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小学生でも分かる意匠法|意匠法第1条・第2条 意匠の定義・実施の定義 ― そもそも「意匠」って何?「実施」って何?

小学生でもわかる意匠法 1:意匠と実施の定義(第1条・第2条)

小学生でも分かる意匠法 / A. 登録要件・意匠 #1

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意匠法は「デザイン(見た目)」を守る法律です。いちばん最初の条文で、この法律が何のためにあるのか(第1条)と、「意匠」とは何か・「実施」とは何か(第2条)を決めています。令和元年改正(令和2年4月1日施行)で、物品だけでなく「建築物」と「画像」も意匠になり、「実施」の中身も大きく変わりました。この記事では改正前と現行を区別しながら、定義の骨格をつかみます。

条文:意匠法第1条、第2条(第1項〜第3項)審査基準:第III部 第1章「工業上利用することができる意匠」、第IV部 第1章「画像を含む意匠」、第IV部 第2章「建築物の意匠」参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「意匠」は、ものの「見た目」のこと

お店で新しいコップを選ぶとき、みなさんは何を見ますか。丸いか四角いか(形)、しましまか水玉か(模様)、青いか赤いか(色)。この「見た目」をまとめて、意匠法では意匠(いしょう)とよびます。「意匠」は、ふだんの言葉でいう「デザイン」に近い言葉です。

特許法が「新しいしくみ」を守るのに対して、意匠法は「新しい見た目」を守ります。たとえば「こぼれにくいコップ」を考えたら、そのしくみは特許法、そのコップのかっこいい形は意匠法、と担当が分かれています。

「意匠」= 何の + どんな見た目 + 目で見て感じる

何の? 物品(コップ・いす) 建築物(お店・家) 画像(スマホの画面) + どんな見た目? 形状(かたち) 模様(もよう) 色彩(いろ)/その組み合わせ + 目で見て感じる 「視覚を通じて」 「美感を起こさせる」 =きれい・かっこいいと感じる 意匠(いしょう)

図は左右にスクロールできます。

【図1】意匠の3つの部品。「何の」「どんな見た目」「目で見て感じる」がそろって意匠になる。※コップの「取っ手だけ」のように、一部分だけの見た目も意匠になります(部分意匠)。※図中の例はいずれも架空。

昔は「物品」だけ。今は「建築物」と「画像」も

もともと意匠法は、コップやいすのように手に持って運べる「物品」の見た目だけを守っていました。でも、おしゃれなお店の建物や、スマホの画面に出てくるアイコンやメニューの見た目も、みんなが「いいな」と思うデザインです。そこで令和元年(2019年)の法改正で、建築物(お店や家などの建物)と画像(機器を動かすための画面の見た目など)も意匠に入ることになりました(令和2年4月1日から)。

「実施」は、意匠を「使う」こと

意匠を利用する次のような行為を、意匠法では実施(じっし)とよびます。コップのデザインなら「作る」「使う」「売る」「貸す」「外国へ送る・外国から持ってくる」「売りますよ・貸しますよと申し出る」が実施です。建築物なら「作る」が「建てる」になり、画像なら「作る」「使う」「ネットで送る」なども実施になります。

物品 → 製造・使用・譲渡・貸渡し・輸出入・その申出
建築物 → 建築・使用・譲渡・貸渡し・その申出
画像 → 作成・使用・ネットで提供・その申出 ほか
レベル1のまとめ

  • 意匠=物品・建築物・画像の「形・模様・色(の組み合わせ)」で、目で見てきれい・かっこいいと感じるもの。
  • 一部分だけの見た目(部分意匠)も意匠になる。
  • 実施=意匠を「作る・使う・売る・貸す」など。物品・建築物・画像で中身がちがう。

※画像は「どんな画像でもよい」わけではなく、建築物も「建物なら何でもよい」わけではありません。正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第1条 ― 目的

