MENU

小学生でも分かる商標法|商標法第53条の2・第53条の3 代理人等の不正登録による商標登録の取消しの審判 ― 「まかせた相手に、目じるしを勝手に取られた」ときの取りもどし方

小学生でもわかる商標法 第46回「代理人等の不正登録」。任せた相手の不正登録を争う。

小学生でも分かる商標法 / D. 登録異議・審判・訴訟 #46

PR この記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

外国の会社が、日本での販売を日本の代理店にまかせていたとします。その代理店が、外国の会社にだまって、同じ目じるし(商標)を日本で自分の名前で登録してしまったらどうなるでしょうか。商標法第53条の2は、このような場合に、外国で権利を持っている本人が、日本の商標登録を取り消すよう求めることができると定めています。ただし、商標法第53条の3により、商標権の設定の登録の日から5年を過ぎると請求できなくなります。この記事では、2つの条文を3つのレベルで順に読んでいきます。

条文:商標法第53条の2・第53条の3(関連:第54条第1項、第55条、第68条第4項)条約:パリ条約第6条の7参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

外国のビスケット会社と、日本の代理店のお話

海のむこうのA国に、「ホシノワ社」というビスケットの会社があります(この記事のために作った、じっさいにはない会社です)。ホシノワ社は、A国で「ホシノワ」という名前を商標(しょうひょう)=商品の「目じるし」として登録しています。

ホシノワ社は、日本でもビスケットを売りたいと考えました。そこで、日本の「ミナト商会」(これも、じっさいにはない会社です)に、「日本で売るのをおねがいします」とたのみました。ミナト商会のように、本人のかわりに売る仕事をまかされた会社を、ここでは「代理店(だいりてん)」とよびます。

ところが、ミナト商会は、ホシノワ社にだまって、日本の特許庁(とっきょちょう)に「ホシノワ」という目じるしを自分の名前で出願(しゅつがん)=「登録してください」と申しこみ、登録されてしまいました。

このままだと、日本では「ホシノワ」の目じるしはミナト商会のもの、ということになってしまいます。ホシノワ社は、ミナト商会との約束をやめたあと、日本で自分の名前を使いにくくなるかもしれません。

A国のホシノワ社 A国で「ホシノワ」の 目じるしを登録している (目じるしの本当の持ち主) 日本のミナト商会 ホシノワ社にたのまれて 日本でビスケットを売る (代理店) ① 日本で売るのをまかせる 日本の特許庁 「ホシノワ」が ミナト商会の名前で登録される ② だまって   出願 ③「その登録を取り消してください」 本当の持ち主だけが言える(5年以内) ※ 会社名・商標はすべて架空です。

図は左右にスクロールできます。

  • 橙の枠:目じるしの本当の持ち主(ホシノワ社)と、その持ち主がする「取り消してください」という求め
  • 青緑の枠:仕事をまかされた代理店(ミナト商会)
  • 白い枠:日本の特許庁
  • 赤の矢印:ホシノワ社にだまってした②の出願

【図1】代理店が無断で目じるしを登録してしまった場面の模式図(架空の例。本記事作成者が作成)。

本当の持ち主は「取り消してください」と言える

商標法は、こういうときのために、とくべつな手続(てつづき)を用意しています。外国で目じるしの権利を持っている本人(ホシノワ社)は、日本の特許庁に「ミナト商会の登録を取り消してください」と求めることができます。この手続を「審判(しんぱん)」といいます。特許庁の中で、登録をそのままにしてよいかを調べ直してもらうしくみです。

大事なポイントは3つです。

① 言えるのは「本当の持ち主」だけ② まかされた人(や、少し前までまかされていた人)が、だまって出願した場合③ 登録の日から5年をすぎると言えなくなる
お話の中のできごと法律のことば(→レベル2・3でくわしく)
A国で「ホシノワ」の目じるしを登録しているホシノワ社外国(条約に入っている国)で「商標に関する権利を有する者」
日本で売るのをまかされたミナト商会「代理人若しくは代表者」
ホシノワ社にだまって出願した「承諾を得ないで」「正当な理由がないのに」
「取り消してください」と特許庁に求める商標登録を取り消すことについての審判の請求(商標法第53条の2)
登録の日から5年をすぎると言えない商標法第53条の3

〔表1〕レベル1のお話と法律のことばの対応(本記事作成者が整理)。

レベル1のまとめ
  • 外国の会社から仕事をまかされた人が、その会社にだまって、同じ目じるしを日本で自分の名前で登録してしまうことがあります。
  • そのとき、外国で目じるしの権利を持っている本人は、「その登録を取り消してください」と特許庁に求めることができます。
  • この求めができるのは本人だけです。ほかの人はできません。
  • 登録の日から5年をすぎると、求めることができなくなります。

※ 「外国」は、正確には日本が入っている特定の条約の仲間の国に限られます。また、どんな権利でもよいわけではなく、目じるしの種類・商品の種類・出願した人と時期などに、正確には条件があります(→レベル3)。お話では単純にしています。

