小学生でも分かる意匠法 / A. 登録要件・意匠 #2
意匠法第3条第1項は、意匠登録を受けるための入口にある2つの関門を決めています。1つ目は「工業上利用することができる意匠」であること、2つ目は出願前に世の中に知られていない(新規性がある)ことです。しかも意匠法では、「そっくり同じ」だけでなく「似ている」意匠まで登録できないと書いてあります。ここが特許法第29条第1項との大きなちがいです。
レベル2条文の骨格 ― 柱書(工業上利用)、第1号(公然知られた)、第2号(刊行物・インターネット)、第3号(類似)
レベル3要件・例外・試験での問われ方 ― 審査基準の3要件、類否判断の手順、特許法第29条第1項との対比、拒絶理由・無効理由
LEVEL 1イメージでつかむ
デザインの登録には「2つの関門」がある
あなたが、持ち手が波の形をした新しいコップのデザインを考えたとします。このデザインを「意匠」として登録してもらうには、まず2つの関門をくぐらなければなりません。
関門1:工場で同じものをたくさん作れるか? 意匠法は、お店に並ぶ商品のデザインを守るための法律です。だから、海で拾った石をそのまま置物にしたものや、画家が1枚だけ描いた絵のように「同じものをたくさん作る」ことを目的にしていないものは、この関門を通れません。
関門2:まだ世の中に知られていないか? もう去年からお店に並んでいるコップや、雑誌やインターネットにのっているコップと同じデザインは、「新しい」とはいえないので登録できません。
図は左右にスクロールできます。
【図1】意匠法第3条第1項の2つの関門。関門1が「工業上利用性」、関門2が「新規性」。※2つの関門を両方くぐったデザインだけが、次の関門(創作非容易性など)に進みます。※図中の×の例はいずれも架空。
「そっくり」だけでなく「似ている」もダメ
ここが意匠法のおもしろいところです。たとえば、お店にある波の持ち手のコップと、あなたのコップの「持ち手の波の数が1つちがうだけ」だったらどうでしょう。お客さんが見て「同じようなコップだな」と感じるなら、それは「似ている」意匠です。意匠法は、こういう「似ている」デザインも登録できないと決めています。
図は左右にスクロールできます。
【図2】「似ている」かどうかは、コップを買うお客さん(需要者)が見てどう感じるかで決める(3つとも架空の例)。○の例と×の例は同じ大きさ・同じ点数で並べた。色だけでなく○×の記号でも区別している(凡例は図中)。
関門を通れないものの例
画家が1枚だけ描いた絵(たくさん作る目的ではない)
去年から売られているコップと同じ形(もう知られている)
雑誌やネットにのった椅子と同じ形(もう知られている)
知られているスマホ画面のアイコンとそっくり(似ている)
- 関門1:工場で同じものをたくさん作れるデザインであること(工業上利用性)。
- 関門2:出願する前に、日本でも外国でも、世の中に知られていないこと(新規性)。
- 「そっくり同じ」だけでなく「似ている」デザインも、関門2でひっかかる。
※「知られている」の意味、「似ている」の決め方、自分で公開した場合の救済(意匠法第4条)などは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。
LEVEL 2条文の骨格
柱書 ― 工業上利用することができる意匠
工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。
| 柱書の要素 | 意味 | 対応する論点 |
|---|---|---|
| 工業上利用することができる意匠 | 工業的に同じものを繰り返し作れる意匠であること | 工業上利用性(→レベル3の1) |
| 意匠の創作をした者 | 意匠を創作した本人(またはその承継人)が出願主体 | 意匠登録を受ける権利(意匠法第15条第2項で準用する特許法の規定。詳細は別記事) |
