小学生でも分かる意匠法 / C. 意匠権の効力・実施権・侵害 #28
意匠権をもつ人は、自分のデザインをまねされたとき、裁判所に「やめさせてください」と頼めます(差止請求権・意匠法第37条)。さらに意匠法は、デザインそのものをまねしていなくても、まねするためだけの部品や型を売るような行為を「侵害とみなす」と決めています(意匠法第38条)。令和元年改正で、第38条は建築物・画像にも広がり、「専用品でなくても侵害になる」型(多機能型)が加わって、全部で9つの号になりました。この記事では、特許法第100条・第101条と比べながら、2つの条文を読みます。
レベル2条文の骨格 ― 第37条(差止め・廃棄・秘密意匠の警告)、第38条(物品・建築物・画像 × 3類型=9号)
レベル3要件・例外・試験での問われ方 ― 警告要件、「にのみ」型と「不可欠」型、改正前後、特許法第100条・第101条との対比
LEVEL 1イメージでつかむ
意匠権は「やめて」と言える権利
「星の形の持ち手がついたコップ」のデザインで意匠権をもっている人がいるとします。ほかの会社がそっくりなコップ(似ているコップもふくむ)を勝手に作って売ったら、意匠権をもっている人は裁判所に「作るのも売るのもやめさせてください」と頼めます。これが差止請求(さしとめせいきゅう)です。まだ売っていなくても「もうすぐ売りそう」なら、「売る前に止めてください」とも頼めます(予防の請求)。
そのとき、いっしょに「作ってしまったコップは捨ててください」「コップを作る機械もどかしてください」とも頼めます。止めるだけだと、また同じ機械で作れてしまうからです。
図は左右にスクロールできます。
【図1】差止請求のイメージ。「止める」がメインで、「捨てる」「どかす」は止める請求といっしょに頼める。
「そのためだけの部品」を売るのも侵害あつかい
まねした会社が、かしこく(ずるく)考えたとします。「コップそのものを売ると止められる。じゃあ、星の持ち手のコップを作るためだけの型(かた)を売って、買った人に作らせよう」。型そのものは「コップ」ではないので、ふつうに考えると意匠権の侵害ではありません。でもこれを見のがすと、意匠権はザルになってしまいます。
そこで意匠法は、「そのデザインの物を作るためだけの部品や型」を業として売る行為などを、侵害とみなす(=侵害あつかいにする)と決めました。これが意匠法第38条で、「間接侵害(かんせつしんがい)」と呼ばれます。
「ためだけ」ではない部品(ほかのコップにも使える持ち手など)はどうでしょう。これも令和元年の改正から、「その見た目を作るのに欠かせない部品」で、相手が「登録されたデザインだと知っていて」売るときは、侵害あつかいになります。ただし、どこでも売っている材料(ねじ・ふつうのガラス板など)は除きます。
図は左右にスクロールできます。
【図2】直接侵害(意匠法第23条)と間接侵害(意匠法第38条)のちがい。間接侵害は「そのためだけの型」と「見た目に欠かせない部品」の2つのパターン。※ねじ・ふつうのガラス板のように、どこでも売っている材料(日本国内において広く一般に流通しているもの)は「不可欠」型から除かれる。図では「業として」の限定や各号の細かい条件を省略している(→レベル2・レベル3)。
ひみつのデザインは、まず「お知らせ」してから
意匠法には、登録したデザインを最長3年間ひみつにできる制度があります(秘密意匠・意匠法第14条)。ひみつにしているあいだは、ほかの人はそのデザインを公報で見られません。だから「知らずにまねしてしまった」人がいてもおかしくありません。そこで、ひみつにしているデザインで「やめて」と言うには、先に特許庁のお墨付きをもらった書類を見せて、「これが私の登録デザインです」と注意(警告)してからでないといけない、というルールがあります。
そのコップ専用の型を売る → 侵害とみなす(第38条)
どこでも売っているねじを売る → みなされない
ひみつのデザイン → 先に警告してから差止め(第37条第3項)
- 意匠権をもつ人は、まねする人・まねしそうな人に「やめて」と言える(差止請求)。いっしょに「捨てて」「機械をどかして」とも頼める。
- デザインそのものではなく「そのためだけの型や部品」を業として売るような行為も、侵害あつかい(間接侵害)になる。
- 令和元年の改正から、「見た目に欠かせない部品」を知っていて売る行為や、建築物・画像についても、侵害あつかいになった。
- ひみつにしているデザイン(秘密意匠)は、先に警告してからでないと「やめて」と言えない。
※「業として」の意味、「知りながら」の中身、廃棄できる物の範囲、建築物・画像ごとのちがい、警告の書面の中身は、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。
LEVEL 2条文の骨格
第37条第1項 ― 差止請求権(停止・予防)
意匠権者又は専用実施権者は、自己の意匠権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
| 要素 | 条文の文言 | 意味 |
|---|---|---|
