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小学生でも分かる実用新案法|実用新案法第27条・第28条 差止請求権・侵害とみなす行為 ― 「やめて」と言える権利と、「手伝い」もアウトになるルール

小学生でもわかる実用新案法:差止請求と間接侵害(27条28条)

小学生でも分かる実用新案法 / C. 実用新案権の効力・実施権・侵害 #22

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実用新案権をもっている人は、まねをしている人に「やめて」と言え(差止請求権・第27条)、まねに使う道具や設備を「捨てて・取り外して」と言えます。さらに、「まねの部品だけを作って売る」「まねした品物を売るために倉庫に置いておく」といった、まねそのものではない行為も、侵害と「みなす」ルールがあります(第28条)。特許法第100条・第101条とそっくりですが、実用新案法には「方法」の考案がないため、条文の数が少なくなっています。

条文:実用新案法第27条、第28条関連:実用新案法第2条第3項、第29条の2/特許法第100条、第101条参照時点:2026年9月

目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「やめて」と言える権利(第27条)

実用新案権は、「物の形やしくみのアイデア」を守る権利です。たとえば、あなたが「消しゴムのカスが散らばらない、ふた付きの筆箱」を考えて、実用新案として登録したとします。すると、ほかの人が勝手に同じ筆箱を作って売ることはできません。

もし、だれかが勝手に作って売っていたら、あなたはその人に「やめてください」と言えます。これが差止請求(さしとめせいきゅう)です。「差し止める」とは、「止めさせる」という意味です。まだ売っていなくても、「これから売りそうだ」というときにも「やらないで」と言えます。

さらに、「やめて」と言うときに、いっしょに「作った筆箱を捨てて」「筆箱を作る機械を取り外して」ともお願いできます。やめたふりをして、こっそり続けられたら困るからです。

実用新案権者 (登録した人) まねをした人 (侵害者等) 「やめて」(侵害の停止・予防) 「作った物を捨てて」「機械を取り外して」(廃棄・除却) 第27条第1項 = 「やめて」と言える権利(差止請求権) 第27条第2項 = 「やめて」と言うときに、いっしょに頼める「捨てて・取り外して」

図は左右にスクロールできます。

凡例
実線=第27条第1項の請求(本体)
点線=第27条第2項の請求(第1項の請求をするに際して行う)

【図1】第27条のイメージ。実用新案権者(または専用実施権者)は、まねをしている人・しそうな人に「やめて」と言え(第1項)、そのときに「物の廃棄」「設備の除却」なども頼める(第2項)。※第2項の請求は単独ではできない(→〔表1〕)。※説明の都合上、権利行使の前提となる第29条の2(技術評価書の提示・警告)は図に描いていない。

「手伝った人」もアウトになるルール(第28条)

ここで、ずるい人が考えます。「自分で筆箱を作ったら侵害になる。じゃあ、筆箱専用のふたの部品だけを作って売ろう。組み立てるのはお客さんだから、自分はセーフだ」。

これを許すと、権利はかんたんにすりぬけられてしまいます。そこで法律は、「まねをする手伝い」にあたる行為も、侵害と「みなす」(=侵害だと決めてあつかう)ことにしました。これが第28条です。学校でいえば、「カンニングをした人」だけでなく、「カンニング専用のカンペを作って配った人」も同じように注意される、というイメージです。

登録した筆箱(登録実用新案に係る物品) 要件を上から順に積む(すべて満たすと ○ みなし侵害) 該当しない例(×)

第1号 専用部品(「のみ」品) ① 業として、生産・譲渡等・輸入・譲渡等の申出をする ② その物が、物品の製造に「のみ」用いる物である ③ 知っていたかどうか(主観)は要件ではない × 第1号に当たらない ほかの用途にも使える部品を 売った(「のみ」でない) → 第2号に当たるかを次に見る

第2号 カギになる部品+知りながら ① 業として、生産・譲渡等・輸入・譲渡等の申出をする ② 課題の解決に不可欠な物(広く一般に流通する物を除く) ③ 登録実用新案であること・実施に用いられることを知りながら × 第2号に当たらない 日本国内で広く一般に流通 している物(ねじなど)を売った /知らずに売った