意匠法第1条(原文)
この法律は、意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

特許法第1条の「発明」を「意匠」に置きかえた構造です。逐条解説は、本条がこの法律の目的を定めたものであるとしたうえで、発明・考案が自然法則を利用した技術的思想の創作であり特許法・実用新案法がその側面から保護するのに対し、意匠法は第2条第1項の表現からも明らかなように美感の面からアイデアを把握してこれを保護しようとするものであり、保護の方法が異なると説明しています(特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』1245頁)。また、意匠と産業の発達の関係として、優れた意匠を商品に応用することで需要が増加して産業の興隆が実現される場合と、優れた意匠が同時に技術的にも優れていて意匠そのものによって産業の発達が実現される場合とを挙げています(青本〔第22版〕1245〜1246頁)。

第2条第1項 ― 意匠の定義

意匠法第2条第1項(原文)
この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。次条第二項、第三十七条第二項、第三十八条第七号及び第八号、第四十四条の三第二項第六号並びに第五十五条第二項第六号を除き、以下同じ。)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

長い一文ですが、括弧書きを外すと骨格は「物品の形状等、建築物の形状等、又は画像であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」です。〔表1〕で分解します。

対象 何の見た目か 括弧書き(部分・限定) 共通の条件
物品 形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(=「形状等」) 「物品の部分を含む」→ 部分意匠 「視覚を通じて美感を起こさせるもの」
建築物 形状等 「建築物の部分を含む」→ 建築物の部分意匠
画像 画像そのもの(物品に記録されているかどうかを問わない) 「機器の操作の用に供されるもの」(操作画像)又は「機器がその機能を発揮した結果として表示されるもの」(表示画像)に限る。「画像の部分を含む」

〔表1〕第2条第1項の分解。物品・建築物は「形状等」、画像は画像自体が対象。「視覚を通じて美感を起こさせる」は三者共通。

逐条解説が説明する第2条の趣旨 逐条解説は、第2条がこの法律で特に重要な語句を定義したものであり、第1項では、意匠法上の意匠に物品及び建築物の形状等(形状、模様、色彩又はこれらの結合)並びに画像が含まれること、これらの部分についても意匠登録を受けられること(組物の意匠(第8条)・内装の意匠(第8条の2)についても部分意匠が可能)、及びこれらが審美的なものでなければならないことが規定されていると説明しています。沿革としては、昭和34年に現行法が制定される以前の大正10年法第1条は審美的であることを何ら表現していなかったが、学説は一致して意匠が審美的なものでなければならないとしており、現行法はその旧法の解釈を法文に規定して意義を明らかにしたものだ、としています(青本〔第22版〕1248頁)。また〔字句の解釈〕では、〈物品〉は有体物である動産を指すこと、〈美感〉は美に対する感覚のことであり、音楽のように聴覚を通じて起こる場合もあるが意匠については視覚を通じて起こる場合に限られることが述べられています(青本〔第22版〕1252頁)。
「以下同じ」の除外規定について 画像の定義の括弧書きは「次条第二項、第三十七条第二項、第三十八条第七号及び第八号、第四十四条の三第二項第六号並びに第五十五条第二項第六号を除き、以下同じ」としています。これらの条文では「画像」の語が操作画像・表示画像に限定されず、より広い意味(たとえば創作非容易性の判断資料となる画像一般)で使われるためです。定義の射程が外れる条文がある、という点は覚えておくと条文を読むときに迷いません。
第2条第1項の構造 ― 3つの対象 × 全体/部分 × 共通条件

物品(動産) 建築物(不動産) 画像

全体の形状等 例:コップ全体 全体の形状等 例:店舗の建物全体 操作画像/表示画像 例:機器を操作するメニュー画面

物品の部分 例:コップの取っ手だけ 建築物の部分 例:建物の入口部分だけ 画像の部分 例:画面の一部のアイコン

共通条件:「視覚を通じて美感を起こさせるもの」

実線の枠=全体(物品・建築物・画像) 破線の枠=「部分を含む」(部分意匠)

図は左右にスクロールできます。

【図2】第2条第1項の構造。凡例のとおり、実線の枠が全体、破線の枠が括弧書き「部分を含む」に対応する部分意匠。例はいずれも架空。(2026年9月時点の条文による)

