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小学生でも分かる商標法|商標法第47条 除斥期間 ― 登録から5年たつと「無効にして」と言えなくなる理由がある

小学生でもわかる商標法 第41回「除斥期間」。無効審判の請求に関わる期限。

小学生でも分かる商標法 / D. 登録異議・審判・訴訟 #41

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商標(しょうひょう)の登録にまちがいがあったとき、あとから「その登録をなかったことにして」と求める手続が無効審判(むこうしんぱん)です。ところが商標法には、まちがいの種類によっては「登録から5年たったら、もう求められない」という締切(しめきり)があります。これが第47条です。どのまちがいに締切があり、どのまちがいには締切がないのかを、3つのレベルで順に見ていきます。

条文:商標法第47条第1項・第2項関連:商標法第46条、第39条(特許法第104条の3第1項・第2項の準用)参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

登録のまちがいは、あとから見直してもらえる

お店や商品の「目じるし」のことを、商標(しょうひょう)といいます。目じるしは、特許庁(とっきょちょう)という国の役所に登録(とうろく)してもらうと、自分だけが使えるようになります。

でも、役所も人間です。本当は登録してはいけない目じるしを、うっかり登録してしまうことがあります。そんなときは、こまっている人が「その登録はまちがいです。なかったことにしてください」とたのむことができます。これを無効審判(むこうしんぱん)といいます。

でも、5年たったら「そっとしておく」まちがいがある

たとえば、町のパン屋さん「ほしぞらパン」(架空のお店です)が、目じるしを登録してもらったとします。それから5年。お店は看板(かんばん)を作り、ふくろを作り、町の人も「ほしぞらパンといえば、あのお店」とおぼえました。

5年もたってから、「じつは登録のとき、べつのお店の目じるしと少しにていました。だから登録はなかったことにしてください」と言われたら、どうでしょう。お店も、お客さんも、こまってしまいます。

そこで商標法は、こう決めました。「ある種類のまちがいは、登録の日から5年たったら、もう『なかったことにして』とは言えません」。この5年の締切のことを、勉強する人たちは除斥期間(じょせききかん)とよんでいます。

時間の流れ → 登録の日 「ほしぞらパン」 5年間:「なかったことにして」とたのめる 5年の締切 もう、たのめない 看板もお客さんも定着している から、そっとしておく

図は左右にスクロールできます。

  • 橙の丸:登録の日(5年を数え始める日)
  • 青緑の枠:「なかったことにして」とたのめる5年間
  • 赤の枠:5年をすぎて、もうたのめなくなった後
  • 赤の破線の縦線:5年の締切

【図1】登録の日から5年の締切のイメージ。架空の例。本記事作成者が模式化したもの。※ 締切があるのは「ある種類のまちがい」だけで、締切のないまちがいもあります(次の図)。「ほしぞらパン」は架空のお店です。

締切がある まちがい・ない まちがい

ぜんぶのまちがいに5年の締切があるわけではありません。大きく3つのグループに分かれます。

A おもに当事者の問題 ・先に登録された目じるしと  にていた ・ほかの人の名前が入っていた ・だれの商品か見分けにくい  名前だった など 5年で締切 B 条件つき ・みんなが知っている他人の  目じるしと、にていた ・ほかのお店の商品と  まちがえられそうだった ふつうは5年で締切。でも わざとずるをして登録した ときは締切なし 5年で締切 (ずるなら締切なし) C みんながこまる問題 ・国の旗にそっくり ・世の中のきまりや  マナーに反する ・商品の中身をかんちがい  させる など 締切なし

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の枠:A 5年で締切になるまちがい
  • 藍の枠:B ふつうは5年で締切。ずるをして登録したときは締切なし
  • 赤の枠:C 5年の締切がないまちがい

【図2】まちがいの3グループ。本記事作成者が条文を整理して模式化したもの(グループ分けの言葉は単純化しています。正確な区分はレベル3の〔表4〕)。

① 登録のまちがいは無効審判で見直せる② ある種類のまちがいは登録の日から5年で締切③ ずるをして登録した人は守られない④ みんながこまるまちがいは締切なし
レベル1のまとめ
  • 目じるし(商標)の登録にまちがいがあったら、「なかったことにして」とたのむ手続(無効審判)がある。
  • でも、ある種類のまちがいは、登録の日から5年たつと、もうたのめなくなる。5年のあいだにできあがった「お店とお客さんの関係」を守るため。
  • わざとずるをして登録した場合や、みんながこまるまちがいには、5年の締切がない。

※ 「ある種類のまちがい」「ずる」「みんながこまるまちがい」は、正確には条文で一つずつ決まっています(→レベル3の〔表4〕〔表5〕)。「ずる」は条文では「不正競争の目的」「不正の目的」という2つの言葉で書き分けられています(→レベル3)。地域の名物の目じるし(地域団体商標)には、別の特別ルールがあります(→レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

