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小学生でも分かる商標法|商標法第24条〜第24条の3・第35条 商標権の分割と移転 ― 「目じるしの権利」を切り分けて、ゆずるときの決まり

小学生でもわかる商標法 第28回「商標権の分割と移転」。権利を分ける・ゆずるルール。

小学生でも分かる商標法 / C. 商標権の効力・使用権・侵害 #28

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商標権は、指定商品又は指定役務ごとに切り分けること(分割)も、だれかにわたすこと(移転)もできます。ただし、わたせない商標権があり、団体商標はわたすと性質が変わり、しかも特許庁の登録がなければ効き目が出ません。この記事では、その決まりを、イメージ → 条文の骨格 → 受験レベルの順に、はしごをのぼるように整理します。

条文:商標法第24条、第24条の2、第24条の3、第35条関連:特許法第73条・第76条・第98条第1項第1号・第2項(準用)参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「目じるしの権利」は、商品ごとに切り分けられる

商標(しょうひょう)は、お店や商品の「目じるし」です。目じるしを特許庁(とっきょちょう)という国の役所に登録すると、「この目じるしを、この商品に使えるのは自分だけ」という権利がもらえます。これを商標権(しょうひょうけん)といいます。

パン屋の「ほしぞらパン」が、目じるし「ほしぞらパン」を、パン・ケーキ・ジュースの3つの商品について登録したとします(架空の例です)。このとき権利は1つですが、中には3つの商品が入っています。

この1つの権利は、商品ごとに切り分けることができます。これを「分割(ぶんかつ)」といいます。「パンとケーキの権利」と「ジュースの権利」の2つにする、というぐあいです。

切り分けた権利は、べつべつに、ほかの人へゆずることもできます。権利の持ち主がかわることを「移転(いてん)」といいます。ジュースの仕事だけをとなり町の「こぐま堂」にまかせるなら、ジュースの権利だけをこぐま堂にゆずればよいのです。

もとの権利(1つ) 持ち主:ほしぞらパン パン ケーキ ジュース 分ける 権利A パン、ケーキ 持ち主:ほしぞらパン (そのまま) 権利B ジュース 持ち主:ほしぞらパン (これから、ゆずる) ゆずる 権利B ジュース 持ち主:こぐま堂 (帳簿に書かれてから) 特許庁の帳簿に 書いてもらって、はじめて 分けた・ゆずったことになる

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の枠:分ける前の、もとの商標権
  • 橙の枠:分けたあと、持ち主がかわらない権利(権利A)
  • 藍の枠:分けたあと、ほかの人にゆずる権利(権利B)
  • 赤の枠:分ける・ゆずるの効き目が出るための条件

【図1】権利を商品ごとに分けて、その1つをゆずる(店名・商品は架空の例)。「分けてからゆずる」を1回の手続でまとめてすることもできます(→レベル2)。

約束しただけでは、まだゆずったことにならない

特許庁には、「どの目じるしの権利を、だれが持っているか」を書いた帳簿(ちょうぼ)があります。権利を分けるときも、売ったりあげたりしてゆずるときも、この帳簿に書いてもらって、はじめて効き目が出ます。二人の間で「ゆずるね」「もらうね」と約束しただけでは、まだ権利は動いていません。

ただし、持ち主が亡くなって家族が受けつぐとき(相続)や、会社どうしが1つになるとき(合併)は、帳簿に書く前から権利が受けつがれます。そのかわり、「受けつぎました」と、おくれずに特許庁へ知らせなければなりません。

ゆずれない目じるしもある

目じるしの中には、「その人が持っているからこそ意味がある」ものがあります。たとえば、市や県などが自分の名前やマークとして登録した特別な目じるしです。これが売り買いされて、まったく関係のない会社のものになったら、見た人はだまされてしまいます。そこで、こうした目じるしの権利は、売ったりあげたりできない決まりになっています。

地域の名物の目じるし(地域の名前と商品の名前を組み合わせたもので、地域の組合などが持つもの)も、売ったりあげたりできません。

その目じるしの権利は、ゆずれる? ふつうの目じるし 例:パン屋の名前 ゆずれる 商品ごとに分けて ゆずることもできる 市・県などの 特別な目じるし 売る・あげるは× 関係のない人の物に なると、こまるから もうけを目的としない 公共の仕事の目じるし 仕事といっしょなら○ 目じるしだけを わたすことはできない 地域の名物の 目じるし 売る・あげるは× 地域の組合などが 持つことに意味がある

図は左右にスクロールできます。

  • 橙の枠と○:ゆずれる
  • 赤の枠と×:売ったりあげたりできない
  • 青緑の枠と△:条件がつく(その仕事といっしょならゆずれる)

【図2】ゆずれる目じるし・ゆずれない目じるし(イメージ図。正確な条件はレベル2・レベル3)。

グループの目じるしは、ゆずると「ふつうの目じるし」になる

組合などのグループが、メンバーみんなに使わせるために登録した目じるしがあります(団体商標=だんたいしょうひょう)。これを何も言わずにゆずると、ゆずられた先では「ふつうの目じるしの権利」に変わったものとしてあつかわれます。グループの目じるしのままゆずりたいときは、「グループの目じるしとしてゆずります」という紙と、ゆずられる側が決められた種類の団体であることを示す紙を、帳簿に書いてもらう申しこみと同時に出します。

