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小学生でも分かる特許法|特許法第46条・第46条の2 出願の変更 ― 「実用新案・意匠」から「特許」へ乗り換える

小学生でもわかる特許法:出願の変更(特許法第46条・第46条の2)

小学生でも分かる特許法 / B. 出願・審査の手続 #18

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実用新案登録出願や意匠登録出願として出したものを、あとから特許出願に「変更」できます。さらに、いったん登録された実用新案権をもとに特許出願をする道(第46条の2)もあります。どちらも「元の出願日をキープしたまま乗り換える」しくみです。

条文:特許法第46条、第46条の2関連:第44条第2項〜第4項(準用)参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

特許・実用新案・意匠は「3つの路線」

発明やデザインを守るしくみには、いくつかの種類があります。「特許」は技術のアイデア、「実用新案」は物の形や構造のちょっとしたアイデア、「意匠」は物のデザインを守ります。3つの電車の路線があるようなものです。

ところが、いったん「実用新案」の電車に乗ったあとで、「やっぱり特許の電車に乗りたかった!」と思うことがあります。そんなときに使えるのが出願の変更です。

特許出願 実用新案登録出願 意匠登録出願 第46条第1項 第46条第2項 実用新案⇔意匠の変更もある(実用新案法・意匠法) この記事は「特許出願へ」の矢印(特許法第46条)を扱う

【図1】3つの路線と「特許出願への乗り換え」。特許法第46条は、実用新案登録出願または意匠登録出願を特許出願に変更する規定。逆方向(特許→実用新案、特許→意匠)は実用新案法・意匠法にある。

乗り換えても「切符の日付」はそのまま

乗り換えのいいところは、最初に出願した日をそのまま使えることです。特許の世界では「早く出した人が勝ち」なので、出願日はとても大事です。変更しても、その日付は元の出願の日のままキープされます。

そのかわり、元の出願は「取り下げた」ことになります。2つの電車に同時に乗ることはできません。

もう一つの乗り換え:登録された実用新案から特許へ

実用新案は審査なしですぐ登録されます。登録された後で「やっぱり特許にしたい」と思ったときのために、実用新案登録に基づく特許出願(第46条の2)というしくみもあります。こちらは「登録された実用新案権を手放す」のと引きかえに、特許出願ができます。

レベル1のまとめ
  • 実用新案登録出願や意匠登録出願を、特許出願に「変更」できる(第46条)。
  • 変更しても出願日はそのまま。そのかわり元の出願は取り下げたことになる。
  • 登録された実用新案権をもとに特許出願をする道もある(第46条の2)。実用新案権は手放す。

※「いつまでに変更できるか」には期限があり、「出願日がそのまま」にも例外があります。正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第46条の構造

項内容(要旨)期限・条件
第1項実用新案登録出願人は、その実用新案登録出願を特許出願に変更できる実用新案登録出願の日から3年を経過した後は不可
第2項意匠登録出願人は、その意匠登録出願を特許出願に変更できる意匠登録出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から3月を経過した後、または意匠登録出願の日から3年を経過した後は不可(ただし、最初の拒絶査定の謄本の送達日から3月以内の期間は除く)
第3項第2項の「3月」の期間は、意匠法の規定により延長されたときは、その延長された期間を加えた期間となる期間延長との連動
第4項変更があったときは、もとの出願は取り下げたものとみなす
第5項第1項・第2項の3年の期間内に変更できなかったことについてその責めに帰することができない理由があるときの救済理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内で、かつ期間経過後6月以内
第6項第44条第2項〜第4項を準用出願日の遡及(と例外)、優先権証明書の提出期間、書面のみなし提出

〔表1〕第46条の項ごとの内容(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。第2項の期限は「3年」と「最初の拒絶査定から3月」の二重構造。