「除斥期間」は条文にない呼び名

商標法第47条には、条文の見出しがありません(e-Gov法令検索の条文データに見出しがないことを確認しています)。「除斥期間(じょせききかん)」という言葉も、第47条の条文の中には出てきません。これは、「一定の期間がすぎると、もう請求できなくなる」という決まりを指して、学習書や実務で使われている講学上の呼称です。なお、最高裁判所の判決(レベル3で紹介)や特許庁の審判便覧も、この5年を「除斥期間」と呼んでいます。

第1項 ― ふつうの商標の5年ルール

商標法第47条第1項(原文) 商標登録が第三条、第四条第一項第八号若しくは第十一号から第十四号まで若しくは第八条第一項、第二項若しくは第五項の規定に違反してされたとき、商標登録が第四条第一項第十号若しくは第十七号の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、商標登録が同項第十五号の規定に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)又は商標登録が第四十六条第一項第四号に該当するときは、その商標登録についての同項の審判は、商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。

長い一文ですが、「どんな理由のときは」「いつから数えて5年で」「どうなる」の3つに分けると読めます。

部品条文の文言意味(中学生向け)
どんな理由①「第三条、第四条第一項第八号若しくは第十一号から第十四号まで若しくは第八条第一項、第二項若しくは第五項の規定に違反してされたとき」無条件で5年ルールがかかるグループ。見分ける力(識別力)、他人の氏名など、先に出願された他人の登録商標とにている、先願(早い者勝ち)のルールなど。
どんな理由②「第四条第一項第十号若しくは第十七号の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)」条件つきグループその1。「不正競争の目的」で登録を受けた場合は5年ルールがかからない。
どんな理由③「同項第十五号の規定に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)」条件つきグループその2。こちらは「不正の目的」。②と言葉がちがう点に注意。
どんな理由④「第四十六条第一項第四号に該当するとき」商標登録出願により生じた権利を承継していない人の出願に対して登録がされた場合。
何が「その商標登録についての同項の審判」商標法第46条第1項の審判=商標登録の無効審判。
いつから「商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は」スタートは「商標権の設定の登録の日」。出願の日でも、公報が出た日でもない。
どうなる「請求することができない」無効審判を請求できなくなる。

〔表1〕商標法第47条第1項の部品分解。右列は本記事作成者による説明。

flowchart TB
  A["無効審判で主張したい理由は?"] --> B{"第47条第1項に
書かれている理由か"} B -- "書かれている" --> C{"第4条第1項第10号・第17号
または第15号か"} B -- "書かれていない" --> Z["5年ルールなし
(第47条第1項は適用されない)"] C -- "いいえ(第3条、第8号、第11号〜第14号、第8条、第46条第1項第4号)" --> D["設定の登録の日から5年で
請求できなくなる"] C -- "第10号・第17号" --> E{"不正競争の目的で
商標登録を受けたか"} C -- "第15号" --> F{"不正の目的で
商標登録を受けたか"} E -- "はい" --> Z E -- "いいえ" --> D F -- "はい" --> Z F -- "いいえ" --> D style D fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style Z fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:5年の制限がかからない結論
  • 赤の箱:設定の登録の日から5年で請求できなくなる結論

【図3】商標法第47条第1項の構造。本記事作成者がフロー化したもの。

第2項 ― 地域団体商標の特別ルール

商標法第47条第2項(原文) 商標登録が第七条の二第一項の規定に違反してされた場合(商標が使用をされた結果商標登録出願人又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものでなかつた場合に限る。)であつて、商標権の設定の登録の日から五年を経過し、かつ、その登録商標が商標権者又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その商標登録についての第四十六条第一項の審判は、請求することができない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。

地域団体商標(ちいきだんたいしょうひょう)は、「地域の名前+商品の名前」のような目じるしを、組合などの団体が登録できる制度です(商標法第7条の2)。登録には「使った結果、広く知られていること」が必要です。第2項は、「登録のときは、まだ広く知られていなかった(だから本当は登録できなかった)。でも、登録から5年たち、しかも今は広く知られている」という場合に、無効審判を請求できなくする規定です。第1項とちがい、5年がたつだけでは足りず、「今は広く知られている」ことも必要です。

項対象請求できなくなる条件
第1項第3条、第4条第1項第8号・第11号〜第14号、第8条第1項・第2項・第5項、第4条第1項第10号・第17号(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く)、第15号(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く)、第46条第1項第4号商標権の設定の登録の日から5年を経過したこと
第2項第7条の2第1項違反のうち、登録時に周知でなかった場合(括弧書で限定)①商標権の設定の登録の日から5年を経過し、かつ②その登録商標が商標権者又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていること

〔表2〕商標法第47条の項ごとの役割。

5年のタイムチャート

出願 設定の登録の日 ← 5年の数え始めの基準 商標掲載公報の発行 異議 2月 第43条の2 5年:第47条第1項の理由でも無効審判を請求できる 5年を経過 請求できない 第47条に書かれていない理由(公益的な理由・後発的な理由など):5年の制限なし

