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小学生でも分かる商標法|商標法第27条・第28条・第28条の2 登録商標の範囲と判定 ― 権利の「ものさし」は願書、まよったら特許庁に聞ける

小学生でもわかる商標法 第26回「登録商標の範囲と判定」。権利の範囲を確かめるしくみ。

小学生でも分かる商標法 / C. 商標権の効力・使用権・侵害 #26

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商標権(しょうひょうけん)は「登録した目じるし」を守る権利です。では、その「登録した目じるし」とは、どの形のことでしょう。答えは「願書(がんしょ)に書いた形」です。そして、相手の目じるしが自分の権利にあてはまるかどうかまよったときは、特許庁に意見を聞くしくみ(判定)があります。この記事では、その2つをまとめて学びます。

条文:商標法第27条・第28条・第28条の2特許庁資料:審判便覧 58―03 判定の審理、特許庁判定制度ガイドブック参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

権利の「ものさし」は、願書に書いた形

パン屋の「こぐま堂」が、パンの名前「ほしぞらパン」を特許庁(とっきょちょう)に登録したとします。商標(しょうひょう)=お店や商品の「目じるし」です。登録するときは、願書(がんしょ)=「この目じるしを、この商品で登録してください」とお願いする書類を出します。

何年かたつと、こぐま堂の看板は、かざり文字になったり、星のマークがついたりするかもしれません。でも、権利の中心になる「登録した目じるし」は、願書に書いた形で決まります。いま店先で使っている看板の形で決まるのではありません。

商品も同じです。願書に「パン」と書いたなら、登録した商品は「パン」です。あとから「ケーキも売っているから、ケーキもふくむ」とはなりません。

願書(がんしょ) 登録したい目じるし ほしぞらパン 使う商品 パン 出した人:こぐま堂 「登録した目じるし」は この形で決まる 「登録した商品」は この書き方で決まる いまの看板の形や、売っている 品ぞろえで決まるのではない 権利のものさし

図は左右にスクロールできます。

  • 橙の枠:願書に書いたこと(出した人が決める)
  • 青緑の枠:そこから決まる権利の「ものさし」
  • 赤の破線の枠:ものさしにはならないもの

【図1】願書に書いた目じるしと商品が、権利の「ものさし」になる。店名・商品名は架空の例。本記事作成者が条文を整理して図にしたもの。

音や動きの目じるしは、「説明」もいっしょに読む

目じるしには、文字や絵だけでなく、音や、動くマークなどもあります。こうした目じるしは、願書の絵や記号だけでは、どんなものか分かりにくいことがあります。そこで、願書には「くわしい説明」を書いたり、音を入れたデータなどをつけたりします。

法律は、こういう目じるしの「ものさし」を読むときは、その説明やつけた物も考えに入れて、願書に書いた目じるしの意味を読みとる、と決めています。

まよったら、特許庁に聞ける ― 判定(はんてい)

となり町の「ミナトベーカリー」が、「ほしぞらブレッド」という名前でパンを売りはじめました。こぐま堂は「うちの権利にあてはまるのでは?」と思います。ミナトベーカリーは「あてはまらない」と思っています。

こんなとき、特許庁に「あてはまりますか?」と聞くことができます。これを判定(はんてい)といいます。特許庁では、3人の審判官(しんぱんかん)=こうした問題を専門に調べる係の人が、話し合って答えを出します。

ただし、判定の答えは専門家の意見です。「やめなさい」と命令する力はありません。どうしても決着をつけたいときは、裁判所(さいばんしょ)で争うことになります。

こぐま堂 登録「ほしぞらパン」 「あてはまるはず」 ミナトベーカリー 「ほしぞらブレッド」 「あてはまらないはず」 聞く・言い分 特許庁 1 2 3 3人の審判官が 話し合って答える 判定の答え 「あてはまる」 または 「あてはまらない」 理由もつく 答えは「専門家の意見」。命令する力はない。 決着をつけるのは、裁判所の仕事。

図は左右にスクロールできます。

  • 橙の枠:当事者(聞く側・言い分を出す側)
  • 青緑の枠:特許庁と三名の審判官
  • 白い枠:判定の答え
  • 赤の破線の枠:判定の答えの限界(注意)

【図2】判定のイメージ。店名・商品名は架空の例で、この例の答えがどちらになるかを示すものではない。本記事作成者が条文と特許庁資料を整理して図にしたもの。

裁判所が特許庁に聞くこともある ― 鑑定(かんてい)のおねがい

裁判になったあと、裁判所のほうが「専門の特許庁の意見を聞きたい」と考えることがあります。このとき裁判所は、特許庁に鑑定(かんてい)=専門家としての意見を出すことをたのめます。たのまれた特許庁は、やはり3人の審判官に意見をまとめさせます。

しくみだれが聞く?だれが答える?答えの力
判定(はんてい)こぐま堂やミナトベーカリーのような、当事者特許庁の3人の審判官専門家の意見。命令する力はない
鑑定(かんてい)のおねがい裁判所特許庁の3人の審判官裁判所が判断するときの材料