| 次に掲げる意匠を除き | 第1号〜第3号にあたる意匠は登録を受けられない | 新規性(→第1号〜第3号) |
| 意匠登録を受けることができる | 他の要件(意匠法第3条第2項、第5条、第9条など)も満たせば登録される | 他の登録要件(別記事) |
〔表1〕柱書の分解。柱書は「工業上利用性」と「新規性(除外)」の2つを1文で定めている。
第1号〜第3号 ― 新規性がない意匠(登録を受けられない意匠)
意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠
意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠
前二号に掲げる意匠に類似する意匠
| 号 | 類型 | 時的基準 | 地理的基準 | ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 第1号 | 公然知られた意匠 | 意匠登録出願前 | 日本国内又は外国 | 秘密でなくなり、現実に知られた状態 |
| 第2号(前段) | 頒布された刊行物に記載された意匠 | 意匠登録出願前 | 日本国内又は外国 | カタログ・雑誌・意匠公報など |
| 第2号(後段) | 電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠 | 意匠登録出願前 | 日本国内又は外国 | インターネット上で公衆がアクセスできる状態 |
| 第3号 | 前二号に掲げる意匠に類似する意匠 | (第1号・第2号の意匠が基準) | (同左) | 意匠法固有。類似の範囲まで新規性なし |
〔表2〕第1号〜第3号の分解。第1号・第2号はいずれも「意匠登録出願前」「日本国内又は外国において」が共通の枠。
- なぜ「公然実施」の号がないのか 逐条解説は、特許法や実用新案法のように公然実施をされたものが規定されていないのは、意匠は外観で判断するため、公然実施をすれば全て公知になることに基づく、と説明しています。
- なぜ意匠法は最初から外国公知を含めたのか 現行法制定時、特許法・実用新案法は、公然知られた発明・考案と公然実施された発明・考案については新規性の判断を国内に限定し、刊行物記載についてのみ国内に限定しない態度をとっていました。これに対し意匠は、大部分の場合、刊行物に記載されるよりも意匠を施した物品が市場に出回るほうが早いのが実情であり、外国における新規性の判断を刊行物記載に限定したのではほとんど無意味になるため、外国における公知の事実も参酌することとした、と説明されています。その後、平成11年の一部改正により、特許法・実用新案法でも意匠法と同様に外国における公知の事実が参酌されることとなりました。
- 第3号(類似する意匠)の趣旨 意匠の新規性の判断は外形的な物品の形状、模様等を比較して行うものであるから、全く同一の意匠に限らず類似のものまでも新規性がないとした、と説明されています。逐条解説によれば、旧法(大正10年法)は各号の末尾に「これに類似するもの」に相当する文言を置く形をとっていましたが、昭和34年制定の現行法では独立の号として規定を設けたとされています(旧法の文言は文語体であり、ここでは現代語に置き換えて要約しています)。
flowchart TB
A["意匠登録出願に係る意匠"] --> B{"工業上利用することが
できる意匠か?(柱書)"}
B -- "はい" --> C{"第1号に当たらないか?
(出願前に日本国内又は外国で公然知られた
意匠と同一でない)"}
C -- "はい" --> D{"第2号に当たらないか?
(出願前に頒布された刊行物に記載された意匠・
電気通信回線で公衆に利用可能となった意匠と同一でない)"}
D -- "はい" --> E{"第3号に当たらないか?