図は左右にスクロールできます。

  • 藍の丸:設定の登録の日(5年を数え始める日)
  • 藍の枠:第47条第1項の理由でも無効審判を請求できる5年間
  • 青緑の丸と枠:登録異議の申立て(商標掲載公報の発行の日から2月)
  • 赤の枠:5年を経過した後(第47条第1項の理由では請求できない)
  • 橙の枠:第47条に書かれていない理由(5年の制限なし)
  • 赤の破線の縦線:5年を経過する時点

【図4】5年のタイムチャート。本記事作成者が条文(商標法第43条の2、第46条、第47条)を整理して図にしたもの。無効審判は利害関係人に限り請求できます(商標法第46条第2項)。時間軸に縮尺はありません。

レベル2のまとめ
  • 第47条に見出しはない。「除斥期間」は講学上の呼称。
  • 第1項:列挙された理由による無効審判は、「商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない」。
  • 第4条第1項第10号・第17号は「不正競争の目的」、第15号は「不正の目的」で商標登録を受けた場合、5年ルールの対象から外れる。
  • 第2項:地域団体商標は、「5年経過」+「今は周知」の2つがそろって初めて請求できなくなる。
  • 第47条に書かれていない無効理由には、この5年の制限がない。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 趣旨 ― なぜ5年で切るのか

最高裁判所第三小法廷 平成29年2月28日判決(平成27年(受)第1876号、民集71巻2号221頁。通称「エマックス事件」。通称であり判決文上の名称ではありません)は、商標法第47条第1項の趣旨について、第4条第1項第10号違反の場面に即して、無効審判が請求されることなく除斥期間が経過したときは、商標登録がされたことにより生じた既存の継続的な状態を保護するために商標登録の有効性を争い得ないものとしたことにある、と述べています(判決理由第4の部分)。

また、特許庁の平成17年法律改正解説書(地域団体商標)は、除斥期間の制度について、商標登録に瑕疵があっても、一定の期間無効審判の請求がなく平穏に経過したときは、既存の法律状態を尊重し維持するためのものである旨を説明しています(要旨)。

ポイント:5年ルールの対象は、おおまかに言えば「私益的な(当事者間の利害調整の色彩が強い)理由」で、対象外は「公益的な理由」と整理されるのが一般的です。ただし、この「私益/公益」の区分は条文の文言ではなく、学習上の整理です。答案や短答では、条文の列挙そのもの(〔表4〕)で判断してください。
立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』は、第47条を、商標登録の無効審判の請求についての除斥期間の規定と位置づけています。そのうえで、過誤によってされた商標登録であっても、一定の期間、無効審判の請求がなく平穏に経過したときは、その既存の法律状態を尊重し維持するために、無効理由である瑕疵が治癒したものとして、その理由による無効審判の請求を認めないものだと説明しています。また、どの無効理由に除斥期間を適用するかの判断基準は、その無効理由が、公益的な見地から既存の法律状態を覆してまでも無効とすべきものであるかどうかによる、としています。これは立法担当者の解説であり、条文の文言そのものではありません。
逐条解説〔第22版〕1739頁〜1740頁。

2. 要件の整理(第1項)

要件内容根拠
対象となる手続商標法第46条第1項の審判(商標登録の無効審判)。登録異議の申立て、取消審判は対象でない(それぞれ別の期間制限。〔表8〕)。第47条第1項「同項の審判」
対象となる無効理由第47条第1項に列挙された理由に限る(〔表4〕〔表5〕)。第47条第1項
起算の基準「商標権の設定の登録の日」。出願日、登録査定の日、商標掲載公報の発行の日ではない。第47条第1項
期間5年。期間の計算は、商標法第77条第1項が準用する特許法第3条による(初日不算入、年をもって定めた期間は暦に従う 等)。第47条第1項、第77条第1項、特許法第3条
効果「請求することができない」。商標登録の有効性を無効審判で争えなくなる。第47条第1項

〔表3〕商標法第47条第1項の要件整理。2026年9月時点の条文による。

Q. 設定の登録の日が2021年6月10日の場合、5年はいつ満了しますか。
A. 特許法第3条第1項第1号(初日不算入)と第2号(最後の月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する)を当てはめると、起算日は2021年6月11日、満了は2026年6月10日となります(本記事作成者による条文の当てはめ例。日付は架空)。第47条第1項は「五年を経過した後は」請求できないとしているので、満了日までの請求かどうかが分かれ目です。末日が休日に当たる場合の扱いなど、個別の計算は関連記事(期間の計算)と条文でご確認ください。
商標権が消滅した後は?:無効審判は商標権の消滅後においても、請求することができる(商標法第46条第3項)とされていますが、第47条の制限は別に働きます。つまり「消滅後でも請求できる」ことと「5年経過後は請求できない理由がある」ことは、別々にチェックします。

3. 第4条第1項の各号と5年ルール(一覧表)

第4条第1項の全号を並べ、拒絶理由(第15条)・異議理由(第43条の2)・無効理由(第46条)・除斥期間(第47条)への該当を示します。第4条第1項はすべての号が拒絶理由・異議理由・無効理由です(第15条第1号、第43条の2第1号、第46条第1項第1号がいずれも「第四条第一項」を号の限定なく挙げています)。違いが出るのは除斥期間の列だけです。

