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小学生でも分かる実用新案法|実用新案法第21条〜第23条 裁定実施権(不実施・自己実施・公共の利益) ― 話し合いがまとまらないとき「お役所」が決める貸し出し

小学生でもわかる実用新案法:裁定実施権(21条〜23条)

小学生でも分かる実用新案法 / C. 実用新案権の効力・実施権・侵害 #20

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実用新案権は権利者のものですが、「3年以上使っていない」「自分の登録実用新案を使うのに他人の権利が邪魔になる」「みんなのために特に必要」という3つの場面では、権利者が貸したくなくても、話し合い(協議)のあとに特許庁長官や経済産業大臣が「貸しなさい」と決める(裁定する)ことができます。この記事では、実用新案法第21条〜第23条の3つの裁定と、手続を借りてくる特許法第84条〜第91条の2、対価に不服があるときの第48条までを一気に整理します。

条文:実用新案法第21条、第22条、第23条関連:実用新案法第17条、第24条、第48条、特許法第83条〜第93条参照時点:2026年9月

目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「持っているのに使わない」はもったいない

Aさんは「開けやすい筆箱」の考案で実用新案権をもっています。でも、Aさんは筆箱を作りもせず、だれにも貸しもせず、3年以上ほったらかしにしています。一方、B社は「その筆箱を作って売りたい」と思っています。

実用新案の制度は「よい考案をみんなが使えるようにして、産業を元気にする」ためのものです。権利者が使いもしないで、他の人にも使わせないのでは、この目的に合いません。そこで法律は、次の順番で「貸し出し」を進めるしくみを用意しています。

  1. まずB社がAさんに「貸してください」と話し合い(協議)を申し込む。
  2. 話し合いがまとまらなかったら、B社は特許庁長官に「貸すように決めてください」と裁定を申し立てる。
  3. 特許庁長官が、Aさんの言い分も聞いたうえで、「貸しなさい。お金(対価)はいくら」と決める。
  4. 決められたお金の額に納得できなければ、裁判所に「額を増やして/減らして」と訴えることができる。

これが不実施の場合の裁定(実用新案法第21条)です。

① 使わないなら貸してね 第21条(不実施) Aさん:3年以上使っていない B社:作って売りたい まず話し合い(協議) まとまらないとき 特許庁長官が裁定 通常実施権が設定される 出願の日から4年を経過している ことも必要(第21条第1項ただし書) ② お互いさま 第22条(自己の登録実用新案の実施) Cさんの考案は、先にあるDさんの 権利を「利用」していて使えない まず話し合い(協議) まとまらないとき 特許庁長官が裁定 通常実施権が設定される Dさんも「お返し」の協議・裁定を 求められる(第22条第2項・第4項) ③ みんなのため 第23条(公共の利益) その考案を使うことが 公共の利益のため特に必要 まず話し合い(協議) まとまらないとき 経済産業大臣が裁定 通常実施権が設定される 決める人が特許庁長官ではなく 経済産業大臣(第23条第2項)

図は左右にスクロールできます。

凡例
① 第21条(不実施)
② 第22条(利用関係)
③ 第23条(公共の利益)
手続の順序(協議 → 裁定)
①場面の番号(説明用)

【図1】実用新案法が用意する3つの裁定の場面(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。3つとも同じ形・同じ大きさの枝分かれで並べ、違うところ(裁定する人と、それぞれの追加の条件)だけが読み比べられるようにした。①と②は特許庁長官、③は経済産業大臣が裁定する。どれも「まず協議、だめなら裁定」の順番。※説明の都合上、対価の額や不服の申立ては省略した(→【図4】)。

「お互いさま」と「みんなのため」

②は、Cさんの考案が、先にあるDさんの権利(登録実用新案や特許発明など)を「利用」する関係にあって、Dさんの許可がないとCさんが自分の考案を使えないときの話です。Cさんは「私の考案を使うために貸してください」と協議を申し込み、まとまらなければ特許庁長官に裁定を求めます。このときDさんも「じゃあ、私にもCさんの考案を貸して」と、お返しの協議・裁定を求めることができます。

