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小学生でも分かる商標法|商標法第5条・第5条の2 商標登録出願と出願日の認定 ― 「申込書」に何を書くか、そして「出した日」はいつになるか

小学生でもわかる商標法 第14回「出願と出願日の認定」。願書の書き方と出願日の決まり。

小学生でも分かる商標法 / B. 出願・審査・登録の手続 #14

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お店や商品の「目じるし」を登録してもらうには、まず特許庁(とっきょちょう)に申込書を出します。申込書には、書かなければならないことが法律で決まっています。そして、申込書を「出した日」は、あとで順番をくらべるときにとても大事です。この記事では、申込書に書くことと、「出した日」がどう決まるかを、3つのレベルで順に見ていきます。

条文:商標法第5条(第1項〜第6項)・第5条の2(第1項〜第5項)審査基準:商標審査基準〔改訂第17版〕 第4 第5条(商標登録出願)参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

目じるしを登録するには、まず「申込書」を出す

商標(しょうひょう)とは、お店や商品の「目じるし」のことです。たとえば、町のパン屋さんが「ほしぞらパン」という名前を、自分の店の目じるしとして登録してもらいたいとします(架空の店名です)。

パン屋さんは、特許庁という国の役所に、申込書を出します。この申込書を願書(がんしょ)といいます。申込書を出すことを出願(しゅつがん)といいます。

図書館でカードを作るときの申込書を思い出してください。名前や住所を書くところが決まっていますね。目じるしの申込書も同じで、書くことが法律で決まっています。

目じるしの申込書(願書)のイメージ 「この目じるしを登録してください」 ① だれが 名前と住所(パン屋のミナトさん) ② どの目じるしを ほしぞらパン ③ 何に使うか 商品:パン (商品のグループ分けの番号も書く) 出す(出願) 特許庁の窓口 出した日 4月1日 「出した日」を記録する

図は左右にスクロールできます。

  • 橙の枠:パン屋さん(出す人)が用意する申込書(願書)
  • 青緑の枠:特許庁の側
  • 赤の枠:特許庁が記録する「出した日」

【図1】目じるしの申込書(願書)のイメージ。「ほしぞらパン」「ミナトさん」は架空の名前。日付も架空。書く項目は大きく3つにまとめて描いている(正確な項目は→レベル2)。本記事作成者が模式化したもの。

申込書に書く3つのこと

① だれが(名前と住所)② どの目じるしを(登録してほしい目じるし そのもの)③ 何に使うか(商品やサービスと、そのグループ分け)

③が大切なのは、目じるしは「何に使うか」とセットで登録されるからです。「ほしぞらパン」をパンに使うのか、えんぴつに使うのかで、話がちがってきます。

とくべつな目じるしは、「このタイプです」と書く

目じるしは、文字や絵だけではありません。動く目じるし、立体(りったい)の形の目じるし、色だけの目じるし、音の目じるし、つける場所が決まっている目じるしもあります。

こういうとくべつな目じるしを出すときは、申込書に「これは音の目じるしです」のように、タイプを書きます。さらに、「どんな目じるしか」の説明を書いたり、音のデータを付けたりします。紙に「ポロロン♪」と書いてあるだけでは、どんな音か分からないからです。

「出した日」は、とても大事

目じるしの登録は、かんたんにいうと、よく似た目じるしを何人もが出したとき、先に出した人が優先(ゆうせん)されます。だから、申込書を「いつ出したか」が大事です。

では、申込書が書きかけだったら、どうなるでしょう。たとえば、かんじんの目じるしを書きわすれていたら?

法律は、「さいていげん、これだけは書いてないと、出したことにできません」という4つを決めています。

① 「目じるしを登録してほしい」という申込みだと分かること② 出した人の名前が分かること③ 目じるしが書いてあること④ 何に使うか(商品・サービス)が書いてあること

4つのどれかが欠けていると、特許庁から「足りないところを足してください」と言われます。決められた期間のうちに足せば、足した日が「出した日」になります。足さなければ、申込みそのものがなかったことにされることがあります。

4月1日 4月10日 4月20日 Aさん 4つそろっている 申込書を出す 出した日=4月1日 Bさん 目じるしを 書きわすれた 申込書を出す 目じるしがない! 特許庁「足りないところを 足してください」 目じるしを足す 出した日=4月20日 Cさん 4つそろっている 申込書を出す 出した日=4月10日 Bさんは4月1日に来たのに、 順番はCさんより後ろになる

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の枠:4つがそろっていて、出した日がそのまま「出した日」になる
  • 赤の枠:4つのどれかが欠けている申込書
  • 橙の枠:足した日が「出した日」になる
  • 色のついていない枠:特許庁からの「足してください」という求め
  • 破線の縦線:同じ日をそろえて見るための目じるし

【図2】「出した日」の決まり方のイメージ。人物・日付はすべて架空。Bさんのように4つのどれかが欠けていると、足した日が「出した日」になる。本記事作成者が模式化したもの。

レベル1のまとめ
  • 目じるしを登録してもらうには、申込書(願書)を特許庁に出す。
  • 申込書には「だれが」「どの目じるしを」「何に使うか」を書く。
  • 動く・立体・色だけ・音・場所つきの目じるしは、「このタイプです」と書き、説明やデータを付ける。
  • さいていげんの4つがそろっていれば、申込書を出した日が「出した日」になる。欠けていると、足した日が「出した日」になる。

※ 「先に出した人が優先」は、正確には条件があります(商標法第8条・第4条第1項第11号 →関連記事)。「説明やデータを付ける」目じるしの種類と、説明がいらない場合があること、4つ以外の書きもれ(住所やグループ分けの番号など)がどうあつかわれるかは、レベル3で説明します。

