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小学生でも分かる意匠法|意匠法第15条 特許法の準用(共同出願・パリ条約による優先権・意匠登録を受ける権利・職務創作) ― 特許法から「借りてくる」ルールと、意匠だけの読替え

小学生でもわかる意匠法 11:共同出願・優先権と・特許法の準用(第15条)

小学生でも分かる意匠法 / A. 登録要件・意匠 #11

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意匠法は、出願の仕方や権利の持ち方について、特許法のルールを丸ごと「借りてくる」条文を置いています。それが意匠法第15条です。ただし、借りてくるときに意匠向けに書き換えている部分(読替え)があり、そこが試験でも実務でも差がつくポイントです。特許法側の中身は特許法シリーズの記事に任せ、この記事では「何を借り、何を借りず、どこを書き換えたか」に集中します。

条文:意匠法第15条(第1項〜第3項)審査基準:意匠審査基準 第VII部「パリ条約による優先権等の主張の手続及びパリ条約の例による優先権等の主張の手続」参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

ルールを「借りてくる」ってどういうこと?

意匠法(デザインを守る法律)と特許法(発明を守る法律)は、きょうだいのような関係です。出願のしかたや、権利をだれが持つかというルールは、ほとんど同じでかまいません。そこで意匠法は、同じことを二度書くかわりに、「特許法の○○条をそのまま使います」と書いています。これを法律の言葉で準用(じゅんよう)といいます。

意匠法第15条が特許法から借りてくるルールは、大きく分けて4つです。

特許法 発明のルール集 準用 1. 共同出願 みんなで考えたら、みんなで出願 2. パリ条約による優先権 外国で先に出した日を使える 3. 意匠登録を受ける権利 ゆずれる・でも担保にはできない 4. 職務創作 会社の仕事で作ったデザイン 読替えあり 証明書の提出は 「出願の日から3月」

準用元(特許法) 意匠法第15条が準用するルール 読替えがある部分(破線)

図は左右にスクロールできます。

【図1】意匠法第15条が特許法から借りてくる4つのルール。2の優先権だけ、意匠向けに書き換えた部分(読替え)がある。凡例は図中に記載。(2026年9月時点の意匠法による)

4つのルールを身近な例で

ルール 身近な例(架空) ひとことで
1. 共同出願 友だち3人で新しい形のコップを考えた。1人だけがこっそり出願するのはダメ。3人そろって出願する。 みんなで考えたら、みんなで出す
2. パリ条約による優先権 ある会社が、まず外国で椅子のデザインを出願した。そのあと6か月以内に日本でも出願すれば、日本でも「外国で出した日」に出したものとして新しさを判断してもらえる。ただし、「外国で本当にその日に出した」という証明書を、日本の出願の日から3か月以内に出さなければいけない。 先に外国で出した日を日本でも使える。証明書は3か月以内
3. 意匠登録を受ける権利 デザインを考えた人は「登録してもらう権利」を持つ。この権利は他の人にゆずれる。でも、お金を借りるときの担保(質)にはできない。 ゆずれる、担保にはできない
4. 職務創作 スマホのアプリ画面をデザインする会社で、社員が仕事としてデザインした。会社があらかじめルールを決めていれば、登録を受ける権利は会社のものになり、社員は「相当の利益」(お金など)をもらえる。 仕事で作ったデザインは会社との分け合い

〔表1〕意匠法第15条の4つのルールを架空の例でつかむ。

優先権の「6か月」と「3か月」

第一国出願 日本に 意匠登録出願 優先期間 6月の満了 日本出願から 3月

パリ条約による優先期間 第一国(最初の)出願 日本へ意匠登録出願できる期間 6月(パリ条約第4条C(1)) 日本の意匠登録出願(例)

日本の出願後の手続(意匠法第15条第1項の読替え) 優先権主張の書面の提出 出願と同時(第43条第1項の読替え) 優先権証明書類等の提出 意匠登録出願の日から3月 期間経過後(第43条第4項) × 提出できない

