小学生でも分かる商標法 / C. 商標権の効力・使用権・侵害 #25
商標権(しょうひょうけん)をもっていると、まぎらわしい目じるしを他人が使うのを止められます。でも、どんな使い方でも止められるわけではありません。自分の名前をふつうに書くこと、商品のふつうの名前や産地を書くこと、目じるしとしてではない使い方などは、止められません。この記事では、商標権の「あな」にあたる商標法第26条を、3つのレベルで見ていきます。
LEVEL 1イメージでつかむ
「ほしぞらパン」の商標権でも、止められないことがある
町のパン屋さん「ほしぞらパン」(架空のお店です)は、「ほしぞらパン」という名前を、パンの目じるしとして国の役所(特許庁=とっきょちょう)に登録しました。お店や商品の目じるしを、法律では商標(しょうひょう)といいます。登録すると、商標権(しょうひょうけん)という権利がもらえます。
商標権があると、まぎらわしい名前をほかの人が目じるしに使っていたら、「やめてください」と言えます。でも、もし商標権が強すぎたら、こまったことが起きます。
- 「星空(ほしぞら)」という名字の人が、自分の名前を書けなくなる?
- パンの材料や産地(さんち)を、ふつうに書けなくなる?
- 「星空を見ながら食べてね」という文を、袋に書けなくなる?
それでは、みんながこまります。そこで法律は、商標権の輪の中に、はじめから「あな」をあけています。あなの中の使い方は、商標権があっても止められません。
図は左右にスクロールできます。
【図1】商標権の輪と4つの「あな」の模式図。店名は架空の例。あなの数と中身はレベル1向けに単純化したもので、本記事作成者が商標法第26条を整理して図にしたもの。
4つの「あな」を、例で見てみよう
| あな | たとえば(すべて架空の例) | なぜ止められないの? |
|---|---|---|
| ① 自分の名前 | 名字が「星空」さんの人が、自分で焼いたパンの袋のうらに「作った人:星空ゆうた」と、ふつうの字で小さく書く | 自分の名前を名のることまで止められたら、その人がこまるから |
| ② ふつうの名前・説明 | だれかが、あんこ入りのパンについて「あんぱん」という言葉をまちがって登録できてしまったとしても、ほかのパン屋さんは値札に「あんぱん」と書ける。「ミナト町産の小麦を使用」と書くのも同じ | 商品のふつうの名前や、産地・材料・味などの説明は、どのお店にも必要な言葉だから |
| ③ みんなのしるし | その商品を売るお店が、昔からみんなで使ってきたしるし | みんなが使っているので、もう「どこか1つのお店の目じるし」ではなくなっているから |
| ④ 目じるしでない使い方 | パン屋「こぐま堂」が、袋に「星空(ほしぞら)を見ながら食べてね」という文を書く | お客さんは、この文を見て「ほしぞらパンの商品だ」とは思わない。目じるしのはたらきをしていないから |
〔表1〕4つの「あな」の例。どの例も、じっさいに止められないかどうかは、書き方や大きさなどによって変わります(→レベル3)。
「目じるしとして使う」と「説明として使う」
同じ「ほしぞら」という言葉でも、使い方で意味が変わります。下の図を見てください。左の袋は、「ほしぞら」が大きなロゴになっていて、お客さんは「ほしぞらというお店のパンだ」と思います。右の袋は、目じるしは「こぐま堂」で、「星空」は説明の文の中に出てくるだけです。
図は左右にスクロールできます。
- 赤の袋:目じるしとして使っている例(あなに入らない=止められる方向)
- 橙の袋:説明の文の中に出てくるだけの例(あな④=止められない方向)
- まん中の破線の縦線:左右の例を分ける区切り(法律上の意味はありません)
【図2】「目じるしとして使う」場合と「説明の文の中に出てくるだけ」の場合のちがい。店名・袋のデザインはすべて架空の例で、本記事作成者が作った模式図。じっさいの判断は、文字の大きさ・場所・書き方などを見て行われます。
ただし、「ずる」はだめ
あな①(自分の名前)には、注意があります。「ほしぞらパン」が登録されたあとで、有名になった「ほしぞらパン」のお客さんを横取りしようとして、わざと自分の名前「星空」を使いはじめたような場合は、あな①は使えません。ずるい目的で名前を使う人まで、守る必要はないからです。
- 商標権があっても、止められない使い方がある。商標権の輪には、はじめから「あな」があいている。
- あなの中身は、自分の名前、商品のふつうの名前や説明、みんなのしるし、目じるしでない使い方など。
- みんなに必要な言葉や、目じるしのはたらきをしていない使い方まで、1人がひとりじめにしてはいけないから。
※ あなの数は、正確には第1項に6つ、第3項に3つあります。「ふつうの書き方」かどうか、芸名・ペンネーム・略称は有名でなければならないこと、「ずるい目的」の正確な中身、どの商品についての名前・説明か、などには条件があります(→レベル3)。「商品」と書いたところは、サービス(法律の言葉で役務=えきむ)でも同じように決められています。
LEVEL 2条文の骨格
第26条第1項 ― 効力が及ばない「商標」(6つの号)
商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
一
自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標
二
