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小学生でも分かる意匠法|意匠法第10条・第22条 関連意匠・関連意匠の意匠権の移転 ― 「きょうだいデザイン」をひとまとめに守るしくみ

小学生でもわかる意匠法 9:関連意匠(第10条・第22条)

小学生でも分かる意匠法 / A. 登録要件・意匠 #9

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一つのデザインから、少しずつ形を変えた「きょうだい」のデザインがたくさん生まれます。意匠法は、似ているデザイン同士は本来どちらか一方しか登録できない決まり(先願)を置きつつ、同じ人が出した「きょうだい」については例外的にまとめて登録できるようにしています。これが関連意匠です。令和元年改正で、出せる期間が大きく延び、「きょうだいのきょうだい」(連鎖)まで認められるようになりました。

条文:意匠法第10条(第1項〜第8項)・第22条(第1項・第2項)、あわせて第21条第2項・第27条審査基準:意匠審査基準 第V部「関連意匠」参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「本家のコップ」と「きょうだいのコップ」

たとえば、あなたが新しい形のコップをデザインしたとします。これを本家のデザイン(本意匠)として意匠登録しました。ところが、お店に並べてみると「取っ手をちょっと大きくしたもの」「口のところを少し広げたもの」も売りたくなりました。これらは本家によく似たきょうだいのデザイン(関連意匠)です。

ふつう、意匠の世界では「似ているデザインは、先に出した一つしか登録できない」というルール(先願)があります。でも、同じ人が作った「きょうだい」までダメにしてしまうと、デザインを育てていくことができません。そこで意匠法は、同じ人が出した、本家に似ているデザインなら、本家とセットで登録してよいという特別ルールを置きました。これが「関連意匠」です。

本家のコップ (本意匠・基礎意匠)

きょうだいA 取っ手が大きい

きょうだいB 口が広い

きょうだいAのきょうだい Aには似ているが本家には似ていない (連鎖する関連意匠・現行のみOK)

似ている 似ている 似ている

同じ人が出した「本家」と「きょうだい」は、セットで登録できる

図は左右にスクロールできます。

【図1】本家(本意匠・基礎意匠)と、きょうだい(関連意匠)、きょうだいのきょうだい(連鎖する関連意匠)。物品はすべて架空の例。

セットで登録するための、4つの約束

① 同じ人が出す(本家の持ち主と同じ人)
② 本家に似ている(まったく同じはダメ)
③ 本家を出した日から10年たつ前に出す
④ 登録のとき、本家の権利がなくなっていない

そして、セットで登録したからには、本家ときょうだいをバラバラに売ること(分けて移転すること)はできません。似ているデザインの権利が別々の人の手にわたると、どちらの権利かわからなくなって世の中が混乱するからです。

「きょうだいのきょうだい」も、いまはOK

昔のルール(令和元年改正より前)では、きょうだいは「本家に似ているもの」だけで、「きょうだいAにだけ似ていて本家には似ていないもの」は登録できませんでした。いまのルールでは、きょうだいAを新しい本家とみなして、その先へ「連鎖」させることができます。ただし、期限(10年)は、いちばん最初の本家(基礎意匠)を出した日から数えます。

レベル1のまとめ

  • 関連意匠=同じ人が出した、本家(本意匠)に似ているデザイン。本家とセットで登録できる。
  • 本家を出した日から10年たつ前に出す。登録のときに本家の権利が生きていること。
  • 本家ときょうだいは、分けて移転できない(第22条)。
  • いまは「きょうだいのきょうだい」(連鎖)も登録できる。期限は最初の本家の出願日から数える。

※「本家の権利がなくなっている」の中身、専用実施権があるときの扱い、新規性のルールとの関係、秘密意匠との関係などは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第10条第1項 ― 関連意匠の登録要件(本体)

意匠法第10条第1項(原文)
意匠登録出願人は、自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠(以下「本意匠」という。)に類似する意匠(以下「関連意匠」という。)については、当該関連意匠の意匠登録出願の日(第十五条第一項において準用する特許法第四十三条第一項、第四十三条の二第一項又は第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による優先権の主張を伴う意匠登録出願にあつては、最初の出願若しくは千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の日。以下この項において同じ。)がその本意匠の意匠登録出願の日以後であつて、当該本意匠の意匠登録出願の日から十年を経過する日前である場合に限り、第九条第一項又は第二項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができる。ただし、当該関連意匠の意匠権の設定の登録の際に、その本意匠の意匠権が第四十四条第四項の規定により消滅しているとき、無効にすべき旨の審決が確定しているとき、又は放棄されているときは、この限りでない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

