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小学生でも分かる商標法|商標法第43条の2〜第43条の15 登録異議の申立て ― 登録されたあとの2か月間、だれでも「見直して」と言えるしくみ

小学生でもわかる商標法 第37回「登録異議の申立て」。登録を見直すための手続。

小学生でも分かる商標法 / D. 登録異議・審判・訴訟 #37

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目じるし(商標)が登録されると、そのことが公報(こうほう)というお知らせにのります。そこから2か月のあいだは、だれでも特許庁に「その登録、まちがっていませんか」と申し出ることができます。これが登録異議の申立て(とうろくいぎのもうしたて)です。この記事では、だれが・いつまでに・どんな理由で申し立てられるか、特許庁がどう見直すか、結果に文句が言えるのはだれかを、3つのレベルで順に見ていきます。特許法の特許異議の申立てや、商標登録の無効審判とのちがいも表で整理します。

条文:商標法第43条の2〜第43条の15(第四章の二)特許庁資料:審判便覧 66 商標登録異議の申立て参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

登録のあとに、みんなでもう一度チェックする

パン屋さんが「ほしぞらパン」という名前を、お店の目じるしとして特許庁(とっきょちょう)に登録してもらったとします。目じるしのことを、法律では商標(しょうひょう)といいます。

登録の前には、特許庁の審査官(しんさかん)という人がチェックをしています。でも、審査官も人です。町のことをぜんぶ知っているわけではありません。「じつは、となり町でずっと前から有名な、そっくりの名前のパン屋さんがあった」ということを、見のがすかもしれません。

そこで、登録したことを公報(こうほう)というお知らせにのせて、みんなに見てもらいます。お知らせが出てから2か月のあいだは、だれでも特許庁に「この登録はおかしいと思います。見直してください」と言うことができます。これが「登録異議の申立て」です。

① 登録された目じるし ほしぞらパン (架空のパン屋さん) ② 公報でお知らせ 「この目じるしを 登録しました」 ここから2か月がスタート ③ だれでも申し出OK 「その登録、おかしいと 思います。見直して!」 2か月以内だけ ④ 特許庁がもう一度チェック 審判官(しんぱんかん)が3人か5人で 書類を読んで見直す 話し合いの場ではなく「見直し」の場 まちがいあり → 登録を取り消す まちがいなし → 登録はそのまま

図は左右にスクロールできます。

  • 橙の枠:登録された目じるし(商標)と、登録がそのまま残る結論
  • 青緑の枠:特許庁が出すお知らせ(公報)
  • 赤の枠:登録に「待った」をかける側の動き(申し出・取り消し)
  • 藍の枠:特許庁の審判官が見直しをする場

【図1】登録異議の申立てのイメージ。「ほしぞらパン」は架空の名前。本記事作成者が条文を単純化して模式化したもの。

「2か月」は短い。だから見直しも早い

申し出ができるのは、お知らせが出てから2か月だけです。2か月をすぎたら、この方法は使えません。

そのかわり、だれでも申し出ることができます。「ほしぞらパン」とライバルのパン屋さんでなくてもかまいません。これは、この見直しが「だれかとだれかのケンカを解決するため」ではなく、「特許庁のした登録が正しかったかを確かめて、登録をみんなが信じられるようにするため」のしくみだからです。

時間の流れ → 登録 公報でお知らせ 2か月:だれでも申し出できる しめきり この方法はもう使えない (べつの方法=無効審判はある)

図は左右にスクロールできます。

  • 橙の丸:登録がされた時点
  • 青緑の丸:公報でお知らせが出た時点(ここが2か月の起算点)
  • 青緑の帯:だれでも申し出ができる2か月
  • 赤の帯:この方法がもう使えない期間
  • 赤の破線のたて線:しめきり(2か月がすぎる時点)

【図2】申し出ができる期間のイメージ。本記事作成者が模式化したもの。※ 無効審判(むこうしんぱん)は、かかわりのある人だけが使える、べつの見直しの方法です。

① 登録のお知らせ(公報)が出る② 2か月以内なら、だれでも申し出できる③ 審判官が3人か5人で見直す④ 取り消すか、そのままにするかを決める
レベル1のまとめ
  • 目じるし(商標)が登録されると、公報というお知らせが出る。
  • お知らせから2か月のあいだ、だれでも特許庁に「見直して」と申し出ることができる。
  • 特許庁の審判官が見直して、まちがいがあれば登録を取り消す。取り消されると、その権利は「はじめからなかった」ことになる。
  • まちがいがなければ、登録はそのまま。申し出た人は、この結果に文句を言うことができない。

※ 「おかしい」と言える理由は、正確には法律で決められたものだけです。また、申し出には決まった書類が必要で、あとから理由を足せる期間にも条件があります(→レベル3)。「だれでも」と「文句を言えない」にも、細かいルールがあります(→レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

出発点は第43条の2 ― だれが・いつ・どこに・何を理由に

登録異議の申立ては、商標法の「第四章の二」(第43条の2〜第43条の15)にまとめて書かれています。最初の第43条の2が、申立てができる人・期間・理由を決めている条文です。

商標法第43条の2 柱書(原文) 何人も、商標掲載公報の発行の日から二月以内に限り、特許庁長官に、商標登録が次の各号のいずれかに該当することを理由として登録異議の申立てをすることができる。この場合において、二以上の指定商品又は指定役務に係る商標登録については、指定商品又は指定役務ごとに登録異議の申立てをすることができる。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
部品条文の文言意味(やさしく言うと)
だれが「何人も」だれでも。その商標と関係がある人でなくてもよい。
いつまでに「商標掲載公報の発行の日から二月以内に限り」登録を知らせる公報が出た日から2か月以内だけ。
どこに「特許庁長官に」申立書のあて先は特許庁長官。
何を理由に「次の各号のいずれかに該当することを理由として」理由は第1号〜第3号に書かれたものだけ。
どの範囲で「指定商品又は指定役務ごとに」登録の一部(たとえば「パン」だけ)をねらって申し立てることもできる。