| だれが(主体) | 「意匠権者又は専用実施権者」 | 通常実施権者は書かれていない(→レベル3) |
| だれに(相手方) | 「侵害する者又は侵害するおそれがある者」 | 現に侵害している人と、これから侵害しそうな人 |
| 何を(内容) | 「侵害の停止又は予防」 | 今の侵害をやめさせる/将来の侵害を防ぐ |
〔表1〕意匠法第37条第1項の3要素。
第37条第2項 ― 廃棄・除却など(付帯請求)
意匠権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物品、建築物若しくは画像(その画像を表示する機能を有するプログラム等を含む。第六十四条及び第六十五条第一号を除き、以下同じ。)若しくは画像を記録した記録媒体若しくは内蔵する機器(以下「一般画像記録媒体等」という。)又はプログラム等(画像を表示する機能を有するプログラム等を除く。以下同じ。)若しくはプログラム等を記録した記録媒体若しくは記憶した機器(以下「プログラム等記録媒体等」という。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。
長い条文ですが、骨組みは「第1項の請求をするに際し」(=差止請求とセットで)、「侵害の行為を組成した〔もの〕の廃棄」「侵害の行為に供した設備の除却」「その他の侵害の予防に必要な行為」を請求できる、という3つです。かっこ書きは、令和元年改正で意匠の対象が建築物・画像に広がったことに合わせて、廃棄の対象を細かく定義したものです。この第2項で定義された「一般画像記録媒体等」「プログラム等記録媒体等」という言葉が、第38条でそのまま使われます。
| 廃棄の対象(「侵害の行為を組成した」もの) | 説明 |
|---|---|
| 物品 | 侵害品そのもの(例:まねしたコップ) |
| 建築物 | 侵害に当たる建築物 |
| 画像(その画像を表示する機能を有するプログラム等を含む) | 侵害に当たる画像。表示用プログラムも「画像」に含めて読む |
| 一般画像記録媒体等 | 「画像を記録した記録媒体若しくは内蔵する機器」 |
| プログラム等(画像を表示する機能を有するものを除く) | 画像表示用でないプログラム等(例:製造装置用のプログラム) |
| プログラム等記録媒体等 | 「プログラム等を記録した記録媒体若しくは記憶した機器」 |
〔表2〕意匠法第37条第2項の廃棄対象と、そこで定義される用語。「一般画像記録媒体等」「プログラム等記録媒体等」は第38条でも使われる。
第37条第3項 ― 秘密意匠の警告要件
第十四条第一項の規定により秘密にすることを請求した意匠に係る意匠権者又は専用実施権者は、その意匠に関し第二十条第三項各号に掲げる事項を記載した書面であつて特許庁長官の証明を受けたものを提示して警告した後でなければ、第一項の規定による請求をすることができない。
ここで引用されている「第二十条第三項各号に掲げる事項」とは、意匠公報に載せる事項です。
前項の登録があつたときは、次に掲げる事項を意匠公報に掲載しなければならない。
一 意匠権者の氏名又は名称及び住所又は居所
二 意匠登録出願の番号及び年月日
三 登録番号及び設定の登録の年月日
四 願書及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本の内容
五 前各号に掲げるもののほか、必要な事項
flowchart TB
A["意匠権・専用実施権の侵害(またはそのおそれ)"] --> B{"秘密請求があり、意匠の内容が
まだ公報に掲載されていないか?"}
B -- "はい" --> D["第20条第3項各号の事項を記載した書面
+特許庁長官の証明"]
D --> E["その書面を提示して警告"]
E --> F["警告の後 → 第37条第1項の差止請求ができる"]
F --> G["第2項:廃棄・除却等もあわせて請求可"]
B -- "いいえ" --> C["第37条第1項の差止請求ができる
(警告は要件ではない)"]
C --> G
style C fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
style F fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
style D fill:#FDF3E1,stroke:#B9791A,color:#22303F
style E fill:#FDF3E1,stroke:#B9791A,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
【図3】意匠法第37条の流れ。秘密意匠だけ、証明を受けた書面の提示と警告が差止請求の前に必要になる。凡例:緑=差止請求ができる状態/橙=秘密意匠のときだけ必要になる前置きの手続。
第38条 ― 侵害とみなす行為(柱書と9つの号)
次に掲げる行為は、当該意匠権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