長い条文ですが、括弧の中(優先権主張を伴う出願の場合は「最初の出願の日」で判断する、という部分)を外して読むと、骨格は次の5つの部品に分かれます。

部品 条文の文言(抜粋) 意味
① 誰が 「意匠登録出願人は、自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠(以下「本意匠」という。)」 本意匠は「自己の」出願中の意匠か登録意匠。出願人が本意匠を選ぶ。
② 何を 「に類似する意匠(以下「関連意匠」という。)」 本意匠に類似する意匠。同一の意匠は含まれない(→レベル3)。
③ いつ 「がその本意匠の意匠登録出願の日以後であつて、当該本意匠の意匠登録出願の日から十年を経過する日前である場合に限り」 関連意匠の出願日が、本意匠の出願日以後、かつ本意匠の出願日から10年を経過する日前。
④ 効果 「第九条第一項又は第二項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができる」 先願(第9条第1項・第2項)の例外として登録できる。
⑤ ただし書 「当該関連意匠の意匠権の設定の登録の際に、その本意匠の意匠権が第四十四条第四項の規定により消滅しているとき、無効にすべき旨の審決が確定しているとき、又は放棄されているときは、この限りでない」 関連意匠の設定登録の際に、本意匠の意匠権が①登録料不納で消滅(第44条第4項)、②無効審決確定、③放棄のいずれかなら登録不可。

〔表1〕意匠法第10条第1項の分解。括弧書き(優先権主張を伴う出願の判断日)は省略。

関連意匠制度の趣旨と沿革(逐条解説)。特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』1281〜1282頁は、昭和34年の現行法制定時には、バリエーションの意匠群を一の登録意匠(本意匠)とその登録意匠に類似する意匠(類似意匠)として保護する類似意匠制度が設けられていたが、侵害訴訟の場では類似意匠は本意匠の効力範囲を定める際に参酌されるものにとどまり、侵害のおそれのある意匠が本意匠よりも類似意匠に類似している場合でも、本意匠の意匠権の侵害の成否としてのみ訴訟が進められていた、と説明しています。バリエーションの意匠群は創作の観点からは同等の価値を有するにもかかわらず、登録された意匠が本意匠か類似意匠かによって権利の効力範囲に差異が出るという事態が生じていたため、平成10年改正で類似意匠制度を廃止し、一のデザイン・コンセプトから創作されたバリエーションの意匠を同等の価値を有するものとして保護し、各々について権利行使を可能とする関連意匠制度を創設した、とされています。
同書1282〜1283頁によれば、平成10年の創設時は本意匠と同日の出願に限られていたものが、平成18年改正で本意匠の意匠公報発行の前日までの後日出願も認められ、これにより第10条第1項は第9条第2項だけでなく第9条第1項の例外にもなりました。さらに令和元年改正では、公報発行の日前までという期限では長期的な市場動向等に応じて製品デザインを保護できないという指摘を受けて、本意匠の出願の日から10年までの間に出願された関連意匠を登録できることとしたと説明されています。第1項ただし書については、10年の期間中であっても登録料未納等により本意匠の意匠権が消滅した後まで関連意匠の登録を認めると、一度本意匠の消滅によりパブリック・ドメインとなった意匠が、後に登録された関連意匠の権利範囲に含まれてしまい第三者の利益を害するおそれがあるため、関連意匠の設定登録時に本意匠の意匠権が存続していることを要件とした、と述べられています。
関連意匠を出願できる期間 ― 改正前/現行

令和2年4月1日 (令和元年法律第3号)施行日

改正前 令和2年3月31日 以前の出願 発行後は不可 本意匠の出願日 本意匠の意匠公報発行日

現行 令和2年4月1日 以後の出願 10年 経過後は不可 本意匠の出願日 基礎意匠の出願日から 10年を経過する日

結論:起点はどちらも本意匠の出願日。締切が「本意匠の意匠公報の発行日前」から 「基礎意匠の出願日から10年を経過する日前」に変わった(第10条第1項・第5項)。

破線の帯=改正前に出願できた期間 実線の帯=現行で出願できる期間 丸=時点(出願日など) ×=出願できない

図は左右にスクロールできます。

【図2】関連意匠を出願できる期間の改正前/現行の比較。縦の破線は令和元年法律第3号の施行日(令和2年4月1日)。改正前の締切(本意匠の意匠公報の発行日前)は改正解説書 第6章の記述に基づく要旨(→レベル3の〔表7〕)。連鎖がない場合は本意匠=基礎意匠。施行日は特許庁「令和元年意匠法改正特設サイト」(2026年9月参照)による。関連意匠の出願が2020年4月1日以後かどうかで、附則第2条第1項による適用を判断します。参照時点:2026年9月。(時間軸は縮尺なし)

第10条第2項 ― 本意匠が公知になっても、関連意匠の新規性・創作非容易性は否定しない

意匠法第10条第2項(原文)
第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた自己の意匠のうち前項の規定により意匠登録を受けようとする意匠の本意匠と同一又は類似のものは、当該意匠登録を受けようとする意匠についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかつたものとみなす。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

関連意匠は本意匠の意匠公報が出た後(=本意匠が公知になった後)でも出願できるので、そのままだと「本意匠に似ている=公知意匠に似ている」として新規性(第3条第1項)で拒絶されてしまいます。そこで、自己の意匠のうち本意匠と同一又は類似のものは、関連意匠の新規性・創作非容易性の判断では公知にならなかったものとみなす、という手当てです。青本〔第22版〕1283頁も、本意匠の意匠公報発行後に関連意匠を出願した場合には、出願時に本意匠が意匠公報発行や自己実施などにより公知となっていることが考えられ、第3条第1項第1号又は第2号の意匠に該当するとして本意匠と類似する関連意匠の出願が拒絶されてしまうことを避けるための規定だと説明しています。