③は、たとえば災害のときなど、その考案を使うことが「公共の利益のため特に必要」なときの話です。決めるのは特許庁長官ではなく経済産業大臣です。

レベル1のまとめ

  • 権利者が貸したくなくても、「お役所」が「貸しなさい」と決めることがある=裁定。
  • 場面は3つ:①3年以上使っていない、②自分の考案を使うために他人の権利が必要、③みんなのために特に必要。
  • どれも「まず話し合い(協議)→ まとまらなければ裁定」。①②は特許庁長官、③は経済産業大臣が決める。
  • 決められたお金の額に不満があれば、裁判所に訴えられる。

※①には「出願の日から4年」という条件、②には「利益を不当に害するときは裁定できない」という例外など、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。


LEVEL 2条文の骨格

第21条(不実施の場合の通常実施権の設定の裁定)

項 内容(要旨) ポイント
第1項本文 登録実用新案の実施が継続して3年以上日本国内において適当にされていないとき、実施をしようとする者は、実用新案権者又は専用実施権者に通常実施権の許諾について協議を求めることができる 「継続して3年以上」「日本国内」「適当に」の3つが条文上のキーワード
第1項ただし書 実用新案登録出願の日から4年を経過していないときは、協議を求めることができない 登録の日ではなく出願の日から起算
第2項 協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、特許庁長官の裁定を請求できる 協議前置
第3項 特許法第84条から第91条の2まで(裁定の手続等)を準用 第85条第2項(正当な理由があれば裁定できない)も含めて準用

〔表1〕実用新案法第21条の項ごとの内容(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。

実用新案法第21条第1項登録実用新案の実施が継続して三年以上日本国内において適当にされていないときは、その登録実用新案の実施をしようとする者は、実用新案権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。ただし、その登録実用新案に係る実用新案登録出願の日から四年を経過していないときは、この限りでない。
実用新案法第21条第2項前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その登録実用新案の実施をしようとする者は、特許庁長官の裁定を請求することができる。
実用新案法第21条第3項特許法第八十四条から第九十一条の二まで(裁定の手続等)の規定は、前項の裁定に準用する。
第21条第1項の2つの時間的要件 ① 出願の日から4年 × 協議を求められない ○ 出願の日から4年を経過 ② 継続して3年以上の不実施 × 継続して3年以上に満たない ○ 3年以上の不実施 実用新案登録出願の日 実施されない状態の始まり 出願の日から4年 不実施が3年に達する 両方を満たしてはじめて協議を求められる(第1項)

図は左右にスクロールできます。

凡例
× まだ要件を満たさない期間
○ 要件を満たしている期間
●時点(丸)/横棒=期間
両方の要件がそろう時点

【図2】実用新案法第21条第1項の時間的要件(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。「出願の日から4年」(ただし書)と「継続して3年以上の不実施」(本文)の両方を満たす必要がある(条文上の帰結)。※時間軸は縮尺なし。※図は一例で、4年の経過と3年の不実施のどちらが先にそろうかは場合による。

第22条(自己の登録実用新案の実施をするための通常実施権の設定の裁定)

第22条は、実用新案法第17条(他人の登録実用新案等との関係)とセットです。第17条は、自分の登録実用新案が、先の出願に係る他人の登録実用新案・特許発明・登録意匠等を「利用」するとき、又は自分の実用新案権が先の出願に係る他人の意匠権・商標権と「抵触」するときは、業として実施できないと定めています。

実用新案法第17条実用新案権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その登録実用新案がその実用新案登録出願の日前の出願に係る他人の登録実用新案、特許発明若しくは登録意匠若しくはこれに類似する意匠を利用するものであるとき、又はその実用新案権がその実用新案登録出願の日前の出願に係る他人の意匠権若しくは商標権と抵触するときは、業としてその登録実用新案の実施をすることができない。
項 内容(要旨) だれが/だれに
第1項 登録実用新案が第17条の場合に当たるとき、実用新案権者又は専用実施権者は、第17条の他人に対し、自己の登録実用新案の実施をするための通常実施権(又は特許権・意匠権についての通常実施権)の許諾について協議を求めることができる 実用新案権者等 → 第17条の他人
第2項 協議を求められた第17条の他人は、協議を求めた実用新案権者等に対し、その者が許諾を受けて実施しようとする登録実用新案の範囲内で、通常実施権の許諾について協議を求めることができる(お返しの協議) 第17条の他人 → 実用新案権者等
第3項 第1項の協議が成立せず・できないとき、実用新案権者等は特許庁長官の裁定を請求できる 実用新案権者等
第4項 第2項の協議が成立せず・できない場合で、第3項の裁定の請求があったとき、第17条の他人は、答弁書を提出すべき期間として特許庁長官が指定した期間内に限り、特許庁長官の裁定を請求できる(お返しの裁定) 第17条の他人
第5項 通常実施権を設定することが第17条の他人又は実用新案権者等の利益を不当に害することとなるときは、裁定できない 特許庁長官の裁定の限界①
第6項 第4項の場合に、第3項の裁定の請求について通常実施権を設定すべき旨の裁定をしないときは、第4項の裁定(お返しの裁定)もできない 特許庁長官の裁定の限界②
第7項 特許法第84条、第84条の2、第85条第1項、第86条から第91条の2までを準用 第85条第2項は準用しない