第2条第2項 ― 実施の定義

意匠法第2条第2項(原文)
この法律で意匠について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
一 意匠に係る物品の製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入(外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為を含む。以下同じ。)又は譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為
二 意匠に係る建築物の建築、使用、譲渡若しくは貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為
三 意匠に係る画像(その画像を表示する機能を有するプログラム等(特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第二条第四項に規定するプログラム等をいう。以下同じ。)を含む。以下この号において同じ。)について行う次のいずれかに該当する行為
 イ 意匠に係る画像の作成、使用又は電気通信回線を通じた提供若しくはその申出(提供のための展示を含む。以下同じ。)をする行為
 ロ 意匠に係る画像を記録した記録媒体又は内蔵する機器(以下「画像記録媒体等」という。)の譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
号 対象 「作る」 「使う」 「渡す」 「国境を越える」 「申し出る」
第1号 意匠に係る物品 製造 使用 譲渡、貸渡し 輸出、輸入(外国にある者が他人をして持ち込ませる行為を含む) 譲渡・貸渡しの申出(展示を含む)
第2号 意匠に係る建築物 建築 使用 譲渡、貸渡し 規定なし 譲渡・貸渡しの申出
第3号イ 意匠に係る画像(表示プログラム等を含む) 作成 使用 電気通信回線を通じた提供 ― 提供の申出(展示を含む)
第3号ロ 画像記録媒体等(記録媒体・内蔵機器) ― ― 譲渡、貸渡し 輸出、輸入 譲渡・貸渡しの申出

〔表2〕第2条第2項の実施行為マトリクス。建築物は不動産なので「輸出・輸入」がなく、「製造」が「建築」になる。画像は「作成」「電気通信回線を通じた提供」が特徴。

flowchart LR
  subgraph P["第1号 物品"]
    P1["製造"] --- P2["使用"] --- P3["譲渡・貸渡し"] --- P4["輸出・輸入"] --- P5["譲渡・貸渡しの申出"]
  end
  subgraph B["第2号 建築物"]
    B1["建築"] --- B2["使用"] --- B3["譲渡・貸渡し"] --- B5["譲渡・貸渡しの申出"]
  end
  subgraph G["第3号 画像"]
    G1["イ 作成・使用・電気通信回線を通じた提供・その申出"]
    G2["ロ 画像記録媒体等の譲渡・貸渡し・輸出・輸入・その申出"]
  end

図は左右にスクロールできます。

【図3】対象ごとの実施行為の相関図。第2号に「輸出・輸入」がないことに注目。

第2条第3項 ― 登録意匠

意匠法第2条第3項(原文)
この法律で「登録意匠」とは、意匠登録を受けている意匠をいう。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

第2条は第3項までです(2026年9月参照時点)。特許法第2条のように「特許発明」「プログラム等」を別項で定義する構造ではなく、「プログラム等」は第2項第3号の括弧書きの中で特許法第2条第4項を引用して定めています。

項 定義する語 骨格
第1項 意匠 物品・建築物の形状等/画像(操作画像・表示画像)であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの。いずれも「部分を含む」
第2項 実施 第1号 物品/第2号 建築物/第3号 画像(イ・ロ)ごとに列挙された行為
第3項 登録意匠 意匠登録を受けている意匠

〔表3〕第2条の全体像。

レベル2のまとめ

  • 第1条:意匠の保護及び利用 → 意匠の創作を奨励 → 産業の発達に寄与。
  • 第2条第1項:意匠=物品・建築物の形状等、又は画像(操作画像・表示画像に限る)であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの。三者とも「部分を含む」。
  • 第2条第2項:実施=第1号(物品)・第2号(建築物)・第3号(画像、イ・ロ)ごとの限定列挙。建築物に輸出入なし。
  • 第2条第3項:登録意匠=意匠登録を受けている意匠。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 改正前と現行の区別(令和元年法律第3号、令和2年4月1日施行)

施行日の出典:令和元年意匠法改正の規定のほとんどは令和2年4月1日に施行され、残る一部の規定が令和3年4月1日に施行されました(特許庁「令和元年意匠法改正特設サイト」、2026年9月参照)。ある出願に改正前・現行のどちらの規定が適用されるかという経過措置については、改正法附則をご確認ください。

