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小学生でも分かる商標法|商標法第50条 不使用取消審判 ― 3年以上使っていない登録商標は、だれでも取消しを求められる

小学生でもわかる商標法 第42回「不使用取消審判」。使われていない商標と取消し。

小学生でも分かる商標法 / D. 登録異議・審判・訴訟 #42

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商標(しょうひょう)は、お店や商品の「目じるし」です。登録しただけで、ずっと使わない目じるしが増えると、ほかの人が使える名前がどんどん減ってしまいます。そこで商標法には、3年以上使われていない登録を取り消してもらう手続があります。この記事では、その手続のしくみを、やさしい説明から試験レベルまで3段階で説明します。

条文:商標法第50条(あわせて商標法第54条第2項)特許庁資料:審判便覧 53―01、不使用による商標登録取消審判Q&A ほか参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

登録したのに、使わない目じるし

パン屋の「ほしぞらパン」が、おかしの名前として「こぐまサブレ」という目じるしを国に登録(とうろく)したとします。登録すると、その名前はほしぞらパンだけが使える名前になります。

ところが、ほしぞらパンは、その名前のおかしを一度も売りませんでした。3年たっても、たなは空っぽのままです。

となり町の「ミナトベーカリー」は、新しいサブレに「こぐまサブレ」という名前をつけたいと思っています。でも、登録があるので使えません。だれも使っていない名前なのに、です。

ほしぞらパン(持ち主) 登録ずみ「こぐまサブレ」 (たなは空っぽ) (売ったことがない) 3年以上、使っていない でも、名前はひとりじめのまま ミナトベーカリー 「こぐまサブレ」という名前を 使いたいのに、使えない… だれも使っていないなら、 登録を取り消してほしい お願いは「だれでも」できる 国の役所 (特許庁) 「取り消して ください」

図は左右にスクロールできます。

【図1】登録したまま3年以上使われていない目じるしのイメージ。店名・商品名はすべて架空の例です。

「使っていた」と言えるのは、持ち主のほう

取消しのお願いが出ると、国の役所(特許庁(とっきょちょう))が調べます。このとき大事なのは、「使っていた」ことを見せるのは持ち主の役目だということです。

「使っていない」ことを外から調べつくすのは、とてもむずかしいです。でも、本当に使っていた人なら、レシートやチラシや写真を出すのはかんたんです。だから、持ち主が出すことになっています。

もう一つ。取消しのお願いが出そうだと知ってから、あわてて少しだけ使っても、それは「使った」に数えてもらえないことがあります。

① お願いはだれでも② 証拠は持ち主が出す③ あわてて使ってもダメ ライバルのお店でなくてもお願いできる 使わない目じるしがたまると、みんながこまるから レシート・チラシ・写真などで「3年のあいだに使った」ことを見せる 見せられなければ登録は取り消される お願いが出そうだと知ってから、直前に少しだけ使う →「使った」に数えてもらえないことがある

図は左右にスクロールできます。

【図2】この手続の3つのポイント(本記事作成者が単純化して整理したもの)。

① 3年以上使っていない② だれでもお願いできる③ 証拠を出すのは持ち主④ あわてて使ってもダメなことがある
レベル1のまとめ
  • 登録した目じるしを3年以上使っていないと、登録を取り消されることがあります。
  • 取消しのお願いは、だれでもできます。
  • 「使っていた」ことを見せるのは、持ち主の役目です。見せられなければ取り消されます。
  • お願いが出そうだと知ってから、あわてて使っても、数えてもらえないことがあります。

※ 「3年」の数え方、「使った」と認められる人・場所・商品の範囲、使えなかったことに正当な理由がある場合、「あわてて使った」と言える期間には、正確には条件があります(→レベル3)。取り消されたとき、登録がいつ消えたことになるかにも特別な決まりがあります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第1項 ― だれが、どんなときに、何を請求できるか

この手続の条文上の名前は「商標登録の取消しの審判」です。「不使用取消審判」という呼び名は、条文にはない実務上の呼称です(特許庁の資料でもこの呼び名が使われています)。

商標法第50条第1項(原文) 継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。見出しは「(商標登録の取消しの審判)」。
部品文言意味
どのくらい継続して三年以上とぎれずに3年以上。途中で使っていれば「継続して」にあたりません。
どこで日本国内において外国だけで使っていても、ここでいう使用にはなりません。
だれが商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが3者のだれも使っていないこと。だれか1人でも使っていれば、要件を満たしません。
何について各指定商品又は指定役務についての指定商品・指定役務ごとに見ます。
何を登録商標の使用をしていない「登録商標」には、社会通念上同一と認められる商標を含みます(下の第38条第5項の括弧書)。
だれが請求何人も利害関係がなくても請求できます。
何を請求その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判使っていない指定商品・指定役務の部分の取消しを求めます。