〔表2〕実用新案法第22条の項ごとの内容(要旨)。

実用新案法第22条第1項実用新案権者又は専用実施権者は、その登録実用新案が第十七条に規定する場合に該当するときは、同条の他人に対しその登録実用新案の実施をするための通常実施権又は特許権若しくは意匠権についての通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
実用新案法第22条第2項前項の協議を求められた第十七条の他人は、その協議を求めた実用新案権者又は専用実施権者に対し、これらの者がその協議により通常実施権又は特許権若しくは意匠権についての通常実施権の許諾を受けて実施をしようとする登録実用新案の範囲内において、通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
実用新案法第22条第3項第一項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、実用新案権者又は専用実施権者は、特許庁長官の裁定を請求することができる。
実用新案法第22条第4項第二項の協議が成立せず、又は協議をすることができない場合において、前項の裁定の請求があつたときは、第十七条の他人は、第七項において準用する特許法第八十四条の規定によりその者が答弁書を提出すべき期間として特許庁長官が指定した期間内に限り、特許庁長官の裁定を請求することができる。
実用新案法第22条第5項特許庁長官は、第三項又は前項の場合において、当該通常実施権を設定することが第十七条の他人又は実用新案権者若しくは専用実施権者の利益を不当に害することとなるときは、当該通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない。
実用新案法第22条第6項特許庁長官は、前項に規定する場合のほか、第四項の場合において、第三項の裁定の請求について通常実施権を設定すべき旨の裁定をしないときは、当該通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない。
実用新案法第22条第7項特許法第八十四条、第八十四条の二、第八十五条第一項及び第八十六条から第九十一条の二まで(裁定の手続等)の規定は、第三項又は第四項の裁定に準用する。
sequenceDiagram
    participant C as 実用新案権者 C(利用する側)
    participant D as 第17条の他人 D(利用される側)
    participant K as 特許庁長官
    C->>D: 第1項 通常実施権の許諾について協議を求める
    D-->>C: 第2項 お返しに通常実施権の許諾について協議を求める
    Note over C,D: どちらの協議も成立しない
    C->>K: 第3項 裁定を請求
    K->>D: 準用する特許法第84条 請求書の副本を送達し答弁書の提出期間を指定
    D-->>K: 第4項 答弁書提出期間内に限り、お返しの裁定を請求
    K->>C: 第3項の裁定(利益を不当に害するときは不可=第5項)
    K-->>D: 第4項の裁定(第3項の裁定をしないときは不可=第6項)

図は左右にスクロールできます。

凡例
Cさん(利用する側)から始まる手続と、それに対する長官の行為
Dさん(利用される側)の「お返し」に関する手続・裁定

【図3】実用新案法第22条の「お返しの協議・裁定」の流れ。上から下へ時間が進むが、※時間軸は縮尺なし。第4項の裁定請求は「答弁書を提出すべき期間として特許庁長官が指定した期間内に限り」できる。※説明の都合上、対価の額や訴えは【図4】に譲った。

第23条(公共の利益のための通常実施権の設定の裁定)

項 内容(要旨) ポイント
第1項 登録実用新案の実施が公共の利益のため特に必要であるとき、実施をしようとする者は、実用新案権者又は専用実施権者に協議を求めることができる 期間の要件はない
第2項 協議が成立せず・できないとき、経済産業大臣の裁定を請求できる 裁定者が特許庁長官ではない
第3項 特許法第84条、第84条の2、第85条第1項、第86条から第91条の2までを準用 第22条第7項と同じ範囲(第85条第2項は準用しない)