第38条は、物品(第1号〜第3号)・建築物(第4号〜第6号)・画像(第7号〜第9号)の3つのグループに分かれ、各グループが「にのみ」型・「不可欠」型・「所持等」型の3つの号で構成されています。つまり 3 × 3 = 9 号です。
| 「にのみ」型(専用品型) | 「不可欠」型(多機能型) | 「所持等」型 | |
|---|---|---|---|
| 物品 | 第1号 | 第2号 | 第3号(譲渡・貸渡し・輸出のため所持) |
| 建築物 | 第4号 | 第5号 | 第6号(譲渡・貸渡しのため所有) |
| 画像 | 第7号 | 第8号 | 第9号(画像:提供のため保有/画像記録媒体等:譲渡・貸渡し・輸出のため所持) |
〔表3〕意匠法第38条の号立てマトリクス(3 × 3)。
物品グループ(第1号〜第3号)
登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品の製造にのみ用いる物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等について業として行う次のいずれかに該当する行為
イ 当該製造にのみ用いる物品又はプログラム等記録媒体等の製造、譲渡、貸渡し若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為
ロ 当該製造にのみ用いるプログラム等の作成又は電気通信回線を通じた提供若しくはその申出をする行為
登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品の製造に用いる物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等(これらが日本国内において広く一般に流通しているものである場合を除く。)であつて当該登録意匠又はこれに類似する意匠の視覚を通じた美感の創出に不可欠なものにつき、その意匠が登録意匠又はこれに類似する意匠であること及びその物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等がその意匠の実施に用いられることを知りながら、業として行う次のいずれかに該当する行為
イ 当該製造に用いる物品又はプログラム等記録媒体等の製造、譲渡、貸渡し若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為
ロ 当該製造に用いるプログラム等の作成又は電気通信回線を通じた提供若しくはその申出をする行為
登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品を業としての譲渡、貸渡し又は輸出のために所持する行為
建築物グループ(第4号〜第6号)
登録意匠又はこれに類似する意匠に係る建築物の建築にのみ用いる物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等について業として行う次のいずれかに該当する行為
イ 当該建築にのみ用いる物品又はプログラム等記録媒体等の製造、譲渡、貸渡し若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為
ロ 当該建築にのみ用いるプログラム等の作成又は電気通信回線を通じた提供若しくはその申出をする行為
登録意匠又はこれに類似する意匠に係る建築物の建築に用いる物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等(これらが日本国内において広く一般に流通しているものである場合を除く。)であつて当該登録意匠又はこれに類似する意匠の視覚を通じた美感の創出に不可欠なものにつき、その意匠が登録意匠又はこれに類似する意匠であること及びその物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等がその意匠の実施に用いられることを知りながら、業として行う次のいずれかに該当する行為
イ 当該建築に用いる物品又はプログラム等記録媒体等の製造、譲渡、貸渡し若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為
ロ 当該建築に用いるプログラム等の作成又は電気通信回線を通じた提供若しくはその申出をする行為
登録意匠又はこれに類似する意匠に係る建築物を業としての譲渡又は貸渡しのために所有する行為
画像グループ(第7号〜第9号)
登録意匠又はこれに類似する意匠に係る画像の作成にのみ用いる物品若しくは画像若しくは一般画像記録媒体等又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等について業として行う次のいずれかに該当する行為
イ 当該作成にのみ用いる物品若しくは一般画像記録媒体等又はプログラム等記録媒体等の製造、譲渡、貸渡し若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為
ロ 当該作成にのみ用いる画像又はプログラム等の作成又は電気通信回線を通じた提供若しくはその申出をする行為
