MENU

小学生でも分かる商標法|商標法第14条〜第17条 審査と査定 ― 出された「目じるし」は、ぜんぶ審査官がチェックする

小学生でもわかる商標法 第20回「審査と査定」。登録までの審査の流れ。

小学生でも分かる商標法 / B. 出願・審査・登録の手続 #20

PR この記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

お店や商品の「目じるし」を登録してほしいとお願いすると、特許庁(とっきょちょう)の審査官(しんさかん)が、決まったチェック項目にあてはまらないかを調べます。ダメな点が見つかったら、いきなり「不合格」にはせず、まず理由を知らせて言い分を聞きます。決められた期間のうちにダメな点が見つからなければ、「登録してよい」という結論が出ます。この記事では、その審査の入口から結論までを、3つのレベルで順に見ていきます。

条文:商標法第14条・第15条・第15条の2・第15条の3・第16条・第17条審査基準:商標審査基準〔改訂第17版〕 第11 第15条の2及び第15条の3(拒絶理由の通知)/第12 第16条(商標登録の査定)参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「目じるし」を登録してもらうには、審査を受ける

商標(しょうひょう)とは、お店や商品の「目じるし」のことです。たとえば、町のパン屋さんが「ほしぞらパン」という名前を自分の店の目じるしとして登録してもらいたいとします(架空の店名です)。

パン屋さんは、特許庁という国の役所に「登録してください」という書類を出します。これを出願(しゅつがん)といいます。

書類を出すと、特許庁の中の審査官という係の人が、その目じるしを調べます。出された書類は、ぜんぶ調べます。「調べてください」と、あとからもう一度お願いする必要はありません。

パン屋さん ほしぞらパン 「登録してください」 出願 審査官のチェック □ 見分けがつく名前か □ 先に出した人の目じるしと まぎらわしくないか □ 書類の決まりを守っているか (項目は法律で決まっている) ダメな点が見つからない →「登録してよい」 (期限のうちに結論) ダメな点が見つかった → まず理由を知らせる 言い分を聞いてから決める 出された書類は、ぜんぶ審査する

図は左右にスクロールできます。

  • 橙の枠:出願をする人(パン屋さん)
  • 青緑の枠:審査官がすること/ダメな点が見つからなかった場合
  • 赤の枠:ダメな点が見つかった場合

【図1】目じるしの審査のイメージ。「ほしぞらパン」は架空の店名。チェック項目は例として3つだけ描いており、実際の項目は法律に列挙されている(→レベル2・レベル3)。本記事作成者が模式化したもの。

3つの約束ごと

この審査には、大事な約束ごとが3つあります。

① 出された書類は、ぜんぶ審査官が調べる② 「ダメ」と決める前に、理由を知らせて言い分を聞く③ 決められた期間のうちにダメな点が見つからなければ、「登録してよい」と決める

②は、テストでいえば、いきなり0点をつけるのではなく、「ここがまちがっているよ」と先に教えてもらえて、「いいえ、こういう理由です」と説明できるしくみです。説明の紙を意見書(いけんしょ)といいます。

③は、「いつまでも返事が来ない」ということがないようにするための約束です。

「先にならんでいる人」がいるとき

もう1つ、目じるしの審査ならではのしくみがあります。

となり町の「ほしそらベーカリー」(架空)が、よく似た名前を、ほしぞらパンより先に出願していたとします。でも、その名前は、まだ登録されていません。審査のとちゅうです。

このとき審査官は、ほしぞらパンに、こう知らせることができます。「先にならんでいる人の名前が登録されたら、あなたの名前は登録できなくなりますよ」。

先の人の結果が出る前に、早めに教えてもらえるので、ほしぞらパンは言い分を出したり、作戦を考えたりできます。

特許庁の「順番待ちの列」(先に出した人が前) 先にならんだ人 「ほしそらベーカリー」 まだ審査のとちゅう(未登録) あとからならんだ人 「ほしぞらパン」 名前がよく似ている ≒ 審査官 「先の人が登録されたら、 あなたは登録できなくなります」 先の人の結果を待ってから あとの人の結論を出す

図は左右にスクロールできます。

  • 藍の枠:先に出願した人(まだ登録されていない)
  • 橙の枠:あとから出願した人
  • 青緑の枠:審査官
  • 赤の枠:審査官が前もって知らせる中身
  • 「≒」:2つの目じるしがよく似ていること

【図2】先にならんでいる人がまだ登録されていないときの「前もってのお知らせ」のイメージ。店名はいずれも架空。本記事作成者が模式化したもの。

レベル1のまとめ
  • 目じるし(商標)の出願は、審査官がぜんぶ審査する。「審査してください」という別のお願いはいらない。
  • 審査官が「ダメ」と決める前には、理由を知らせて、言い分(意見書)を出す機会をくれる。
  • 決められた期間のうちにダメな点が見つからなければ、「登録してよい」という結論になる。
  • 先に出願した人の似た目じるしがまだ登録されていないとき、審査官は前もって知らせることができる。