丸=時点 帯=パリ条約の期間 帯=読替えが定める期間 × ×=期間経過後

図は左右にスクロールできます。

【図2】優先権を使うときの2つの期限(手続名を左、期間を横棒にしたガント型)。「6か月」はパリ条約、「3か月」は意匠法第15条第1項の読替えで決まる(→レベル2)。日本の意匠登録出願の位置は優先期間内の一例。第43条第4項の効力喪失には救済の手続がある(→【図3】)。凡例は図中に記載。(2026年9月時点の法令による)(時間軸は縮尺なし)

レベル1のまとめ

  • 意匠法第15条は、特許法のルールを4つ借りてくる条文(共同出願・パリ条約による優先権・意匠登録を受ける権利・職務創作)。
  • 借りてくるだけでなく、優先権の証明書の期限を「意匠登録出願の日から3月」に書き換えている(読替え)。
  • 借りてこない部分(準用から外した項)もある。

※「6か月」「3か月」の起算日、共同出願に違反したときの効果、どの項が準用から外れるかは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第15条の位置づけ ― 逐条解説の説明

特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』1296頁は、第15条について、本条は特許法の規定を準用したものであると述べたうえで、旧法は第25条で一括して準用していたが、この法律では各章の末尾に、その章に関連する特許法の条文を準用するという方針をとった、と説明しています。具体的な準用条文の置き場所として、審査については第19条、意匠権については第36条、権利侵害については第41条、登録料については第45条、審判については第52条、再審については第58条を挙げています。

そのうえで、第1項が意匠登録出願に関する準用規定、第2項が意匠登録を受ける権利についての準用規定、第3項が職務発明についての規定を従業者等がした意匠の創作(職務創作)に準用したものである、と整理しています(青本〔第22版〕1296頁〜1297頁)。「第15条は第2章(意匠登録及び意匠登録出願)の末尾に置かれた準用規定」という見方が、条文の並びを覚えるうえでの手がかりになります。

出典の時点:逐条解説〔第22版〕は令和4年10月刊行です。本記事の条文・手続の説明は、2026年9月の現行条文も照合しています。

第1項 ― 共同出願とパリ条約による優先権(読替えつき)

意匠法第15条第1項(原文)
特許法第三十八条(共同出願)及び第四十三条から第四十三条の三まで(パリ条約による優先権主張の手続及びパリ条約の例による優先権主張)の規定は、意匠登録出願に準用する。この場合において、同法第四十三条第一項中「経済産業省令で定める期間内」とあるのは「意匠登録出願と同時」と、同条第二項中「次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月」とあるのは「意匠登録出願の日から三月」と読み替えるものとする。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
準用元(特許法) 内容 意匠法での読替え
特許法第38条 共同出願(権利が共有のときは全員で出願) 読替えなし。「特許出願」を意匠登録出願に当てはめて読む
特許法第43条 パリ条約による優先権主張の手続(主張の書面、優先権証明書類等の提出、提出しない場合の失効、通知と救済) 読替えあり第1項「経済産業省令で定める期間内」→「意匠登録出願と同時」/第2項「次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月」→「意匠登録出願の日から三月」
特許法第43条の2 優先期間の経過後の優先権主張(救済) 読替えなし
特許法第43条の3 パリ条約の例による優先権主張(世界貿易機関の加盟国の国民等) 読替えなし

〔表2〕第1項が準用する特許法の条文と、読替えの有無。

読替えの前後を並べる

読み替えられる特許法第43条第1項・第2項の原文は次のとおりです(第2項は長文のため、読替え箇所の前後のみ引用し、省略部分を「(中略)」で示します)。

特許法第43条第1項(原文)
パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をし若しくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし又は同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名及び出願の年月日を記載した書面を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければならない。
特許法第43条第2項(原文・一部)
前項の規定による優先権の主張をした者は、(中略)優先権証明書類等」という。)を次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
項 特許出願のとき(特許法第43条の原文) 意匠登録出願のとき(意匠法第15条第1項で読み替えた後)
第43条第1項
優先権主張の書面
「経済産業省令で定める期間内」に提出 「意匠登録出願と同時」に提出
第43条第2項
優先権証明書類等
「次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月」以内に提出 「意匠登録出願の日から三月」以内に提出