第10条第3項 ― 第3条の2ただし書の読替え(秘密意匠の場合)

意匠法第10条第3項(原文)
第一項の規定により意匠登録を受けようとする意匠についての第三条の二ただし書の規定の適用については、同条ただし書中「同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)」とあるのは、「当該先の意匠登録出願について第十四条第一項の規定により秘密にすることを請求したときは、第二十条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものに限る。)」とする。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

要旨:第3条の2ただし書(同一出願人の後願は、先願の意匠公報発行日前の出願なら第3条の2を適用しない)を関連意匠に当てはめる際、本意匠が秘密意匠(第14条第1項)であるときは、図面等(第20条第3項第4号の事項)が掲載された公報(第20条第4項)を基準にする、という読替えです。

第10条第4項・第5項 ― 連鎖する関連意匠と「最初に選択した一の意匠」

意匠法第10条第4項(原文)
第一項の規定により意匠登録を受ける関連意匠にのみ類似する意匠については、当該関連意匠を本意匠とみなして、同項の規定により意匠登録を受けることができるものとする。当該意匠登録を受けることができるものとされた関連意匠にのみ類似する意匠及び当該関連意匠に連鎖する段階的な関連意匠にのみ類似する意匠についても、同様とする。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
意匠法第10条第5項(原文)
前項の場合における第一項の規定の適用については、同項中「当該本意匠」とあるのは、「当該関連意匠に係る最初に選択した一の意匠」とする。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

第4項が「連鎖」を認める規定、第5項がその場合の10年の起算点を最初に選択した一の意匠(=基礎意匠)の出願日にそろえる規定です。第1項の「当該本意匠の意匠登録出願の日から十年」の「当該本意匠」が読み替えられるので、連鎖の何段目であっても、締切は基礎意匠の出願日から10年です。

第4項・第5項の趣旨(逐条解説)。青本〔第22版〕1284頁は、令和元年改正前は、改正前第3項において、関連意匠にのみ類似する意匠については類似の無限連鎖を回避するためとして意匠登録しない旨が規定されていたが、一貫したデザイン・コンセプトに基づいて市場動向等を踏まえ製品等のデザインを長期的に進化させていくためには類似する意匠を連鎖的に保護すべきとの指摘があったことから、改正前第3項を削除した上で第4項を新設したと説明しています。第5項については、第4項により登録される関連意匠の出願時期を「本意匠とみなされた関連意匠の出願から10年」としてしまうと、関連意匠の連鎖によって一つの意匠群が永続的に保護されてしまい適切でないため、最初に選択した本意匠の出願から10年までとする読替規定を設けたとされています。
flowchart LR
  K["基礎意匠
(最初に選択した一の意匠)"] -- "類似" --> A["関連意匠A
本意匠=基礎意匠"] A -- "Aにのみ類似" --> B["関連意匠B
本意匠=A(第4項)"] B -- "Bにのみ類似" --> C["関連意匠C
本意匠=B(第4項)"] K -. "10年の起算点はここ(第5項)" .-> C style K fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図3】連鎖する関連意匠。各段の「本意匠」は直前の関連意匠だが、10年の起算点は基礎意匠の出願日。凡例:緑の箱=基礎意匠(最初に選択した一の意匠)/実線の矢印=類似関係にもとづく連鎖/点線の矢印=10年の起算点を示す参照線(手続の流れではない)。

第10条第6項 ― 本意匠に専用実施権があると登録できない

意匠法第10条第6項(原文)
本意匠の意匠権について専用実施権が設定されているときは、その本意匠に係る関連意匠については、第一項及び第四項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
第6項の趣旨(逐条解説)。青本〔第22版〕1284〜1285頁は、第6項が平成18年改正により(当時の第2項として)新設された規定であり、本意匠の意匠公報発行の日前までの後日出願による関連意匠の登録を認めたことで、いったん本意匠やその関連意匠に専用実施権が設定された後に、第27条第1項ただし書(基礎意匠及び全ての関連意匠について同一の者に同時に設定する場合に限る)に違反する関連意匠の出願がされる可能性が高まるため、既に専用実施権を設定した本意匠に対しては関連意匠の登録を受けることができないものとした、と説明しています。

第10条第7項・第8項 ― 関連意匠同士の先願不適用と、新規性の例外の拡張

意匠法第10条第7項(原文)
関連意匠の意匠登録出願があつた場合において、当該意匠登録出願が基礎意匠(当該関連意匠に係る最初に選択した一の意匠をいう。以下同じ。)に係る関連意匠(当該基礎意匠の関連意匠及び当該関連意匠に連鎖する段階的な関連意匠をいう。以下同じ。)にそれぞれ該当する二以上の意匠の意匠登録出願であつたときは、これらの意匠については、第九条第一項又は第二項の規定は、適用しない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
意匠法第10条第8項(原文)
前項に規定する場合において、第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた自己の意匠のうち当該基礎意匠に係る関連意匠(当該関連意匠の意匠登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、若しくは当該関連意匠の意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したとき、又は当該関連意匠の意匠権が第四十四条第四項の規定により消滅したとき、無効にすべき旨の審決が確定したとき、若しくは放棄されたときを除く。)と同一又は類似のものは、第一項の規定により意匠登録を受けようとする意匠についての第三条第一項及び第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかつたものとみなす。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