〔表1〕商標法第50条第1項の部品分解(本記事作成者が条文を整理したもの)。

「登録商標」の括弧書は、現行法では第38条第5項にある

上の第1項の原文には、「登録商標」の直後に括弧書がありません。現行法では、「社会通念上同一と認められる商標を含む」という括弧書は商標法第38条第5項に置かれ、そこで「第五十条において同じ。」と定められています。

商標法第38条第5項のうち「登録商標」に付された括弧書(原文) (書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。第五十条において同じ。)
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)第38条第5項、2026年9月参照。
注意:古い教材では、この括弧書が商標法第50条第1項の中に書かれていることがあります。いつ、どの改正で第38条に移ったかは、くわしくはレベル3の「10. 改正前/現行」で。条文を引用するときは、現行のe-Gov法令検索の条文で位置を確かめてください。

第2項・第3項 ― 証明するのはだれか、あわてて使った場合

商標法第50条第2項(原文) 前項の審判の請求があつた場合においては、その審判の請求の登録前三年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。ただし、その指定商品又は指定役務についてその登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしたときは、この限りでない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
商標法第50条第3項(原文) 第一項の審判の請求前三月からその審判の請求の登録の日までの間に、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をした場合であつて、その登録商標の使用がその審判の請求がされることを知つた後であることを請求人が証明したときは、その登録商標の使用は第一項に規定する登録商標の使用に該当しないものとする。ただし、その登録商標の使用をしたことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしたときは、この限りでない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
項役割だれが証明するか
第1項審判を請求できる場合(3年以上の不使用)と請求人(何人も)を定める。―
第2項 本文審判の請求の登録前3年以内の使用を証明しない限り、取消しを免れない。被請求人(商標権者の側)
第2項 ただし書使用をしていないことについて正当な理由があれば、取り消されない。被請求人
第3項 本文審判の請求前3月から請求の登録の日までの使用で、請求されることを知った後のものは、使用に該当しないものとする(実務上「駆け込み使用」と呼ばれます)。請求人(知った後であること)
第3項 ただし書その使用をしたことについて正当な理由があれば、使用として扱われる。被請求人

〔表2〕商標法第50条の項ごとの役割と、証明する人(本記事作成者が条文を整理したもの)。

第54条第2項 ― 取り消されたら、いつ消えたことになるか

商標法第54条(原文) 商標登録を取り消すべき旨の審決が確定したときは、商標権は、その後消滅する。(第1項)
前項の規定にかかわらず、第五十条第一項の審判により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定したときは、商標権は、同項の審判の請求の登録の日に消滅したものとみなす。(第2項)
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。第54条に見出しは付されていません。

取消しの審判では、商標権は審決が確定した後に消えるのが原則です(第1項)。ただし、商標法第50条第1項の審判だけは、審判の請求の登録の日までさかのぼって消えたものとみなされます(第2項)。

商標法第50条・第54条第2項のタイムチャート 登録の日の3年前 請求の3月前 審判の請求 取消審決の確定 審判の請求の 登録の日 第2項:請求の登録前3年以内(被請求人が使用を証明する期間) 第3項:駆け込み使用 第54条第2項:さかのぼる ・第2項の「3年以内」は、審判の請求の登録の日から逆算します。 ・第3項は「請求前3月」から「請求の登録の日」まで。起点が違います。 ・取消審決が確定すると、商標権は請求の登録の日に消滅したとみなす。

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の帯:第2項で被請求人が使用を証明する期間
  • 赤の帯:第3項の駆け込み使用が問題になる期間
  • 藍の太い縦線:審判の請求の登録の日(期間を数える起点)
  • 赤の矢印:第54条第2項による消滅時点のさかのぼり

【図3】商標法第50条第2項・第3項と第54条第2項の時間関係(本記事作成者が条文を図にしたもの。横軸の長さは実際の期間の比ではありません)。

手続の流れと、登場人物

flowchart TB
  A["請求人(何人も)が審判を請求
取消しを求める指定商品・指定役務を特定"] --> B["審判の請求の登録
(特許庁資料では予告登録と呼ばれる)"] B --> C["被請求人(商標権者)の答弁
登録前3年以内の使用の証明
又は 不使用の正当な理由"] C --> D{"使用の証明 又は
正当な理由が認められたか"} D -- "認められた" --> E["請求は成り立たない旨の審決
商標登録は維持"] D -- "認められない" --> F["商標登録を取り消すべき旨の審決"] F --> G["審決の確定"] G --> H["商標権は審判の請求の登録の日に
消滅したものとみなす
(商標法第54条第2項)"] style E fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style H fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:商標登録が維持される結論
  • 赤の箱:商標権が消滅する結論

【図4】不使用取消審判の流れ(本記事作成者がフロー化したもの。審決に対する訴えなどの不服申立ての段階は省略しています)。

特許庁(審判官の合議体) 審理して審決をする 請求人 「何人も」(第1項) 利害関係は要件とされていない 被請求人=商標権者 使用の証明・正当な理由を 示す側(第2項) 専用使用権者 その使用も数える 通常使用権者 その使用も数える 審判の請求 答弁・証拠 (当事者どうしが対立する形の審判)

