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小学生でも分かる意匠法|意匠法第5条 意匠登録を受けることができない意匠 ― 新しくても登録できない「3つの門」(公序良俗・混同・機能に不可欠な形状)

小学生でもわかる意匠法 6:登録できない意匠(第5条)

小学生でも分かる意匠法 / A. 登録要件・意匠 #6

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意匠法第3条の要件(工業上利用できる・新しい・簡単に作れない)をぜんぶ満たしたデザインでも、登録してもらえないものがあります。意匠法第5条は、その「例外の門」を3つだけ決めています。①世の中の秩序や道徳をこわすおそれのあるもの、②他人の商品や建物・画像とまぎらわしいもの、③その物の機能や用途のためにどうしてもその形にしかならないもの、の3つです。3つ目(第3号)は特許法・実用新案法にはない、意匠法だけのルールです。

条文:意匠法第5条(第1号〜第3号)関連条文:意匠法第3条、第17条第1号、第48条第1項第1号、特許法第32条、実用新案法第4条審査基準:意匠審査基準 第III部 第6章「意匠登録を受けることができない意匠」参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「新しいデザイン」でも通れない門がある

意匠登録は、新しくてめずらしいデザインを守ってあげる制度です。でも、「新しければ何でもOK」ではありません。意匠法第5条は、3つの門を用意していて、どれか1つにでも引っかかると、どんなに新しいデザインでも登録できません。

たとえて言うと、学校の展覧会に「新作」を出すときのルールです。①みんなが見て嫌な気持ちになる作品はダメ、②ほかの人の作品とそっくりでまぎらわしい作品はダメ、③「工夫」ではなく「そうするしかない」だけの作品はダメ。この3つです。

新しい デザイン 門① みんなが嫌な 気持ちになる? 例:国旗や王家の 紋章をふざけて使う (第1号) 門② よその会社の 物とまぎらわしい? 例:有名なマークを コップに描く (第2号) 門③ その形にする しかない形? 例:規格で寸法が 決まっている部品 (第3号) 3つの門を全部通ってはじめて登録できる

図は左右にスクロールできます。

【図1】意匠法第5条の3つの門。どれか1つでも引っかかると登録できない(各門の例は架空のもの)。

門③「その形にするしかない形」って、どういうこと?

たとえば、電池を入れる「電池ボックス」を考えてみましょう。単三電池がぴったり入るように作ると、中の空間の形と大きさは、電池の規格で決まってしまいます。誰が作っても同じ形になるので、そこには「デザインの工夫」がありません。そんな形を1人に独占させると、ほかの人は電池ボックスを作れなくなってしまいます。だから、その物の機能のために「そうするしかない」形だけでできたデザインは、登録させないのです。

反対に、コップの取っ手は「持ちやすくする」という機能はありますが、丸くても四角くても、太くても細くてもよく、いろいろな形が選べます。こういう形は「そうするしかない形」ではないので、門③には引っかかりません。

× そうするしかない形(登録できない) 電池がぴったり入る空間=規格で決まる ○ 選べる形(門③は通れる) コップの取っ手=丸くても四角くてもよい

×=門③で引っかかる(登録できない) ○=門③は通れる 破線=電池が入る空間

図は左右にスクロールできます。

【図2】「そうするしかない形」と「選べる形」のちがい(架空の例)。門③で引っかかるのは、左のような形だけでできたデザイン。左右は同じ大きさ・同じ描き方で並べています(右は「形が選べる」ことを示すため2案を描いています)。

門①・門②の例

門①:国旗をばかにしたような模様のTシャツ(秩序をこわすおそれ)
門①:見た人が恥ずかしくなる絵のついたコップ(道徳に反するおそれ)
門②:みんなが知っている有名なお店のマークを描いたカバン(まぎらわしい)
レベル1のまとめ

  • 新しいデザインでも、意匠法第5条の3つの門のどれかに引っかかると登録できない。
  • 門①=みんなの秩序や道徳に反するおそれ、門②=他人の物とまぎらわしい、門③=その物の機能や用途のために「そうするしかない形」だけでできている。
  • 門③は、特許法や実用新案法にはない、意匠法だけのルール。

※「まぎらわしい」の範囲、「そうするしかない形」の細かい判断のしかた、部分意匠のときの見方などは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