「基礎意匠」「基礎意匠に係る関連意匠」という用語は、この第7項の括弧書きで定義され、第21条・第22条・第27条でもそのまま使われます。

第7項・第8項の趣旨(逐条解説)。青本〔第22版〕1285頁は、第7項について、第1項で第9条第1項・第2項の適用除外が定められたのと同じように、ある本意匠に係る複数の関連意匠が登録される場合にそれらが相互に類似しているときも第9条第1項・第2項が適用されない旨を確認的に規定したものだと説明しています。令和元年改正で連鎖する関連意匠も登録できるようになったことから、最初に選択した本意匠を基礎意匠と定義したうえで、基礎意匠の関連意匠及びこれに連鎖する段階的な関連意匠が複数登録される場合にも同様とした、とされています。
第8項について同書1285〜1286頁は、関連意匠同士における第3条第1項・第2項の例外規定であるとしたうえで、出願中の関連意匠のうち放棄等によって最終的に登録されなかった意匠と同一・類似の意匠については適用除外とするのは適切でないこと、意匠登録された関連意匠のうち既に意匠権が消滅したものと同一・類似の意匠まで除外すると一度パブリック・ドメインとなった意匠の意匠権が復活することとなることから、これらを適用除外の対象から除いたと説明しています(→レベル3の〔表5〕)。
項 役割 ひとことで
第1項 関連意匠の登録要件(本体)+ただし書 自己・類似・本意匠出願日以後10年前・先願の例外・設定登録時に本意匠権が生きている
第2項 新規性・創作非容易性の例外(本意匠と同一・類似の自己の公知意匠) 本意匠が公知でも関連意匠は拒絶しない
第3項 第3条の2ただし書の読替え 本意匠が秘密意匠なら図面掲載公報を基準
第4項 連鎖する関連意匠 関連意匠にのみ類似する意匠も、その関連意匠を本意匠とみなして登録可
第5項 連鎖のときの10年の起算点 最初に選択した一の意匠(基礎意匠)の出願日
第6項 専用実施権による制限 本意匠に専用実施権があれば関連意匠は登録不可
第7項 関連意匠同士の先願不適用・用語の定義 同じ基礎意匠に係る関連意匠同士には第9条を適用しない
第8項 新規性・創作非容易性の例外の拡張 基礎意匠に係る関連意匠と同一・類似の自己の公知意匠も除外(消滅等した関連意匠を除く)

〔表2〕意匠法第10条の項ごとの役割一覧。

第22条 ― 基礎意匠と関連意匠の意匠権は「分離して移転できない」

意匠法第22条第1項(原文)
基礎意匠及びその関連意匠の意匠権は、分離して移転することができない。
意匠法第22条第2項(原文)
基礎意匠の意匠権が第四十四条第四項の規定により消滅したとき、無効にすべき旨の審決が確定したとき、又は放棄されたときは、当該基礎意匠に係る関連意匠の意匠権は、分離して移転することができない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
第22条の趣旨(逐条解説)。青本〔第22版〕1312〜1313頁は、第22条がもともと類似意匠の意匠権に関する規定であったところ、平成10年改正で関連意匠制度が創設されたことに伴い、本意匠及びその関連意匠の意匠権について分離して移転できない旨等を定める規定に改められ、令和元年改正で「基礎意匠」の定義が置かれたことに伴い現在の形になったと説明しています。
第1項の理由として同書は、基礎意匠及びその関連意匠の意匠権について、それらの一部のみが移転された場合や別々の者に移転された場合には、重複部分について二以上の者に排他権が成立することになり、同一意匠権者の下でのみ権利の重複を認める関連意匠制度の制度趣旨に反することを挙げています。第2項については、存続期間の満了以外の理由で基礎意匠の意匠権が消滅した場合に、その基礎意匠に複数の関連意匠が登録されているときは、一度設定された権利関係の安定を図るために、それらの関連意匠の意匠権も分離して移転することができないものとした、と説明しています。

一つのグループ(基礎意匠+その関連意匠) 基礎意匠 関連意匠A 関連意匠B 関連意匠C

全部まとめて 譲受人 乙 OK(第22条第1項)

関連意匠Aだけ 丙へ → NG

基礎意匠の意匠権が消滅・無効・放棄されても、 残った関連意匠A・B・C同士は分離して移転できない (第22条第2項)

基礎意匠・関連意匠(一つのグループ) 実線の太矢印=まとめて移転(可) 赤の破線=分離しての移転(不可)

図は左右にスクロールできます。

【図4】意匠権の移転の相関図。基礎意匠と関連意匠は一体で移転する(意匠法第22条。e-Gov法令検索、2026年9月参照)。

あわせて読む:第27条(専用実施権)と第21条第2項(存続期間)