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑のベタ塗り:審理して審決をする特許庁
  • 橙の枠:請求する側(請求人)
  • 藍の枠:請求される側(被請求人=商標権者と、その使用が数えられる使用権者)

【図5】不使用取消審判の登場人物(本記事作成者が条文を整理した相関図)。

レベル2のまとめ
  • 第1項:継続して3年以上、日本国内で、商標権者・専用使用権者・通常使用権者のいずれもが、各指定商品・指定役務について登録商標の使用をしていないとき、何人も審判を請求できます。
  • 第2項:審判の請求の登録前3年以内の使用を被請求人が証明しない限り、取消しを免れません。正当な理由を明らかにしたときは別です。
  • 第3項:請求前3月から請求の登録の日までの使用で、請求されることを知った後のものであることを請求人が証明したときは、使用に該当しないものとされます。
  • 商標法第54条第2項:取消審決が確定すると、商標権は審判の請求の登録の日に消滅したものとみなされます。
  • 「社会通念上同一と認められる商標」の括弧書は、現行法では商標法第38条第5項にあります。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 制度の位置づけ ― 登録主義と「使用」

商標法第1条は、法の目的を商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することと定めています。保護の対象は、使用によって商標に積み重なる業務上の信用です。使用されない登録商標には、その信用が積み重なりません。商標法第50条は、そうした登録を請求によって取り消す道を用意した規定だと、条文の構造から読むことができます。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):上の段落は条文から読み取れる範囲の整理です。立法担当者の説明として、特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』は、第50条の立法趣旨を次の2つの面から説明しています。
  • 保護すべき信用がない:商標法上の保護は、商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるのが本来の姿であり、一定期間使用しなければ、保護すべき信用が発生しないか、発生した信用も消滅して保護の対象がなくなる。
  • 不使用の登録を残す弊害:そのような不使用の登録商標に排他独占的な権利を与えておくことは、国民一般の利益を不当に侵害し、しかも、その存在によって権利者以外の商標使用希望者が商標を選ぶ余地を狭める。
そこで、請求を待ってこうした商標登録を取り消すこととした、つまり、使用しているからこそ保護を受けられるのであり、使用しなくなれば取り消されてもやむを得ない、という考え方だと説明しています。
また同書は〔参考〕として、旧法(大正10年法)では営業を廃止すると商標権が消滅するとされていたが、現行法(昭和34年法)では商標権の自由譲渡を認めたので商標権と業務は分離可能となり、業務の廃止の時期の認定も極めて困難であることから、業務の廃止で自動的に商標権を消滅させることはせず、いわゆる空権の整理はもっぱら不使用取消制度の活用によって行うこととした、と説明しています。
逐条解説〔第22版〕1743頁、1748頁〜1749頁。

2. 第1項の要件を一つずつ

要件条文の文言注意点
期間継続して三年以上不使用が3年以上とぎれずに続いていること。
場所日本国内において特許庁の参考資料は、海外での使用は対象外と説明しています。
使用者商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが第1項は「いずれもが…していない」、第2項は「いずれかが…している」。主語の対応に注意。
商品・役務各指定商品又は指定役務について指定商品・指定役務そのものについての使用。類似する商品・役務についての使用は、文言上ここに含まれていません。
商標登録商標社会通念上同一と認められる商標を含む(商標法第38条第5項の括弧書)。類似する商標一般は含まれません(→4.)。
使用使用特許庁の参考資料は、商標法第2条第3項各号のいずれかの使用であることを挙げています。
請求人何人も利害関係は条文上の要件ではありません。

〔表3〕商標法第50条第1項の要件(本記事作成者が条文と特許庁「不使用取消審判請求に対する登録商標の使用の立証のための参考資料」を整理したもの)。

ポイント:商標法第50条第1項の審判には、請求できる期間を限る規定(除斥期間)が置かれていません。他の取消審判との違いは〔表9〕で確認してください。
請求人適格の例外(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、請求人適格を「何人も」としても、審判の請求が被請求人を害することを目的としていると認められるような場合には、その請求は権利濫用として認められない可能性がある、と述べています(「何人も」とした改正の理由は→10.)。
逐条解説〔第22版〕1746頁。
青本は、設定登録から3年を経過していなければ、不使用取消審判を請求できないと説明しています。審判便覧53―01も「何人も」の原則を示す一方、被請求人を害することだけを目的とするなど、請求が権利濫用となる場合は別としています。請求人適格が広いことと、すべての請求が認められることは同じではありません。青本1744頁/審判便覧53―01

3. 第2項 ― 立証責任と、被請求人が証明すべきこと

第2項は、使用の事実の証明を被請求人に負わせています。請求人は「使っていないこと」を証明する必要がありません。被請求人が証明できなければ、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れないことになります。

