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小学生でも分かる商標法|商標法第4条第1項第12号・第14号・第17号と第4条第2項・第3項 その他の不登録事由と「いつの時点で判断するか」

小学生でもわかる商標法 第08回「その他の不登録事由」。登録の条件と判断する時点。

小学生でも分かる商標法 / A. 登録要件・商標 #8

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商標法第4条第1項には、登録できない商標が第1号から第19号までならんでいます(第13号は削除)。この記事では、まだ取り上げていない第12号(他人の登録防護標章)、第14号(品種登録を受けた品種の名称)、第17号(ぶどう酒・蒸留酒の産地)を見ます。あわせて、第6号の例外を定める第4条第2項と、「出願の時にも当たっていなければ適用しない」号を決めている第4条第3項を整理します。最後に、第4条第1項の全部の号を1枚で見わたせる早見表を置きました。

条文:商標法第4条第1項第12号・第14号・第17号、第4条第2項・第3項審査基準:商標審査基準〔改訂第17版〕 第3 十八 第4条第3項 ほか参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

商標は「目じるし」。でも、登録できない名前がある

商標(しょうひょう)は、お店や商品の「目じるし」です。国の役所(特許庁=とっきょちょう)に登録すると、その目じるしを自分だけが使えるようになります。

でも、どんな名前でも登録できるわけではありません。法律には「こういう名前は登録できません」というリストがあります。今回は、そのリストの中から3つを見ます。

① ほかの人が「バリア」をはっている名前

「ほしぞらパン」というパン屋さんが、日本中で知られるくらい有名になったとします。すると、だれかが「ほしぞらパン」という名前のえんぴつを売ったら、「あのパン屋さんが作ったえんぴつかな?」と、まちがえる人が出てきます。

そこで、とても有名なお店は、自分が売っていない商品(えんぴつなど)にも、あらかじめ「この名前は使わせません」というバリアを登録しておくことができます。このバリアがはられている商品について、ほかの人が同じ名前を登録することはできません。

② 新しい品種の名前

農家の人が、新しいイチゴを作り出して、国に「あかねぼし」という品種(ひんしゅ)の名前で登録したとします。すると「あかねぼし」は、そのイチゴを指す、みんなの呼び名になります。

みんなの呼び名を、だれか1人がイチゴの苗(なえ)の商標として登録してひとりじめすると、こまります。だから、国に登録された品種の名前と同じ名前や、よく似た名前は、その苗やそれに近い商品については登録できません。

③ ワインなどの産地の名前

ぶどうのお酒(ワイン)などは、「どこで作られたか」がとても大切にされています。「ミナト谷」というワインの産地が、決まりで守られているとします。ミナト谷ではない土地で作ったワインに、「ミナト谷」という文字が入った商標を登録することはできません。

① バリアがある名前 ② 品種の名前 ③ お酒の産地の名前 有名な「ほしぞらパン」 バリア(えんぴつにも) えんぴつ べつの人が、えんぴつに 「ほしぞらパン」を出願 × 登録できない (同じ名前のとき) 新しいイチゴの品種 品種名 あかねぼし みんなが使う呼び名 イチゴの苗に 「あかねぼし」を出願 × 登録できない (同じ・よく似た名前) 産地「ミナト谷」 ミナト谷 ここで作ったワインではない よその土地のワインに 「ミナト谷…」を出願 × 登録できない (その文字が入っているとき)

図は左右にスクロールできます。

  • 橙・青緑・藍の枠:①②③の3つの場面の区切り(色そのものに意味のちがいはありません)
  • 赤の枠:登録できない出願の例
  • 橙の破線の弧:バリア(ほかの人に使わせない範囲)

【図1】今回見る3つの「登録できない名前」。店名・品種名・産地名はすべて架空の例です。細かい条件を省いて単純化しています(本記事作成者が図式化したもの)。

市のマークは、市が自分で出すなら OK

リストには「国や市などを表す有名なマークと同じ・よく似た商標はだめ」という決まりもあります。たとえば「あおば市」の有名なマークを、関係のない人が自分の商標として登録することはできません。でも、あおば市が自分で出願するときは、この決まりは使われません。自分のマークだからです。

チェックは「出した日」と「しらべる日」の2回?

商標は、出願(しゅつがん=役所に「登録してください」と書類を出すこと)をしてから、役所の人がしらべて結論を出すまでに、時間がかかります。その間に世の中が変わることがあります。

たとえば、こぐま堂が「ミナト」という名前を出願した日には、ほかに「ミナト」で有名なお店はなかったとします。ところが、しらべてもらうのを待っている間に、べつの「ミナトベーカリー」が急に有名になりました。このとき、「有名な名前と同じだからだめ」と言われたら、先に出したこぐま堂がかわいそうです。

そこで法律は、リストのうち5つの決まりについて、「出した日にも当たっていなければ、その決まりは使わない」と決めています。のこりの決まりは、役所が結論を出す時に当たっているかどうかで決まります。

時間 出した日(出願の時) 役所が結論を出す時 (しらべてもらうのを待つ時間) ほとんどの決まり(今回の①バリア・②品種名もこちら) (見ない) ここでチェック 5つの決まり(今回の③産地名もこちら) ここでも当たる + ここでも当たる → だめ

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の帯:結論を出す時だけを見る決まり
  • 橙の帯:出した日と結論を出す時の両方を見る決まり(5つ)
  • 赤い文字の「→ だめ」:登録できないという結論

【図2】チェックする時点のイメージ。5つの決まりは、出した日と結論を出す時の両方で当たっているときだけ「だめ」になります(本記事作成者が図式化したもの。「結論を出す時」の正確な呼び方はレベル2・レベル3で説明します)。

