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小学生でも分かる商標法|商標法第7条 団体商標 ― 「グループの目じるし」をグループが登録して、メンバーみんなで使う

小学生でもわかる商標法 第10回「団体商標」。グループの目じるしを登録する。

小学生でも分かる商標法 / A. 登録要件・商標 #10

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お店の「目じるし」は、ふつう、使う本人が登録します。でも、パン屋さんの組合のように、グループで同じ目じるしを使いたいこともあります。商標法第7条は、グループ(団体)が持ち主になって登録し、メンバー(構成員)に使わせるための特別な登録のしかたを決めています。これを「団体商標(だんたいしょうひょう)」といいます。この記事では、だれが登録できるのか、メンバーは何ができるのか、ふつうの商標や地域団体商標と何がちがうのかを、3つのレベルで説明します。

条文:商標法第7条(第1項〜第3項)審査基準:商標審査基準〔改訂第17版〕 第6 第7条(団体商標)参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

グループで1つの「目じるし」を使いたい

商標(しょうひょう)とは、お店や商品の「目じるし」のことです。目じるしを自分だけのものにしたいときは、特許庁(とっきょちょう)という国の役所に「登録してください」と申しこみます。

ある町のパン屋さんたちが、「ほしぞらパン組合(くみあい)」というグループを作ったとします。組合には、こぐま堂さんやミナトベーカリーさんが入っています。みんなで決めた作り方を守ったパンに、「ほしぞらパン」という同じ目じるしを付けて売りたいと考えました。

ここで困ることがあります。ふつうの登録は、「自分の仕事で使う目じるし」について、使う本人がするものです。ところが組合は、パンを焼いて売るわけではありません。パンを売るのはメンバーのお店です。

そこで法律は、「グループが持ち主になって登録し、メンバーに使わせる」という特別な登録のしかたを用意しました。これが団体商標です。

団体商標のしくみ(架空の例) 特許庁(役所) 登録をする ほしぞらパン組合 目じるし「ほしぞらパン」の 持ち主(登録する人) 申しこみ 登録 組合の決まりを守って 使ってよい こぐま堂(メンバー) パンに「ほしぞらパン」を 付けて売る ミナトベーカリー(メンバー) パンに「ほしぞらパン」を 付けて売る 持ち主は組合。使うのはメンバーのお店。

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の枠:国の役所(特許庁)
  • 橙の枠:目じるしの持ち主になる団体
  • 橙のベタ塗り:目じるしを実際に使うメンバー

【図1】団体商標のしくみの模式図(本記事作成者が模式化したもの)。組合名・店名・商品名はすべて架空の例です。

ふつうの登録と、どこがちがう?

ふつうの登録では、「自分の仕事で使う目じるし」であることが必要です。団体商標では、ここが少しゆるめられています。「自分またはメンバーの仕事で使う目じるし」であればよい、と読みかえるのです。だから、自分ではパンを売らない組合でも、メンバーがパンを売るなら登録を申しこめます。

ふつうの登録 こぐま堂 持ち主 = 使う人 「自分の仕事」で使う 目じるしを登録する 団体商標の登録 組合 持ち主 メンバー 使う人 「自分またはメンバーの仕事」で 使う目じるしを登録する

図は左右にスクロールできます。

【図2】ふつうの登録と団体商標の登録のちがい(本記事作成者が模式化したもの)。店名は架空の例です。

メンバーは、組合の決まりを守って使う

メンバーのお店は、組合が決めたルールにしたがって、目じるしを使うことができます。たとえば「決められた作り方のパンだけに付ける」というルールです。メンバーが持っている「使ってよい」という立場は、ほかの人にゆずることができません。組合のメンバーだからこそ使える、という立場だからです。

① 持ち主はグループ(団体)② 使うのはメンバー(構成員)③ 「自分の仕事」→「自分またはメンバーの仕事」に読みかえ④ メンバーの立場はゆずれない
レベル1のまとめ
  • 団体商標は、グループが持ち主になって登録し、メンバーに使わせる目じるしです。
  • ふつうは「自分の仕事で使う目じるし」が必要ですが、団体商標では「自分またはメンバーの仕事で使う目じるし」でよいことになっています。
  • メンバーは、グループの決まりにしたがって目じるしを使えます。その立場は、ほかの人にゆずれません。

※ 「グループならどんなグループでも登録できる」わけではありません。会社や、法律上の「人」としてみとめられていない集まりは登録できないなど、正確には条件があります(→レベル3)。申しこみのときに出す証明の書類、目じるしとしての見分ける力(識別力)などの条件も、ここでは省略しています(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第1項 ― だれが、何について、登録を受けられるか

商標法第7条第1項(原文) 一般社団法人その他の社団(法人格を有しないもの及び会社を除く。)若しくは事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除く。)又はこれらに相当する外国の法人は、その構成員に使用をさせる商標について、団体商標の商標登録を受けることができる。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。