(第1号・第2号の意匠に類似しない)"}
E -- "はい" --> Y["第3条第1項はクリア
→ 第3条第2項(創作非容易性)等へ"]
B -- "いいえ" --> N0["柱書:登録を受けられない"]
C -- "いいえ" --> N1["第1号:登録を受けられない"]
D -- "いいえ" --> N2["第2号:登録を受けられない"]
E -- "いいえ" --> N3["第3号:登録を受けられない"]
style Y fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
style N0 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F
style N1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F
style N2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F
style N3 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
【図3】意匠法第3条第1項の判断の分岐図。柱書 → 第1号 → 第2号 → 第3号の順に整理したもの(審査の実際の順序を示すものではない。2026年9月参照時点の条文による)。「はい」が下へ進む主経路(登録要件をクリア)、「いいえ」は右の終端(登録を受けられない)。凡例:緑=第3条第1項をクリア/赤=登録を受けられない。
特許法第29条第1項とならべてみる
産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。
一 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
二 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
三 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明
| 観点 | 意匠法第3条第1項 | 特許法第29条第1項 |
|---|---|---|
| 柱書の利用可能性 | 「工業上利用することができる」 | 「産業上利用することができる」 |
| 公然知られた | 第1号 | 第1号 |
| 公然実施 | 規定なし | 第2号 |
| 刊行物記載・電気通信回線 | 第2号 | 第3号 |
| 類似するもの | 第3号 意匠法固有 | 規定なし(類似の概念がない) |
| 号の数 | 3つ | 3つ |
〔表3〕意匠法第3条第1項と特許法第29条第1項の号立ての対比。「公然実施」がなく「類似」がある点が意匠法の特徴。
- 柱書:工業上利用することができる意匠の創作をした者が、第1号〜第3号を除き、意匠登録を受けられる。
- 第1号:出願前に日本国内又は外国で公然知られた意匠。第2号:出願前に頒布された刊行物に記載された意匠・電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠。
- 第3号:第1号・第2号の意匠に「類似する」意匠も登録を受けられない。
- 特許法第29条第1項と比べると、「公然実施」の号がなく、「類似」の号がある。
LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方
1. 「工業上利用することができる意匠」の3要件(審査基準 第III部 第1章)
意匠審査基準 第III部 第1章「工業上利用することができる意匠」は、意匠法第3条第1項柱書の要件を、次の3つに分けて審査すると整理しています。
flowchart LR A["意匠法第3条第1項柱書
「工業上利用することができる意匠」"] --> R1["要件① 意匠を構成するものであること
(意匠法第2条第1項の「意匠」に該当)"] A --> R2["要件② 意匠が具体的なものであること"] A --> R3["要件③ 工業上利用することが
できるものであること"] R1 --> R1a["物品等と認められる/物品等自体の形状等/
視覚に訴える/美感を起こさせる/
(部分意匠)一定の範囲を占める部分"] R2 --> R2a["願書の記載・図面から
具体的な一の意匠が直接的に導き出せる"] R3 --> R3a["同一のものを複数製造し得る
(建築物:複数建築、画像:複数作成)"]
図は左右にスクロールできます。
【図4】審査基準 第III部 第1章が示す3要件の構造(2026年9月参照時点)。要件①は意匠法第2条第1項の意匠該当性と重なる(→ #1 意匠の定義の記事)。分岐ではなく並列の3要件を展開したもので、①②③のすべてを満たす必要がある。