※「ダメな点」の中身は法律に列挙されたものに限られます。「決められた期間」の長さといつから数えるか、「前もってのお知らせ」のあとの扱いには、正確には条件があります(→レベル3)。「登録してよい」という結論のあと、登録のためのお金を納めてはじめて権利が生まれます(→レベル2)。

LEVEL 2条文の骨格

6つの条文は、それぞれ何を決めているか

商標法の第三章「審査」のうち、この記事が扱うのは次の6つの条文です。まず役割を一覧で見ます。

条見出しひとことで言うと
商標法第14条審査官による審査特許庁長官は、審査官に出願を審査させなければならない
商標法第15条拒絶の査定第1号〜第3号のどれかにあてはまるときは、「登録しない」という結論(拒絶をすべき旨の査定)をしなければならない
商標法第15条の2拒絶理由の通知拒絶の結論を出す前に、理由を知らせて、意見書を出す機会を与えなければならない
商標法第15条の3(見出しなし)先に出願された他人の似た商標がまだ登録されていないとき、「それが登録されたら拒絶の理由にあたることになる」と前もって知らせることができる
商標法第16条商標登録の査定政令で定める期間内に拒絶の理由を発見しないときは、「登録する」という結論(商標登録をすべき旨の査定)をしなければならない
商標法第17条特許法の準用審査官の資格・審査官の除斥・査定の方式・訴訟との関係は、特許法の規定を借りてくる

〔表1〕商標法第14条〜第17条の役割一覧。見出しはe-Gov法令検索の条文見出しによる。「ひとことで言うと」は本記事作成者による要約。なお、商標法第16条の2(補正の却下)と商標法第17条の2(意匠法の準用)は別の記事で扱う。

入口:商標法第14条(全件審査)

商標法第14条(原文) 特許庁長官は、審査官に商標登録出願を審査させなければならない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。

特許法には「審査は、審査してほしいという請求を待って行う」という条文(特許法第48条の2)がありますが、商標法にはそれにあたる条文がありません。だから、商標登録出願は、請求をしなくても審査されます(くわしくはレベル3の四法比較)。

ダメなときの結論:商標法第15条

商標法第15条(原文) 審査官は、商標登録出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その商標登録出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
一 その商標登録出願に係る商標が第三条、第四条第一項、第七条の二第一項、第八条第二項若しくは第五項、第五十一条第二項(第五十二条の二第二項において準用する場合を含む。)、第五十三条第二項又は第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条の規定により商標登録をすることができないものであるとき。
二 その商標登録出願に係る商標が条約の規定により商標登録をすることができないものであるとき。
三 その商標登録出願が第五条第五項又は第六条第一項若しくは第二項に規定する要件を満たしていないとき。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。

「査定(さてい)」とは、審査官が出す最終の結論のことです。「拒絶をすべき旨の査定」は「登録しない」という結論で、ふつう「拒絶査定」と呼ばれます(条文の言葉ではなく通称です)。

大事なのは、「次の各号のいずれかに該当するとき」と書いてあることです。審査官は、ここに書かれていない理由で拒絶することはできません。

号何についての決まりか列挙されている条文
第1号「その商標」が登録できないものであること商標法第3条/第4条第1項/第7条の2第1項/第8条第2項・第5項/第51条第2項(第52条の2第2項で準用する場合を含む)/第53条第2項/第77条第3項で準用する特許法第25条
第2号「その商標」が条約の規定により登録できないものであること条約
第3号「その出願」が書類の決まりを満たしていないこと商標法第5条第5項/第6条第1項・第2項

〔表2〕商標法第15条各号の構造。第1号・第2号は「商標」について、第3号は「出願」についての決まりである点に注目。各条文の中身はレベル3の〔表6〕で整理する。

結論の前の手続:商標法第15条の2

商標法第15条の2(原文) 審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、商標登録出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
部品文言意味
だれが審査官はその出願を審査している審査官
いつ拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは「登録しない」という結論を出す前に
だれに商標登録出願人に対し出願をした人に
何を①拒絶の理由を通知しどの理由で登録できないと考えているかを知らせる
何を②相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与え期間を決めて、言い分を出せるようにする
強さなければならない義務。通知なしにいきなり拒絶の結論を出すことはできない(例外は商標法第15条の3第2項→下)

〔表3〕商標法第15条の2の部品分解。「意味」欄は本記事作成者による説明。

前もってのお知らせ:商標法第15条の3

商標法第15条の3(原文) 第1項 審査官は、商標登録出願に係る商標が、当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の商標又はこれに類似する商標であつて、その商標に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするものであるときは、商標登録出願人に対し、当該他人の商標が商標登録されることにより当該商標登録出願が第十五条第一号に該当することとなる旨を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えることができる。
第2項 前項の通知が既にされている場合であつて、当該他人の商標が商標登録されたときは、前条の通知をすることを要しない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。