〔表1〕特許庁に意見を聞く2つのしくみ。

① ものさしは願書に書いた形② 商品も願書の書き方で決まる③ まよったら特許庁に聞ける(判定)④ 判定は意見。命令ではない
レベル1のまとめ
  • 「登録した目じるし」がどんな形かは、願書に書いた形で決まる。
  • 「登録した商品・サービス」も、願書の書き方で決まる。
  • 音や動きなどの目じるしは、願書の「くわしい説明」やつけた物も考えに入れて読む。
  • 相手の目じるしが自分の権利にあてはまるかまよったら、特許庁に聞ける(判定)。3人の審判官が答える。
  • 裁判所が特許庁に意見をたのむしくみ(鑑定のおねがい)もある。

※ 「ものさし」で決まるのは、「同じ目じるし・同じ商品」の中心部分です。「にている目じるし」をどこまで止められるかは、別の条文の問題です。また、判定の手続には細かい決まりがあります(→レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第27条 ― 「範囲」を決める3つの項

商標法第27条(登録商標等の範囲)(原文) 第1項 登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならない。
第2項 指定商品又は指定役務の範囲は、願書の記載に基づいて定めなければならない。
第3項 第一項の場合においては、第五条第四項の記載及び物件を考慮して、願書に記載した商標の記載の意義を解釈するものとする。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
項何の範囲?何に基づいて?中学生向けの言いかえ
第1項登録商標の範囲願書に記載した商標「登録した目じるし」がどんな形かは、願書に書いた商標を見て決める
第2項指定商品又は指定役務の範囲願書の記載「登録した商品・サービス」が何かは、願書の書き方を見て決める
第3項(第1項の場合の読み方)商標法第5条第4項の記載及び物件を考慮音・動きなどの商標は、願書の「詳細な説明」や添付した物件も考えに入れて、願書に書いた商標の意味を読む

〔表2〕商標法第27条を部品に分解した表。

第3項が指す商標法第5条第4項は、次の条文です。

商標法第5条第4項(原文) 経済産業省令で定める商標について商標登録を受けようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、その商標の詳細な説明を願書に記載し、又は経済産業省令で定める物件を願書に添付しなければならない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。どの商標が対象か、何を添付するかは商標法施行規則第4条の8が定めています(→関連記事 #14)。
願書 商標登録を受けようとする商標 (願書に記載した商標) 指定商品又は指定役務 (商品及び役務の区分とともに記載) 商標の詳細な説明・物件 (商標法第5条第4項。 省令で定める商標の場合だけ) 登録商標の範囲 第27条第1項 指定商品又は指定役務の範囲 第27条第2項 第27条第3項 説明・物件を「考慮して」、願書に記載した 商標の記載の意義を解釈する

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の枠:願書(出願人が書く部分)
  • 橙の枠:商標法第27条が定める「範囲」
  • 藍の枠:第27条第3項(説明・物件を考慮して解釈する)
  • 藍の破線:省令で定める商標の場合だけある部分(第5条第4項)と、「考慮」の関係を示す矢印

【図3】願書の各部分と商標法第27条各項の対応。点線は「考慮」の関係(第3項は第1項の場合の解釈の仕方を定める)。本記事作成者が条文を整理して図にしたもの。

第28条 ― 判定

商標法第28条(原文) 第1項 商標権の効力については、特許庁に対し、判定を求めることができる。
第2項 特許庁長官は、前項の規定による求があつたときは、三名の審判官を指定して、その判定をさせなければならない。
第3項 特許法第七十一条第三項及び第四項の規定は、第一項の判定に準用する。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。e-Gov上、第28条・第28条の2には条見出しが付いていません。

第28条の2 ― 裁判所からの鑑定の嘱託

商標法第28条の2(原文) 第1項 特許庁長官は、裁判所から商標権の効力について鑑定の嘱託があつたときは、三名の審判官を指定して、その鑑定をさせなければならない。
第2項 特許法第七十一条の二第二項の規定は、前項の鑑定の嘱託に準用する。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
部品第28条(判定)第28条の2(鑑定の嘱託)
何について商標権の効力商標権の効力
だれが求める条文は主語を限定していない(「求めることができる」)裁判所
だれに特許庁に対し特許庁長官に(嘱託)
だれが行う特許庁長官が指定した三名の審判官特許庁長官が指定した三名の審判官
特許庁長官の義務判定を「させなければならない」鑑定を「させなければならない」
手続の細目特許法第71条第3項・第4項を準用特許法第71条の2第2項を準用

〔表3〕商標法第28条と第28条の2の部品分解。嘱託(しょくたく)=仕事をたのむこと。

条・項役割
第27条第1項登録商標の範囲の基準(願書に記載した商標)
第27条第2項指定商品又は指定役務の範囲の基準(願書の記載)
第27条第3項第1項の場合の解釈方法(商標法第5条第4項の記載及び物件の考慮)
第28条第1項判定を求めることができる旨(対象は「商標権の効力」)
第28条第2項三名の審判官の指定
第28条第3項特許法第71条第3項(審判の手続規定の準用・読替え)・第4項(却下の決定に不服申立て不可)の準用
第28条の2第1項裁判所からの鑑定の嘱託に対し、三名の審判官を指定して鑑定させる
第28条の2第2項特許法第71条の2第2項(合議体に関する規定の準用)の準用

