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小学生でも分かる特許法|特許法第37条 発明の単一性 ― 1つの願書に「仲間の発明」だけをまとめる

小学生でもわかる特許法:発明の単一性(特許法第37条)

小学生でも分かる特許法 / A. 特許要件・発明 #10

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1つの出願に2つ以上の発明を入れることはできます。ただし、それらが「共通の特別な技術的特徴」でつながった仲間であることが条件です。無関係な発明をひとまとめにすると、審査も検索もやりにくくなるからです。

条文:特許法第37条、特許法施行規則第25条の8審査基準:第II部 第3章「発明の単一性」参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

1つの願書に、いくつ発明を入れていい?

発明をするとき、「新しい消しゴム」と「その消しゴムを作る方法」と「その消しゴムを使った筆箱」のように、関連する発明がいくつも生まれることがあります。これを1つずつ別々に出願するのは大変です。だから特許法は、仲間の発明なら1つの願書にまとめて出していいよ、と決めています。

でも、「新しい消しゴム」と「新しい自転車のブレーキ」を1つの願書に入れるのはダメです。何のつながりもない発明を1つにまとめると、審査官は2つの分野を調べなければならず、あとで発明を探す人も困ります。

OK:同じ工夫でつながっている 共通の工夫:消しカスが出にくい素材X 消しゴム その製造方法 それを使った筆箱 NG:つながりがない 消しゴム 自転車のブレーキ 共通の工夫がない → 別々の願書で出す(分割出願で分ける)

【図1】単一性のイメージ。「共通の工夫」(特別な技術的特徴)でつながった発明は1つの願書に入れられる。

ダメだったら、どうなる?

つながりのない発明を1つの願書に入れてしまっても、出願がなくなるわけではありません。審査官から「これはまとめられません」と言われるので、分割出願(第44条)で分けて出し直せばよいのです。そして、いったん特許になった後で「実はつながりがなかった」と言われても、特許が無効になることはありません。

レベル1のまとめ
  • 1つの願書に入れていいのは、共通の工夫でつながった「仲間の発明」だけ(発明の単一性)。
  • 違反しても出願はなくならない。分割出願で分ければよい。特許になった後は問題にされない。

※「共通の工夫」の正確な意味(特別な技術的特徴)、審査官がどこまで審査するか、補正との関係は、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第37条 ― 条文は1文だけ

特許法第37条(原文) 二以上の発明については、経済産業省令で定める技術的関係を有することにより発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するときは、一の願書で特許出願をすることができる。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。

条文は「経済産業省令で定める技術的関係」と言うだけで、中身は特許法施行規則第25条の8に委ねています。

施行規則第25条の8 ― 特別な技術的特徴(STF)

特許法施行規則第25条の8(原文) 1 特許法第三十七条の経済産業省令で定める技術的関係とは、二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有していることにより、これらの発明が単一の一般的発明概念を形成するように連関している技術的関係をいう。
2 前項に規定する特別な技術的特徴とは、発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴をいう。
3 第一項に規定する技術的関係については、二以上の発明が別個の請求項に記載されているか単一の請求項に択一的な形式によって記載されているかどうかにかかわらず、その有無を判断するものとする。
出典:e-Gov法令検索(特許法施行規則、法令ID 335M50000400010)、2026年9月参照。
用語意味レベル1の言いかえ
特別な技術的特徴(STF)発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴(第2項)「共通の工夫」=先行技術にない新しいところ
同一の又は対応するSTF複数の発明が、同じSTF、または対応関係にあるSTFを持つこと(第1項)同じ工夫でつながっている
単一の一般的発明概念STFでつながることで、複数の発明が1つのまとまりを形成すること(第1項)仲間の発明
請求項の形式は問わない別個の請求項でも、1つの請求項の中の択一的記載でも、同じ判断(第3項)書き方でごまかせない

〔表1〕施行規則第25条の8のキーワード。STF=Special Technical Feature。

flowchart LR
  P["先行技術"] --> Q["請求項1の発明"]
  Q --> S["先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴
= 特別な技術的特徴(STF)"] S --> R2["請求項2(同一のSTF)"] S --> R3["請求項3(対応するSTF)"] S -. "STFなし" .-> R4["請求項4(別の発明)
→ 単一性なし"] style S fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style R4 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

【図2】STFを軸にした単一性の相関図。STFは「先行技術との比較」で決まるので、先行技術調査の結果によって変わりうる。

レベル2のまとめ
  • 第37条は「経済産業省令で定める技術的関係」がある一群の発明なら一の願書で出願できる、と定める。
  • その技術的関係=同一の又は対応する特別な技術的特徴(STF)を有すること。STF=先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴。
  • 請求項の書き方(別個か択一的か)は関係ない。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 趣旨(審査基準 第II部 第3章 1.)