根拠と補足:意匠出願の変更期限である3月は、意匠法第68条第1項が準用する特許法第4条により意匠法第46条第1項の審判請求期間が延長されると、その延長の範囲で延びます。第46条第5項の救済は実用新案・意匠出願の「3年」の期限が対象です。責めに帰せない理由の解消から14日(在外者は2月)以内、かつ元の期限から6月以内という両方の条件が必要です。出典:特許法(第46条第3項・第5項)。
timeline
    title 意匠登録出願 → 特許出願への変更ができる期間(第46条第2項)
    意匠登録出願 : 3年以内が原則(拒絶査定送達後3月の制限あり)
    最初の拒絶査定の謄本の送達 : ここから3月以内なら(3年を過ぎていても)変更できる
    3年経過 : 原則ここまで
    拒絶査定から3月経過 : 例外もここまで

【図2】第46条第2項の期限のタイムライン。「出願日から3年」が原則で、3年を過ぎていても「最初の拒絶査定の謄本の送達日から3月以内」なら変更できる。意匠登録出願は審査があるので、この二重構造になっている。第1項(実用新案→特許)は「3年」のみ。

第46条の2の構造

項内容(要旨)
第1項柱書実用新案権者は、次の4つの場合を除き、自己の実用新案登録に基づいて特許出願をすることができる。この場合、実用新案権を放棄しなければならない
第1項第1号実用新案登録出願の日から3年を経過したとき
第1項第2号実用新案登録出願人または実用新案権者が、自ら実用新案技術評価の請求をしたとき(※要件の詳細はレベル3)
第1項第3号第三者による実用新案技術評価の請求があった旨の最初の通知を受けた日から30日を経過したとき
第1項第4号実用新案登録無効審判について、最初に指定された答弁書提出期間を経過したとき
第2項特許出願は、実用新案登録の願書に添付した明細書・実用新案登録請求の範囲・図面に記載した事項の範囲内でしなければならず、その場合、実用新案登録出願の時にしたものとみなす(第29条の2の他の出願となる場合、第30条第3項、第36条の2第2項ただし書、第48条の3第2項等の適用については除く)
第3項第1項第1号・第3号の期限について、責めに帰することができない理由による救済(理由解消から14日〔在外者2月〕以内、かつ期限経過後6月以内)
第4項専用実施権者・質権者・第4項が列挙する通常実施権者がいるときは、これらの者の承諾が必要
第5項第44条第3項・第4項を準用

〔表2〕第46条の2の項ごとの内容(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。第1項の4つの除外事由と、第4項の承諾要件が特徴。

根拠と補足:実用新案登録に基づく特許出願は、自ら技術評価を請求した後はできません。他人の請求では実用新案法第13条第2項の最初の通知を受けた日から30日が期限です。無効審判では同法第39条第1項で最初に指定された答弁期間の経過が制限となります。自ら一部の請求項だけを評価請求した場合も、他の請求項をもとにした特許出願へ逃れることはできません。出典:特許法(第46条の2第1項)。出典:特許庁・逐条解説第22版(199〜202頁)。

第46条と第46条の2の違い

第46条(出願の変更)第46条の2(実用新案登録に基づく特許出願)
元になるもの実用新案登録出願/意匠登録出願(まだ登録されていない)実用新案登録(すでに登録されている実用新案権)
できる人実用新案登録出願人/意匠登録出願人実用新案権者
元の扱い元の出願は取り下げたものとみなす(第4項)実用新案権を放棄しなければならない(第1項柱書)
出願日元の出願の時にしたものとみなす(第6項で第44条第2項を準用)実用新案登録出願の時にしたものとみなす(第2項)
主な期限実用新案:出願日から3年。意匠:出願日から3年が原則。ただし最初の拒絶査定謄本送達から3月経過後は不可、送達から3月以内は3年後も可出願日から3年(第1項第1号)+技術評価・無効審判に関する除外(第2号〜第4号)
第三者の承諾不要専用実施権者・質権者・第4項が列挙する通常実施権者の承諾が必要(第4項)

〔表3〕第46条と第46条の2の比較。「出願を変更する」のか「権利を手放して出願する」のかが根本的な違い。

レベル2のまとめ
  • 第46条:実用新案登録出願・意匠登録出願を特許出願に変更。元の出願は取下げ擬制、出願日は遡及(第44条第2項〜第4項を準用)。
  • 第46条の2:登録済みの実用新案権をもとに特許出願。実用新案権は放棄、出願日は実用新案登録出願の時に遡及。4つの除外事由と承諾要件あり。
  • 期限の基本は「出願日から3年」。意匠→特許は「最初の拒絶査定から3月」の例外がある。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 第46条第6項の準用 ― 第44条第2項〜第4項が持ち込むもの