当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又は当該指定商品に類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する商標
三
当該指定役務若しくはこれに類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又は当該指定役務に類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する商標
四
当該指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について慣用されている商標
五
商品等が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標
六
前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標
柱書(はしらがき=号の前に置かれた本文)を部品に分けると、次のようになります。
| 部品 | 文言 | 意味 |
|---|---|---|
| 何が | 商標権の効力は | 商標法第25条の「使用をする権利を専有する」力と、第37条で「侵害するものとみなす」力の両方をふくむ、商標権のはたらき全体 |
| 何に | 次に掲げる商標 | 第1号〜第6号のどれかに当たる商標。第1項は、他人が使っている「商標」の側に注目して書かれている |
| 広げる言葉 | (他の商標の一部となつているものを含む。) | 第1号〜第6号の商標が、もっと大きな商標の一部分になっている場合も、その部分には効力が及ばない |
| どうなる | 及ばない | 商標権者は、その商標の使用を、商標権にもとづいて止めたり、損害賠償を求めたりすることができない |
〔表2〕商標法第26条第1項柱書の部品分解。「意味」の欄は本記事作成者による説明。
第2項・第3項 ― 第1号の例外と、地理的表示
前項第一号の規定は、商標権の設定の登録があつた後、不正競争の目的で、自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を用いた場合は、適用しない。(第2項)
商標権の効力は、次に掲げる行為には、及ばない。ただし、その行為が不正競争の目的でされない場合に限る。(第3項柱書。各号の原文はレベル3)
第1項は「次に掲げる商標には、及ばない」、第3項は「次に掲げる行為には、及ばない」です。注目しているものがちがいます。第2項は、第1項第1号(自分の名前など)だけにかかる例外です。
図は左右にスクロールできます。
- 青緑の枠:第1項=効力が及ばない「商標」(第1号〜第6号)
- 藍の枠:第3項=効力が及ばない「行為」(第1号〜第3号)
- 赤の枠・赤い文字:「不正競争の目的」による例外(第2項、第3項ただし書)
【図3】商標法第26条の構造図。本記事作成者が条文を整理して図にしたもの。各号の中身は短くまとめてあり、正確な文言は上の原文のとおり。
| 項・号 | 役割(中学生向けの言いかえ) |
|---|---|
| 第1項柱書 | 次の6つの商標には、商標権の効力が及ばない。大きな商標の一部になっていても同じ |
| 第1項第1号 | 自分の肖像(顔のすがた)、氏名、名称(会社名など)、有名な雅号・芸名・筆名、これらの有名な略称を、ふつうの方法で表示する商標 |
| 第1項第2号 | 登録商標の指定商品やこれに類似する商品の、普通名称・産地・品質などを、ふつうの方法で表示する商標(指定商品に類似する役務についても同じ) |
| 第1項第3号 | 登録商標の指定役務やこれに類似する役務の、普通名称・提供の場所・質などを、ふつうの方法で表示する商標(指定役務に類似する商品についても同じ) |
| 第1項第4号 | 指定商品・指定役務や、これらに類似する商品・役務について、同業者のあいだで慣用されている商標 |
| 第1項第5号 | 商品等が当然に備える特徴(政令で、立体的形状・色彩・音)だけでできている商標 |
| 第1項第6号 | 第1号〜第5号に当たらなくても、需要者(お客さん)が「だれかの業務に係る商品・役務だ」と認識できる態様で使用されていない商標。実務上・講学上、「商標的使用でない使用」と呼ばれる場面 |
| 第2項 | 第1号の例外。設定の登録の後に、不正競争の目的で自分の名前などを用いた場合は、第1号で守られない |
| 第3項第1号〜第3号 | 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律にもとづいて地理的表示を付する行為などには、商標権の効力が及ばない。ただし、不正競争の目的でされない場合に限る |
〔表3〕項・号ごとの役割一覧。第5号の「政令で定めるもの」は商標法施行令第1条の2(e-Gov法令検索、法令ID 335CO0000000019、2026年9月参照)による。
裁判では、第26条はどこで出てくるか
商標権者が「商標権を侵害された」と裁判所にうったえると、うったえられた側(被告)は、いくつかの言い分を出せます。第26条は、そのうちの1つです。「たしかに似た商標を使ったが、それは第26条の商標(または行為)だから、商標権の効力が及ばない」という言い分です。
flowchart TB A["商標権者(原告)の主張
① 商標権をもっている
② 被告が商標を使用している
③ 商標と商品・役務が同一又は類似
商標法第25条・第37条第1号"] --> B["被告の言い分"] B --> C["商標法第26条