柱書 ― 「第3条の規定にかかわらず」

意匠法第5条 柱書(原文)
次に掲げる意匠については、第三条の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

「第三条の規定にかかわらず」とは、意匠法第3条の登録要件(工業上利用性・新規性・創作非容易性)を満たしていても、という意味です。意匠審査基準 第III部 第6章 1. も、「工業上の利用可能性、新規性、及び創作非容易性等の登録要件等を満たす意匠であっても」「公益的な理由から、意匠登録を受けることができない」ことを規定したものと説明しています。

第1号〜第3号 ― 3つの不登録事由

意匠法第5条 各号(原文)

一「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある意匠」
二「他人の業務に係る物品、建築物又は画像と混同を生ずるおそれがある意匠」
三「物品の機能を確保するために不可欠な形状若しくは建築物の用途にとつて不可欠な形状のみからなる意匠又は画像の用途にとつて不可欠な表示のみからなる意匠」
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
flowchart TB
  A["意匠法第5条
意匠登録を受けることができない意匠"] --> H["柱書:第3条の規定にかかわらず"] H --> N1["第1号
公の秩序又は善良の風俗を
害するおそれがある意匠"] H --> N2["第2号
他人の業務に係る物品、建築物又は画像と
混同を生ずるおそれがある意匠"] H --> N3["第3号
不可欠な形状・表示のみからなる意匠"] N3 --> N3a["物品の機能を確保するために
不可欠な形状のみ"] N3 --> N3b["建築物の用途にとつて
不可欠な形状のみ"] N3 --> N3c["画像の用途にとつて
不可欠な表示のみ"]

図は左右にスクロールできます。

【図3】意匠法第5条の条文構造。第3号は「物品/建築物/画像」の3本立てになっている。

号 キーワード だれ・何を守るためのルールか(趣旨) 審査基準の該当項目
第1号 公の秩序・善良の風俗 社会の秩序・道徳(公益) 第III部 第6章 3.1、3.2
第2号 他人の業務に係る物品等との混同 取引の秩序・需要者の誤認防止(公益) 第III部 第6章 3.3
第3号 機能・用途にとって不可欠な形状・表示のみ 技術的思想を意匠権で独占させない(産業の発展) 第III部 第6章 3.4

〔表1〕意匠法第5条各号の整理。「趣旨」欄は意匠審査基準 第III部 第6章 1. および 3.4 の説明に基づく要約。

第3号を「物品/建築物/画像」で分解する

意匠の対象 条文の文言 「何のために」不可欠か 「何」が不可欠か
物品 「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠」 物品の機能を確保するため 形状
建築物 「建築物の用途にとつて不可欠な形状のみからなる意匠」 建築物の用途にとって 形状
画像 「画像の用途にとつて不可欠な表示のみからなる意匠」 画像の用途にとって 表示(形状ではない)

〔表2〕第3号の3本立て。物品だけが「機能」、建築物と画像は「用途」、画像だけが「表示」という言葉になっている。

令和元年法律改正の解説書(第1章)は、「物品については『物品の機能』という表現が、建築物及び画像については『建築物の用途』『画像の用途』という表現が通常の用法に適う」ため、建築物・画像については「機能」ではなく「用途」と規定したと述べています。

レベル2のまとめ

  • 柱書:意匠法第3条の要件を満たしていても(「第三条の規定にかかわらず」)登録できない。
  • 第1号:公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある意匠。
  • 第2号:他人の業務に係る物品、建築物又は画像と混同を生ずるおそれがある意匠。
  • 第3号:物品の機能を確保するために不可欠な形状/建築物の用途にとって不可欠な形状のみからなる意匠、画像の用途にとって不可欠な表示のみからなる意匠。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 判断の基本的な考え方 ― 「査定の時点」で判断する

意匠審査基準 第III部 第6章 2. は、審査官は「意匠登録の査定の時点において」、第1号〜第3号のいずれかに該当する場合に、当該意匠が不登録事由に該当すると判断する、としています。新規性・創作非容易性(意匠法第3条)が「意匠登録出願前」を基準とするのと異なり、不登録事由は査定時を基準とする点は、特許法第32条の判断時点と同様の考え方であり、試験でも問われやすい対比です。

補足(根拠の所在):判断時点が「査定の時点」であることは、意匠審査基準 第III部 第6章 2. の記載に基づきます。条文自体に判断時点の明文はなく、特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』(令和4年10月)の第5条の解説(1262〜1265頁)にも、判断時点についての記述は見当たりませんでした。
規定 判断の基準時 根拠
意匠法第3条第1項(新規性) 意匠登録出願前 条文の文言「意匠登録出願前に」
意匠法第3条第2項(創作非容易性) 意匠登録出願前 条文の文言「意匠登録出願前に」
意匠法第5条(不登録事由) 意匠登録の査定の時点 意匠審査基準 第III部 第6章 2.