#証明する事項内容(特許庁の参考資料による)
①使用時期審判請求の登録前(予告登録前)3年以内の期間の使用であること
②使用場所日本国内における使用であること
③使用者商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによる使用であること
④使用商品・役務請求に係る指定商品・指定役務のいずれかについての使用であること
⑤使用商標登録商標(社会通念上同一と認められる商標を含む)の使用であること
⑥使用態様商標法第2条第3項各号のいずれかの使用であること

〔表4〕被請求人が証明する6つの事項。出典:特許庁「不使用取消審判請求に対する登録商標の使用の立証のための参考資料 ―登録商標を使っていたことを証明するために―」(2026年9月参照)。同資料は証拠の例として、使用状況の写真、取引書類(注文伝票・納入伝票・請求書・領収書等)、広告物(カタログ・パンフレット等)などを挙げています。

flowchart TB
  S["不使用取消審判の請求
(請求人は不使用を証明しなくてよい)"] --> Q1{"被請求人は 請求の登録前3年以内の
使用を証明したか(第2項本文)"} Q1 -- "証明した" --> Q3{"その使用は 請求前3月から
請求の登録の日までの間のものか"} Q3 -- "はい" --> Q4{"請求人は その使用が 請求される
ことを知った後であることを
証明したか(第3項本文)"} Q4 -- "はい" --> Q5{"被請求人は その使用をしたことの
正当な理由を明らかにしたか
(第3項ただし書)"} Q5 -- "はい" --> OK4["取り消されない"] Q5 -- "いいえ" --> X["その使用は 第1項の使用に
該当しないものとする"] X --> Q2{"被請求人は 不使用についての
正当な理由を明らかにしたか
(第2項ただし書)"} Q2 -- "はい" --> OK1["取り消されない"] Q2 -- "いいえ" --> NG1["取消しを免れない"] Q1 -- "証明できない" --> Q2 Q3 -- "いいえ(それより前の使用)" --> OK2["取り消されない"] Q4 -- "いいえ" --> OK3["取り消されない"] style NG1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style OK1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style OK2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style OK3 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style OK4 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:取り消されない(商標登録は維持)
  • 赤の箱:取消しを免れない

【図6】立証責任の分岐図(本記事作成者が商標法第50条第2項・第3項をフロー化したもの。駆け込み使用のほかに、3月より前の使用も証明されている場合は「取り消されない」の側に進みます)。

正当な理由(第2項ただし書)

特許庁「不使用による商標登録取消審判Q&A」は、不使用についての正当な理由の例として、天災地変等によって工場等が損壊した場合、時限立法によって三年以上使用が禁止された場合を挙げています(2026年9月参照)。これは特許庁の運用上の説明であり、条文には例示がありません。

訴訟段階での立証

裁判所ウェブサイトの裁判例情報によると、最高裁判所第三小法廷 平成3年4月23日判決(昭和63年(行ツ)第37号、審決取消請求事件、民集第45巻4号538頁)の裁判要旨は次のとおりです。

裁判要旨(裁判所ウェブサイト掲載) 商標登録の不使用取消審決の取消訴訟における当該登録商標の使用の事実の立証は、事実審の口頭弁論終結時に至るまで許される。
出典:裁判所ウェブサイト 裁判例結果詳細(https://www.courts.go.jp/hanrei/52768/detail2/index.html)、2026年9月参照。参照法条:商標法50条。
最高裁平成3年4月23日判決(昭和63年(行ツ)第37号)は、法定期間内の使用の事実を示す証拠を、審決取消訴訟の事実審の口頭弁論終結時まで提出できるとしました。後から使用を始めればよいという判断ではありません。また現行第50条第3項では、請求を知った後の駆け込み使用は、同項の期間・立証等の要件に従って除外されます。判決本文1〜2頁

4. 「登録商標の使用」と社会通念上同一 ― 商標法第70条との関係(概要)

商標法第38条第5項の括弧書は、社会通念上同一と認められる商標として次の類型を挙げ、最後を「その他の」で受けています。

#括弧書の文言架空の例(本記事作成者による)
1書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標明朝体で登録した「ほしぞら」をゴシック体で使う
2平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標「こぐま」と「コグマ」(同じ読み・同じ意味が生じる場合)
3外観において同視される図形からなる商標登録した図形と見た目が同じと見られる図形
4その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標(個別の判断)

〔表5〕社会通念上同一と認められる商標の類型(文言は商標法第38条第5項の括弧書。例は架空で、実際の判断は事案ごとに行われます)。

特許庁の参考資料は、結合商標の要素の一部を欠落させた使用や、アレンジを重ねて社会通念上同一と認められないほどになった商標の使用は、登録商標の使用と認められないことがある旨を注意しています。

これとは別に、商標法第70条第1項は、商標法第50条における「登録商標」に、その登録商標に類似する商標であつて、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含むものとすると定めています。色だけを変えて使っている場合の手当てです。ただし、商標法第70条第4項により、色彩のみからなる登録商標には適用されません。