登録意匠又はこれに類似する意匠に係る画像の作成に用いる物品若しくは画像若しくは一般画像記録媒体等又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等(これらが日本国内において広く一般に流通しているものである場合を除く。)であつて当該登録意匠又はこれに類似する意匠の視覚を通じた美感の創出に不可欠なものにつき、その意匠が登録意匠又はこれに類似する意匠であること及びその物品若しくは画像若しくは一般画像記録媒体等又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等がその意匠の実施に用いられることを知りながら、業として行う次のいずれかに該当する行為
イ 当該作成に用いる物品若しくは一般画像記録媒体等又はプログラム等記録媒体等の製造、譲渡、貸渡し若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為
ロ 当該作成に用いる画像又はプログラム等の作成又は電気通信回線を通じた提供若しくはその申出をする行為
登録意匠若しくはこれに類似する意匠に係る画像を業としての電気通信回線を通じた提供のために保有する行為又は登録意匠若しくはこれに類似する意匠に係る画像記録媒体等を業としての譲渡、貸渡し若しくは輸出のために所持する行為
| 号 | 対象(何を) | 行為(イ:有体物・記録媒体等) | 行為(ロ:プログラム等・画像) |
|---|---|---|---|
| 第1号・第4号・第7号(「にのみ」型) | 製造/建築/作成にのみ用いる物品・プログラム等・プログラム等記録媒体等(第7号は画像・一般画像記録媒体等も) | 製造、譲渡、貸渡し、輸入、譲渡・貸渡しの申出 | 作成、電気通信回線を通じた提供、その申出 |
| 第2号・第5号・第8号(「不可欠」型) | 製造/建築/作成に用いる上記のもの(広く一般に流通しているものを除く)で、視覚を通じた美感の創出に不可欠なもの+知りながら | 同上 | 同上 |
| 第3号 | 登録意匠等に係る物品 | 業としての譲渡・貸渡し・輸出のために所持 | |
| 第6号 | 登録意匠等に係る建築物 | 業としての譲渡・貸渡しのために所有 | |
| 第9号 | 登録意匠等に係る画像/画像記録媒体等 | 画像:業としての電気通信回線を通じた提供のために保有/画像記録媒体等:業としての譲渡・貸渡し・輸出のために所持 | |
〔表4〕意匠法第38条の各号を「対象」と「行為」に分解した一覧。「にのみ」型と「不可欠」型は行為(イ・ロ)が同じで、対象の絞り方だけがちがう。
flowchart TB
S["ある物品・プログラム等・画像などを、業として扱う行為"] --> Q1{"登録意匠等に係る物品/建築物/画像を
製造・建築・作成するためにのみ用いる物か?"}
Q1 -- "はい" --> N1["「にのみ」型:第1号/第4号/第7号
(知っていたかは問わない)"]
Q1 -- "いいえ" --> Q2{"日本国内で広く一般に流通しているものか?"}
Q2 -- "いいえ(流通品ではない)" --> Q3{"登録意匠等の視覚を通じた美感の創出に不可欠か?"}
Q2 -- "はい(流通品)" --> X["第38条の「不可欠」型には当たらない"]
Q3 -- "はい" --> Q4{"登録意匠等であること+実施に用いられることを
知りながらか?"}
Q3 -- "いいえ" --> X
Q4 -- "はい" --> N2["「不可欠」型:第2号/第5号/第8号"]
Q4 -- "いいえ" --> X
S --> Q5{"登録意匠等に係る物品・建築物・画像そのものを
譲渡等のために所持・所有・保有しているか?"}
Q5 -- "はい" --> N3["「所持等」型:第3号/第6号/第9号"]
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style N2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
style N3 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
style X fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
【図4】意匠法第38条の該当判定の分岐図。「にのみ」型は主観要件なし、「不可欠」型は3つの追加要件(流通品除外・不可欠性・知りながら)がある。凡例:緑=第38条の各号に該当する類型/赤=「不可欠」型には当たらない(不該当)。右下の「所持等」型は、にのみ型・不可欠型とは別の入口として並べている。
- 第37条第1項:意匠権者・専用実施権者は、侵害者・侵害のおそれがある者に、停止・予防を請求できる。
- 第37条第2項:第1項の請求に際し、侵害の行為を組成した物品・建築物・画像等の廃棄、設備の除却、その他予防に必要な行為を請求できる。
- 第37条第3項:秘密意匠は、第20条第3項各号の事項を記載し特許庁長官の証明を受けた書面を提示して警告した後でなければ、第1項の請求ができない。