長い1文ですが、「だれが」「何について」「どうなる」の3つに分けると見通しがよくなります。「だれが」の部分は、さらに3つのグループに分かれます。

部品文言意味
だれが①「一般社団法人その他の社団(法人格を有しないもの及び会社を除く。)」人の集まりである「社団」。ただし、法人格(法律上の「人」としての資格)がないものと、会社は除かれます。
だれが②「事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除く。)」特別の法律にもとづいて作られた組合。法人格がないものは除かれます。
だれが③「これらに相当する外国の法人」①②にあたる外国の法人。
何について「その構成員に使用をさせる商標」団体のメンバー(構成員)に使わせる商標。
どうなる「団体商標の商標登録を受けることができる」「団体商標」という種類の商標登録を受けられます。

〔表1〕商標法第7条第1項を部品に分けた表。「文言」欄は原文の引用、「意味」欄は本記事作成者の説明です。

第2項 ― 「自己の」を「自己又はその構成員の」に読み替える

商標法第7条第2項(原文) 前項の場合における第三条第一項の規定の適用については、同項中「自己の」とあるのは、「自己又はその構成員の」とする。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。

商標法第3条第1項の柱書(はしらがき。各号の前に置かれた本文)は、登録を受けられる商標を「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」としています。団体は、自分では商品を売らないことがあります。そこで第2項は、この「自己の」を「自己又はその構成員の」と読み替えます。

商標法第3条第1項柱書の読み方
通常の商標登録出願(原文)自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
団体商標(第7条第2項による読替え後)自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。

〔表2〕商標法第3条第1項柱書の読替え。上段は原文の引用、下段は第7条第2項の指示どおり本記事作成者が読み替えて示したものです。

ポイント:読み替えられるのは「自己の」という語だけです。「次に掲げる商標を除き」の部分、つまり商標法第3条第1項第1号〜第6号(識別力)の要件は、団体商標でもそのまま適用されます。

第3項 ― 団体であることを証明する書面

商標法第7条第3項(原文) 第一項の規定により団体商標の商標登録を受けようとする者は、第五条第一項の商標登録出願において、商標登録出願人が第一項に規定する法人であることを証明する書面を特許庁長官に提出しなければならない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
項役割キーワード
第1項団体商標の商標登録を受けられる主体と対象を定める社団/特別の法律により設立された組合/外国の法人、「その構成員に使用をさせる商標」
第2項商標法第3条第1項の「自己の」を読み替える「自己又はその構成員の」
第3項出願のときに出す証明書面を定める「第一項に規定する法人であることを証明する書面」、提出先は特許庁長官

〔表3〕商標法第7条の項ごとの役割一覧。

団体・構成員・第三者の関係

団体商標に係る商標権の持ち主(商標権者)は団体です。構成員は、商標法第31条の2第1項により、団体の定めるところにより登録商標の「使用をする権利」を持ちます。構成員でない第三者に使わせたいときは、ふつうの商標権と同じように使用権(専用使用権・通常使用権)を使うことになります。

団体商標をめぐる関係 特許庁長官 出願+証明書面の提出先 (第7条第3項) 団体(第7条第1項の法人) 団体商標に係る商標権の 商標権者 構成員(団体構成員) 団体の定めるところにより 登録商標の使用をする権利を有する (第31条の2第1項) この権利は移転できない(同条第2項) 構成員でない第三者 使うには専用使用権(第30条)や 通常使用権(第31条)の設定・許諾 が必要。権原なく使えば 商標権侵害の問題になる 構成員に「使用をさせる」 使用権の設定・許諾 構成員の権利は、許諾を受けなくても法律(第31条の2)から生じる点が、通常使用権とのちがい。

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の枠:国の機関(特許庁長官)
  • 橙の枠:団体商標に係る商標権の商標権者(団体)
  • 橙のベタ塗り:団体の内部の者(構成員)
  • 藍の枠:団体の外部の者(構成員でない第三者)

【図3】団体商標をめぐる相関図(商標法第7条・第30条・第31条・第31条の2を本記事作成者が整理して図にしたもの)。構成員の使用権は、専用使用権者が使用を専有する範囲には及びません(第31条の2第1項ただし書)。

出願から登録まで

flowchart TB
  A["団体が出願する
(商標法第5条第1項の商標登録出願)"] --> B["同時に証明書面を提出
(第7条第3項)"] B --> C{"出願人は第7条第1項の
法人か"} C -- "いいえ" --> W["方式の補正命令/通常の商標登録出願への変更を検討(レベル3)"] C -- "はい" --> D{"その構成員に使用を
させる商標か"} D -- "はい" --> E{"第3条第1項各号・第4条第1項など
ほかの登録要件を満たすか"} E -- "はい" --> F["登録査定 → 設定の登録
団体商標に係る商標権が発生"] F --> G["構成員は団体の定めるところにより
使用をする権利を有する(第31条の2第1項)"] D -- "いいえ" --> X["第3条第1項柱書により
登録を受けられない(審査基準)"] E -- "いいえ" --> Y["拒絶理由(第15条)"] style F fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style G fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style X fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style Y fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:登録に進む結論
  • 赤の箱:登録を受けられない・拒絶理由となる結論