〔表3〕読替えの前後の対比。起算日が「最先の日(最初の出願の日等)」から「意匠登録出願の日」に変わる点にも注意。

flowchart TB
  A["第一国(最初の)出願"] -- "6月以内に" --> B["日本に意匠登録出願"]
  B -- "出願と同時に" --> C["優先権主張の書面を提出
(特許法第43条第1項の読替え)"] C --> D{"意匠登録出願の日から3月以内に
優先権証明書類等を提出したか
(特許法第43条第2項の読替え)"} D -- "はい" --> G["期間内に提出済み"] D -- "いいえ(提出なし)" --> E["優先権の主張は効力を失う
(特許法第43条第4項)"] E -. "特許庁長官の通知後の救済
(同条第6項〜第9項)" .-> F["提出があれば第4項は適用しない"] style C fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style G fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style F fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style E fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図3】意匠登録出願で優先権を主張するときの手続の流れ。「6月」はパリ条約第4条C(1)の優先期間(意匠は6月)で、意匠法・特許法の条文そのものには書かれていない。凡例:緑=期間内に手続をした場合/赤=優先権の主張が効力を失う場合/点線=任意の救済手続(特許法第43条第6項〜第9項)。(2026年9月時点の法令による)

第2項 ― 意匠登録を受ける権利

意匠法第15条第2項(原文)
特許法第三十三条並びに第三十四条第一項、第二項及び第四項から第七項まで(特許を受ける権利)の規定は、意匠登録を受ける権利に準用する。
準用元 要旨 意匠法への準用
特許法第33条第1項 特許を受ける権利は移転できる 準用
特許法第33条第2項 質権の目的にできない 準用
特許法第33条第3項 共有のとき、持分の譲渡には他の共有者の同意が必要 準用
特許法第33条第4項 共有のとき、仮専用実施権の設定・仮通常実施権の許諾には他の共有者の同意が必要 条文上は準用(意匠法には仮通常実施権があり、仮専用実施権はない →レベル3)
特許法第34条第1項 出願前の承継は、承継人が出願しなければ第三者に対抗できない 準用
特許法第34条第2項 同一の者から承継した同一の権利について同日に2以上の出願があったときは、協議で定めた者以外は対抗できない 準用
特許法第34条第3項 同一の者から承継した同一の発明・考案について同日に特許出願と実用新案登録出願があったとき 準用しない
特許法第34条第4項 出願後の承継は、相続その他の一般承継を除き、特許庁長官に届け出なければ効力を生じない 準用
特許法第34条第5項 一般承継があったときは遅滞なく届出 準用
特許法第34条第6項 同日に2以上の届出があったときは、協議で定めた者以外の届出は効力を生じない 準用
特許法第34条第7項 協議の命令等(特許法第39条第6項・第7項)の準用 準用

〔表4〕第2項の準用マップ。特許法第34条第3項だけが外れている。

第3項 ― 職務創作

意匠法第15条第3項(原文)
特許法第三十五条(仮専用実施権に係る部分を除く。)(職務発明)の規定は、従業者、法人の役員又は国家公務員若しくは地方公務員がした意匠の創作に準用する。
特許法第35条の項 要旨 意匠法への準用
第1項 職務発明について使用者等が通常実施権を有する 準用
第2項 職務発明以外の発明について、あらかじめ使用者等に権利を取得させる等の定めは無効 準用(「仮専用実施権」の設定を定める部分は除く)
第3項 あらかじめ定めがあれば、特許を受ける権利は発生した時から使用者等に帰属 準用
第4項 従業者等は相当の利益を受ける権利を有する 準用(仮専用実施権に係る部分は除く)
第5項〜第7項 相当の利益の定めの不合理性、指針、定めがない場合の決め方 準用