① バリアがはられた名前と同じ → だめ② 登録された品種の名前 → だめ③ 守られているお酒の産地名 → だめ5つの決まりは2回チェック
レベル1のまとめ
  • とても有名なお店がバリアを登録している商品については、ほかの人は同じ名前を登録できません。
  • 国に登録された品種の名前は、その苗などについては登録できません。
  • 守られているワインなどの産地名が入った商標は、よその土地のお酒については登録できません。
  • 国や市などの有名なマークは、本人が自分で出願するなら、その決まりは使われません。
  • 5つの決まりは、「出した日」にも当たっていなければ使われません。

※ 「バリア」(防護標章登録)を受けるための条件、「同じ名前」「よく似た名前」のちがい、お酒の産地が守られるための条件、「5つの決まり」がどれか、は、正確には条件があります(→レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第4条ぜんたいの形

商標法第4条は4つの項からできています。この記事で扱うのは、第1項のうち3つの号と、第2項、第3項です。

項役割シリーズ内の担当記事
第1項登録を受けることができない商標を第1号〜第19号に列挙(第13号は「削除」)#4〜#8(号ごとの分担は〔表6〕)
第2項国・地方公共団体などが第1項第6号の商標を自分で出願するときは、第6号を適用しない#8(この記事)
第3項第8号・第10号・第15号・第17号・第19号は、出願の時に該当しないものには適用しない#8(この記事)
第4項第1項第11号の例外(講学上・実務上「コンセント制度」と呼ばれるもの)#7

〔表1〕商標法第4条の項ごとの役割(第1項〜第3項はe-Govの原文で確認。第4項は#7で扱う)。

第12号 ― 他人の登録防護標章と同一の商標

商標法第4条第1項第12号(原文) 他人の登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。以下同じ。)と同一の商標であつて、その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をするもの
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
部品文言意味
だれの他人の登録防護標章自分以外の人が「防護標章登録」を受けている標章。レベル1の「バリア」に当たる
どんな商標と同一の商標条文は「同一」だけ。「類似」とは書いていない
何についてその防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をするものバリアがはられている商品・役務について使う商標
どうなる(柱書)商標登録を受けることができない出願しても拒絶される

〔表2〕商標法第4条第1項第12号の部品分解。

防護標章登録とは、需要者(買う人・利用する人)の間に広く知られた登録商標について、もとの指定商品・指定役務と似ていない商品・役務にも、混同を防ぐための登録を受けられる制度です(商標法第64条)。くわしくは関連記事で扱います。

第14号 ― 品種登録を受けた品種の名称

商標法第4条第1項第14号(原文) 種苗法(平成十年法律第八十三号)第十八条第一項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であつて、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするもの
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
部品文言意味
何の名前種苗法第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の名称農林水産大臣が品種登録をした品種の名前(種苗=たねや苗のこと)
どんな商標と同一又は類似の商標第12号とちがい、「類似」まで入る
何についてその品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするものその品種のたね・苗と、それに似た商品・役務に使う商標
どうなる(柱書)商標登録を受けることができない出願しても拒絶される

〔表3〕商標法第4条第1項第14号の部品分解。

第17号 ― ぶどう酒・蒸留酒の産地の表示

商標法第4条第1項第17号(原文) 日本国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地のうち特許庁長官が指定するものを表示する標章又は世界貿易機関の加盟国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する標章のうち当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒若しくは蒸留酒について使用をすることが禁止されているものを有する商標であつて、当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒又は蒸留酒について使用をするもの
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
部品文言意味
産地その1日本国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地のうち特許庁長官が指定するものを表示する標章日本の産地は、特許庁長官が指定したものだけが対象
産地その2世界貿易機関の加盟国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する標章のうち当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒若しくは蒸留酒について使用をすることが禁止されているもの外国(世界貿易機関の加盟国)の産地は、その国でよその土地のお酒に使うことが禁止されているものが対象
どんな商標を有する商標その標章を一部にふくむ商標も入る(「同一又は類似」という書き方ではない)
何について当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒又は蒸留酒について使用をするものその産地ではない土地のぶどう酒・蒸留酒に使う商標

〔表4〕商標法第4条第1項第17号の部品分解。蒸留酒は、しょうちゅうやウイスキーのように蒸留して作るお酒のことです(この説明は一般的な言いかえで、条文に定義はありません)。

第2項と第3項

商標法第4条第2項(原文) 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者が前項第六号の商標について商標登録出願をするときは、同号の規定は、適用しない。 商標法第4条第3項(原文) 第一項第八号、第十号、第十五号、第十七号又は第十九号に該当する商標であつても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
項だれが/どの号どんなときどうなる
第2項国・地方公共団体・これらの機関、営利を目的としない公益団体、営利を目的としない公益事業を行っている者第1項第6号の商標について商標登録出願をするとき第6号の規定は適用しない(ほかの号は別に審査される)
第3項第1項第8号・第10号・第15号・第17号・第19号(査定の時点では該当していても)商標登録出願の時に該当しないときこれらの規定は適用しない

〔表5〕商標法第4条第2項・第3項の骨格。

第2項の「だれが」は、第1項第6号の文言(国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標)にならんでいる主体と、同じ言葉で書かれています。

国・地方公共団体、 非営利の公益団体など 関係のない他人 特許庁 著名な標章と 同一・類似の商標 自分で出願 出願 第6号は適用しない (第4条第2項) 第6号に該当 → 拒絶 (第15条第1号) 登録された商標権には、制限がつく ・国・地方公共団体・機関・非営利の公益団体:譲渡できない(第24条の2第2項) ・非営利の公益事業を行う者:その事業とともにする場合だけ移転できる(同条第3項) ・専用使用権を設定できない(第30条第1項ただし書)