二人で持っている権利

1つの目じるしの権利を、二人以上でいっしょに持つこともあります。このとき、自分の持ち分をだれかにゆずるには、いっしょに持っている人の「いいよ」が必要です。知らない人がいきなり仲間に入ってくると、こまるからです。

① 権利は商品ごとに分けられる② 分けてゆずることもできる③ 帳簿に書かれて、はじめて効き目が出る④ ゆずれない目じるしがある⑤ グループの目じるしは、ゆずるとふつうの権利に
レベル1のまとめ
  • 目じるしの権利(商標権)は、商品やサービスごとに切り分けられる(分割)。
  • 切り分けた権利を、べつべつにゆずることができる(移転)。
  • 分けるのも、売ったりあげたりしてゆずるのも、特許庁の帳簿に書いてもらって、はじめて効き目が出る。
  • 市や県などの特別な目じるし、地域の名物の目じるしは、売ったりあげたりできない。
  • グループの目じるし(団体商標)は、紙を出さずにゆずると、ふつうの目じるしの権利に変わったあつかいになる。

※ 「市や県などの特別な目じるし」がどの商標権を指すか、相続や合併で受けつぐ場合のあつかい、権利がなくなった後でも分割できる場合、二人で持つ権利の決まりには、正確には条件があります(→レベル3)。ここでは「売る・あげる」と「相続・合併」の区別を単純化して説明しています。

LEVEL 2条文の骨格

商標法第24条 ― 商標権の分割

商標法第24条(商標権の分割)(原文) 第1項 商標権の分割は、その指定商品又は指定役務が二以上あるときは、指定商品又は指定役務ごとにすることができる。
第2項 前項の分割は、商標権の消滅後においても、第四十六条第三項の審判の請求があつたときは、その事件が審判、再審又は訴訟に係属している場合に限り、することができる。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
部品文言意味
何を「商標権の分割」1つの商標権を、2つ以上の商標権に分けること。出願の分割(商標法第10条)とは別の制度です。
どんなとき「その指定商品又は指定役務が二以上あるとき」指定商品又は指定役務が1つしかない商標権は、分けようがありません。
どの単位で「指定商品又は指定役務ごとに」分ける単位は指定商品又は指定役務です。商標そのもの(文字と図形など)を切り分けることはできません。
いつ(第2項)「商標権の消滅後においても」「第四十六条第三項の審判の請求があつたとき」「その事件が審判、再審又は訴訟に係属している場合に限り」商標権が消滅した後でも、消滅後に請求された商標登録の無効の審判(商標法第46条第3項)の事件が続いている間だけは、分割できます。

〔表1〕商標法第24条の部品分解(本記事作成者が条文を整理したもの)。

商標法第46条第3項の原文は第一項の審判は、商標権の消滅後においても、請求することができる。です。「第一項の審判」とは、商標登録を無効にすることについての審判です。

商標法第24条の2 ― 商標権の移転

商標法第24条の2(商標権の移転)(原文) 第1項 商標権の移転は、その指定商品又は指定役務が二以上あるときは、指定商品又は指定役務ごとに分割してすることができる。
第2項 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関又は公益に関する団体であつて営利を目的としないものの商標登録出願であつて、第四条第二項に規定するものに係る商標権は、譲渡することができない。
第3項 公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者の商標登録出願であつて、第四条第二項に規定するものに係る商標権は、その事業とともにする場合を除き、移転することができない。
第4項 地域団体商標に係る商標権は、譲渡することができない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
項対象の商標権条文の結論条文が使う言葉
第1項指定商品又は指定役務が二以上ある商標権指定商品又は指定役務ごとに分割して移転できる「移転」
第2項国、地方公共団体、これらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの の商標登録出願で、商標法第4条第2項に規定するものに係る商標権できない「譲渡することができない」
第3項公益に関する事業であって営利を目的としないものを行っている者 の商標登録出願で、商標法第4条第2項に規定するものに係る商標権その事業とともにする場合を除き、できない「移転することができない」
第4項地域団体商標に係る商標権できない「譲渡することができない」

〔表2〕商標法第24条の2の項ごとの役割。第2項・第4項は「譲渡」、第3項は「移転」と、言葉が使い分けられています(→レベル3)。

「第四条第二項に規定するもの」とは:商標法第4条第2項の原文は国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者が前項第六号の商標について商標登録出願をするときは、同号の規定は、適用しない。です。つまり、商標法第4条第1項第6号の商標(国や地方公共団体などを表示する著名な標章と同一又は類似の商標)について、その本人が出願して登録を受けた商標権のことです。