審査基準は、要件③について、物品の意匠では「同一のものを複数製造し得ること」を意味すると説明し、建築物については「複数建築し得ること」、画像については「複数作成し得ること」としています。また、要件②については、その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて「出願当初の願書記載及び図面から具体的な一の意匠の内容が直接的に導き出されなくてはならない」と説明しています。
| 要件 | 審査基準の項目 | 該当しない例(審査基準 第III部 第1章の例示から) |
|---|---|---|
| ① 意匠を構成するもの | 物品等と認められるもの | 不動産(土地及びその定着物。ただし工業的に量産され動産として取引される門・組立てバンガロー等は物品)/電気・光・熱等の無体物、気体・液体等固有の形状を持たないもの、粉状物・粒状物の集合体(角砂糖のように固定した形状のものは物品)/靴下のかかとのように独立して取引されない物品の一部 |
| 物品等自体の形状等 | 流通過程で形状等を維持できないもの(例:圧縮された商品が流通中に変形する場合) | |
| 視覚に訴えるもの | 肉眼で認識できないほど微細なもの/通常の取引状態で外部から見えない部分(部分意匠) | |
| 視覚を通じて美感を起こさせるもの | 機能・作用効果を主目的とし美感をほとんど起こさせないもの/煩雑で美感を起こさせないもの | |
| (部分意匠)一定の範囲を占める部分 | 稜線のみ(面積を持たない)/シルエットのみ(閉じられた領域でない) | |
| ② 意匠が具体的なもの | 3.2 の各類型 | 物品の用途が不明、図面相互が不整合、図面が不鮮明、材質・大きさの記載が必要なのにない、変化する意匠で変化前後の図がない、透明なのにその旨の記載がない、必要な断面図・拡大図等がない、部分意匠の位置・大きさ・範囲が特定できない、など(→ #12 意匠法第6条の記事) |
| ③ 工業上利用できるもの | 自然物を主要素とするもの | ほとんど加工していない自然石の置物のように、自然の造形美を主たる要素とし、工業的技術で同一物を反復して多量に生産し得ないもの |
| 純粋美術の分野に属する著作物 | 工業的技術を利用して同一物を反復して多量に生産することを目的として製作されたものではないもの |
〔表4〕「工業上利用することができる意匠」の要件と、審査基準が挙げる該当しない例(例示は記事作成者が要約)。
2. 新規性 ― 各号の解釈
逐条解説の〔字句の解釈〕は、公然知られとは、秘密の状態にはされておらず、現実に知られていることを指すと説明しています。頒布された刊行物および電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったについては、特許法第29条の〔字句の解釈〕を参照するよう指示されており、意匠法独自の定義は置かれていません。また、本条(第3条)にいう画像は画像全般を指し、第2条第1項のように「機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるもの」に限定されない点が注記されています(青本〔第22版〕1255〜1256頁)。
「公然実施」の号が意匠法にない理由については、〔趣旨〕で、意匠は外観で判断するため公然実施をすれば全て公知になることに基づく、と説明されています(青本〔第22版〕1254頁)。
| 論点 | 整理 | 根拠・確認先 |
|---|---|---|
| 「意匠登録出願前」の意味 | 出願の前か否かの判断は、日単位ではなく時、分、秒まで考慮して行う。外国で公知等となった場合は、日本時間に換算した時刻で比較する | 意匠審査基準 第III部 第2章 第3節「新規性・創作非容易性の審査の留意事項」(記事作成者の要約) |
| 刊行物の頒布時期が特定できないとき | 発行時期の記載が「年のみ」ならその年の末日の終了時、「年月」ならその年月の末日の終了時、「年月日」ならその年月日の終了時に頒布されたものと推定する。記載がないときは、外国刊行物の国内受入時期や書評の掲載時期などの適当な手掛かりから推定・認定される頒布時期による | 意匠審査基準 第III部 第2章 第3節(記事作成者の要約) |
| 「日本国内又は外国において」 | 国内・国外を問わない(講学上「世界公知主義」と呼ばれることがありますが、条文・審査基準上の用語ではありません) | 意匠法第3条第1項第1号・第2号 |
| 「公然知られた」 | 秘密の状態にはされておらず、現実に知られていること(逐条解説の〔字句の解釈〕) | 青本〔第22版〕1255頁 |
| 「頒布された刊行物」 | 公衆に頒布された文書・図面等。逐条解説は、意匠法独自の定義を置かず特許法第29条の〔字句の解釈〕を参照するよう指示している | 青本〔第22版〕1255頁(特許法第29条の字句の解釈への参照指示) |
| 「電気通信回線を通じて公衆に利用可能」 | インターネット等で公衆がアクセス可能となった状態。逐条解説はここでも特許法第29条の〔字句の解釈〕を参照するよう指示している | 青本〔第22版〕1256頁/審査基準 第III部 第2章 第1節 |