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の枠:国・地方公共団体等が自分で出願する場合と、その結果(第6号は適用しない)
  • 赤の枠:関係のない他人が出願する場合と、その結果(第6号に該当して拒絶)
  • 藍の枠:第2項によって登録された商標権につく制限

【図3】商標法第4条第2項の相関図。条文番号はすべて商標法。第6号以外の号に当たれば、国などの出願でも拒絶されうる点は図では省略(本記事作成者が図式化したもの)。

第4条第1項 全号の早見表

第4条第1項の号は、「いつの時点で判断するか」「登録から5年たつと無効審判を請求できなくなるか(除斥期間)」「登録の後で当たるようになった場合も無効理由になるか(後発的無効理由)」の3点で、あつかいが分かれます。下の表は、条文の列挙を1枚にまとめたものです。

号要旨(括弧書・除外は省略)判断時除斥期間
(第47条第1項)
後発的無効理由
(第46条第1項第6号)
担当
第1号国旗、菊花紋章、勲章、褒章、外国の国旗と同一・類似査定時―○#4
第2号パリ条約の同盟国等の国の紋章その他の記章で経済産業大臣が指定するものと同一・類似査定時―○#4
第3号国際連合その他の国際機関を表示する標章で経済産業大臣が指定するものと同一・類似(イ・ロに掲げるものを除く)査定時―○#4
第4号赤十字の標章・名称等と同一・類似査定時――#4
第5号日本国・パリ条約の同盟国等の政府・地方公共団体の監督用・証明用の印章・記号のうち経済産業大臣が指定するものと同一・類似の標章を有する商標で、その印章・記号が用いられている商品・役務と同一・類似の商品・役務について使用をするもの査定時―○#4
第6号国・地方公共団体等、非営利の公益団体・公益事業を表示する著名な標章と同一・類似(第2項で適用除外)査定時――#4(第2項は#8)
第7号公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標査定時―○#4
第8号他人の肖像、氏名(需要者の間に広く認識されている氏名に限る)、名称、著名な雅号・芸名・筆名、これらの著名な略称を含む商標(承諾を得ているものを除く)、又は他人の氏名を含む商標で政令で定める要件に該当しないもの出願時+査定時○―#5
第9号博覧会の賞と同一・類似の標章を有する商標(例外あり)査定時――#4
第10号他人の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標出願時+査定時○
(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く)
―#6
第11号先願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標(第4項に例外)査定時○―#7
第12号他人の登録防護標章と同一の商標査定時○―#8
第13号削除―(列挙の範囲内だが規定なし)――
第14号種苗法の品種登録を受けた品種の名称と同一・類似査定時○―#8
第15号他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるおそれがある商標(第10号〜第14号に掲げるものを除く)出願時+査定時○
(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く)
―#6
第16号商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標査定時―○#4
第17号ぶどう酒・蒸留酒の産地を表示する標章を有する商標出願時+査定時○
(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く)
―#8
第18号商品等が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標査定時――#4
第19号他人の周知商標と同一・類似で、不正の目的をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く)出願時+査定時――#6

〔表6〕商標法第4条第1項 全号の早見表。「判断時」の列は、商標法第4条第3項の列挙と、商標審査基準〔改訂第17版〕第3 十八 第4条第3項の1.(1)(2)による(「査定時」は審査基準の表現)。「除斥期間」は商標法第47条第1項、「後発的無効理由」は商標法第46条第1項第6号の列挙による。要旨は原文を短くしたもので、括弧書・除外を省略しています。第13号は「第十一号から第十四号まで」という第47条第1項の文言の範囲には入りますが、号そのものが削除されています。本記事作成者が条文を整理して作成。

出願時 査定時 設定の登録 登録の日から5年 A 査定時だけで判断:第1号〜第7号・第9号・第11号・第12号・第14号・第16号・第18号 該当? B 出願時と査定時の両方で判断:第8号・第10号・第15号・第17号・第19号(第4条第3項) 該当? かつ 該当? C 無効審判の除斥期間(第47条第1項):第8号・第11号・第12号・第14号、第10号・第17号、第15号 請求できる × 請求不可 ※第10号・第17号は不正競争の目的、第15号は不正の目的で商標登録を受けた場合を除く D 登録後に該当するようになっても無効理由(第46条第1項第6号):第1号〜第3号・第5号・第7号・第16号 登録後に該当するものとなっているとき

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑:A=査定時だけで判断する号
  • 橙:B=出願時と査定時の両方で判断する号(第4条第3項)
  • 藍:C=除斥期間(第47条第1項)の対象。帯は無効審判を請求できる期間
  • 赤:D=後発的無効理由(第46条第1項第6号)の対象。赤い文字の「× 請求不可」は、Cの号について5年を経過した後を指します
  • 縦の破線:上の時間軸の各時点に位置をそろえるための目じるし

【図4】判断時・除斥期間・後発的無効理由のタイムライン。条文番号はすべて商標法。Aの「査定時」は商標審査基準〔改訂第17版〕第3 十八の表現。期間の長さは実際の比率ではありません(本記事作成者が条文を整理して図式化したもの)。時間軸に縮尺はありません。

