一段にまとめた。(2026年9月時点)

2. 方式審査(第2条の2第4項)と基礎的要件審査(第6条の2)の違い

比較項目 方式審査(第2条の2第4項) 基礎的要件審査(第6条の2)
見るもの 手続の主体(行為能力・代理権)、書類の方式、登録料・手数料の納付 明細書・実用新案登録請求の範囲・図面の実質(保護対象、公序良俗等、記載形式・単一性、著しい記載不備)
補正命令の対象 「手続」の補正 「願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面」の補正
命じる者 特許庁長官 特許庁長官
期間 相当の期間を指定 相当の期間を指定
補正しないとき 手続の却下(第2条の3) 手続の却下(第2条の3)
新規性・進歩性 見ない 見ない(実体審査ではない)

〔表5〕方式審査と基礎的要件審査の対比。どちらも「補正命令→却下」の流れは第2条の3で共通。

3. 特許法の審査フローとの対比

flowchart LR
  subgraph P["特許出願(特許法)"]
    direction TB
    P1["① 出願"] --> P2["② 方式審査"] --> P3["③ 出願審査の請求
あり"] --> P4["④ 実体審査
新規性・進歩性等を審査する"] --> P5["⑤ 不備の通知
拒絶理由通知 → 意見書・補正"] --> P6["⑥ 査定
特許査定/拒絶査定"] -->|特許査定・特許料納付| P7["⑦ 設定登録(特許料の納付後)"] --> P8["⑧ 特許権"] P8 -.-> P9["✕ ⑨ 実用新案技術評価に当たる制度はない
新規性・進歩性は④で審査ずみ"] end subgraph U["実用新案登録出願(実用新案法)"] direction TB U1["① 出願
登録料を同時に納付(第32条第1項)"] --> U2["② 方式審査
第2条の2第4項"] --> U3["✕ ③ 出願審査の請求
はない"] --> U4["✕ ④ 実体審査
はない"] --> U5["⑤ 不備の通知
基礎的要件審査(第6条の2)→ 補正命令"] --> U6["✕ ⑥ 査定はない
補正をしないときは却下(第2条の3)"] -->|必要な不備を解消| U7["⑦ 設定登録(第14条第2項)"] --> U8["⑧ 実用新案権"] U8 -.-> U9["⑨ 実用新案技術評価の請求(任意)
出願中・登録後に何人も請求できる 第12条"] end style P4 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style U4 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style U5 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style U9 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F style P9 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
必ず通る段階
任意の手続・登録後のしくみ
✕その段階が制度として存在しない
①〜⑨左右で対応する段の番号

【図4】特許の審査フローと実用新案のフローの対比。左右の①〜⑨は対応する段で、語もそろえてある。実用新案には「出願審査の請求」「実体審査」「査定」の段階がなく、基礎的要件審査を通れば設定登録される。実用新案技術評価の請求は任意なので点線で示した。特許側の各段階の詳細は特許法シリーズの記事を参照。※説明の都合上、特許の分割・変更、実用新案の補正命令に応じた場合の再判断は図から省略した。(2026年9月時点)

比較項目 特許法 実用新案法
実体審査(新規性・進歩性) あり(出願審査の請求を経て審査官が審査) なし(無審査登録制度)
登録前の中身のチェック 拒絶理由の有無を審査 基礎的要件(第6条の2第1号〜第4号)のみ
不備があったときの通知 拒絶理由通知(審査官) 補正命令(特許庁長官)
対応しないときの結末 拒絶査定 手続の却下(第2条の3)
新規事項追加の禁止 特許法第17条の2第3項 実用新案法第2条の2第2項
新規事項追加への制裁 拒絶理由・無効理由(特許法シリーズ「第17条の2」の記事参照) 無効理由(実用新案法第37条第1項第1号)。登録前に拒絶されることはない
新規性・進歩性の判断機会 審査段階 実用新案技術評価(第12条)、無効審判(第37条)

〔表6〕特許法と実用新案法の対比表。

4. 新規事項の追加禁止と無効理由の対応

特許法第17条の2第3項第一項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、誤訳訂正書を提出してする場合を除き、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあつては、同条第八項の規定により明細書、特許請求の範囲及び図面とみなされた同条第二項に規定する外国語書面の翻訳文(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあつては、翻訳文又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)。第三十四条の二第一項及び第三十四条の三第一項において同じ。)に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
実用新案法第37条第1項第1号その実用新案登録が第二条の二第二項に規定する要件を満たしていない補正をした実用新案登録出願に対してされたとき。

実用新案法第2条の2第2項は、特許法第17条の2第3項と同じく「願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内」を基準にします。ただし、実用新案法には「外国語書面出願」「誤訳訂正書」に対応する文言がなく、条文はずっと短いです。そして、無審査登録制度なので、新規事項を追加する補正がされても登録前に拒絶されることはなく、登録後に第37条第1項第1号の無効理由として争われます。