〔表3〕実用新案法第23条の項ごとの内容(要旨)。

実用新案法第23条第1項登録実用新案の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その登録実用新案の実施をしようとする者は、実用新案権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
実用新案法第23条第2項前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その登録実用新案の実施をしようとする者は、経済産業大臣の裁定を請求することができる。
実用新案法第23条第3項特許法第八十四条、第八十四条の二、第八十五条第一項及び第八十六条から第九十一条の二まで(裁定の手続等)の規定は、前項の裁定に準用する。

手続の流れ ― 協議から対価の訴えまで

flowchart TD
  subgraph L1["レーン1:当事者(協議と裁定の請求)"]
    direction TB
    S["実施をしようとする者・実用新案権者等"] -.-> A["① 協議を求める
第21条第1項・第22条第1項・第23条第1項"] A --> B{"協議が成立したか"} B -- "はい" --> Z["○ 契約による通常実施権(許諾)"] B -. "いいえ(不成立・協議ができない)" .-> C["② 裁定を請求
第21条第2項・第22条第3項 → 特許庁長官
第23条第2項 → 経済産業大臣"] end subgraph L2["レーン2:特許庁長官・経済産業大臣(裁定の手続)"] direction TB D["③ 請求書の副本を送達・答弁書の提出機会
準用する特許法第84条"] --> D2["通常実施権者の意見陳述
準用する特許法第84条の2"] D2 --> E["④ 審議会等の意見聴取
準用する特許法第85条第1項"] E --> F["⑤ 裁定:文書・理由付記
範囲・対価の額・支払方法と時期を定める
準用する特許法第86条"] F --> G["⑥ 設定を認める裁定の謄本送達 → 裁定の定めにより協議成立とみなす
準用する特許法第87条"] end subgraph L3["レーン3:当事者(裁定のあと)"] direction TB H{"対価の額に不服があるか"} J["支払の時期までに対価の支払又は供託
準用する特許法第88条・第89条"] K["× 裁定は効力を失う
準用する特許法第89条"] end subgraph L4["レーン4:裁判所"] direction TB I["⑦ 対価の額の増減を求める訴え
実用新案法第48条第1項"] end C --> D G --> H H -. "はい" .-> I H -- "いいえ" --> J I --> JC["対価増減の訴えを提起したときは供託(準用特許法第88条第3号)"] JC -->|"支払時期までに供託しない"| K J -- "支払・供託しない" --> K style Z fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style I fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F style K fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
○ 通常実施権が得られる
× 裁定が効力を失う
裁判所での手続
必ず行われる手続・当然に生じる効果
「することができる」とされた任意の手続(①②⑦)
①手続の順番(説明用)

【図4】協議→裁定請求→裁定→対価の訴えのフロー図(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。主体ごとに4つのレーン(当事者/特許庁長官・経済産業大臣/当事者/裁判所)に分けた。番号①〜⑦は本記事作成者の整理。準用する特許法の条文の内容は要旨(レベル3〔表4〕参照)。※説明の都合上、第22条第4項の「お返しの裁定」は【図3】に譲り、この図では省略した。

実用新案法第48条第1項第二十一条第二項、第二十二条第三項若しくは第四項又は第二十三条第二項の裁定を受けた者は、その裁定で定める対価の額について不服があるときは、訴えを提起してその額の増減を求めることができる。
実用新案法第48条第2項特許法第百八十三条第二項(出訴期間)及び第百八十四条(被告適格)の規定は、前項の訴えに準用する。
レベル2のまとめ

  • 第21条:継続して3年以上日本国内で適当に実施されていない登録実用新案について、出願の日から4年経過後に協議→特許庁長官の裁定。特許法第84条〜第91条の2を準用。
  • 第22条:第17条の利用・抵触関係(商標権との抵触を除く)にある実用新案権者等が協議→特許庁長官の裁定。相手方も答弁書提出期間内に限りお返しの裁定を請求できる。利益を不当に害するときは裁定不可。
  • 第23条:公共の利益のため特に必要なとき、協議→経済産業大臣の裁定。
  • 裁定で定めた対価の額に不服があるときは、訴えを提起して増減を求める(第48条第1項)。


LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 準用される特許法の裁定手続条文の一覧

特許法 見出し 内容(要旨) 第21条第3項 第22条第7項・第23条第3項
第84条 答弁書の提出 特許庁長官は、請求書の副本を権利者・専用実施権者その他登録した権利を有する者に送達し、相当の期間を指定して答弁書を提出する機会を与える 準用 準用
第84条の2 通常実施権者の意見の陳述 通常実施権を有する者は、第84条の期間内に限り、裁定の請求について意見を述べることができる 準用 準用
第85条第1項 審議会の意見の聴取等 特許庁長官は、裁定をしようとするときは審議会等で政令で定めるものの意見を聴かなければならない 準用 準用
第85条第2項 (同上) 実施が適当にされていないことについて正当な理由があるときは、通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない 準用 準用しない
第86条 裁定の方式 裁定は文書で行い、理由を付す。設定すべき旨の裁定では、通常実施権を設定すべき範囲、対価の額並びにその支払の方法及び時期を定める 準用 準用
第87条 裁定の謄本の送達 裁定の謄本を当事者等に送達する。設定すべき旨の裁定の謄本の送達があったときは、裁定で定めるところにより当事者間に協議が成立したものとみなす 準用 準用
第88条 対価の供託 対価の受領拒否・受領不能・対価の額についての訴えの提起・質権が設定されているとき(質権者の承諾があるときを除く)は、対価を供託しなければならない 準用 準用
第89条 裁定の失効 裁定で定める支払の時期までに対価(定期・分割払いのときは最初の分)の支払又は供託をしないときは、裁定は効力を失う 準用 準用
第90条 裁定の取消し 裁定の理由の消滅等により裁定を維持することが適当でなくなったとき、又は通常実施権の設定を受けた者が適当に実施しないときは、利害関係人の請求により又は職権で裁定を取り消すことができる 準用 準用
第91条 (取消しの効果) 裁定の取消しがあったときは、通常実施権はその後消滅する 準用 準用
第91条の2 裁定についての不服の理由の制限 行政不服審査法の審査請求では、対価についての不服を裁定についての不服の理由とすることができない 準用 準用

〔表4〕実用新案法第21条第3項・第22条第7項・第23条第3項が準用する特許法の裁定手続条文(特許法の原文を取得のうえ要旨化。第91条の見出しは e-Gov 取得結果に表示がなかったため本記事作成者の仮置き)。第85条第2項の準用の有無だけが3つの裁定で異なる。

特許法第85条第2項特許庁長官は、その特許発明の実施が適当にされていないことについて正当な理由があるときは、通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない。
特許法第86条第2項通常実施権を設定すべき旨の裁定においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 通常実施権を設定すべき範囲
二 対価の額並びにその支払の方法及び時期
特許法第87条第2項当事者に対し前項の規定により通常実施権を設定すべき旨の裁定の謄本の送達があつたときは、裁定で定めるところにより、当事者間に協議が成立したものとみなす。
特許法第89条通常実施権の設定を受けようとする者が第八十三条第二項の裁定で定める支払の時期までに対価(対価を定期に又は分割して支払うべきときは、その最初に支払うべき分)の支払又は供託をしないときは、通常実施権を設定すべき旨の裁定は、その効力を失う。
裁定の対価を争う訴え48条1項が実用新案法21条2項・22条3項/4項・23条2項の裁定を直接列挙し、48条2項が特許法183条2項・184条を準用します。出訴期間は裁定謄本送達から6月です。被告は裁定に係る相手方であり、特許庁長官や経済産業大臣ではありません。22条3項の裁定では通常実施権者又は17条の「他人」、それ以外は通常実施権者又は実用新案権者・専用実施権者となります。実用新案法21〜23条・48条/特許法183・184条。