第4条第1項内容(要約)拒絶
第15条
異議
第43条の2
無効
第46条
除斥期間(第47条第1項)
第1号国旗、菊花紋章、勲章、褒章、外国の国旗○○○対象外(いつでも請求可)
第2号パリ条約の同盟国等の国の紋章その他の記章(経済産業大臣指定)○○○対象外
第3号国際連合その他の国際機関を表示する標章(経済産業大臣指定)○○○対象外
第4号赤十字の標章・名称、特殊標章○○○対象外
第5号政府・地方公共団体の監督用・証明用の印章・記号(経済産業大臣指定)○○○対象外
第6号国・地方公共団体、非営利の公益団体・公益事業等を表示する著名な標章○○○対象外
第7号公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標○○○対象外
第8号他人の肖像、他人の氏名・名称等を含む商標○○○対象(5年)
第9号博覧会の賞と同一又は類似の標章を有する商標○○○対象外
第10号他人の周知商標と同一・類似で、同一・類似の商品・役務に使用をするもの○○○条件付き:対象(5年)。ただし「不正競争の目的で商標登録を受けた場合」は対象外
第11号先に出願された他人の登録商標と同一・類似で、同一・類似の指定商品・指定役務に使用をするもの○○○対象(5年)
第12号他人の登録防護標章と同一の商標で、その指定商品・指定役務に使用をするもの○○○対象(5年)
第13号削除――――(第47条第1項の「第十一号から第十四号まで」の範囲には入るが、現行の第13号は「削除」)
第14号種苗法の品種登録を受けた品種の名称と同一・類似の商標○○○対象(5年)
第15号他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第10号から第14号までを除く)○○○条件付き:対象(5年)。ただし「不正の目的で商標登録を受けた場合」は対象外
第16号商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標○○○対象外
第17号ぶどう酒・蒸留酒の産地を表示する標章を有する商標で、当該産地以外を産地とするものに使用をするもの○○○条件付き:対象(5年)。ただし「不正競争の目的で商標登録を受けた場合」は対象外
第18号商品等が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標○○○対象外
第19号他人の周知商標(日本国内又は外国)と同一・類似で、不正の目的をもって使用をするもの○○○対象外

〔表4〕商標法第4条第1項各号と拒絶理由・異議理由・無効理由・除斥期間の対応。内容欄は要約であり、各号の括弧書・除外規定を省略しています(正確な文言は各号の関連記事と条文で)。2026年9月時点のe-Gov条文による。本記事作成者が整理したもの。

覚え方の注意:「対象=第8号、第11号、第12号、第14号」「条件付き=第10号・第15号・第17号」と覚える場合、①第10号・第17号は「不正競争の目的」、第15号だけ「不正の目的」であること、②第19号は号自体が「不正の目的」を要件にしていて、第47条第1項に挙げられていない(=除斥期間の対象外)こと、をセットで押さえてください。第15号の括弧書と第19号を取り違えやすいところです。

4. 第4条第1項以外の無効理由と5年ルール

無効理由(第46条第1項)拒絶
第15条
異議
第43条の2
除斥期間(第47条)
第1号:第3条違反(識別力等)○○対象(第1項)
第1号:第7条の2第1項違反(地域団体商標)○○第1項には挙げられていない。第2項の場合(登録時に周知でなかった場合に限る)のみ、5年経過+現在周知で請求不可
第1号:第8条第1項違反(先願・異日出願)×(第15条第1号に挙げられていない)○対象(第1項)
第1号:第8条第2項・第5項違反(同日出願)○○対象(第1項)
第1号:第51条第2項(第52条の2第2項で準用する場合を含む)、第53条第2項違反(取消し後5年間の再登録禁止)○○対象外
第1号:第77条第3項で準用する特許法第25条違反(外国人の権利の享有)○○対象外
第2号:条約違反○(第15条第2号)○対象外
第3号:第5条第5項の要件を満たしていない出願に対する登録○(第15条第3号)○対象外
第4号:商標登録出願により生じた権利を承継しない者の出願に対する登録×(第15条各号に挙げられていない)×(第43条の2各号に挙げられていない)対象(第1項)
第5号:登録後に、権利を享有できない者になったとき/条約違反となったとき(後発的)――対象外
第6号:登録後に、第4条第1項第1号〜第3号、第5号、第7号、第16号に該当するものとなっているとき(後発的)――対象外
第7号:地域団体商標の登録後に、組合等に該当しなくなったとき、周知でなくなっているとき等(後発的)――対象外

〔表5〕商標法第46条第1項各号と除斥期間の対応。2026年9月時点のe-Gov条文(第15条、第43条の2、第46条第1項、第47条)による。本記事作成者が整理したもの。第15条第3号は第5条第5項のほか第6条第1項・第2項も挙げていますが、後者は異議理由・無効理由ではありません。