令和元年改正解説書(第1章「意匠の定義の見直し」)は、改正前は意匠に係る物品が有体物である動産に限られていたため不動産である建築物が保護対象外であったこと、画像についても物品に記録・表示されたものに限られ、クラウドから提供される画像や壁等に投影される画像が保護対象外であったことを問題点として挙げ、改正の趣旨を「物のデザインのみならず、空間や画像を含む広範なデザイン」の保護によるデザイン投資の促進と述べています。

論点 改正前(令和2年3月31日以前の出願) 現行(令和2年4月1日以後の出願)
意匠の対象 物品(動産)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(要旨) 物品の形状等、建築物の形状等、画像
画像の扱い 物品の部分(物品に記録され、表示部に表示される画像)としてのみ保護(要旨) 物品から離れた画像自体も、操作画像・表示画像であれば意匠
建築物 保護対象外(量産される門・組立バンガロー等の動産は物品として保護) 建築物の形状等が意匠。建築物の部分も可
「形状等」の略称 なし 「形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合」を「形状等」と定義
実施(旧第3項/現第2項) 物品の製造・使用・譲渡・貸渡し・輸出・輸入・その申出のみ(要旨) 第1号 物品/第2号 建築物(建築)/第3号 画像(作成、電気通信回線を通じた提供、画像記録媒体等)
輸入の括弧書き なし 「外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為を含む」(逐条解説は、令和3年の一部改正で加えられた規定であると説明しています(青本〔第22版〕1251頁)。令和4年10月1日施行です)

〔表4〕改正前と現行の対比。改正前は2020年1月1日時点の第2条、現行は2026年9月21日の条文を照合した要約。旧第2項の操作画像の規定は削除され、実施は旧第3項から現第2項、登録意匠は旧第4項から現第3項へ移っています。

timeline
  title 第2条の主な改正の流れ
  平成10年改正(平成11年1月1日施行) : 部分意匠の導入(物品の部分を含む)
  令和元年改正(令和2年4月1日施行) : 建築物・画像を意匠に追加 : 実施行為を物品・建築物・画像の号立てに
  令和3年改正(令和4年10月1日施行) : 輸入に「他人をして持ち込ませる行為」を追加

図は左右にスクロールできます。

【図4】第2条の改正タイムライン(青本〔第22版〕1248〜1251頁の沿革説明および改正解説書に基づく整理。2026年9月参照時点)。丸=施行・改正の時点のみを並べたもので、期間の長さは表していない。(時間軸は縮尺なし)

各改正の理由(逐条解説の説明)。逐条解説は、それぞれの改正の背景を次のように説明しています(青本〔第22版〕1248〜1251頁)。

改正 内容 逐条解説が挙げる理由
平成10年の一部改正 物品の部分を意匠の構成要素に加え、部分意匠を意匠登録の対象とした 現行法制定時から当時までは、物品は市場で流通する有体物であり、独立して取引の対象となり得ない物品の部分は意匠法上の物品ではないものとして扱われ、物品の部分に係る意匠は保護対象ではなかった。しかし、独創的で特徴ある部分を取り入れつつ意匠全体では侵害を避ける巧妙な模倣が増加し、投資を十分に保護できなくなっていた(1248頁)
平成18年の一部改正 物品の操作の用に供される画像が物品の部分の形状等に含まれることを明確化(一部改正前第2項。令和元年改正で削除) 物品が本来的な機能を発揮できる状態にする際に使用される画面上の画像を、物品の部分として限定的に保護するため。当該画像が同時に使用される別の物品の表示部に表示される場合も保護対象とした(1249頁)
令和元年の一部改正 建築物の形状等・画像を意匠の定義に追加。実施を物品・建築物・画像の号立てに。組物についても部分意匠を認めた 店舗の外観に工夫を凝らしてブランド価値を創出する事例が増え保護ニーズが高まったこと(建築物)、クラウド上に保存されネットワークを通じて提供される画像が一般化し表示場所も多様化したこと(画像)。ただし画像は、機器や関連サービス等の付加価値を向上させるものに限って権利の客体とすることが適切であることから、機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限定した(映画の一場面等の画像は保護対象とならない)(1249〜1250頁)
令和3年の一部改正 輸入に「外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為」を含める旨を規定 電子商取引の発展や国際貨物の配送料金の低下等により、海外の事業者が国内の事業者を介さず直接国内の消費者に少量の模倣品を販売・送付する事例が急増したが、輸入行為の主体は国内の消費者と解され、消費者の行為に意匠権の侵害は成立せず、海外の事業者の行為に侵害が成立するかも明らかでないため、税関で没収等ができなかった。なお、日本国内に到達する時点以降を捉えて国内における行為として規定するものであり、属地主義に反するものではないとされる(1251頁)