2. 3つの裁定の比較

観点 第21条(不実施) 第22条(自己の登録実用新案の実施) 第23条(公共の利益)
実体的要件 継続して3年以上日本国内で適当に実施されていない+出願の日から4年経過 登録実用新案が第17条の場合(利用・抵触、商標権との抵触を除く)に該当 実施が公共の利益のため特に必要
協議を求める者 登録実用新案の実施をしようとする者 実用新案権者又は専用実施権者(相手方からのお返しの協議もあり:第2項) 登録実用新案の実施をしようとする者
協議の相手方 実用新案権者又は専用実施権者 第17条の他人 実用新案権者又は専用実施権者
裁定をする者 特許庁長官 特許庁長官 経済産業大臣
裁定できない場合 不実施に正当な理由があるとき(準用する特許法第85条第2項) 利益を不当に害するとき(第5項)、第3項の裁定をしないときの第4項の裁定(第6項) 条文上、第22条第5項・特許法第85条第2項のような規定なし
準用する手続条文 特許法第84条〜第91条の2 特許法第84条、第84条の2、第85条第1項、第86条〜第91条の2 第22条と同じ
対価の額の訴え 実用新案法第48条第1項(第21条第2項、第22条第3項・第4項、第23条第2項の裁定を受けた者)
裁定通常実施権の移転(第24条) 実施の事業とともにする場合に限り移転(第24条第3項) 第3項の裁定:本権が事業とともに移転したときに従って移転、分離移転・消滅で消滅(第24条第4項)/第4項の裁定:本権に従って移転、本権消滅で消滅(第24条第5項) 実施の事業とともにする場合に限り移転(第24条第3項)

〔表5〕実用新案法の3つの裁定の比較(取得した条文に基づく整理)。第24条の内容は前の記事(実用新案法第18条〜第20条・第24条・第25条)を参照。

flowchart TD
  S["登録実用新案を使いたいが、権利者が貸してくれない"] --> Q1{"自分の登録実用新案が
第17条の利用・抵触関係(商標権との抵触を除く)にあるか"} Q1 -- "はい" --> R22["○ 第22条:特許庁長官の裁定
相手方のお返しの裁定あり"] Q1 -- "いいえ" --> Q2{"公共の利益のため
特に必要か"} Q2 -- "はい" --> R23["○ 第23条:経済産業大臣の裁定
期間の要件はない"] Q2 -- "いいえ" --> Q3{"継続して3年以上不実施
かつ出願の日から4年経過か"} Q3 -- "はい" --> R21["○ 第21条:特許庁長官の裁定
出願の日から4年が必要"] Q3 -- "いいえ" --> N["× 裁定の要件を満たさない
契約による許諾を目指す"] style R21 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style R22 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style R23 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style N fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
○ 裁定を請求できる場面
× 裁定の要件を満たさない
判断の流れ(「はい」は下、「いいえ」は右)

【図5】どの裁定に当たるかの分岐図(本記事作成者の整理。複数の裁定の要件を同時に満たす場合もありうる)。3つの裁定は、同じ2行の箱・同じ記号(○)で大きさをそろえた。※説明の都合上、協議前置(まず協議を求めること)と各裁定の例外(第22条第5項・第6項等)は省略した。

3. 特許法との対比 ― 条文番号のズレと「同じところ」

内容 実用新案法 特許法 違い
不実施の場合の裁定 第21条第1項・第2項 第83条第1項・第2項 文言はほぼ同一(「特許発明」→「登録実用新案」、「特許出願の日」→「実用新案登録出願の日」)。3年・4年の数値も同じ
不実施裁定の手続 第21条第3項(特許法第84条〜第91条の2を準用) 第84条〜第91条の2(直接適用) 実用新案法は準用方式
利用関係の裁定 第22条(第17条の他人に対して) 第92条(第72条の他人に対して) 第92条第1項は「実用新案権若しくは意匠権についての通常実施権」、実用新案法第22条第1項は「特許権若しくは意匠権についての通常実施権」と、相手方の権利の種類が入れ替わる
利用関係の裁定の準用 第22条第7項 第92条第7項(第84条、第84条の2、第85条第1項、第86条から前条までを準用) 準用範囲は同じ
公共の利益の裁定 第23条 第93条 文言はほぼ同一。いずれも経済産業大臣
対価の額についての訴え 第48条 第183条 実用新案法第48条第2項は特許法第183条第2項・第184条を準用
裁定通常実施権の移転の特則 第24条第3項〜第5項 第94条第3項〜第5項 実用新案法第24条第1項・第2項・第4項は特許法第92条第3項・意匠法第33条第3項の裁定にも言及