レベル1の「先にならんでいる人がいるとき」のしくみが、この条文です。商標法第15条の2とならべると、ちがいがはっきりします。

比べる点商標法第15条の2の通知商標法第15条の3第1項の通知
どんなとき拒絶をすべき旨の査定をしようとするとき(今、拒絶の理由がある)先に出願された他人の同一・類似の商標(商品・役務も同一・類似)があるが、まだ登録されていないとき(その商標が登録されれば拒絶の理由にあたることになる)
知らせる内容拒絶の理由他人の商標が商標登録されることにより、商標法第15条第1号に該当することとなる旨
意見書の機会相当の期間を指定して与える相当の期間を指定して与える
文末「与えなければならない」(義務)「与えることができる」(できる規定)
その後意見書・補正をみて査定へ他人の商標が登録されたときは、あらためて商標法第15条の2の通知をしなくてよい(商標法第15条の3第2項)

〔表4〕商標法第15条の2の通知と商標法第15条の3第1項の通知の比較。条文の文言から本記事作成者が整理したもの。

よいときの結論:商標法第16条

商標法第16条(原文) 審査官は、政令で定める期間内に商標登録出願について拒絶の理由を発見しないときは、商標登録をすべき旨の査定をしなければならない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。

「商標登録をすべき旨の査定」は「登録する」という結論で、ふつう「登録査定」と呼ばれます(通称)。特許法第51条や意匠法第18条とのちがいは、「政令で定める期間内に」という言葉が入っていることです。この期間は、商標法施行令第3条が一年六月と定めています(起算日などの正確な内容はレベル3)。

特許法から借りてくる決まり:商標法第17条

商標法第17条(原文) 特許法第四十七条第二項(審査官の資格)、第四十八条(審査官の除斥)、第五十二条(査定の方式)及び第五十四条(訴訟との関係)の規定は、商標登録出願の審査に準用する。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
準用される特許法の条文特許法の原文(要旨)商標の審査にあてはめると
特許法第47条第2項(審査官の資格)審査官の資格は、政令で定める。商標の審査官の資格も政令で定まる
特許法第48条(審査官の除斥)第百三十九条(第六号及び第七号を除く。)の規定は、審査官について準用する。審査官が出願人本人やその親族であるときなどは、その出願の審査から外れる(特許法第139条の第6号・第7号は除かれる)
特許法第52条(査定の方式)第1項査定は、文書をもつて行い、かつ、理由を付さなければならない。/第2項は特許庁長官による査定の謄本の送達登録の査定も拒絶の査定も、理由を付けた文書で行い、謄本(写し)が出願人に送達される
特許法第54条(訴訟との関係)第1項は審査の手続の中止、第2項は裁判所による訴訟手続の中止必要があれば、審決の確定や訴訟の完結まで審査を止めることができる。裁判所の側も、査定が確定するまで訴訟手続を止めることができる

〔表5〕商標法第17条が準用する特許法の4つの規定。特許法の原文はe-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。「あてはめると」は本記事作成者による説明(準用にあたり「特許出願」は「商標登録出願」に置きかえて読む。商標法第17条に明文の読替規定はない)。

出願から登録までの全体の流れ

flowchart TB
  A["商標登録出願"] --> B["出願公開
(商標法第12条の2)"] B --> C["方式の審査・実体の審査
(商標法第14条:全件を審査)"] C --> D{"拒絶の理由を
発見したか"} D -- "発見した" --> E["拒絶理由の通知
(商標法第15条の2)"] D -- "先に出願された他人の
未登録商標がある" --> F["商標法第15条の3第1項の通知"] D -- "発見しない
(政令で定める期間内)" --> K["商標登録をすべき旨の査定
(商標法第16条)"] E --> G["意見書・手続補正書の提出"] F --> G G --> H{"拒絶の理由は
なくなったか"} H -- "なくなった" --> K H -- "なくならない" --> I["拒絶をすべき旨の査定
(商標法第15条)"] I --> J["拒絶査定に対する審判
(商標法第44条第1項:謄本送達の日から3月以内)"] K --> L["登録料の納付
(商標法第41条第1項:謄本送達の日から30日以内)"] L --> M["商標権の設定の登録
(商標法第18条第1項・第2項)"] M --> N["商標掲載公報の発行
(商標法第18条第3項)"] N --> O["登録異議の申立て
(商標法第43条の2:公報発行の日から2月以内)"] style K fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style M fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style I fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:登録に向かう結論(商標登録をすべき旨の査定・設定の登録)
  • 赤の箱:拒絶をすべき旨の査定

【図3】出願から登録、登録異議の申立てまでの全体フロー。条文を整理して本記事作成者がフロー化したもの。期間は各条文の原文(e-Gov法令検索、2026年9月参照)による。登録料の納付期間には延長の規定(商標法第41条第2項)、分割納付の規定(商標法第41条の2)、審判請求期間には追完の規定(商標法第44条第2項)がある(例外あり)。出願公開と審査の先後は図の便宜上の順であり、条文が順序を定めているわけではない。

レベル2のまとめ
  • 商標法第14条:出願はすべて審査官が審査する。出願審査の請求という制度は商標法にはない。
  • 商標法第15条:拒絶の理由は第1号〜第3号に列挙されたものに限られる。あてはまれば拒絶をすべき旨の査定を「しなければならない」。
  • 商標法第15条の2:拒絶の結論の前に、理由を通知し、意見書を出す機会を与えなければならない。
  • 商標法第15条の3:先に出願された他人の未登録の商標があるとき、前もって通知することが「できる」。通知ずみなら、その商標が登録された後にあらためて通知しなくてよい。
  • 商標法第16条:政令で定める期間(商標法施行令第3条:1年6月)内に拒絶の理由を発見しないときは、商標登録をすべき旨の査定をしなければならない。
  • 商標法第17条:審査官の資格・除斥、査定の方式、訴訟との関係は特許法を準用する。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 商標法第15条の列挙を読む ― 拒絶・異議・無効・除斥期間の対応表