〔表3〕登録要件ごとの判断基準時。意匠法第5条だけが査定時基準。

2. 第1号 ― 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある意匠

意匠審査基準 第III部 第6章 3.1・3.2 は、「公の秩序」と「善良の風俗」を分けて例示しています。

区分 審査基準の例示(該当する) 該当しないとされる例
公の秩序を害するおそれ(3.1) 「日本若しくは外国の元首の像又は国旗を表した意匠」/「わが国の皇室の菊花紋章や外国の王室の紋章(類似するものを含む)等を表した意匠」/「出願人と何ら関係のない特定の人物の肖像や個人情報等を表した意匠」 「運動会風景中の万国旗等が表された意匠のように、特定の国や皇室又は王室に対する尊厳を害するおそれがないもの」
善良の風俗を害するおそれ(3.2) 「健全な心身を有する人の道徳観を不当に刺激し、しゅう恥、嫌悪の念を起こさせる意匠」(「わいせつ物を表した意匠等」) ―

〔表4〕第1号の具体的判断(意匠審査基準 第III部 第6章 3.1・3.2 の記載を整理)。国旗・紋章は「表しただけ」で直ちに該当するのではなく、尊厳を害するおそれの有無で判断される。

注意:特許法第32条・実用新案法第4条は「公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生」の3つですが、意匠法第5条第1号には「公衆の衛生」がありません(→表8)。

3. 第2号 ― 他人の業務に係る物品等と混同を生ずるおそれがある意匠

意匠審査基準 第III部 第6章 3.3 は、「他人の周知・著名な商標や、これとまぎらわしい標章を表した意匠は、その物品等がそれらの人又は団体の業務に関して作られ、又は販売されるものと混同されるおそれ」がある場合に第2号に該当する、としています。

要件 内容 ポイント
他人の業務に係る 出願人以外の者の業務に関するものであること 自己の周知商標を自己の物品に表す場合は「他人」ではない
物品、建築物又は画像 混同の対象は物品に限らず建築物・画像も含む 令和元年改正で「建築物又は画像」が追加(→表7)
混同を生ずるおそれ 出所(誰の業務に係る物品等か)について混同するおそれ 審査基準の例は周知・著名な商標やそれとまぎらわしい標章を表した意匠

〔表5〕第2号の要件分解。「ポイント」欄は意匠審査基準 第III部 第6章 3.3 の記載に基づく本記事作成者の整理。

第2号の由来について、逐条解説は、本号が旧法(大正10年法)の「世人ヲ欺瞞スルノ虞アルモノ」という規定に相当するものであるとし、「世人ヲ欺瞞スル」という表現は相当に広い意義を有するが、公益に関係があるものを意匠登録しないという本条の趣旨からすれば、出願を拒絶すべき場合は出所の混同を生ずる場合に限られるため、そうした実態を明確に表現したものである、と説明しています(青本〔第22版〕1263頁)。また、令和元年改正で建築物及び画像が意匠の定義に追加されたことから、本号にもこれらを追加したとしています。

補足:審査基準第III部第6章3.3は、他人の周知・著名商標又は紛らわしい標章を表した意匠について、その人や団体の業務に係る物品等との混同のおそれを判断します。同項には親子会社・グループ会社を一律に除外する特則はなく、グループ関係だけを理由に混同のおそれがなくなるとはいえません。商標法との関係については、逐条解説は第3号の〔字句の解釈〕において、不可欠な立体的形状と識別力を有する文字、図形等が結合している商標については保護の余地を残す商標法第4条第1項第18号の趣旨とは相違する、と述べています(青本〔第22版〕1265頁)。