LEVEL 2条文の骨格

条文を読んでみよう

商標法第53条の2(原文) 登録商標がパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であつて当該権利に係る商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務を指定商品又は指定役務とするものであり、かつ、その商標登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であつた者によつてされたものであるときは、その商標に関する権利を有する者は、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
商標法第53条の3(原文) 前条の審判は、商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。

商標法第53条の2は、1つの文がとても長い条文です。「だれの」「どんな登録商標が」「だれによって、どのように出願されたときに」「だれが」「何をできるか」の順に、部品に分けてみましょう。

部品条文の文言やさしく言うと
どこの国の権利か「パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において」3つの条約のどれかに入っている国で
どんな権利か「商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者」日本の商標権にあたる権利を持っている人(本人)
どんな登録商標か(商標)「当該権利に係る商標又はこれに類似する商標」本人の商標と同じか、似ている商標
どんな登録商標か(商品・役務)「当該権利に係る商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務を指定商品又は指定役務とするもの」本人の権利の商品・サービスと同じか、似ているものを指定している
どのように出願されたか「正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないで」ちゃんとした理由もなく、本人のOKももらわずに
だれが出願したか「その代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であつた者によつて」本人の代理人・代表者、または出願の日の前1年以内にそうだった人が
だれが請求できるか「その商標に関する権利を有する者は」本人だけ
何ができるか「当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる」登録の取消しを求める審判を請求できる
いつまでか「商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない」(商標法第53条の3)設定の登録の日から5年まで

〔表2〕商標法第53条の2・第53条の3の部品分解(条文の文言はe-Gov法令検索、2026年9月参照。「やさしく言うと」の欄は本記事作成者による言い換え)。

登場人物の関係

商標に関する権利を有する者 パリ条約の同盟国・世界貿易機関の 加盟国・商標法条約の締約国で、 商標権に相当する権利を有する =審判の請求人 代理人若しくは代表者 又は商標登録出願の日前1年以内に 代理人若しくは代表者であった者 =日本での出願人 代理・代表の関係 承諾なし 特許庁 同一・類似の商標が、同一・類似の 商品・役務について登録される (商標権の設定の登録) 正当な理由なく 商標登録出願 取消しの審判を請求 商標法第53条の2 設定の登録の日から5年以内

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の枠:商標に関する権利を有する者(審判の請求人)と、その者がする請求
  • 赤の枠:代理人若しくは代表者、又は出願の日前1年以内にそうであった者(日本での出願人)
  • 白い枠:特許庁
  • 赤の矢印:正当な理由がなく、承諾を得ないでされた商標登録出願

【図2】商標法第53条の2の登場人物の相関図(条文を本記事作成者が図にしたもの)。

時間の流れで見る

条文には、時間に関する数字が2つ出てきます。1つは「商標登録出願の日前一年以内」(出願した人がいつまで代理人・代表者だったか)、もう1つは「商標権の設定の登録の日から五年」(いつまで審判を請求できるか)です。

代理・代表の 関係が終わる 商標登録出願の日 商標権の 設定の登録の日 5年を経過 この間が1年以内 元代理人等の出願も対象 審判を請求できる(5年) 商標法第53条の3 請求不可

図は左右にスクロールできます。

  • 赤の帯:商標登録出願の日前1年以内(この間に代理人・代表者であった者の出願も対象)
  • 青緑の帯:審判を請求できる期間(商標権の設定の登録の日から5年)
  • 藍の帯:5年を経過した後(請求できない)
  • 時点の縦線の色:その時点に接する帯の色に合わせています

【図3】「出願の日前1年以内」と「設定の登録の日から5年」のタイムチャート(条文を本記事作成者が図にしたもの。期間の長さの比率は模式的)。時間軸に縮尺はありません。

※ 出願の時点で現に代理人・代表者である場合は、左の「1年以内」を考える必要はありません。
※ 5年の起算点は「出願の日」でも「本人が知った日」でもなく「商標権の設定の登録の日」です。

審判を請求したあとの流れ

審判の請求があると、審判長は、その商標権についての専用使用権者その他その商標登録に関し登録した権利を有する者に、請求があったことを通知します(商標法第55条が準用する商標法第46条第4項)。商標登録を取り消すべき旨の審決が確定すると、商標権は「その後消滅」します(商標法第54条第1項)。

flowchart TB
  A["商標に関する権利を有する者が
審判を請求
(商標法第53条の2)"] --> B["審判長が専用使用権者その他
登録した権利を有する者に通知
(商標法第55条・第46条第4項)"] B --> C["審理"] C --> D{"審決"} D -- "取り消すべき旨の審決" --> E["審決の確定"] D -- "請求は成り立たない旨の審決" --> F["商標登録は維持"] E --> G["商標権は、その後消滅する
(商標法第54条第1項)"] style G fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style F fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:取り消すべき旨の審決が確定した場合の結論(商標権は、その後消滅する)
  • 赤の箱:請求は成り立たない旨の審決の場合の結論(商標登録は維持)