レベル2のまとめ
  • 第12号は「同一」だけ、第14号は「同一又は類似」、第17号は「…を有する商標」。号ごとに書き方がちがいます。
  • 第2項は、第6号だけをはずす規定です。はずれるのは、国などが自分で出願するときです。
  • 第3項にならぶのは第8号・第10号・第15号・第17号・第19号の5つ。今回の3つの号のうち、入っているのは第17号だけです。
  • 除斥期間(第47条第1項)には第12号・第14号・第17号の3つとも入ります。後発的無効理由(第46条第1項第6号)には3つとも入りません。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 第12号 ― 「同一」に限られる理由と、周辺の号との分担

商標法第4条第1項第12号の要件は、条文上、(1) 他人の登録防護標章と (2) 同一の商標であって、(3) その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をするもの、の3つです。防護標章登録の対象は、商標法第64条第1項によりその登録商標と同一の標章であり、防護標章登録に係る商品・役務は、もとの登録商標の指定商品・指定役務と類似しない範囲に置かれます。

比較の軸第11号第12号第15号
引用されるもの先願に係る他人の登録商標他人の登録防護標章他人の業務に係る商品・役務(登録の有無を問わない文言)
商標の範囲登録商標又はこれに類似する商標同一の商標混同を生ずるおそれがある商標
商品・役務の範囲指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務防護標章登録に係る指定商品・指定役務限定の文言なし
号どうしの関係第15号は括弧書で第十号から前号までに掲げるものを除く。としており、第12号・第14号に当たるものは第15号からはずれる
判断時(〔表6〕)査定時査定時出願時+査定時

〔表7〕第11号・第12号・第15号の分担(条文の文言による。条文番号は商標法第4条第1項の号)。第11号の商品・役務の範囲は#7、第15号は#6を参照。本記事作成者が整理。

ポイント:第12号は「同一」の商標に限られます。登録防護標章に「類似」する商標を、防護標章登録に係る商品・役務に使う場合は、第12号の文言には当たりません。その場合に第15号などの別の号が問題になりうる、というのが条文のならびから分かる構造です(個別の出願が第15号に当たるかどうかは、混同を生ずるおそれの有無で決まります → #6)。
立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』(令和4年10月)は、第12号を、現行法(昭和34年法)で防護標章制度が設けられたことに伴って設けられたものと説明しています。すなわち、防護標章登録を受けたときは、他人のその標章の使用は商標権の侵害とみなされ、その範囲内においては他人のその標章の使用が禁止されるのであるから、その標章と同一の商標については、その指定商品又は指定役務に関する限り商標登録をすべきではない、という理由によるものであり、この関係は第11号と全く同様である、としています。そのうえで、第11号とは異なり、防護標章登録を受けている標章に類似する標章について規定しなかったのは、類似の範囲に関してはその使用が侵害とみなされるわけではないからである、と説明しています。
逐条解説〔第22版〕1555頁。指定商品・指定役務についての登録防護標章の使用を侵害とみなす根拠は、第67条第1号です。

第12号の「同一」には縮尺だけが異なるものを含みます(審査基準第3十一・1)。また、第70条第2項は、登録防護標章に類似する標章で、色彩を同じにすれば同一と認められるものも含めます。ただし、色彩のみからなる登録商標にはこの色彩の特則を適用しません(同条第4項)。第12号に該当しなくても、第15号の混同のおそれが問題になることがあります。出典:商標審査基準〔改訂第17版〕、商標法第70条。

2. 第14号 ― 種苗法との「鏡」の関係

商標法第4条第1項第14号の要件は、(1) 種苗法第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の名称と (2) 同一又は類似の商標であって、(3) その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするもの、です。種苗法第18条第1項は農林水産大臣は、品種登録出願につき第十七条第一項の規定により拒絶する場合を除き、品種登録をしなければならない。と定めています。

種苗法の側にも、品種の名称が登録商標とぶつかる場合の規定があります。2つをならべると、商標と品種名称がたがいに相手を避ける作りになっていることが分かります。

商標法第4条第1項第14号種苗法第4条第1項第2号・第3号
場面商標登録出願の審査(特許庁)品種登録出願の審査(農林水産大臣)
先にあるもの品種登録を受けた品種の名称登録商標
登録できないもの品種の名称と同一又は類似の商標で、その品種の種苗又はこれに類似する商品・役務について使用をするもの出願品種の名称が、出願品種の種苗に係る登録商標・当該種苗と類似の商品に係る登録商標(第2号)、出願品種の種苗又は当該種苗と類似の商品に関する役務に係る登録商標(第3号)と同一又は類似のものであるとき

〔表8〕商標法第4条第1項第14号と種苗法第4条第1項第2号・第3号の対比(いずれもe-Govで確認した文言の要約。種苗法は法令ID 410AC0000000083)。対比は本記事作成者の整理で、種苗法の詳細は本シリーズの範囲外です。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、第14号の立法趣旨を次のように説明しています。種苗法は、登録品種の種苗を業として譲渡等するときの名称の使用義務と、登録品種又はこれに類似する品種以外の種苗を業として譲渡等するときの登録品種の名称の使用禁止を規定している。そこで、登録品種の名称と同一又は類似の商標であって、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用するものを商標登録の対象から除外し、当該名称について特定の者に独占的使用権が生ずることを防止することにその趣旨がある。そのうえで同解説は、種苗法により登録された品種の名称は一般に普通名称化すると考えられるので、同法による登録が消滅した後においても同様に商標登録の対象から除外され、したがって、たとえ同法により登録を受けた本人が出願しても登録しない、としています。
逐条解説〔第22版〕1555頁。第14号の文言は「品種登録を受けた品種の名称」であり、登録が消滅した後の扱いは条文の文言から直接には導かれません。上記は立法担当者の説明です。