【図4】団体商標の出願から登録までの流れ(商標法第7条・第3条・第15条・第31条の2と商標審査基準 第6 第7条を、本記事作成者がフロー化したもの)。主体の要件を欠く場合の処理はレベル3の3.を参照。

レベル2のまとめ
  • 主体は、①社団(法人格を有しないもの及び会社を除く)、②特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除く)、③これらに相当する外国の法人、の3グループです。
  • 対象は「その構成員に使用をさせる商標」です。
  • 第2項は、商標法第3条第1項の「自己の」を「自己又はその構成員の」と読み替えます。識別力の要件(各号)は読み替えられません。
  • 第3項は、出願において「第一項に規定する法人であることを証明する書面」を特許庁長官に提出することを求めています。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 主体 ― 「社団」「組合」「外国の法人」と2つの括弧書

主体の要件は、括弧書の位置と内容を正確に押さえる必要があります。社団には「法人格を有しないもの及び会社を除く。」、組合には「法人格を有しないものを除く。」と、除かれるものが異なります。

団体の種類第7条第1項の主体か根拠
一般社団法人該当条文が「一般社団法人」を例示
事業協同組合該当条文が「事業協同組合」を例示
商工会議所法に基づく商工会議所該当商標審査基準 第6 第7条 1.(「その他の社団」に含まれる例)
商工会法に基づく商工会該当同上
特定非営利活動促進法に基づく特定非営利活動法人(いわゆるNPO法人)該当同上
上記に相当する外国の法人該当条文「これらに相当する外国の法人」
会社非該当条文の括弧書「会社を除く。」
法人格を有しない社団・組合非該当条文の括弧書「法人格を有しないもの…を除く。」

〔表4〕団体商標の主体の整理。条文の文言と商標審査基準〔改訂第17版〕 第6 第7条 1.で確認できたものだけを掲げています(例示であり、網羅した表ではありません)。

ポイント:商工会議所・商工会・特定非営利活動法人は、第7条第1項の条文には名前が出てきません。審査基準が「その他の社団」に含まれる例として挙げているものです。一方、商標法第7条の2第1項(地域団体商標)では、これらが条文に明記されています。条文上の帰結と審査基準上の取扱いを区別して覚えてください。
立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』は、主体をこのように明示的に限定した理由を、団体商標の本来的性格からみて、業として商品の生産や役務の提供等をする事業者を構成員に有する団体であることが当然に必要だからである、と説明しています。法人格(産業財産権を享有するための権利能力)を要求した理由については、団体商標に係る商標権について、通常の商標権を含めた他の産業財産権とは異なった取扱いをしなければならないとする理由は何ら存しないからである、としています。
また同解説は、団体商標の登録を受けることができない者の例として、財団法人、特別の法律により設立された財団、会社法により設立された会社、特別の法律により設立された会社の4つを挙げ、その理由を2つに整理しています。
① 財団法人や特別の法律により設立された財団(財団たる医療法人、財団たる職業訓練法人等)は、財産の集団であって、業として商品の生産や役務の提供等をする事業者を構成員として有していないこと。
② 株式会社や持分会社のような会社法により設立された会社、及び日本たばこ産業株式会社のような特別の法律によって設立された会社は、その構成員に当たる株主又は社員が株式又は持分に相当する出資義務を負うだけの者であることからすれば、その株主又は社員が商品の生産、役務の提供等をする事業者であって、しかも会社がその株主又は社員の事業について自己の商標を使用させるとは考えにくいこと。
出典:逐条解説〔第22版〕1574頁、1576頁。
flowchart TB
  S["出願人は団体である"] --> A{"日本の団体か"}
  A -- "日本の団体" --> B{"法人格を有するか"}
  B -- "はい" --> C{"会社か"}
  C -- "はい" --> NG3["主体に該当しない
(括弧書で除外)"] C -- "いいえ" --> D{"社団、又は特別の法律により
設立された組合か"} D -- "はい" --> OK2["主体に該当
証明書面を提出(第7条第3項)"] D -- "いいえ" --> NG4["主体に該当しない"] B -- "いいえ" --> NG2["主体に該当しない
(括弧書で除外)"] A -- "外国の団体" --> F{"社団・組合に相当する
外国の法人か"} F -- "はい" --> OK1["主体に該当"] F -- "いいえ" --> NG1["主体に該当しない"] style OK1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style OK2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style NG1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style NG2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style NG3 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style NG4 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:第7条第1項の主体に該当する結論
  • 赤の箱:主体に該当しない結論