第3号 売る前の所持 ① 業としての譲渡・貸渡し・輸出のためにする ② 対象は登録実用新案に係る「物品そのもの」 ③ その物品を「所持」する × 第3号に当たらない 譲渡・貸渡し・輸出の目的 なしに所持しているだけ

図は左右にスクロールできます。

凡例
塗った箱=要件(上から順に積む)
点線の箱=その号に当たらない例
×当たらない印
①②③要件の並び順(条文の号とは別)

【図2】第28条の3つの類型を、要件を縦に積み、該当しない例を右に固定して並べたもの。どれも「業として」(仕事として)行う場合が対象。※説明の都合上、該当しない例は代表的なものだけを挙げた。※条文の正確な文言は〔表2〕と原文を参照。

レベル1のまとめ

  • 実用新案権をもつ人は、まねをした人・しそうな人に「やめて」と言える(第27条第1項)。そのとき「作った物を捨てて」「機械を取り外して」ともお願いできる(第27条第2項)。
  • まねそのものでなくても、「専用部品を売る」「カギになる部品を知っていて売る」「売るために持っている」は、侵害と「みなされる」(第28条)。

※実用新案権は、「実用新案技術評価書」という書類を見せて警告してからでないと、「やめて」と言うことができません(第29条の2)。このルールは別の記事で説明します。正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。


LEVEL 2条文の骨格

第27条の構造 ― 差止請求権

項 だれが だれに 何を請求できるか(要旨)
第1項 実用新案権者
専用実施権者
侵害する者
侵害するおそれがある者
(=「侵害者等」)
侵害の停止または予防
第2項 同上 同上 第1項の請求をするに際し、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却、その他の侵害の予防に必要な行為

〔表1〕実用新案法第27条の項ごとの整理(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。第2項の請求は「第1項の請求をするに際し」行うもので、単独では請求できない構造になっている。

実用新案法第27条第1項実用新案権者又は専用実施権者は、自己の実用新案権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者(以下「侵害者等」という。)に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
実用新案法第27条第2項実用新案権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(プログラム等(特許法第二条第四項に規定するプログラム等をいう。次条において同じ。)を含む。以下同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。

第1項の括弧書きで定義される「侵害者等」という言葉は、このあと第29条の2(実用新案技術評価書の提示)などでも使われます。「今まさに侵害している者」だけでなく「侵害するおそれがある者」も含む点がポイントです。

第2項の括弧書きは、「物」に「プログラム等」を含むと明記しています。「プログラム等」の意味は特許法第2条第4項の定義を借りています。実用新案は「物品の形状、構造又は組合せ」に係る考案が対象ですが(実用新案法第3条第1項柱書)、その物品を製造する際に用いられるプログラム等が侵害行為を組成する物に当たる場合に備えた規定と読めます。

根拠資料との照合:平成14年改正では、侵害品の製造に用いる機械の制御プログラムなどが間接侵害を構成し得ることに対応して、廃棄等の対象となる「物」にプログラム等が含まれることを明確にしました。プログラム自体が実用新案の保護対象になったという意味ではありません。青本第22版・第27条(冊子1012〜1013頁)。

第28条の構造 ― 侵害とみなす行為

号 対象となる「物」 行為 主観(知っていること)が要件か
第1号 登録実用新案に係る物品の製造にのみ用いる物 業としての生産、譲渡等、輸入、譲渡等の申出 要件ではない
第2号 登録実用新案に係る物品の製造に用いる物であって、その考案による課題の解決に不可欠なもの(日本国内において広く一般に流通しているものを除く) 業としての生産、譲渡等、輸入、譲渡等の申出 要件(登録実用新案であること・実施に用いられることを知りながら)
第3号 登録実用新案に係る物品そのもの 業としての譲渡、貸渡し又は輸出のために所持する行為 要件ではない

〔表2〕実用新案法第28条の号ごとの整理(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。第1号・第2号は「部品など」を対象とし、第3号は「物品そのもの」を対象とする。