〔表1〕商標法第43条の2柱書の部品分解。

商標法第43条の2 各号(原文) 一 その商標登録が第三条、第四条第一項、第七条の二第一項、第八条第一項、第二項若しくは第五項、第五十一条第二項(第五十二条の二第二項において準用する場合を含む。)、第五十三条第二項又は第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条の規定に違反してされたこと。
二 その商標登録が条約に違反してされたこと。
三 その商標登録が第五条第五項に規定する要件を満たしていない商標登録出願に対してされたこと。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。

第四章の二の全体像 ― 14の条文の役割

条見出し役割(要約)
第43条の2登録異議の申立てだれでも・商標掲載公報の発行の日から2月以内・第1号〜第3号の理由・指定商品又は指定役務ごと。
第43条の3決定3人又は5人の審判官の合議体が審理・決定。取消決定/維持決定。取消決定の確定で商標権は初めから存在しなかったものとみなす。維持決定には不服申立て不可。
第43条の4申立ての方式等登録異議申立書の記載事項。補正は要旨変更不可(ただし書あり)。副本を商標権者へ送付。専用使用権者等への通知(第46条第4項の準用)。
第43条の5審判官の指定等合議体・審判官に関する審判の規定を準用(除斥・忌避など)。
第43条の5の2審判書記官特許庁長官が、各登録異議申立事件について審判書記官を指定。
第43条の6審理の方式等書面審理による。ただし、審判長は申立てにより又は職権で口頭審理にできる。
第43条の7参加商標権に関し利害関係を有する者は、決定があるまで、商標権者を補助するために参加できる。
第43条の8証拠調べ及び証拠保全審判の証拠調べ・証拠保全の規定を準用。
第43条の9職権による審理申し立てない理由も審理できる。申立てがされていない指定商品又は指定役務は審理できない。
第43条の10申立ての併合又は分離同一の商標権に係る二以上の申立ては、特別の事情がある場合を除き、併合する。
第43条の11申立ての取下げ取消理由の通知(第43条の12)があった後は、取り下げることができない。
第43条の12取消理由の通知取消決定をしようとするときは、商標権者及び参加人に理由を通知し、意見書を提出する機会を与える。
第43条の13決定の方式決定は文書で。謄本を商標権者、登録異議申立人、参加人等に送達。
第43条の14決定の確定範囲決定は登録異議申立事件ごとに確定。ただし、指定商品又は指定役務ごとに申し立てられた場合は、指定商品又は指定役務ごとに確定。
第43条の15審判の規定の準用方式違反の却下、不適法な申立ての却下、審尋、訴訟との関係、費用などの審判の規定を準用。

〔表2〕商標法第四章の二(第43条の2〜第43条の15)の条文一覧。見出しはe-Gov法令検索の表示どおり、役割欄は本記事作成者の要約(かっこ書・準用先の詳細は省略)。

手続の流れ

flowchart TB
  A["商標権の設定の登録"] --> B["商標掲載公報の発行"]
  B --> C["登録異議の申立て
(発行の日から2月以内・何人も)
第43条の2"] C --> D["登録異議申立書の副本を商標権者へ送付
専用使用権者等へ通知
第43条の4第4項・第5項"] D --> E["3人又は5人の審判官の合議体が審理
書面審理が原則
第43条の3第1項・第43条の6"] E --> F{"第43条の2各号に
該当すると認めるか"} F -- "認めそう" --> H["取消理由の通知
第43条の12"] F -- "認めない" --> G["維持決定
第43条の3第4項"] H --> I["商標権者・参加人が意見書を提出"] I --> J{"意見書をふまえても
該当すると認めるか"} J -- "認める" --> K["取消決定
第43条の3第2項"] J -- "認めない" --> G G --> L["不服を申し立てることができない
第43条の3第5項"] K --> M["東京高等裁判所への訴え
第63条"] style G fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style K fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:商標登録が維持される結論(維持決定)
  • 赤の箱:商標登録が取り消される結論(取消決定)

【図3】登録異議の申立ての手続フロー。商標法第43条の2〜第43条の12、第63条に基づき本記事作成者がフロー化したもの(却下、併合、取下げ等は省略)。

登場人物の関係 ― 「対立する二人」ではなく「特許庁と商標権者」

無効審判は、請求人と被請求人(商標権者)が向かい合う形で進みます。これに対して登録異議の申立てでは、申立人は見直しの「きっかけ」をつくる人で、見直しをするのは特許庁の合議体です。取消理由の通知を受けて意見書を出すのは、商標権者(と参加人)です。

特許庁 審判官3人又は5人の合議体 審理・決定(第43条の3第1項) 登録異議申立人 「何人も」 公報発行の日から2月以内 商標権者 意見書を提出できる (訂正の請求の制度はない) 参加人 使用権者など利害関係人 商標権者を補助(第43条の7) ① 登録異議申立書 (第43条の4第1項) ② 副本の送付 ③ 取消理由の通知 (第43条の4第4項・第43条の12)

図は左右にスクロールできます。

  • 藍の枠:審理・決定をする特許庁(審判官の合議体)
  • 青緑の枠:見直しのきっかけをつくる側(登録異議申立人)
  • 橙の枠:意見書を提出する側(商標権者)
  • 白い枠:商標権者を補助する参加人

【図4】登録異議の申立ての登場人物。商標法第43条の3、第43条の4、第43条の7、第43条の12に基づき本記事作成者が作成した相関図。

決定は2種類

商標法第43条の3 第2項〜第5項(原文) 2 審判官は、登録異議の申立てに係る商標登録が前条各号の一に該当すると認めるときは、その商標登録を取り消すべき旨の決定(以下「取消決定」という。)をしなければならない。
3 取消決定が確定したときは、その商標権は、初めから存在しなかつたものとみなす。
4 審判官は、登録異議の申立てに係る商標登録が前条各号の一に該当すると認めないときは、その商標登録を維持すべき旨の決定をしなければならない。
5 前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。項番号「2」〜「5」は本記事で付したもの。
決定どんなとき効果不服申立て
取消決定(第43条の3第2項)第43条の2各号の一に該当すると認めるとき確定すると、商標権は初めから存在しなかったものとみなす(第3項)東京高等裁判所に訴えを提起できる(第63条)
維持決定(第43条の3第4項)該当すると認めないとき商標登録はそのままできない(第5項)