特許庁の審判便覧 51―06「無効審判の請求の制限等」も、商標権について、設定登録の日から5年経過後は請求できない理由があること、第4条第1項第10号・第17号・第15号は不正競争の目的・不正の目的で商標登録を受けた場合には除斥期間がないこと、後発的な事由を理由とする無効審判の請求にも除斥期間がないことを記載しています。

5. 「不正競争の目的」と「不正の目的」

文言第47条第1項で使われる場面条文上の手がかり
不正競争の目的第4条第1項第10号・第17号違反の括弧書:不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。第47条には定義なし。
不正の目的第4条第1項第15号違反の括弧書:不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。第4条第1項第19号に不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)との定義がある。

〔表6〕2つの文言の使い分け。条文の文言どおり。

2つの文言の広狭(どちらが広いか)や、第15号だけが「不正の目的」とされている理由については、条文自体は述べていません。

第15号の括弧書の経緯と、文言の使い分け(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、第4条第1項第15号違反の登録について、不正の目的で商標登録を受けた場合を除斥期間の対象から除く括弧書を設けたのは平成8年の一部改正だと説明しています。理由として、改正前は、第10号(周知商標)については不正競争の目的で登録を受けた場合に除斥期間を設けていなかったのに、第15号については除斥期間を設けており、両者に差を設ける格別の理由も見いだせないため、第15号についても、いわゆる悪意で登録を受けた場合には除斥期間から外すこととした、としています。あわせて、TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)第16条が、周知商標の保護に関するパリ条約第6条の2の規定を、非類似の商品・役務の間にも混同等が起こることを条件に適用するよう加盟国に義務づけていること、パリ条約第6条の2(3)が、他人の周知商標について悪意で登録を受けた場合には、その登録の無効の請求について期間を設けないとしていることにも触れています。
文言の使い分けについては、第10号は同一・類似の商品・役務の間、つまり競争関係がある場面の問題として扱えば足りるのに対し、第15号は非類似の商品・役務の間、つまり競争関係のない同業者以外の者の間にも適用があるので、不正競争の目的では狭く、これを含む不正の目的という文言を用いた、と説明しています。
逐条解説〔第22版〕1740頁。。パリ条約本文も特許庁掲載の日本語正文と照合しています。

6. 第2項(地域団体商標)の要件

flowchart TB
  A["地域団体商標の商標登録が
第7条の2第1項に違反してされた"] --> B{"違反の中身は
登録時に周知でなかったことか"} B -- "はい" --> C{"商標権の設定の登録の日から
5年を経過したか"} B -- "いいえ(主体の要件など、ほかの違反)" --> X["第47条第2項の対象外
期間の制限なく請求できる"] C -- "はい" --> D{"その登録商標が商標権者又は
その構成員の業務に係る商品・役務を
表示するものとして
需要者の間に広く認識されているか"} C -- "いいえ" --> Y["請求できる"] D -- "はい" --> N["第46条第1項の審判は
請求することができない"] D -- "いいえ" --> Y style N fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style X fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style Y fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:無効審判を請求できる結論
  • 赤の箱:無効審判を請求できない結論

【図5】商標法第47条第2項の判断手順。本記事作成者がフロー化したもの。

  • 括弧書の限定(条文上の帰結):第2項が働くのは、第7条の2第1項違反のうち、周知性を欠いていた場合に限るとされています。したがって、同項違反でも周知性以外の点(たとえば出願人が同項の定める団体に当たらなかった等)を理由とする無効審判には、第2項は適用されません。また、第7条の2第1項は第1項の列挙にも入っていません。
  • 「5年経過」だけでは足りない:第1項と異なり、かつ、その登録商標が…需要者の間に広く認識されているときという要件が重なります。5年を経過しても周知になっていなければ、無効審判を請求できます。
  • 逐条的な説明:特許庁の平成17年法律改正解説書(地域団体商標)は、登録時には周知性の要件を満たしていなくても、その後に周知性を獲得している場合について、無効審判の請求を制限する趣旨を説明しています。
立法趣旨と、周知性を見る時点(逐条解説〔第22版〕):第2項の「広く認識されているとき」をどの時点で判断するかは、条文の文言からは一義的に読み取れません。逐条解説〔第22版〕は、第2項を平成17年の一部改正で新設された規定とし、登録時に第7条の2第1項の周知性の要件を満たしていなかったことを理由とする無効審判は、商標登録から5年経過後は、無効審判の請求の時点で商標が周知となっている場合には請求できない旨を定めたもの、と説明しています。
その理由として同書は、①地域団体商標の対象となる商標は、本来、独占に適しないとされてきたものなので、登録要件を満たさないのに過誤で登録された場合には、原則として除斥期間の適用を認めるべきではないこと、②しかし周知性については、登録時に満たしていなくても、その後の営業努力等によって事後的に獲得していることが考えられ、その場合にまで期間の経過にかかわらず常に無効審判の対象とするのは必ずしも適当でないこと、③そこで、登録後に周知となった商標に蓄積された信用や、商標登録に基づく既存の法律状態を保護する観点から、請求を制限したこと、を挙げています。時点についての記述は立法担当者の解説であり、条文上の帰結ではありません。
逐条解説〔第22版〕1740頁〜1741頁。