商標法第15条は拒絶の理由を各号に列挙しています。登録異議の申立ての理由(商標法第43条の2)、無効の理由(商標法第46条第1項)、除斥期間(商標法第47条)と横にならべると、「拒絶の理由ではあるが異議・無効の理由ではないもの」「その逆」が見えてきます。

根拠条文内容(要旨)拒絶
第15条
異議
第43条の2
無効
第46条第1項
除斥期間
第47条
商標法第3条商標登録の要件(識別力など)○
1号
○
1号
○
1号
あり(第1項)
商標法第4条第1項商標登録を受けることができない商標○
1号
○
1号
○
1号
第8号・第11号〜第14号はあり。第10号・第17号(不正競争の目的の場合を除く)、第15号(不正の目的の場合を除く)もあり。その他の号は第47条に列挙なし
商標法第7条の2第1項地域団体商標の要件○
1号
○
1号
○
1号
第47条第2項(条件つき)
商標法第8条第1項異なった日の出願の先願×○
1号
○
1号
あり(第1項)
商標法第8条第2項・第5項同日出願(協議・くじ)○
1号
○
1号
○
1号
あり(第1項)
商標法第51条第2項(第52条の2第2項で準用する場合を含む)、第53条第2項取消しの審決の確定の日から5年を経過した後でなければ、同一・類似の範囲で商標登録を受けることができない○
1号
○
1号
○
1号
第47条に列挙なし
商標法第77条第3項で準用する特許法第25条外国人の権利の享有○
1号
○
1号
○
1号
第47条に列挙なし
条約条約の規定により登録できない/条約に違反○
2号
○
2号
○
2号
第47条に列挙なし
商標法第5条第5項商標の詳細な説明・物件が商標を特定するものであること○
3号
○
3号
○
3号
第47条に列挙なし
商標法第6条第1項・第2項一商標一出願、政令で定める区分に従った指定○
3号
××―
(商標法第46条第1項第4号)商標登録出願により生じた権利を承継しない者の出願に対してされた登録××○
4号
あり(第1項)
(商標法第46条第1項第5号〜第7号)登録後に生じた理由(後発的無効理由)―×○第47条に列挙なし

〔表6〕拒絶の理由(商標法第15条)・登録異議の申立ての理由(商標法第43条の2)・無効の理由(商標法第46条第1項)・除斥期間(商標法第47条)の対応表。各条文の原文(e-Gov法令検索、2026年9月参照)を本記事作成者が照合して作成。除斥期間は商標権の設定の登録の日から五年(商標法第47条第1項)。各理由の中身は、それぞれの条文の記事を参照。

ポイント:〔表6〕で太字にした3か所が、列挙のずれです。①商標法第8条第1項は拒絶の理由に入っていないが、異議・無効の理由には入っている。②商標法第6条第1項・第2項は拒絶の理由だけ。③商標登録出願により生じた権利を承継しない者の出願は、無効の理由(商標法第46条第1項第4号)にはあるが、商標法第15条の列挙にはない。いずれも条文の文言から直接確認できる事項です。

2. 商標法第8条第1項が拒絶の理由にない ― 商標法第4条第1項第11号との関係

商標法第8条第1項は、異なった日に同一・類似の商標(商品・役務も同一・類似)の出願が2つ以上あったときは最先の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができると定めます(本文。ただし書に承諾と混同のおそれに関する例外あり)。ところが、商標法第15条第1号の列挙は第八条第二項若しくは第五項であって、第8条第1項は入っていません。

では、先に出願された他人の商標と似ている後の出願は、審査でどう扱われるのか。条文上は、次の組み合わせで処理されます。

先の出願(他人)の状態後の出願の審査で使われる条文理由
すでに商標登録されている商標法第4条第1項第11号 → 商標法第15条第1号で拒絶の理由第11号は当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標を対象とする
まだ登録されていない(審査中など)商標法第15条の3第1項の通知(できる規定)。先の商標が登録された後に、商標法第4条第1項第11号で拒絶の理由第11号は「登録商標」が対象なので、未登録のうちは第11号にあたらない。第15条の3第1項は当該他人の商標が商標登録されることにより…第十五条第一号に該当することとなる旨を通知する
放棄・取下げ・却下、または査定・審決が確定して登録に至らなかった拒絶の理由にならない商標法第8条第3項により、第8条第1項・第2項の適用については初めからなかつたものとみなす。登録されていないので第11号の「登録商標」にもあたらない
(審査をすり抜けて)後の出願が先に登録されてしまった商標法第8条第1項違反として、異議(商標法第43条の2第1号)・無効(商標法第46条第1項第1号)の理由第8条第1項は異議・無効の理由には列挙されている