4. 第3号 ― 機能・用途にとって不可欠な形状・表示のみからなる意匠

意匠審査基準 第III部 第6章 3.4 は、第3号の趣旨を、「本来、特許法又は実用新案法によって保護されるべき技術的思想の創作であるなど、意匠権として排他的独占権を付与するに適さないもの」を除外する点にあると説明しています。そのうえで、該当する意匠を次の類型に分けています。

逐条解説は、第3号が平成10年改正で部分意匠制度を導入したことに伴い新設されたものであるとし、その趣旨を、物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠に意匠権が設定されると、第三者がその機能を有する物品を実施しようとする場合にこの意匠権の侵害になってしまうため、経済活動を不当に制限し、かえって産業の発達を阻害する要因になりかねないことに基づく、と説明しています。あわせて、TRIPS協定第25条の規定において、物品の機能を確保するために不可欠な形状を保護対象から除外することは加盟国の任意で定めてよいこととされており、実際に多数の国等(英国、フランス、欧州連合知的財産庁、韓国等)が機能にのみ基づく意匠を保護対象から除外している(令和4年7月1日時点)、としています(青本〔第22版〕1263〜1264頁)。

同解説は、「物品の機能を確保するために不可欠な形状」として、①物品の技術的機能を確保するために必然的に定まる形状、②物品の互換性確保等のために標準化された規格により定まる形状(形状に基づく機能の発揮が主たる使用の目的となる物品である場合に限る)の2つを想定し、これらの形状のみからなる意匠は拒絶(第17条第1号)、無効(第48条第1項第1号)の対象となるとしています。②の限定については、例えば乾電池のように標準化された形状であっても、その形状に基づく機能の発揮が主たる使用の目的ではない意匠は本号に該当しない、という例を挙げています。また「形状のみ」とあるのは、物品の技術的機能及び建築物の用途は専ら形状によって体現されることから、意匠の構成要素である模様、色彩の有無を問わず、その意匠の形状にのみ着目するという趣旨である、としています(青本〔第22版〕1264〜1265頁)。

令和元年改正で加わった建築物・画像については、「建築物の用途にとって不可欠な形状のみ」は、その形状が建築物の用途を確保するための必然的な形状となるものを指し、例としてガスタンクのように、タンク内で高圧の気体を貯蔵するに当たりタンクにかかる圧力を均一にするため必然的に球体とせざるを得ない建築物等が想定される、と説明されています。「画像の用途にとって不可欠な表示のみ」は、その表示が画像の用途を確保するための必然的な表現となるものを指し、例として標準規格により定まる表示だけで構成された画像等が想定される、とされています(青本〔第22版〕1265頁)。

類型 審査基準の定義(原文) 審査基準の事例
(1) 必然的形状 「物品の機能を確保するため又は建築物の用途により必然的に定まる形状(必然的形状)のみからなる意匠」 「パラボラアンテナ」の内面側部分のみ/「ガスタンク」の球形状本体部分のみ
(2) 準必然的形状 「物品等の互換性の確保(技術的機能の確保を含む)等のため、又は建築物の用途等に照らして、形状及び寸法等の各要素が規格化又は標準化されているものであって、規格化又は標準化等がなされた形状及び寸法等により正確に再製せざるを得ない形状」 「磁心」の意匠(JIS C2516 4.4により規格化)/「プラットフォーム」における公的標準化機関により規格化された点字ブロック部分
(3) 画像の用途にとって不可欠な表示 「画像の用途等に照らして必然的に定まる表示のみからなる意匠に加え、規格化又は標準化等がなされた表示により正確に作成せざるを得ない表示のみからなる意匠」 「道路標識用画像」の道路標識表示部分/「自動車用状態表示画像」における「ISO 7000 により定められた機器に用いる図記号」のような規格化された表示部分

〔表6〕第3号の3類型(意匠審査基準 第III部 第6章 3.4)。事例名は審査基準に記載された物品名等であり、図は転載していない。

5. 必然的形状の判断方法 ― 「模様、色彩の有無を問わず」形状のみに着目

審査基準 3.4 は、必然的形状の判断にあたっては「模様、色彩の有無を問わず、物品の技術的機能又は建築物の用途を体現している形状のみに着目」し、次の2点を考慮するとしています。