7. 侵害訴訟での主張 ― 5年経過後に「無効の抗弁」は出せるか

商標法第39条は、特許法第104条の3第1項及び第2項を商標権又は専用使用権の侵害に準用するとしています。特許法第104条の3第1項は、侵害訴訟において権利が無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、権利者は相手方に権利を行使できない、とする規定です(講学上・実務上「無効の抗弁」と呼ばれます。条文上の名称ではありません)。では、第47条第1項の5年が経過して無効審判を請求できなくなった後に、侵害訴訟の被告は同じ無効理由を抗弁として主張できるでしょうか。

この点を判断したのが、最高裁判所第三小法廷 平成29年2月28日判決(平成27年(受)第1876号、民集71巻2号221頁、通称エマックス事件)です。裁判所ウェブサイトに掲載された裁判要旨は次の2点です。

裁判要旨(裁判所ウェブサイト掲載の要旨を本記事作成者が要約)結論
要旨1
無効の抗弁
第4条第1項第10号該当を理由とする無効審判が請求されないまま設定登録の日から5年を経過した後は、当該商標登録が不正競争の目的で受けたものである場合を除き、侵害訴訟の相手方は、同号該当による無効理由の存在をもって、商標法第39条が準用する特許法第104条の3第1項の規定に係る抗弁を主張することが許されない。原則 不可(不正競争の目的で受けた登録なら可)
要旨2
権利濫用の抗弁
同じく5年を経過した後であっても、当該商標登録が不正競争の目的で受けたものであるか否かにかかわらず、侵害訴訟の相手方は、その登録商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして出願時に需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であるために同号に該当することを理由として、自己に対する商標権の行使が権利の濫用に当たることを抗弁として主張することが許される。可(周知商標の主体である相手方自身に限った判示)

〔表7〕最高裁判所第三小法廷 平成29年2月28日判決(平成27年(受)第1876号)の裁判要旨の整理。出典:裁判所ウェブサイト 裁判例結果詳細、2026年9月参照。

商標権者(原告) 設定の登録の日から 5年を経過した登録商標 相手方(被告) 出願時から自己の周知商標を 使用している者 差止め等の請求(侵害訴訟) 抗弁 抗弁① 無効の抗弁 商標法第39条→特許法第104条の3第1項 第4条第1項第10号該当を理由とする場合 5年経過後は主張できない (不正競争の目的で受けた登録は除く) 抗弁② 権利濫用の抗弁 自己の周知商標との関係で第10号に該当 することを理由とする場合 5年経過後でも主張できる (不正競争の目的の有無にかかわらず)

図は左右にスクロールできます。

  • 白い枠:侵害訴訟の当事者
  • 赤の枠:5年経過後は主張できない抗弁
  • 青緑の枠:5年経過後でも主張できる抗弁
  • 実線の矢印:商標権者から相手方への請求
  • 破線の矢印:相手方が出す抗弁

【図6】5年経過後の侵害訴訟における2つの抗弁の関係(最高裁判所第三小法廷 平成29年2月28日判決の裁判要旨を、本記事作成者が相関図にしたもの)。※ 判決の裁判要旨が直接述べているのは第4条第1項第10号の場面です。

射程についての注意:この判決の裁判要旨が直接述べているのは、第4条第1項第10号該当を理由とする場面です。第11号・第15号など他の号についても同じ結論になるか、周知商標の主体でない第三者が権利濫用を主張できるかは、この裁判要旨からは直接には導かれません。答案で触れる場合は、判決の示した場面(第10号、相手方自身の周知商標)を正確に特定して書くのが安全です。
準用の範囲:商標法第39条が準用するのは特許法第104条の3の第1項及び第2項です(第3項は挙げられていません)。

8. 5年以内に請求した審判で、5年経過後に別の理由を足せるか

除斥期間内に無効審判を請求した後、5年を経過してから、請求書に書いていなかった別の無効理由(第47条第1項の対象となる理由)を追加できるか、という論点があります。条文の文言(請求することができない)だけからは直ちに結論が出ないため、裁判例・審判実務の確認が必要です。

最高裁は、当初の無効原因とは異なる無効原因を追加することを、その原因に基づく新たな審判請求と捉え、除斥期間経過後には許されないと判断しています。現行第56条が特許法第131条の2を準用する際、無効審判の「請求の理由」を要旨変更禁止の対象から除いていても、第47条の除斥期間までなくなるわけではありません。最高裁判決本文3頁/第47条・第56条