〔表4〕項ごとの役割一覧。

判定の手続の流れ

判定の手続は、商標法第28条第3項が準用する特許法第71条第3項によって、審判の手続にならって進みます。特許庁の審判便覧は、判定を求められた側(被請求人)に判定請求書の副本を送り、答弁書を出す機会を与える流れを説明しています。

flowchart TB
  A["判定請求書を特許庁に提出
(対象の標章=実務上「イ号標章」と呼ぶ、を特定)"] --> B["特許庁長官が三名の審判官を指定
(商標法第28条第2項)"] B --> C{"不適法で補正できない請求か"} C -- "はい" --> D["決定で却下
(不服申立て不可:準用する特許法第71条第4項)"] C -- "いいえ" --> E["請求書の副本を被請求人に送達"] E --> F["被請求人が答弁書を提出
(指定期間内)"] F --> G["審理(原則は書面審理。証拠調べも可)"] G --> H["判定書の作成
「…商標権の効力の範囲に属する/属しない」"] H --> I["判定の謄本を当事者に送達"] style D fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style I fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:判定にたどり着く通常の終わり方
  • 赤の箱:判定をせずに手続が終わる場合(却下)

【図4】判定の手続の流れ。商標法第28条、準用する特許法第71条第3項・第4項、審判便覧 58―03 をもとに本記事作成者がフロー化したもの(細部は省略)。

レベル2のまとめ
  • 商標法第27条第1項=登録商標の範囲は「願書に記載した商標」に基づく。第2項=指定商品又は指定役務の範囲は「願書の記載」に基づく。
  • 第3項=第1項の場合に、商標法第5条第4項の記載(詳細な説明)及び物件を「考慮して」商標の記載の意義を解釈する。
  • 商標法第28条=「商標権の効力」について特許庁に判定を求めることができる。三名の審判官が判定する。
  • 商標法第28条の2=裁判所から鑑定の嘱託があったときも、三名の審判官が鑑定する。
  • 手続の細目は特許法第71条第3項・第4項、第71条の2第2項の準用で決まる。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 第27条の「範囲」は何を決める規定か ― 同一の基準点

商標法第27条が定めるのは、「登録商標」と「指定商品又は指定役務」が何であるかを確定する基準です。ここで確定した「登録商標」「指定商品又は指定役務」を出発点として、次のように別の条文が効力の広がりを定めます。

問題根拠条文第27条との関係
登録商標・指定商品又は指定役務そのものが何か商標法第27条第1項・第2項・第3項本記事の対象
指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する(講学上「専用権」と呼ばれる)商標法第25条第27条で確定した登録商標・指定商品又は指定役務がそのまま基準になる
登録商標に類似する商標、指定商品又は指定役務に類似する商品・役務への使用を侵害とみなす(講学上「禁止権」と呼ばれる)商標法第37条第1号第27条で確定した登録商標・指定商品又は指定役務を基準に、「類似」かどうかを判断する
商標権の効力が及ばない範囲商標法第26条第27条とは別の問題(効力の制限)

〔表5〕「範囲」の確定と、効力の広がりを定める条文の役割分担。

ポイント:第27条は「類似の範囲」を定める規定ではありません。類似の範囲に権利が及ぶかどうかは商標法第37条第1号の問題です(→関連記事 #24)。「第27条により、登録商標の範囲は類似する商標にも及ぶ」という趣旨の文は、条文の文言に合いません。

指定商品又は指定役務の範囲についても同様です。商標法第6条第3項は、前項の商品及び役務の区分は、商品又は役務の類似の範囲を定めるものではない。と定めています。区分(第○類)は類似の範囲を決めるものではなく、指定商品又は指定役務の範囲は、あくまで願書の記載に基づいて定まります(商標法第27条第2項)。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』は、第27条について、第28条の判定をする際の準則を定めているものであると説明しています。すなわち、商標権の範囲は登録商標の範囲とその指定商品又は指定役務の範囲とを基礎として定められるのであり、登録商標の範囲を定めるにあたっては願書に記載した商標にのみよるべきこと、指定商品又は指定役務の範囲を定めるにあたっては願書の記載にのみよるべきことを規定したものである、としています。そして、登録商標の範囲及び指定商品又は指定役務の範囲は、ともにその客観的範囲を意味し、商標権の効力の及ぶ範囲が第26条等によって制限されることとは関係ない、と述べています。〔表5〕の「別の問題」という整理は、この説明と同じ方向です。
出典:逐条解説〔第22版〕1653頁。
第27条は願書に基づく登録商標の客観的範囲を定めます。一方、第38条第5項・第50条の「社会通念上同一」は、損害賠償や不使用取消で登録商標の使用として扱う幅を定めるものです。たとえば書体のみの変更など、第38条第5項括弧書の例を、第27条の登録内容そのものの変更と混同しません。現行第27条・第38条・第50条・青本1653頁・1745頁。