効力が及ばない商標・行為だ"] B --> D["商標法第39条が準用する
特許法第104条の3
登録は無効にされるべきものだ"] B --> E["使用をする権利がある
先使用(商標法第32条)
使用権(第30条・第31条)など"] C --> F{"言い分が
みとめられるか"} D --> F E --> F F -- "みとめられる" --> G["請求はみとめられない"] F -- "みとめられない" --> H["他の要件も審理して
差止め・損害賠償の可否を判断"] style G fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style H fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
- 緑の箱:被告の言い分がみとめられた場合の結論
- 赤の箱:被告の言い分がみとめられなかった場合の結論
【図4】侵害訴訟での第26条の位置づけ(概略)。本記事作成者が条文を整理してフロー化したもの。被告の言い分はここに挙げたものに限られません(例外あり)。主張・立証の分担の正確な整理はレベル3。
- 第1項=効力が及ばない「商標」を6つの号で定める。柱書のかっこ書で、他の商標の一部になっているものも含む。
- 第2項=第1号(自分の名前など)だけの例外。設定の登録の後、不正競争の目的で用いた場合は第1号を適用しない。
- 第3項=地理的表示に関する3つの「行為」。不正競争の目的でされない場合に限る。
- 第1項第6号が、いわゆる「商標的使用でない使用」(実務上・講学上の呼称)を受けとめる号。
LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方
1. 登録の入口との対応 ― 第3条第1項各号・第4条第1項第8号・第18号
第26条第1項の各号は、登録の場面の条文(商標法第3条第1項、第4条第1項第8号・第18号)とよく似た文言で書かれています。原文を読み比べると、次のように対応します。第3条第1項との対応は、既刊の第3条第1項の記事(#2)の表と同じ整理です。
| 第26条第1項 | 対応する登録の場面の条文 | 文言のちがい(原文の読み比べ) |
|---|---|---|
| 第1号 自己の肖像・氏名・名称等 | 商標法第4条第1項第8号(他人の肖像・氏名・名称等を含む商標)。第3条第1項第4号(ありふれた氏又は名称)とは部分的に重なる | 第4条第1項第8号は「他人の」、第26条第1項第1号は「自己の」。第4条第1項第8号の「氏名」には商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名に限る。のかっこ書があるが、第26条第1項第1号の「氏名」には知名度の限定がない。第26条第1項第1号には「普通に用いられる方法で表示する」がある |
| 第2号・第3号 普通名称 | 商標法第3条第1項第1号 | 第3条第1項第1号は「その商品又は役務」の普通名称で、「標章のみからなる商標」。第26条は「当該指定商品若しくはこれに類似する商品」「類似する役務」まで広げ、「のみからなる」がない(柱書に「他の商標の一部となつているものを含む。」) |
| 第2号・第3号 産地・品質等 | 商標法第3条第1項第3号 | 同上。第3条第1項第3号の形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)のかっこ書により、第26条第1項第2号・第3号の「形状」にも包装の形状が含まれる |
| 第4号 慣用商標 | 商標法第3条第1項第2号 | 第3条第1項第2号は「その商品又は役務について」。第26条第1項第4号は「これらに類似する商品若しくは役務」まで含む |
| 第5号 当然に備える特徴のみ | 商標法第4条第1項第18号 | 文言は同じ(商品等が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標)。「商品等」の定義( 商品若しくは商品の包装又は役務をいう。第二十六条第一項第五号において同じ。)は第4条第1項第18号に置かれている。政令は共通で、商標法施行令第1条の2 |
| 第6号 出所を認識できる態様で使用されていない商標 | 商標法第3条第1項第6号 | 第3条第1項第6号は認識することができない商標=商標そのものの性質。第26条第1項第6号は 認識することができる態様により使用されていない商標=使用の態様に注目 |
| (直接対応する号なし) | 商標法第3条第1項第5号(極めて簡単で、かつ、ありふれた標章) | 第26条第1項に同じ文言の号はない。第6号で処理される余地がある、というのが本記事作成者の整理(条文上の断定ではない) |
〔表4〕第26条第1項と登録の場面の条文との対応。e-Gov法令検索の原文(2026年9月参照)を本記事作成者が読み比べて整理したもの。「対応する」と条文に書かれているわけではありません。
商標法第四条第一項第十八号及び第二十六条第一項第五号の政令で定める特徴は、立体的形状、色彩又は音(役務にあつては、役務の提供の用に供する物の立体的形状、色彩又は音)とする。
2. 第26条が働く場面 ― 無効審判があるのに、なぜ必要か
第3条第1項や第4条第1項第8号に当たる商標は、本来、登録されないはずです。登録されてしまっても、無効審判(商標法第46条)があります。それでも第26条が必要になる場面を、条文の組み合わせから整理すると次のようになります。