9. 判断手順(分岐図)

flowchart TB
  S["登録商標について無効審判を請求したい
(利害関係人であること:第46条第2項)"] --> T{"商標権の設定の登録の日から
5年を経過しているか"} T -- "経過している" --> U{"主張する無効理由は?"} T -- "経過していない" --> OK1["第47条の制限なし
第46条第1項各号の理由で請求できる"] U -- "第3条、第4条第1項第8号・第11号・第12号・第14号、
第8条第1項・第2項・第5項、第46条第1項第4号" --> NG1["請求できない
(第47条第1項)"] U -- "第4条第1項第10号・第17号" --> V{"不正競争の目的で
商標登録を受けたか"} U -- "第4条第1項第15号" --> W{"不正の目的で
商標登録を受けたか"} U -- "第7条の2第1項
(登録時に周知でなかった)" --> X{"現在、需要者の間に
広く認識されているか"} U -- "上記以外
(第4条第1項第1号〜第7号・第9号・第16号・第18号・第19号、
第46条第1項第2号・第3号・第5号〜第7号 など)" --> OK2["請求できる
(第47条に挙げられていない)"] V -- "はい" --> OK3["請求できる"] V -- "いいえ" --> NG1 W -- "はい" --> OK3 W -- "いいえ" --> NG1 X -- "はい" --> NG2["請求できない
(第47条第2項)"] X -- "いいえ" --> OK3 style NG1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style NG2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style OK1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style OK2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style OK3 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:無効審判を請求できる結論
  • 赤の箱:無効審判を請求できない結論

【図7】5年経過後に無効審判を請求できるかの判断手順。本記事作成者が商標法第46条・第47条をフロー化したもの。

10. 取消審判・登録異議の申立ての期間制限との比較

手続期間制限の条文起算点期間
登録異議の申立て(第43条の2)第43条の2柱書商標掲載公報の発行の日2月以内
無効審判(第46条)第47条第1項商標権の設定の登録の日5年(列挙された理由のみ)
無効審判(地域団体商標)第47条第2項商標権の設定の登録の日5年経過+現在周知
不使用による取消審判(第50条。「不使用取消審判」は実務上の呼称)第50条に、請求期間を制限する規定はない――
商標権者の不正使用による取消審判(第51条)第52条商標権者の同項に規定する商標の使用の事実がなくなった日5年
商標権の移転に伴う混同による取消審判(第52条の2)第52条の2第2項(第52条を準用)(第52条の準用による)5年
使用権者の不正使用による取消審判(第53条)第53条第3項(第52条を準用)(第52条の準用による)5年
代理人等の不正登録による取消審判(第53条の2)第53条の3商標権の設定の登録の日5年

〔表8〕商標法の登録後の手続と期間制限の比較。2026年9月時点のe-Gov条文による。手続の呼び名(「不正使用による取消審判」等)は講学上・実務上の呼称で、条文の見出しではありません。

ひっかけ注意:同じ「5年」でも起算点が2種類あります。第47条と第53条の3は「商標権の設定の登録の日」から、第52条(第52条の2第2項・第53条第3項で準用)は「使用の事実がなくなつた日」からです。なお、第51条第2項・第53条第2項の「5年」は、取消審決確定後の再登録禁止の期間であり、審判請求の期間制限ではありません。

11. 防護標章登録の無効審判

商標法第68条第4項は、防護標章登録に係る登録異議の申立て及び審判に準用する規定として、第四十三条の二(第三号を除く。)から第四十五条まで、第四十六条(第一項第三号及び第七号を除く。)、第四十六条の二、第五十三条の二、第五十三条の三、第五十四条第一項及び第五十五条の二から第五十六条の二までを挙げています。第47条はこの列挙に含まれていません(条文上の帰結)。

12. 特許法・実用新案法・意匠法との比較

法律無効審判の条文請求期間を制限する規定権利消滅後の請求
商標法第46条あり:第47条(設定の登録の日から5年。列挙された理由のみ)可(第46条第3項)。ただし第47条の制限は別に働く
特許法特許法第123条同条に「○年を経過した後は請求できない」とする規定はない可(特許法第123条第3項)
実用新案法実用新案法第37条同条に同様の規定はない可(実用新案法第37条第3項)
意匠法意匠法第48条同条に同様の規定はない可(意匠法第48条第3項)

〔表9〕四法の無効審判と期間制限。2026年9月時点のe-Gov条文による。特許庁「審判便覧」51―06も、除斥期間の記載を商標権についてのみ置いています。

特許法の除斥期間の廃止と、商標法に残した理由(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕の特許法第124条(現行は削除)の項は、昭和62年の一部改正前の特許の無効審判には、外国刊行物に関する5年間の除斥期間が設けられていたが、同改正で廃止されたと説明し、その理由を次の3つ挙げています。
①各国間の情報手段が整備され、外国で頒布された刊行物の内容も容易に知り得る状況になったため、昭和34年当時の、外国刊行物の内容は容易に知り得ないとして除斥期間を設けた考え方を維持する必要がなくなったこと。
②外国企業にとって無効審判で最も効果的な方法は公知文献を示すことだが、外国刊行物による請求には5年間の除斥期間があったため、期間経過後は自国の文献を根拠に請求できず、結果的に外国企業が不利に扱われており、国内出願人も、この制度を存続させる必要は特にないとしていたこと。
③欧米の主要国に、外国刊行物に関する無効審判の請求に除斥期間を設けている国はなく、制度の国際的調和に反すること。
一方、同書の商標法第47条の項は〔参考〕として、昭和62年の一部改正で特許法では除斥期間をすべて廃止したのに、商標法では従前どおりとされたのは、特許法では除斥期間があることによる弊害が大きいのに対し、商標法にはそのような事態がなく、むしろ権利の安定化が重視されているためだ、と説明しています。
逐条解説〔第22版〕特許法 459頁〜460頁、商標法 1741頁。
現行の実用新案法・意匠法には、商標法第47条のように無効審判の請求を登録から5年に限る規定はありません。実用新案法第37条第3項、意匠法第48条第3項は、権利消滅後も無効審判を請求できると定めています。ここでは現行制度を比較し、未照合の旧法の有無は比較表に含めません。実用新案法第37条/意匠法第48条