〔表5〕第3項の準用マップ。「仮専用実施権に係る部分」だけが除かれる。

レベル2のまとめ

  • 第1項:特許法第38条(共同出願)と第43条〜第43条の3(パリ条約による優先権)を準用。第43条第1項は「意匠登録出願と同時」、第2項は「意匠登録出願の日から三月」に読み替える。
  • 第2項:特許法第33条と第34条(第3項を除く)を意匠登録を受ける権利に準用。
  • 第3項:特許法第35条を仮専用実施権に係る部分を除いて、意匠の創作に準用。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 共同出願(特許法第38条の準用)― 違反したときの「行き先」

特許法第38条(原文)
特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許出願をすることができない。

意匠法では、これを「意匠登録を受ける権利が共有に係るとき」「意匠登録出願」と読んで適用します。違反したときの効果は特許法側ではなく意匠法側の条文に書かれており、次の4か所がつながっています。

flowchart TB
  A["意匠登録を受ける権利が共有なのに
一部の共有者だけで出願"] --> B{"審査の段階?
登録後?"} B -- "審査中" --> C["拒絶理由
意匠法第17条第1号
(第15条第1項において準用する特許法第38条)"] B -- "登録後" --> D["無効理由
意匠法第48条第1項第1号"] D --> E["無効審判の請求人適格"] E --> F["意匠登録を受ける権利を有する者に限る
意匠法第48条第2項ただし書"] D --> G["意匠権の移転請求
意匠法第26条の2第1項"] G -- "移転の登録があったとき" --> H["無効理由から除かれる
意匠法第48条第1項第1号かっこ書"] style C fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style D fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style H fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図4】共同出願違反の効果の相関図。意匠法第17条第1号・第48条第1項第1号の条文に基づく要旨。凡例:赤=拒絶理由・無効理由となる場合/緑=無効理由から除かれる場合。(2026年9月時点の意匠法による)

場面 意匠法の条文 内容
審査 第17条第1号(要旨) 第15条第1項において準用する特許法第38条の規定により意匠登録をすることができないときは拒絶理由
登録後 第48条第1項第1号 「第十五条第一項において準用する特許法第三十八条」の規定に違反してされた意匠登録は無効理由(第26条の2第1項の請求に基づく移転の登録があったときを除く)
請求人 第48条第2項ただし書 共同出願違反を理由とする無効審判は「当該意匠登録に係る意匠について意匠登録を受ける権利を有する者に限り請求することができる」
救済 第26条の2第1項 意匠登録を受ける権利を有する者は、意匠権者に対し意匠権の移転を請求できる

〔表6〕共同出願違反が意匠法のどこに効いてくるか。

2. パリ条約による優先権(特許法第43条〜第43条の3の準用)― 意匠審査基準 第VII部

優先権の主張が認められるための要件は、意匠審査基準 第VII部に整理されています。各要件と判断の観点を表にします。

要件(審査基準 第VII部の項目) 内容 根拠
主張できる者(2.1) パリ条約の同盟国の国民であって、第一国に正規の出願をした者又はその承継人 パリ条約第4条A
出願の時期(2.2) 第一国への最初の出願の日から6月以内に日本に意匠登録出願をすること。期間経過後の救済あり(特許法第43条の2の準用) パリ条約第4条C、特許法第43条の2
基礎とする出願(2.3) 第一国における正規の、かつ最初の出願であること。意匠登録出願のほか、実用新案登録出願・特許出願を基礎とすることも可。商標登録出願を基礎とする主張は認められない(審査基準の記載) パリ条約第4条A・E
手続(2.4) 意匠登録出願と同時に優先権の主張。意匠登録出願の日から3月以内に優先権証明書類等を提出。DAS(デジタルアクセスサービス)による代替も可(特許法第43条第5項の準用) 意匠法第15条第1項で読み替えた特許法第43条第1項・第2項・第5項
意匠の同一性(4.) 日本に出願された意匠が、優先権の基礎とする出願の意匠と同一であること 審査基準 第VII部 4.