商標法第24条の3 ― 団体商標に係る商標権の移転

商標法第24条の3(団体商標に係る商標権の移転)(原文) 第1項 団体商標に係る商標権が移転されたときは、次項に規定する場合を除き、その商標権は、通常の商標権に変更されたものとみなす。
第2項 団体商標に係る商標権を団体商標に係る商標権として移転しようとするときは、その旨を記載した書面及び第七条第三項に規定する書面を移転の登録の申請と同時に特許庁長官に提出しなければならない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
場面必要なこと移転後の商標権
原則(第1項)特別な書面を出さない「通常の商標権に変更されたものとみなす」
団体商標のまま移転(第2項)①その旨を記載した書面、②商標法第7条第3項に規定する書面 を、「移転の登録の申請と同時に」特許庁長官に提出団体商標に係る商標権のまま

〔表3〕商標法第24条の3の骨格。商標法第7条第3項に規定する書面とは、同項の原文でいう商標登録出願人が第一項に規定する法人であることを証明する書面です。

商標法第35条 ― 特許法の準用

商標法第35条(特許法の準用)(原文) 特許法第七十三条(共有)、第七十六条(相続人がない場合の特許権の消滅)並びに第九十八条第一項第一号及び第二項(登録の効果)の規定は、商標権に準用する。この場合において、同号中「移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)」とあるのは、「分割、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)」と読み替えるものとする。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
準用される特許法の規定内容(特許法の原文の要約)商標権に当てはめると
特許法第73条(共有)第1項=持分の譲渡・質権設定に他の共有者の同意が必要。第2項=契約で別段の定めをした場合を除き、各共有者は同意なく実施できる。第3項=専用実施権の設定・通常実施権の許諾に他の共有者の同意が必要。共有に係る商標権の持分の譲渡、質権の設定、専用使用権の設定、通常使用権の許諾に、他の共有者の同意が必要。各共有者は、契約で別段の定めをした場合を除き、同意なく登録商標の使用ができる。
特許法第76条(相続人がない場合の特許権の消滅)特許権は、民法第九百五十二条第二項の期間内に相続人である権利を主張する者がないときは、消滅する。商標権も同じ場合に消滅する。
特許法第98条第1項第1号(登録の効果)特許権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、信託による変更、放棄による消滅又は処分の制限は、登録しなければ効力を生じない。読替えあり:「移転(…)」→「分割、移転(…)」。商標権の分割も、登録しなければ効力を生じない。
特許法第98条第2項前項各号の相続その他の一般承継の場合は、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届け出なければならない。商標権の一般承継も、遅滞なく特許庁長官に届け出る。

〔表4〕商標法第35条が準用する特許法の規定と読替え。特許法の原文はe-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。「当てはめ」欄は準用の結果を本記事作成者が整理したもの。

手続の流れ

flowchart TB
  A["商標権者
指定商品又は指定役務が二以上ある商標権"] --> B{"何をしたい?"} B -- "権利を分けるだけ" --> C["商標権の分割
商標法第24条第1項"] B -- "一部だけ他人にわたす" --> D["指定商品又は指定役務ごとに
分割して移転
商標法第24条の2第1項"] B -- "全部を他人にわたす" --> E["商標権の移転"] C --> F["特許庁に登録を申請"] D --> F E --> F F --> G["登録
ここで効力が生じる
商標法第35条で準用する
特許法第98条第1項第1号"] E2["相続その他の一般承継"] --> H["登録を待たずに承継
遅滞なく特許庁長官に届出
同条で準用する特許法第98条第2項"] style G fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style H fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図3】分割・移転から登録までの流れ(条文をもとに本記事作成者がフロー化したもの。移転の制限は図6参照)。

特許法 商標法(受け皿) 第73条(共有) 第76条(相続人がない場合) 第98条第1項第1号・第2項 第98条第1項第2号・第2項 第98条第1項第3号・第2項 第35条で準用 読替え:「分割、」を加える 第30条第4項で準用 第34条第4項で準用 商標権 分割、移転(一般承継を除く)などは 登録しなければ効力を生じない 専用使用権 本記事の対象外(#31) 商標権・専用使用権を目的とする質権 本記事の対象外(#31)

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の枠:商標法第35条で商標権に準用される特許法の規定
  • 橙の枠:準用の受け皿になる商標権(本記事の対象)
  • 藍の枠:専用使用権・質権に関する規定と、その受け皿(本記事の対象外)

【図4】特許法の「登録の効果」などが商標法のどの条文で受け止められているか(相関図。条文をもとに本記事作成者が整理したもの)。

レベル2のまとめ
  • 商標法第24条=商標権の分割。指定商品又は指定役務が二以上あるとき、指定商品又は指定役務ごとにできる。消滅後も、商標法第46条第3項の審判の事件が係属している場合に限りできる。
  • 商標法第24条の2=移転。第1項で分割移転、第2項・第4項で「譲渡」の禁止、第3項で「その事業とともにする場合」以外の「移転」の禁止。
  • 商標法第24条の3=団体商標に係る商標権は、移転すると通常の商標権に変更されたものとみなされる。団体商標のまま移転するには、2つの書面を移転の登録の申請と同時に出す。
  • 商標法第35条=特許法第73条・第76条・第98条第1項第1号・第2項の準用。読替えで「分割」が登録の効力発生事項に加わる。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 商標権の分割(商標法第24条)