  • 「その物品の機能又は建築物の用途を確保できる代替可能な形状が他に存在するか否か」
  • 「必然的形状等以外の意匠評価上考慮すべき形状を含むか否か」

つまり、①代替形状が存在すれば必然的形状ではなく、②必然的形状のほかに意匠評価上考慮すべき形状を含んでいれば「のみからなる」に当たらない、という2段構えです。模様や色彩を付けただけでは第3号を免れない(形状のみに着目する)点に注意してください。

flowchart TB
  S["出願された意匠
(部分意匠なら「意匠登録を受けようとする部分」の形状)"] --> Q0["模様・色彩を除き
形状のみに着目"] Q0 --> Q1{"物品の機能/建築物の用途を確保できる
代替可能な形状が他に存在するか?"} Q1 -- "はい(他に選べる形がある)" --> Q3{"規格化・標準化された形状を
正確に再製せざるを得ないか?"} Q3 -- "はい" --> M2["準必然的形状"] M2 --> Q2{"必然的形状等以外の
意匠評価上考慮すべき形状を含むか?"} Q2 -- "はい(含む)" --> OK2["「のみからなる」に当たらず
第3号に該当しない"] Q2 -- "いいえ(含まない)" --> NG["第3号に該当
(拒絶理由・無効理由)"] Q3 -- "いいえ" --> OK1["第3号に該当しない"] Q1 -- "いいえ(他に選べる形がない)" --> M1["必然的形状"] M1 --> Q2 style OK1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style OK2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style NG fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図4】第3号(物品・建築物)の判断フロー。意匠審査基準 第III部 第6章 3.4 の考慮要素を本記事作成者がフロー化したもので、審査基準に図として掲載されているものではない(2026年9月参照)。凡例:緑=第3号に該当しない/赤=第3号に該当する。ひし形=判断、四角=作業・結論。

6. 準必然的形状 ― 「標準」の2種類と適用除外

標準の種類 審査基準の説明 例
(イ)公的な標準 「一般財団法人日本規格協会が策定するJIS規格(日本産業規格)、ISO(国際標準化機構)が策定するISO規格等」 JIS、ISO
(ロ)事実上の標準(デファクト・スタンダード) 「公的な規格とはなっていないが、その規格が当該物品等の分野において業界標準として認知されており、当該標準規格に基づく製品がその物品等の市場を事実上支配しているもの」で「規格としての名称、番号等によりその標準となっている形状、寸法等の詳細を特定することができるもの」 業界標準規格(名称・番号で特定できるもの)

〔表7〕準必然的形状における「標準」の2種類(意匠審査基準 第III部 第6章 3.4)。事実上の標準は「市場を事実上支配」かつ「名称・番号等で特定できる」ことが必要。

適用除外:審査基準は、「事務用紙(紙の原紙寸法 JIS P 0202)、日用紙(封筒 JIS S 5502)等は、公的な標準規格あるいは事実上の標準規格により定まる形状を有していても」、形状等に基づく機能の発揮が主たる使用目的ではないため、準必然的形状の考え方を適用しないとしています。「規格があれば必ず第3号」ではない点が試験でのひっかけになり得ます。

7. 部分意匠のときの判断対象 ― 号ごとに異なる

意匠審査基準 第III部 第6章 2. は、部分意匠として出願された場合の判断対象を号ごとに区別しています。第1号・第2号では「意匠に係る物品全体の形状等を判断の対象とする」一方、第3号では「『意匠登録を受けようとする部分』の形状のみを判断の対象と」します。

第1号・第2号:物品全体で判断 実線部(登録を受けようとする部分)も 破線部(その他の部分)も含めて見る 第3号:登録を受けようとする部分のみ 実線部の形状だけを見て 必然的形状等のみか判断する

塗り=判断の対象 実線の枠=登録を受けようとする部分 破線の枠=その他の部分

図は左右にスクロールできます。

【図5】部分意匠における判断対象の違い(意匠審査基準 第III部 第6章 2.、2026年9月参照)。左右は同じ形・同じ大きさで描き、塗りの範囲だけを変えています。線種は実線・破線の2種類のみを使っています。