2. 第27条第3項と新しいタイプの商標・標準文字

第3項の対象は、商標法第5条第4項により詳細な説明の記載又は物件の添付が求められる商標(経済産業省令で定める商標)です。これらの商標では、願書の商標記載欄だけでは内容が一義的に定まらないことがあるため、詳細な説明・物件を「考慮して」解釈します。

場面条文範囲の確定との関係
通常の文字・図形等の商標商標法第27条第1項願書に記載した商標に基づく。第3項の出番はない
標準文字による商標商標法第5条第3項、第27条第1項範囲の確定について特則となる項は第27条にない。第1項の原則どおり「願書に記載した商標」に基づく(条文上の帰結)
商標法第5条第4項の対象となる商標(動き・ホログラム・色彩のみ・音・位置など。対象は商標法施行規則第4条の8で確認)商標法第5条第4項、第27条第1項・第3項願書に記載した商標に基づきつつ、詳細な説明・物件を考慮して、記載の意義を解釈する
出願段階で、詳細な説明・物件が商標を特定しない場合商標法第5条第5項拒絶理由(商標法第15条第3号)、異議理由(商標法第43条の2第3号)、無効理由(商標法第46条第1項第3号)になる

〔表6〕商標のタイプと範囲の確定。第5条第4項の対象となる商標の正確な範囲は商標法施行規則で確認すること(→関連記事 #14)。

ポイント:第3項の文言は「考慮して…解釈する」です。詳細な説明・物件そのものが登録商標の範囲を定めるのではなく、範囲の基準は第1項の「願書に記載した商標」のままです。特許法第70条第2項(明細書の記載及び図面を「考慮して」用語の意義を解釈する)と同じ形の条文です(→〔表12〕)。
立法趣旨(逐条解説〔第22版〕・平成26年法律改正解説書):逐条解説〔第22版〕は、第3項について、平成26年の一部改正により商標法の保護対象を拡充したことに伴い追加されたものであると説明しています。すなわち、新たに保護対象となった色彩のみからなる商標等については、商標登録を受けようとする商標の記載のみによってはその内容を明確に特定することができないことから、願書に商標の詳細な説明を記載し、又は経済産業省令で定める物件を添付しなければならないとされている(第5条第4項)。本項は、第1項の規定に基づく登録商標の権利範囲の特定に際して、願書に記載した商標の記載の意義を解釈するためにこれらを考慮することとし、安定的に登録商標の権利範囲の特定ができるようにしたものである、としています。特許庁「平成26年 特許法等の一部改正 産業財産権法の解説」も、第5条第4項の商標の詳細な説明及び物件を、第27条第1項に基づく登録商標の権利範囲の決定に際して、願書に記載した商標の記載の意義を解釈するために考慮するものと位置付けることとした、と説明しています。
標準文字について。逐条解説〔第22版〕は、第27条の解説の中で、標準文字によって登録されている商標にあっては、その登録商標の範囲は、願書に直接記載した商標そのものではなく、これを標準文字(特許庁長官が指定して公表した文字)により表したもの、すなわち特許庁長官が指定して公表した文字と同一の書体に置き換えた商標に基づいて定めなければならない、と説明しています。〔表6〕の「第1項の原則どおり『願書に記載した商標』に基づく」という整理は、この説明と併せて読んでください。
出典:逐条解説〔第22版〕1653頁〜1654頁。平成26年改正解説書 第4章「商標法の保護対象の拡充等」172頁〜173頁。いずれも

3. 判定の性質 ― 法的拘束力がない

条文は、判定の効果について何も定めていません。特許庁の公式資料は、次のように説明しています。

論点特許庁資料の説明出典
法的拘束力判定の結果は当事者に法的拘束力を及ぼすものではない特許庁判定制度ガイドブック(判定制度の概要)
判定そのものへの不服申立て判定は行政処分ではなく、行政不服審査法及び行政事件訴訟法による不服申立てはできない審判便覧 58―03(改訂 令和5年12月)3.(4)ア
判定請求を却下する決定への不服申立てできない(準用する特許法第71条第4項)同 3.(4)イ、特許法第71条第4項
判定請求書を却下する決定への不服申立て行政不服審査法及び行政事件訴訟法による不服申立てができる同 3.(4)ウ
請求人の利害関係法律上の利害関係を有する者である必要はない特許庁判定制度ガイドブック
請求できる時期権利の設定登録後から可能。権利消滅後であっても請求可能特許庁判定制度ガイドブック
無効理由の主張判定の中で権利の有効・無効の判断を求めることはできない。無効の主張がされたときは無効審判の請求を促し、応じない場合は無効について考慮せずに審理する特許庁「審判制度に関するQ&A」判定制度、審判便覧 58―03 1.(4)エ
一事不再理・審理終結通知判定には適用がない(準用されていない)審判便覧 58―03 1.(5)(6)
請求の認諾認められない審判便覧 58―03 1.(3)ア

〔表7〕判定の性質についての特許庁資料の説明(実務上の取扱い。条文に直接の規定があるのは特許法第71条第4項の部分のみ)。2026年9月参照。

ポイント:「不服を申し立てることができない」と条文に書いてあるのは、準用する特許法第71条第4項の「前項において読み替えて準用する第百三十五条の規定による決定」(不適法な判定請求を却下する決定)だけです。判定そのものに不服申立てができないのは、判定が行政処分でないという性質から導かれる実務上の取扱いであり、根拠の種類が違います。