【図4】商標法第53条の2の審判の流れ(本記事作成者がフロー化したもの。審理の手続の詳細や、審決に対する訴えは省略しています)。

条文役割
商標法第53条の2代理人等が無断でした出願に係る商標登録について、取消しの審判を請求できる場合と、請求できる者を定める
商標法第53条の3上の審判を請求できる期間(商標権の設定の登録の日から5年)を定める
商標法第54条第1項取り消すべき旨の審決が確定したときの効果(商標権は、その後消滅する)
商標法第55条商標法第46条第4項(審判長による通知)を、商標法第53条の2の審判などの取消審判に準用する
商標法第68条第4項商標法第53条の2・第53条の3を、防護標章登録に係る審判に準用する

〔表3〕商標法第53条の2・第53条の3と、その周りの条文の役割(各条をe-Gov法令検索で確認のうえ本記事作成者が要約。2026年9月参照)。

レベル2のまとめ
  • 商標法第53条の2は、①条約の仲間の国で商標権に相当する権利を持つ者の商標と同一・類似の商標が、②同一・類似の商品・役務について登録されていて、③その出願が、正当な理由なく、本人の承諾を得ないで、④代理人・代表者(出願の日前1年以内にそうであった者を含む)によってされた、という場合の規定です。
  • 請求できるのは「その商標に関する権利を有する者」だけです。
  • 請求できるのは、商標権の設定の登録の日から5年までです(商標法第53条の3)。
  • 取り消すべき旨の審決が確定すると、商標権はその後消滅します(商標法第54条第1項)。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 要件の分解 ― 5つの要件

商標法第53条の2の要件を、条文の文言にしたがって5つに分けます。①②は「登録商標」についての要件、③④は「商標登録出願」についての要件、⑤は請求人についての要件です。①②と③④は「かつ」で結ばれているので、すべてを満たす必要があります。

番号要件(条文の文言に基づく)条文から読み取れる注意点
①登録商標が、パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の、当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であること・国は3つの条約のいずれかの同盟国・加盟国・締約国に限られる。
・権利は「商標権に相当する権利に限る。」という括弧書で限定されている。
・商標は同一だけでなく類似も含む。
・条文上、その商標が需要者の間に広く認識されていること(周知性)は要件とされていない。
②当該権利に係る商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務を指定商品又は指定役務とするものであること・商品・役務も同一だけでなく類似を含む。
・非類似の商品・役務を指定する登録は、この条の対象にならない。
③その商標登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでされたこと・「正当な理由がないのに」と「承諾を得ないで」の2つが並んでいる。
・条文には「故意」「不正の目的」「不正競争の目的」の文言はない。
④その商標登録出願が、その代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたこと・出願の時点で現に代理人・代表者である者のほか、出願の日前1年以内にそうであった者も含む。
・「1年」の基準は「当該商標登録出願の日」。
⑤請求人が、その商標に関する権利を有する者であること・「何人も」ではない。他の取消審判(商標法第50条第1項、第51条第1項、第52条の2第1項、第53条第1項)と異なる(→〔表10〕)。

〔表4〕商標法第53条の2の5つの要件(条文を本記事作成者が分解したもの。「注意点」は条文の文言から直接読み取れる範囲に限っています)。

字句の解釈(逐条解説〔第22版〕):特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』(令和4年10月。以下「逐条解説〔第22版〕」)は、代表者とは法人である商標所有者の代表者を、代理人とは自然人か法人かを問わず商標所有者から何らかの代理権を授与された者を指す、と説明しています。通常は、その商標に係る商品・役務の取引について代理権をもつ者が問題になるだろうが、必ずしもこれに限らず、それ以外の事項について代理権をもつ者も含まれる、としています。
逐条解説〔第22版〕1758頁。
特許庁の取消2020―300733号審決は、外国商標権者との契約・取引経緯を検討し、商品の販売を認められた関係者を本条の代理人・代表者に当たるとして判断しています。国内法上の形式的な代理権の有無だけで決める説明は適切ではありません。出願の承諾があったことや、外国の権利者が商標への関心を失ったと信じさせる行為があったことなどは別に検討され、同審決では正当な理由を認めていません。審決本文13〜16頁/審判便覧53―03
ポイント:レベル1で「外国」「目じるしの権利」「まかされた人」と単純に書いた部分は、正確には①(3つの条約の同盟国・加盟国・締約国、商標権に相当する権利に限る)、②(同一・類似の商品・役務)、④(代理人若しくは代表者、又は出願の日前1年以内にそうであった者)という条件になります。