第14号の類否は、品種名称の独占を防ぐ観点から、外観・称呼・観念を総合して判断します。育成者権の存続期間満了後は第14号を適用せず、商品・役務との関係に応じ、第3条第1項第1号・第3号・第6号を判断します。満了前に品種登録が取り消された場合も同様です。したがって「登録消滅後も第14号に該当する」という意味ではありません。出典:商標審査基準〔改訂第17版〕第3十二・1〜3、商標審査便覧42.114.01・1(2)と注意①。

3. 第17号 ― 2つの産地類型と、TRIPS協定との関係

日本国の産地世界貿易機関の加盟国の産地
対象になる条件特許庁長官が指定するもの当該加盟国において、当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒・蒸留酒について使用をすることが禁止されているもの
商標の形その産地を表示する標章を「有する」商標
商品当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒又は蒸留酒について使用をするもの
条文にない要件「混同」「誤認」「類似」は第17号の文言にない。産地を正しく表示している出願(その産地のぶどう酒・蒸留酒について使用をするもの)は、第17号の文言に当たらない

〔表9〕商標法第4条第1項第17号の2つの産地類型(条文の文言による。本記事作成者が整理)。

知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)第23条は「ぶどう酒及び蒸留酒の地理的表示の追加的保護」という見出しの規定です。同条2は、ぶどう酒又は蒸留酒を特定する地理的表示を含むか、その地理的表示から構成される商標の登録であって、原産地を異にするぶどう酒又は蒸留酒についてのものは、職権により(国内法令で認められる場合に限る)又は利害関係を有する者の申立てにより、拒絶し又は無効とする、という内容を定めています(特許庁ウェブサイト掲載の日本語訳の要旨)。

比較の軸TRIPS協定第23条2(要旨)商標法第4条第1項第17号
対象の表示ぶどう酒又は蒸留酒を特定する地理的表示ぶどう酒・蒸留酒の産地を表示する標章(日本国:特許庁長官の指定/加盟国:当該国で使用が禁止されているもの)
商標の形地理的表示を含むか、地理的表示から構成される商標その標章を「有する」商標
商品原産地を異にするぶどう酒又は蒸留酒当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒又は蒸留酒
効果登録を拒絶し又は無効とする拒絶理由(商標法第15条第1号)・異議理由(商標法第43条の2第1号)・無効理由(商標法第46条第1項第1号)

〔表10〕TRIPS協定第23条2と商標法第4条第1項第17号の対比。左右の対応づけは本記事作成者の整理であり、第17号の立法経緯を示すものではありません。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、第17号を、平成6年の一部改正においてTRIPS協定第23条及び第24条に対応して新設された規定である、と説明しています。同解説によれば、TRIPS協定第23条は、世界貿易機関の加盟国に対し、ぶどう酒又は蒸留酒の地理的表示に関する商標登録出願が、その地理的表示の示す原産地と異なるものについてされた場合は拒絶又は無効とすることを義務付けており、同第24条では、加盟国は原産国において保護されていない地理的表示を保護する義務を負わない旨が規定されています。これらの規定に従って加盟国の産地についての類型が定められました。
一方、TRIPS協定は、加盟国が自国内のぶどう酒又は蒸留酒の地理的表示を保護することまでを義務付けるものではありません。それでも日本国の産地についても併せて規定した理由として、同解説は、このような規定を設けない場合に生ずる次の2点を挙げています。①ぶどう酒又は蒸留酒の産地の表示の保護に関し、他の加盟国の産地に比べて国内の産地を不利に扱うことになる。②TRIPS協定第24条の規定により、原産国で保護されていない地理的表示については他の加盟国において保護する義務が生じないため、他の加盟国においても我が国の産地が不利に扱われることになる。
逐条解説〔第22版〕1556頁〜1557頁。

現行の商標審査便覧42.117.02に収録される国内指定産地は、ぶどう酒について山梨県、北海道、山形県、長野県、大阪府、しょうちゅうについて長崎県壱岐市、熊本県球磨郡・人吉市、沖縄県、鹿児島県(奄美市・大島郡を除く)です。標章の例は、順に山梨、北海道、山形、長野、大阪、壱岐、球磨、琉球、薩摩です。片仮名や翻訳も対象で、例えば「BORDEAUX」の「ボルドー」表記や「BOURGOGNE」の英訳「BURGUNDY」も含まれます。構成中にその表示を含むかで判断し、産地の誤認混同があることは要しません。出典:商標審査便覧42.117.02・別紙指定一覧、商標審査基準〔改訂第17版〕第3十五・1、2。

4. 第2項 ― 第6号の適用除外と、その代わりにつく制限

商標法第4条第2項がはずすのは第6号だけです。国などの出願であっても、第6号以外の号(たとえば第11号)や商標法第3条は、別に審査されます。特許庁ウェブサイト「出願しても登録にならない商標」(2024年8月26日更新)も、第6号について、当該国や団体等が自ら出願した場合はこの規定で拒絶されない旨を説明しています。

第2項によって登録された商標権には、権利の動かし方に制限がつきます。詳細は関連記事に回し、ここでは概要だけを示します。

条文対象内容(原文)
商標法第24条の2第2項国・地方公共団体・これらの機関、非営利の公益団体の出願に係る商標権国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関又は公益に関する団体であつて営利を目的としないものの商標登録出願であつて、第四条第二項に規定するものに係る商標権は、譲渡することができない。
商標法第24条の2第3項非営利の公益事業を行っている者の出願に係る商標権公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者の商標登録出願であつて、第四条第二項に規定するものに係る商標権は、その事業とともにする場合を除き、移転することができない。
商標法第30条第1項ただし書第4条第2項に規定する商標登録出願に係る商標権ただし、第四条第二項に規定する商標登録出願に係る商標権及び地域団体商標に係る商標権については、この限りでない。(=専用使用権を設定できない)
商標法第31条第1項通常使用権商標権者は、その商標権について他人に通常使用権を許諾することができる。(現行の第1項に、第4条第2項に関するただし書はない)