要件は条文上2つだけです。①主体が商標権者であること(分割は自己の商標権の処分です)、②その商標権の指定商品又は指定役務が二以上あること。分割の単位は「指定商品又は指定役務ごと」で、商標の構成要素を切り分けることはできません。そして、分割は登録しなければ効力を生じません(商標法第35条で読み替えて準用する特許法第98条第1項第1号)。

実務上の取扱い(特許庁の案内):特許庁ウェブサイト「商標権の分割登録申請書【商標】」(2025年4月22日更新)は、この手続を、指定商品又は指定役務が二以上ある場合に商標権者が指定商品又は指定役務ごとに分割し「別個独立の商標権とする手続」と説明し、いったん分割すると、元の商標登録原簿には戻せませんので、注意してください。と注意しています。これは条文そのものではなく、特許庁の手続案内です。

消滅後の分割(第2項)

商標登録の無効の審判は、商標権の消滅後も請求でき(商標法第46条第3項)、しかも指定商品又は指定役務ごとに請求できます(同条第1項柱書後段この場合において、商標登録に係る指定商品又は指定役務が二以上のものについては、指定商品又は指定役務ごとに請求することができる。)。商標法第24条第2項は、この消滅後の無効の審判の請求があったときに、「その事件が審判、再審又は訴訟に係属している場合に限り」消滅後の分割を認めます。

時間の流れ → 設定の登録 商標権の消滅 無効の審判の請求 (第46条第3項) 審決・訴訟 事件の終了 分割できる 第24条第1項(存続中) 分割できない 分割できる 第24条第2項(事件が係属中に限り) 不可 第2項の条件:①商標権の消滅後であること ②第46条第3項の審判の請求があったこと ③その事件が「審判、再審又は訴訟に係属している場合」であること

図は左右にスクロールできます。

  • 橙の帯:分割できる期間
  • 赤の帯:分割できない期間
  • 藍の枠:第24条第2項で分割できるための条件
  • 青緑の丸:分割できる期間の始まり・その中の出来事
  • 赤の丸:分割できる期間が終わる時点

【図5】商標権の分割ができる時期のタイムチャート(商標法第24条第1項・第2項をもとに本記事作成者が図示したもの。間隔は説明のための架空のもの)。時間軸に縮尺はありません。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』(令和4年10月。以下「逐条解説〔第22版〕」)は、商標権の分割を、一つの商標権を商標権者の意思で指定商品(指定役務)ごとに分けて、各々別個独立の商標権とするものと説明しています。平成8年の一部改正前は、他人への移転を伴わなければ商標権を分割することができなかったところ、各締約国に登録の分割を認めることを義務付けている商標法条約第7条(2)に対応させるために、同改正で本条が新設されたとされています。移転を前提とせずに分割ができれば、登録異議の申立てや審判の請求があった場合に、申立て・請求に係る指定商品又は指定役務についての商標権と、係らない指定商品又は指定役務についての商標権とに分割することにより、権利の有効性について争いのない商標権については安心して権利行使ができ、譲渡交渉やライセンス契約等を行う際にも円滑に対応し得る、という説明です。
第2項について:商標法条約第7条(2)は、登録の分割が、少なくとも第三者が官庁に対して登録の有効性を争う手続の期間及び当該手続において官庁が行った決定に対する上訴手続の期間には認められる旨を規定しており、我が国は商標法第46条第3項により商標権の消滅後においても無効審判を請求することが可能であるため、消滅後においても、この無効審判に係る事件が審判、再審又は訴訟に係属している場合に限り、登録の分割を認めることとした、と説明されています。挙げられている例は、権利の消滅後に商標権侵害に基づく損害賠償を請求したところ無効審判を請求されたので、請求に係る指定商品(役務)と請求に係らない指定商品(役務)とに商標権を分け、請求に係らない部分についての審判請求不成立の審決を早く確定させ、これのみに基づく権利行使を早く進めたい、というものです。なお、平成26年の一部改正で商標法第46条第2項が第3項に繰り下げられたことに伴い、該当箇所が改正されたとされています。
逐条解説〔第22版〕1636頁〜1637頁。

出願の分割との違い

比較項目出願の分割(商標法第10条)商標権の分割(商標法第24条)
対象商標登録出願(権利になる前)商標権(設定の登録の後)
主体商標登録出願人商標権者
時期出願が審査、審判若しくは再審に係属している場合、又は拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合商標権の存続中(第1項)。消滅後は、商標法第46条第3項の審判の事件が審判、再審又は訴訟に係属している場合に限る(第2項)
手数料の要件商標法第76条第2項の規定により納付すべき手数料を納付している場合に限る条文上、このような要件の定めなし
効果新たな商標登録出願は、もとの商標登録出願の時にしたものとみなす(商標法第10条第2項本文。ただし書あり)遡及の定めなし。登録により効力を生じる(商標法第35条で読み替えて準用する特許法第98条第1項第1号)
国際登録の場合国際商標登録出願には適用しない(商標法第68条の12)国際登録に基づく商標権には適用しない(商標法第68条の23)