〔表3〕決定の種類。「維持決定」は条文上の定義語ではなく、第43条の3第4項の「その商標登録を維持すべき旨の決定」を指す本記事での呼び方(特許庁の審判便覧は「登録維持決定」「登録取消決定」の語を用いている)。

レベル2のまとめ
  • 第43条の2:何人も、商標掲載公報の発行の日から2月以内に限り、特許庁長官に、第1号〜第3号の理由で、指定商品又は指定役務ごとに申し立てることができる。
  • 第43条の3:3人又は5人の審判官の合議体が審理・決定。取消決定か、維持決定か。
  • 取消決定をする前には、必ず取消理由の通知と意見書の機会(第43条の12)。
  • 維持決定には不服申立てができない。取消決定には第63条の訴え。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 制度の位置づけ ― 公益的な見直しの制度

特許庁の審判便覧(66―00 商標登録異議の申立て。「改訂 R5.12」の表示あり)は、この制度の趣旨を、商標登録に対する信頼を高めるという公益的な目的のために、登録後の一定期間に限って広く第三者に取消しを求める機会を与え、特許庁が自ら登録処分の適否を審理して、瑕疵があれば是正するもの、と説明しています。当事者間の具体的な紛争の解決を主眼とする制度ではないため、申立人は利害関係人に限られず「何人も」とされている、という説明です。

同便覧によれば、商標の登録異議の申立てが現在の「登録後」の形になったのは平成8年改正法(平成9年4月1日施行)で、それ以前の「登録前」の登録異議申立制度を廃止して導入されたとされています。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):登録前異議から登録後異議へ特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』(令和4年10月。以下「逐条解説〔第22版〕」)は、平成8年の一部改正前の商標法が、審査官による審査の適正化を図り瑕疵のない安定した権利を付与するという観点から、登録査定前に出願の内容を開示(出願公告)し、一般公衆に異議を申し立てる機会を認めることにより、特許庁に対して登録処分を行うことについての再検討を求めることができる、いわゆる登録前の異議申立制度を採用していた、と説明しています。そのうえで、次の3点に鑑みて、登録前の異議申立制度を廃止し、登録後に第三者からの異議を受け付ける制度へ移行したとされています。①商品の短期ライフサイクル化の進展等に伴い、迅速な権利付与の要請が強くなってきていること。②諸外国と比較して審査期間が長期に及んでいる状況下で、登録異議の申立てにより特許庁の判断が覆るものは僅かであるにもかかわらず、全ての出願が権利設定を一律に異議申立期間の経過まで待たされる状況は適当ではないこと。③将来的にマドリッド協定の議定書の枠組みに入ろうとした場合には、一定期間内の早期審査が余儀なくされるであろうこと。
制度の性格については、登録後の異議申立制度は、商標登録に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成するために、登録異議の申立てがあった場合に特許庁が自ら登録処分の適否を審理し、瑕疵がある場合にはその是正を図るというものであって、無効審判制度のように、特許庁が行った登録処分の是非をめぐる当事者間の争いを解決することを目的とするものではない、と説明しています。申立人を具体的な利害関係を有する者に限らず何人もとしたのは、この制度目的に鑑みたものだとされています。
逐条解説〔第22版〕商標法第43条の2の解説1710頁〜1712頁。
立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):理由を公益的なものに限り、期間を2月とした理由逐条解説〔第22版〕は、異議申立ての理由を公衆の利益に関するものに限ったのは、権利の帰属に関する理由については、当事者間の紛争解決手段として位置付けられる無効審判により争うのが望ましいと考えられることによる、と説明しています。後発的事由を除いたのは、①本制度が登録処分の適否についての見直しを図り、商標登録に対する信頼性を高めるという制度であることから、登録後に生じた事由までも取消理由とすることは適当ではないこと、②商標権の設定登録後、約2月の間にこのような事由が発生することも事実上極めてまれと考えられること、によるとされています。
申立期間を2月とした理由については、国際条約との平仄を合わせる必要性がないことに加えて、登録異議の申立てがないことを確認し、安心して使用できる状態に早くしてほしいというニーズがあることを考慮し、平成8年の一部改正前と同様に2月にしたものだ、と説明しています。指定商品又は指定役務ごとに申し立てられるようにしたのは、登録後の制度では、登録処分の適否の審理はその制度目的を達成するのに必要かつ十分な範囲において行うことが望ましいと考えられることから、無効審判と同様にしたものだとされています。
また、パリ条約第6条の7を受けた代理人等による不当な登録出願については、平成8年の一部改正前は登録前の異議申立ての理由とし(一部改正前第15条第4号)、登録された後は取消審判による取消理由としていた(第53条の2)ところ、同改正で異議申立期間を登録前から登録後に移行させた後も、登録後においては引き続き同取消審判で取消しが可能であること、同条約の規定が各同盟国に義務付けているのは出願に対する異議申立てであって、登録後に登録を取り消すための異議申立ては含まれないものと解されること等から、異議申立ての理由とはしないこととした、と説明しています。
逐条解説〔第22版〕商標法第43条の2の解説1711頁〜1713頁。

2. 申立ての要件

(1) 申立人 ― 「何人も」

第43条の2柱書は「何人も」としており、利害関係は要件とされていません。これに対し、商標登録の無効審判は利害関係人に限り請求することができる(商標法第46条第2項)とされています。この対比は条文上明らかな帰結です。

(2) 期間 ― 商標掲載公報の発行の日から2月以内

起算点は「商標権の設定の登録の日」ではなく、「商標掲載公報の発行の日」です。商標掲載公報は、商標権の設定の登録があったときに発行される公報です(→関連記事:商標法第18条)。