〔表7〕優先権主張の要件(意匠審査基準 第VII部の構成に沿って整理)。第VII部2・4の該当箇所を照合した要約。

優先権の効果が認められると、次の判断において「優先日」が基準日になります(審査基準 第VII部 3.)。

意匠法第3条第1項(新規性)
意匠法第3条第2項(創作非容易性)
意匠法第3条の2(先願意匠の一部と同一又は類似)
意匠法第9条(先願)
意匠法第10条(関連意匠)

3. 「意匠の同一性」の判断マトリクス(審査基準 第VII部 4.)

意匠特有の論点が「同一性」です。特許の優先権と違い、意匠は図面そのものが権利範囲を決めるため、第一国出願と日本出願の図面・記載がどこまで一致していれば同一とされるかが問題になります。審査基準は「意匠の属する分野における通常の知識に基づいて、第一国出願の願書の記載及び図面等を総合的に判断」すると述べています(審査基準 第VII部 4.1 の要旨)。

類型(審査基準の項目) 場面 同一性
物品名の相違(4.2) 総括名称と具体名称(例:「bottle」と「包装用容器」)で、図面等から同一の物品と認められる 同一と判断
複数意匠の扱い(4.3) 第一国出願の複数意匠から一意匠を抽出して出願 同一と判断
複数意匠の扱い(4.3) 第一国出願に含まれない意匠と組み合わせて出願 同一でない
複数意匠の扱い(4.3) 異なる複数の優先権の基礎出願を組み合わせた意匠(同一意匠の変化前後を外国法に従い分けた場合を除く) 同一でない
部品の組合せ・分離(4.4) 第一国で完成品、日本でその部品(例:自転車→サドル)。逆に第一国で部品、日本でその部品を含む完成品とした場合も、第一国の開示を超える組合せは認められない 同一でない
部品の組合せ・分離(4.4) 第一国出願に部品の組合せが可変であると明記され、図示されない組合せが導出できる 同一と判断
全体形状が示されていない(4.5) 第一国出願が一部の形状のみで、日本出願が全体形状 同一でない
全体形状が示されていない(4.5) 第一国出願の記載から登録対象部分の位置・大きさ・範囲が導け、日本出願の当該部分と一致する 同一と判断
構成要素の相違(4.6) 形状・模様・色彩などの構成要素が異なる 原則として同一でない
構成要素の相違(4.6) 表現方法の違いのみ(図面と写真、斜視図と正投影図)で内容が当然に導出できる 同一と判断

〔表8〕優先権認否における意匠の同一性の判断マトリクス(意匠審査基準 第VII部 4. の類型を整理)。4.2〜4.6の本文・事例の説明を確認。外国法により同一意匠の変化前後を別出願にした場合は、4.3(3)の例外として日本で一出願にまとめられます。

4. 特許出願と意匠登録出願の優先権手続の対比

項目 特許出願(特許法第43条等) 意匠登録出願(意匠法第15条第1項で準用・読替え)
優先期間 12月(パリ条約第4条C(1)) 6月(パリ条約第4条C(1))
優先権主張の書面の提出時期 「経済産業省令で定める期間内」(第43条第1項) 「意匠登録出願と同時」(読替え後)
優先権証明書類等の提出期限 「次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内」(第43条第2項) 「意匠登録出願の日から三月」以内(読替え後)
起算日 最初の出願の日等のうち最先の日 意匠登録出願の日
期限内に提出しない効果 優先権の主張は効力を失う(第43条第4項) 同じ(準用)
提出がないときの通知と救済 特許庁長官の通知(第43条第6項)、通知後の提出(第7項)、責めに帰することができない理由による提出(第8項)、提出があれば第4項は適用しない(第9項) 同じ(準用)
電子的交換(DAS) 第43条第5項 同じ(準用)
優先期間経過後の救済 第43条の2 同じ(準用)
WTO加盟国の国民等 第43条の3 同じ(準用)