| 場面 | 無効審判などで対応できるか(条文上) | 第26条のはたらき |
|---|---|---|
| A. 過誤登録(本来は登録されないはずの商標が登録された) | 無効審判を請求できる(第46条第1項第1号)。ただし、審判の請求と審決の確定が必要で、請求人は利害関係人に限られる(第46条第2項) | 第三者は、無効審判の手続をとらなくても、侵害訴訟の中で「自分の使用には効力が及ばない」と主張できる |
| B. 除斥期間の経過後 | 第3条違反、第4条第1項第8号違反などは、設定の登録の日から5年を経過すると無効審判を請求できない(第47条第1項)。第4条第1項第18号は第47条第1項に挙げられていない | 第26条には期間の制限が書かれていない。5年経過後も、第26条第1項各号に当たる商標には効力が及ばない |
| C. 登録後に普通名称・慣用商標になった(後発的な事情) | 後発的な無効理由を定める第46条第1項第6号に、第3条は挙げられていない。第46条第1項第1号は「違反してされたとき」(登録時の違反) | 他人が使用する時点で普通名称・慣用商標を普通に用いられる方法で表示するものであれば、第26条第1項第2号〜第4号の文言に当たり得る |
| D. 登録自体は正当だが、類似の範囲に記述的な表示などが入ってくる | 登録に無効理由がないので、無効審判では対応できない | 登録商標そのものは識別力があっても、禁止権(講学上の呼称。第37条第1号)の範囲に入る他人の表示が、普通名称・産地・自己の氏名などの表示であれば、第26条第1項で効力が及ばない |
| E. 形式的には「使用」(第2条第3項)に当たるが、出所を示す態様でない | 登録の有効・無効とは関係がない | 第26条第1項第6号 |
〔表5〕第26条が働く場面の整理。本記事作成者が条文(第26条、第46条、第47条)の組み合わせから整理したもので、立法担当者の説明を写したものではありません。第47条第1項の「5年」は商標法第47条第1項(e-Gov法令検索、2026年9月参照)による。
図は左右にスクロールできます。
- 青緑:無効審判を請求できる期間(設定の登録の点も同じ色)
- 赤:第47条第1項の対象の理由では請求できなくなる(5年経過の点も同じ色)
- 橙の枠:第26条が働く範囲(条文に期間の定めがない)
- 藍の点:登録後に普通名称化した時点の例
【図5】除斥期間(商標法第47条第1項)と第26条の関係を示すタイムライン。本記事作成者が条文を整理して図にしたもの。第4条第1項第18号など、第47条第1項に挙げられていない無効理由は5年経過後も請求できます。時間軸に縮尺はありません。
第一は、過誤登録に対する第三者の救済規定であると考えられることです。他人の肖像等は第4条第1項第8号で、商品又は役務の普通名称等は第3条第1項第1号から第3号までで、特別顕著性がないものとして登録されないはずですが、誤って商標登録があった場合でも、商標登録の無効審判手続によるまでもなく他人に商標権の効力を及ぼすべきではない、という趣旨です。同書は、この点は特に第47条の除斥期間が経過して無効審判の請求ができなくなった後に実益があるとしています。
第二は、禁止権の効力の制限です。その商標自体は不登録事由に該当しないため商標登録を受けることができ、類似部分については禁止権の効力が及ぶこととなるものの、その類似部分に本条に掲げられたものを含むため、その部分にまで商標権の効力を及ぼすのは妥当でないときに、当該部分の禁止的効力を制限する場合である、としています(同書は、仮に「アスカレーター」と「エスカレーター」が類似であるとし、前者は登録要件を満たすが後者は普通名称であるという場合を例に挙げています)。
第三は、後発的に本条に定めるものとなった場合に商標権の効力を制限し、一般人がそのものを使うことを保障するためであることです(同書は、従来から使用されていた登録商標の名称と同一の名称の都市ができた場合等を例に挙げています)。
なお同書は、平成8年の一部改正で第1項柱書に加えられた括弧書(他の商標の一部となっているものを含む)について、ハウスマークに代表される識別力のある商標に識別力のない文字等を結合させた商標の登録商標としての存在が、第三者に当該文字等の使用を躊躇させ、不当な権利行使を生ぜしめることにもなるため、結合商標中の当該識別力のない文字等の部分には商標権の効力が及ばない旨を確認的に規定したものである、と説明しています。また、慣用商標(第4号)について特に「普通に用いられる方法で」と限定しなかったのは、慣用商標は常に当該商品又は役務について普通に用いられている状態にあるから特にことわるまでもないとの理由による、としています。
出典:逐条解説〔第22版〕1648頁〜1650頁。表5は条文から導ける範囲の整理にとどめています。
3. 第1号・第2項 ― 自己の肖像・氏名・名称等
第1号は、「自己の」ものを「普通に用いられる方法で表示する」商標です。文言を分けて読むと、「著名」が必要なものと、そうでないものがあります。
| 第1号の対象 | 条文上「著名」の限定 | メモ |
|---|---|---|
| 自己の肖像 | なし | 第4条第1項第8号の「他人の氏名」には知名度の限定(令和5年法律第51号による改正。関連記事#5)があるが、第26条第1項第1号の「自己の氏名」にはない |
| 自己の氏名 | なし | |
| 自己の名称 | なし | |