使っている商標商標法第50条の「登録商標の使用」にあたるか根拠
登録商標そのもの該当商標法第50条第1項
社会通念上同一と認められる商標該当商標法第38条第5項の括弧書(「第五十条において同じ。」)
色彩だけが違い、色彩を同じにすれば同一と認められる商標該当商標法第70条第1項(色彩のみからなる登録商標を除く。同条第4項)
上のいずれにもあたらない類似商標非該当条文上、含める規定がありません

〔表6〕使用している商標と「登録商標の使用」の関係(本記事作成者が条文を整理したもの)。

5. 第3項 ― 駆け込み使用

「駆け込み使用」は実務上の呼称で、条文にこの言葉はありません。第3項が働くには、次の2つがそろう必要があります。

要件条文の文言証明する人
時期第一項の審判の請求前三月からその審判の請求の登録の日までの間(期間内の使用であること)
認識その登録商標の使用がその審判の請求がされることを知つた後であること請求人
効果その登録商標の使用は第一項に規定する登録商標の使用に該当しないものとする―
例外その登録商標の使用をしたことについて正当な理由があること被請求人

〔表7〕商標法第50条第3項の要件・効果・例外(本記事作成者が条文を整理したもの)。

ポイント:期間の起点が第2項と違います。第2項は「審判の請求の登録前三年以内」、第3項は「審判の請求前三月から…請求の登録の日まで」です。また、第2項ただし書の正当な理由は「使用をしていないこと」について、第3項ただし書の正当な理由は「使用をしたこと」についてのものです。
Q. 請求前3月以内の使用は、すべて使用と認められないのですか。
A. いいえ。請求されることを知った後の使用であることを請求人が証明したときに限られます。証明がなければ、その期間の使用も第2項の「登録前三年以内」の使用として扱われます。

6. 指定商品・指定役務ごとの請求と、取消しの範囲(概要)

第1項は「各指定商品又は指定役務について」不使用を見て、「その指定商品又は指定役務に係る商標登録」の取消しを請求できるとしています。請求人は、取消しを求める指定商品・指定役務を選んで請求することができます。

一方、第2項は、被請求人が「その請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについて」の使用を証明すれば足りるとしています。特許庁のQ&Aも、審理の対象となっている指定商品・役務について一部でも使用の証明ができれば、使用していない指定商品等があっても取り消されない、と説明しています。

指定商品が「パン・菓子・ジャム・コーヒー」の登録に対する請求(架空の例) 請求に係る指定商品(請求人が選んだ範囲) パン菓子ジャム 使用を証明使用なし使用なし 「いずれか」の使用を証明 → 請求に係る3つとも取り消されない (商標法第50条第2項本文) 請求の対象外 コーヒー 審理の対象に なっていない 請求人の側から見ると 広くまとめて請求すると、どれか1つの使用証明で全体が維持される。どの範囲で請求するかが重要になる。 特許庁Q&Aによれば、一部の指定商品等についてだけ請求を取り下げることはできない(事件ごとの取下げ)。

図は左右にスクロールできます。

  • 藍の枠:請求に係る指定商品(審理の対象)
  • 灰色の細い枠:請求の対象外の指定商品(審理の対象にならない)
  • 赤の枠:請求人の側から見たときの注意点

【図7】請求の範囲と取消しの範囲(本記事作成者が商標法第50条第2項と特許庁「不使用による商標登録取消審判Q&A」を図にしたもの。商品の例は架空の設例)。

論点特許庁「不使用による商標登録取消審判Q&A」の説明(要旨)
包括表示に含まれる個別の商品・役務についての請求請求することが可能(例:包括表示「被服」に含まれる個別の商品)。
使用の証明の範囲審理の対象となっている指定商品・役務について一部でも使用の証明ができれば、取り消されない。
一部の指定商品等についての請求の取下げできない。事件ごとの取下げのみ(特許法第155条第3項を準用していないため、と説明)。
通常使用権の登録登録は必要ないが、登録がなければ他の方法で通常使用権者であることを証明する必要がある。
駆け込み使用審判請求前3月から登録の日までの使用で、請求されることを知った後のものは、取消しを回避できない(商標法第50条第3項)。

〔表8〕特許庁「不使用による商標登録取消審判Q&A」(特許庁ウェブサイト「商標登録取消審判」ページ〔2026年5月28日更新の表示〕からリンク、2026年9月参照)の要旨。要約であり原文の逐語ではありません。

取下げについて、商標法第56条第2項は、特許法第155条第3項を商標法第46条第1項の審判(商標登録の無効の審判)に準用すると定めています。Q&Aの説明は、この準用の対象に商標法第50条第1項の審判が入っていないことを前提にしたものです。

7. 効果 ― 商標法第54条第2項と、他の取消審判との比較

取消審決が確定すると、商標権は審判の請求の登録の日に消滅したものとみなされます(商標法第54条第2項)。審決の確定時ではなく請求の登録の日までさかのぼる点が、他の取消審判(商標法第54条第1項=「その後消滅する」)と異なります。なお、無効審判のように初めから存在しなかったものとみなされるわけではありません。