審判便覧 58―03 は、商標権についての判定の結論の記載例として、「商品〇〇〇に使用するイ号標章は、登録第〇〇号商標の商標権の効力の範囲に属する(属しない)」という形を示しています。「イ号標章」は、判定の対象となる標章を指す実務上の呼称です。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、商標法第28条について、商標権の効力の範囲について特許庁に対して判定を求める制度を規定したものであるとし、ここでいう商標権の効力の範囲について疑義のある場合とは、例えば登録商標と同一又は類似の商標の範囲、登録商標が品質・内容表示等に該当するか否かについて疑義のある場合をいい、このような場合に判定を求めることができる、と説明しています。同書は、詳細は特許法第71条の〔趣旨〕を参照するよう指示しています。
その特許法第71条の解説で、同書は、判定制度を、旧法(大正10年法)の確認審判制度に代わるべきものと考えることができるとしたうえで、確認審判との最も大きな相違点は、その判断(判定)が何ら法律的な拘束力を有するものでないことを明確にした点であると述べています。そのために、法律的な拘束力を有するものと解されるおそれのある旧法の規定を削除し、一事不再理の規定の適用も外した、としています。
同書は〔参考〕として、確認審判を廃止した経緯も説明しています。旧法の確認審判の審決の効力については、①鑑定的なもの(何ら拘束力のないもの)とする説、②極めて強い効力を認め当事者のみならず第三者をも拘束するとする説、③当事者のみを拘束するとする説の三つの考え方があったが、いずれも十分なものとはいえず、結局、審決が法律的な拘束力を有すると解されるおそれのある確認審判を廃止し、これに代わるものとして判定を求める制度を設けることとした、としています。そして、判定を求める制度は、右の三説のうち第一の説(拘束力のないもの)に立つものである、と述べています。〔表7〕の「法的拘束力なし」という特許庁資料の説明は、この立法趣旨と同じ方向です。
平成30年改正との関係。特許庁「平成30年 不正競争防止法等の一部改正 産業財産権法の解説」は、第4章で「判定制度の改善」を扱っていますが、そこで行われたのは第28条そのものの改正ではなく、判定に係る書類であって当事者から営業秘密が記載された旨の申出があったものを閲覧制限の対象に加える改正です(商標法では第72条第1項第2号の追加。特許法第186条第1項第2号、意匠法第63条第1項第3号も同旨)。同解説書は、その必要性を、判定に係る書類について営業秘密が記載された旨の申出があっても閲覧制限のための明示的な規定がなく、提出された営業秘密が漏洩するおそれがあり、それが判定制度の活用を妨げる要因となっていると考えられることに求めています。施行期日は、不正競争防止法等の一部を改正する法律(平成30年法律第33号)附則第1条本文により、同法の施行期日を定める政令(平成30年政令第257号)で平成31年7月1日(令和元年7月1日)とされています。
出典:逐条解説〔第22版〕1654頁(商標法第28条)、283頁〜285頁(特許法第71条)。平成30年改正解説書 第4章「判定制度の改善」77頁〜83頁。いずれも
審判便覧58―00は、判定には法的拘束力がなく、行政処分でもないと説明しています。商標法第26条の品質・原材料表示等に当たるかも、青本1653頁に判定対象の例として挙げられています。先使用権についても青本1669頁は判定を請求できると説明しています。特許の技術的範囲の判定で除外される事情を、そのまま商標の判定へ移すことはできません。審判便覧58―00/青本1653・1669頁

4. 準用される特許法の規定 ― 特許法第71条第3項・第4項

特許法第71条第3項(原文) 第百三十一条第一項、第百三十一条の二第一項本文、第百三十二条第一項及び第二項、第百三十三条、第百三十三条の二、第百三十四条第一項、第三項及び第四項、第百三十五条、第百三十六条第一項及び第二項、第百三十七条第二項、第百三十八条、第百三十九条(第六号及び第七号を除く。)、第百四十条から第百四十四条まで、第百四十四条の二第一項及び第三項から第五項まで、第百四十五条第二項から第八項まで、第百四十六条、第百四十七条第一項、第二項及び第三項(民事訴訟法第百六十条の二第一項の規定の準用に係る部分に限る。)、第百五十条第一項から第五項まで、第百五十一条から第百五十四条まで、第百五十五条第一項、第百五十七条並びに第百六十九条第三項、第四項及び第六項の規定は、第一項の判定について準用する。この場合において、第百三十五条中「審決」とあるのは「決定」と、第百四十五条第二項中「前項に規定する審判以外の審判」とあるのは「判定の審理」と、同条第六項ただし書中「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるとき」とあるのは「審判長が必要があると認めるとき」と、第百五十一条中「第百四十七条」とあるのは「第百四十七条第一項、第二項及び第三項(民事訴訟法第百六十条の二第一項の規定の準用に係る部分に限る。)」と、第百五十五条第一項中「審決が確定するまで」とあるのは「判定の謄本が送達されるまで」と読み替えるものとする。 特許法第71条第4項(原文) 前項において読み替えて準用する第百三十五条の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。