意匠法第27条第1項(原文)
意匠権者は、その意匠権について専用実施権を設定することができる。ただし、基礎意匠又は関連意匠の意匠権についての専用実施権は、基礎意匠及び全ての関連意匠の意匠権について、同一の者に対して同時に設定する場合に限り、設定することができる。
意匠法第27条第3項(原文)
基礎意匠の意匠権が第四十四条第四項の規定により消滅したとき、無効にすべき旨の審決が確定したとき、又は放棄されたときは、当該基礎意匠に係る関連意匠の意匠権についての専用実施権は、全ての関連意匠の意匠権について同一の者に対して同時に設定する場合に限り、設定することができる。
意匠法第21条第2項(原文)
関連意匠の意匠権の存続期間は、その基礎意匠の意匠登録出願の日から二十五年をもつて終了する。

出典:いずれも e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
場面 条文 ルール 基礎意匠の意匠権が消滅・無効・放棄された後
移転 第22条第1項 基礎意匠と関連意匠は分離して移転できない 第22条第2項:関連意匠同士も分離不可
専用実施権の設定 第27条第1項ただし書 基礎意匠と全ての関連意匠について、同一の者に同時に設定する場合に限る 第27条第3項:全ての関連意匠について同一の者に同時
存続期間 第21条第2項 基礎意匠の出願日から25年(本意匠の登録日・自身の出願日ではない) ―(存続期間は変わらない)
登録の可否 第10条第1項ただし書・第6項 設定登録時に本意匠権が消滅等していると不可/本意匠に専用実施権があると不可 審査基準 第V部 3.4.1 の注記参照(→レベル3)

〔表3〕基礎意匠と関連意匠を「一体」として扱う規定の一覧。

第21条第2項の沿革(逐条解説)。青本〔第22版〕1311〜1312頁は、第21条第2項が平成10年改正で新設された規定であり、本意匠とその関連意匠の意匠権については権利の重複部分が生ずることから、関連意匠の意匠権の設定登録が本意匠の意匠権に遅れた場合でも権利の重複部分について実質的な延長が生じないように、関連意匠の存続期間の終期は本意匠の設定登録の日から起算する旨を規定していたと説明しています(ただし、存続期間の満了以外の理由 ― 意匠権の放棄、登録料の不納付、無効審決の確定 ― で本意匠の意匠権が消滅した場合は、関連意匠の意匠権は存続するものとされていました)。その後、令和元年改正で意匠権の存続期間が意匠登録出願の日から25年に変更され、第10条第7項で基礎意匠が定義されたことに伴い、関連意匠の意匠権の存続期間も基礎意匠の意匠登録出願の日から25年とする改正が行われた、とされています。なお同書1311頁は、意匠権の存続期間の終期が、旧法(大正10年法)の設定の日から10年、昭和34年の現行法で15年、平成18年改正で20年と延長され、令和元年改正で起算日を出願時に改めたうえで25年とされた経緯を説明しています。
レベル2のまとめ

  • 第10条第1項:自己の意匠を本意匠に選び、それに類似する意匠を、本意匠の出願日以後・10年を経過する日前に出願すれば、第9条にかかわらず登録できる。ただし設定登録時に本意匠権が第44条第4項で消滅・無効審決確定・放棄なら不可。
  • 第2項・第8項:本意匠・基礎意匠に係る関連意匠と同一・類似の自己の公知意匠は、関連意匠の第3条第1項・第2項の判断で公知にならなかったものとみなす。
  • 第4項・第5項:関連意匠にのみ類似する意匠も連鎖して登録可。10年は基礎意匠の出願日から。
  • 第6項:本意匠に専用実施権があると関連意匠は登録不可。第7項:同じ基礎意匠に係る関連意匠同士に第9条を適用しない。
  • 第22条:基礎意匠と関連意匠の意匠権は分離して移転できない(基礎意匠が消滅等した後の関連意匠同士も同じ)。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 審査基準 第V部が整理する要件と、拒絶理由・無効理由の対応

意匠審査基準 第V部「関連意匠」は、3.3で「関連意匠として意匠登録を受けるための要件」を、3.4で「本意匠等が満たすべき要件」を整理しています。審査基準は関連意匠制度の趣旨を、「創作された群の意匠について、同一出願人から出願された場合に限り、同等の価値を有するものとして保護」するものと説明しています。

審査基準の項目 要件 根拠条文 拒絶理由(第17条) 無効理由(第48条第1項)
3.3.1 本意匠と同一の意匠登録出願人による出願 第10条第1項 該当(第1号) 非該当
3.3.2 本意匠に類似する意匠に係る出願(同一は不可) 第10条第1項 該当(第1号) 非該当
3.3.3 基礎意匠の出願日以後、10年を経過する日前の出願 第10条第1項(第5項) 該当(第1号) 非該当
3.4.1 本意匠の意匠権が消滅等(第44条第4項の消滅・無効審決確定・放棄)していないこと 第10条第1項ただし書 該当(第1号) 非該当
3.4.2 本意匠の意匠権に専用実施権が設定されていないこと 第10条第6項 該当(第1号) 該当(第1号)
― 関連意匠にのみ類似する意匠の連鎖 第10条第4項 該当(第1号) 非該当