| 自己の雅号、芸名、筆名 | あり(「著名な雅号、芸名若しくは筆名」) | ― |
| これら(氏名・名称・雅号・芸名・筆名)の略称 | あり(「これらの著名な略称」) | 第4条第1項第8号については、株式会社の商号から「株式会社」を除いた部分は「他人の名称の略称」に当たるとした最高裁判決があります(最高裁判所第二小法廷 昭和57年11月12日判決、昭和57年(行ツ)第15号。関連記事#5)。これは第4条第1項第8号についての判断です。第26条第1項第1号の略称には著名性と普通に用いられる表示方法が必要であり、小僧寿し最高裁判決(平成9年3月11日)もその条件により各表示を判断しています |
〔表6〕第26条第1項第1号の対象と「著名」の要否。条文の文言を本記事作成者が分解したもの。
判例。通称「小僧寿し事件」(最高裁判所第三小法廷 平成9年3月11日判決、平成6年(オ)第1102号、民集51巻3号1055頁。「小僧寿し事件」は通称)は、裁判所ウェブサイトの裁判要旨によれば、フランチャイズ契約により結合し全体として組織化された企業グループ(フランチャイズチェーン)の名称は、商標法二六条一項一号にいう自己の名称に当たる
としました。この判決は、ほかに商標の類否と、損害不発生の抗弁(商標法第38条関係。関連記事#35)についても判断しています。
商標権の設定の登録があつた後に、②
不正競争の目的で、③自己の肖像・氏名等を
用いた場合。条文の言葉は「不正競争の目的」で、「不正の目的」ではありません。設定の登録の前から用いていた場合は、第2項の文言には当たりません。
flowchart TB A["他人の商標権と同一・類似の範囲で
自己の肖像・氏名・名称等を表示"] --> B{"雅号・芸名・筆名
又は略称か"} B -- "はい" --> C{"著名か"} C -- "はい" --> D{"普通に用いられる方法で
表示しているか"} C -- "いいえ" --> X["第1号に当たらない"] B -- "いいえ
肖像・氏名・名称" --> D D -- "はい" --> E{"設定の登録があった後
不正競争の目的で用いたか
第2項"} D -- "いいえ" --> X E -- "はい" --> Y["第1号を適用しない"] E -- "いいえ" --> Z["商標権の効力が及ばない
第1項第1号"] style Z fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style X fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style Y fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
- 緑の箱:第1項第1号により商標権の効力が及ばない結論
- 赤の箱:第1項第1号では効力が制限されない結論(第1号に当たらない/第2項で適用しない)
【図6】第1項第1号・第2項の当てはめの分岐図。本記事作成者が条文を整理してフロー化したもの。「第1号に当たらない」となっても、第6号など他の号や、先使用(商標法第32条)などは別に検討します。
4. 第2号・第3号 ― 普通名称・産地・品質等の表示
第2号と第3号は、対象になる商品・役務の範囲を、登録商標の指定商品・指定役務から見て定めています。第37条第1号の類似の範囲(関連記事#24)と合わせた形になっています。
| 号 | 登録商標の側 | 他人が表示するもの |
|---|---|---|
| 第2号 | 指定商品 | 当該指定商品 又は これに類似する商品の、普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量、価格 |
| 当該指定商品に類似する役務の、普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量、価格 | ||
| 第3号 | 指定役務 | 当該指定役務 又は これに類似する役務の、普通名称、提供の場所、質、……(上と同じ列挙) |
| 当該指定役務に類似する商品の、普通名称、産地、販売地、品質、……(上と同じ列挙) |
〔表7〕第2号・第3号の対象範囲。列挙は原文を短く並べかえたもの(正確な文言はレベル2の原文)。
- 「普通に用いられる方法で表示する」が要件です。普通名称や産地であっても、特殊な態様で表示すれば、第2号・第3号の文言には当たりません。登録の場面(第3条第1項)について、商標審査基準〔改訂第17版〕 第1 は、書体や全体の構成等が取引者において一般的に使用する範囲にとどまらない特殊なものである場合は「普通に用いられる方法で表示する」に該当しない、という考え方を示しています(詳細は関連記事#2。審査基準は登録の場面のもので、侵害の場面の第26条に直接適用されるものではありません)。
- 第3条第1項第1号・第3号とちがい、「のみからなる」がありません。柱書のかっこ書により、他の商標の一部になっているものも含みます。
- 第3条第2項(使用による識別力の獲得)で登録された商標の商標権にも、第26条第1項は適用されます。適用を除外する規定はありません(関連記事#3)。地域団体商標に係る商標権についても同じです(関連記事#11)。
5. 第4号・第5号 ― 慣用商標、当然に備える特徴のみからなる商標
第4号は、指定商品・指定役務、又はこれらに類似する商品・役務について慣用されている商標