〔表11〕商標法第4条第2項に係る商標権の制限(概要。e-Gov、2026年9月参照)。第2項は「譲渡」、第3項は「移転」と文言がちがう点に注意。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、第4条第2項について、第1項第6号の立法趣旨がそこに掲げるものの権威の尊重といった意味なのであるから、団体自体が使用するのであれば商標登録をしても一向に差し支えないばかりか、逆に団体が業務を行う場合には未登録のものであれ他人のその商標の使用を排除する必要があるから、商標登録を受けられるようにすることが必要である、と説明しています。そのうえで、本項についてはその者自身を表示する標章についてのみ商標登録を受けられるのであり、たとえば国を表示する標章について地方公共団体が商標登録を受けられると解釈することはできない、としています。また、公益に関する事業であって営利を目的としないものを行っている者については、その者自身は公益的なものでなくても、事業そのものが公益を目的とするならばよい、とも説明しています。
逐条解説〔第22版〕1559頁〜1560頁。

第31条第1項には、公益著名商標の通常使用権の許諾を禁じるただし書がありました。令和元年改正で削除され、2019年5月27日から許諾が可能になりました。地方公共団体・大学等のブランド活用や研究成果の周知などの需要に対応したものです。専用使用権を設定できない第30条第1項ただし書は、これとは別に現在も存在します。出典:特許庁「公益著名商標に係る通常使用権の許諾が可能となります」、商標法第30条・第31条。

5. 第3項 ― 両時判断のしくみ

商標法第4条第3項は、第8号・第10号・第15号・第17号・第19号について、「査定の時点で該当していても、出願の時に該当しないものには適用しない」と定めています。条文が直接書いているのは、この「出願の時」の要件です。

これを受けて、商標審査基準〔改訂第17版〕第3 十八 第4条第3項(第4条第1項各号の判断時期)は、次のように整理しています。

審査基準の項目対象の号内容
1.(1)第1号〜第7号、第9号、第11号、第12号、第14号、第16号、第18号該当するか否かの判断時期は、査定時とする
1.(2)第8号、第10号、第15号、第17号、第19号適用するには、出願時において各号の規定に該当し、かつ、査定時においても該当しなければならない

〔表12〕商標審査基準〔改訂第17版〕第3 十八 第4条第3項 1.の整理(要旨。2回の取得で号の列挙が一致)。「査定時」は条文の文言ではなく審査基準の表現です。

4つの組合せで考えると、両時判断の号が適用されるのは1通りだけです。

出願時査定時両時判断の号(第8号・第10号・第15号・第17号・第19号)査定時だけの号(第12号・第14号など)
該当該当適用拒絶理由になる適用
該当しない該当不適用第4条第3項適用
該当該当しない不適用審査基準1.(2)不適用
該当しない該当しない不適用不適用

〔表13〕出願時・査定時の組合せと適用の有無(審査段階。商標法第4条第3項と〔表12〕から本記事作成者が整理)。

flowchart TB
  A["出願された商標が
第4条第1項のある号に当たりそう"] --> B{"その号は第8号・第10号・第15号・
第17号・第19号のどれか?"} B -- "はい" --> D{"出願時に該当する?"} D -- "はい" --> E{"査定時にも該当する?"} E -- "はい" --> NG2["その号を適用
(第15条第1号の拒絶理由)"] E -- "いいえ" --> OK3["その号は適用しない"] D -- "いいえ" --> OK2["第4条第3項により適用しない"] B -- "いいえ" --> C{"査定時に該当する?"} C -- "はい" --> NG1["その号を適用
(第15条第1号の拒絶理由)"] C -- "いいえ" --> OK1["その号は適用しない"] style NG1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style NG2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style OK1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style OK2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style OK3 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:その号を適用しない(その号では拒絶されない)結論
  • 赤の箱:その号を適用する(拒絶理由になる)結論

【図5】両時判断の分岐図(審査段階)。商標法第4条第3項と商標審査基準〔改訂第17版〕第3 十八を本記事作成者がフロー化したもの。条文番号はすべて商標法。

ポイント:今回の3つの号は、判断時のあつかいが分かれます。第12号・第14号は査定時だけ、第17号は出願時+査定時です。第3項の5つの号は、どれも「出願の後に他人の事情(知名度、産地の保護の開始など)が変わりうる」性質の号だ、と説明されることがありますが、これは講学上の説明です。条文には理由は書かれていません。

国際商標登録出願などでは、「商標登録出願の時」をいつと見るかが問題になります。審査基準は次の表を置いています。

出願「商標登録出願の時」
国際商標登録出願国際登録の日又は事後指定の日
商標法第68条の10に規定する出願時の特例の適用のある国際商標登録出願該当する国内登録の登録商標に係る商標登録出願の日
商標法第68条の32に規定する商標登録出願、商標法第68条の33に規定する商標登録出願国際登録の日又は事後指定の日