〔表6〕実用新案法第21条〜第23条・第48条と特許法第83条・第92条・第93条・第183条の対比。特許法第94条第3項〜第5項・第183条第2項・第184条の原文と照合した。

特許法第83条第1項特許発明の実施が継続して三年以上日本国内において適当にされていないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。ただし、その特許発明に係る特許出願の日から四年を経過していないときは、この限りでない。
特許法第92条第1項特許権者又は専用実施権者は、その特許発明が第七十二条に規定する場合に該当するときは、同条の他人に対しその特許発明の実施をするための通常実施権又は実用新案権若しくは意匠権についての通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
特許法第93条第1項特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。

4. 押さえておきたい要件・例外の整理

論点 条文上の帰結 根拠
第21条の起算点 「4年」は実用新案登録出願の日から。設定登録の日ではない 第21条第1項ただし書
第21条の「継続して3年以上」 不実施が「継続して」いることが要件。断続的な不実施を合算する規定はない 第21条第1項本文
裁定は「通常実施権」のみ 3つの裁定はいずれも「通常実施権の許諾/設定」についてのもの。専用実施権を裁定で設定する規定はない 第21条〜第23条の各項
第22条第4項の期間制限 お返しの裁定の請求は、答弁書を提出すべき期間として特許庁長官が指定した期間内に限る 第22条第4項
正当な理由の抗弁 不実施に正当な理由があるときに裁定できないのは第21条の裁定のみ(第22条・第23条は特許法第85条第2項を準用しない) 第21条第3項、第22条第7項、第23条第3項
対価への不服 行政不服審査法の審査請求では対価の不服を理由にできない(準用する特許法第91条の2)。対価の額は訴えで争う(第48条第1項) 特許法第91条の2、実用新案法第48条
裁定通常実施権の質権 裁定による通常実施権は、第24条第2項の質権設定の対象から除かれている 第24条第2項

〔表7〕要件・例外の整理(取得した条文からの帰結)。

5. 試験での問われ方

試験種別 問われ方の傾向 気をつける点
短答式 「3年」「4年」の数値と起算点、裁定をする者(特許庁長官/経済産業大臣)、協議前置、第22条第4項の期間制限、対価の供託・訴えが、特許法と実用新案法を横断して正誤形式で問われる 特許法第85条第2項(正当な理由)が第21条の裁定にだけ準用されること、実用新案法第48条第1項が第21条第2項・第22条第3項・第4項・第23条第2項の裁定を対象とすることを条文で押さえる
論文式 利用関係(第17条)の事例で、実施できるか→協議→裁定→お返しの裁定という流れを、根拠条文とともに書かせる形が考えられる 「実用新案法第22条第7項で準用する特許法第84条」のように、準用元と準用先を対で示す
口述 「実用新案法における3つの裁定の違いは」「不実施の裁定はいつから請求できるか」など、要件を口頭で述べさせる形が考えられる 「協議が成立せず、又は協議をすることができないとき」という条文の言い回しをそのまま言えるようにする

〔表8〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

令和8年度短答の関連問題問17ロは先願意匠権との抵触に伴う協議・裁定、ハは不実施裁定の対価の供託を扱います。特許法の問題であり、実用新案法第21条〜第23条による準用範囲と比較します。問17の公式正解は3(正しいもの3つ)です。 問題原文/公式正解。公式正解番号と、ここで示した肢の理由の条文照合は区別しています。
レベル3のまとめ

  • 第21条:継続して3年以上の不実施+出願の日から4年経過→協議→特許庁長官の裁定。特許法第84条〜第91条の2を丸ごと準用(正当な理由の抗弁あり)。
  • 第22条:第17条の利用・抵触関係(商標権との抵触を除く)→協議→特許庁長官の裁定。相手方は答弁書提出期間内に限りお返しの裁定を請求可。利益を不当に害するときは裁定不可。特許法第85条第2項は準用しない。
  • 第23条:公共の利益のため特に必要→協議→経済産業大臣の裁定。準用範囲は第22条と同じ。
  • 裁定の内容(範囲・対価・支払方法と時期)、供託、失効、取消し、不服理由の制限は準用する特許法第86条〜第91条の2。対価の額の不服は訴え(第48条第1項)。
  • 裁定通常実施権の移転は第24条第3項〜第5項の特則、質権設定は不可(第24条第2項)。

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