LEVEL 2条文の骨格

第5条第1項 ― 願書に書く3つの事項

商標法第5条第1項(原文) 商標登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書に必要な書面を添付して特許庁長官に提出しなければならない。
一 商標登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 商標登録を受けようとする商標
三 指定商品又は指定役務並びに第六条第二項の政令で定める商品及び役務の区分
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
部品文言意味
だれが商標登録を受けようとする者目じるしを登録してほしい人(会社でもよい)
何を出す願書(+必要な書面)決まった事項を書いた申込書。必要な書類があれば付ける
だれに特許庁長官特許庁のいちばん上の人あてに出す
書くこと①第1号 氏名又は名称及び住所又は居所出願する人の名前(会社名)と住所
書くこと②第2号 商標登録を受けようとする商標登録してほしい目じるし そのもの
書くこと③第3号 指定商品又は指定役務並びに区分目じるしを使う商品・サービス(役務)と、そのグループ分け(区分)

〔表1〕商標法第5条第1項の部品分解。「区分」は商標法第6条第2項の政令で定めるグループ分けのこと(→関連記事)。

商 標 登 録 願 (あて先)特許庁長官 殿 【商標登録を受けようとする商標】 ほしぞらパン (商標を記載する欄) 【標準文字】 ←標準文字で出すときだけ 【指定商品又は指定役務並びに区分】 【第○類】 【指定商品(指定役務)】パン 【商標登録出願人】 【住所又は居所】○○県○○市ミナト町1番地 【氏名又は名称】ミナトベーカリー株式会社 (すべて架空) 第5条第1項第2号 欠けると出願日が認定されない 第5条第3項 「その旨」を願書に記載 第5条第1項第3号 指定商品・役務がないと認定なし 第5条第1項第1号 氏名・名称がないと認定なし どの欄が、どの条文か (右の注記は第5条の2第1項との関係)

図は左右にスクロールできます。

  • 同じ色どうし:願書の欄と、その根拠の条文の箱が対応している
  • 青緑の枠:商標の欄と、第5条第1項第2号
  • 橙の枠:標準文字の欄と、第5条第3項
  • 藍の枠:指定商品又は指定役務並びに区分の欄と、第5条第1項第3号
  • 色のついていない枠:出願人の欄と、第5条第1項第1号

【図3】願書の模式図(架空の商標「ほしぞらパン」、架空の出願人)。欄の名前や並びは説明用に簡略化しており、実際の様式は商標法施行規則の様式で確認してください。区分の番号は架空例のため「第○類」としている。本記事作成者が模式化したもの。

第5条第2項〜第6項 ― とくべつな場合の追加ルール

商標法第5条第2項(原文) 次に掲げる商標について商標登録を受けようとするときは、その旨を願書に記載しなければならない。
一 商標に係る文字、図形、記号、立体的形状又は色彩が変化するものであつて、その変化の前後にわたるその文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合からなる商標
二 立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる商標(前号に掲げるものを除く。)
三 色彩のみからなる商標(第一号に掲げるものを除く。)
四 音からなる商標
五 前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める商標
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
商標法第5条第3項〜第6項(原文) 第3項 商標登録を受けようとする商標について、特許庁長官の指定する文字(以下「標準文字」という。)のみによつて商標登録を受けようとするときは、その旨を願書に記載しなければならない。
第4項 経済産業省令で定める商標について商標登録を受けようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、その商標の詳細な説明を願書に記載し、又は経済産業省令で定める物件を願書に添付しなければならない。
第5項 前項の記載及び物件は、商標登録を受けようとする商標を特定するものでなければならない。
第6項 商標登録を受けようとする商標を記載した部分のうち商標登録を受けようとする商標を記載する欄の色彩と同一の色彩である部分は、その商標の一部でないものとみなす。ただし、色彩を付すべき範囲を明らかにしてその欄の色彩と同一の色彩を付すべき旨を表示した部分については、この限りでない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
項役割(ひとことで)中学生向けの言いかえ
第1項願書の記載事項(3つの号)申込書には「だれが・どの商標を・何に使うか」を書く
第2項とくべつなタイプの商標は「その旨」を願書に記載動く・立体・色だけ・音・その他(省令で決めるもの)は、タイプを書く
第3項標準文字で出すときは「その旨」を願書に記載書体にこだわらず、特許庁長官が決めた文字だけで出すなら、そう書く
第4項省令で定める商標は、詳細な説明の記載/物件の添付図だけでは分かりにくい商標は、言葉の説明やデータを付ける
第5項第4項の記載・物件は商標を特定するものであること説明やデータは、願書の商標とぴったり合っていて、商標をはっきりさせるものでなければならない
第6項商標を記載する欄と同じ色の部分のあつかい欄の地の色と同じ色の部分は、原則として商標の一部ではないとみなす(例外あり=ただし書)

〔表2〕商標法第5条の項ごとの役割一覧。右列は本記事作成者による言いかえ。

動き商標 時間とともに変化する 第5条第2項第1号(変化商標) ホログラム商標 見る角度で変化する 第5条第2項第1号(変化商標) 立体商標 立体的な形 第5条第2項第2号 色彩のみからなる商標 形がなく、色だけ 第5条第2項第3号 音商標 耳で聞く目じるし 第5条第2項第4号 位置商標 えんぴつのこの位置に赤い帯 第5条第2項第5号+施行規則

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の枠:変化する商標(第5条第2項第1号。動き商標・ホログラム商標)
  • 藍の枠:条文本文に挙げられた、変化しない類型(第2号 立体・第3号 色彩のみ・第4号 音)
  • 橙の枠:経済産業省令で定める商標(第5号。位置商標)
  • 赤のベタ塗り:位置商標の標章そのもの
  • 破線:位置商標の図で、標章以外の部分(えんぴつの輪かく。商標ではない)
  • 箱の中の図柄:類型のイメージで、その色自体に意味はない