2. 判断の手順(分岐図)

flowchart TB
  S["日本の登録商標について検討"] --> Q1{"請求しようとする者は、パリ条約の同盟国・
世界貿易機関の加盟国・商標法条約の締約国で
商標権に相当する権利を有するか"} Q1 -- "はい" --> Q2{"登録商標は、その権利に係る商標と
同一又は類似か"} Q1 -- "いいえ" --> N1["商標法第53条の2の
審判は請求できない"] Q2 -- "はい" --> Q3{"指定商品・指定役務は、その権利に係る
商品・役務と同一又は類似か"} Q2 -- "いいえ" --> N1 Q3 -- "はい" --> Q4{"出願人は、代理人若しくは代表者、又は
出願の日前1年以内にそうであった者か"} Q3 -- "いいえ" --> N1 Q4 -- "はい" --> Q5{"権利を有する者の承諾を得ていたか"} Q4 -- "いいえ" --> N1 Q5 -- "得ていた" --> N1 Q5 -- "得ていない" --> Q6{"出願に正当な理由があるか"} Q6 -- "ある" --> N1 Q6 -- "ない" --> Q7{"商標権の設定の登録の日から
5年を経過したか"} Q7 -- "経過した" --> N2["請求できない
(商標法第53条の3)"] Q7 -- "経過していない" --> OK["審判を請求できる
(商標法第53条の2)"] style OK fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style N1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:商標法第53条の2の審判を請求できる場合
  • 赤の箱:請求できない場合

【図5】商標法第53条の2・第53条の3の判断手順(条文を本記事作成者がフロー化したもの。検討の順序は説明のための便宜であり、条文が順序を定めているわけではありません)。

3. 請求人 ― 「何人も」ではない

商標法第50条第1項、第51条第1項、第52条の2第1項、第53条第1項の審判は、いずれも条文上「何人も」請求できます。これに対し、商標法第53条の2の審判を請求できるのは「その商標に関する権利を有する者」だけです。そして、この「商標に関する権利」は、条文の前半の括弧書により「商標権に相当する権利に限る。」とされています。

比較の観点商標法第53条の2商標法第50条第1項・第51条第1項・第52条の2第1項・第53条第1項
請求人の文言「その商標に関する権利を有する者は」「何人も」
権利の限定「商標権に相当する権利に限る。」―(請求人に権利は求められていない)
保護の向き(条文の構造から)特定の者(外国等で権利を有する本人)の利益にかかわる事由不使用、誤認・混同など、条文上だれでも請求できるとされている事由

〔表5〕請求人の比較(各条をe-Gov法令検索で確認のうえ本記事作成者が整理。2026年9月参照。「保護の向き」の行は条文の構造からの作成者の整理であり、立法趣旨の確定的な説明ではありません)。

4. 除斥期間 ― 商標法第53条の3と、ほかの「5年」との違い

商標法には「5年」が何度も出てきます。起算点がそれぞれ違うので、並べて確認します。なお「除斥期間」は、請求できる期間の制限を指す講学上の呼称です。

条文対象期間と起算点
商標法第53条の3商標法第53条の2の審判商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は請求できない
商標法第52条商標法第51条第1項の審判(商標法第52条の2第2項・第53条第3項で準用)商標権者の同項に規定する商標の使用の事実がなくなった日から5年を経過した後は請求できない
商標法第47条第1項商標登録の無効の審判(同項に列挙された無効理由に限る)商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は請求できない
商標法第51条第2項・第53条第2項取消審決後の再登録の制限(審判の請求期間ではない)取り消すべき旨の審決が確定した日から5年

〔表6〕商標法に出てくる「5年」の起算点の比較(各条をe-Gov法令検索で確認のうえ本記事作成者が要約。2026年9月参照。商標法第47条第1項の対象となる無効理由の範囲は関連記事を参照)。

ポイント:商標法第53条の3の起算点は、商標法第47条第1項と同じ「商標権の設定の登録の日」です。商標法第52条の「使用の事実がなくなつた日」とは異なります。商標法第53条の2の審判は「使用」ではなく「出願」という1回の行為を問題にしているので、使用の終了時を起算点にする形になっていない、と条文の構造から整理できます(作成者の整理)。
立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):商標法第53条の3には、商標法第47条第1項の括弧書(「不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。」など)のような例外の文言はありません。逐条解説〔第22版〕は、5年の期間を置いた趣旨を次のように説明しています。代理人・代表者の名義による登録であっても、使用されればそれに基づいて新たな信用が築かれるので、いつまでも取り消せるとすると、その新たな信用を著しく不安定にする。そこで、代理人の行為に対する本人の注意義務の存在も考慮して、取消審判の請求を登録後5年に限定した。あわせて、パリ条約第6条の7も、権利を行使できる相当の期間を国内法令で定めることができるとしている点に触れています(→第5節〔表7〕の「期間」の行)。
逐条解説〔第22版〕1759頁。

5. パリ条約第6条の7との対応

商標法第53条の2は、パリ条約第6条の7に対応する規定として説明されます。条約の文言と日本の条文を並べます。下の英文は、世界知的所有権機関(WIPO)が掲載するパリ条約の英語正文からの引用です。パリ条約第6条の7は異議・無効又は国内法が認める移転請求を定め、日本法では第53条の2の取消審判によって対応しています。条約の制度名と国内手続名は同一ではありません。