〔表5〕出願の分割と商標権の分割の比較。出願の分割の詳細は既刊記事#17を参照。

分割に伴って動くもの

  • 防護標章登録に基づく権利:商標法第66条第1項防護標章登録に基づく権利は、当該商標権を分割したときは、消滅する。。移転の場合は、同条第2項防護標章登録に基づく権利は、当該商標権を移転したときは、その商標権に従つて移転する。。分割は「消滅」、移転は「従って移転」と結論が分かれます。
  • 国際登録に基づく商標権:商標法第68条の23国際登録に基づく商標権については、第二十四条の規定は、適用しない。。

2. 商標権の移転と、その制限(商標法第24条の2)

「移転」「譲渡」「一般承継」の関係

言葉意味本条での使われ方
移転権利の主体が変わること全般。譲渡などの特定承継と、相続その他の一般承継の両方を含む広い言葉です。第1項(分割移転)、第3項(その事業とともにする場合を除き移転不可)
譲渡売買や贈与など、当事者の意思による個別の権利の移転(特定承継)。第2項・第4項(譲渡不可)
相続その他の一般承継相続、合併など、権利義務を包括的に受けつぐこと。本条には出てこない。商標法第35条で準用する特許法第98条第1項第1号の括弧書と同条第2項に登場

〔表6〕用語の整理(「移転」が譲渡と一般承継を含むことは、特許法第98条第1項第1号の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)という書き方から読み取れます)。

ポイント(条文上の帰結):商標法第24条の2第2項・第4項が禁じているのは「譲渡」です。条文の文言上、相続その他の一般承継による移転は、これらの項の禁止の対象として書かれていません。これに対し、第3項は「移転」を禁じ、「その事業とともにする場合」だけを除いています。「国や地方公共団体の商標権は移転できない」「地域団体商標に係る商標権は移転できない」という言い方は、条文の文言と一致しません。
立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、第2項及び第3項がともに、商標法第4条第2項の規定によって商標登録出願をし商標登録を受けた商標権について、同項の、その者自身の出願に対してのみ商標登録をするという趣旨を貫くため、移転に対しても制限を加えたものである、と説明しています。そのうえで、第2項で「譲渡」としたのは一般承継の場合には移転ができる趣旨であり、これに対して第3項についてはその事業とともにする場合を除き一切移転はできない、としています。第4項(地域団体商標)については、自由な譲渡を認めた場合には主体要件を定めた趣旨を没却することになるため、第2項と同様に、組合等の団体の合併のような一般承継の場合に限り移転することができるものとし、譲渡は認めないこととした、主体要件を満たした団体同士の合併の場合には出所そのものが全く異なる性質の主体に変動するわけではなく、商標の使用をしていた構成員についても変化がないため、商標に化体した商品の品質又は役務の質に対する信用も維持されるからである、と説明されています。
逐条解説〔第22版〕1640頁。
flowchart TB
  A["商標権を他人に
わたしたい"] --> B{"地域団体商標に係る
商標権か"} B -- "はい" --> C{"譲渡か"} C -- "譲渡" --> C1["できない
商標法第24条の2第4項"] C -- "一般承継" --> C2["第4項が禁じるのは譲渡
関連:商標法第46条第1項第7号"] B -- "いいえ" --> D{"商標法第4条第2項に
規定する出願に係る
商標権か"} D -- "はい" --> E{"出願をした者は"} D -- "いいえ" --> OK["移転できる
指定商品又は指定役務ごとに
分割して移転も可
商標法第24条の2第1項"] E -- "国・地方公共団体・これらの機関・
営利を目的としない公益に関する団体" --> F{"譲渡か"} F -- "譲渡" --> F1["できない
商標法第24条の2第2項"] F -- "一般承継" --> F2["第2項が禁じるのは譲渡"] E -- "営利を目的としない公益に関する
事業を行っている者" --> G{"その事業とともに
する移転か"} G -- "はい" --> G1["移転できる
商標法第24条の2第3項"] G -- "いいえ" --> G2["移転できない
商標法第24条の2第3項"] style OK fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style G1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style C1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style F1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style G2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:移転できるという結論
  • 赤の箱:条文上できないという結論
  • 白い箱:その項が禁じているのは「譲渡」であり、一般承継による移転が禁止の対象として書かれていないこと

【図6】移転制限の分岐図(商標法第24条の2をもとに本記事作成者がフロー化したもの)。団体商標は図7へ。

図6の「関連:商標法第46条第1項第7号」とは、地域団体商標の後発的な無効理由地域団体商標の商標登録がされた後において、その商標権者が組合等に該当しなくなつたとき、又は…(前半部分のみ引用)のことです。譲渡が禁じられていても、商標権者が「組合等」であることは登録後も求められ続ける、という形で主体の適格が担保されています。

同じ「第4条第2項」・地域団体商標に置かれた、ほかの制限

商標法第30条第1項ただし書は、第四条第二項に規定する商標登録出願に係る商標権及び地域団体商標に係る商標権については、この限りでない。として、これらの商標権に専用使用権を設定できないとしています。譲渡の禁止(商標法第24条の2第2項・第4項)と同じ対象に、専用使用権の設定の禁止がかかっている、と並べて覚えると整理しやすくなります(詳細は#31)。