〔表9〕特許出願と意匠登録出願の優先権手続の対比。「6月」「12月」はパリ条約第4条C(1)に基づく。意匠法施行規則第19条第3項が準用する特許法施行規則第27条の3の3第5項・第6項により、未提出通知後の期間は通知の日から2月です。政府の発行事務の遅延による追完は入手した日から1月(在外者2月)、それ以外は理由消滅から14日(在外者2月)以内かつ通知後2月の経過後6月以内です。追完には法第43条第8項の責めに帰することができない理由が必要です。

なぜ意匠だけ「3月」なのか ― 逐条解説の説明

特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』1297頁は、この点を次のように説明しています。昭和62年の一部改正により、特許出願及び実用新案登録出願については、優先権証明書の提出期限を、出願公開制度との関係を考慮しつつ優先日から1年4月以内に延長した。しかし意匠登録出願については、出願公開制度を採用していないため、優先権証明書の提出期限の延長から生ずる審査の遅延による影響が大きい等の理由から、従来どおり出願の日から3月以内とした、というのがその説明です。

つまり「3月」は、特許・実用新案が出願公開までの猶予を前提に期限を延ばせたのに対し、意匠には出願公開制度がなく、提出を待つと審査が止まってしまうことを避けたものだ、という整理になります(青本〔第22版〕1297頁)。

5. 意匠登録を受ける権利 ― 準用から外れた特許法第34条第3項と、33条第4項の扱い

特許法第34条第3項(原文)
同一の者から承継した同一の発明及び考案についての特許を受ける権利及び実用新案登録を受ける権利について同日に特許出願及び実用新案登録出願があつたときも、前項と同様とする。

この項は「特許出願と実用新案登録出願」が同日にされた場面を対象にしています。意匠登録を受ける権利については、この場面に対応する規定を置く必要がないため、意匠法第15条第2項は第34条第3項を準用の対象から外しています(条文の文言から読み取れる範囲の説明です)。

特許法第33条第4項(原文)
特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権について、仮専用実施権を設定し、又は他人に仮通常実施権を許諾することができない。

意匠法第15条第2項は、特許法第33条を項を限定せずに準用しています。この第4項がなぜ準用されているのかについて、逐条解説は、平成23年の一部改正において仮通常実施権(意匠法第5条の2)を導入したことに伴い、特許法第33条第4項についても準用することとした、と説明しています(青本〔第22版〕1297頁)。

整理すると、意匠法には仮通常実施権の制度がある(第5条の2)一方、仮専用実施権の制度はありません(このことは、第15条第3項が特許法第35条を「仮専用実施権に係る部分を除く」として準用していることからも読み取れます)。したがって第33条第4項の準用は、共有に係る意匠登録を受ける権利について仮通常実施権を許諾する場面で意味を持つことになります。

共有者の同意:意匠法第5条の2第1項と第15条第2項による特許法第33条第4項の準用を合わせると、共有者が仮通常実施権を許諾するには他の共有者の同意が必要です。これは条文の組合せからの説明です。

6. 職務創作 ― 用語の読み方と「仮専用実施権に係る部分を除く」の意味

特許法第35条の用語 意匠法で読むとき
発明/職務発明 意匠の創作/職務上の意匠の創作
特許を受ける権利 意匠登録を受ける権利
特許権/通常実施権/専用実施権 意匠権/通常実施権/専用実施権
仮専用実施権 除外(意匠法には仮専用実施権の制度がないため、第15条第3項が明文で除いている)
従業者等(従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員) 第15条第3項が「従業者、法人の役員又は国家公務員若しくは地方公務員がした意匠の創作」と明記