パリ条約第6条の7(Article 6septies)(1)・(3)(英語正文) If the agent or representative of the person who is the proprietor of a mark in one of the countries of the Union applies, without such proprietor’s authorization, for the registration of the mark in his own name, in one or more countries of the Union, the proprietor shall be entitled to oppose the registration applied for or demand its cancellation or, if the law of the country so allows, the assignment in his favor of the said registration, unless such agent or representative justifies his action.
Domestic legislation may provide an equitable time limit within which the proprietor of a mark must exercise the rights provided for in this Article.
出典:WIPO Lex「Paris Convention for the Protection of Industrial Property」(https://www.wipo.int/wipolex/en/text/288514)、2026年9月参照。(2)(代理人又は代表者による商標の使用を阻止する権利)は引用を省略。
観点パリ条約第6条の7(英語正文の要旨。作成者訳であり公定訳ではありません)商標法第53条の2・第53条の3
保護される者同盟国の一において商標の所有者である者(the proprietor of a mark in one of the countries of the Union)パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者
→ 条文上、対象国がパリ条約の同盟国より広い
出願する者その者の代理人又は代表者(the agent or representative)代理人若しくは代表者、又は商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者
→ 「1年以内にそうであった者」は日本の条文が明記
対象となる商標・商品その商標(the mark)の登録を自己の名義で出願当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって、当該権利に係る商品・役務又はこれらに類似する商品・役務を指定するもの
無断であること所有者の許諾なく(without such proprietor’s authorization)その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないで
出願人側の正当化代理人又は代表者がその行為を正当化する場合を除く(unless … justifies his action)「正当な理由がないのに」
所有者がとれる手段出願された登録に異議を述べること、登録の取消しを求めること、又は、その国の法令が認める場合には登録を自己に移転するよう求めること商標登録を取り消すことについての審判の請求(商標法第53条の2)。
商標法第53条の2自体は、登録の移転の請求を定めていない
期間国内法令は、権利を行使すべき公平な期間を定めることができる((3))商標権の設定の登録の日から5年(商標法第53条の3)
使用の阻止許諾していない代理人又は代表者による商標の使用を阻止する権利((2))商標法第53条の2・第53条の3には定めがない

〔表7〕パリ条約第6条の7と商標法第53条の2・第53条の3の対応表(条約はWIPO Lex掲載の英語正文、商標法はe-Gov法令検索で確認のうえ本記事作成者が対比。2026年9月参照。条約欄の日本語は作成者による要旨)。

立法の経緯(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、第53条の2を、パリ条約第6条の7(同書はリスボン条約で新設された規定としています)を実施するために昭和40年の一部改正で新設したもので、他の同盟国で商標に関する権利を有する者の保護を強化することを目的とする、と説明しています。その後の改正として、次の3つを挙げています。
  • 平成3年の一部改正:役務に係る商標登録にも適用があることとした。
  • 平成6年の一部改正:TRIPS協定第2条に従い、世界貿易機関の加盟国において商標に関する権利を有する者にも審判請求を認めた。
  • 平成8年の一部改正:商標法条約第15条に従い、同条約の締約国において商標に関する権利を有する者にも審判請求を認めた。
逐条解説〔第22版〕1757頁。各改正の法律番号は、同書の条文末尾の改正履歴の表示(本条追加:昭和40年法律第81号、改正:平成3年法律第65号、平成6年法律第116号、平成8年法律第68号)による。
パリ条約を実施する取消審判として、第53条の2・第53条の3は昭和40年法律第81号により新設されました。現行法は、出願時の代理人・代表者に加えて「出願の日前1年以内」にその地位にあった者も対象にします。この1年と、登録の日から5年という取消審判の請求期限は別の期間です。青本1757〜1759頁/現行条文

6. 拒絶・異議・無効との関係、商標法第4条第1項第19号・第7号との関係

代理人等による無断の出願であること自体が、拒絶理由(商標法第15条)、登録異議の申立ての理由(商標法第43条の2)、無効理由(商標法第46条第1項)として、条文に書かれているかを確認します。

制度条文商標法第53条の2の事由(代理人等の無断出願)が列挙されているか
拒絶理由商標法第15条非該当 列挙に商標法第53条の2はない
登録異議の申立ての理由商標法第43条の2各号非該当 列挙に商標法第53条の2はない
無効理由商標法第46条第1項各号非該当 列挙に商標法第53条の2はない
無効審判の除斥期間商標法第47条―(無効理由でないため関係しない。商標法第53条の2の審判の期間制限は商標法第53条の3が別に定める)
取消しの審判商標法第53条の2該当 登録後に、権利を有する者の請求によって取り消す

〔表8〕商標法第53条の2の事由と、拒絶・異議・無効の理由との対応(商標法第43条の2・第46条第1項はe-Gov法令検索で本記事作成時に確認、商標法第15条はシリーズ既刊記事で確認した列挙による。2026年9月参照。本記事作成者が整理)。

つまり、商標法第53条の2そのものは、審査で出願を拒絶する根拠にも、無効審判の根拠にもなっていません。もっとも、同じ事実関係が、別の条文の拒絶理由・無効理由に当たることはありえます。商標審査基準で確認できる範囲を整理します。