〔表7〕先の出願の状態ごとの、後の出願の扱い。条文の文言(e-Gov法令検索、2026年9月参照)から本記事作成者が整理したもの。商標法第4条第1項第11号には、商標法第4条第4項(承諾と混同のおそれに関する規定。講学上・実務上「コンセント制度」と呼ばれる)による例外がある(例外あり。詳細は関連記事)。

時間の流れ → 先の出願A(他人) A出願 Aは審査中(未登録) Aの設定の登録 Aは「登録商標」になる 後の出願B(本人) B出願 商標法第15条の3第1項 の通知(意見書の機会) 拒絶をすべき旨の査定 (第4条第1項第11号) 第15条の2の通知は不要 Aの登録の後に Bを拒絶(審査基準) この時点ではAは未登録 =第11号にあたらない

図は左右にスクロールできます。

  • 藍の横線・丸・枠:先の出願A(他人)の時間の流れ
  • 橙の横線・丸:後の出願B(本人)の時間の流れ
  • 青緑の枠:商標法第15条の3第1項の通知
  • 赤の枠・赤い丸:拒絶をすべき旨の査定
  • 破線の縦線:Aの設定の登録の時点(AとBの時間をそろえる目じるし)

【図4】先の出願Aが未登録のときの後の出願Bのタイムチャート。意見書・補正によっても理由が解消しない場合を描いている。条文と商標審査基準〔改訂第17版〕第11の2.を整理して本記事作成者が図にしたもの。時間軸に縮尺はありません。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』(以下「逐条解説〔第22版〕」)は、次のように説明しています(要約)。
  • 商標法第15条は限定列挙:同条は拒絶の査定をすべき場合、言い換えれば不登録事由を限定的に列挙した規定であり、同条各号に該当しない限り、それ以外の理由で拒絶されることはない。
  • 商標法第8条第1項が拒絶の理由にない理由:第8条第1項違反は無効理由であるが拒絶理由ではない。その理由は、(a) 第8条第1項違反で拒絶すべき場合は必ず第4条第1項第11号違反になるので、第8条第1項を拒絶理由としておく意味がないこと、(b) 他方で無効理由にしておかないと、誤って後の出願が先に登録された場合に、その登録を無効にできないこと、の2点である。第46条の解説でも、第15条第1号に第8条第1項がないのは、査定の段階では第8条第1項で拒絶すべき場合はなく、すべて第4条第1項第11号違反となるからだとしている。
  • 商標法第15条の3が設けられた年と理由:先願未登録商標に基づく拒絶理由通知制度として、平成8年の一部改正で新設された。設けた理由として、(1) 同一・類似の商標の出願は比較的短期間に集中しやすく、先の出願が順次最終的に処理されるまで後の出願はすべて処理待ちとなり、全体の処理が滞ること、(2) 先の出願が拒絶査定に対する審判や審決取消訴訟に係属すると、後の出願の処理待ちが一層長くなること、(3) 商標法条約への加盟に伴い一出願多区分制が導入されると、全区分の審査が終わらないと出願全体が処理されないため、この状態に拍車がかかること、(4) 出願人も、先願未登録商標の存在を早く知れば、指定商品・指定役務の減縮補正、登録の断念と別の商標の採択・出願、先の出願人との譲渡交渉などの対応ができるのに、先の出願の処理が決まるまで知らされないのは事業展開上きわめて不都合であること、を挙げ、さらに (5) 将来、一定期間内の審査が必要となる国際的な登録制度の枠組みに入ることも想定した、としている。
  • 商標法第15条の2との関係:拒絶理由の通知は、従来は第17条で特許法第50条を準用していたが、平成8年の一部改正で第15条の3を置いた関係で、商標法第15条の2として書き起こした。また、第15条の3第1項にいう第15条第1号に該当することとなるとは、第4条第1項第11号に該当することとなる意味である。
出典:逐条解説〔第22版〕1613頁(第15条)、1614頁(第15条の2)、1615頁〜1616頁(第15条の3)、1586頁〜1587頁(第8条)、1735頁(第46条)。逐条解説〔第22版〕は令和4年10月刊で、令和5年法律第51号による改正(商標法第4条第4項、第8条第1項ただし書など)の前の記述です。

3. 商標法第15条の3の要件と、審査基準の運用

商標法第15条の3第1項の要件を、商標法第4条第1項第11号とならべて読むと、ちがいは「登録」の有無だけであることが分かります。

要素商標法第4条第1項第11号商標法第15条の3第1項
時期当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る
相手他人の登録商標又はこれに類似する商標他人の商標又はこれに類似する商標
商品・役務その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするものその商標に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの
効果商標登録を受けることができない(商標法第15条第1号で拒絶の理由)「登録されることにより第15条第1号に該当することとなる旨」を通知し、意見書の機会を与えることができる