〔表10〕職務発明規定を職務創作に読み替えるときの対応。特許法第35条の要件(業務範囲・現在又は過去の職務)や相当の利益の詳細は、特許法シリーズ「特許法第35条 職務発明」の記事をご覧ください。

7. 拒絶理由・無効理由との対応

第15条で準用する規定 拒絶理由(意匠法第17条) 無効理由(意匠法第48条第1項)
特許法第38条(共同出願) 該当第17条第1号(要旨) 該当第48条第1項第1号(移転の登録があったときを除く)
特許法第43条〜第43条の3(優先権の手続) 直接の拒絶理由ではない。優先権の効果が認められないと、判断基準日が現実の出願日になり、意匠法第3条・第3条の2・第9条等で判断される 同左。優先権の効果が否定された結果として第3条等の無効理由に当たり得る
特許法第33条・第34条(意匠登録を受ける権利) 意匠登録を受ける権利を有しない者の出願は第17条第4号 第48条第1項第3号(移転の登録があったときを除く)
特許法第35条(職務創作) 直接の拒絶理由ではない。権利の帰属を通じて第17条第4号に関わり得る 直接の無効理由ではない。権利の帰属を通じて第48条第1項第3号に関わり得る

〔表11〕第15条の準用規定と、拒絶理由・無効理由の対応関係。

8. 試験での問われ方

試験種別 学習で整理したい論点 気をつける点
短答式 「優先権証明書類等の提出期限は最初の出願の日から1年4月以内である」型の正誤(特許法との混同を誘う枝) 意匠は「意匠登録出願の日から3月」。起算日も違う
短答式 「優先権の主張は出願後○月以内にできる」型の正誤 意匠は「意匠登録出願と同時」
短答式 「特許法第34条は全項が準用される」「職務発明の規定は仮専用実施権の部分も含めて準用される」型の正誤 第34条第3項は準用されない。第35条は仮専用実施権に係る部分を除く
短答式 「共同出願違反の無効審判は何人も請求できる」型の正誤 第48条第2項ただし書により意匠登録を受ける権利を有する者に限る
論文式 外国出願を基礎とする意匠登録出願の事例で、優先権の効果の有無(同一性)と手続の可否を問う 審査基準 第VII部の同一性の類型(〔表8〕)で整理
口述 「意匠法第15条第1項の読替えを述べよ」 2つの読替えを原文どおりに

〔表12〕学習時の論点整理。実際の出題例は下記の過去問紹介に示しています。

令和8年度 弁理士試験 短答式〔意匠〕との関係:特許庁公表の問題PDFから問1〜問10の柱書と各枝の内容を確認したところ、第15条が扱う優先権の手続・共同出願・職務創作を正面から問う枝は見当たりませんでした。関連しうるものとして、問5(「意匠法における実施権に関し、正しいものはいくつあるか」)の枝(イ)が出願中の意匠の仮通常実施権に関する枝です。仮通常実施権は意匠法第5条の2の制度で、第15条第2項が準用する特許法第33条第4項(共有の場合の同意)とつながります。

出典:特許庁公表「令和8年度弁理士試験 短答式筆記試験 問題」(2026年9月参照)。問5の公式正解は2(正しいもの2つ)です。肢イの許諾範囲は第5条の2第1項の文言と一致します。
レベル3のまとめ

  • 共同出願違反は、拒絶理由(第17条)・無効理由(第48条第1項第1号)・請求人の限定(第48条第2項ただし書)・移転請求(第26条の2)の4か所につながる。
  • 優先権は「出願と同時」に主張し、「意匠登録出願の日から3月」以内に優先権証明書類等を提出。効果は意匠の同一性(審査基準 第VII部 4.)が認められた範囲で、第3条・第3条の2・第9条・第10条の判断基準日を優先日に繰り上げる。
  • 特許法第34条第3項(特許出願と実用新案登録出願の同日承継)と、第35条の仮専用実施権に係る部分は準用から外れる。

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