〔表4-2〕第2条の各改正と、逐条解説が挙げる理由(要約)。青本〔第22版〕は令和4年10月刊であり、令和5年以降の改正は反映されていません。

旧第2条は、物品の部分を含む物品の形状等を第1項、一定の操作画像を第2項、物品の実施行為を第3項、登録意匠を第4項に規定していました。部分意匠導入の平成10年改正は1999年1月1日、輸入の括弧書きを加えた令和3年改正は2022年10月1日に施行されています。令和元年改正の意匠の定義等は2020年4月1日施行で、附則第2条第1項により同日以後の出願に適用され、それより前の出願は従前の例によります。 出典

2. 意匠該当性の5要件(意匠審査基準 第III部 第1章)

意匠審査基準 第III部 第1章「工業上利用することができる意匠」は、意匠法第3条第1項柱書の判断に先立ち「意匠該当性要件」として、第2条第1項の定義に当てはまるかを次の5つで判断する構成になっています。

審査基準の項目 要件 該当しないものの例(審査基準の記載から)
2.1 物品等と認められるものであること 不動産(ただし量産される門、組立バンガロー等は物品)/「電気、光、熱などの無体物は物品と認められず」/気体・液体など固有の形状等を有していないもの/粉状物・粒状物の集合体(「その集合体としては特定の形状等を有さない」)/靴下のかかと部分のように「破壊することなしには分離できないもの」
2.2 物品等自体の形状等であること 「当該形状等を維持することができないもの」(流動する形状等)
2.3 視覚に訴えるものであること 「肉眼によってはその形状等を認識できないもの」/「通常の取引状態において、外部から視認できないもの」
2.4 視覚を通じて美感を起こさせるものであること 「機能、作用効果を主目的としたもので、美感をほとんど起こさせないもの」/「意匠としてまとまりがなく、煩雑な感じを与えるだけ」のもの
2.5 他の意匠と対比の対象となり得る一定の範囲を占める部分であること(部分意匠の場合) 対比の対象となり得ない範囲を対象としたもの

〔表5〕意匠該当性の5要件(意匠審査基準 第III部 第1章 2.1〜2.5)。例は同章に記載されたものの一部。

flowchart TB
  A["出願された意匠"] --> B{"物品等と認められるか
(2.1)"} B -- "はい" --> C{"物品等自体の形状等か
(2.2)"} C -- "はい" --> D{"視覚に訴えるか
(2.3)"} D -- "はい" --> E{"視覚を通じて美感を
起こさせるか(2.4)"} E -- "はい" --> F{"部分意匠なら対比の対象と
なり得る範囲か(2.5)"} F -- "はい" --> Y["意匠に該当
→ 具体性・工業上利用性の判断へ"] B -- "いいえ(無体物・粉状物等)" --> N["意匠に該当しない
→ 第3条第1項柱書の拒絶理由"] C -- "いいえ" --> N D -- "いいえ" --> N E -- "いいえ" --> N F -- "いいえ" --> N style Y fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style N fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図5】意匠該当性の判断フロー(意匠審査基準 第III部 第1章 2.1〜2.5 の構成をフロー化。順序は説明のための整理。2026年9月参照時点)。「はい」が下へ進む主経路、「いいえ」は右の終端へ。凡例:緑=意匠に該当(次の判断へ進む)/赤=意匠に該当しない(拒絶理由)。