【図5】主体の判断手順(商標法第7条第1項の文言を、本記事作成者がフロー化したもの)。

2. 「その構成員に使用をさせる商標」

対象は「その構成員に使用をさせる商標」です。商標審査基準は、この要件と商標法第3条第1項柱書を結び付けて判断しています。

審査基準の項目要旨
第6 第7条 1.(主体)「その他の社団(法人格を有しないもの及び会社を除く。)」には、例えば、商工会議所法に基づく商工会議所、商工会法に基づく商工会、特定非営利活動促進法に基づく特定非営利活動法人等が含まれる。
第6 第7条 2.(構成員に使用をさせる商標)団体商標の商標登録を受けようとする商標が「その構成員に使用をさせる」ものでないときは、商標法第3条第1項柱書により登録を受けることができないものと判断する(第1 二(第3条第1項柱書)5.を参照する旨の記載あり)。
第6 第7条 3.(1)(証明書面・国内出願)団体商標の商標登録出願(国内出願)について証明書面の提出がない場合は、補正指令(方式)の対象となる。
第6 第7条 3.(2)(証明書面・国際商標登録出願)国際商標登録出願に「Collective mark, certification mark, or guarantee mark」と記載されている場合で、証明書面の提出がないときは、団体商標として商標法第3条第1項柱書により登録を受けることができないものと判断する(第1 二 4.(2)を参照する旨の記載あり)。
第1 二 第3条第1項柱書 5.(団体商標)団体と構成員の双方が使用をしない場合だけでなく、団体が指定商品又は指定役務について使用をするのみで、構成員が使用をするものでないときも、登録を受けることができない。

〔表5〕商標審査基準〔改訂第17版〕の団体商標関係の整理(要旨。原文の逐語引用ではありません。特許庁ウェブサイト掲載のPDF「第6 第7条」「第1 二 第3条第1項柱書」、2026年9月参照)。

Q. 団体自身も使用をし、構成員も使用をする商標は、団体商標の登録を受けられますか。
A. 読替え後の商標法第3条第1項柱書は「自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」です。審査基準が登録を受けられないとしているのは、「構成員が使用をするものでないとき」です。団体自身の使用があることは、審査基準上、登録を妨げる事情として挙げられていません(審査基準の記載からの本記事作成者の整理です)。

3. 第7条と拒絶理由・異議理由・無効理由

商標法第7条そのものは、第15条第1号(拒絶理由)、第43条の2第1号(異議理由)、第46条第1項第1号(無効理由)のいずれにも列挙されていません。列挙されているのは「第七条の二第一項」(地域団体商標)です。団体商標の要件は、第7条第2項の読替えを通じて商標法第3条第1項柱書の問題として処理される、というのが審査基準の整理です。

規定拒絶理由(第15条)異議理由(第43条の2)無効理由(第46条第1項)除斥期間(第47条第1項)
第7条そのもの列挙なし列挙なし列挙なし―
第3条第1項柱書(読替え後。「構成員に使用をさせる」ものでない場合など)第1号(第3条)第1号(第3条)第1号(第3条)対象(第3条)
第7条の2第1項(地域団体商標。参考)第1号第1号第1号。後発的理由は第7号関連記事を参照

〔表6〕商標法第7条と拒絶・異議・無効・除斥期間の対応表(e-Govで確認した各条の列挙にもとづき本記事作成者が整理)。第3条第1項柱書に結び付ける点は商標審査基準 第6 第7条 2.によります。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、第7条第3項を、主体の条件をいわゆる方式要件とする規定であるとしたうえで、証明書面が提出されない場合には、商標法第77条第2項において準用する特許法第17条第3項第2号の規定により手続の補正が命じられることとなる、と説明しています。あわせて、第7条の2第4項(地域団体商標の証明書類)の解説では、書類の提出がない場合には、実体審査を行うまでもなく方式審査の段階で特許庁長官により手続の補正が命じられ、出願の却下の対象となるとし、第7条第3項の解説を参照するよう述べています。
出典:逐条解説〔第22版〕1575頁、1584頁。現行商標法第77条第2項は特許法第17条第3項を準用しています。

第7条第1項の法人であることは、第3項の証明書面によって確認する方式要件です。国内出願で書面がなければ補正が命じられます。逐条解説1575頁は、この主体条件を方式要件と説明し、権利の内容・範囲は通常の商標権と基本的に異ならないと述べています。また、現行第46条第1項の無効理由の列挙には、第7条自体の違反は含まれていません。一方、構成員に使用をさせるものでない場合は、第3条第1項柱書の実体要件の問題です。両者を区別します。出典:逐条解説〔第22版〕1574〜1575頁、商標審査基準第6・2、3(1)。