です。「普通に用いられる方法で表示する」の文言はありません(第3条第1項第2号にもありません)。
第5号は、第4条第1項第18号と同じ文言です。第4条第1項第18号は、第47条第1項の除斥期間の対象に挙げられていないので、無効審判は5年経過後も請求できます。それとは別に、第三者は第26条第1項第5号により、無効審判を経ずに効力が及ばないことを主張できます。
出典:平成26年改正解説書 第4章「商標法の保護対象の拡充等」171頁〜172頁。逐条解説〔第22版〕1650頁。いずれも
6. 第6号 ― いわゆる「商標的使用」でない使用
第6号は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標
です。商標は、形式的には商標法第2条第3項の「使用」に当たる形で付されていても、需要者から見て出所を示すものとして受けとられない態様であれば、第6号により商標権の効力が及びません。
このような使用でないことを、実務上・講学上「商標的使用でない」「商標としての使用でない」と呼びます。「商標的使用」は条文の言葉ではありません。答案では、第6号の文言で書くのが安全です。
| 比べる点 | 第1号〜第5号 | 第6号 |
|---|---|---|
| 注目するもの | 表示の中身(自己の氏名、普通名称、産地、慣用商標、当然に備える特徴) | 使用の態様(需要者が出所を認識できる態様かどうか) |
| 位置づけ | 個別の類型 | 前各号に掲げるもののほか=第1号〜第5号に当たらないものを受けとめる |
| 判断の基準となる人 | 条文に明記なし | 需要者 |
| 登録の場面で対応する条文 | 第3条第1項第1号〜第3号、第4条第1項第8号・第18号 | 第3条第1項第6号(ただし第3条は商標そのもの、第26条は使用の態様) |
〔表8〕第1号〜第5号と第6号の対比。本記事作成者が条文の文言から整理したもの。
なお、同解説書は、その裁判例の例として脚注に次の2件を挙げています。大阪地方裁判所昭和51年2月24日判決(昭和49年(ワ)第393号。通称「ポパイ事件」)、および東京地方裁判所昭和55年7月11日判決(昭和53年(ワ)第255号。通称「テレビマンガ事件」。同解説書は、東京高等裁判所昭和56年3月25日判決(昭和55年(ネ)第1813号)が原判決を維持したとしています)。
出典:平成26年改正解説書 第4章「商標法の保護対象の拡充等」180頁〜181頁(脚注11を含む)。逐条解説〔第22版〕1650頁〜1651頁。いずれも
7. 第3項 ― 地理的表示(特定農林水産物等の名称の保護に関する法律との調整)
商標権の効力は、次に掲げる行為には、及ばない。ただし、その行為が不正競争の目的でされない場合に限る。
一
特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(平成二十六年法律第八十四号。以下この項において「特定農林水産物等名称保護法」という。)第三条第一項(特定農林水産物等名称保護法第三十条において読み替えて適用する場合を含む。次号及び第三号において同じ。)の規定により特定農林水産物等名称保護法第六条の登録に係る特定農林水産物等名称保護法第二条第二項に規定する特定農林水産物等(当該登録に係る特定農林水産物等を主な原料又は材料として製造され、又は加工された同条第一項に規定する農林水産物等を含む。次号及び第三号において「登録に係る特定農林水産物等」という。)又はその包装に同条第三項に規定する地理的表示(次号及び第三号において「地理的表示」という。)を付する行為
二
特定農林水産物等名称保護法第三条第一項の規定により登録に係る特定農林水産物等又はその包装に地理的表示を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為
三
特定農林水産物等名称保護法第三条第一項の規定により登録に係る特定農林水産物等に関する広告、価格表若しくは取引書類に地理的表示を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に地理的表示を付して電磁的方法により提供する行為
特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(以下、第3項の略称にならい「特定農林水産物等名称保護法」)第2条第3項は、「地理的表示」を特定農林水産物等の名称(当該名称により前項各号に掲げる事項を特定することができるものに限る。)の表示
と定義しています。同法第3条第1項は、登録に係る特定農林水産物等を譲渡等する者が、その特定農林水産物等や包装等に地理的表示を使用できる旨を定めています(e-Gov法令検索、法令ID 426AC0000000084、2026年9月参照)。第26条第3項は、この法律にもとづいて地理的表示を付する行為などが、他人の商標権とぶつかったときの調整規定です。
| 比べる点 | 第2項 | 第3項ただし書 |
|---|---|---|
| かかる先 | 第1項第1号だけ | 第3項第1号〜第3号の全部 |
| 文言 | 商標権の設定の登録があつた後、不正競争の目的で、……用いた場合は、適用しない | その行為が不正競争の目的でされない場合に限る |
| 時期の限定 | あり(設定の登録があった後) | 文言上なし |
| 使われている語 | どちらも「不正競争の目的」(「不正の目的」ではない) | |
| 第1項第2号〜第6号 | 「不正競争の目的」による例外の定めは、条文上ない | |