定義規定と拒絶理由の関係 第2条自体は定義規定であり、意匠法第17条各号には「第2条」は挙げられていません。第2条第1項の意匠に該当しないものは、「工業上利用することができる意匠」(意匠法第3条第1項柱書)に当たらないものとして、意匠法第17条第1号(第3条)の拒絶理由になります。無効理由(意匠法第48条第1項第1号)でも同じく第3条違反として扱われます。

3. 画像の範囲(意匠審査基準 第IV部 第1章)

意匠審査基準 第IV部 第1章「画像を含む意匠」は、画像を含む意匠を次の3つに分けています。

類型 審査基準の項目 内容 第2条上の位置づけ
画像意匠 3.1 物品から離れた画像自体。操作画像(「機器の操作の用に供される画像」)と表示画像(「機器がその機能を発揮した結果として表示される画像」) 第2条第1項の「画像」
物品の部分としての画像を含む意匠 3.2.1 「物品に記録され、物品の表示部に示された」操作画像・表示画像 第2条第1項の「物品(物品の部分を含む)」の形状等
建築物の部分としての画像を含む意匠 3.2.2 「建築物に記録され、建築物の表示部に示された」操作画像・表示画像 第2条第1項の「建築物(建築物の部分を含む)」の形状等

〔表6〕画像を含む意匠の3類型(意匠審査基準 第IV部 第1章 3.1・3.2)。

審査基準は、意匠を構成しない画像として「テレビ番組の画像、映画、ゲームソフトを作動させることにより表示されるゲームの画像など、機器とは独立した、画像又は映像の内容自体を表現の中心として創作される画像又は映像は、操作画像とも物品又は建築物の機能を発揮した結果として表示される画像とも認められず、意匠を構成しない。」と記載しています。また「単に画像を表示する機能のみによって表示された画像は『表示画像』に含まない。」としています。

操作画像:機器を働かせる指示を与える画面(例:家電の設定メニュー)
表示画像:機器の機能に関わる表示(例:計測結果を示す画面)
映画・ゲームのコンテンツ画像 → 意匠を構成しない
単に画像を表示する機能だけで表示された画像 → 表示画像でない

4. 建築物の範囲(意匠審査基準 第IV部 第2章)

要件 審査基準の説明 認められない例(審査基準の記載から)
土地の定着物であること 「継続的に土地に固定して使用されるもの」 庭園灯(土地に定着させ得るが動産として取引されるもの)、仮設テント、キャンピングカー等(動産として取引されるもの)
人工構造物であること 土木構造物を含む、建設される物体 自然の山、岩、樹木、河川、滝、砂浜/土地そのもの又は土地の造成にすぎないもの/スキーゲレンデ(自然物や地形を主要素とするもの)

〔表7〕意匠法上の建築物の要件(意匠審査基準 第IV部 第2章)。具体例として商業用建築物、住宅、学校、病院、工場、競技場、橋りょう、電波塔が挙げられている。

動産として取引される庭園灯や組立バンガローは「建築物」ではなく「物品」として扱われます。建築物か物品かで、第2条第2項の実施行為(建築か製造か、輸出入の有無)が変わる点に注意してください。

5. 実施行為の詳細と留意点

行為 留意点 根拠
譲渡・貸渡しの「申出」 「譲渡又は貸渡しのための展示を含む」。カタログ掲載や展示会出品が問題になる場面 第2条第2項第1号の括弧書き
輸入 「外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為を含む」。海外事業者が配送業者等に持ち込ませる場合を捕捉 第2条第2項第1号の括弧書き
建築物の「建築」 改正解説書は、物品の「製造」に代えて「建築」と規定したと述べています。輸出・輸入は不動産のため規定されていません 第2条第2項第2号
画像の「作成」「電気通信回線を通じた提供」 改正解説書は、画像の生成を「作成」で、ネットワーク配信への対応を「電気通信回線を通じた提供」で規定したと述べています 第2条第2項第3号イ
「プログラム等」を画像に含める 「その画像を表示する機能を有するプログラム等」を画像に含める。プログラム等の定義は特許法第2条第4項(「プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下この項において同じ。)その他電子計算機による処理の用に供する情報であつてプログラムに準ずるもの」) 第2条第2項第3号柱書、特許法第2条第4項
画像記録媒体等 画像を記録した記録媒体(例:光ディスク)や内蔵する機器(例:画像を内蔵したスマートフォン)の譲渡・貸渡し・輸出入・申出も実施 第2条第2項第3号ロ