4. 通常の商標・団体商標・地域団体商標の3者比較

項目通常の商標団体商標(第7条)地域団体商標(第7条の2)
主体限定する規定なし(「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」であること。第3条第1項柱書)社団(法人格を有しないもの及び会社を除く)、特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除く)、これらに相当する外国の法人特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除き、加入の自由の定めのあるものに限る)、商工会、商工会議所、特定非営利活動法人、これらに相当する外国の法人(「組合等」)
対象となる商標限定なし「その構成員に使用をさせる商標」「その構成員に使用をさせる商標」であって、第7条の2第1項各号(地域の名称+普通名称等の文字のみ)に該当するもの
識別力(第3条)第3条第1項各号・第2項がそのまま適用そのまま適用(読み替えられるのは「自己の」だけ)使用の結果、需要者の間に広く認識されているときは、「第三条の規定(同条第一項第一号又は第二号に係る場合を除く。)にかかわらず」登録可
第3条第1項の読替えなし第3条第1項全体について「自己の」→「自己又はその構成員の」(第7条第2項)第3条第1項(第1号及び第2号に係る部分に限る)について同じ読替え(第7条の2第3項)
出願時の書面―第7条第1項に規定する法人であることを証明する書面(第7条第3項)組合等であることを証明する書面+地域の名称を含むものであることを証明するため必要な書類(第7条の2第4項)
商標権の移転可(第24条の2第1項。同条第2項・第3項の制限あり)可。ただし移転されると原則、通常の商標権に変更されたものとみなす(第24条の3第1項)。団体商標のまま移転するには書面を同時提出(同条第2項)譲渡不可(第24条の2第4項)
専用使用権の設定可(第30条第1項本文。第4条第2項に係る商標権は不可)可(第30条第1項ただし書の対象外。第31条の2第1項ただし書も設定を前提にしている)不可(第30条第1項ただし書)
構成員の権利―(使うには使用権の設定・許諾)団体構成員は、法人の定めるところにより使用をする権利を有する(第31条の2第1項)。移転不可(同条第2項)地域団体構成員は、組合等の定めるところにより使用をする権利を有する(同左)。移転不可

〔表7〕通常の商標・団体商標・地域団体商標の3者比較(商標法第3条、第7条、第7条の2、第24条の2、第24条の3、第30条、第31条の2をe-Govで確認して本記事作成者が整理。2026年9月参照)。地域団体商標の詳細は関連記事へ。

ポイント:団体商標は、識別力の要件がゆるめられていません。地域の名称と商品の普通名称だけからなる文字商標は、団体商標として出願しても商標法第3条第1項各号の審査を受けます。識別力の例外が用意されているのは地域団体商標(商標法第7条の2)です。

5. 構成員の使用をする権利(商標法第31条の2)

商標法第31条の2第1項(原文) 団体商標に係る商標権を有する第七条第一項に規定する法人の構成員(以下「団体構成員」という。)又は地域団体商標に係る商標権を有する組合等の構成員(以下「地域団体構成員」という。)は、当該法人又は当該組合等の定めるところにより、指定商品又は指定役務について団体商標又は地域団体商標に係る登録商標の使用をする権利を有する。ただし、その商標権(団体商標に係る商標権に限る。)について専用使用権が設定されたときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
項内容注意点
第1項本文団体構成員は、「当該法人…の定めるところにより」、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を有する許諾によらず法律から生じる権利。範囲は「指定商品又は指定役務について」の「登録商標」
第1項ただし書団体商標に係る商標権に専用使用権が設定されたときは、専用使用権者が専有する範囲については「この限りでない」ただし書の括弧書は「団体商標に係る商標権に限る。」。地域団体商標には専用使用権を設定できない(第30条第1項ただし書)ことと対応
第2項前項本文の権利は、移転することができない。承諾や一般承継の例外は条文に書かれていない
第3項団体構成員は、第24条の4、第29条、第50条、第52条の2、第53条及び第73条の適用については、通常使用権者とみなすみなされる場面は列挙された6つの条に限られる(〔表9〕)
第4項第33条第1項第3号(無効審判の請求登録前の使用による商標の使用をする権利)の読替え。「その商標の使用をする権利を有する団体構成員若しくは地域団体構成員」を加える団体構成員も同号の対象者に加わる

〔表8〕商標法第31条の2の項ごとの整理(e-Govの原文にもとづく。「注意点」欄は本記事作成者の整理)。

条文その条の内容(確認した原文の要旨)団体構成員を通常使用権者とみなす意味
第24条の4商標権の移転等に係る混同防止表示請求。請求の相手方等に「通常使用権者」が含まれる団体構成員の使用も混同防止表示請求の場面で考慮される
第29条商標権者、専用使用権者又は通常使用権者は、他人の特許権等と抵触する部分について登録商標の使用をすることができない団体構成員にも同じ制限がかかる
第50条継続して3年以上、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の「いずれもが」使用をしていないときの取消審判団体構成員の使用があれば、「いずれもが…使用をしていない」に当たらない
第52条の2第24条の4各号の事由で商標権が異なった商標権者に属した後の、不正競争の目的での混同を生ずる使用に対する取消審判。混同の対象に「通常使用権者の業務」が含まれる団体構成員の業務との混同も対象になる
第53条専用使用権者又は通常使用権者による品質誤認・混同を生ずる使用に対する取消審判(商標権者が知らず、相当の注意をしていたときは除く)団体構成員の不正な使用により、団体の商標登録が取り消されることがある
第73条商標登録表示を付するよう努める義務団体構成員にも努力義務が及ぶ