- 第38条:物品・建築物・画像 × 「にのみ」型・「不可欠」型・「所持等」型 = 9号。「不可欠」型は、流通品除外・美感の創出に不可欠・知りながら、の3つが追加要件。
LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方
1. 差止請求権(第37条第1項)の要件整理
| 論点 | 整理 | 根拠・注意 |
|---|---|---|
| 請求権者 | 意匠権者、専用実施権者 | 条文上の主体。通常実施権者は挙げられていない(条文上明らか)。通常実施権者が権利者の差止請求権を代位行使できるかは解釈問題であり、本記事では立ち入らない |
| 相手方 | 「侵害する者」「侵害するおそれがある者」 | 侵害のおそれがあれば、現実の侵害前でも予防請求ができる |
| 故意・過失 | 不要 | 条文上、差止請求に故意・過失の要件は置かれていない。損害賠償(民法第709条)とは異なる。過失の推定は意匠法第40条の問題 |
| 侵害の内容 | 意匠法第23条の効力範囲(登録意匠及びこれに類似する意匠の業としての実施)に属する行為+第38条でみなされる行為 | 「実施」の中身は意匠法第2条第2項 |
| 付帯請求(第2項) | 侵害組成物等の廃棄、設備の除却、その他侵害の予防に必要な行為 | 「前項の規定による請求をするに際し」=差止請求に付随して請求する |
| 秘密意匠の特則(第3項) | 証明を受けた書面を提示して警告した後でなければ第1項の請求ができない | → 2. |
〔表5〕意匠法第37条の要件整理。
2. 秘密意匠の警告要件(第37条第3項)の分解
| 要件 | 条文の文言 | ポイント |
|---|---|---|
| ① 対象となる意匠 | 「第十四条第一項の規定により秘密にすることを請求した意匠」 | 秘密請求をした意匠に係る意匠権・専用実施権。特許庁の救済案内は、意匠の内容が公報に公開されていない間の差止請求に証明書面提示による警告を求めている。秘密期間満了と公報発行の時点を区別する。 |
| ② 書面の内容 | 「第二十条第三項各号に掲げる事項を記載した書面」 | 公報掲載事項(権利者、出願番号・年月日、登録番号・登録年月日、願書・図面等の内容、その他必要な事項) |
| ③ 証明 | 「特許庁長官の証明を受けたもの」 | 権利者が勝手に作った書面ではなく、長官の証明付き |
| ④ 提示して警告 | 「提示して警告した後でなければ」 | 書面の提示と警告が、差止請求の前提 |
| ⑤ 制限される請求 | 「第一項の規定による請求」 | 差止請求(停止・予防)。第2項の廃棄等は「前項の規定による請求をするに際し」行うものなので、実質的に警告後となる(条文の構造からの帰結) |
〔表6〕意匠法第37条第3項の要件分解。
秘密意匠については、もう一つ侵害場面の特則があります。過失の推定(意匠法第40条)のただし書です。
他人の意匠権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する。ただし、第十四条第一項の規定により秘密にすることを請求した意匠に係る意匠権又は専用実施権の侵害については、この限りでない。
| 場面 | 通常の意匠 | 秘密意匠(第14条第1項の請求をした意匠) |
|---|---|---|
| 差止請求(第37条第1項) | 侵害・侵害のおそれがあれば請求可 | 長官の証明を受けた書面を提示して警告した後でなければ請求できない(第37条第3項) |
| 過失の推定(第40条) | 推定される | 推定されない(第40条ただし書)。損害賠償を求める側が過失を立証する必要がある |
| 意匠公報への掲載(第20条第3項・第4項) | 設定登録後、第3項各号の事項を掲載 | 第3項第4号の事項(願書・図面等の内容)は、指定した期間の経過後遅滞なく掲載(第20条第4項) |
| 意匠権の効力そのもの(第23条) | 制限されない(第37条第3項・第40条ただし書は、権利の存在ではなく行使の場面の特則) | |
〔表7〕秘密意匠の侵害場面の特則3点セット。第37条第3項(差止め)・第40条ただし書(過失推定)・第20条第4項(公報)。
逐条解説は、第37条第3項の趣旨を次のように説明しています。差止請求権は侵害者の善意・悪意を問わず行使できるものだが、秘密意匠の内容は一般公衆に公示されていない(第20条第4項)ので、秘密意匠と同一又は類似の意匠を善意で実施している者にいきなり差止請求ができるとするのは苛酷に過ぎるため、証明を受けた書面を提示して警告した後でなければ差止請求権を行使できないこととした。警告を受けた者は秘密意匠の閲覧を請求でき(第14条第4項)、警告後もなお実施を継続するときは悪意の侵害者となり、差止めだけでなく損害賠償も請求されることになる、というものです(特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』1338頁)。
また、第40条ただし書について、逐条解説は、秘密意匠は意匠権が発生しても直ちにその内容が公告されないため、その間に意匠権を侵害した者に過失があったと推定するのは酷であることから例外としたものであり、民法の一般原則によって権利者が過失を立証することになる、と説明しています(青本〔第22版〕1347頁)。