審査基準は、第37条を「出願人、第三者及び特許庁の便宜のための規定」と位置づけ、技術的に密接に関連した発明を一出願で審査できるようにして、出願手続の簡素化と特許情報の利用の容易化を図るもの、と説明しています(要旨)。そして、単一性の要件を満たさないことは拒絶理由ではあるが無効理由ではないことから、審査官は「第37条の要件の判断を必要以上に厳格にすることがないように留意」するとしています。

2. 判断の手順(審査基準 第II部 第3章 3.〜4.)

flowchart TB
  A["ステップ1
特許請求の範囲の最初に記載された発明(請求項1)に
STFがあるか判断する"] --> B{"STFが見つかったか"} B -- "見つかった" --> C["ステップ3
そのSTFと同一の又は対応するSTFを有する発明を特定
→ これらは単一性の要件を満たす"] B -- "見つからない" --> D["ステップ2
請求項1の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項のうち
番号が最も小さいものについてSTFの有無を判断(繰り返す)"] D --> B C --> E["審査対象の決定(下記〔表2〕)"] E --> F{"審査対象とならない発明があるか"} F -- "ある" --> G["第37条違反の拒絶理由を通知
(審査対象とならない請求項を明示)"] F -- "ない" --> H["第37条の拒絶理由なし"] style G fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style H fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

【図3】単一性判断の手順(審査基準 第II部 第3章の要旨をフロー化)。「請求項1から順に」「STFが見つかるまで下位の請求項へ」が基本。

3. 審査対象となる発明の範囲

審査基準は、STFを共有しない請求項であっても、次のものは審査対象に含めるとしています(要旨)。これにより、単一性違反の拒絶理由通知は「審査対象とならない発明がある」場合に限られます。

#審査対象に含める発明(要旨)理由
(i)STFの有無を判断した発明すべて(STFが見つからなかったものも含む)すでに先行技術調査をしているため
(ii)見つかったSTFと同一の又は対応するSTFを有する発明第37条の要件を満たす一群
(iii)請求項1の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの発明(ただし関連性が低い場合は除外できる)請求項1の下位概念であり、調査範囲が重なる
(iv)すでに審査対象とした発明と「実質的に追加的な先行技術調査を必要としない」発明審査の効率

〔表2〕審査対象となる発明の範囲(審査基準 第II部 第3章 4. の要旨)。細目((iii)の「関連性が低い」の判断など)は本文で確認。

4. STFが「事後的に否定される」場合

STFは先行技術との比較で決まるため、先行技術調査の結果、請求項1の技術的特徴が先行技術に対する貢献をもたらさない(新規性・進歩性がない)ことが明らかになれば、その技術的特徴がSTFであることは事後的に否定されます(審査基準の要旨)。その場合、【図3】のステップ2に戻って、次の請求項でSTFを探します。

5. 違反の効果 ― 拒絶理由だが無効理由ではない

第37条違反備考
拒絶理由○(第49条第4号)審査対象とならない請求項について通知。出願人は分割出願(第44条)や請求項の削除で対応
無効理由×第123条第1項各号に第37条は含まれない。「直接的に第三者の利益を著しく害することにはならない」ため(審査基準の要旨)
異議申立て理由×第113条各号に第37条は含まれない

〔表3〕第37条違反の効果。

根拠と補足:第37条違反は第49条第4号の拒絶理由ですが、第113条及び第123条第1項には列挙されておらず、単独では特許異議の申立て理由・無効理由になりません。第49条・第113条・第123条。

6. 第17条の2第4項(シフト補正の禁止)との関係

第17条の2第4項は、拒絶理由通知後に特許請求の範囲を補正するとき、補正前に審査された発明と補正後の発明とが「第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるように」しなければならない、と定めています。つまり第37条の「同一の又は対応するSTF」という判断枠組みが、補正の前後にも適用されます。

flowchart LR
  A["第37条
1つの願書の中の
請求項どうし"] -- "同じ判断枠組み(STF)" --- B["第17条の2第4項
補正前に審査した発明と
補正後の発明"] A --> A1["違反 → 拒絶理由(無効理由ではない)"] B --> B1["違反 → 拒絶理由または補正却下
(補正の記事〔表4〕参照)"]

【図4】第37条と第17条の2第4項の関係。どちらもSTFの共有で判断する。

根拠と補足:シフト補正は、補正後の発明を、拒絶理由通知で判断が示された発明の後に続けて記載したと仮定し、第37条以外の要件について審査対象となるかを調べます。対象外の発明があれば違反です。補正前の通知で引用していなかった先行技術を新たに用いてSTFを把握し、この違反を判断することはしません。審査基準第IV部第3章3.1。

7. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「第37条違反は無効理由か」「単一の請求項の択一的記載でも単一性は判断されるか」「STFの定義」「第17条の2第4項との関係」無効理由でない。施行規則第25条の8第3項。STF=先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴
論文式複数の請求項を与えて単一性の有無と、違反した場合の出願人の対応(分割)を論じさせる【図3】の手順で請求項1から判断し、〔表2〕で審査対象を確定する
口述「発明の単一性の要件とは」「特別な技術的特徴とは」施行規則第25条の8第1項・第2項を言えるように

〔表4〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

根拠と補足:単一性の練習には、審査基準第II部第3章2の「技術的関係」と「審査の効率性」による審査対象の決め方を使えます。補正前後の関係は第IV部第3章で扱われています。
レベル3のまとめ
  • 判断は請求項1から。STFが見つかるまで、請求項1の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項へ順に進む。
  • 審査対象は、STFを共有する発明+判断済みの発明+請求項1の下位概念+追加調査不要の発明。「審査対象とならない発明がある」場合だけ拒絶理由。
  • 拒絶理由だが無効理由・異議申立て理由ではない。審査官は厳格に運用しない。
  • 第17条の2第4項(シフト補正)は、同じSTFの枠組みを補正前後に適用したもの。

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