〔表9〕商標法第31条の2第3項により団体構成員が通常使用権者とみなされる6つの場面(各条をe-Govで確認。右欄は条文のあてはめとして本記事作成者が整理)。「不使用取消審判」は実務上の呼称です。

ポイント:第31条の2第3項の列挙は限定的です。列挙されていない条文(例:通常使用権の登録や移転に関する規定)について、団体構成員を通常使用権者と同じに扱う根拠にはなりません。短答式では「通常使用権者とみなす」場面の条文番号がそのまま問われ得るので、6つの条を原文で確認しておくと安全です。

6. 団体商標に係る商標権の移転(商標法第24条の3)

商標法第24条の3(原文) 団体商標に係る商標権が移転されたときは、次項に規定する場合を除き、その商標権は、通常の商標権に変更されたものとみなす。
2 団体商標に係る商標権を団体商標に係る商標権として移転しようとするときは、その旨を記載した書面及び第七条第三項に規定する書面を移転の登録の申請と同時に特許庁長官に提出しなければならない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。項番号「2」は本記事で補ったものです。
flowchart TB
  A["団体商標に係る商標権を移転する"] --> B{"移転の登録の申請と同時に
①その旨を記載した書面
②第7条第3項に規定する書面
を提出したか"} B -- "提出した" --> C["団体商標に係る商標権のまま移転
(第24条の3第2項)"] B -- "提出していない" --> D["通常の商標権に変更されたものとみなす
(第24条の3第1項)"] C --> E["移転先の法人の構成員が
第31条の2の権利を有する"] D --> F["第31条の2は「団体商標に係る商標権」が前提
→ 構成員の権利の根拠がなくなる"] style C fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style E fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style D fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style F fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:団体商標に係る商標権のまま移転される場合
  • 赤の箱:通常の商標権に変更されたものとみなされる場合

【図6】団体商標に係る商標権の移転の分岐(商標法第24条の3・第31条の2の文言を、本記事作成者がフロー化したもの。最下段は条文の文言からの作成者の整理)。

地域団体商標に係る商標権は「譲渡することができない」(商標法第24条の2第4項)のに対し、団体商標に係る商標権は移転できます。移転の際に書面を出すかどうかで、団体商標のままか、通常の商標権に変わるかが分かれます。

7. 出願の変更(商標法第11条)への接続

通常の商標登録出願、団体商標の商標登録出願、地域団体商標の商標登録出願の3つは、商標法第11条により相互に変更できます。

出願の変更(商標法第11条) 通常の商標登録出願 ここから変更:第3項 団体商標の商標登録出願 ここから変更:第1項 地域団体商標の商標登録出願 ここから変更:第2項

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の枠:通常の商標登録出願
  • 橙の枠:団体商標の商標登録出願
  • 藍の枠:地域団体商標の商標登録出願
  • 両向きの矢印:どちらの向きにも出願の変更ができる(第1項〜第3項)

【図7】3種類の商標登録出願の間の変更(商標法第11条第1項〜第5項を本記事作成者が図にしたもの)。査定又は審決が確定した後は変更できません(第4項)。変更があったときは、もとの出願は取り下げたものとみなされます(第5項)。

項内容
第1項団体商標の商標登録出願 → 通常の商標登録出願 又は 地域団体商標の商標登録出願
第2項地域団体商標の商標登録出願 → 通常の商標登録出願 又は 団体商標の商標登録出願
第3項通常の商標登録出願 → 団体商標の商標登録出願 又は 地域団体商標の商標登録出願
第4項時期の制限:商標登録出願について査定又は審決が確定した後は、することができない。
第5項効果:もとの商標登録出願は、取り下げたものとみなす。
第6項商標法第10条第2項及び第3項の準用(新たな出願は、もとの出願の時にしたものとみなす。ただし書の例外あり。提出書面のみなし提出)

〔表10〕商標法第11条の項ごとの整理(e-Govの原文にもとづく。第1項の「通常の商標登録出願」は「団体商標の商標登録出願及び地域団体商標の商標登録出願以外の商標登録出願」と定義されています)。詳細は関連記事へ。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、商標法第11条第2項及び第3項による団体商標の商標登録出願への変更の際には、第7条第3項に規定する書面(出願人が第7条第1項に規定する法人であることを証明する書面)を提出することが必要である、と説明しています。同条第1項及び第3項による地域団体商標の商標登録出願への変更の際には、第7条の2第4項に規定する書面(組合等であることを証明する書面、及び商標が同条第2項に規定する地域の名称を含むものであることを証明するため必要な書類)を提出することが必要である、ともしています。
出典:逐条解説〔第22版〕1600頁。