【図4】願書に「その旨」を記載する商標の類型(商標法第5条第2項各号、商標法施行規則第4条〜第4条の7)。図柄はすべて架空で、実在の商標を描いたものではない。本記事作成者が模式化したもの。

第5条第2項条文の言い方商標法施行規則での呼び名
第1号文字・図形等が「変化するもの」であって、変化の前後にわたる文字・図形等からなる商標「変化商標」。このうち時間の経過に伴って変化するもの=「動き商標」(施行規則第4条)、ホログラフィーその他の方法により変化するもの=「ホログラム商標」(施行規則第4条の2)
第2号立体的形状からなる商標(第1号のものを除く)「立体商標」(施行規則第4条の3)
第3号色彩のみからなる商標(第1号のものを除く)「色彩のみからなる商標」(施行規則第4条の4)
第4号音からなる商標「音商標」(施行規則第4条の5)
第5号前各号のほか、経済産業省令で定める商標「位置商標」(施行規則第4条の7が位置商標とすると定める。定義は施行規則第4条の6)

〔表3〕商標法第5条第2項各号と商標法施行規則(法令ID 335M50000400013)の対応。中央の列は条文の要約(原文は上の引用を参照)。2026年9月参照。

第5条の2 ― 「出した日」をいつと認めるか

商標法第5条の2(原文) 第1項 特許庁長官は、商標登録出願が次の各号の一に該当する場合を除き、商標登録出願に係る願書を提出した日を商標登録出願の日として認定しなければならない。
 一 商標登録を受けようとする旨の表示が明確でないと認められるとき。
 二 商標登録出願人の氏名若しくは名称の記載がなく、又はその記載が商標登録出願人を特定できる程度に明確でないと認められるとき。
 三 願書に商標登録を受けようとする商標の記載がないとき。
 四 指定商品又は指定役務の記載がないとき。
第2項 特許庁長官は、商標登録出願が前項各号の一に該当するときは、商標登録を受けようとする者に対し、相当の期間を指定して、商標登録出願について補完をすべきことを命じなければならない。
第3項 商標登録出願について補完をするには、手続の補完に係る書面(以下「手続補完書」という。)を提出しなければならない。
第4項 特許庁長官は、第二項の規定により商標登録出願について補完をすべきことを命じた者が同項の規定により指定された期間内にその補完をしたときは、手続補完書を提出した日を商標登録出願の日として認定しなければならない。
第5項 特許庁長官は、第二項の規定により商標登録出願について補完をすべきことを命じた者が同項の規定により指定された期間内にその補完をしないときは、当該商標登録出願を却下することができる。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
項だれがどんなときどうする/どうなる
第1項特許庁長官4つの号のどれにも当たらないとき願書を提出した日を出願の日として認定しなければならない
第2項特許庁長官4つの号のどれかに当たるとき相当の期間を指定して、補完を命じなければならない
第3項出願しようとする者補完をするとき手続補完書を提出する
第4項特許庁長官指定された期間内に補完をしたとき手続補完書を提出した日を出願の日として認定しなければならない
第5項特許庁長官指定された期間内に補完をしないときその商標登録出願を却下することができる

〔表4〕商標法第5条の2の項ごとの役割。語尾(しなければならない/することができる)のちがいに注意。

flowchart TB
  A["願書を特許庁長官に提出"] --> B{"第5条の2第1項の
4つの号のどれかに当たるか"} B -- "当たる" --> D["特許庁長官が相当の期間を指定して
補完を命じる(第2項)"] B -- "当たらない" --> C["願書を提出した日を
商標登録出願の日として認定
(第1項)"] D --> E{"指定された期間内に
手続補完書を提出して補完したか
(第3項)"} E -- "補完した" --> F["手続補完書を提出した日を
商標登録出願の日として認定
(第4項)"] E -- "補完しない" --> G["商標登録出願を
却下することができる(第5項)"] style C fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style F fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style G fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:出願の日が認定される結論
  • 赤の箱:出願が却下され得る結論

【図5】出願の日の認定の流れ(商標法第5条の2第1項〜第5項)。条文を本記事作成者がフロー化したもの。

号出願の日が認定されない場合図3の願書でいうと
第1号商標登録を受けようとする旨の表示が明確でないそもそも「商標登録願」であることが分からない
第2号出願人の氏名・名称の記載がない、又は出願人を特定できる程度に明確でない【氏名又は名称】が空欄、又はだれのことか分からない
第3号願書に商標登録を受けようとする商標の記載がない【商標登録を受けようとする商標】が空欄
第4号指定商品又は指定役務の記載がない【指定商品(指定役務)】が空欄

〔表5〕商標法第5条の2第1項各号。左から2列目は条文の要約、右列は本記事作成者による図3との対応づけ。

timeline
  title 出願の日のタイムライン(架空の例)
  section 不備のない願書
    4月1日 : 願書を提出 : 出願の日は4月1日
  section 商標の記載がない願書
    4月1日 : 願書を提出 : 第5条の2第1項第3号に該当
    4月8日 : 補完を命じられる : 相当の期間が指定される
    4月20日 : 手続補完書を提出 : 出願の日は4月20日

図は左右にスクロールできます。

【図6】出願の日のタイムライン。日付はすべて架空で、指定される期間の長さを示すものではない。条文を本記事作成者がタイムライン化したもの。時間軸に縮尺はありません。

レベル2のまとめ
  • 商標法第5条第1項:願書には「出願人の氏名又は名称及び住所又は居所」「商標」「指定商品又は指定役務並びに区分」を記載する。
  • 第2項:変化する商標・立体・色彩のみ・音・省令で定める商標(位置商標)は、その旨を願書に記載する。第3項:標準文字も、その旨を記載する。
  • 第4項・第5項:省令で定める商標は、詳細な説明の記載又は物件の添付が必要で、それは商標を特定するものでなければならない。
  • 第5条の2:4つの号に当たらなければ願書を提出した日が出願の日。当たれば補完命令→手続補完書を提出した日が出願の日。補完しなければ却下されることがある。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 第5条第1項 ― 特許法・実用新案法・意匠法の願書との違い