列挙が長いので、判定の流れに沿って主なものを整理します(要旨。各条の原文は特許法の関連記事とe-Govで確認してください)。

場面準用される特許法の規定(主なもの)判定での意味・読替え
請求第131条第1項、第131条の2第1項本文請求書の提出。請求書の要旨を変更する補正の制限(審判便覧 58―03 は、請求の趣旨・理由を変更する補正は認められないと説明)
方式・不適法な請求第133条、第133条の2、第135条第135条の「審決」を「決定」と読み替える。つまり不適法で補正できない判定請求は決定で却下される
相手方の関与第134条第1項・第3項・第4項副本の送達、答弁書提出の機会、審尋
判定をする者第136条第1項・第2項、第137条第2項、第138条、第139条(第6号及び第7号を除く。)、第140条〜第144条合議体、審判長、除斥・忌避
審理の方式第145条第2項〜第8項第145条第2項の読替えにより、判定の審理は書面審理による。ただし、審判長は当事者の申立てにより又は職権で口頭審理によるものとすることができる
証拠調べ・審理の進め方第150条第1項〜第5項、第151条〜第154条証拠調べ、職権による審理など
取下げ第155条第1項「審決が確定するまで」を「判定の謄本が送達されるまで」と読み替える
判定書・費用第157条、第169条第3項・第4項・第6項判定の方式・謄本の送達、費用の負担

〔表8〕特許法第71条第3項が準用する規定の整理(本記事作成者による要旨。列挙の全部は上の原文を参照)。

ポイント:列挙に入っていない規定にも注意します。たとえば特許法第148条・第149条(参加)、第156条(審理の終結の通知)は、特許法第71条第3項の列挙にありません。特許法第167条(確定した無効審決についての再請求の制限)も準用されていません。審判便覧 58―03 も、結審通知と一事不再理が判定に適用されない旨を説明しています。

鑑定の嘱託について準用される特許法第71条の2第2項は、次のとおりです。

特許法第71条の2第2項(原文) 第百三十六条第一項及び第二項、第百三十七条第二項並びに第百三十八条の規定は、前項の鑑定の嘱託に準用する。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
比較項目判定(商標法第28条)鑑定の嘱託(商標法第28条の2)
きっかけ特許庁に対する判定の求め裁判所からの嘱託
対象商標権の効力商標権の効力
行う者三名の審判官三名の審判官
準用規定特許法第71条第3項・第4項(請求、方式、答弁、合議体、除斥・忌避、審理方式、証拠調べ、取下げ、判定書、費用など)特許法第71条の2第2項(特許法第136条第1項・第2項、第137条第2項、第138条のみ)
当事者対立の手続(副本送達・答弁書)準用あり(特許法第134条第1項・第3項・第4項)準用規定に挙がっていない
結果の位置づけ法的拘束力なし(特許庁資料)裁判所が嘱託した鑑定の結果。訴訟でどう扱うかは裁判所の問題

〔表9〕判定と鑑定の嘱託の比較。準用の範囲が大きく異なる。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、商標法第28条の2を平成11年法律第41号による改正で追加された条文とし、裁判所から商標権の効力について鑑定の嘱託があったときの取扱いについて規定したものであるとして、詳細は特許法第71条の2の〔趣旨〕を参照するよう指示しています。
その特許法第71条の2の解説で、同書は、次のように説明しています。特許発明の技術的範囲は、特許権侵害訴訟において、侵害かどうかを判断する際に最も重要になるものである。従前でも、民事訴訟法第218条の規定により特許庁に対し鑑定を嘱託することは可能であったが、こうした重要な判断を行う主体が明確になっていなかったため、必ず3人の審判官により行われることを条文上明らかにした。第2項は審判の規定を準用し、①3人の審判官の合議体が審理を行うこと、②合議体の合議は過半数により決すること、③審判に関与することに故障がある審判官を他の審判官をもって補充すること、④3人の審判官のうち1人を審判長とすること、の4点を明らかにしたものである。
なお同書は、判定の手続を審判の規定の準用により定めることとした特許法第71条第3項の改正も平成11年の一部改正によるものであるとし、政令に規定される手続の内容には不明な点も多く、判定において、適正な審理手続に裏付けられた公正かつ迅速な審理・判断を担保するため必要な手続を整備することとしたものである、と説明しています。
出典:逐条解説〔第22版〕1655頁(商標法第28条の2)、283頁・285頁〜286頁(特許法第71条・第71条の2)。
裁判所からの嘱託があった場合、特許庁長官は3人の審判官を指定して鑑定を行わせます。審判便覧58―10は、通常の鑑定と同じく嘱託の根拠・対象、書類の受領と費用等の取扱いを定めています。この制度を整備した平成11年改正の該当部分は2000年1月1日に施行されました。第28条の2/審判便覧58―10/平成11年改正施行案内