団体商標への変更出願は、商標法施行規則第2条第5項の様式第5を用います。変更の際には、第7条第3項の法人証明書面を提出します。地域団体商標への変更では、第7条の2第4項の組合等証明書面と地域の名称との関係を証明する書類が必要です。電子出願の場合、法人証明書面等は出願の日から3日以内に手続補足書へ添付して提出します(特許庁・団体商標への変更出願の記載要領)。国内出願の必要書面が欠けている場合は方式補正の対象となります。出典:商標法施行規則第2条第5項、商標審査便覧27.01・4、逐条解説1600頁。

8. パリ条約第7条の2との関係

工業所有権の保護に関するパリ条約(以下「パリ条約」)第7条の2は、団体商標の保護を定めています。特許庁ウェブサイト掲載の日本語条文は次のとおりです。

パリ条約第7条の2(特許庁ウェブサイト掲載の日本語条文) (1) 同盟国は,その存在が本国の法令に反しない団体に属する団体商標の登録を認めかつ保護することを約束する。その団体が工業上又は商業上の営業所を有しない場合も,同様とする。
(2) 各同盟国は,団体商標の保護について特別の条件を定めることができるものとし,また,公共の利益に反する団体商標についてその保護を拒絶することができる。
(3) もつとも,その存在が本国の法令に反しない団体に対しては,保護が要求される同盟国において設立されていないこと又は保護が要求される同盟国の法令に適合して構成されていないことを理由としては,その団体に属する団体商標の保護を拒絶することができない。
出典:特許庁ウェブサイト「パリ条約」、2026年9月参照。
パリ条約第7条の2商標法第7条で対応すると読める部分(本記事作成者の整理)
(1) 団体に属する団体商標の登録を認め保護する。団体が営業所を有しない場合も同様第1項(団体商標の商標登録)、第2項(団体自身が業務を行わなくても「自己又はその構成員の」業務でよい)
(2) 各同盟国は特別の条件を定めることができる第1項の主体の限定、第3項の証明書面
(3) 自国で設立されていないこと等を理由に保護を拒絶できない第1項「これらに相当する外国の法人」

〔表11〕パリ条約第7条の2と商標法第7条の対応。条文の文言を並べた本記事作成者の整理であり、立法担当者の説明ではありません。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、団体商標の保護についてはパリ条約第7条の2において義務付けられていること、旧法(大正10年法)には団体標章制度の明文の規定が設けられていたが、昭和34年の法改正の際、新たに導入することとなった使用許諾制度によって実質的に保護が可能であるとして削除された経緯があることを述べています。そのうえで、平成8年の一部改正において、団体商標を通常の商標と区別して登録している諸外国との国際的調和の必要性と、通常の商標とは異なる特質(個々の事業者が登録することになじまず団体が登録することとなるものであるが、その団体自体が商品の生産や役務の提供等をすることは必ずしも要しないこと。当初から、商標権者である団体とは異なる者である構成員による使用が予定されており、その構成員には、構成員たる地位を有する限り商標の使用をする権利が認められるべきであること。)を有すること等に鑑み、団体商標制度があらためて明文化された、と説明しています。
また同解説は、旧法が団体標章という語を用いていたのに対し平成8年の一部改正が団体商標としたことについて、いずれも業として商品の生産等をする者がその商品等について使用をするものであることに変わりがないことに加えて、団体自体が商品の生産・販売等を統一管理するとともに商標の使用をすることも少なくないという商取引の実情をも勘案し、団体自体による商標の使用を認めることを明記したため、団体標章ではなく団体商標と規定して商標として保護することとした、と説明しています。
出典:逐条解説〔第22版〕1572頁〜1573頁、1575頁〜1576頁。

9. 改正の経緯(確認できた範囲)

改正確認できた事項確認の根拠
平成8年法律改正(平成8年法律第68号)特許庁の改正解説書に「第6章 団体商標制度の導入」の章がある特許庁ウェブサイト「産業財産権法の解説」の目次
平成17年法律改正(平成17年法律第56号)地域団体商標制度の導入(商標法第7条の2。第11条・第31条の2にも「地域団体商標」が加わっている)同上、および現行条文
平成18年法律改正(平成18年法律第55号)特許庁の改正解説書に「第3部 第2章 団体商標の主体の見直し」の章がある特許庁ウェブサイト「産業財産権法の解説」の目次