商標法第5条第1項各号の記載事項は3つで、特許法第36条第1項・実用新案法第5条第1項・意匠法第6条第1項と並べると、「発明者」「考案者」「意匠の創作をした者」に当たる号がない点が目立ちます。これは条文を並べて分かる事実です。

法律願書の記載事項(各号)願書に添付するもの
特許法第36条第1項・第2項第1号 特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所/第2号 発明者の氏名及び住所又は居所明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書(第2項)
実用新案法第5条第1項第1号 実用新案登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所/第2号 考案者の氏名及び住所又は居所(第2項以下は実用新案法の記事を参照)
意匠法第6条第1項第1号 意匠登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所/第2号 意匠の創作をした者の氏名及び住所又は居所/第3号 意匠に係る物品又は意匠に係る建築物若しくは画像の用途意匠登録を受けようとする意匠を記載した図面(第2項で写真、ひな形又は見本による代替あり)
商標法第5条第1項第1号 商標登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所/第2号 商標登録を受けようとする商標/第3号 指定商品又は指定役務並びに区分「必要な書面」。商標そのものは願書に記載する(第2号)

〔表6〕四法の願書の記載事項の比較。各条文はe-Gov法令検索で2026年9月に確認。各号の文言は原文を一部つないで示している。

ポイント:特許法では権利の対象(発明)は願書に添付する明細書・特許請求の範囲に書き、意匠法では願書に添付する図面に表します。商標法では、商標は願書そのものの記載事項です(商標法第5条第1項第2号)。このため、登録商標の範囲は「願書に記載した商標」に基づいて定められ(商標法第27条第1項)、指定商品又は指定役務の範囲は「願書の記載」に基づいて定められます(同条第2項)。

2. 第5条第2項・第4項 ― 新しいタイプの商標と、願書記載・詳細な説明・物件

「新しいタイプの商標」は実務上の呼称です。特許庁の制度解説ページ「新しいタイプの商標の保護制度」は、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標、位置商標の5つを挙げ、出願受付の開始を平成27年4月1日としています。立体商標はそれ以前からある類型ですが、商標法第5条第2項・第4項では同じ枠組みで扱われます。

商標法第5条第4項の「経済産業省令で定める商標」は、商標法施行規則第4条の8第1項が、動き商標・ホログラム商標・立体商標・色彩のみからなる商標・音商標・位置商標の6つと定めています。それぞれ何が必要かは同条第2項が定めます。

類型「その旨」の記載
(第5条第2項)
願書への商標の記載方法
(施行規則・要旨)
商標の詳細な説明
(施行規則第4条の8第2項)
物件の添付
(同項・第3項)
動き商標必要(第1号)時間の経過に伴う変化の状態が特定されるように表示した一又は異なる二以上の図又は写真(第4条)記載する―
ホログラム商標必要(第1号)変化の前後の状態が特定されるように表示した一又は異なる二以上の図又は写真(第4条の2)記載する―
立体商標必要(第2号)一又は異なる二以上の方向から表示した図又は写真。実線と破線で描き分ける方法も可(第4条の3第1号・第2号)記載する(商標を特定するために必要がある場合に限る)―
色彩のみからなる商標必要(第3号)色彩を表示した図又は写真。色彩を付する位置を特定する場合は、その他の部分を破線で描く等(第4条の4第1号・第2号)記載する―
音商標必要(第4号)文字若しくは五線譜又はこれらの組み合わせで、音を特定するために必要な事項を記載(第4条の5。ただし書で一線譜の併用可)記載する(必要がある場合に限る。第3号の括弧書が「第五号において同じ」とする)添付する(商標を特許庁長官が定める方式に従って記録した一の光ディスク)
位置商標必要(第5号+施行規則第4条の7)標章を実線で描き、その他の部分を破線で描く等により、標章及びそれを付する位置が特定されるように表示した一又は異なる二以上の図又は写真(第4条の6)記載する―
(参考)通常の文字・図形の商標不要願書の商標記載欄に記載第5条第4項の対象外―

〔表7〕商標の類型 × 願書の記載・詳細な説明・物件の要否。商標法第5条第2項・第4項、商標法施行規則第4条〜第4条の8(法令ID 335M50000400013、2026年9月参照)を本記事作成者が整理したもの。記載方法の列は要旨で、原文そのままではない。

ポイント:条文の文言は「詳細な説明を願書に記載し、又は…物件を願書に添付しなければならない」(商標法第5条第4項)ですが、どの類型に何が必要かは省令が決めます。音商標は物件(光ディスク)の添付が定められ、立体商標と音商標の「詳細な説明」は、商標を特定するために必要がある場合に限られます(商標法施行規則第4条の8第2項第3号・第5号)。「新しいタイプの商標は必ず詳細な説明が要る」と覚えると誤ります。

願書では、商標の類型に応じて【動き商標】【ホログラム商標】【立体商標】【色彩のみからなる商標】【音商標】【位置商標】の表示を用います。音の物件はMP3形式・5MB以下で、CD-R又はDVD-Rに記録します。電子出願ソフトで物件自体をオンライン提出する方法ではなく、オンラインで願書を出した場合は3日以内に物件を添えた手続補足書を書面提出します。立体商標の詳細な説明は特定に必要な場合に限るとされ、この取扱いを含む令和2年経済産業省令第8号は2020年4月1日以後の出願に適用されます。出典:新しいタイプの商標Q&A・Q3-11等、音声ファイルの要件、令和2年省令改正。