観点商標法第53条の2商標法第4条第1項第19号商標法第4条第1項第7号
制度上の位置づけ取消しの審判の理由商標法第4条第1項の不登録事由(拒絶・異議・無効の理由の列挙に商標法第4条第1項が含まれる)同左
他人の商標の周知性条文上、要件とされていない「日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」であることが必要。商標審査基準は、外国について「我が国以外の一の国において周知であることは必要であるが、必ずしも複数の国において周知であることを要しない」としている―
主観面「正当な理由がないのに」「承諾を得ないで」(「不正の目的」の文言なし)「不正の目的」が必要。商標審査基準は、不正の目的の認定で勘案する資料として「出願人から商標の買取りや代理店契約締結等の要求を受けている事実」「出願人が外国の権利者の国内参入を阻止しようとしている事実」等を挙げ、該当例として、外国で周知な他人の商標について「外国の権利者の国内参入を阻止し若しくは代理店契約締結を強制する目的で出願したもの」を挙げている商標審査基準は、該当する場合の1つとして「出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するもの」を挙げている
出願人と本人の関係代理人若しくは代表者(出願の日前1年以内にそうであった者を含む)に限る条文上、代理・代表の関係は要件とされていない条文上、代理・代表の関係は要件とされていない
主張できる者その商標に関する権利を有する者のみ登録異議の申立ては何人も(商標法第43条の2)。無効審判は利害関係人(商標法第46条第2項)同左
期間設定の登録の日から5年(商標法第53条の3)商標法第47条第1項の列挙に含まれない(無効審判に除斥期間の定めなし)商標法第47条第1項の列挙に含まれない
登録がなくなる時点審決確定後、その後消滅(商標法第54条第1項)無効審決の確定により、原則として初めから存在しなかったものとみなされる(商標法第46条の2。詳細は関連記事)

〔表9〕商標法第53条の2と、商標法第4条第1項第19号・第7号の比較(条文はe-Gov法令検索、審査基準は「商標審査基準〔改訂第17版〕第3 十七 第4条第1項第19号」「同 第3 六 第4条第1項第7号」の記載による。2026年9月参照。本記事作成者が整理)。

審判便覧66―01の3(4)は、代理人等の無断登録についてパリ条約第6条の7違反を理由とする場合、日本では第53条の2の取消審判によって処理し、これを理由とする登録異議や第46条の無効審判は請求できないと明記しています。別に第4条第1項の独立した不登録事由を満たすかという問題とは区別します。無断出願であるというだけで、第4条第1項第7号にも当然該当すると断定はできません。審判便覧66―01の3(4)
立法の経緯(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、平成8年の一部改正前は、パリ条約第6条の7を受けて、代理人等による不当な登録出願を、登録前は登録異議の申立ての理由とし(改正前の第15条第4号。権利を有する者の登録異議の申立てを条件とする拒絶の理由)、登録された後は第53条の2の取消審判による取消理由としていた、と説明しています。同改正で異議申立てを登録後の制度に移した際、代理人等による不当登録は登録異議の申立ての理由にはしなかったとし、その理由として、登録後は引き続き第53条の2の取消審判で取り消せること、同条約が各同盟国に義務づけているのは出願に対する異議申立てであって、登録後に登録を取り消すための異議申立ては含まれないと解されること等を挙げています(第43条の2の解説の〔参考〕)。改正前の第15条第4号は、登録前の異議申立制度の廃止に伴って削除した、としています(第15条の解説)。
逐条解説〔第22版〕1613頁、1712頁〜1713頁。

7. 効果 ― 商標法第54条第1項、再登録の制限はない

商標登録を取り消すべき旨の審決が確定したときは、商標権は「その後消滅する」(商標法第54条第1項)。審判の請求の登録の日までさかのぼる商標法第54条第2項は、商標法第50条第1項の審判だけの規定なので、商標法第53条の2の審判には当てはまりません。無効審判のように初めから存在しなかったものとみなされるわけでもありません。

また、商標法第51条第2項(商標法第52条の2第2項で準用)や商標法第53条第2項のような、取消し後5年間の再登録の制限は、商標法第53条の2・第53条の3には置かれていません。商標法第53条の2は1つの項だけからなり、商標法第51条第2項を準用する規定もありません。

Q. 商標法第53条の2の審判で登録が取り消されたら、本人(外国で権利を有する者)は、その商標権を自分のものにできますか。
A. 商標法第53条の2が定めているのは「当該商標登録を取り消すこと」についての審判です。パリ条約第6条の7(1)は、国の法令が認める場合の手段として登録の移転の請求にも触れていますが、商標法第53条の2・第53条の3には移転の請求の定めはありません。本人が日本で商標権を得るには、自ら商標登録出願をして登録を受けることになります(その出願が登録要件を満たすかは別に審査されます)。
Q. 取り消されるまでの間にされた、代理人等による登録商標の使用はどう扱われますか。
A. 商標法第54条第1項により、商標権は審決の確定の後に消滅します。さかのぼって消滅するという規定はありません。なお、第59条・第60条の再審による回復後の制限と、第38条の2の侵害訴訟確定後の主張制限は、対象と目的が異なります(たとえば商標法第38条の2各号は、無効にすべき旨の審決と取り消すべき旨の決定を挙げており、取消しの審判の審決は挙げていません)。