5. 判定・無効審判・侵害訴訟の関係

商標権者 (こぐま堂) 標章を使用する者 (ミナトベーカリー) 特許庁 判定(第28条) 効力の範囲に属するか 無効審判(第46条) 登録が有効か 裁判所 侵害訴訟 差止め・損害賠償を命じる 判断ができるのは裁判所 無効審判を請求 (判定も求められる) 判定を求める 訴えの提起 鑑定の嘱託(第28条の2) → 三名の審判官が鑑定 注意 判定に法的拘束力はない。 判定の中で無効の判断は 求められない。無効は 無効審判で争う。 (特許庁資料の説明) 訴訟での無効の抗弁は 商標法第39条が準用する 特許法第104条の3(→関連記事)

図は左右にスクロールできます。

  • 橙の枠:当事者(商標権者・標章を使用する者)
  • 青緑の枠:特許庁の手続
  • 藍の枠:裁判所の手続
  • 白い枠:補足説明
  • 赤の破線の枠:判定についての注意
  • 藍の破線の矢印:裁判所から特許庁への鑑定の嘱託

【図5】判定・鑑定の嘱託・無効審判・侵害訴訟の相関図。店名は架空の例。条番号は、特に断りのない限り商標法。本記事作成者が条文と特許庁資料を整理して図にしたもの。

比較項目判定(商標法第28条)商標登録の無効の審判(商標法第46条)侵害訴訟
判断する機関特許庁(三名の審判官)特許庁(審判官の合議体)裁判所
判断の対象商標権の効力(対象の標章が効力の範囲に属するか)商標登録に無効理由があるか侵害の成否、差止め・損害賠償の請求の当否
結果の効力法的拘束力なし(特許庁資料)審決の確定により効果が生じる(詳細は関連記事)判決の効力
不服申立て判定そのものには不可(特許庁資料)。却下の決定にも不可(準用する特許法第71条第4項)審決に対する訴え(商標法第63条。詳細は関連記事)上訴
権利の有効・無効判断を求めることはできない(特許庁資料)これを判断する手続無効の抗弁(商標法第39条が準用する特許法第104条の3第1項・第2項)

〔表10〕判定・無効審判・侵害訴訟の比較(概要。無効審判・侵害訴訟の詳細は各関連記事へ)。

6. 拒絶・異議・無効の理由との関係

規定拒絶理由(商標法第15条)異議理由(商標法第43条の2)無効理由(商標法第46条第1項)除斥期間(商標法第47条)
商標法第27条非該当非該当非該当―
商標法第28条・第28条の2非該当非該当非該当―
(参考)商標法第5条第5項該当(第15条第3号)該当(第43条の2第3号)該当(第46条第1項第3号)第47条第1項に第46条第1項第3号の列挙なし(5年の除斥期間なし)

〔表11〕拒絶理由・異議理由・無効理由との対応。第27条・第28条・第28条の2は登録後の権利の範囲・手続の規定であり、登録の可否の要件ではない。

なお、商標法第68条第3項は、第十八条、第二十六条から第二十八条の二までなどの規定を防護標章登録に基づく権利に準用しています。したがって、第27条・第28条・第28条の2は防護標章登録に基づく権利にも準用されます。

7. 特許法・実用新案法・意匠法との比較

比較項目特許法実用新案法意匠法商標法
範囲を定める条文特許法第70条実用新案法第26条(特許法第70条を準用)意匠法第24条商標法第27条
範囲の基準「願書に添付した特許請求の範囲の記載」(第1項)特許法第70条の準用による「願書の記載及び願書に添附した図面に記載され又は願書に添附した写真、ひな形若しくは見本により現わされた意匠」(第1項)「願書に記載した商標」(第1項)、「願書の記載」(第2項)
解釈で考慮するもの「願書に添付した明細書の記載及び図面」(第2項)同上(準用)考慮規定はない「第五条第四項の記載及び物件」(第3項)
考慮してはならないもの要約書の記載(第3項)同上(準用)規定なし規定なし
類否判断の基準の明文――意匠法第24条第2項(需要者の視覚を通じて起こさせる美感)第27条にはない
判定の条文特許法第71条実用新案法第26条(特許法第71条を準用)意匠法第25条商標法第28条
判定の対象「特許発明の技術的範囲」特許法第71条の準用による「登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲」「商標権の効力」
判定の手続特許法第71条第3項・第4項同上(準用)特許法第71条第3項・第4項を準用(意匠法第25条第3項)特許法第71条第3項・第4項を準用(商標法第28条第3項)
鑑定の嘱託特許法第71条の2実用新案法第26条(特許法第71条の2を準用)意匠法第25条の2商標法第28条の2

〔表12〕四法比較。「」内は各条の原文(e-Gov、2026年9月参照)。実用新案法第26条は「第七十条から第七十一条の二まで」を準用する。

ポイント:判定の対象の文言が三者三様です。特許法は「特許発明の技術的範囲」、意匠法は「登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲」、商標法は「商標権の効力」。商標法だけが「範囲」ではなく「効力」という語を使っています。第27条の見出しが「登録商標等の範囲」であるのに、第28条の対象が「商標権の効力」である点を、条文の文言どおり押さえます。
「商標権の効力」の判定は、商標の外観等が似ているかという比較だけではありません。青本は、同一・類似の範囲と、品質・内容表示等に当たるかを例示しています。第26条の効力制限や第32条の先使用が関係する場面も、特許法の「技術的範囲」と同じ範囲に限定しません。この説明は制度の対象についての確認であり、条文の語の選択理由を推測するものではありません。青本1653・1669頁