〔表4〕関連意匠の要件と、拒絶理由・無効理由の対応。第17条第1号は「第十条第一項、第四項若しくは第六項」を、第48条第1項第1号は「第十条第六項」のみを掲げる(いずれもe-Gov、2026年9月参照)。

ポイント:第10条第1項・第4項の要件違反は拒絶理由ではあるが無効理由ではないのに対し、第6項(専用実施権)違反は拒絶理由でも無効理由でもある、という条文上の帰結になります。第1項・第4項が無効理由から外されている理由について、青本〔第22版〕1363頁は、平成10年改正の際、第17条の拒絶査定をすべき理由としては第10条第1項と第2項が規定されているが、意匠登録された後に本意匠と関連意匠が類似していないという理由で意匠登録を無効とするのは意匠権者にとって酷であることから、第10条第1項に関しては無効にすべき理由から外すこととした、と説明しています。第10条第4項についても、同頁で「一〇条一項と同様の理由で無効理由から除外している」とされています。他方、第6項(平成18年改正で当時の第10条第2項として新設され、令和元年改正で第6項に移動したもの)は、第27条第1項ただし書に違反する関連意匠の出願を防ぐ趣旨から、引き続き無効理由として規定されていると説明されています(同書1363頁)。

2. 「同一」は不可、「類似」のみ ― 判断の基準日

審査基準は「関連意匠と本意匠とが同一である場合は、関連意匠として意匠登録を受けることができない」と述べています。また、第10条第1項の判断の基準日について、審査基準 第V部 3.2 は、優先権主張の効果がある場合は「第一国の出願日を判断の基準日とする」、分割・変更・補正後の新出願の場合は「出願日の遡及が認められたもとの出願の出願日あるいは手続補正書の提出日を判断の基準日とする」、国際意匠登録出願の場合は「意匠登録出願がされたとみなされる国際登録の日を判断の基準日とする」と整理しています。

3. 登録可否の分岐図

flowchart TB
  S["関連意匠の意匠登録出願"] --> Q1{"本意匠と同一の出願人か?"}
  Q1 -- "はい" --> Q2{"本意匠に類似するか?
(同一は不可)"} Q1 -- "いいえ" --> N1["第10条第1項違反 → 拒絶(第17条第1号)"] Q2 -- "はい" --> Q3{"出願日が、本意匠の出願日以後で
基礎意匠の出願日から10年を経過する日前か?"} Q2 -- "いいえ" --> N1 Q3 -- "はい" --> Q4{"本意匠の意匠権に
専用実施権が設定されていないか?"} Q3 -- "いいえ" --> N1 Q4 -- "はい(設定なし)" --> Q5{"設定登録の際、本意匠の意匠権は存続しているか?
(第44条第4項の消滅・無効審決確定・放棄でない)"} Q4 -- "いいえ(設定あり)" --> N2["第10条第6項違反 → 拒絶(第17条第1号)・無効理由(第48条第1項第1号)"] Q5 -- "はい" --> Y["関連意匠として登録
(第9条第1項・第2項は適用されない)"] Q5 -- "いいえ" --> N3["第10条第1項ただし書 → 登録不可"] style Y fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style N1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N3 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図5】関連意匠の登録可否の分岐図(第10条と審査基準 第V部 3.3・3.4を本記事作成者がフロー化したもの。新規性等の一般要件は別途判断される)。各分岐は要件を満たすなら「はい」で下へ、満たさないなら「いいえ」で右の登録不可へ進む。凡例:緑=関連意匠として登録できる/赤=登録できない。

4. 新規性・創作非容易性の例外(第2項・第8項)の射程

審査基準 第V部 3.7 は、「公知となった、関連意匠の出願人の意匠のうち、基礎意匠及び基礎意匠に係る関連意匠と同一又は類似する意匠については、当該関連意匠の新規性及び創作非容易性の判断の基礎となる資料から除外する」と説明しています。「自己の意匠」については、「自己の意匠とは、関連意匠の出願人自らが意匠権を有する意匠、又は意匠登録を受ける権利を有している意匠をいう」とし、他人の意匠は含まれません。

公知になった意匠 関連意匠の新規性・創作非容易性の判断 根拠
自己の意匠で、本意匠と同一又は類似のもの 資料から除外 第10条第2項
自己の意匠で、基礎意匠に係る関連意匠(連鎖を含む)と同一又は類似のもの 資料から除外 第10条第8項
上記のうち、出願が放棄・取下げ・却下、拒絶査定・審決確定、意匠権が第44条第4項で消滅・無効審決確定・放棄となった関連意匠と同一又は類似のもの 除外しない(審査基準 3.7.3「第10条第8項の規定の適用をせず」) 第10条第8項括弧書
自己の意匠で、基礎意匠にも関連意匠にも類似しないもの 除外しない ―
他人の意匠 除外しない 審査基準 3.7.1・3.7.4