審判請求人主な要件(要約)除斥期間商標権の消滅時点
商標法第50条第1項
(不使用)
何人も継続して3年以上、日本国内で、商標権者・専用使用権者・通常使用権者のいずれもが、各指定商品・指定役務について登録商標の使用をしていない規定なし審判の請求の登録の日に消滅したものとみなす(商標法第54条第2項)
商標法第51条第1項
(商標権者の不正使用)
何人も商標権者が故意に、類似範囲の使用であって、商品の品質・役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるものをした使用の事実がなくなった日から5年(商標法第52条)審決確定後(商標法第54条第1項)
商標法第52条の2第1項
(移転後の混同)
何人も商標法第24条の4各号の事由で類似関係の商標権が異なる商標権者に属することとなった場合に、一方の商標権者が不正競争の目的で、指定商品・指定役務についての登録商標の使用であって他方の業務と混同を生ずるものをした商標法第52条を準用(同条第2項)審決確定後(商標法第54条第1項)
商標法第53条第1項
(使用権者の不正使用)
何人も専用使用権者又は通常使用権者が、同一・類似範囲の使用であって、品質・質の誤認又は混同を生ずるものをした(商標権者が事実を知らず、相当の注意をしていたときを除く)商標法第52条を準用(同条第3項)審決確定後(商標法第54条第1項)
商標法第53条の2
(代理人等の不正登録)
その商標に関する権利を有する者同盟国等で商標に関する権利を有する者の商標等について、正当な理由がないのに、その承諾を得ないで、代理人・代表者(出願の日前1年以内にそうであった者を含む)が出願した商標権の設定の登録の日から5年(商標法第53条の3)審決確定後(商標法第54条第1項)

〔表9〕商標登録の取消しの審判の一覧比較(各条をe-Gov法令検索で確認のうえ本記事作成者が要約。2026年9月参照。要件欄は要約であり、正確な文言は各条の原文を参照。商標法第51条第2項・第53条第2項の再登録の制限など、不使用取消にはない効果は各関連記事で扱います)。

ポイント:商標法第50条第1項の審判だけが、①除斥期間の規定がなく、②立証責任が被請求人にあり、③消滅時点がさかのぼる、という3つの特徴を持ちます。なお、商標法第55条は、商標法第46条第4項(専用使用権者その他登録した権利を有する者への通知)を、これらの取消審判の請求があった場合に準用しています。

8. 拒絶理由・異議理由・無効理由との対応

制度条文登録商標の不使用は理由になるか
拒絶理由商標法第15条非該当 登録後の不使用は、出願の審査の対象ではありません。
登録異議の申立ての理由商標法第43条の2非該当
無効理由商標法第46条第1項非該当
無効審判の除斥期間商標法第47条対象外(商標法第50条第1項の審判には除斥期間の規定自体がありません)
取消しの審判商標法第50条第1項該当 不使用は、この審判でのみ争います。

〔表10〕登録商標の不使用と各制度の対応(本記事作成者が各条の列挙を読み比べて整理したもの)。

9. 四法比較 ― 特許法・実用新案法・意匠法に不使用取消がない理由

特許法実用新案法意匠法商標法
不使用(不実施)を理由に権利を取り消す審判なしなしなしあり(商標法第50条)
不実施の場合の手当て通常実施権の設定の裁定(特許法第83条)。継続して3年以上日本国内で適当に実施されていないとき。ただし出願の日から4年を経過していないときを除く通常実施権の設定の裁定(実用新案法第21条)。要件の骨格は特許法第83条と同じ不実施を理由とする裁定の規定は見当たりません(意匠法第33条は利用・抵触関係の場合の裁定)裁定制度なし。登録そのものを取り消す
効果権利は残り、第三者に通常実施権が設定される同左―商標権が請求の登録の日に消滅したものとみなされる(商標法第54条第2項)
保護の対象(各法の目的規定等から)発明考案意匠商標の使用をする者の業務上の信用(商標法第1条)

〔表11〕不使用(不実施)に対する四法の対応(各条をe-Gov法令検索で確認のうえ本記事作成者が整理。2026年9月参照)。

特許法・実用新案法・意匠法が保護するのは、発明・考案・意匠という創作そのものです。創作の価値は、権利者が実施していなくても失われません。これに対し、商標法が保護するのは、使用によって商標に積み重なる業務上の信用です(商標法第1条)。使用されない登録商標には保護すべき信用がなく、しかも商標権は更新によって長く続き得るため、他人の商標の選択を狭め続けることになります。四法の違いは、この保護対象の違いから説明するのが一般的です(これは条文の構造からの説明であり、条文に理由が明記されているわけではありません)。