8. 審査の進め方 ― 拒絶理由通知から査定まで

意匠審査基準 第III部 第6章 4. によれば、審査官が不登録事由に該当するとの心証を得た場合は「拒絶理由通知を送付」し、出願人は「手続補正書を提出して補正をしたり、意見書により反論、釈明をしたりすることができ」ます。「補正や、反論、釈明により、出願された意匠が不登録事由に該当するものであることが明らかであるとの心証を、審査官が得られない状態になった場合は、拒絶理由は解消」し、「心証が変わらない場合は」拒絶査定となります。

flowchart TB
  A["審査官が不登録事由該当の
心証を得る"] --> B["拒絶理由通知
(意匠法第19条で準用する特許法第50条)"] B --> C{"出願人の対応"} C -. "手続補正書(補正)" .-> D{"該当が明らかとの心証を
審査官が得られない状態か?"} C -. "意見書(反論・釈明)" .-> D D -- "はい" --> E["拒絶理由解消
→ 他に拒絶理由がなければ登録査定(第18条)"] D -- "いいえ(心証変わらず)" --> F["拒絶査定(第17条第1号)"] style E fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style F fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図6】不登録事由に関する審査の進め方(意匠審査基準 第III部 第6章 4. をフロー化、2026年9月参照)。補正で不登録事由を解消できる場合がある点に注意(ただし要旨変更にならない範囲)。凡例:実線=手続の流れ/点線=出願人が行うかどうかを選べる手続、緑=登録査定に向かう場面/赤=拒絶査定。

補足:意匠法第19条が特許法第50条(拒絶理由の通知)を準用していることは、e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125、2026年9月参照)で確認しています。補正は第VI部第2章4.1・4.2の要旨変更の基準に従います。出願当初の意匠から当然に導ける同一の範囲を超える変更や、当初不明だった要旨の明確化は認められません。破線と実線を変えて登録対象を自由に選び直せるわけではなく、当初の記載から当然に導ける訂正や要旨に影響しない微細な不備の訂正に限られます。

9. 令和元年改正(令和2年4月1日施行)による変更

号 改正前(令和2年3月31日以前の出願)※要旨 現行(令和2年4月1日以降の出願)
第1号 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある意匠(変更なし) 「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある意匠」
第2号 他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある意匠 「他人の業務に係る物品、建築物又は画像と混同を生ずるおそれがある意匠」
第3号 物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠 「物品の機能を確保するために不可欠な形状若しくは建築物の用途にとつて不可欠な形状のみからなる意匠又は画像の用途にとつて不可欠な表示のみからなる意匠」

〔表8〕令和元年改正の新旧対照。改正解説書 第1章は、意匠法第2条第1項に建築物及び画像を追加したことに伴い本条にも「これらを追加した」と述べている。逐条解説〔第22版〕も、第2号について令和元年改正で建築物及び画像を追加した旨を、第3号について同改正に伴い建築物の用途にとって不可欠な形状のみからなる意匠及び画像の用途にとって不可欠な表示のみからなる意匠も登録を受けることができない旨を規定したと説明している(青本〔第22版〕1263〜1264頁)。なお同解説は、建築物及び画像について「機能」でなく「用途」と規定した理由を、物品については「物品の機能」という表現が通例であるのに対し、建築物及び画像については「建築物の用途」「画像の用途」という表現が通例であるためと説明している(同1264頁)。改正前の文言は、令和元年改正の新旧対照を要約しています。施行日は令和2年4月1日(特許庁「令和元年意匠法改正特設サイト」、2026年9月参照。一部の規定は令和3年4月1日施行)。改正法附則第2条第1項により、第5条第2号・第3号の改正は2020年4月1日以後の出願に適用され、それより前の出願は従前の例によります。

10. 特許法第32条・実用新案法第4条との対比

特許法第32条(原文)
公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明については、第二十九条の規定にかかわらず、特許を受けることができない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
実用新案法第4条(原文)
公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある考案については、第三条第一項の規定にかかわらず、実用新案登録を受けることができない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000123)、2026年9月参照。
比較項目 特許法第32条 実用新案法第4条 意匠法第5条
公の秩序・善良の風俗 ○ ○ ○(第1号)
公衆の衛生 ○ ○ ×(規定なし)
他人の業務に係る物品等との混同 × × ○(第2号)
機能・用途に不可欠な形状・表示のみ × × ○(第3号)
「〜の規定にかかわらず」の対象 第29条 第3条第1項 第3条
拒絶理由 特許法第49条第2号 ―(無審査。第4条違反は実用新案法第6条の2第2号の補正命令の対象) 意匠法第17条第1号
無効理由 特許法第123条第1項第2号 実用新案法第37条第1項第2号 意匠法第48条第1項第1号