〔表9〕第26条の中で「不正競争の目的」が出てくる2か所の対比。
また同書は、平成30年のGI法の一部改正に伴い、商標権の効力が及ばない行為として地理的表示の役務分野に係る使用行為が第3号に追加されたほか、商品を特定農林水産物等と具体的に規定する等の所要の改正が行われたとし、令和3年の一部改正では、外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為が「輸入する行為」に含まれるとする解釈規定(第2条第7項)を新設したことに伴い、第2号の「輸入する行為」にも同様の行為が含まれることとした、と説明しています。
なお、同書は「不正競争の目的で」を、他人の信用を利用して不当な利益を得る目的でという意味であると説明しています。
出典:逐条解説〔第22版〕1651頁〜1652頁。
8. 当てはめの分岐図
flowchart TB S["他人の使用が形式的には
第25条・第37条第1号の範囲に入る"] --> Q0{"地理的表示を付する行為等か
第3項各号"} Q0 -- "はい" --> Q0a{"不正競争の目的で
されないか"} Q0a -- "されない" --> OK["商標権の効力が及ばない"] Q0a -- "不正競争の目的あり" --> Q1 Q0 -- "いいえ" --> Q1{"自己の肖像・氏名・名称等を
普通に用いられる方法で表示
第1号"} Q1 -- "はい" --> Q1a{"設定の登録後に
不正競争の目的で用いたか
第2項"} Q1a -- "はい" --> Q2 Q1a -- "いいえ" --> OK Q1 -- "いいえ" --> Q2{"普通名称・産地・品質等を
普通に用いられる方法で表示
第2号・第3号"} Q2 -- "はい" --> OK Q2 -- "いいえ" --> Q4{"慣用されている商標か
第4号"} Q4 -- "はい" --> OK Q4 -- "いいえ" --> Q5{"当然に備える特徴
立体的形状・色彩・音
のみからなるか 第5号"} Q5 -- "はい" --> OK Q5 -- "いいえ" --> Q6{"需要者が出所を認識できる
態様で使用されていない商標か
第6号"} Q6 -- "はい" --> OK Q6 -- "いいえ" --> NG["第26条では効力は制限されない
他の言い分を検討"] style OK fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style NG fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
- 緑の箱:商標権の効力が及ばない結論
- 赤の箱:第26条では効力が制限されない結論
【図7】第26条の当てはめの分岐図。本記事作成者が条文を整理してフロー化したもの。検討の順番は条文で決まっているわけではなく、号の順に並べただけです。第1項の各号は、その商標が「他の商標の一部となつているもの」である場合も含みます。
9. 拒絶・異議・無効・除斥期間との対応
第26条は商標権の効力を制限する規定で、登録要件ではありません。したがって第26条そのものは、拒絶理由・異議理由・無効理由のどれでもありません。対応する登録の場面の条文は、次のとおりです。
| 条文 | 拒絶理由(第15条) | 異議理由(第43条の2) | 無効理由(第46条第1項) | 除斥期間(第47条第1項) |
|---|---|---|---|---|
| 第26条 | 非該当 | 非該当 | 非該当 | ―(第26条の主張に期間の制限なし) |
| 第3条第1項各号(第26条第1項第2号〜第4号・第6号に対応) | 該当 | 該当 | 該当 | 対象(5年) |
| 第4条第1項第8号(第26条第1項第1号に対応) | 該当 | 該当 | 該当 | 対象(5年) |
| 第4条第1項第18号(第26条第1項第5号に対応) | 該当 | 該当 | 該当 | 対象外(第47条第1項に挙げられていない) |
〔表10〕登録の場面との対応表。「5年」は設定の登録の日から5年(商標法第47条第1項、e-Gov法令検索、2026年9月参照)。号番号の詳細は関連記事#2・#4・#5・#41。
10. 侵害訴訟での主張の位置づけ
図4で見たとおり、第26条は、侵害訴訟で被告が持ち出す規定です。一般に、第26条第1項各号・第3項各号に当たることは、被告が主張・立証する抗弁として整理されます(この整理は条文に書かれているものではなく、民事訴訟での一般的な整理です)。第2項の「設定の登録後に不正競争の目的で用いた」ことは、第1号の抗弁に対して商標権者の側から持ち出される事情になります。
| 被告の言い分 | 根拠条文 | 中身 | 期間の制限 |
|---|---|---|---|
| 効力が及ばない範囲 | 商標法第26条 | 自分の使用する商標・行為が第26条第1項各号・第3項各号に当たる | 条文上なし |
| 無効の抗弁(実務上の呼称) | 商標法第39条が準用する特許法第104条の3第1項 | 商標登録が無効審判により無効にされるべきもの | 第47条の除斥期間経過後の主張の可否は判例あり(関連記事#41) |
| 先使用による商標の使用をする権利 | 商標法第32条第1項 | 他人の出願前からの使用、需要者の間に広く認識されていること等 | ―(関連記事#32) |
| 使用権 | 商標法第30条・第31条 | 専用使用権・通常使用権にもとづく使用 | ― |