3. 第5条第3項 ― 標準文字

標準文字とは、条文上、特許庁長官の指定する文字です。標準文字のみによって商標登録を受けようとするときは、その旨を願書に記載します(商標法第5条第3項)。

項目内容根拠
定義特許庁長官の指定する文字商標法第5条第3項
手続「その旨」を願書に記載する同上
公報での表示出願公開で商標公報に掲載される「願書に記載した商標」は、標準文字の場合標準文字により現したもの商標法第12条の2第2項第3号の括弧書
制度の採用時期平成8年改正商標法(平成9年4月1日施行)で採用特許庁「商標法第5条第3項に規定する標準文字について」(2023年2月17日更新)
現行の指定平成28年9月23日に指定が改められ、平成29年1月1日以降の商標登録出願に適用同上
標準文字による出願と認められない例(特許庁ページの列挙)図形のみ、指定外の文字を含む、30文字を超える、縦書き・2段以上の構成、ポイントの異なる文字を含む、色彩を付したもの、文字の一部が図形的、特殊な文字・書体、スペースの連続 など同上(商標審査基準 第4 第5条にも標準文字の項があります)

〔表8〕標準文字の整理。特許庁ページの記載は2026年9月に参照した時点のもの。認められない例は要旨で、正確な文言は同ページ・商標審査基準で確認のこと。

標準文字制度の説明(逐条解説〔第22版〕):特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』(以下「逐条解説〔第22版〕」)は、標準文字制度を、登録を求める商標が文字のみで構成される場合において、出願人が特別の態様について権利を要求しないときは、その意思表示に基づき、商標を願書に記載するだけで、特許庁長官があらかじめ定めた一定の文字書体によるものをその商標の表示態様として公表し、登録する制度である、と説明しています。制度の効果としては、特許庁の事務処理の効率化と出願人の手続負担の軽減が挙げられています。
また、標準文字により商標登録がされた場合、その商標権の効力の及ぶ範囲は、登録された商標(願書に記載された商標を、特許庁長官が指定して公表した書体の文字に置き換えたもの)と同一又は類似の範囲であり、通常の商標登録と比べてその範囲の広狭に差異が生ずるものではない、と説明されています。
出典:逐条解説〔第22版〕1565頁〜1566頁(商標法第5条第3項の解説)。

標準文字である旨を記載していても、願書の商標がその要件を満たさない場合は、通常の出願として扱います。図形を含む場合、30文字を超える場合、縦書きや2段以上の場合などが該当します。「標準文字」と書くだけで、どのような表示でも標準文字に置き換わるわけではありません。出典:商標審査基準第4・3(2)。

4. 第5条第5項 ― 「商標を特定するもの」でなければ拒絶・異議・無効

商標法第5条第5項は、第4項の記載(詳細な説明)と物件が、商標登録を受けようとする商標を特定するものでなければならないと定めます。第5条の中で、この第5項だけが、拒絶理由・登録異議の申立ての理由・無効理由に直接挙げられています。

願書(音商標の架空例) 願書に記載した商標 五線譜など(第5条第1項第2号) 商標の詳細な説明 (第5条第4項。必要な場合) 物件(音を記録した光ディスク) (第5条第4項) 説明・物件は「商標を特定するもの」(第5項) 審査:第5項を満たさないと拒絶理由 商標法第15条第3号 公報発行日から2月:登録異議の申立ての理由 商標法第43条の2第3号 登録後:無効理由 商標法第46条第1項第3号 登録後:登録商標の範囲の解釈で考慮 商標法第27条第3項

図は左右にスクロールできます。

  • 藍の枠:願書と、そこに記載・添付するもの(第5条第1項第2号、第4項)
  • 赤の枠:第5条第5項の要件を満たさないことが理由になる場面(拒絶・異議・無効)
  • 青緑の枠:登録後に、登録商標の範囲を解釈するときに考慮される場面

【図7】商標法第5条第4項の記載・物件と、審査・異議・無効・権利範囲の関係。音商標の願書は架空例。条文の関係を本記事作成者が相関図にしたもの。

商標法第27条第3項(原文) 第一項の場合においては、第五条第四項の記載及び物件を考慮して、願書に記載した商標の記載の意義を解釈するものとする。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。

詳細な説明や物件は、登録後に「願書に記載した商標」の意義を解釈するときに考慮されます。だからこそ、出願の段階で、それらが商標を特定するものであること(商標法第5条第5項)が求められる、という条文どうしのつながりになっています。

規定拒絶理由
(第15条)
異議理由
(第43条の2)
無効理由
(第46条第1項)
除斥期間
(第47条)
違反したときの主な扱い
第5条第1項(願書の記載事項)非該当非該当非該当―第5条の2第1項各号に当たれば補完命令。それ以外の方式違反は補正命令(商標法第77条第2項で準用する特許法第17条第3項)
第5条第2項(タイプの記載)非該当非該当非該当―条文上、第15条各号に挙がっていない(実務の扱いは確認先を参照)
第5条第3項(標準文字)非該当非該当非該当―同上
第5条第4項(説明の記載・物件の添付)非該当非該当非該当―同上(第4項そのものは第15条に挙がっていない)
第5条第5項(商標の特定)該当
第3号
該当
第3号
該当
第1項第3号
第47条第1項の列挙に第46条第1項第3号はない拒絶理由通知→意見書・補正の機会(商標法第15条の2)
(参考)第6条第1項・第2項該当
第3号
非該当非該当―一商標一出願・区分に従った指定(→関連記事)
第5条の2(出願の日の認定)非該当非該当非該当―補完命令→補完しなければ却下することができる(第5条の2第5項)