第46条第6項は、分割出願の規定である第44条第2項〜第4項を変更出願に準用しています。分割の記事で扱った内容がそのまま効いてきます。

準用される項内容変更出願での意味
第44条第2項本文新たな出願は、もとの出願の時にしたものとみなす変更出願の出願日は、元の実用新案登録出願・意匠登録出願の日に遡及する
第44条第2項ただし書新たな出願が第29条の2の「他の特許出願」(または実用新案法第3条の2の「特許出願」)に該当する場合のこれらの規定の適用、および第30条第3項の適用については、遡及しない変更出願が他の出願を拒絶する側(拡大先願の引用)になるときは現実の出願日。新規性喪失の例外の証明書提出期限(第30条第3項)も現実の出願日基準
第44条第3項パリ条約優先権の証明書の提出期限(第43条第2項の「最先の日から1年4月以内」)を、「最先の日から1年4月または新たな出願の日から3月のいずれか遅い日まで」と読み替える変更出願のときに優先権証明書の提出期限が既に過ぎていても、変更出願の日から3月は提出できる
第44条第4項もとの出願について提出された書面・書類のうち、新たな出願で提出しなければならないもの(第30条第3項、第41条第4項、第43条第1項・第2項等)は、新たな出願と同時に提出されたものとみなす元の出願で出した証明書等を出し直さなくてよい

〔表4〕第46条第6項で準用される第44条第2項〜第4項(条文はe-Gov、2026年9月参照)。

flowchart LR
  subgraph S["変更出願の出願日はどちらか?"]
    direction TB
    A["変更出願が『守られる側』
(自分の新規性・進歩性・先願を判断するとき)"] --> A1["元の出願の日に遡及
(第44条第2項本文の準用)"] B["変更出願が『攻める側』
(他の出願に対する第29条の2の引用になるとき)"] --> B1["現実の出願日
(第44条第2項ただし書の準用)"] C["第30条第3項の証明書提出期限"] --> B1 end style A1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style B1 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F

【図3】出願日の遡及の分岐図。「守られる側」では遡及、「攻める側」(拡大先願の引用)では遡及しない。分割出願とまったく同じ構造。

2. 第46条の2第1項 ― 4つの除外事由の趣旨

第46条の2は平成16年改正で導入されました。実用新案は無審査で登録されるため、権利者が「特許にしたい」と考える機会を確保しつつ、第三者の監視負担や手続の蒸し返しを防ぐために、4つの除外事由が置かれています。

号除外事由(要旨)趣旨の方向性
第1号実用新案登録出願の日から3年を経過したとき特許の出願審査請求期間(第48条の3第1項:3年)とそろえ、長期間の不安定を防ぐ
第2号出願人・実用新案権者が自ら実用新案技術評価を請求したとき実用新案技術評価と特許審査の重複を防ぐ(評価結果が出る前も対象)
第3号第三者の技術評価請求があった旨の最初の通知から30日を経過したとき第三者が評価を請求した後は、短期間で態度を決めさせる
第4号無効審判で最初に指定された答弁書提出期間を経過したとき無効審判の審理が本格化した後の乗り換えを防ぐ

〔表5〕第46条の2第1項各号の除外事由と趣旨。特許庁逐条解説第22版199〜202頁と照合。

根拠と補足:実用新案の登録が早いため、登録後の事業上の必要に応じて特許へ移れる道が設けられました。3年の制限は審査請求期限を実質的に延ばさないため、技術評価に関する制限は評価と特許審査の重複を避けるためです。他人の評価請求では権利者に選択の時間を残し、無効審判では審理・審決後の手続の蒸し返しを防ぎます。出典:特許庁・逐条解説第22版(第46条の2、199〜202頁)。