実用新案法第28条(柱書)次に掲げる行為は、当該実用新案権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
実用新案法第28条第1号業として、登録実用新案に係る物品の製造にのみ用いる物の生産、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為
実用新案法第28条第2号登録実用新案に係る物品の製造に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその考案による課題の解決に不可欠なものにつき、その考案が登録実用新案であること及びその物がその考案の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
実用新案法第28条第3号登録実用新案に係る物品を業としての譲渡、貸渡し又は輸出のために所持する行為
根拠資料との照合:現行の第28条第3号は「譲渡、貸渡し又は輸出」のための所持を定め、特許法第101条第3号の「譲渡等又は輸出」と書き方が異なります。ここでいう所持は、登録実用新案に係る物を業として所持する場合です。実用新案法第28条/特許法第101条。

「実施」との関係 ― なぜ「みなす」規定が必要か

実用新案権の効力は「業として登録実用新案の実施をする権利を専有する」ことです(実用新案法第16条)。そして「実施」の意味は第2条第3項で決まっています。

実用新案法第2条第3項この法律で考案について「実施」とは、考案に係る物品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、輸出し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為をいう。

「部品だけを売る」行為や、「売る前に倉庫に置いておく」行為は、第2条第3項の「実施」のどれにも当たりません。だから、そのままでは侵害になりません。そこで第28条が、これらを「侵害するものとみなす」ことで、権利のすりぬけを防いでいます。

行為 第2条第3項の「実施」か 侵害になるか 根拠
登録実用新案に係る物品を業として製造・譲渡する 実施に当たる 侵害(直接侵害) 第16条・第2条第3項
その物品の製造にのみ用いる部品を業として生産・譲渡等する 実施に当たらない 侵害とみなす 第28条第1号
課題解決に不可欠な部品を、知りながら業として譲渡等する 実施に当たらない 侵害とみなす 第28条第2号
その物品を業としての譲渡・貸渡し・輸出のために所持する 実施に当たらない(「所持」は第2条第3項にない) 侵害とみなす 第28条第3号

〔表3〕「実施」(直接侵害)と「みなし侵害」(第28条)の関係。「みなす」規定があるからこそ、第2条第3項に当たらない行為も差止め等の対象になる。

flowchart TD
  A["実用新案権者・専用実施権者"] --> B{"相手の行為は?"}
  B -->|"登録実用新案に係る物品の製造・譲渡など"| C["○ 第2条第3項の『実施』 → 直接侵害"]
  B -->|"部品の販売・売る前の所持など"| D{"第28条各号に当たるか"}
  D -->|"当たる"| E["○ 侵害と『みなす』"]
  D -->|"当たらない"| F["× 侵害にならない(終わり)"]
  C --> G["第27条第1項 差止請求(停止・予防)"]
  E --> G
  G -.-> H["第27条第2項 廃棄・除却など(請求に際して)"]
  style C fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style E fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F
  style F fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F
  style G fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style H fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
○ 直接侵害・差止請求の本体
○ みなし侵害・付随して請求するもの
× 侵害にならない(終わり)
実線=そのまま進む
点線=第1項の請求に際して行う(単独では請求できない)

【図3】第27条・第28条のつながり。直接侵害でも、みなし侵害でも、差止請求(第27条第1項)と廃棄・除却請求(第27条第2項)の入口は同じ。なお、実際に権利行使する前には第29条の2(技術評価書の提示・警告)の手順が必要(→第29条の2の記事)。※説明の都合上、第29条の2の手順は図に描いていない。

レベル2のまとめ

  • 第27条第1項:実用新案権者・専用実施権者は、「侵害者等」(侵害する者・侵害するおそれがある者)に対し、侵害の停止・予防を請求できる。
  • 第27条第2項:第1項の請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(プログラム等を含む)の廃棄、設備の除却、その他侵害の予防に必要な行為を請求できる。
  • 第28条:「製造にのみ用いる物」(第1号)、「課題解決に不可欠な物を知りながら」(第2号)、「譲渡・貸渡し・輸出のための所持」(第3号)を、侵害とみなす。
  • これらは第2条第3項の「実施」に当たらない行為なので、「みなす」規定がなければ侵害にならない。


LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 第27条の要件整理

要件 内容 条文上の根拠
請求権者 実用新案権者又は専用実施権者(通常実施権者は条文上の請求権者ではない) 第27条第1項
相手方 「侵害者等」=侵害する者又は侵害するおそれがある者 第27条第1項括弧書き
請求内容(本体) 侵害の停止(現に侵害している場合)又は予防(侵害のおそれがある場合) 第27条第1項
請求内容(付随) 侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却、その他の侵害の予防に必要な行為。「前項の規定による請求をするに際し」とあり、第1項の請求に付随して請求する 第27条第2項
「物」の範囲 プログラム等(特許法第2条第4項に規定するもの)を含む 第27条第2項括弧書き
行使の前提 実用新案技術評価書を提示して警告した後でなければ権利行使できない 第29条の2(別記事)

〔表4〕第27条の要件整理。「侵害者等」の定義は第27条第1項の括弧書きに置かれ、第29条の2でもこの語が使われている。

2. 特許法第100条との対比

特許法第100条第1項特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
特許法第100条第2項特許権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(物を生産する方法の特許発明にあつては、侵害の行為により生じた物を含む。第百二条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。
比較点 特許法第100条 実用新案法第27条 違いの理由(条文から読めること)
請求権者 特許権者又は専用実施権者 実用新案権者又は専用実施権者 同じ構造
相手方 侵害する者又は侵害するおそれがある者 同じ。ただし実用新案法は括弧書きで「侵害者等」と定義 実用新案法では第29条の2などで「侵害者等」の語を使うため、ここで定義している
第2項の「物」の括弧書き 「物を生産する方法の特許発明にあつては、侵害の行為により生じた物を含む」 「プログラム等(…)を含む」 実用新案には「方法」の考案がないため、「物を生産する方法」の括弧書きが存在しない。代わりにプログラム等を含む旨が置かれている
権利行使の前提 条文上、特段の前提なし 第29条の2により、技術評価書の提示・警告が必要 実用新案は無審査登録のため(→第29条の2の記事)

〔表5〕特許法第100条と実用新案法第27条の対比。骨格は同じで、「方法」の有無と「侵害者等」の定義、第29条の2の前提が異なる。

3. 第28条の要件整理と、特許法第101条との対比

特許法第101条(柱書)次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
特許法第101条第1号特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
特許法第101条第2号特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
特許法第101条第3号特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為
特許法第101条第4号特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
特許法第101条第5号特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
特許法第101条第6号特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為
類型 特許法第101条 実用新案法第28条 対応関係
物の発明/考案:「のみ」品 第1号 第1号 対応あり。「生産」→「物品の製造」と言い換え
物の発明/考案:課題解決に不可欠な物+知りながら 第2号 第2号 対応あり。「特許発明」→「登録実用新案」、「発明」→「考案」
物の発明/考案:譲渡等・輸出のための所持 第3号 第3号 対応あり。文言は「譲渡等」(特)と「譲渡、貸渡し」(実)で異なる(〔表2〕下の確認先参照)
方法の発明:「のみ」品 第4号 なし 実用新案に「方法」の考案はない
方法の発明:不可欠な物+知りながら 第5号 なし 同上
物を生産する方法の発明:生産物の所持 第6号 なし 同上
「譲渡等」「譲渡等の申出」の定義の置き場所 特許法第2条第3項第1号(定義規定) 第28条第1号の括弧書き 実用新案法第2条第3項には「譲渡等」の語がないため、第28条第1号で括弧書き定義している

〔表6〕特許法第101条と実用新案法第28条の号の対応。特許法第101条第4号〜第6号(方法の発明に関するもの)に相当する号は、実用新案法第28条には存在しない(e-Gov法令検索で第28条は第3号までであることを確認、2026年9月)。