〔表14〕国際商標登録出願等における「商標登録出願の時」(商標審査基準〔改訂第17版〕第3 十八 第4条第3項 2.の要旨)。商標法第68条の10の特例は、国内登録の指定商品・指定役務と重複している範囲について認められるため、指定商品・指定役務ごとに出願の日が異なる場合がある旨の注記があります。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、第4条第3項について、出願に係る商標が第1項各号に掲げる商標に該当するかどうかの判断の時点は査定時であることを前提にしたうえで、第8号・第10号・第15号・第17号・第19号についてだけは、査定時にこれらの規定に該当していても出願時に該当していなければ拒絶しないという趣旨を表したものである、と説明しています。これらの号についてこのような救済規定を設けた理由は、これら各号の場合には、出願時に該当しないのに出願後にこれらの規定に該当するようになったものまで不登録にするのは酷に失するからである、としています。
第17号の追加(平成6年の一部改正)については、出願時に原産国で保護されていない地理的表示に関する商標を出願した場合は、後に原産国で保護されることを知らずに善意に出願したものと考えることが妥当であり、TRIPS協定第24条5(b)に規定する善意の要件を満たすものと考えられる、と説明しています。第19号の追加は平成8年の一部改正によるものとしています。
逐条解説〔第22版〕1560頁。

拒絶査定不服審判では、原則として審決時を基準に判断します。例えば第6号について知財高裁平成26年9月11日判決は、審査との続審関係から審決時としています。無効理由として第4条第1項違反を判断するときは、原則として登録査定時です(知財高裁平成28年1月13日判決15頁)。第4条第3項の各号では出願時の要件も必要であり、第46条第1項第5〜7号の後発的無効理由は別に扱います。出典:平成26年(行ケ)第10092号判決7〜9頁、平成27年(行ケ)第10096号判決15頁、商標法第4条第3項・第46条。

6. 拒絶・異議・無効・除斥期間・後発的無効理由の対応表

担当の規定拒絶理由
(第15条第1号)
異議理由
(第43条の2第1号)
無効理由
(第46条第1項第1号)
除斥期間
(第47条第1項)
後発的無効理由
(第46条第1項第6号)
第4条第1項第12号○○○○ 5年―
第4条第1項第14号○○○○ 5年―
第4条第1項第17号○○○○ 5年(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く)―
第4条第1項第6号(参考)○○○――

〔表15〕担当規定と拒絶・異議・無効の対応(条文番号はすべて商標法)。商標法第15条第1号・第43条の2第1号・第46条第1項第1号はいずれも「第四条第一項」を号の限定なく掲げています。除斥期間は商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない。(商標法第47条第1項、2026年9月時点のe-Govによる)。

商標法第46条第1項第6号(原文) 商標登録がされた後において、その登録商標が第四条第一項第一号から第三号まで、第五号、第七号又は第十六号に掲げる商標に該当するものとなつているとき。 商標法第47条第1項(原文) 商標登録が第三条、第四条第一項第八号若しくは第十一号から第十四号まで若しくは第八条第一項、第二項若しくは第五項の規定に違反してされたとき、商標登録が第四条第一項第十号若しくは第十七号の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、商標登録が同項第十五号の規定に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)又は商標登録が第四十六条第一項第四号に該当するときは、その商標登録についての同項の審判は、商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
flowchart TB
  A["第4条第1項の号を理由に
無効審判を請求したい"] --> B{"登録査定時(原則)に
その号に違反していた?"} B -- "はい(第46条第1項第1号)" --> C{"どの号?"} C -- "第8号・第11号・
第12号・第14号" --> X1["設定の登録の日から5年を
経過した後は請求できない"] C -- "第10号・第17号" --> F{"不正競争の目的で
商標登録を受けた?"} F -- "はい" --> Y1["5年経過後も請求できる"] F -- "いいえ" --> X1 C -- "第15号" --> G{"不正の目的で
商標登録を受けた?"} G -- "はい" --> Y1 G -- "いいえ" --> X1 C -- "第1号〜第7号・第9号・
第16号・第18号・第19号" --> Y2["第47条第1項の列挙になし
(除斥期間なし)"] B -- "いいえ(登録後に該当)" --> D{"第1号〜第3号・第5号・
第7号・第16号のどれか?"} D -- "はい" --> Y3["第46条第1項第6号により
請求できる"] D -- "いいえ" --> X2["第4条第1項を理由とする
後発的無効理由にならない"] style X1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style X2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style Y1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style Y2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style Y3 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:無効審判を請求できる結論
  • 赤の箱:無効審判を請求できない結論

【図6】第4条第1項の号と無効審判の時間的な制限の分岐図。この図の緑・赤は「無効審判を請求できるか」を表しており、【図5】(緑=その号を適用しない)とは向きがちがいます。商標法第46条第1項第1号・第6号、第47条第1項を本記事作成者がフロー化したもの。無効審判の請求人適格など、ほかの要件は省略しています(→関連記事)。

Q. 第17号は第3項(両時判断)にも第47条第1項(除斥期間)にも出てくる。第12号・第14号はどうか。
A. 第12号・第14号は、第3項の列挙に入っていません(審査基準上、査定時で判断)。他方、第47条第1項の「第十一号から第十四号まで」に入るので、除斥期間の対象にはなります。「両時判断の号」と「除斥期間の号」は一致しません。たとえば第19号は両時判断ですが除斥期間の対象ではなく、第11号は除斥期間の対象ですが両時判断ではありません(〔表6〕)。

7. 改正の整理 ― 第13号の削除

時期内容確認した資料
改正前第4条第1項第13号に、商標権が消滅した後1年間、他人の商標登録を排除する規定があった特許庁「平成23年法律改正(平成23年法律第63号)解説書」の章名「第11章 商標権消滅後一年間の他人の登録排除規定の廃止」
現行第4条第1項第13号は「削除」。号番号は詰められておらず、第14号以下の番号はそのままe-Gov(2026年9月参照)