基礎的要件・補正のルール 登録前(補正命令の対象か) 登録後(無効理由か・第37条第1項)
保護対象違反(第6条の2第1号) 対象 第37条第1項第2号に第3条が挙げられており、第3条第1項柱書の「物品の形状、構造又は組合せに係るもの」に該当しないことは第2号の対象と整理できる
公序良俗等違反(第4条、第6条の2第2号) 対象 第37条第1項第2号に第4条が挙げられている
委任省令要件違反(第5条第6項第4号、第6条の2第3号) 対象 第37条第1項第4号は「第五条第四項又は第六項(第四号を除く。)」としており、第6項第4号は除かれている
単一性違反(第6条、第6条の2第3号) 対象 第37条第1項各号に第6条は挙げられていない
著しい記載不備(第6条の2第4号) 対象 第6条の2第4号そのものは挙げられていないが、記載要件違反(第5条第4項・第6項第1号〜第3号)は第37条第1項第4号の対象
新規事項追加(第2条の2第2項) 基礎的要件ではない(補正命令の対象外) 第37条第1項第1号
新規性・進歩性等(第3条、第3条の2、第7条) 審査しない 第37条第1項第2号

〔表7〕登録前のチェック(基礎的要件)と登録後の無効理由(第37条第1項)の対応。取得した第37条第1項の条文に基づく本記事作成者の整理。

保護対象違反は第3条第1項柱書に反するため、第37条第1項第2号の無効理由です。著しい記載不備の場合は、実施可能要件やサポート・明確性・簡潔性のどの要件に反するかを確認して、第37条第1項第4号を当てはめます。第6条の2第4号に該当するという理由だけで、一律に同じ無効理由になるわけではありません。青本も基礎的要件を、新規性・進歩性の審査より裁量の余地が少ない、方式審査に準ずるチェックと説明しています。 実用新案法第3条・第5条・第37条 青本第22版965頁

5. 「補正命令」と「却下」の主体・裁量

  • 第6条の2・第2条の2第4項・第14条の3の補正命令をするのは、いずれも特許庁長官(審査官ではない)。
  • いずれも「命ずることができる」「却下することができる」という裁量の文言(「しなければならない」ではない)。
  • 第14条の3は、登録後の訂正(第14条の2第1項)に係る訂正書について、第6条の2と同じ4種類の要件で補正を命じる規定。登録前の第6条の2と、登録後の第14条の3が対になっている。
実用新案法第14条の3(柱書)特許庁長官は、訂正書(前条第一項の訂正に係るものに限る。)の提出があつた場合において、その訂正書に添付した訂正した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の記載が次の各号のいずれかに該当するときは、相当の期間を指定して、その訂正書に添付した訂正した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面について補正をすべきことを命ずることができる。

6. 試験での問われ方

試験種別 問われ方の傾向 気をつける点
短答式 「実用新案登録出願について新規性がないことを理由に補正命令が出されることがあるか」のように、基礎的要件に含まれるもの・含まれないものの区別、補正命令の主体(特許庁長官)、期間内に補正しないときの効果(却下)を問う形 第6条の2の4つの号と、第3条(新規性・進歩性)・第3条の2・第7条(先願)が基礎的要件に含まれないことを正確に区別する
論文式 無審査登録制度の趣旨と、登録後の手当(技術評価、無効審判、第29条の3の責任など)をセットで説明させる形 「登録前の基礎的要件」と「登録後の無効理由」の対応関係を条文番号つきで書けるようにする
口述 「実用新案の基礎的要件を4つ挙げよ」「補正命令に応じないとどうなるか」の一問一答 第6条の2各号の内容と第2条の3の効果を口頭で言えるようにする

〔表8〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

令和8年度短答式の問5(イ)は、著しく不明確な記載について補正命令を受け、指定期間内に補正せず出願が却下された場合の不服申立てを扱います。実用新案法には、この出願却下に対する審判の規定はありません。同(イ)は誤りで、問5全体の公式正答は4です。 令和8年度問題 公式解答

レベル3のまとめ

  • 基礎的要件は第6条の2第1号〜第4号の4つ(保護対象/公序良俗等/委任省令要件・単一性/著しい記載不備)。審査基準 第X部第1章 2.1〜2.5がその判断基準を定め、いずれにも該当しなければ基礎的要件を満たす。
  • 新規性・進歩性・先願は基礎的要件に含まれず、登録前に審査されない。判断の機会は実用新案技術評価(第12条)と無効審判(第37条)。
  • 補正命令の主体は特許庁長官。方式の補正命令(第2条の2第4項)、基礎的要件の補正命令(第6条の2)、訂正に係る補正命令(第14条の3)の3種類があり、いずれも期間内に補正しないと第2条の3で却下されることがある。
  • 新規事項の追加禁止(第2条の2第2項)は基礎的要件ではなく、違反は登録後に第37条第1項第1号の無効理由となる。特許法第17条の2第3項と基準は同じだが、登録前に拒絶されない点が異なる。
  • 第5条第6項第4号(委任省令要件)と第6条(単一性)は、基礎的要件ではあるが第37条第1項の無効理由には挙げられていない。

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