〔表11〕侵害訴訟で被告が持ち出す主な言い分と第26条。本記事作成者による概略の整理で、すべてを挙げたものではありません(例外あり)。
11. 特許法・実用新案法・意匠法との比較
「権利の効力が及ばない範囲」という見出しの条文は四法にありますが、中身は大きくちがいます。特許法第69条は、試験・研究、通過する船舶等、出願時から国内にある物、調剤行為といった産業政策上の理由による制限です。商標法第26条は、表示の中身や使用の態様に注目した制限で、特許法第69条を準用していません。
| 項目 | 特許法第69条 | 実用新案法第26条 | 意匠法第36条 | 商標法第26条 |
|---|---|---|---|---|
| 規定の形 | 固有の規定(第1項〜第3項) | 特許法第69条第1項・第2項を準用 | 特許法第69条第1項・第2項を準用 | 固有の規定(特許法第69条の準用なし) |
| 試験又は研究のためにする実施 | あり(第1項) | あり(準用) | あり(準用) | 対応する規定なし |
| 単に日本国内を通過するに過ぎない船舶・航空機等 | あり(第2項第1号) | あり(準用) | あり(準用) | 対応する規定なし |
| 出願の時から日本国内にある物 | あり(第2項第2号) | あり(準用) | あり(準用) | 対応する規定なし |
| 医薬の調剤 | あり(第3項) | 準用なし | 準用なし | 対応する規定なし |
| 自己の氏名等、普通名称・産地等、慣用、当然に備える特徴 | 対応する規定なし | 対応する規定なし | 対応する規定なし | あり(第1項第1号〜第5号) |
| 出所を認識できる態様でない使用 | 対応する規定なし | 対応する規定なし | 対応する規定なし | あり(第1項第6号) |
| 地理的表示との調整 | 対応する規定なし | 対応する規定なし | 対応する規定なし | あり(第3項) |
| 主観的要件による例外 | なし | なし | なし | あり(第2項、第3項ただし書の「不正競争の目的」) |
〔表12〕四法の「効力が及ばない範囲」の比較。各条の原文はe-Gov法令検索(特許法 334AC0000000121、実用新案法 334AC0000000123、意匠法 334AC0000000125、商標法 334AC0000000127)、2026年9月参照。特許法第69条の詳細は特許法シリーズの記事へ。
12. 改正前/現行
2026年9月時点のe-Gov法令検索で確認した現行の第26条は、上に引用したとおりです(第1項第1号〜第6号、第2項、第3項第1号〜第3号)。
| 部分 | 現行(2026年9月参照) | 改正の経緯 |
|---|---|---|
| 第1項第1号 | 「自己の氏名」に知名度の限定なし | 令和5年法律第51号は第4条第1項第8号(他人の氏名)を改正したが、現行の第26条第1項第1号の文言に知名度の限定は置かれていない |
| 第1項第5号 | 当然に備える特徴のうち政令で定めるもの(立体的形状、色彩、音)のみからなる商標 | 平成26年改正解説第4章171〜172・180〜181頁。新たな商標への対応と、商標的使用でない使用の効力制限を明文化 |
| 第1項第6号 | 需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標 | |
| 第3項 | 特定農林水産物等名称保護法にもとづく地理的表示を付する行為等 | 現行第3項と地理的表示法第30条を照合。国際協定に基づく指定産品にも読替え適用 |
〔表13〕現行の文言と、改正経緯の確認先。
試験での問われ方
| 試験 | 問われ方の型(一般的な整理。出題を予想するものではありません) | 使う条文・本記事の図表 |
|---|---|---|
| 短答式 | 第1号の「著名」がどこにかかるか/第2項は第1号だけの例外か、時期の限定(設定の登録があった後)/第2号・第3号の範囲(類似する商品・役務を含むか)/「のみからなる」の有無と柱書のかっこ書/第3項ただし書/「不正競争の目的」と「不正の目的」の読み分け | 表6、表7、表9、図6 |
| 論文式 | 侵害事例での被告の反論(第26条第1項各号の当てはめ、無効の抗弁、先使用との使い分け)。除斥期間経過後・普通名称化後の第三者の保護 | 表5、表11、図5、図7 |
| 口述 | 第26条第1項各号を条文の言葉で言えるか、第3条第1項との文言のちがい、第6号の文言 | 表4、表8 |
〔表14〕試験での問われ方の型(本記事作成者による一般的な整理)。
- 第26条第1項各号は、第3条第1項各号・第4条第1項第8号・第18号と対応する。ただし「自己の/他人の」「類似する商品・役務まで」「のみからなる、がない」「使用の態様に注目」といった文言のちがいがある。
- 第26条が働くのは、過誤登録、除斥期間(第47条第1項:設定の登録の日から5年)の経過後、登録後の普通名称化、正当な登録の類似範囲に記述的表示が入る場合、出所を示す態様でない使用、など(本記事作成者の整理)。
- 第2項は第1号だけの例外(設定の登録があった後+不正競争の目的)。第3項は行為に注目し、不正競争の目的でされない場合に限る。
- 第6号がいわゆる商標的使用でない使用を受けとめる。答案では条文の文言で書く。
- 特許法第69条(試験・研究など)は商標法に準用されていない。実用新案法第26条・意匠法第36条は特許法第69条第1項・第2項を準用する。