〔表8〕商標法第4条第1項第11号と商標法第15条の3第1項の文言の対比。各原文(e-Gov法令検索、2026年9月参照)から本記事作成者が整理したもの。

商標審査基準〔改訂第17版〕「第11 第15条の2及び第15条の3(拒絶理由の通知)」は、次のように定めています(審査基準第17版の該当箇所と照合した要旨)。

項目審査基準の内容(要旨)関係する条文
1.(1)2以上の拒絶の理由を発見したときは、原則として、同時にすべての拒絶の理由を通知する商標法第15条の2
1.(2)商標法第16条に規定する政令で定める期間に、新たに他の拒絶の理由を発見したときには、当該他の拒絶の理由を通知することができる商標法第15条の2、第16条
2.商標法第15条の3第1項によって通知をした理由に基づき拒絶の査定をするときは、拒絶理由の通知で引用した先願商標が登録された後に行う商標法第15条の3
3.拒絶理由の通知で引用した先願商標の指定商品又は指定役務について補正があったとしても、改めて拒絶理由の通知をすることを要しない商標法第15条の3

〔表9〕商標審査基準〔改訂第17版〕(令和8年2月改訂)第11の整理。特許庁ウェブサイト掲載PDF(2026年9月参照)の内容を本記事作成者が要約したもの。同基準は、先願未登録商標に基づく拒絶理由の通知について商標審査便覧40.01を参照先として挙げている。

ポイント(条文上の帰結と実務の区別):「通知ずみで、先の商標が登録されたときは、あらためて商標法第15条の2の通知をしなくてよい」は条文(商標法第15条の3第2項)です。「拒絶の査定は先願商標が登録された後に行う」「先願商標の指定商品・指定役務に補正があっても改めて通知しない」は審査基準上の取扱いです。
Q. 商標法第15条の3第1項の通知を受けた。先の商標は結局、登録されなかった。後の出願はどうなる?
A. 商標法第15条の3第1項が知らせるのは当該他人の商標が商標登録されることにより商標法第15条第1号に該当することとなる旨です。先の商標が登録されなければ、商標法第4条第1項第11号の「登録商標」がないので、この理由では拒絶の理由にあたりません(条文上の帰結)。ほかに拒絶の理由がなければ、商標法第16条により商標登録をすべき旨の査定がされます。
flowchart TB
  S["審査官が後の出願Bを審査"] --> Q1{"Bの出願の日前に出願された
他人の同一・類似の商標で
商品・役務も同一・類似のものがあるか"} Q1 -- "ある" --> Q2{"その他人の商標は
すでに登録されているか"} Q1 -- "ない" --> Z1["この点では拒絶の理由なし"] Q2 -- "登録ずみ" --> R1["商標法第4条第1項第11号
→ 商標法第15条の2の通知"] Q2 -- "未登録" --> R2["商標法第15条の3第1項の通知
(できる規定)"] R2 --> Q3{"その後、他人の商標は
登録されたか"} Q3 -- "登録された" --> R3["あらためて第15条の2の通知は不要
(商標法第15条の3第2項)
理由が解消していなければ拒絶の査定"] Q3 -- "登録されなかった" --> Z2["第11号にはあたらない"] R1 --> Q4{"意見書・補正で
理由は解消したか"} Q4 -- "解消" --> Z1 Q4 -- "解消しない" --> R4["拒絶をすべき旨の査定
(商標法第15条第1号)"] style Z1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style Z2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style R3 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style R4 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:この理由では拒絶されない結論
  • 赤の箱:拒絶の査定に向かう結論

【図5】先に出願された他人の商標があるときの判断手順。条文と審査基準を整理して本記事作成者がフロー化したもの。商標法第4条第4項(承諾と混同のおそれ)による例外は省略している(例外あり)。

4. 商標法第16条の「政令で定める期間」― 1年6月と起算日

商標法施行令(昭和35年政令第19号)第3条(見出し:商標登録の査定の期間)は、商標法第16条の政令で定める期間を次のように定めています(e-Gov法令検索、法令ID 335CO0000000019、2026年9月参照)。

場面起算日期間根拠
原則商標法第5条の2第1項又は第4項の規定により認定された商標登録出願の日1年6月商標法施行令第3条第1項
商標法第15条第3号に該当する旨の拒絶の理由が通知され、補正により同号に該当しなくなったときその補正について手続補正書を提出した日1年6月同項かっこ書
出願日がさかのぼる規定(同項第1号:商標法第9条第1項、第10条第2項(準用する場合を含む)、第68条の32第2項(準用する場合を含む)/同項第2号:商標法第17条の2第1項等で準用する意匠法第17条の3第1項)の適用を受けるときこれらの規定の適用がないものとした場合における商標登録出願の日1年6月同項かっこ書・各号
商標法第68条の9第1項により商標登録出願とみなされた領域指定(国際商標登録出願)マドリッド協定の議定書第3条の3に規定する領域指定の通報が行われた日(一定の更正の通報について拒絶の理由を通知するときは、その更正の通報が行われた日)1年6月商標法施行令第3条第2項

〔表10〕商標法第16条の「政令で定める期間」。商標法施行令第3条の原文を本記事作成者が場面ごとに整理した要約(準用のかっこ書は一部省略している。正確な文言はe-Govで確認のこと)。2026年9月時点の商標法施行令による。