ポイント:第43条の4第3項の延長の対象は、「申立ての期間(2月)」ではなく、「第43条の4第2項に規定する期間」=理由・証拠の表示を補正できる期間です。条文は特許庁長官は、遠隔又は交通不便の地にある者のため、請求により又は職権で、前項に規定する期間を延長することができる。としています。審判便覧(66―01)も、延長の対象を補正ができる期間として説明しています。

(3) 申立ての理由 ― 第43条の2第1号〜第3号

号列挙されている規定内容の目安
第1号第3条商標登録の要件(識別力など)
第4条第1項商標登録を受けることができない商標
第7条の2第1項地域団体商標の登録要件
第8条第1項、第2項、第5項先願
第51条第2項(第52条の2第2項において準用する場合を含む。)取消審決後の再登録の制限
第53条第2項同上(使用権者の不正使用による取消し後)
第77条第3項において準用する特許法第25条外国人の権利の享有
第2号条約条約に違反してされたこと
第3号第5条第5項商標の詳細な説明・物件に関する要件を満たしていない出願に対してされたこと

〔表4〕商標法第43条の2各号の申立理由。「内容の目安」欄は本記事作成者の要約であり、各規定の正確な要件は各条の記事を参照。

3. 拒絶理由・異議理由・無効理由のズレ

異議理由は、拒絶理由(第15条)とも無効理由(第46条第1項)とも、完全には一致しません。条文を並べて確認します。

事由拒絶理由
(第15条)
異議理由
(第43条の2)
無効理由
(第46条第1項)
第3条、第4条第1項、第7条の2第1項該当第1号該当第1号該当第1号
第8条第1項(異なった日の先願)非該当該当第1号該当第1号
第8条第2項・第5項該当第1号該当第1号該当第1号
第51条第2項(第52条の2第2項準用を含む)、第53条第2項該当第1号該当第1号該当第1号
第77条第3項で準用する特許法第25条該当第1号該当第1号該当第1号
条約該当第2号該当第2号該当第2号
第5条第5項該当第3号該当第3号該当第3号
第6条第1項・第2項(一商標一出願)該当第3号非該当非該当
商標登録出願により生じた権利を承継しない者の出願非該当非該当該当第4号
登録後に生じた事由(後発的な事由)―非該当該当第5号〜第7号

〔表5〕拒絶理由・異議理由・無効理由の対応表。商標法第15条、第43条の2、第46条第1項の原文(e-Gov、2026年9月参照)に基づき本記事作成者が整理。

ポイント:異議理由(第43条の2)は、無効理由(第46条第1項)の第1号〜第3号と同じ規定を列挙しています(文末が「されたこと」か「されたとき」かの違いのみ)。無効理由にだけあるのは、第46条第1項第4号(承継しない者の出願)と第5号〜第7号(登録後に生じた事由)です。登録異議の申立ては「登録処分の時点での適否」を見直す制度なので、登録後に生じた事由が異議理由にないことは、制度の性質と整合します(この一文は本記事作成者の整理であり、条文の文言ではありません)。

なお、除斥期間(商標法第47条)は無効審判についての規定です。登録異議の申立てはそもそも2月以内に限られるため、第47条の問題は生じません(→関連記事:商標法第47条)。

4. 申立書と補正 ― 「要旨変更不可」と「30日」の例外

商標法第43条の4 第1項・第2項(原文) 登録異議の申立てをする者は、次に掲げる事項を記載した登録異議申立書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 登録異議申立人及び代理人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 登録異議の申立てに係る商標登録の表示
三 登録異議の申立ての理由及び必要な証拠の表示
2 前項の規定により提出した登録異議申立書の補正は、その要旨を変更するものであつてはならない。ただし、第四十三条の二に規定する期間の経過後三十日を経過するまでに前項第三号に掲げる事項についてする補正については、この限りでない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。第2項は2回取得して文言一致を確認。
補正の対象申立期間(2月)内期間経過後30日を経過するまでそれ以降
第3号:申立ての理由・必要な証拠の表示要旨を変更する補正も可(ただし書)要旨を変更する補正も可(ただし書)要旨を変更する補正は不可
第1号:申立人等の表示
第2号:申立てに係る商標登録の表示
要旨を変更する補正は不可(ただし書の対象は第3号に掲げる事項のみ)

〔表6〕登録異議申立書の補正(商標法第43条の4第2項)。「30日」は同条第3項により、遠隔又は交通不便の地にある者のために延長されることがある。本記事作成者が条文を整理したもの。

商標掲載公報の 発行の日 2月:登録異議の申立てができる(第43条の2) 申立期間の満了 30日:理由・証拠の補充 補充の期限 要旨変更の補正は不可 新たな申立てができるのはここまで 第43条の4第2項ただし書(延長:同条第3項)

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の丸:起算点(商標掲載公報の発行の日)
  • 青緑の帯:登録異議の申立てができる2月(第43条の2)
  • 藍の帯:理由・証拠の表示について要旨を変更する補正もできる30日(第43条の4第2項ただし書)
  • 赤の破線のたて線:期間の区切り(申立期間の満了・補充の期限)

【図5】申立期間(2月)と理由・証拠の補充期間(経過後30日)のタイムチャート。商標法第43条の2、第43条の4第2項・第3項に基づき本記事作成者が作成。※ 延長されうるのは「30日」の側。申立期間の「2月」を延長する規定は第四章の二にない。時間軸に縮尺はありません。

審判便覧66―01の4は、理由・証拠の補正期間について、在外者は60日、国内の指定された遠隔・交通不便地にある者又はその代理人は15日の延長を示しています。異議を申し立てる2月自体の延長ではありません。66―03の3は、申立人・対象登録・対象商品等の同一性を失う変更を要旨変更とし、理由・証拠の追加変更も補正可能期間後は認めていません。審判便覧66―01・66―03