| 公知意匠の認定(脚注) | 刊行物等で公知となった物品等に含まれる、非類似の物品等に係る意匠(例:部品の意匠)であっても、具体的な形状等を認識できるものは新規性判断の資料とする。意匠公報の「その他の部分」(部分意匠の破線部分など)も同様 | 審査基準 第III部 第2章 第1節 脚注 |
| 自らの公開による新規性喪失 | 意匠法第4条の新規性喪失の例外の適用を受けられる場合がある(例外あり。要件は別記事) | 意匠法第4条、審査基準 第III部 第3章 |
〔表5〕第1号・第2号の解釈上の論点の整理。
3. 第3号「類似する意匠」 ― 類否判断の手法(審査基準 第III部 第2章 第1節)
審査基準は、意匠法第24条第2項が「登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。」と定めていることから、新規性の判断における類否判断の主体も需要者(取引者を含む)とし、創作者の主観的な視点を排して、需要者が観察した場合の客観的な印象で判断すると説明しています。
登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。
flowchart TB S1["① 意匠に係る物品等の用途及び機能の認定と類否"] --> S2["②(部分意匠)当該部分の用途及び機能の類否"] S2 --> S3["③(部分意匠)位置・大きさ・範囲の類否"] S3 --> S4["④ 形状等の認定(基本的構成態様・各部の形状等)"] S4 --> S5["⑤ 形状等の共通点・差異点の認定"] S5 --> S6["⑥ 共通点・差異点の個別評価
(注意を引く部分か、先行意匠群との対比)"] S6 --> S7{"⑦ 総合的に観察して
需要者に異なる美感を起こさせるか"} S7 -- "はい(異なる美感を起こさせる)" --> R2["非類似 → 第3号に該当しない"] S7 -- "いいえ(異なる美感を起こさせない)" --> R1["類似 → 第3号に該当"] style R1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style R2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
【図5】審査基準 第III部 第2章 第1節 2.2.2 の類否判断の手順(記事作成者がフロー化。2026年9月参照時点)。物品等が非類似なら形状等の対比に進まない。「はい」が下へ進む主経路、「いいえ」は右の終端。凡例:緑=非類似(第3号に当たらない)/赤=類似(第3号に当たる)。
| 対象 | 類似と判断されるための要件(すべて満たす場合) |
|---|---|
| 全体意匠 | (1) 意匠に係る物品等の用途及び機能が同一又は類似 (2) 形状等が同一又は類似 |
| 部分意匠 | (1) 意匠に係る物品等の用途及び機能が同一又は類似 (2) 意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能が同一又は類似 (3) 当該部分の位置・大きさ・範囲が同一又はありふれた範囲内 (4) 当該部分の形状等が同一又は類似 |
〔表6〕全体意匠・部分意匠それぞれの類似の要件(審査基準 第III部 第2章 第1節 2.2.2 の整理)。
| 評価の観点 | 審査基準の考え方 |
|---|---|
| 観察方法 | 肉眼による視覚観察を基本とする。ただし、取引の際に拡大観察することが通常である場合は、肉眼で認識できるものと同様に扱う |
| 基本的構成態様 | 意匠に係る物品等の全体の形状等(基本的構成態様)は意匠の骨格であり、視覚的印象に与える影響は通常最も大きい |
| 注意を引く部分か | 意匠全体に占める割合の大小、物品等の特性からみて視覚的印象に大きな影響を及ぼす部分か、選択・購入時に見えやすい部分か、需要者が関心を持つ部位か |
| 先行意匠群との対比 | 共通点が他の先行意匠にもありふれていれば注意を引く程度は小さい。差異点が他に見られない新規な形状で創作的価値が高ければ強く注意を引く |
| 機能的形状 | 機能的要求の実現に造形的自由度があり、その形状でなければならない必然性がない場合は造形的特徴を考慮する。機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠は意匠法第5条第3号(別記事) |
〔表7〕共通点・差異点の評価の観点(審査基準 第III部 第2章 第1節 2.2.2.6 の整理)。
4. 拒絶理由・無効理由への該当関係
その意匠登録出願に係る意匠が第三条、第三条の二、第五条、第八条、第八条の二、第九条第一項若しくは第二項、第十条第一項、第四項若しくは第六項、第十五条第一項において準用する特許法第三十八条又は第六十八条第三項において準用する同法第二十五条の規定により意匠登録をすることができないものであるとき。