ポイント:分割・変更などで出願日がさかのぼる出願は、さかのぼった日ではなく現実の出願の日から数える、というのが第1項各号の意味です(条文上の帰結)。青本1617頁は、国際登録に基づく出願との均衡と、出願人が所定期間内に拒絶理由を知る機会を担保することを説明しています。起算点は施行令第3条各号に従います。

商標審査基準〔改訂第17版〕「第12 第16条(商標登録の査定)」は、「政令で定める期間」内に拒絶の理由を発見したかどうかの判断について、次の取扱いを定めています(要旨)。

  • 当該出願に係る拒絶理由通知書を発送した日を基準として判断する。
  • 拒絶理由通知書が出願人に到達せず戻された場合であっても、最初に発送した日を基準として判断する。
  • オンライン発送の場合は、出願人が発送要求を行った日が発送した日となる点に留意する。
商標登録出願の日 (起算日・原則) 1年6月 政令で定める期間(商標法施行令第3条第1項) 期間内に拒絶理由通知書を発送 =期間内に拒絶の理由を「発見」 (発送した日が基準:審査基準) 期間内に発見しないとき → 商標登録をすべき旨 の査定(商標法第16条)

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の枠・丸:政令で定める期間と、その期間内に拒絶の理由を発見しなかった場合
  • 藍の枠・丸:期間内に拒絶理由通知書を発送した場合
  • 赤の破線の縦線:期間の終わり(原則として出願の日から1年6月)

【図6】商標法第16条の「政令で定める期間」のタイムチャート(原則の起算日の場合)。商標法施行令第3条第1項と商標審査基準〔改訂第17版〕第12を整理して本記事作成者が図にしたもの。時間軸に縮尺はありません。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、商標法第16条の「政令で定める期間内に」という条文の文言について、マドリッド協定の議定書への加入に伴う平成11年の一部改正で、政令で定める期間内に拒絶の理由を発見しないときは登録査定を行うこととしたと説明しています。その理由として、(a) 議定書を実施するために必要な措置であること、(b) 議定書ルートで出願した者と特許庁に直接出願した者を平等に扱うため、すべての商標登録出願に同条を適用することとしたこと、の2点を挙げ、その結果、出願人は拒絶の理由を政令で定める期間内に知ることが制度的に担保される、としています。あわせて〔参考〕で、議定書では、締約国の官庁は、国際事務局から領域指定の通報を受けた日から遅くとも1年(18月とする宣言も可能で、日本は18月を宣言)の期間が満了する前に、すべての拒絶の理由を記載した文書とともに拒絶の通報を行うこととされている、と説明しています。なお、同書は、平成8年の一部改正で出願公告制度と登録前の異議申立制度を廃止したことに伴い、拒絶の理由を発見しない場合は登録査定を行うことになった経緯も記載しています。
出典:逐条解説〔第22版〕1616頁〜1618頁(第16条)。政令で定める期間を1年6月(商標法施行令第3条)とする点は、同書〔字句の解釈〕の記載とも一致します。
便覧40.03は、期間内に拒絶理由を発見したかを、特許庁が拒絶理由通知書を発送した日で判断するとしています。転居等で返送されて再発送した場合も、最初の発送日が基準です。国際商標登録出願では国際事務局への暫定的拒絶の通報が拒絶理由通知の効果を含みます。商標審査便覧40.03・1頁。

5. 四法比較 ― 審査請求制度がないのは商標法と意匠法

比べる点特許法実用新案法意匠法商標法
審査官による審査特許法第47条第1項実体審査を経ずに設定の登録(実用新案法第14条第2項:出願が放棄・取下げ・却下された場合を除き設定の登録をする)意匠法第16条商標法第14条
出願審査の請求あり。審査は請求をまって行う(特許法第48条の2)。何人も、出願の日から3年以内(特許法第48条の3第1項)―なし(全件審査)なし(全件審査)
拒絶の査定特許法第49条―意匠法第17条商標法第15条
拒絶理由の通知特許法第50条(ただし書あり)―意匠法第19条で特許法第50条を準用商標法第15条の2(独自の条文。ただし書なし)
先願未登録の場合の通知なし―なし商標法第15条の3(商標法固有)
登録(特許)の査定特許法第51条:拒絶の理由を発見しないときは―意匠法第18条:拒絶の理由を発見しないときは商標法第16条:政令で定める期間内に…拒絶の理由を発見しないときは
準用規定――意匠法第19条:特許法第47条第2項、第48条、第50条、第52条、第54条商標法第17条:特許法第47条第2項、第48条、第52条、第54条
出願公開出願の日から1年6月を経過したとき(特許法第64条第1項。例外あり)―出願公開の規定なし出願があったとき(商標法第12条の2第1項。期間の定めなし)

〔表11〕審査と査定の四法比較。各法の原文(e-Gov法令検索、2026年9月参照)で確認できた条文のみ記載。「―」は対応する規定がない、または比較の対象外であることを示す。実用新案法の基礎的要件の審査などは同法の記事を参照。

ポイント:意匠法第19条は特許法第50条を準用するのに対し、商標法は拒絶理由の通知を準用ではなく商標法第15条の2として自ら定めています。商標法第17条の準用リストに特許法第50条が入っていないのはこのためです(条文上の帰結)。