〔表16〕商標法第4条第1項第13号の改正前/現行。廃止の施行日は2012年4月1日です(同改正解説203頁)。

廃止の理由(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は〔参考〕として、次のように説明しています。平成23年の一部改正前は、何人かが使用していた商標は、たとえその使用をやめても1年間程度はその商標に化体された信用が残存して、他人がその商標の使用をすれば商品又は役務の出所の混同を招くおそれがあるとの理由から、商標権が消滅した日から1年を経過していない他人の商標又はこれに類似する商標であって、その商標権に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用するものを不登録とし、他人の登録を排除する旨を第4条第1項第13号に規定していた。しかしながら、商品の短期ライフサイクル化の進展等に伴い早期の権利取得へのニーズが高まる一方、特許庁では出願から審査結果の最初の通知が発送されるまでの期間が短縮化している。このような状況の下、改正前の第13号により商標権消滅後1年間登録を認めないことによる権利化の遅延という弊害が顕著化し、結果として同号は早期の権利取得というユーザーニーズに応えられないことになりかねない事態となっていたことから、平成23年の一部改正により、この登録排除規定を廃止した。
同解説はさらに、この廃止に併せて、これに関連する当時の第4条第4項の規定も削除したと説明しています。現行の第4条第4項は、令和5年法律第51号で新設されたコンセント制度の規定であり、旧第4条第4項とは別のものです(→ #7)。
逐条解説〔第22版〕1561頁。

旧第13号は、商標権の消滅日(取消決定・無効審決があったときはその確定日)から1年未経過の他人の商標又は類似商標について、指定商品・役務又はその類似範囲での登録を排除していました。ただし、消滅日前1年以上使用していなかった商標は除外されていました。平成23年法律第63号により廃止され、2012年4月1日から施行時に係属中の出願にも経過措置を設けず適用されています。第47条第1項の「第十一号から第十四号まで」は、第13号削除後は実質的に第11・12・14号を指します。令和8年度試験は各試験実施日に施行されている法律等から出題され、短答式試験日は2026年5月17日です。出典:平成23年改正解説第11章203頁・施行期日と経過措置、令和8年度受験案内2頁。

8. 特許法・実用新案法・意匠法との比較

特許法実用新案法意匠法商標法
登録を受けられないものを定める条特許法第32条実用新案法第4条意匠法第5条商標法第4条第1項
事由の数1つ(公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれ)1つ(同左)3つ(第1号〜第3号)第1号〜第19号(第13号は削除)
他人の業務との混同規定なし規定なし意匠法第5条第2号商標法第4条第1項第15号(関連して第10号・第11号・第19号など → #6・#7)
主体による適用除外なしなしなし商標法第4条第2項
出願時にも該当することを要する旨の規定なしなしなし商標法第4条第3項

〔表17〕四法の不登録事由の比較(特許法第32条、実用新案法第4条、意匠法第5条をe-Govで確認。「なし」は、これらの条に該当する項がないという意味)。特許法・意匠法の新規性などは「出願前」を基準とする別の条文の問題で、商標法第4条第3項とは性質がちがいます(→親シリーズの記事)。

試験での問われ方

以下は、条文の構造から見た整理です。出題の予想ではありません。

  • 短答式:号の文言のちがい(第12号は「同一」のみ、第14号は「同一又は類似」、第17号は「有する」)、第3項の5つの号、第47条第1項の列挙と括弧書(「不正競争の目的」は第10号・第17号、「不正の目的」は第15号)、第46条第1項第6号の6つの号、第2項に係る商標権の制限(第24条の2第2項は「譲渡」、第3項は「移転」、第30条第1項ただし書)は、いずれも条文の文言で正誤が決まる形に整理できます。
  • 論文式:周知・著名商標の保護を検討するとき、防護標章登録(商標法第64条)と第12号、第15号、第19号の関係を、判断時と除斥期間のちがいもふくめて位置づけられるようにしておくと整理しやすくなります。
  • 口述:「第4条第3項に掲げられている号を挙げてください」「第4条第2項はどの号の例外ですか」のように、条文の列挙をそのまま答える形が考えられます。

令和8年度短答式【商標】3では、枝1が削除前の第13号に相当する記述、枝2が他人の登録防護標章に類似する商標を扱います。枝3〜5はそれぞれ第16号、第18号、第1号に関する記述です。公式正解は5です。 出典:公式問題(商標1〜10)、公式解答。

レベル3のまとめ
  • 第12号は「同一」かつ「防護標章登録に係る指定商品・指定役務」に限られます。類似の場合は第12号ではなく、第15号などの問題になりえます(第15号は第10号〜第14号に掲げるものを除く)。
  • 第14号は種苗法第4条第1項第2号・第3号と鏡の関係にあります。
  • 第17号は、日本国の産地(特許庁長官の指定)と世界貿易機関の加盟国の産地(当該国で使用禁止)の2類型。混同・誤認は要件ではありません。
  • 第2項は第6号だけの適用除外。登録後は、譲渡・移転の制限(第24条の2第2項・第3項)と専用使用権の設定不可(第30条第1項ただし書)がつきます。
  • 第3項の5つの号(第8号・第10号・第15号・第17号・第19号)は、出願時と査定時の両方で該当するときだけ適用されます。その他の号は査定時で判断する、というのが審査基準の整理です。
  • 除斥期間(第47条第1項)と後発的無効理由(第46条第1項第6号)の列挙は、第3項の列挙と一致しません。〔表6〕で号ごとに確認してください。

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