分割移転の結果としての「混同」への手当て

商標法第24条の2第1項は、分割して移転できる指定商品又は指定役務に、条文上、制限を置いていません。そのため、互いに類似する商品についての同一の登録商標や、同一の商品についての類似の登録商標が、移転の結果、別々の商標権者に属することがあり得ます。商標法はこの場面に2つの手当てを置いています。

手当て条文きっかけ内容
混同防止表示請求商標法第24条の4同条第4号商標権が移転されたこと。など各号の事由により、類似関係にある登録商標に係る商標権が異なった商標権者に属することとなった場合業務上の利益が害されるおそれのあるとき、混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。
取消しの審判商標法第52条の2商標法第24条の4各号に掲げる事由により、同様の状態となった場合一方の商標権者が「不正競争の目的で」混同を生ずる使用をしたとき、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。

〔表7〕移転の自由と引き換えに置かれた混同防止の仕組み(詳細は#29・#44)。

立法経緯(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、平成8年の一部改正において連合商標制度を廃止したことを契機として、商標権の移転の制限をさらに緩和したと説明しています。同改正前は、同一人の類似商標は連合商標として登録すべきものとされ、その一部を分離して移転することは禁止されており(一部改正前の第2項)、また、同一の商標について一部の指定商品・指定役務に係る部分だけを分割して移転する場合についても、類似関係にある商品・役務に係る商標権の分割移転は禁止されていた(一部改正前の第1項ただし書)とされます。同改正は、公益的な観点からの事後的な誤認混同防止のための担保措置(混同防止表示請求措置=商標法第24条の4、出所の混同が生じた場合の商標登録取消審判=商標法第52条の2)を講ずることとして、これらの移転を認め、移転についての制限規定を削除したものだ、という説明です。
解説は、その理由として次の3つを挙げています。
  • 商標権は私的財産権である産業財産権の一つとして位置付けられるものである以上、類似商標の分離移転や同一商標の分割移転といえども、誤認混同のおそれが生じないよう公益的観点から別途の方法により担保することが可能であれば、あとは私益の問題であるから、当事者間の合意があれば基本的に自由に処分(移転)することを認めることが適当であること。
  • 類似商標の分離移転や同一商標の分割移転がされた場合であっても、それぞれの商標権者が誤認混同のおそれが生ずるような使用をすれば、かえって損害を被るのは自分自身である以上考えにくく、使用地域を分けたり、自主的に適切な混同防止表示を付したりするなどによる棲み分けが行われ、平穏に使用されるのが通常であろうこと。
  • 従来の商標制度の下においても、使用許諾制度、サービスマークの特例出願に係る重複登録制度、商標権の共有等、一定の誤認混同防止のための担保措置の下で同一・類似商標の併存を認めているが、いずれについても特段の問題が生じているわけではないこと。
逐条解説〔第22版〕1639頁〜1640頁。

3. 団体商標に係る商標権の移転(商標法第24条の3)

flowchart TB
  A["団体商標に係る商標権を移転する"] --> B{"移転の登録の申請と同時に
2つの書面を提出したか"} B -- "提出した" --> C["団体商標に係る商標権として移転
商標法第24条の3第2項"] B -- "提出しない" --> D["通常の商標権に変更されたものとみなす
商標法第24条の3第1項"] B2["2つの書面
①その旨を記載した書面
②商標法第7条第3項に規定する書面"] -.-> B C --> E["団体構成員の権利
商標法第31条の2 が続く"] style C fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style E fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:団体商標に係る商標権のまま移転できる結論
  • 破線:箱の中身の説明(手続の流れではありません)

【図7】団体商標に係る商標権の移転の分岐(商標法第24条の3をもとに本記事作成者がフロー化したもの)。

  • 第1項は「みなす」規定です。書面を出さなければ、当事者の意思にかかわらず通常の商標権に変更されたものと扱われます。
  • 第2項の書面の提出時期は「移転の登録の申請と同時に」です。後から追加する形は条文に書かれていません。
  • 商標法第7条第3項に規定する書面は、もともと出願の場面で商標登録出願人が第一項に規定する法人であることを証明する書面とされているものです。移転の場面では、移転を受ける者が商標法第7条第1項に規定する法人であることを示すために用いられる、と読むのが自然です(本記事作成者の整理)。
  • 団体商標は、地域団体商標と違い、譲渡そのものは禁じられていません。禁じられているのは地域団体商標に係る商標権の譲渡(商標法第24条の2第4項)です。混同しやすいので表8で対比します。
比較項目団体商標に係る商標権地域団体商標に係る商標権
譲渡できる(禁止規定なし)。ただし商標法第24条の3第1項により、原則として通常の商標権に変更されたものとみなすできない(商標法第24条の2第4項)
団体商標のまま移転できる(商標法第24条の3第2項の書面を移転の登録の申請と同時に提出)―
専用使用権の設定商標法第30条第1項ただし書の対象ではないできない(商標法第30条第1項ただし書)
国際登録に基づく場合商標法第68条の24第1項国際登録に基づく団体商標に係る商標権は、第七条第三項に規定する書面を提出する場合を除き、移転することができない。、同条第2項で商標法第24条の3は不適用―