5. 審理 ― 書面審理・職権審理・併合・参加

項目条文内容
審理する者第43条の3第1項3人又は5人の審判官の合議体。
審理の方式第43条の6第1項登録異議の申立てについての審理は、書面審理による。ただし、審判長は、商標権者、登録異議申立人若しくは参加人の申立てにより、又は職権で、口頭審理にできる。
職権審理(理由)第43条の9第1項商標権者、登録異議申立人又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができる。
職権審理の限界(範囲)第43条の9第2項登録異議の申立てがされていない指定商品又は指定役務については、審理することができない。
併合第43条の10同一の商標権に係る二以上の登録異議の申立ては、特別の事情がある場合を除き、併合するものとする。併合後に分離もできる。
参加第43条の7第1項商標権についての権利を有する者その他商標権に関し利害関係を有する者は、決定があるまでは、商標権者を補助するため参加できる。
中断・中止(共有)第43条の6第3項共有に係る商標権の商標権者の一人に中断又は中止の原因があるときは、共有者全員について効力を生ずる。
専用使用権者等への通知第43条の4第5項(第46条第4項の準用)審判長は、登録異議の申立てがあった旨を、専用使用権者その他その商標登録に関し登録した権利を有する者に通知する。

〔表7〕審理に関する規定の整理(商標法第43条の3〜第43条の10)。

ポイント:職権審理は「理由」については広く(申し立てない理由も可)、「範囲」については狭い(申立てのない指定商品又は指定役務は不可)。条文上、参加は「商標権者を補助するため」のものだけで、申立人側に参加する規定は第43条の7にはありません。

審判便覧(66―04)は、申し立てない理由を審理する例として、申立人が提出していない証拠を採用する場合や、それに伴って適用条文を追加する場合を挙げています。また、複数の申立てが併合されたときは、併合された各申立てに係る指定商品及び指定役務のすべてが審理の対象になる、と説明しています(いずれも特許庁の運用の説明であり、条文そのものではありません)。

登録商標「ほしぞらパン」(架空)― 指定商品が3つある場合 指定商品「パン」 申立て:あり 審理:できる 例:取消決定 この指定商品について確定 → 訴えの対象になる 指定商品「菓子」 申立て:あり 審理:できる 例:維持決定 この指定商品について確定 → 不服申立て不可 指定商品「コーヒー」 申立て:なし 審理:できない (第43条の9第2項) 決定の対象外 指定商品又は指定役務ごとに申し立てられた場合、決定も指定商品又は指定役務ごとに確定(第43条の14ただし書)

図は左右にスクロールできます。

  • 藍の枠:登録異議の申立てがあり、審理できる指定商品
  • 白い破線の枠:申立てがなく、審理できない指定商品
  • 赤の枠:取消決定となった例
  • 橙の枠:維持決定となった例

【図6】指定商品ごとの申立て・審理範囲・確定範囲の模式図。商標・指定商品・決定の結論はすべて架空の例。商標法第43条の2後段、第43条の9第2項、第43条の14に基づき本記事作成者が作成。

6. 取消理由の通知と意見書 ― 商標には「訂正の請求」がない

商標法第43条の12(原文) 審判長は、取消決定をしようとするときは、商標権者及び参加人に対し、商標登録の取消しの理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。

特許法第120条の5は、第1項で同じ内容(取消しの理由の通知と意見書)を定めたうえで、第2項で特許権者は、前項の規定により指定された期間内に限り、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求することができる。としています。商標法第四章の二には、これに当たる規定がありません。審判便覧(66―04)も、登録商標の訂正や指定商品又は指定役務の減縮等の訂正は認められていない旨を説明しています。

Q. 取消理由の通知を受けた商標権者は、指定商品を一部けずって取消しを避けることはできないのですか。
A. 登録異議の申立ての手続の中に、特許法の「訂正の請求」に当たる制度はありません(条文上の帰結)。青本1726〜1727頁は、商品・役務単位で職権による一部取消しができるため、訂正請求を認めなくても特段の不利益にはならないと説明しています。

7. 取下げ

登録異議の申立ては、第43条の12の規定による通知(取消理由の通知)があった後は、取り下げることができません(第43条の11第1項)。通知の前であれば取り下げることができ、条文上、商標権者の同意は要件とされていません。第43条の11第2項は、特許法第155条第3項(二以上の請求項についての請求項ごとの取下げ)を準用しています。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):取下げの時期と単位逐条解説〔第22版〕は、第43条の11第2項について、登録異議の申立てが指定商品又は指定役務ごとにできることに対応して、その申立ての取下げについても指定商品又は指定役務ごとにできることとしたものであり、この趣旨は無効審判の請求の取下げの場合と同様であることから関連規定を準用した、と説明しています。第1項については、取下げも本来は登録異議申立人の意思に委ねられるべきものだが、審理が進行して既に取消理由の通知がされた場合には、申立てがされた商標登録に瑕疵がある蓋然性が高いといえ、そのような場合にまで申立人の自由な意思による取下げを認めることは、公益的観点から登録処分の見直しを図ろうとする登録異議申立制度の趣旨に合致しない、と説明しています。あわせて、取消理由が通知される前に登録異議の申立てが取り下げられた場合は、審判官は職権で審理を続行することはできない、と述べています。
逐条解説〔第22版〕商標法第43条の11の解説1725頁。
取消理由の通知前であれば、二以上の指定商品・指定役務に係る申立てを商品・役務ごとに取り下げることもできます。通知後は全部・一部とも取下げできません。審判便覧66―01の5

8. 決定・確定範囲・不服申立て

flowchart TB
  A["特許庁の判断"] --> B{"どの種類か"}
  B -- "取消決定
第43条の3第2項" --> C["商標権者・参加人等は
東京高等裁判所に訴え
第63条第1項"] C --> C2["被告:特許庁長官
出訴期間:決定の謄本の送達があつた日から30日
第63条第2項で準用する特許法第178条第3項・第179条"] B -- "維持決定
第43条の3第4項" --> D["不服を申し立てることができない
第43条の3第5項"] D --> D2["利害関係人であれば
別途、無効審判の請求は可能
第46条"] B -- "登録異議申立書の却下の決定
第43条の15第1項で準用する特許法第133条" --> E["東京高等裁判所に訴え
第63条第1項"] B -- "不適法な申立ての却下の決定
第43条の15第1項で準用する特許法第135条" --> F["不服を申し立てることができない
第43条の15第2項"] style C fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style E fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style D fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style F fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:不服を申し立てる方法がある場合(東京高等裁判所への訴え)
  • 赤の箱:不服を申し立てることができない場合