〔表9〕商標法第5条・第5条の2と、拒絶理由(第15条)・異議理由(第43条の2)・無効理由(第46条第1項)・除斥期間(第47条)の対応。第15条第3号、第43条の2第3号、第46条第1項第3号の原文(e-Gov、2026年9月参照)に基づき本記事作成者が整理したもの。

ポイント:商標法第15条第3号は第五条第五項又は第六条第一項若しくは第二項に規定する要件を満たしていないときです。これに対し、第43条の2第3号と第46条第1項第3号は第五条第五項に規定する要件を満たしていない商標登録出願に対してされたことだけを挙げ、第6条は含みません。「第15条第3号の3つのうち、登録後も争えるのは第5条第5項だけ」と整理できます。

商標の特定では、願書の商標と説明・物件の構成や態様が一致するかを判断します。一致しなくても、説明・物件が願書の商標の構成・態様の範囲に含まれるときは特定されたものとします。たとえば音商標で願書がピアノ演奏を示すのに物件がギター演奏なら、特定の不一致が問題になります。第5条第5項の明確性を満たさない場合は第15条第3号の拒絶理由です。一方、必要な記載・物件の方式上の欠缺と、商標の内容が特定されない実体上の不備は区別します。第5条第2項の類型表示がない出願を通常の出願として扱う基準もあります。出典:商標審査基準第4・2及び4、商標法第15条第3号。

5. 第5条第6項 ― 商標記載欄の色彩と同一の色彩の部分

商標法第5条第6項は、商標を記載した部分のうち、商標を記載する欄の色彩と同一の色彩である部分は、その商標の一部でないものとみなす、と定めます(本文)。たとえば白い欄に黒い文字で「ほしぞらパン」と書いた場合、文字のまわりの白い部分は、原則として商標の一部ではありません。

ただし、色彩を付すべき範囲を明らかにしてその欄の色彩と同一の色彩を付すべき旨を表示した部分は例外です(ただし書)。欄と同じ色を商標の一部にしたいときは、その範囲と、その色を付ける旨を表示します。

Q. 白地の欄に、白い星を含む図形の商標を出したい。白い星は商標の一部になるか。
A. 条文上は、欄の色彩と同一の色彩である部分は、原則として商標の一部でないものとみなされます(商標法第5条第6項本文)。白い星を商標の一部としたいなら、色彩を付すべき範囲を明らかにして、欄の色彩と同一の色彩を付すべき旨を表示することになります(同項ただし書)。商標審査便覧25.01では、別の書面(説明書)に色彩を付す範囲を文章又は破線の引出し線などで特定する取扱いを示しています。動き・ホログラム・位置商標では「商標の詳細な説明」にその範囲と色彩を記載する方法も示されています。出典:商標審査便覧25.01。

6. 第5条の2 ― 補完と補正はどう違うか

商標法第5条の2第1項の4つの号は、出願の日を認定するための最低限の要件です。願書のその他の不備(たとえば住所又は居所の記載がない、区分の記載がない)は、条文上、同項各号に挙がっていません。

flowchart TB
  S["願書に不備がある"] --> Q1{"第5条の2第1項各号か
①登録を受けようとする旨が不明確
②氏名・名称なし又は特定できない
③商標の記載なし
④指定商品・指定役務の記載なし"} Q1 -- "はい" --> R1["補完命令(第5条の2第2項)
補完した日が出願の日
補完しないと却下され得る"] Q1 -- "いいえ" --> Q2{"第15条各号の
拒絶理由に当たるか
例 第5条第5項 第6条第1項・第2項"} Q2 -- "はい" --> R2["審査官が拒絶理由を通知
意見書・補正の機会
通常の通知だけでは出願日は動かない"] Q2 -- "いいえ" --> Q3{"方式に違反しているか
例 住所又は居所の記載なし"} Q3 -- "はい" --> R3["補正命令
(第77条第2項で準用する
特許法第17条第3項)
補正しないと却下され得る
(同 特許法第18条)"] Q3 -- "いいえ" --> R4["不備なしとして審査へ"] style R1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style R4 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 赤の箱:出願の日が繰り下がり得るルート(手続補完書を提出した日が出願の日)
  • 緑の箱:不備なしとして、そのまま審査に進むルート
  • 色のついていない箱:判断と、出願の日が動かない手続

【図8】願書の不備の種類と、対応する手続の分岐。条文を本記事作成者がフロー化したもの。判断の順序は説明の便宜上のもので、実際の処理の順序を示すものではない。要旨を変更する補正の扱い(商標法第16条の2・第9条の4)は省略している(→関連記事)。

比べる点補完(商標法第5条の2)手続の補正(商標法第77条第2項で準用する特許法第17条第3項)
対象第5条の2第1項各号(4つ)に当たる出願方式違反、手数料の不納など(特許法第17条第3項各号)
特許庁長官の対応補完を命じなければならない(義務)補正を命ずることができる
期間相当の期間を指定相当の期間を指定
提出する書面手続補完書手続補正書(特許法第17条第4項の準用)
出願の日手続補完書を提出した日になる(第5条の2第4項)動かない
応じないとき出願を却下することができる(第5条の2第5項)手続を却下することができる(特許法第18条第1項の準用)

〔表10〕補完と手続の補正の比較。商標法第5条の2、商標法第77条第2項、特許法第17条第3項・第18条第1項の原文(e-Gov、2026年9月参照)に基づく。

ポイント:第5条の2第1項第4号は指定商品又は指定役務の記載がないときで、「区分」の記載には触れていません。第2号も氏名若しくは名称の記載だけを問題にし、「住所又は居所」には触れていません。第5条第1項の記載事項(3つの号)と、第5条の2第1項の出願日認定の要件(4つの号)は、範囲が一致しない点に注意します。

補完命令の応答期間は、国内居住者が原則1月、在外者が2月です。国内の手続者又は代理人が方式審査便覧の別表の地域に居住する場合は15日を加えます。手続補完書は商標法施行規則第5条の様式第10を用います。補完と、出願日を確保した後の通常の補正は別の手続です。出典:方式審査便覧04.10・21.60、商標法施行規則第5条。