〔表5〕第10条第2項・第8項による「公知にならなかったものとみなす」範囲。

自己の公知意匠を除外できる公開時期は、第V部3.7.2の三つの場合です。基礎意匠と同一・類似なら基礎意匠の出願時以降、関連意匠と同一・類似なら対応する各関連意匠の出願時以降、又は基礎意匠・関連意匠で新規性喪失の例外が適用されたものです。優先権の効果が認められる場合は第一国出願日で判断し、外国公開では時差も考慮します。3.7.5の部分意匠では登録を受けようとする部分に相当する部分だけを除外します。3.7.6では他の創作物が加わっていても自己の意匠を区別して認識できれば、加えられたものを除いた自己の意匠を除外します。 出典

5. 第9条(先願)・第3条の2との関係

規定 関連意匠での扱い 根拠
第9条第1項・第2項(先願):本意匠と関連意匠の間 「第九条第一項又は第二項の規定にかかわらず」登録できる 第10条第1項
第9条第1項・第2項:同じ基礎意匠に係る関連意匠同士の間 適用しない。審査基準は「一の基礎意匠に係る関連意匠同士が類似する場合であっても、意匠法第9条の規定は適用しない」とし、「基礎意匠が消滅した場合に存続する関連意匠同士についても同様」と説明 第10条第7項、審査基準 第V部 3.5
第3条の2(先願意匠の一部と同一又は類似) 審査基準は「先の意匠登録出願の出願人と関連意匠の出願人とが同一である場合は、意匠法第3条の2において規定する、先願意匠の一部と同一又は類似の後願意匠の保護除外の規定は適用しない」と説明。本意匠が秘密意匠のときは第10条第3項の読替えで図面掲載公報が基準 第3条の2ただし書、第10条第3項、審査基準 第V部 3.6

〔表6〕先願・第3条の2と関連意匠の関係。

6. 改正前(令和2年3月31日以前の出願)/現行 の対比

令和元年法律第3号による改正(令和2年4月1日施行)で、関連意匠制度は大きく変わりました。改正解説書 第6章は、改正前は関連意匠の出願が「本意匠の意匠公報発行の日前」に限られ、また「関連意匠にのみ類似する意匠については、意匠登録を受けることができない」とされていたため、「長期的な市場動向等に応じて関連意匠を保護することはできず」、「類似する意匠を連鎖的に保護することができないことから、進化していく意匠を保護することができない」という課題があったと述べています。

論点 改正前(令和2年3月31日以前の出願)*要旨 現行(令和2年4月1日以後の出願)
関連意匠を出願できる期間 本意匠の出願日以後、本意匠の意匠公報の発行日前 本意匠の出願日以後、基礎意匠の出願日から10年を経過する日前(第10条第1項・第5項)
関連意匠にのみ類似する意匠 登録不可 その関連意匠を本意匠とみなして登録可(連鎖)(第10条第4項)
「基礎意匠」の概念 なし あり(第10条第7項で定義。存続期間・移転・専用実施権の基準)
本意匠公知後の新規性 公報発行前の出願に限られたため、本意匠の公報による公知は原則問題にならなかった 第10条第2項・第8項で自己の本意匠等と同一・類似の公知意匠を除外
設定登録時に本意匠権が消滅等しているとき ― 登録不可(第10条第1項ただし書)。改正解説書は「一度本意匠の消滅によりパブリック・ドメインとなった意匠が、後に登録された関連意匠の権利範囲に含まれてしまい、第三者を害するため」と説明
存続期間 関連意匠の意匠権の存続期間の終期は本意匠の設定登録の日から起算(青本〔第22版〕1311〜1312頁)。意匠権の存続期間は平成18年改正以降、設定の登録の日から20年(同書1311頁) 基礎意匠の意匠登録出願の日から25年(第21条第2項)
移転の一体性 本意匠と関連意匠は分離移転不可 基礎意匠と関連意匠は分離移転不可。基礎意匠消滅等後の関連意匠同士も同じ(第22条)

〔表7〕関連意匠制度の改正前/現行の対比。改正前の欄は改正解説書 第6章および青本〔第22版〕の沿革の記述に基づく要旨であり、改正前条文の原文引用ではない。

施行日について。令和元年改正(令和元年法律第3号)は、改正規定のほとんどが令和2年4月1日に、残る一部が令和3年4月1日に施行されています(出典:特許庁「令和元年意匠法改正特設サイト」、2026年9月参照)。
令和元年法律第3号附則第2条第1項により、関連意匠制度の拡充は2020年4月1日以後の出願に適用され、それより前の出願は従前の例によります。関連意匠の出願が施行後であれば、本意匠の出願が施行前でも拡充後の制度が適用されます。 出典