【図7】決定の種類と不服申立ての可否。商標法第43条の3、第43条の15、第63条、特許法第178条・第179条に基づき本記事作成者がフロー化したもの。

論点条文内容
訴えの管轄商標法第63条第1項取消決定又は審決に対する訴え、登録異議申立書又は審判若しくは再審の請求書の却下の決定に対する訴え等は、東京高等裁判所の専属管轄。
訴えを提起できる者商標法第63条第2項で準用する特許法第178条第2項当事者、参加人、又は登録異議の申立てについての審理等に参加を申請してその申請を拒否された者に限る。
出訴期間同・特許法第178条第3項・第4項審決又は決定の謄本の送達があった日から30日。不変期間。(附加期間:同条第5項)
被告同・特許法第179条特許庁長官(本文)。ただし書が当事者を被告とするのは、読替え後の商標法第46条第1項、第50条第1項等の審判とその再審の場合であり、取消決定はこれに含まれない。
取消決定の効果商標法第43条の3第3項確定したとき、商標権は初めから存在しなかったものとみなす。
確定範囲商標法第43条の14登録異議申立事件ごとに確定。ただし、指定商品又は指定役務ごとに申し立てられた場合は、指定商品又は指定役務ごとに確定。

〔表8〕決定に対する不服申立てと決定の効果。数値(30日)は特許法第178条第3項(e-Gov、2026年9月参照)による。

ポイント:「却下」には2種類あります。①方式違反による登録異議申立書の却下の決定(準用する特許法第133条)には第63条第1項の訴えができます。②不適法な申立てで補正できないものを合議体が却下する決定(準用する特許法第135条。審判では「審決」による却下)には、第43条の15第2項により第43条の3第5項が準用され、不服を申し立てることができません。
立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):維持決定・却下の決定に不服を申し立てられない理由逐条解説〔第22版〕は、第43条の3第5項が維持決定に対する不服申立てを認めない理由として、①登録異議申立制度は、公衆に対して処分の見直しを求める機会を与えるものであり、登録異議申立人は利害関係の有無にかかわらず、こうした機会を与えられた者にすぎないこと、②維持決定を受けた場合であっても、登録異議の申立ての理由と同じ理由で無効審判を請求することができること、の2つを挙げています。
また、第43条の15第2項が、不適法な申立ての却下の決定(準用する特許法第135条)についても不服申立てを認めないのは、その却下の決定が維持決定の場合と同様に審判官の合議体による審理を経てされるものであるからだと説明しています。これに対して、方式に違反した場合の登録異議申立書の却下の決定(準用する特許法第133条)について不服申立てが認められるのは、それが審判官の合議体の審理の結果としてされるものではなく審判長の権限によりされるものであること、登録異議申立書の瑕疵の有無については無効審判では争えないこと等の理由によるとされています。
逐条解説〔第22版〕商標法第43条の3の解説1714頁〜1715頁、第43条の15の解説1729頁〜1730頁。
維持決定の確定後でも、第46条の請求人適格等を満たせば無効審判を請求できます。第56条で準用する特許法第167条の一事不再理は確定審決についての規定で、登録異議の維持決定には同じ制限がありません。審判便覧66―07・第43条の15・第56条

9. 準用条文の整理

商標法の条項準用される規定(第56条第1項において準用する特許法の規定)特許法側の見出し等
第43条の5特許法第136条第2項、第137条〜第144条審判の合議制、審判官の指定・除斥・忌避など
第43条の5の2第2項特許法第144条の2第3項〜第5項審判書記官
第43条の6第2項特許法第145条第3項〜第8項、第146条、第147条口頭審理に関する規定(審判における審理の方式など)
第43条の7第2項特許法第148条第4項・第5項、第149条参加
第43条の8特許法第150条、第151条証拠調及び証拠保全
第43条の11第2項(第56条第2項において準用する)特許法第155条第3項審判の請求の取下げ
第43条の15第1項特許法第133条、第133条の2、第134条第4項、第135条、第152条、第168条、第169条第3項〜第6項、第170条方式に違反した場合の決定による却下/不適法な手続の却下/審尋/不適法な審判請求の審決による却下/職権による審理(手続の進行)/訴訟との関係/審判における費用の負担 など

〔表9〕第四章の二の準用条文一覧。特許法の見出しはe-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121、2026年9月参照)で確認できたものを記載。表では準用される条文の機能をまとめています。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):なぜ審判の規定を広く準用するのか逐条解説〔第22版〕は、第43条の15第1項が審判の関連規定を広く準用している理由を、登録異議の申立てに係る審理が裁判所における第一審に相当するものであり、これにふさわしい適正手続を保障するという観点による、と説明しています。また、第43条の5が特許法を直接準用せず商標法第56条第1項を経由して準用しているのは、第56条第1項で特許法の規定を審判に準用しており、登録異議の申立ては審判と類似の手続をとるためであり、第43条の15までの準用規定も同様だとしています。あわせて、平成8年の一部改正前の登録前の異議申立制度では異議申立人に審査官の除斥・忌避の申立てを認めていなかったが、除斥事由は法定事由でその効果は審判官や当事者の知不知を問わず生じ、除斥事由のある審判官は法律上当然に職務の執行から除斥されるものであるから、異議申立人に除斥の申立てを認めることに実害はなくむしろ利益ある場合が多いこと、忌避についても除斥とともに公正な審理を実現するうえで重要な制度であることから、登録後の制度ではこれらの申立てを認めることとした、と説明しています。
逐条解説〔第22版〕商標法第43条の5の解説1717頁〜1718頁、第43条の15の解説1729頁。
登録異議の申立ての費用は、準用される特許法第169条第3項により申立人が負担します。同条第4〜6項は共同申立ての費用負担、手続終了後に請求を受けて特許庁長官が費用額を決める手続、費用の範囲・額の算定などを定めています。ここでいう手続費用を、依頼した弁理士・弁護士への報酬すべてが相手に移る制度と読むことはできません。商標法第43条の15/特許法第169条