flowchart TD
  S["相手の行為(業として)"] --> Q1{"扱っている物は、登録実用新案に係る『物品そのもの』か?"}
  Q1 -->|"物品を作るための『物』(部品・材料・プログラム等)"| Q3{"その物品の製造に『のみ』用いる物か?"}
  Q3 -->|"はい"| R1["○ 第28条第1号 みなし侵害(主観は不要)"]
  Q3 -->|"いいえ(ほかの用途もある)"| Q4{"日本国内で広く一般に流通している物か?"}
  Q4 -->|"いいえ"| Q5{"課題の解決に不可欠な物か?"}
  Q4 -->|"はい"| N1["× 第28条第2号の対象外"]
  Q5 -->|"はい"| Q6{"登録実用新案であること+実施に用いられることを知っているか?"}
  Q5 -->|"いいえ"| N2["× 第28条第2号の対象外"]
  Q6 -->|"はい"| R2["○ 第28条第2号 みなし侵害"]
  Q6 -->|"いいえ"| N3["× 第28条第2号の対象外"]
  Q1 -->|"物品そのもの"| Q2{"譲渡・貸渡し・輸出のために『所持』しているか?"}
  Q2 -->|"はい"| R3["○ 第28条第3号 みなし侵害"]
  Q2 -->|"いいえ(製造・譲渡等をしている)"| R0["△ 第2条第3項の『実施』 → 直接侵害の検討"]
  style R1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style R2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style R3 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style N1 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F
  style N2 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F
  style N3 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F
  style R0 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
○ みなし侵害に当たる(第28条各号)
△ 第28条ではなく直接侵害として検討する
× その号の対象外

【図4】第28条の各号(みなし侵害の類型)の分岐図。判断は「はい」が下、「いいえ(対象外)」が右に来るように並べてある。第1号は「のみ」品なので主観要件がなく、第2号は「多用途品」を対象にする代わりに「広く一般に流通しているものを除く」「課題解決に不可欠」「知りながら」の3つの絞りがかかる。第3号は物品そのものの「所持」を対象とする。

特許法第101条(6号) 実用新案法第28条(3号)

第1号 物の発明 その物の生産に「のみ」用いる物 第1号 物品の考案 物品の製造に「のみ」用いる物

第2号 物の発明 課題解決に不可欠な物+知りながら 第2号 物品の考案 課題解決に不可欠な物+知りながら

第3号 物の発明 譲渡等又は輸出のための所持 第3号 物品の考案 譲渡、貸渡し又は輸出のための所持

第4号 方法の発明 その方法の使用に「のみ」用いる物 × 対応する号なし 実用新案に「方法」の考案がない

第5号 方法の発明 課題解決に不可欠な物+知りながら × 対応する号なし 実用新案に「方法」の考案がない

第6号 物を生産する方法の発明 その方法により生産した物の所持 × 対応する号なし 実用新案に「方法」の考案がない

図は左右にスクロールできます。

凡例
特許法第101条の号
実用新案法第28条に対応する号がある
点線=対応する号がない
×対応する号なしの印

【図5】特許法第101条と実用新案法第28条の号の対比(〔表6〕を図にしたもの)。左右の段・箱の大きさ・高さをそろえてあり、第4号〜第6号(方法の発明)に対応する号が実用新案法にないことが、右側の点線+×で読み取れる。※条文の正確な文言は各原文を参照。

4. 第28条第2号の要件を分解する

要件 条文の文言 読み方のポイント
対象物 「登録実用新案に係る物品の製造に用いる物」 第1号の「のみ」がない。多用途の物でもよい
除外 「日本国内において広く一般に流通しているものを除く」 通常のねじ・釘などの一般流通品を除外。名称だけでなく用途・流通実態を確認
客観的要件 「その考案による課題の解決に不可欠なもの」 単に使われる物ではなく、課題解決に不可欠であること
主観的要件 「その考案が登録実用新案であること及びその物がその考案の実施に用いられることを知りながら」 2つの「知っていること」が「及び」で結ばれている(両方が必要)
行為 「業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出」 第1号と同じ行為類型。「使用」は含まれていない