なお、商標法第5条・第5条の2は、防護標章登録出願にも準用されます(商標法第68条第1項)。

7. 特許法第38条の2・意匠法・実用新案法との比較

出願の日の認定の規定は、特許法にもあります(特許法第38条の2)。条文を並べると、しくみは似ていますが、文言にいくつか違いがあります。

比べる点商標法第5条の2特許法第38条の2
認定されない場合4つの号:①登録を受けようとする旨の表示が不明確/②氏名・名称の記載なし又は特定できない/③商標の記載なし/④指定商品又は指定役務の記載なし3つの号:①特許を受けようとする旨の表示が不明確/②氏名・名称の記載なし又は特定できない/③明細書が添付されていない(括弧書で外国語書面出願の読替え、次条第1項の方法による出願を除く旨あり)
特許庁長官の最初の対応相当の期間を指定して、補完を命じなければならない(第2項)補完をすることができる旨を通知しなければならない(第2項)
補完できる期間特許庁長官が指定する相当の期間(第2項)経済産業省令で定める期間内に限る(第3項)
書面手続補完書(第3項)手続補完書(第4項。明細書の補完は手続補完書と同時に明細書を提出)
補完したときの効果手続補完書を提出した日を出願の日として認定(第4項)特許出願は手続補完書を提出した時にしたものとみなし、特許庁長官はその提出した日を出願の日として認定(第6項)
補完しないとき却下することができる(第5項)却下することができる(第8項)
通知・命令の前に自発的に補完した場合明文の規定なし通知を受ける前に執った手続は、省令で定める場合を除き、通知を受けたことにより執った手続とみなす(第9項)

〔表11〕商標法第5条の2と特許法第38条の2の比較。特許法第38条の2は第1項〜第4項、第6項、第8項、第9項の原文をe-Govで確認(2026年9月参照)。第5項・第7項(明細書等の補完に関する項)は本表では扱っていない。

法律出願の日の認定・補完の規定確認の方法
特許法あり(特許法第38条の2)原文確認
実用新案法第2章に同種の条は見当たらない。準用条文(実用新案法第11条第1項)にも特許法第38条の2は挙がっていない第2章の条見出し一覧と第11条第1項を確認
意匠法第2章に同種の条は見当たらない。準用条文(意匠法第15条第1項)が準用するのは特許法第38条(共同出願)等で、第38条の2は挙がっていない第2章の条見出し一覧と第15条を確認
商標法あり(商標法第5条の2)。防護標章登録出願に準用(商標法第68条第1項)原文確認

〔表12〕四法における出願の日の認定規定の有無。e-Gov法令検索で2026年9月に確認した範囲。意匠法・実用新案法は国内出願の章(第2章)と特許法の準用条文を確認したもので、国際出願の特例の章は確認の対象外。

8. 改正前/現行

時期内容根拠として確認できた資料
平成8年法律第68号(平成9年4月1日施行)立体商標の導入、標準文字制度の採用工業所有権法逐条解説 第22版 商標法編の沿革略記・第2条の解説、特許庁「商標法第5条第3項に規定する標準文字について」
平成26年法律第36号(新しいタイプの商標に関する部分は平成27年4月1日施行)色彩のみからなる商標・音商標等の保護の導入。特許庁は出願受付開始を平成27年4月1日としている同 沿革略記、特許庁「新しいタイプの商標の保護制度」(2019年6月19日更新)
現行(2026年9月参照)本記事で引用した商標法第5条第1項〜第6項、第5条の2第1項〜第5項e-Gov法令検索

〔表13〕商標法第5条に関係する主な改正。一次資料で確認できた範囲のみ記載。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕)― 第5条第2項・第4項・第5項:逐条解説〔第22版〕は、次のように説明しています。
第2項は、もともと平成8年の一部改正で立体商標制度を導入したことに伴い新設されたもので、たとえば商標を構成する立体的形状が斜視図で表されている場合、それだけでは平面商標と立体商標のいずれとして登録を求めているのかが明らかでないことがあるため、立体商標として登録を求めるときはその旨を願書に記載させ、出願人の意思を確認しようとするものです。平成26年の一部改正では、色彩のみからなる商標など新しく保護対象に加えられた商標についても、商標登録を受けようとする商標の記載のみによってはその態様を必ずしも明確に認識できないことがあるため、立体商標と同様に、その商標を出願する旨の意思表示を求めることとされました。第5号の経済産業省令で定める商標には、現在、位置商標があるとされています。
第4項は、平成26年の一部改正で新設され、商標の記載のみによってはその内容を明確に特定できない商標について、内容を明確にするため詳細な説明の記載を求め、音商標におけるその音を記録した記録媒体のように、商標を明確にするための物の提出が必要な商標について物件の添付を求めるものです。
第5項は、第4項の記載・物件が登録商標の権利範囲の特定を安定的に実施するためのものであることから、その記載・物件の明確性を要件としたもので、これに反する場合は拒絶理由(第15条第3号)となり、商標登録については異議申立ての理由(第43条の2第3号)および無効理由(第46条第1項第3号)になる、と説明されています。
なお逐条解説〔第22版〕は、現行の第6項が平成26年の一部改正で第4項から第6項へ移動したものである旨を注記しています。
出典:逐条解説〔第22版〕1565頁〜1567頁(商標法第5条第2項・第4項・第5項・第6項の解説)。
平成26年法律改正の解説書も、第5条第4項の記載および物件は登録商標の権利範囲の決定を安定的に実施するためのものであるから商標を特定するものでなければならないとして明確性要件を規定し、これを担保するため拒絶理由(第15条第3号)・異議申立て理由(第43条の2第3号)・無効理由(第46条第1項第3号)に追加した、と説明しています(平成26年改正解説書 第4章 168頁〜170頁。原本168〜170頁照合済み)。
立法趣旨(逐条解説〔第22版〕)― 第5条の2:逐条解説〔第22版〕は、商標法第5条の2が平成8年の一部改正で新たに設けられた規定であり、商標法条約第5条に対応して、商標登録出願の日の認定、商標登録出願についての補完命令等について規定したものである、と説明しています。第1項の出願の日の認定は特許庁長官が行う処分のうちでも重要なものの一つであり、各号に掲げる瑕疵が存在しないにもかかわらず出願の日の認定をしないことは許されない、とされています。第2項については、平成8年の一部改正前は、そのような願書は不受理処分としていた、と説明されています。第3項の手続補完書は、特許庁の事務処理上および出願人の手続の混乱防止の要請から、方式要件不備の場合の手続補正書と区別したものとされます。第4項については、補完命令がないにもかかわらず出願人が自発的に手続補完書を提出した場合も同様に取り扱われる、と説明されています。第5項で却下するか否かを特許庁長官の裁量権に属するものとした理由は、たとえば指定期間が経過した翌日に手続の補完がされたような場合でも、その状態で出願の日を認定することが諸般の事情から何ら支障がないときは、却下せずに補完を認めて出願の日を認定することも考え得るからである、と説明されています。
出典:逐条解説〔第22版〕1568頁〜1569頁(商標法第5条の2の解説)。