10. 特許異議の申立て(特許法第113条〜第120条の8)との比較

項目商標:登録異議の申立て特許:特許異議の申立て
申立人何人も(商標法第43条の2)何人も(特許法第113条)
申立期間商標掲載公報の発行の日から2月以内特許掲載公報の発行の日から6月以内
申立ての単位指定商品又は指定役務ごと請求項ごと
理由第43条の2第1号〜第3号特許法第113条第1号〜第5号
合議体3人又は5人の審判官(第43条の3第1項)3人又は5人の審判官(特許法第114条第1項)
審理の方式書面審理。ただし書で口頭審理も可(第43条の6第1項)特許異議の申立てについての審理は、書面審理による。(特許法第118条第1項)
申立書の理由・証拠の補正の例外申立期間の経過後30日を経過するまで(第43条の4第2項ただし書)。延長あり(同条第3項)申立期間が経過する時、又は取消理由の通知がある時のいずれか早い時まで(特許法第115条第2項ただし書)
職権審理申し立てない理由も可/申立てのない指定商品又は指定役務は不可(第43条の9)申し立てない理由も可/申立てのない請求項は不可(特許法第120条の2)
取消理由の通知・意見書あり(第43条の12)あり(特許法第120条の5第1項)
訂正の請求なしあり(特許法第120条の5第2項)
取下げの制限取消理由の通知の後は不可(第43条の11第1項)取消理由の通知の後は不可(特許法第120条の4第1項)
維持決定への不服不可(第43条の3第5項)不可(特許法第114条第5項)
取消決定の効果初めから存在しなかったものとみなす(第43条の3第3項)初めから存在しなかったものとみなす(特許法第114条第3項)

〔表10〕商標の登録異議の申立てと特許異議の申立ての比較。両法の原文(e-Gov、2026年9月参照)に基づき本記事作成者が整理。特許法側の詳細は特許法シリーズの該当記事を参照。

ポイント:条文の並びはほぼ同じですが、①期間(2月/6月)、②理由補充の期限(経過後30日/期間経過時又は取消理由通知時のいずれか早い時)、③口頭審理のただし書の有無、④訂正の請求の有無、の4点が条文上の主な相違です。

11. 商標登録の無効審判(商標法第46条)との比較

項目登録異議の申立て商標登録の無効審判
請求人・申立人何人も(第43条の2)利害関係人に限る(第46条第2項)
時期商標掲載公報の発行の日から2月以内期間の定めは第46条にはない。商標権の消滅後も請求可(第46条第3項)。ただし、一部の無効理由には除斥期間がある(第47条。→関連記事)
理由第43条の2第1号〜第3号第46条第1項第1号〜第7号(承継しない者の出願、登録後に生じた事由を含む)
単位指定商品又は指定役務ごと指定商品又は指定役務ごと(第46条第1項後段)
審理構造特許庁(合議体)と商標権者。申立人は取消理由通知後の手続の相手方として条文に現れない請求人と被請求人(商標権者)が対立する構造
審理の方式書面審理が原則(第43条の6第1項)→関連記事:商標法第56条(特許法第145条の準用)
結論取消決定/維持決定審決
効果商標権は初めから存在しなかったものとみなす(第43条の3第3項)初めから存在しなかったものとみなす。ただし第46条第1項第5号〜第7号の場合は、該当するに至った時から(第46条の2第1項)
不服申立て取消決定:東京高等裁判所に訴え(被告は特許庁長官)。維持決定:不可審決(無効・請求不成立のいずれも):東京高等裁判所に訴え。被告は請求人又は被請求人(第63条第2項で準用する特許法第179条ただし書)

〔表11〕登録異議の申立てと無効審判の比較。商標法第43条の2〜第43条の14、第46条、第46条の2、第63条の原文(e-Gov、2026年9月参照)に基づき本記事作成者が整理。「審理構造」欄は条文の規定ぶりを本記事作成者が要約した表現。

flowchart TB
  S["他人の商標登録に
登録時の瑕疵があると考える"] --> Q1{"商標掲載公報の発行の日から
2月以内か"} Q1 -- "はい" --> Q2{"理由は第43条の2
第1号〜第3号のいずれかか"} Q1 -- "いいえ" --> Q3{"利害関係人か"} Q2 -- "はい" --> R1["登録異議の申立てができる
(何人も)"] Q2 -- "いいえ
(例:承継しない者の出願)" --> Q3 Q3 -- "はい" --> Q4{"第47条の除斥期間に
かかっていないか"} Q3 -- "いいえ" --> R3["無効審判は請求できない
第46条第2項"] Q4 -- "かかっていない" --> R2["無効審判を請求できる
第46条"] Q4 -- "かかっている" --> R4["その理由では請求できない
第47条"] style R1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style R2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style R3 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style R4 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:その手続を使える結論
  • 赤の箱:その手続を使えない結論

【図8】登録異議の申立てと無効審判の使い分けの分岐図。商標法第43条の2、第46条、第47条に基づき本記事作成者がフロー化したもの(2月以内でも利害関係人は無効審判を請求できる点、登録後に生じた事由、不使用取消審判(講学上の呼称)等の取消審判は省略)。

審判便覧(66―07 商標登録異議の申立てと審判との関係)は、同じ商標登録について登録異議の申立てと無効審判とが同時に係属した場合、原則として登録異議の申立ての審理を優先し、無効審判の手続がすでに進んでいて早期に結審できるときなど合議体が適切と認める場合は無効審判を優先できる、と説明しています(特許庁の運用の説明です)。

12. 四法比較 ― 異議の申立てがあるのは特許法と商標法だけ

特許法実用新案法意匠法商標法
異議の申立ての制度あり(第五章 特許異議の申立て:第113条〜第120条の8)なしなしあり(第四章の二 登録異議の申立て:第43条の2〜第43条の15)
申立期間特許掲載公報の発行の日から6月以内――商標掲載公報の発行の日から2月以内
申立人何人も――何人も
権利者側の対応意見書+訂正の請求――意見書のみ
登録後に権利を争う主な手段特許異議の申立て、特許無効審判実用新案登録無効審判意匠登録無効審判登録異議の申立て、商標登録の無効審判、各種の取消審判