10. 改正前/現行

項目現行法(2026年9月参照のe-Gov条文)
請求人何人も(商標法第50条第1項)
立証責任使用の事実は被請求人が証明(同条第2項)
駆け込み使用請求前3月から請求の登録の日まで(同条第3項)
消滅時点審判の請求の登録の日に消滅したものとみなす(商標法第54条第2項)
社会通念上同一の括弧書商標法第38条第5項に置かれ、「第五十条において同じ。」とされている

〔表12〕現行法の整理(本記事作成者が条文を整理したもの)。

逐条解説〔第22版〕は、〔表12〕の各項目の改正経緯と理由を次のように説明しています(いずれも立法担当者の解説の要約です)。

① 立証責任 ― 昭和50年の一部改正(逐条解説〔第22版〕):昭和50年の一部改正前は、登録商標の不使用の事実は審判の請求人が証明しなければならないとされていました。同書は、改正前の第3項が、特定の市町村又は特別区での不使用が証明されればその他の地域でも不使用と推定するとして、請求人の挙証責任を軽くしようとしていたことからも、それが明らかだとしています。しかし、特定の市町村等に限っても、請求人が不使用を証明することは極めて困難で、制度はほとんど実効を挙げられなかった。他方、商標権はもともと出願人が自己の業務に係る商品について使用をするということで与えられるもの(第3条第1項)であり、商標権者は使用しているかどうかを最もよく知っていて、その証明も容易にできるはずであり、挙証責任は本来、衡平の原則によって決めるべきものである。これらの事情を勘案して、昭和50年の一部改正で、使用に関する挙証責任を被請求人である商標権者に負わせることにした、と説明しています。
逐条解説〔第22版〕1743頁〜1744頁。
② 請求人を「何人も」に ― 平成8年の一部改正(逐条解説〔第22版〕):同書は、平成8年の一部改正前は請求人が利害関係人に限られるとされていたのを、同改正で何人にも認めることにしたと説明し、その背景として次の5つを挙げています。
  1. 不使用取消審判は、商標法の変遷の中では公益的な観点から職権又は審査官の審判請求で不使用商標の取消しがされていたこともあり、公益的な重要性がもともと高い。さらに近年、不使用の登録商標の累積により、他人の商標選択の幅の狭小化、特許庁における審査負担の増加・審査遅延などが生じており、これを抑える手段として、この審判の公益的重要性が一層高まっていること。
  2. 利害関係の有無が争われることで、審理の結論が出るのが遅れるケースもあること。
  3. 利害関係は、同一又は類似の商標を出願したり使用したりすることで、作ろうと思えば簡単に作れること。
  4. 平成8年の一部改正で更新時の使用状況の審査を廃止したため、特許庁が直接、不使用商標の取消しに関与できなくなったこと。
  5. 諸外国でも何人にも請求を認めている例が少なくないこと(同書は英国、カナダ、ドイツ、オーストリア等を挙げる)。
これらを背景に、不使用商標の整理を一層促進しようとしたもの、としています。
逐条解説〔第22版〕1746頁。
③ 駆け込み使用(第3項)― 平成8年の一部改正(逐条解説〔第22版〕):同書は、第3項を平成8年の一部改正で新設した規定とし、駆け込み使用を認めないこととした理由として次の4つを挙げています。
  1. 審判請求の登録前3年以内に使用していれば取り消されないため、改正前は、譲渡交渉やライセンス交渉などでの相手方の動きから請求を察知した商標権者が、請求の登録前に駆け込みで使用して取消しを免れ得るという問題があったこと。
  2. そのため、譲渡交渉等を申し出る者はやむを得ず、まず不使用取消審判を請求し、その登録を待ってから交渉を始めることになり、審判請求の増加やその取下げ等による事務処理負担の増加という弊害を生んでいたこと。
  3. 駆け込み使用を認めないことにすれば、審判請求を実際にしなくても譲渡交渉等が円滑にまとまる効果も期待できること。
  4. 欧州諸国も同様の制度を採用していること。
また、期間の始まりを審判請求前3月とした理由として、一般的に譲渡交渉が始まってから成否が判明するまでの期間が2〜3月であること、及び欧州諸国の法制との横並びを挙げています。
逐条解説〔第22版〕1747頁〜1748頁。
④ 消滅時点の遡及(第54条第2項)― 平成8年の一部改正(逐条解説〔第22版〕):同書の第54条の項は、改正前は取消しの効果が審決確定の日から生じたため、他人の不使用の登録商標を使っていた請求人は、取消しに成功しても審決確定までの期間について損害賠償等の請求を免れることができなかったと説明します。しかし不使用で取り消される商標には、保護すべき信用が発生していないか、発生した信用も消滅しているので、審決確定前の期間についても実体のない登録に基づく損害賠償請求等を認めるのは適当でないとして、効果を審判の請求の登録の日まで遡らせた、としています。同書は、これを、登録主義の建前を維持しつつ、実質的には使用主義の考え方を最大限取り入れ、商標を不使用の状況に置くことに大きなリスクを与えるものと位置づけています。
遡及する日を審判の請求の登録の日とした理由としては、次の3つを挙げています。(a) 取消しの要件である不使用期間(3年)の満了日であり、取消しの要件を満たした日であること。(b) EU諸国の多くも不使用期間の満了日まで遡及させる法制を採用していること。(c) 取消審判を請求する旨が登録原簿に掲載された日なので、公示の原則も担保されること。
逐条解説〔第22版〕1760頁〜1761頁。
⑤ 社会通念上同一の括弧書 ― 平成8年に追加、平成28年に第38条へ移行(逐条解説〔第22版〕):同書は、社会通念上同一と認められる商標を含むとする括弧書は、平成8年の一部改正で第50条第1項に追加され、平成28年の一部改正で第38条に移された(第50条第1項にも適用がある旨を規定)と説明しています。移された先は、同書の第38条の解説によれば当時の第38条第4項で、令和元年の一部改正で第5項に繰り下がっています(逐条解説〔第22版〕1689頁〜1690頁。第50条の解説は移行先を現行の項番号(第38条第5項)で記載)。
括弧書を設けた理由について同書は、登録商標の使用かどうかは、自他商品(役務)の識別を本質的機能とする商標の性格上、物理的な同一にこだわらず取引社会の通念に照らして判断すべきだとの考え方から、それ以前の審決例・裁判例でも社会通念上同一と認識し得る商標の使用を登録商標の使用と認めてきたが、その運用だけでは、社会通念上同一と認識し得る商標を内容とする過剰な防衛的出願・登録を抑えるには至っていなかったため、そうした出願を抑制し、ひいては早期権利付与を確保するためだった、としています。これにより、パリ条約第5条C(2)の趣旨の我が国への適用も明確になり、登録商標を物理的に同一のまま使うより、商品(役務)の具体的な性状に応じて適宜変更を加えて使うのがむしろ通常であるという産業界の実情にも合うことが明確になった、とも述べています。
あわせて同書は、移行前の第50条第1項の括弧書について、同条の審判における登録商標についての解釈規定であり、他の規定の登録商標の範囲まで一律に広げる一般的規定ではない、と注意しています。
逐条解説〔第22版〕1745頁〜1746頁。。パリ条約本文も特許庁掲載の日本語正文と照合しています。
審判便覧53―01の1によれば、昭和50年改正は不使用の証明責任を商標権者側へ転換しました。平成8年改正では、請求人を何人にも広げ、駆け込み使用の制限、取消効果の遡及、連合商標の使用による特則の廃止、社会通念上同一の商標を含む使用の範囲を整備しています。旧条文の逐語引用ではなく、これらの改正点の整理です。審判便覧53―01の1・2