〔表8〕団体商標と地域団体商標の移転の対比(「―」は本記事で確認した条文の範囲に対応する定めがないことを示します)。

4. 特許法の準用(商標法第35条)

登録が効力発生要件であること

商標法第35条で読み替えて準用する特許法第98条第1項第1号により、商標権の「分割、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、信託による変更、放棄による消滅又は処分の制限」は、登録しなければ、その効力を生じない。ことになります。これは第三者に対抗するための要件(対抗要件)ではなく、当事者間でも効力が生じないという意味の「効力発生要件」です。譲渡契約を結んだだけでは、商標権はまだ譲受人に移っていません。

対象登録の位置づけ根拠
商標権の分割、移転(一般承継を除く)、信託による変更、放棄による消滅、処分の制限効力発生要件商標法第35条で読み替えて準用する特許法第98条第1項第1号
商標権の相続その他の一般承継登録は効力発生要件ではない。遅滞なく特許庁長官に届出商標法第35条で準用する特許法第98条第2項
専用使用権の設定、移転(一般承継を除く)など効力発生要件商標法第30条第4項で準用する特許法第98条第1項第2号・第2項
商標権又は専用使用権を目的とする質権の設定など効力発生要件商標法第34条第4項で準用する特許法第98条第1項第3号・第2項
通常使用権を目的とする質権の設定、移転など第三者対抗要件(登録しなければ、第三者に対抗することができない。)商標法第34条第2項
国際登録に基づく商標権の移転、信託による変更、放棄による消滅、処分の制限効力発生要件。「相続その他の一般承継によるものを除く」の括弧書がない商標法第68条の26第1項。同条第2項で、商標法第35条において読み替えて準用する特許法第98条第1項第1号・第2項は不適用

〔表9〕登録の効果の一覧(条文をもとに本記事作成者が整理。専用使用権・質権の詳細は#31、国際登録の特例はマドリッド協定の議定書に基づく特例の記事で扱います)。

指定商品又は指定役務ごとに見る(商標法第69条)

商標法第69条は、指定商品又は指定役務が二以上の商標権についての一定の規定の適用について指定商品又は指定役務ごとに商標登録がされ、又は商標権があるものとみなす。としています。その列挙の中に「第三十五条において準用する特許法第九十八条第一項第一号」と「第三十四条の二」が含まれています。分割移転や一部の指定商品又は指定役務についての放棄が、指定商品又は指定役務の単位で登録され効力を生じることの足場になっています(商標法第69条の詳細は#27)。

共有(特許法第73条の準用)

特許法第73条には読替えがありません。準用ですので、「特許権」を「商標権」に、「特許発明の実施」を「登録商標の使用」に、「専用実施権」「通常実施権」を「専用使用権」「通常使用権」に当てはめて読みます。共有そのものの考え方は特許法シリーズの特許法第73条の記事を参照してください。

放棄は準用ではなく、商標法に独自の条文がある

意匠法第36条と実用新案法第26条は、特許法第97条第1項(放棄)を準用しています。これに対し、商標法第35条の準用の列挙に特許法第97条第1項はありません。商標法は、商標法第34条の2商標権者は、専用使用権者、質権者又は通常使用権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その商標権を放棄することができる。を自前で置いています(詳細は#31)。

5. 拒絶理由・異議理由・無効理由との対応

条文拒絶理由(商標法第15条)異議理由(商標法第43条の2)無効理由(商標法第46条第1項)除斥期間(商標法第47条)関連する取消しの審判など
商標法第24条(分割)非該当非該当非該当――
商標法第24条の2(移転)非該当非該当非該当(ただし地域団体商標の主体については第7号が別にある)―商標法第24条の4(混同防止表示請求)、商標法第52条の2(取消しの審判)
商標法第24条の3(団体商標の移転)非該当非該当非該当――
商標法第35条(特許法の準用)非該当非該当非該当――

〔表10〕本記事の条文は、いずれも商標権が成立した後の処分に関する規定で、登録の可否を決める理由の列挙には挙がっていません。商標審査基準にも、これらの条文を対象とする章は設けられていません(商標審査基準〔改訂第17版〕の目次で確認)。