3. 第38条の要件詳細 ― 「にのみ」型と「不可欠」型
| 要件 | 「にのみ」型(第1号・第4号・第7号) | 「不可欠」型(第2号・第5号・第8号) |
|---|---|---|
| 対象物の客観的性質 | 登録意匠等に係る物品の製造/建築物の建築/画像の作成にのみ用いるもの(いわゆる専用品) | 製造/建築/作成に用いるもの(専用品に限らない)で、登録意匠等の視覚を通じた美感の創出に不可欠なもの |
| 流通品の除外 | 規定なし(「にのみ」の要件で絞られる) | 「日本国内において広く一般に流通しているものである場合を除く」 |
| 主観的要件 | なし | (a) その意匠が登録意匠又はこれに類似する意匠であること、(b) その物品等がその意匠の実施に用いられること、の2点を知りながら |
| 「業として」 | 「業として行う」行為に限る | |
| 行為(イ) | 物品・(一般画像記録媒体等・)プログラム等記録媒体等の製造、譲渡、貸渡し、輸入、譲渡・貸渡しの申出 | |
| 行為(ロ) | プログラム等(第7号・第8号は画像も)の作成、電気通信回線を通じた提供、その申出 | |
〔表8〕「にのみ」型と「不可欠」型の要件対比。
逐条解説は、第38条を、意匠権の侵害に用いられる専用部品の供給などのように、それ自体は直接侵害といえなくても直接侵害を誘発する蓋然性が極めて高い一定の行為を侵害とみなす規定と位置づけています。「不可欠」型(第2号)については、特許法では平成14年改正で措置されていたが、意匠法では部分意匠制度により侵害の捕捉が可能と考えられたため措置されておらず、完成品を非専用品の構成部品に分割して輸入するような模倣に対処するため令和元年改正で新設した、と説明しています。「所持等」型の第3号(改正前の第2号)は平成18年改正で追加されたもので、侵害品の拡散を抑止する趣旨とされています(青本〔第22版〕1342〜1344頁)。さらに、「視覚を通じた美感の創出に不可欠なもの」には意匠を構成する部品のほか金型等の道具も含まれ得る一方、意匠の外観に現れない内部機構や、美感の創出にほとんど影響しない微小な部品は当たらない、と説明しています(同1344頁)。なお、青本〔第22版〕は令和4年10月刊であり、ここでの説明は同版時点のものです。
改正解説書(令和元年法律改正解説書 第9章「間接侵害規定の対象拡大」)は、改正前の意匠法第38条が「のみ」という客観要件を求めていたため、完成品を専用品でない構成部品に分割して輸入するような模倣に対応できなくなっていたこと、また意匠の定義に建築物・画像が加わったことに合わせて規定の整備が必要になったこと、を改正の理由として述べています。同解説書は「不可欠」型の例として、美容用ローラーのボール部分とハンドル部分が別々に製造される場合を挙げ、それぞれは専用品でなくても登録意匠の美感の創出に不可欠であれば新第2号に該当し得る、と説明しています。
図は左右にスクロールできます。
【図5】直接侵害(意匠法第23条)と第38条の3類型の相関図。※第38条は、直接侵害を誘発する蓋然性の高い行為を「侵害とみなす」規定である(令和元年法律改正解説書 第9章の説明を図にしたもの)。図では各号の行為(イ・ロ)の内訳を省略している。
4. 令和元年改正 ― 改正前と現行の区別
| 項目 | 改正前(令和元年改正前の旧法) | 現行(令和元年改正後。令和2年4月1日施行) |
|---|---|---|
| 第38条の対象 | 物品のみ | 物品・建築物・画像 |
| 専用品型(「にのみ」型) | あり(旧第1号。物品の製造にのみ用いる物等) | 第1号・第4号・第7号 |
| 多機能型(「不可欠」型) | なし(改正解説書:「のみ」要件が厳格で分割輸入型の模倣に対応できなかった) | 第2号・第5号・第8号を新設 |
| 所持等型 | あり(旧第2号:物品の所持。平成18年改正で追加) | 第3号(物品・所持)、第6号(建築物・所有)、第9号(画像・保有/画像記録媒体等・所持) |
| 第37条第2項の廃棄対象 | 侵害の行為を組成した物(平成14年改正でプログラム等を含む旨を明文化) | 物品・建築物・画像・一般画像記録媒体等・プログラム等・プログラム等記録媒体等 |
〔表9〕令和元年改正の前後比較。改正前欄は、旧条文の原文ではなく、青本〔第22版〕1338頁・1343〜1344頁および改正解説書 第9章の説明に基づく要旨。施行日は特許庁「令和元年意匠法改正特設サイト」(2026年9月参照)による(改正規定のほとんどが令和2年4月1日施行、一部は令和3年4月1日施行)。
5. 特許法第100条・第101条、実用新案法第27条・第28条との対比
特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 特許権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(物を生産する方法の特許発明にあつては、侵害の行為により生じた物を含む。第百二条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。