試験での問われ方

試験種別問われやすい形(本記事作成者の整理。出題を保証するものではありません)
短答式条文の文言の正誤(「いずれもが」と「いずれかが」、「請求の登録前三年以内」と「請求前三月」、証明する人、消滅時点、除斥期間の有無、他の取消審判との請求人・要件の違い)
論文式他人の登録商標が自己の出願や使用の障害となる場面での対応手段の一つとして、要件と効果(商標法第54条第2項)を条文に沿って示す形
口述条文の要件を順に答える形(期間・場所・使用者・商品役務・請求人、立証責任、駆け込み使用)

〔表13〕試験種別ごとの問われ方の整理。

問10の正解は2です。肢2は、国際登録の日から3年不使用でも第50条の審判を請求できない場合があるかを問います。不使用取消審判は、設定登録で発生した商標権について、登録商標の不使用が継続して3年以上となることを要します(第18条第1項・第50条第1項。国際登録に基づく出願の設定登録は第68条の19)。国際登録日からの経過期間と、日本での設定登録後の不使用期間は区別します。 公式問題/公式正解。肢の説明は条文による検証であり、公式解答が公表するのは問題全体の正解番号です。
令和8年度受験案内は、各試験の実施日に施行されている法令を出題対象としています。同年の短答試験日は5月17日です。本記事の現行制度の説明は2026年9月21日時点、過去問はその試験日の法令を基準に区別しています。令和8年度受験案内・表紙及び2頁
レベル3のまとめ
  • 第1項は「いずれもが…使用をしていない」、第2項は「いずれかが…いずれかについて…使用をしている」。主語と対象の違いを条文で確認します。
  • 使用の事実・不使用の正当な理由は被請求人、駆け込み使用の「知った後」は請求人が証明します。
  • 「登録商標」には、社会通念上同一と認められる商標(商標法第38条第5項の括弧書)と、色彩のみが異なる一定の商標(商標法第70条第1項)が含まれます。
  • 請求に係る指定商品・指定役務のいずれかについて使用を証明すれば、請求に係る範囲全体について取消しを免れます。
  • 取消審決が確定すると、商標権は審判の請求の登録の日に消滅したものとみなされます(商標法第54条第2項)。他の取消審判は審決確定後の消滅です(同条第1項)。
  • 商標法第50条第1項の審判には除斥期間の規定がありません。

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