3. 第46条の2第2項 ― 遡及の例外の一覧

第46条の2第2項は、特許出願を実用新案登録出願の時にしたものとみなしつつ、一定の規定の適用については遡及させません。分割・変更(第44条第2項ただし書)と共通する例外に加えて、第46条の2固有の例外があります。

遡及しない規定意味第44条第2項ただし書との共通性
第29条の2の「他の特許出願」となる場合/実用新案法第3条の2の「特許出願」となる場合拡大先願の引用になるときは現実の出願日共通
第30条第3項新規性喪失の例外の証明書提出期限は現実の出願日基準共通
第36条の2第2項ただし書外国語書面出願の翻訳文提出期間の起算第46条の2固有
第48条の3第2項出願審査の請求期間の特例(現実の出願日から30日。3年の期限後にも請求できる特例)第46条の2固有

〔表6〕第46条の2第2項ただし書で遡及が除外される規定(要旨)。

根拠と補足:遡及しないのは、拡大先願として引用される際の特許法第29条の2・実用新案法第3条の2の適用と、特許法第30条第3項、第36条の2第2項ただし書、第48条の3第2項の適用です。条文の位置は「第2項ただし書」です。出典:特許法(第46条の2第2項)。

4. 分割(第44条)・変更(第46条)・実用新案登録に基づく特許出願(第46条の2)の比較

第44条 分割第46条 変更第46条の2
何をするか1つの特許出願を2つ以上に分ける実用新案登録出願・意匠登録出願を特許出願にする実用新案登録をもとに特許出願をする
元の出願・権利原出願は残る元の出願は取下げ擬制実用新案権は放棄
出願日の遡及あり(第2項本文)あり(第6項で第2項準用)あり(第2項)
遡及の例外第29条の2の引用・第30条第3項同左(準用)同左+第36条の2第2項ただし書・第48条の3第2項
主な時期制限補正できる時期など(第1項各号)実:3年/意:3年が原則。ただし最初の拒絶査定謄本送達から3月経過後は不可、送達から3月以内は3年後も可3年+技術評価・無効審判に関する除外
責めに帰すことができない理由による救済第7項第5項第3項
第三者の承諾不要不要必要(第4項)

〔表7〕3つの制度の比較。第44条第7項の救済は第1項第2号・第3号の期間が対象で、補正可能期間内の分割(第1号)の徒過は含まれない。

5. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「意匠登録出願の日から3年経過後でも変更できる場合」「実用新案技術評価を自ら請求した後の第46条の2」「変更出願が第29条の2の他の出願になる場合の出願日」「承諾の要否」第46条第2項の二重期限、第46条の2第1項第2号(自ら請求)と第3号(第三者の請求+30日)の区別、第4項の承諾
論文式事例で「特許出願に乗り換える手段と、その際の出願日・期限」を検討させる第44条・第46条・第46条の2のどれが使えるかを〔表7〕で切り分け、遡及の例外まで書く
口述「第46条の2の除外事由を挙げよ」「第46条第4項の効果は」〔表2〕〔表5〕を口頭で言えるようにする

〔表8〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

過去問との対応:令和8年度短答式試験について、問5ハは特許出願から実用新案登録出願への変更、ホは変更・分割を経た出願の変更期限を扱います。問16の肢4は、自ら一部の請求項の技術評価を請求した後の実用新案登録に基づく特許出願です。問5の正解番号は4、問16は3です。 出典:公式問題・特許/実用新案の部、公式正解。公式正解は問題単位の番号です。個々の肢の論点説明は条文との照合によります。
レベル3のまとめ
  • 第46条第6項は第44条第2項〜第4項を準用。遡及の例外(第29条の2の引用・第30条第3項)は分割と同じ。
  • 第46条の2は「登録された実用新案権を放棄して特許出願」。4つの除外事由(3年・自ら技術評価請求・第三者の技術評価請求から30日・無効審判の最初の答弁書提出期間)と、実施権者等の承諾要件。
  • 第46条の2第2項の遡及の例外は、第44条第2項ただし書と共通のものに加えて、第36条の2第2項ただし書・第48条の3第2項がある。

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