〔表7〕第28条第2号の要件分解。特許法第101条第2号と同じ構造なので、特許法で学んだ整理がそのまま使える。

根拠資料との照合:第28条第2号では、生産に用いる物であるだけでは足りず、課題解決に不可欠で、国内で広く一般に流通する物ではなく、登録実用新案であることと実施に用いられることを知っている必要があります。一般流通品の例は通常のねじや釘ですが、名称だけで判断せず用途・流通の実態を見ます。特許法第101条第2号についての知財高裁平成17年9月30日判決(一太郎事件・30〜33頁)は、ソフトの導入で発明の機能が初めて実現されることから不可欠性を認めました。また、広く一般に流通する物とは、他の用途にも使え、市場で一般に入手できる規格品・普及品などをいうと説明しています。これは特許事件の判示を共通の文言の参考として紹介するものです。青本第22版・第28条(冊子1013〜1014頁)/一太郎事件判決。

5. 第29条の2との接続(本記事では扱わない)

実用新案法第29条の2実用新案権者又は専用実施権者は、その登録実用新案に係る実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ、自己の実用新案権又は専用実施権の侵害者等に対し、その権利を行使することができない。

第27条の差止請求権も、第28条によるみなし侵害に対する権利行使も、「侵害者等」に対して「権利を行使する」ものですから、第29条の2の手順(実用新案技術評価書の提示・警告)を経る必要があります。この手順の内容、警告の意味、無効になった場合の責任(第29条の3)は、第29条の2の記事に譲ります。本記事では「第27条・第28条の権利は、第29条の2の手順を経て行使する」という接続関係だけを押さえてください。

特許庁「知的財産権制度入門テキスト(2025)第2節 実用新案制度の概要」は、実用新案権を行使する場合には実用新案技術評価書を提示して警告した後でなければならないこと(第29条の2)を説明しています(同テキスト、2026年9月参照)。

6. 試験での問われ方

試験種別 問われ方の傾向(本記事作成者の整理) 気をつける点
短答式 実用新案法第28条に「方法」に関する号があるかのように見せる枝、第2号の主観要件(「知りながら」)の有無を入れ替える枝、差止請求権者に通常実施権者を含める枝など、特許法第100条・第101条との「違い」を突く形が考えられる 実用新案法第28条は第3号まで。第1号・第3号に主観要件はなく、第2号のみ「知りながら」がある
論文式 部品を販売する第三者に対する権利行使の可否を問う設問で、第28条第1号・第2号の当てはめと、第29条の2の手順(技術評価書の提示・警告)をセットで論じさせる形が考えられる 第27条第2項の廃棄・除却請求は「第1項の請求をするに際し」行うものである点を落とさない
口述 「なぜ実用新案法には特許法第101条第4号〜第6号に相当する規定がないか」「侵害者等とは何か」といった、条文構造の理解を確認する問いが考えられる 「実用新案には方法の考案がない」ことと、第27条第1項括弧書きの定義を条文の位置とともに答えられるようにする

〔表8〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

根拠資料との照合:問6の肢2は、第28条のみなし侵害行為が刑事罰の対象にもなるかを直接扱っています。実用新案法第56条は第28条により侵害とみなされる行為を含めており、肢2は誤りです。問6の正解は3です。問16の正解は3で、肢4は技術評価請求と実用新案登録に基づく特許出願の関係を問う別論点です。 令和8年度の問題/公式解答。肢ごとの説明は条文との照合によるもので、公式解答が示す正解番号と区別しています。
レベル3のまとめ

  • 第27条第1項の請求権者は実用新案権者又は専用実施権者。相手方は「侵害者等」(侵害する者又は侵害するおそれがある者)で、この定義は第29条の2でも使われる。
  • 第27条第2項の廃棄・除却等は「前項の規定による請求をするに際し」請求するもの。「物」にはプログラム等(特許法第2条第4項)を含む。特許法第100条第2項の「物を生産する方法」の括弧書きは、実用新案法にはない。
  • 第28条は第1号(のみ品)・第2号(課題解決に不可欠な物+知りながら)・第3号(譲渡・貸渡し・輸出のための所持)の3つ。特許法第101条第4号〜第6号(方法の発明)に相当する号はない。
  • 「譲渡等」「譲渡等の申出」の定義は、実用新案法では第28条第1号の括弧書きに置かれている。
  • 権利行使には第29条の2(技術評価書の提示・警告)の手順が前提となる(詳細は第29条の2の記事)。

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