6. この章の条文が準用される場面

準用する条文場面準用される条文注意点
商標法第55条の2第1項拒絶査定に対する審判で、査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合商標法第15条の2、第15条の3審判でも、新しい理由については通知と意見書の機会が必要
商標法第55条の2第2項拒絶査定に対する審判の請求を理由があるとする場合商標法第16条ただし書:さらに審査に付すべき旨の審決をするときは、この限りでない
商標法第68条第2項防護標章登録出願の審査商標法第14条から第15条の2まで、第16条から第17条の2まで商標法第15条の3は準用されていない。商標法第15条第1号の列挙は「第64条」に、第3号は「第6条第1項又は第2項」に読み替える

〔表12〕商標法第14条〜第17条が準用される主な場面。各原文(e-Gov法令検索、2026年9月参照)による。商標法第55条の2第3項(商標法第16条の2等の準用)は別の記事で扱う。

7. 査定の後 ― 2つの道

flowchart LR
  A["査定
(文書・理由つき:特許法第52条第1項準用)"] --> B["査定の謄本の送達
(特許法第52条第2項準用)"] B --> C{"どちらの査定か"} C -- "商標登録をすべき旨の査定" --> D["送達の日から30日以内に登録料を納付
(商標法第41条第1項)"] D --> E["商標権の設定の登録
=商標権の発生
(商標法第18条第1項・第2項)"] C -- "拒絶をすべき旨の査定" --> F["送達の日から3月以内に
拒絶査定に対する審判
(商標法第44条第1項)"] style E fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style F fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:商標権が発生する道の終点
  • 赤の箱:拒絶をすべき旨の査定だったときの道

【図7】査定の後の流れ。条文を整理して本記事作成者がフロー化したもの。期間は2026年9月時点の商標法第41条第1項・第44条第1項による。登録料の納付期間の延長(商標法第41条第2項)、分割納付(商標法第41条の2)、審判請求期間の追完(商標法第44条第2項)がある(例外あり)。設定登録料は1区分32,900円、前期分割納付なら1区分17,200円です(2026年9月21日確認)。

8. 改正前/現行

2022年10月1日時点の第15条と現行条文を照合すると、第1号の列挙自体に変更はありません。2024年4月1日施行のコンセント制度では、引用先の第4条・第8条に例外が設けられています。第15条の列挙が同じでも、引用先の要件まで旧法と同じとは限りません。2026年度試験は各試験実施日の施行法が対象です。商標法第4・8・15条/受験案内

試験での問われ方

この範囲は、条文の文言どおりかどうかが問われやすい形をしています。次の点は、条文から直接確認できる「ひっかけ」になりうる箇所です(出題の頻度について断定するものではありません)。

  • 商標法第15条第1号の列挙に、商標法第8条第1項は入っていない(第2項・第5項は入っている)。異議・無効の理由には第1項も入っている。
  • 商標法第6条第1項・第2項は拒絶の理由であるが、異議・無効の理由ではない。
  • 商標法第15条の2は「与えなければならない」、商標法第15条の3第1項は「与えることができる」。
  • 商標法第15条の3は、防護標章登録出願の審査には準用されていない(商標法第68条第2項)。拒絶査定に対する審判では準用される(商標法第55条の2第1項)。
  • 商標法第16条には「政令で定める期間内に」がある。特許法第51条・意匠法第18条にはない。
  • 商標法第17条の準用リストに特許法第50条はない(意匠法第19条にはある)。
  • 出願審査の請求の制度は商標法にはない。
令和8年度【商標】全10問には第14条〜第17条の審査手続を直接問う肢はありません。問6の肢3は、関連する要旨変更補正の却下後の新出願を扱う誤りの肢で、同問の公式正解は3です。 公式問題・公式解答。
レベル3のまとめ
  • 拒絶の理由は商標法第15条第1号〜第3号の限定列挙。商標法第8条第1項は入っておらず、先に出願された他人の商標との関係は、商標法第4条第1項第11号(登録ずみ)と商標法第15条の3(未登録)で処理される。
  • 商標法第8条第1項は、異議(商標法第43条の2第1号)・無効(商標法第46条第1項第1号)の理由には入っており、除斥期間(商標法第47条第1項)の対象でもある。
  • 商標法第15条の3第1項の通知は「できる」規定。通知ずみで先の商標が登録されたときは、あらためて商標法第15条の2の通知をしなくてよい(同条第2項)。審査基準は、拒絶の査定を先願商標の登録後に行うとしている。
  • 商標法第16条の政令で定める期間は1年6月(商標法施行令第3条、2026年9月時点)。起算日は原則として出願の日で、補正の場合・出願日がさかのぼる場合・国際商標登録出願の場合に特則がある。審査基準は拒絶理由通知書の発送日を基準とする。
  • 商標法第17条は特許法第47条第2項・第48条・第52条・第54条を準用。拒絶理由の通知は準用ではなく商標法第15条の2が自ら定める。
  • 出願審査の請求の制度があるのは特許法だけで、商標法・意匠法は全件審査、実用新案法は実体審査を経ずに登録する。

関連記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次