8. 防護標章登録への準用

商標法第68条第4項は、防護標章登録に係る登録異議の申立て及び審判について、商標法第53条の2、第53条の3、第54条第1項などを準用しています。したがって、代理人等が無断で防護標章登録出願をして登録を受けた場合にも、同じ仕組みが用意されています。

取消しの審判などの規定商標法第68条第4項の準用列挙
商標法第53条の2・第53条の3該当 列挙にある
商標法第54条第1項該当 列挙にある
商標法第50条・第51条・第52条の2・第53条非該当 列挙にない
商標法第47条(無効審判の除斥期間)非該当 列挙にない

〔表10〕防護標章登録への準用の有無(商標法第68条第4項をe-Gov法令検索で確認、およびシリーズ既刊記事の確認結果による。2026年9月参照。本記事作成者が整理)。

ポイント:取消しの審判のうち、防護標章登録に準用されるのは商標法第53条の2(と第53条の3)だけです。防護標章登録は「使用」を前提としない制度なので、使用・不使用を問題にする商標法第50条・第51条・第52条の2・第53条が準用されていないことと整合します(後半は条文の構造からの作成者の整理)。

9. 総まとめ ― 5つの取消しの審判の一覧

商標法の取消しの審判は、商標法第50条第1項、第51条第1項、第52条の2第1項、第53条第1項、第53条の2の5つです。「不使用取消審判」などの呼び名は実務上の呼称です。違いが出るポイントを1枚の表にまとめます。

観点商標法第50条第1項
(不使用)
商標法第51条第1項
(商標権者の不正使用)
商標法第52条の2第1項
(移転後の混同)
商標法第53条第1項
(使用権者の不正使用)
商標法第53条の2
(代理人等の不正登録)
請求人何人も何人も何人も何人もその商標に関する権利を有する者
問題とされる主体商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれも(使用をしていない)商標権者商標法第24条の4各号の事由により類似関係の商標権が異なった商標権者に属することとなった場合の、一の登録商標に係る商標権者専用使用権者又は通常使用権者代理人若しくは代表者、又は出願の日前1年以内にそうであった者(出願人)
主観的要件定めなし故意不正競争の目的使用権者については定めなし。ただし、商標権者がその事実を知らなかった場合において相当の注意をしていたときは取り消されない(ただし書)「故意」「不正の目的」の文言なし。「正当な理由がないのに」「承諾を得ないで」
対象となる使用・行為継続して3年以上、日本国内で、各指定商品・指定役務についての登録商標の使用をしていない類似範囲の使用(指定商品・役務についての類似商標の使用、類似商品・役務についての登録商標・類似商標の使用)であって、品質・質の誤認又は他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるもの指定商品・指定役務についての登録商標の使用であって、他の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品・役務と混同を生ずるもの指定商品・役務又は類似の商品・役務についての登録商標又は類似商標の使用(同一範囲を含む)であって、品質・質の誤認又は他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるもの使用ではなく商標登録出願(同盟国等の権利に係る商標と同一・類似の商標、同一・類似の商品・役務)
除斥期間定めなし使用の事実がなくなった日から5年(商標法第52条)商標法第52条を準用(商標法第52条の2第2項)商標法第52条を準用(商標法第53条第3項)商標権の設定の登録の日から5年(商標法第53条の3)
再登録の制限定めなしあり:商標権者であった者は、審決確定の日から5年(商標法第51条第2項)あり:商標法第51条第2項を準用(商標法第52条の2第2項)あり:商標権者であった者、又は専用使用権者若しくは通常使用権者であった者であって第1項に規定する使用をしたものは、審決確定の日から5年(商標法第53条第2項)定めなし
商標権の消滅時点審判の請求の登録の日に消滅したものとみなす(商標法第54条第2項)審決確定の後、その後消滅(商標法第54条第1項)同左同左同左(商標法第54条第1項)
防護標章登録への準用(商標法第68条第4項)なしなしなしなしあり

〔表11〕商標法の5つの取消しの審判の総まとめ一覧(商標法第51条、第52条、第52条の2、第53条、第53条の2、第53条の3、第54条、第68条第4項は本記事作成時にe-Gov法令検索で確認、商標法第50条はシリーズ既刊の第50条の記事での確認による。2026年9月参照。各欄は本記事作成者による要約であり、正確な文言は各条の原文を参照。再登録の制限の対象となる商品・役務・商標の範囲(同一・類似)は各関連記事で扱います)。

flowchart TB
  A["登録商標を取り消したい"] --> B{"問題は何か"}
  B -- "3年以上使用されていない" --> C["商標法第50条第1項
請求人:何人も"] B -- "誤認・混同を生ずる使用" --> D{"だれの使用か"} D -- "商標権者の故意による
類似範囲の使用" --> E["商標法第51条第1項
請求人:何人も"] D -- "分離移転等の後の商標権者の
不正競争の目的での使用" --> F["商標法第52条の2第1項
請求人:何人も"] D -- "専用使用権者・
通常使用権者の使用" --> G["商標法第53条第1項
請求人:何人も"] B -- "代理人等による
無断の出願" --> H["商標法第53条の2
請求人:その商標に関する
権利を有する者のみ"] style H fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:この記事で扱う商標法第53条の2(ほかの4つの取消しの審判と区別するための色。請求できる・できないを表すものではありません)