7. 基礎意匠の意匠権が消滅した後の連鎖

第10条第1項ただし書が問題にするのは「その本意匠の意匠権」(直前に選択した本意匠)であり、第5項の読替えは10年の起算点についてのものです。審査基準 第V部 3.4.1 は、基礎意匠の意匠権が消滅した後でも、存続している関連意匠を本意匠として、その後の関連意匠を登録し得ることを注記の形で示しています。

flowchart TB
  K["基礎意匠
(第44条第4項で消滅)"] -. "基礎意匠が消滅しても" .-> A["関連意匠A(存続)"] A -- "Aを本意匠に選択" --> B["関連意匠B(新規出願)"] B --> R{"設定登録の際にAの意匠権は存続しているか?
Aに専用実施権が設定されていないか?
基礎意匠の出願日から10年を経過する日前か?"} R -- "はい(すべて満たす)" --> Y["登録可(A・Bは分離移転不可:第22条第2項)"] R -- "いいえ(いずれか欠ける)" --> N["登録不可"] style Y fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style N fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図6】基礎意匠の意匠権が消滅した後の連鎖登録(審査基準 第V部 3.4.1 の注記を本記事作成者がフロー化)。点線=手続の流れではなく、基礎意匠が消滅しても関連意匠Aが存続しているという状態を示す。凡例:緑=登録できる/赤=登録できない。

基礎意匠が消滅していても、存続する関連意匠を本意匠として別の関連意匠を登録できる場合があります。ただし第V部3.4.1注2・3.7.3注2のとおり、消滅した基礎意匠と同一・類似の自己の公知意匠は新規性・創作非容易性の判断資料から除外されなくなります。新規性喪失の例外の適用がある場合は別です。直接選択した本意匠の権利が設定登録時に消滅等していないことも必要です。 出典

8. 特許法との対比

論点 特許法 意匠法(関連意匠)
同一人の類似発明/類似意匠の重複登録 特許法第39条(先願)の例外はない。同一発明は先願のみ 第10条第1項が第9条の例外を定める
自己の公知の扱い 特許法第30条(新規性喪失の例外)のみ 第4条(新規性喪失の例外)に加え、第10条第2項・第8項
権利の分離移転 制限なし(複数の特許権は個別に移転可) 基礎意匠と関連意匠は分離して移転できない(第22条)
専用実施権の設定 制限なし(特許法第77条) 基礎意匠と全ての関連意匠について同一の者に同時に設定する場合に限る(第27条第1項ただし書)
存続期間の起算点 特許出願の日から20年(特許法第67条第1項) 関連意匠は基礎意匠の意匠登録出願の日から25年(第21条第2項)

〔表8〕特許法との対比。実用新案法にも関連意匠に相当する制度はない。

9. 試験での問われ方

試験種別 学習で整理したい論点 気をつける点
短答式 「本意匠と非類似でも関連意匠になり得るか」「本意匠が登録料不納で消滅していたら」「専用実施権があるときは」「秘密意匠の本意匠でも」「分離移転できる場合はあるか」の正誤 第10条第1項ただし書の判断時点は設定登録の際。第22条第1項・第2項に「分離して移転できる」場合はない。第6項は「第一項及び第四項の規定にかかわらず」
論文式 デザインのバリエーション展開で、どの意匠を本意匠に選び、いつまでに出願するかを設計させる事例 10年の起算点は基礎意匠の出願日。第9条第1項・第2項の適用除外(第1項・第7項)と、第3条第1項・第2項の例外(第2項・第8項)を分けて書く
口述 「関連意匠の登録要件を述べよ」「基礎意匠とは何か」 第7項の定義(「当該関連意匠に係る最初に選択した一の意匠」)を原文どおり

〔表9〕学習時の論点整理。実際の出題例は下記の過去問紹介に示しています。

直近の出題例(令和8年度 弁理士試験 短答式〔意匠〕)。問9は、包装用びんの本意匠と関連意匠についての登録に関し、正しいものがいくつあるかを問う形式の問題です。枝(イ)は本意匠の意匠権が登録料不納で消滅した場合、枝(ロ)は本意匠と非類似の場合、枝(ハ)は本意匠が秘密意匠の場合、枝(ニ)は本意匠に専用実施権がある場合、枝(ホ)は関連意匠の登録後の分離移転に関する枝です。また、問10(机の意匠と学習机の意匠に関し誤っているものを選ぶ問題)の枝2は、他人の先願登録意匠を利用する後願登録意匠の実施に関する枝です。
出典:特許庁「令和8年度弁理士試験 短答式筆記試験問題」(2026年9月参照)。枝の要旨は本記事作成者によるもので、枝の文言をそのまま引用したものではありません。公式正解は問9は1(正しいもの1つ)、問10は5です。 問題PDF/公式解答
レベル3のまとめ

  • 要件は審査基準 第V部 3.3(出願人同一・類似・基礎意匠出願日から10年)と3.4(本意匠権の存続・専用実施権なし)。
  • 第10条第1項・第4項違反は拒絶理由(第17条第1号)だが無効理由(第48条第1項第1号)ではない。第6項違反は両方。
  • 第2項・第8項の例外は「自己の」「本意匠・基礎意匠に係る関連意匠と同一又は類似」の公知意匠に限る。消滅等した関連意匠は除外されない。
  • 改正前は公報発行日前・連鎖不可・登録日起算20年。現行は基礎意匠出願日から10年・連鎖可・基礎意匠出願日から25年。
  • 第22条・第27条・第21条第2項は「基礎意匠」を単位に一体扱い。

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