| 項目 | 特許法第100条 | 実用新案法第27条 | 意匠法第37条 |
|---|---|---|---|
| 第1項(差止請求権) | 特許権者又は専用実施権者/侵害する者又は侵害するおそれがある者/停止又は予防 | 同旨(「侵害者等」の定義を置く) | 意匠権者又は専用実施権者/同旨 |
| 第2項の廃棄対象 | 侵害の行為を組成した物(物を生産する方法の特許発明では、侵害の行為により生じた物を含む) | 侵害の行為を組成した物(プログラム等を含む) | 侵害の行為を組成した物品・建築物・画像・一般画像記録媒体等・プログラム等・プログラム等記録媒体等 |
| 方法の発明の扱い | あり(生産方法により生じた物を含む) | 方法の考案は保護対象外 | 意匠に方法はない |
| 第3項(警告要件) | なし | 第27条にはなし。ただし実用新案技術評価書を提示して警告した後でなければ権利行使できない旨の別条(実用新案法第29条の2)がある | あり(秘密意匠に限り、証明を受けた書面を提示して警告した後) |
〔表10〕差止請求権の三法対比。実用新案法第29条の2はe-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000123、2026年9月参照)で確認。
次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
一 特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
二 特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
三 特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為
四 特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
五 特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
六 特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為
次に掲げる行為は、当該実用新案権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
一 業として、登録実用新案に係る物品の製造にのみ用いる物の生産、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為
二 登録実用新案に係る物品の製造に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその考案による課題の解決に不可欠なものにつき、その考案が登録実用新案であること及びその物がその考案の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
三 登録実用新案に係る物品を業としての譲渡、貸渡し又は輸出のために所持する行為
| 類型 | 特許法第101条(物の発明/方法の発明/物を生産する方法) | 実用新案法第28条(物品の考案のみ) | 意匠法第38条(物品/建築物/画像) |
|---|---|---|---|
| 「にのみ」型(専用品型) | 第1号(物の生産にのみ)/第4号(方法の使用にのみ) | 第1号(物品の製造にのみ) | 第1号(物品の製造にのみ)/第4号(建築物の建築にのみ)/第7号(画像の作成にのみ) |
| 「不可欠」型(多機能型) | 第2号/第5号:「その発明による課題の解決に不可欠なもの」 | 第2号:「その考案による課題の解決に不可欠なもの」 | 第2号/第5号/第8号:「視覚を通じた美感の創出に不可欠なもの」 |
| 主観的要件(「不可欠」型) | 特許発明であること+実施に用いられることを知りながら | 登録実用新案であること+実施に用いられることを知りながら | 登録意匠又はこれに類似する意匠であること+実施に用いられることを知りながら |
| 「所持等」型 | 第3号(物の発明:譲渡等・輸出のため所持)/第6号(生産方法により生産した物:同) | 第3号(物品:譲渡・貸渡し・輸出のため所持) | 第3号(物品:譲渡・貸渡し・輸出のため所持)/第6号(建築物:譲渡・貸渡しのため所有)/第9号(画像:提供のため保有、画像記録媒体等:譲渡・貸渡し・輸出のため所持) |
| 対象物の表記 | 「物」(特許法第2条第3項第1号によりプログラム等を含む) | 「物」(プログラム等を含む旨をかっこ書きで明示) | 「物品」とは別に「プログラム等」「プログラム等記録媒体等」「画像」「一般画像記録媒体等」を列挙し、有体物(イ)と無体物(ロ)で行為を分ける |
| 号の数 | 6(3類型 × 物・方法の2カテゴリー) | 3(3類型 × 物品のみ) | 9(3類型 × 物品・建築物・画像の3カテゴリー) |