【図6】5つの取消しの審判の選び分け(条文を本記事作成者がフロー化したもの。各審判の要件は〔表11〕と各条の原文を参照)。

10. 特許法・実用新案法・意匠法との比較

特許法・実用新案法・意匠法には、商標法第53条の2に直接対応する「代理人等の無断出願による取消しの審判」はありません。「本来の権利者でない者が出願して登録を受けた」という場面に対する仕組みを、条文で確認できる範囲で並べます。

法律場面本来の者がとれる手段(条文で確認できたもの)
商標法同盟国等で商標権に相当する権利を有する者の代理人等が、無断で商標登録出願商標登録の取消しの審判(商標法第53条の2)。商標法第53条の2・第53条の3に移転の請求の定めはない
特許法特許を受ける権利を有しない者の出願に対する特許など(特許法第123条第1項第2号(特許法第38条違反に限る)・第6号)特許権の移転の請求(特許法第74条第1項)
実用新案法実用新案法第37条第1項第2号(特許法第38条の準用違反に限る)・第5号実用新案権の移転の請求(実用新案法第17条の2第1項)
意匠法意匠法第48条第1項第1号(特許法第38条の準用違反に限る)・第3号意匠権の移転の請求(意匠法第26条の2第1項)

〔表12〕四法の比較(特許法第74条第1項、実用新案法第17条の2第1項、意匠法第26条の2第1項、商標法第53条の2をe-Gov法令検索で確認。2026年9月参照。本記事作成者が整理。三法の無効審判との関係など詳細は各法の関連記事を参照)。

ポイント:三法の移転の請求は「発明・考案・意匠について登録を受ける権利を有する者」を保護する仕組みです。商標法には、これに当たる「創作者の権利」の考え方がなく、商標法第53条の2は「外国等での商標権に相当する権利」と「代理・代表の関係」を手がかりにしている点で、場面の切り取り方が異なります(作成者の整理)。

11. 試験での問われ方

短答式では、①請求人(「何人も」か)、②「商標に関する権利」の範囲(括弧書)、③出願人の範囲(出願の日前1年以内)、④除斥期間の起算点、⑤効果(消滅時点、再登録の制限の有無)、⑥防護標章登録への準用、が条文どおりに問われやすい形をしています(条文の構造からの整理であり、出題を予想するものではありません)。

問8肢ニの「商標に関する権利」には、質権に相当する権利は含まれません。第53条の2は商標権に相当する権利に限っています。肢ロは再登録禁止の起算点、肢ハは使用権者の故意の要否を問います。問題全体の正解は2です。 公式問題/公式正解。肢の説明は条文による検証であり、公式解答が公表するのは問題全体の正解番号です。
Q. 論文式・口述では、どのような形で問われうるでしょうか。
A. 本記事では、論文式・口述の公式資料(問題・出題趣旨)で商標法第53条の2を扱ったものを特定できていません。事例としては、外国企業と日本の代理店の関係が示され、取りうる手段(商標法第53条の2の審判、商標法第4条第1項第19号などを理由とする登録異議の申立て・無効審判)を要件ごとに検討させる形が考えられますが、これは作成者の想定です。ここで挙げた事例は学習用で、実際の出題実績として示すものではありません。
レベル3のまとめ
  • 要件は5つ:①同盟国等で商標権に相当する権利を有する者の商標と同一・類似、②同一・類似の商品・役務を指定、③正当な理由がなく承諾を得ない出願、④出願人が代理人・代表者(出願の日前1年以内にそうであった者を含む)、⑤請求人はその商標に関する権利を有する者。
  • 周知性、故意、不正の目的は、条文上の要件とされていません。
  • 除斥期間は、商標権の設定の登録の日から5年(商標法第53条の3)。
  • 効果は、審決確定の後に商標権が消滅(商標法第54条第1項)。再登録の制限の定めはありません。
  • 商標法第53条の2の事由は、拒絶理由・異議理由・無効理由の列挙にはありません。同じ事実関係が商標法第4条第1項第19号などに当たるかは別の問題です(例外あり・個別判断)。
  • 取消しの審判のうち、防護標章登録に準用されるのは商標法第53条の2・第53条の3だけです(商標法第68条第4項)。
  • パリ条約第6条の7は、異議・取消し・(法令が認める場合の)移転の請求を挙げていますが、商標法第53条の2は取消しの審判を定めています。

関連記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次