〔表9〕三法の不登録事由の対比。意匠法第5条には「公衆の衛生」がなく、代わりに第2号・第3号という意匠法固有の事由がある。実用新案法第6条の2(補正命令)第2号と第37条第1項第2号がいずれも第4条を掲げていることは、e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000123)で確認しています(2026年9月参照)。

公の秩序・善良の風俗を害するおそれ 特許法第32条 / 実用新案法第4条 / 意匠法第5条第1号 = 三法共通 公衆の衛生 特許法・実用新案法のみ 意匠法にはない 混同のおそれ(第2号)/不可欠な形状・表示(第3号) 意匠法のみ 特許法・実用新案法にはない

実線+塗り=三法に共通する事由 破線+塗りなし=一部の法にだけある事由

図は左右にスクロールできます。

【図7】三法の不登録事由の重なり。共通部分は「公序良俗」だけ(2026年9月参照)。各法の条番号は〔表9〕のとおりで、いずれもe-Gov法令検索で確認しています。

11. 拒絶理由・無効理由への該当関係

場面 根拠条文 意匠法第5条違反の扱い
審査(拒絶査定) 意匠法第17条第1号(「第五条」を明記) 拒絶理由
無効審判 意匠法第48条第1項第1号(「第五条」を明記) 無効理由
無効審判の請求人適格 意匠法第48条第2項本文「意匠登録無効審判は、何人も請求することができる。」 第5条違反は何人も請求可(ただし書の制限対象ではない)
意匠権消滅後の無効審判 意匠法第48条第3項 消滅後も請求可

〔表10〕意匠法第5条違反の手続上の位置づけ。意匠法第17条・第48条の原文は本シリーズ「第16条〜第19条」「第48条・第49条」の記事も参照。

12. 試験での問われ方

試験種別 学習で整理したい論点 気をつける点
短答式 「公衆の衛生を害するおそれがある意匠は登録を受けることができない」の正誤/「模様・色彩を付した必然的形状は第3号に該当しない」の正誤/「JIS規格で定まる形状は常に第3号に該当する」の正誤/部分意匠の判断対象 意匠法第5条第1号に「公衆の衛生」はない。必然的形状は模様・色彩の有無を問わず形状のみで判断。事務用紙等の適用除外。第3号のみ「登録を受けようとする部分」で判断
論文式 機能的形状を含む意匠の登録可能性(第3号該当性と、意匠法第3条第2項・第24条第2項の類否判断における機能的形状の扱いの区別) 「機能的形状=直ちに第3号」ではない。代替形状の有無、「のみからなる」かを要件ごとに検討
口述 「意匠法第5条各号を挙げよ」「第3号の趣旨は」「特許法第32条との違いは」 3号の3本立て(物品の機能/建築物の用途/画像の用途)を原文どおり。趣旨は「技術的思想の創作は特許法・実用新案法で保護」

〔表11〕学習時の論点整理。実際の出題例は下記の過去問紹介に示しています。

令和8年度短答式〔意匠〕問1〜10の全肢を照合したところ、公序良俗・出所混同・不可欠形状という第5条の三つの不登録事由を直接判断させる肢はありませんでした。本記事の表は条文理解のための整理です。 出典
レベル3のまとめ

  • 意匠法第5条は「第三条の規定にかかわらず」登録できない公益的な不登録事由。判断時点は査定時(意匠審査基準 第III部 第6章 2.)。
  • 第1号:国旗・元首の像・皇室や王室の紋章・他人の肖像等(尊厳を害するおそれがないものは除く)、わいせつ物等。「公衆の衛生」はない。
  • 第2号:他人の周知・著名な商標やまぎらわしい標章を表した意匠が典型。対象は物品・建築物・画像。
  • 第3号:必然的形状/準必然的形状(公的標準・事実上の標準)/画像の用途にとって不可欠な表示。模様・色彩の有無を問わず形状のみで判断し、代替形状の有無と「のみからなる」かを検討。事務用紙等は適用除外。
  • 部分意匠では、第1号・第2号は物品全体、第3号は「意匠登録を受けようとする部分」のみが判断対象。
  • 拒絶理由(意匠法第17条第1号)かつ無効理由(意匠法第48条第1項第1号)。無効審判は何人も請求可。

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