〔表8〕実施行為の留意点。

6. 特許法第2条との対比

項目 特許法第2条 意匠法第2条
保護対象の定義 発明=自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの(第1項) 意匠=物品・建築物の形状等/画像であって視覚を通じて美感を起こさせるもの(第1項)
「創作」の語 定義の中にある 第2条の定義の中にはない(第1条「意匠の創作を奨励」、第3条第2項「創作をすることができた」で登場)
実施の分け方 物の発明/方法の発明/物を生産する方法の発明(第3項第1号〜第3号) 物品/建築物/画像(第2項第1号〜第3号)
電気通信回線を通じた提供 プログラム等の物の発明について(第3項第1号) 画像について(第2項第3号イ)
「プログラム等」の定義 第2条第4項に独立の定義 第2条第2項第3号の括弧書きで特許法第2条第4項を引用
「部分」の扱い 規定なし(請求項で特定) 「物品の部分」「建築物の部分」「画像の部分」を含む旨を定義に明記

〔表9〕特許法第2条と意匠法第2条の対比。実用新案法第2条は「考案=自然法則を利用した技術的思想の創作」(高度性なし)で、実施は物の発明と同様の構造。

7. 試験での問われ方

試験種別 学習で整理したい論点 気をつける点
短答式 「建築物の意匠の実施に輸入は含まれるか」「画像記録媒体等の譲渡は画像意匠の実施か」「組物・内装の部分について意匠登録を受けられるか」などの正誤 〔表2〕のマトリクスで、号ごとに列挙された行為を正確に。組物(第8条)・内装(第8条の2)は、定義の「部分を含む」との関係も整理する
論文式 侵害事例で、被疑侵害者の行為が「実施」のどれに当たるかを特定させる。画像の配信、建築物の建築請負など まず意匠の対象(物品/建築物/画像)を確定し、次に号・イロの行為を当てはめる
口述 「意匠の定義を述べよ」「画像の意匠として保護されるものは」 「機器の操作の用に供されるもの」「機器がその機能を発揮した結果として表示されるもの」を原文どおり

〔表10〕学習時の論点整理。実際の出題例は下記の過去問紹介に示しています。

関連する過去問(令和8年度 短答式〔意匠〕問1)

令和8年度弁理士試験 短答式〔意匠〕問1は、意匠法上の意匠及び意匠の実施に関して誤っているものを選ばせる問題で、5つの枝はそれぞれ、物品の部分についての意匠登録(枝1)、組物の意匠の部分(枝2)、内装の意匠の部分(枝3)、画像の意匠の実施と画像を記録した記録媒体の譲渡(枝4)、建築物の意匠の実施行為の範囲(枝5)に関する枝です。本記事の〔表1〕〔表2〕〔表8〕がそのまま検討材料になります。公式正解は問1の5です。 問題PDF/公式解答

出典:令和8年度弁理士試験 短答式筆記試験問題(特許庁)、2026年9月参照。上記は各枝の論点の要約であり、枝の文言そのものではありません。

レベル3のまとめ

  • 令和元年改正(令和2年4月1日施行)で、建築物・画像が意匠に追加され、実施行為は物品・建築物・画像の号立てになった。改正前の出願には旧定義が適用される。
  • 意匠該当性は意匠審査基準 第III部 第1章 2.1〜2.5 の5要件で判断し、該当しなければ第3条第1項柱書違反として第17条第1号の拒絶理由。
  • 画像は操作画像・表示画像に限られ、映画・ゲームのコンテンツ画像は意匠を構成しない(第IV部 第1章)。建築物は土地の定着物かつ人工構造物(第IV部 第2章)。
  • 建築物の実施に輸出・輸入はない。画像の実施には作成・電気通信回線を通じた提供(イ)と画像記録媒体等の譲渡等(ロ)がある。

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