| 要件 | 拒絶理由(意匠法第17条) | 無効理由(意匠法第48条第1項) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 工業上利用性(第3条第1項柱書) | 該当 第1号「第三条」 | 該当 第1号「第三条」 | 意匠が具体的でない場合も柱書で拒絶 |
| 新規性(第3条第1項第1号〜第3号) | 該当 第1号「第三条」 | 該当 第1号「第三条」 | 第3号(類似)も含む |
| 創作非容易性(第3条第2項) | 該当 第1号「第三条」 | 該当 第1号「第三条」 | 別記事 #3 |
| 願書・図面の記載(第6条) | 列挙なし | 列挙なし | 実体は第3条第1項柱書(具体性)へ。方式は補正命令(別記事 #12・#13) |
〔表8〕意匠法第3条第1項の拒絶理由・無効理由への該当関係。第17条第1号・第48条第1項第1号はいずれも「第三条」と条単位で引用しており、第1項・第2項を区別していない。
5. 特許法・実用新案法との対比
| 観点 | 意匠法第3条第1項 | 特許法第29条第1項 | 実用新案法第3条第1項 |
|---|---|---|---|
| 保護対象 | 意匠(物品・建築物・画像の形状等) | 発明 | 考案であって物品の形状、構造又は組合せに係るもの |
| 利用可能性 | 工業上利用することができる | 産業上利用することができる | 産業上利用することができる |
| 公然知られた | 第1号 | 第1号 | 第1号 |
| 公然実施 | なし | 第2号 | 第2号 |
| 刊行物・電気通信回線 | 第2号 | 第3号 | 第3号 |
| 類似するもの | 第3号(あり) | なし | なし |
| 審査 | 実体審査あり(出願審査請求の制度はない) | 出願審査の請求を経て実体審査(特許法第48条の3第1項:出願の日から3年以内に何人も請求できる) | 無審査(実用新案法第14条第2項:出願が放棄・取下げ・却下された場合を除き設定の登録をする) |
〔表9〕三法の新規性規定の対比。実用新案法第3条第1項の各号の文言、特許法第48条の3第1項、実用新案法第14条第2項は e-Gov法令検索(特許法 334AC0000000121/実用新案法 334AC0000000123)、2026年9月参照。
6. 試験での問われ方
| 試験種別 | 学習で整理したい論点 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 短答式 | 事例で「出願前に公開された意匠に類似する意匠を出願した場合に登録を受けられるか」の正誤。意匠法第4条(新規性喪失の例外)や第3条の2・第9条との組合せ | 「類似」まで新規性がないこと(第3号)。「公然実施」の号がないこと。外国での公知も含むこと |
| 論文式 | 出願前の展示・カタログ配布・ウェブ掲載などの事実を与え、登録要件の充足を論じさせる | 柱書(工業上利用性)→ 第1号〜第3号 → 第4条の順で検討。類否判断の主体(需要者)と観点を審査基準に沿って書く |
| 口述 | 「意匠法第3条第1項第3号の趣旨を述べよ」「特許法第29条第1項との違いは」 | 意匠は外観で判断される→公然実施の号が不要、類似の号が必要、という対比で答える |
〔表10〕学習時の論点整理。実際の出題例は下記の過去問紹介に示しています。
令和8年度弁理士試験 短答式〔意匠〕問4は、意匠法に関して正しいものを選ばせる問題で、5つの枝はそれぞれ、新規性喪失の例外と替えブラシの意匠(枝1)、先願の全体意匠の一部に類似する部品の後出願(枝2)、内装の意匠の後出願(枝3)、動画公開後の組物の意匠(枝4)、公開されたアニメーション中のアイコンに類似する意匠(枝5)に関する枝です。出願前の公開と後願の登録可否という、本記事の第1号〜第3号と意匠法第4条(新規性喪失の例外)が交差する素材になっています。公式正解は問4の1です。 問題PDF/公式解答
出典:令和8年度弁理士試験 短答式筆記試験問題(特許庁)、2026年9月参照。上記は各枝の論点の要約であり、枝の文言そのものではありません。
- 工業上利用性は、審査基準 第III部 第1章の3要件(意匠該当性・具体性・工業上利用可能性)で審査され、いずれを欠いても意匠法第3条第1項柱書で拒絶される。
- 新規性は世界公知主義。第1号(公然知られた)・第2号(刊行物・電気通信回線)に加え、第3号でそれらに類似する意匠まで登録を受けられない。「公然実施」の号はない。
- 類否判断の主体は需要者(取引者を含む)。物品等の用途・機能の類否 → 形状等の共通点・差異点の評価 → 総合的な美感の異同、の順で判断する。
- 意匠法第3条違反は第17条第1号の拒絶理由であり、第48条第1項第1号の無効理由でもある。
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