平成26年改正前の第5条第2項は、立体的形状(文字・図形・記号等との結合を含む。)からなる「立体商標」について、その旨を願書に記載する規定でした。改正で第2項が動き・立体・色彩のみ・音等の類型を列挙する形になり、詳細な説明・物件を定める第4項と、商標の特定を求める第5項が新設されました。旧第3項の標準文字は第3項のまま、旧第4項の背景色の扱いは第6項へ移っています。出典:平成26年改正新旧対照表・74〜75頁。令和8年度試験の出題法令は各試験の実施日に施行されているものです(受験案内2頁)。

試験での問われ方

条文の構造からみて、次のような「取り違えやすい組み合わせ」を整理しておくと、短答式・口述の条文問題に対応しやすくなります(出題されると断定するものではありません)。

取り違えやすい点条文上の正しい整理
出願の日が認定されない場合の数商標法は4つの号、特許法は3つの号
「区分」の記載がない場合第5条の2第1項第4号は「指定商品又は指定役務」の記載のみ。区分に従った指定は第6条第2項の問題(拒絶理由=第15条第3号)
補完命令は裁量か義務か補完命令は義務(命じなければならない)。却下は「することができる」
補完後の出願の日手続補完書を提出した日(願書を提出した日ではない)
特許法との違い特許法は「通知」+省令で定める期間、商標法は「命令」+特許庁長官が指定する相当の期間
第5条違反と拒絶・異議・無効拒絶理由は第5条第5項(と第6条第1項・第2項)。異議理由・無効理由は第5条第5項のみ
詳細な説明が常に必要か立体商標・音商標は「商標を特定するために必要がある場合に限る」(商標法施行規則第4条の8第2項)。音商標は物件の添付が定められている
位置商標の根拠第5条第2項第5号+商標法施行規則第4条の7。法律本文に「位置」の語はない

〔表14〕商標法第5条・第5条の2の取り違えやすい点。本記事作成者が条文から整理したもの。

令和8年度短答式【商標】6の枝1は標準文字による登録商標、枝2は立体商標の詳細な説明を省略できる場合を扱います。問題全体の公式正解は3です。 出典:公式問題(商標1〜10)、公式解答。

Q.(論文・口述の練習)甲は4月1日に、指定商品の記載のない願書を提出した。乙は4月10日に、同一の商標について不備のない願書を提出した。甲は補完命令を受け、4月20日に手続補完書を提出した。甲の出願の日はいつか。(日付・人物は架空)
A. 甲の出願は商標法第5条の2第1項第4号に該当するため、願書を提出した日は出願の日として認定されません。特許庁長官は補完を命じ(同条第2項)、甲が指定された期間内に手続補完書を提出して補完をしたのであれば、手続補完書を提出した日である4月20日が出願の日として認定されます(同条第3項・第4項)。その結果、甲の出願の日は乙の出願の日(4月10日)より後になります。先後願の具体的な帰結は、商標法第8条・第4条第1項第11号の要件(商標及び指定商品・指定役務の同一・類似など)によります(→関連記事)。

第5条の商標の特定と、第5条の2の出願日認定は、判断する事項が異なります。前者は登録を求める商標の内容、後者は出願の基本的な記載の有無を扱います。本記事の手続整理は、上記の条文・審査基準・方式審査便覧に基づきます。

レベル3のまとめ
  • 商標は願書そのものの記載事項(商標法第5条第1項第2号)。発明者・創作者に当たる記載事項はない。
  • 第5条第2項の「その旨」の記載が必要なのは、変化商標(動き・ホログラム)、立体商標、色彩のみからなる商標、音商標、位置商標(省令)。第4項の詳細な説明・物件の要否は商標法施行規則第4条の8が定め、立体商標・音商標の説明は必要がある場合に限る。音商標は物件を添付する。
  • 第5条第5項違反は、拒絶理由(第15条第3号)・異議理由(第43条の2第3号)・無効理由(第46条第1項第3号)。第47条第1項の除斥期間の列挙には含まれない。
  • 第5条の2第1項は4つの号。該当すれば補完命令(義務)→手続補完書を提出した日が出願の日。補完しなければ却下することができる。
  • 特許法第38条の2は3つの号・「通知」・省令で定める期間。意匠法・実用新案法の第2章には同種の条は見当たらない。

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