8. 判断手順の分岐図

flowchart TB
  S["相手の標章が自分の商標権に触れるか検討する"] --> A["登録商標・指定商品又は指定役務を確定する
(商標法第27条第1項・第2項)"] A --> B{"商標法第5条第4項の
詳細な説明・物件がある商標か"} B -- "はい" --> C["説明・物件を考慮して
商標の記載の意義を解釈(第27条第3項)"] B -- "いいえ" --> D["願書に記載した商標をそのまま基準にする"] C --> E{"相手の標章・商品役務は
登録商標・指定商品役務と同一か"} D --> E E -- "同一" --> F["商標法第25条の問題
(講学上の専用権)"] E -- "同一ではない" --> G{"類似か"} G -- "類似" --> H["商標法第37条第1号の問題
(講学上の禁止権)"] G -- "非類似" --> I["この商標権の効力は及ばない方向"] F --> J["別途、商標法第26条などの効力の制限を検討"] H --> J J --> K["当事者間で見解が分かれるとき:
特許庁に判定を求めることができる(商標法第28条)"] style I fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style K fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:この検討手順の到達点(特許庁に判定を求められる)
  • 赤の箱:商標権の効力が及ばない方向の結論

【図6】範囲の確定から判定までの検討手順。本記事作成者が条文を整理してフロー化したもの(商標法第37条第2号以下、使用権、先使用などは省略。例外あり)。

flowchart LR
  A["侵害訴訟が裁判所に係属"] --> B["裁判所が特許庁長官に
商標権の効力について鑑定を嘱託"] B --> C["特許庁長官が三名の審判官を指定
(商標法第28条の2第1項)"] C --> D["三名の審判官が鑑定
(合議体の規定を準用:特許法第71条の2第2項)"] D --> E["鑑定の結果が裁判所へ"] style E fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図7】裁判所からの鑑定の嘱託の流れ。商標法第28条の2をもとに本記事作成者がフロー化したもの。

9. 確認問題

Q. 登録商標の範囲は、商標権者が現に使用している商標の態様に基づいて定められるか。
A. 条文上、登録商標の範囲は「願書に記載した商標」に基づいて定めなければならない(商標法第27条第1項)。使用している態様に基づくとは定められていない。
Q. 商標法第5条第4項の詳細な説明は、それ自体が登録商標の範囲を定める基準か。
A. 条文上は、第1項の場合において、第5条第4項の記載及び物件を「考慮して」、願書に記載した商標の記載の意義を「解釈する」とされている(商標法第27条第3項)。基準は第1項の「願書に記載した商標」である。
Q. 判定は何名の審判官が行うか。裁判所からの鑑定の嘱託の場合はどうか。
A. いずれも、特許庁長官が指定する三名の審判官(商標法第28条第2項、第28条の2第1項)。
Q. 不適法な判定請求を却下する決定に対して、不服を申し立てることができるか。
A. できない(商標法第28条第3項が準用する特許法第71条第4項)。

試験での問われ方

試験種別問われうる形(条文から導かれる論点)
短答式第27条各項の文言(「願書に記載した商標」「願書の記載」「考慮して」)、判定の対象の文言の四法比較、三名の審判官、準用される特許法の規定と準用されない規定、却下の決定への不服申立ての可否、防護標章登録に基づく権利への準用(商標法第68条第3項)
論文式侵害の成否を検討する答案で、登録商標・指定商品又は指定役務を確定する根拠として第27条を示し、商標法第25条・第37条第1号と書き分ける場面
口述条文の文言の再現(第27条第1項〜第3項、第28条第1項)と、判定の性質の説明

〔表13〕試験種別ごとの問われうる形(本記事作成者による整理。出題を予測するものではない)。

令和8年度【商標】問6の肢1は標準文字を扱います。第5条第3項の標準文字制度では、願書の記載に基づき特許庁長官が定めた標準文字で表したものが登録商標となり、書体を特定しない文字そのものにはなりません。この肢は正しく、誤りを選ぶ同問の公式正解は3です。 公式問題・公式解答。
レベル3のまとめ
  • 第27条は「登録商標」「指定商品又は指定役務」そのものを確定する規定。類似の範囲は商標法第37条第1号の問題であり、第27条が類似範囲を定めるのではない。
  • 第27条第3項は「考慮して…解釈する」。基準はあくまで第1項の「願書に記載した商標」。
  • 判定の対象は「商標権の効力」(特許法は「特許発明の技術的範囲」、意匠法は「登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲」)。
  • 判定に法的拘束力はなく、判定そのものに不服申立てはできない(特許庁資料)。不適法な請求を却下する決定に不服申立てができないことは、準用する特許法第71条第4項が明文で定める。
  • 判定は特許法第71条第3項の広い準用、鑑定の嘱託は特許法第71条の2第2項の合議体関係の規定のみの準用。
  • 第27条〜第28条の2は、商標法第68条第3項により防護標章登録に基づく権利に準用される。

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