〔表12〕四法比較。実用新案法・意匠法に異議の申立ての章がないことは、両法の目次(e-Gov法令検索、法令ID 334AC0000000123・334AC0000000125、2026年9月参照)で確認。無効審判等の条文番号は各法シリーズの該当記事を参照。

13. 改正前/現行

本記事の条文はすべて2026年9月時点でe-Gov法令検索に掲載されている現行条文です。審判便覧(66―00)によれば、現行の登録後の登録異議申立制度は平成8年改正法(平成9年4月1日施行)で導入されました。第43条の5の2(審判書記官)のように枝番号の付いた条があることから、その後にも改正があったことがうかがえます。逐条解説〔第22版〕(令和4年10月)で確認できる範囲の改正経緯は、次のとおりです。

改正の経緯(逐条解説〔第22版〕):第四章の二の各条逐条解説〔第22版〕の各条の解説と、青本に掲記された改正沿革から、次の改正が確認できます。第四章の二は平成8年法律第68号で追加されました。第43条の5の2(審判書記官)は、平成11年法律第41号で追加されたものです。第43条の2は、平成17年法律第56号で地域団体商標制度が新設されたことに伴い第1号に地域団体商標の登録要件に関する規定が加えられ、平成26年法律第36号で商標法の保護対象を拡大したことに伴い第3号(明確性要件)が追加されました。第43条の4第5項は、平成26年法律第36号で第46条第3項が第4項に繰り下げられたことに伴う改正です。第43条の14(決定の確定範囲)は平成23年法律第63号で新設され、これに伴い従来の第43条の14が第43条の15に移動しました。第43条の6第2項は、令和3年法律第42号で、映像等の送受信による通話の方法による審判の口頭審理が可能とされたことに伴い、登録異議の申立ての口頭審理でも同じ方法で手続を行えるよう、準用する特許法第145条の項が追加されています。
逐条解説〔第22版〕商標法第43条の2〜第43条の15の解説1710頁〜1730頁。
注意(逐条解説と現行条文の差):現行の商標法第43条の6第2項は、特許法第145条第3項から第8項までを準用しています(e-Gov法令検索、2026年9月参照。本記事〔表9〕)。これに対し、逐条解説〔第22版〕(令和4年10月)の第43条の6の解説は、準用の範囲を特許法第145条第3項から第7項までとしています。この引用では刊行時点の旧法と現行法を区別します。本記事の現行手続の説明は第8項までを準用する現在の条文に合わせています。
本記事の登録異議の手続は、2026年9月21日時点の現行条文と照合しています。過去問を読む際の基準日は別で、2026年度の受験案内では各試験の実施日に施行されている法令が対象です。2026年の短答試験は5月17日に実施されました。現行条文/2026年度受験案内・冊子2頁

14. 判例

取消決定に不服がある場合は、第63条第1項により東京高等裁判所の専属管轄となる取消訴訟で争います。被告は特許庁長官です(第63条第2項が準用する特許法第179条本文)。維持決定には不服を申し立てられないこととの違いに注意します。第43条の3第5項・第63条

試験での問われ方

試験問われやすい形(条文から導かれる論点)対応する条文
短答式申立人(何人も)と無効審判(利害関係人)の対比/起算点と期間(商標掲載公報の発行の日から2月)/特許法の6月との対比第43条の2、第46条第2項、特許法第113条
短答式異議理由に第8条第1項が含まれ、第6条・承継しない者の出願・登録後に生じた事由が含まれないこと第43条の2、第15条、第46条第1項
短答式申立書の補正(要旨変更不可、経過後30日の例外は第3号の事項のみ、延長の対象)第43条の4第2項・第3項
短答式審判書記官を指定するのはだれか/合議体の構成/参加は商標権者の補助のためのみ/専用使用権者等への通知第43条の5の2、第43条の3第1項、第43条の7、第43条の4第5項
短答式職権審理の範囲(理由は可、申立てのない指定商品又は指定役務は不可)/取下げの時期制限第43条の9、第43条の11
短答式・論文式維持決定に不服申立て不可/取消決定に対する訴えの被告・出訴期間/2種類の却下と不服申立ての可否第43条の3第5項、第43条の15第2項、第63条
論文式・口述登録異議の申立てと無効審判の異同(趣旨・主体・時期・理由・効果)を条文を挙げて説明する第43条の2、第43条の3、第46条、第46条の2、第47条

〔表13〕試験での問われ方の整理。出題を予想・保証するものではなく、条文上の対比点を本記事作成者が整理したもの。

問9の正解は3です。取消理由の通知前に申立てが取り下げられると、その申立てについて職権で審理を続けることはできません。第43条の11による取下げと、第43条の9の職権審理を区別する問題です。 公式問題/公式正解。肢の説明は条文による検証であり、公式解答が公表するのは問題全体の正解番号です。
レベル3のまとめ
  • 登録異議の申立ては、登録に対する信頼を高めるための公益的な見直しの制度(審判便覧の説明)。だから「何人も」。
  • 期間は商標掲載公報の発行の日から2月以内。延長の規定(第43条の4第3項)の対象は、理由・証拠の補充ができる「経過後30日」の側。
  • 異議理由=無効理由の第1号〜第3号と同じ列挙。第8条第1項は含まれ、第6条第1項・第2項、承継しない者の出願、登録後に生じた事由は含まれない。
  • 職権審理:申し立てない理由は審理できるが、申立てのない指定商品又は指定役務は審理できない。
  • 取消決定の前に取消理由の通知と意見書。商標には訂正の請求がない。通知後は取下げ不可。
  • 維持決定と、不適法な申立ての却下の決定には不服申立て不可。取消決定と申立書の却下の決定には第63条の訴え(東京高等裁判所)。
  • 特許異議との主な相違:2月/6月、理由補充の期限、口頭審理のただし書、訂正の請求。意匠法・実用新案法に異議の申立てはない。

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