6. 四法比較

比較項目特許法実用新案法意匠法商標法
権利の分割を定める条文―――商標法第24条
登録が効力発生要件となる事項(権利本体)特許法第98条第1項第1号:移転(一般承継を除く)、信託による変更、放棄による消滅、処分の制限実用新案法第26条で特許法第98条第1項第1号・第2項を準用意匠法第36条で特許法第98条第1項第1号・第2項を準用(読替えなし)商標法第35条で準用。読替えで「分割」を追加
共有特許法第73条実用新案法第26条で準用意匠法第36条で準用商標法第35条で準用
相続人がない場合の消滅特許法第76条実用新案法第26条で準用意匠法第36条で準用商標法第35条で準用
放棄特許法第97条第1項実用新案法第26条で特許法第97条第1項を準用意匠法第36条で特許法第97条第1項を準用準用せず、商標法第34条の2を独自に規定
移転の制限(類似関係にある権利)――意匠法第22条第1項基礎意匠及びその関連意匠の意匠権は、分離して移転することができない。(第2項=基礎意匠の意匠権が消滅等した後も、関連意匠の意匠権どうしは分離移転不可)分離移転を禁じる規定はない。代わりに商標法第24条の4・第52条の2で混同を防ぐ
移転の制限(主体による)―――商標法第24条の2第2項〜第4項
移転により権利の性質が変わる定め―――商標法第24条の3(団体商標)

〔表11〕四法比較(「―」は、本記事で確認した条文の範囲に対応する定めがないことを示します。他法の条文はe-Gov法令検索、2026年9月参照)。

対比の軸:意匠法は、類似する意匠の権利が別人に分かれること自体を禁じます(意匠法第22条)。商標法は、分かれることを認めたうえで、事後的に混同を防ぐ手段(混同防止表示請求と取消しの審判)を用意しています。同じ「類似する権利が別人に属する」という問題に、逆向きの解決をしている点が比較のポイントです。

7. よくある疑問

Q. 商標権の譲渡契約を結び、代金も支払いました。まだ移転の登録をしていません。商標権者はどちらですか。
A. 条文上、譲渡による商標権の移転は「登録しなければ、その効力を生じない」ので(商標法第35条で読み替えて準用する特許法第98条第1項第1号)、登録までは譲渡人が商標権者です。
Q. 商標権者である会社が合併で消滅しました。移転の登録前は、だれが商標権者ですか。
A. 合併は「相続その他の一般承継」に当たり、特許法第98条第1項第1号の括弧書で登録の効力発生要件から除かれています。登録を待たずに承継され、承継人は遅滞なく特許庁長官に届け出ます(商標法第35条で準用する特許法第98条第2項)。ただし、国際登録に基づく商標権は商標法第68条の26第1項に括弧書がないため、扱いが異なります。
Q. 指定商品が「パン」だけの商標権を、2つに分割できますか。
A. 商標法第24条第1項は「その指定商品又は指定役務が二以上あるとき」を要件としています。指定商品が1つであれば、この要件を満たしません。
Q. 共有に係る商標権の自分の持分を、他の共有者に無断で第三者に譲渡できますか。
A. できません。商標法第35条で準用する特許法第73条第1項により、他の共有者の同意が必要です。

試験での問われ方

  • 短答式:「譲渡」と「移転」の文言の違い(商標法第24条の2第2項〜第4項)、団体商標と地域団体商標の取り違え、分割が登録の効力発生事項であること(読替え)、消滅後の分割の条件(商標法第24条第2項)、防護標章登録に基づく権利の運命(商標法第66条第1項・第2項)、国際登録に基づく商標権の特例(商標法第68条の23、第68条の24、第68条の26)は、いずれも条文の文言の正確さが問われやすい形をしています(出題の予測ではなく、条文の構造から言えることです)。
  • 論文式・口述:分割移転の後の混同防止(商標法第24条の4・第52条の2)と組み合わせて、制度の全体像を説明できるかが問われ得ます。
令和8年度【商標】問7の肢3は、地方公共団体の第4条第2項に係る商標権を扱います。第24条の2第2項が禁止するのは「譲渡」であり、一般承継による移転まで禁止されません。「移転することができる場合はない」とする肢3は誤りです。同問の公式正解は5です。 公式問題・公式解答。
商標権の分割・移転について、第24条から第24条の3の現行条文を確認しました。第24条の2第2項・第4項が禁止するのは「譲渡」であり、合併などの一般承継とは区別します。この区別は青本〔第22版〕1640頁にも説明されています。
レベル3のまとめ
  • 商標権の分割(商標法第24条)は、出願の分割(商標法第10条)と別の制度。遡及効の定めはなく、登録により効力を生じる。消滅後は、商標法第46条第3項の審判の事件が係属している場合に限る。
  • 商標法第24条の2第2項・第4項は「譲渡」不可、第3項は「その事業とともにする場合を除き」「移転」不可。文言を入れ替えない。
  • 団体商標に係る商標権は譲渡できるが、書面を移転の登録の申請と同時に出さなければ通常の商標権に変更されたものとみなされる。地域団体商標に係る商標権は譲渡できない。
  • 商標法第35条は特許法第73条・第76条・第98条第1項第1号・第2項を準用し、読替えで「分割」を加える。特許法第97条第1項は準用せず、商標法第34条の2を置く。
  • 類似関係にある商標権の分離移転を禁じる規定はなく(意匠法第22条と対照的)、商標法第24条の4と商標法第52条の2で混同に対処する。
  • 防護標章登録に基づく権利は、商標権の分割で消滅し、移転では従って移転する(商標法第66条第1項・第2項)。国際登録に基づく商標権には特例がある(例外あり)。

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