| 効力範囲との関係 | 特許発明の技術的範囲に属する物・方法 | 登録実用新案に係る物品 | 「登録意匠又はこれに類似する意匠」に係る物品等(意匠法第23条の効力が類似意匠まで及ぶことを反映) |
〔表11〕間接侵害規定の三法対比。「不可欠」の対象が特許・実用新案では「課題の解決」、意匠では「視覚を通じた美感の創出」である点と、意匠法だけ「類似する意匠」まで含む点が最大の違い。
図は左右にスクロールできます。
【図6】特許法第101条(発明の種類2 × 類型3 = 6号)と意匠法第38条(意匠の対象3 × 類型3 = 9号)の号立てマトリクス。縦軸=対象のカテゴリー、横軸=3つの類型の2軸で号が決まる。塗り分けの意味は図中の凡例のとおり。※「不可欠」の中身は、特許法・実用新案法=課題の解決に不可欠、意匠法=視覚を通じた美感の創出に不可欠。「知りながら」の対象は、特許法=特許発明であること、意匠法=登録意匠又はこれに類似する意匠であること。図では各号の行為(イ・ロ)の内訳を省略している。参照時点:2026年9月。
6. 「実施」(第2条第2項)と第38条の行為との対応
第38条の各号は、意匠法第2条第2項の「実施」の定義と対になっています。第2条第2項の実施行為に当たれば直接侵害(意匠法第23条)、それに至る前段階の行為を第38条が拾う、という構造です。
| カテゴリー | 第2条第2項の「実施」(直接侵害の行為) | 第38条が拾う前段階の行為 |
|---|---|---|
| 物品(第2条第2項第1号) | 製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出、輸入、譲渡・貸渡しの申出 | 製造にのみ用いる物等の製造・譲渡等(第1号)、不可欠な物等の製造・譲渡等(第2号)、譲渡等のための所持(第3号) |
| 建築物(第2条第2項第2号) | 建築、使用、譲渡、貸渡し、譲渡・貸渡しの申出 | 建築にのみ用いる物等(第4号)、不可欠な物等(第5号)、譲渡・貸渡しのための所有(第6号) |
| 画像(第2条第2項第3号イ) | 作成、使用、電気通信回線を通じた提供、その申出 | 作成にのみ用いる物等(第7号)、不可欠な物等(第8号)、提供のための保有(第9号前段) |
| 画像記録媒体等(第2条第2項第3号ロ) | 譲渡、貸渡し、輸出、輸入、譲渡・貸渡しの申出 | 譲渡・貸渡し・輸出のための所持(第9号後段) |
〔表12〕意匠法第2条第2項の「実施」と第38条の対応。建築物の実施に「輸出・輸入」がないことに対応して、第6号にも「輸出」がない。
7. 試験での問われ方
| 試験種別 | 問われ方の傾向(作成者の整理) | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 短答式 | 「ほかの物品にも使える部品を製造販売する行為は侵害とみなされるか」「広く一般に流通している物品の製造は侵害とみなされるか」「通常実施権者は差止請求できるか」「秘密意匠の侵害について過失は推定されるか」等の正誤 | 「にのみ」型か「不可欠」型かを先に判定。「不可欠」型は流通品除外・不可欠性・知りながら、の3要件がそろって初めて該当。過失推定除外(第40条ただし書)と警告要件(第37条第3項)を混同しない |
| 論文式 | 侵害事例で、部品供給者・型の供給者・在庫を持つ者に対して権利者が採り得る措置を問う。秘密意匠が絡む場合は差止請求の前提(警告)を落とさない | 第23条(直接侵害)→第38条(みなし侵害)の順に検討。差止め(第37条)と損害賠償(民法第709条・意匠法第39条・第40条)を分けて書く。建築物・画像では動詞(建築・作成・所有・保有)を正確に |
| 口述 | 「意匠法第38条の各号の構造を述べよ」「秘密意匠の権利行使の特則を述べよ」「特許法第101条との違いは何か」 | 「3 × 3 = 9号」「課題の解決に不可欠/視覚を通じた美感の創出に不可欠」「類似する意匠まで含む」の3点で答える |
〔表13〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。
- 差止請求(第37条第1項)の主体は意匠権者・専用実施権者。故意・過失は不要。付帯請求(第2項)は差止請求に際して行う。
- 秘密意匠は、第20条第3項各号の事項を記載し長官の証明を受けた書面を提示して警告した後でなければ差止請求できず(第37条第3項)、過失も推定されない(第40条ただし書)。意匠権の効力自体は制限されない。
- 第38条は 物品・建築物・画像 × 「にのみ」型・「不可欠」型・「所持等」型 = 9号。「不可欠」型は令和元年改正(令和2年4月1日施行)で新設され、流通品除外・美感の創出に不可欠・知りながら、の3要件。
- 特許法第101条との違い:「課題の解決に不可欠」↔「視覚を通じた美感の創出に不可欠」、対象が「登録意匠又はこれに類似する意匠」まで、号数 6 ↔ 9、建築物・画像で動詞が所有・保有に変わる。
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確認した関連一次資料:平成29年度日中共同研究報告書・第4章(学説の整理)。