13. 改正の経緯(確認できた範囲)

  • 第2項(地域団体商標):地域団体商標制度を導入した平成17年法律改正で設けられたことが、特許庁の平成17年法律改正解説書(地域団体商標の章)で確認できます。
  • 第1項の「第8号」:第4条第1項第8号は令和5年法律第51号で改正されています(他人の氏名を含む商標。施行日は令和6年4月1日)。第47条第1項が第8号を除斥期間の対象としている点は、現行条文のとおりです。
第1項の列挙の変遷(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、第1項の変遷を次のように説明しています。
  • 第4条第1項第17号:平成6年の一部改正で、TRIPS協定第24条の規定に従って追加された。
  • 平成8年の一部改正:連合商標制度の廃止に伴い、除斥期間の対象となる無効理由から、連合商標の登録要件に関する規定(同改正前の第7条第1項・第3項)を削除した。同じ改正で、第15号違反について不正の目的で商標登録を受けた場合を除く括弧書を設けた(理由は→5.)。
  • 第2項:平成17年の一部改正で新設(→6.)。
  • 平成26年の一部改正:明確性要件を無効理由とする第46条第1項第3号が新設されたことに伴い、所要の改正を行った。
逐条解説〔第22版〕1740頁〜1741頁。。第7条第1項・第3項は平成8年改正前の条番号として同書が挙げるものです。
令和8年度受験案内は、各試験の実施日に施行されている法令を出題対象としています。同年の短答試験日は5月17日です。本記事の現行制度の説明は2026年9月21日時点、過去問はその試験日の法令を基準に区別しています。令和8年度受験案内・表紙及び2頁

試験での問われ方

形式問われやすい切り口(断定ではなく、条文構造から見た整理)
短答式①号ごとの対象/対象外(とくに第7号・第16号・第19号は対象外、第8号・第11号は対象)、②第10号・第17号「不正競争の目的」と第15号「不正の目的」の書き分け、③起算点(設定の登録の日)と第52条の起算点の違い、④第2項の「かつ」要件、⑤防護標章登録への準用の有無。
論文式侵害訴訟の被告側の対応として、無効審判(第46条)・無効の抗弁(第39条が準用する特許法第104条の3第1項)・権利濫用の抗弁を検討する際に、設定の登録の日から5年を経過しているかの確認と、平成29年2月28日最高裁判決の示した場面の特定。
口述「第47条第1項の対象となる無効理由を挙げてください」「起算点は」「第2項の要件は」といった条文ベースの問い。条文の列挙を口頭で再現できるかが基本。

〔表10〕試験種別ごとの整理(本記事作成者による。出題を保証するものではありません)。

令和8年度短答の商標全10問には、第47条の5年の除斥期間そのものを直接問う肢はありません。問8肢ロの5年は、第51条第2項の再登録禁止期間であり、第47条とは起算点も効果も異なります。問8の正解は2です。 公式問題/公式正解。肢の説明は条文による検証であり、公式解答が公表するのは問題全体の正解番号です。
レベル3のまとめ
  • 除斥期間の対象(第47条第1項):第3条、第4条第1項第8号・第11号〜第14号(第13号は削除)、第8条第1項・第2項・第5項、第46条第1項第4号。条件付き:第4条第1項第10号・第17号(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く)、第15号(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く)。
  • 対象外(いつでも請求可):第4条第1項第1号〜第7号、第9号、第16号、第18号、第19号、第46条第1項第2号・第3号・第5号〜第7号など、第47条に挙げられていない理由。
  • 第2項(地域団体商標):登録時に周知でなかった場合に限り、「5年経過」かつ「現在周知」で請求不可。
  • 最高裁判所第三小法廷 平成29年2月28日判決(平成27年(受)第1876号):第10号について、5年経過後の無効の抗弁は原則不可(不正競争の目的で受けた登録を除く)。自己の周知商標との関係での権利濫用の抗弁は可。
  • 取消審判の5年(第52条)は起算点が異なる。第53条の3は設定の登録の日から5年。防護標章登録には第47条が準用されていない。
  • 特許法・実用新案法・意匠法の無効審判の条文に、同様の期間制限はない(現行)。

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