〔表12〕団体商標に関係する改正(特許庁の改正解説書の目次で確認できた範囲。施行日と主体の旧新対比は下記の商標審査便覧27.01の表に基づく説明を参照)。

改正の経緯(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、次のように説明しています。
・連合商標制度との関係:第7条は改正前は連合商標に関する規定であったが、連合商標制度の廃止に伴ってその規定を削除し、新たに団体商標に関する規定とした。連合商標制度は、同一人が保有する類似関係にある商標を全て連合商標として関連付け、登録後の分離移転を禁止して商品・役務の出所の混同防止を図ることを目的とした制度で、平成8年の一部改正で廃止された。同解説は廃止の理由を4つ挙げています。⑴ 不使用取消審判及び更新登録出願の際の使用チェックにおける特則が、制度の趣旨を逸脱して、ストック商標を過剰に確保することや識別力の弱い商標の商標権を取得すること等に利用されてきた結果、不使用商標の増大、特許庁における事務処理負担の増大及び審査遅延、第三者の商標選択の幅の狭小化といった弊害が余りに大きくなってきたこと。⑵ 商標の類似範囲は本来は時間の経過とともに変化するものであるので、登録の段階で連合商標として関連付けることにより固定化してしまうことは適当でないこと。⑶ 国際的にも主要国の中で連合商標制度を維持しているのは我が国だけであり(英国も1994年に、オーストラリアも1995年にそれぞれ法改正で廃止)、この制度を維持したままでは将来、国際的な登録制度の枠組みに入ろうとした場合に不都合が生ずるおそれがあること。⑷ 廃止に伴う類似商標の分離移転については、別途、公益的な観点からの事後的な誤認混同防止のための担保措置(商標法第24条の4及び第52条の2)を講ずることにより、認めても問題ないと考えられたこと。
・平成18年の一部改正:改正前は団体商標の主体として一般法である民法の規定により設立された社団を定めていたところ、これに法人格を有する社団を追加する改正を行った。同解説はその理由を2つ挙げています。⑴ 近年、構成員を有する法人格のある商工会議所等の社団についても、かかる社団において構成員に商標を使用させている実情があること。⑵ 公益法人制度改革の一環として、商標法第7条第1項において引用している民法第34条の社団法人は一般社団法人へ移行することが予定されており、公益性を有する従来の社団法人に加えて、公益性のない中間法人についても一般社団法人として認められることとなること。
・一般社団法人という語への改正:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)が平成20年12月1日に施行されたことに伴い、関係法令を整備するための一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成18年法律第50号)により、第7条第1項の民法(明治29年法律第89号)第34条の規定により設立された社団法人という語は、同日付けで一般社団法人に改正された。
出典:逐条解説〔第22版〕1572頁〜1574頁、1576頁〜1577頁。

平成8年法律第68号による団体商標制度の施行日は1997年4月1日です。主体を「その他の社団」へ拡張した平成18年法律第55号の該当部分は2006年9月1日、「一般社団法人」への用語変更は2008年12月1日に施行されています。出典:商標審査便覧27.01・2の改正法令/施行日表。2026年度弁理士試験は各試験の実施日に施行されている法令を出題対象とします(受験案内2頁)。

10. 特許法・実用新案法・意匠法との比較

観点商標法特許法・実用新案法・意匠法
団体が登録を受け、構成員に使用・実施をさせるための特別の登録類型あり(団体商標=第7条、地域団体商標=第7条の2)商標法第7条に対応する団体商標の登録制度はない
登録要件の出発点「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」(第3条第1項柱書)。団体商標では「自己又はその構成員の」に読替え使用(実施)の意思を登録要件の柱書に置く構造ではない(本記事作成者の整理)
法律から生じる構成員の権利あり(第31条の2。移転不可)―

〔表13〕他の産業財産権法との比較(本記事作成者の整理)。団体商標は商標法に固有の制度として学習するのが安全です。

試験での問われ方

団体商標は、①主体の括弧書(会社・法人格の有無)、②識別力の要件がゆるめられていない点(地域団体商標との対比)、③第31条の2(移転不可、通常使用権者とみなす場面、専用使用権が設定された場合のただし書)、④第24条の3(移転すると原則、通常の商標権に変更)、⑤第11条(相互の変更)が、条文を比較して学ぶポイントです。

令和8年度短答式【商標】全10問には、第7条の団体商標を直接問う肢はありません。団体商標の出題実績として同年度の問題を挙げることはしていません。 出典:公式問題(商標1〜10)、公式解答。

団体商標の登録要件は、商標審査基準第6および商標審査便覧27.01・3に整理されています。ここでは、証明書面による主体の確認と、構成員が使用する商標であることの実体審査を分けて説明しました。出典:商標審査便覧27.01。

レベル3のまとめ
  • 主体:社団は「法人格を有しないもの及び会社を除く」、組合は「法人格を有しないものを除く」。商工会議所・商工会・特定非営利活動法人は、審査基準が「その他の社団」の例として挙げるものです。
  • 「その構成員に使用をさせる」ものでないときは、商標法第3条第1項柱書により登録を受けられない、というのが審査基準の整理です。第7条そのものは拒絶・異議・無効理由に列挙されていません。
  • 団体商標は識別力の要件(商標法第3条第1項各号)がそのまま適用されます。識別力の例外があるのは地域団体商標です。
  • 構成員の権利(商標法第31条の2):団体の定めるところにより使用をする権利。移転不可。第24条の4、第29条、第50条、第52条の2、第53条、第73条については通常使用権者とみなす。
  • 移転(商標法第24条の3):原則、通常の商標権に変更されたものとみなす。団体商標のまま移転するには、移転の登録の申請と同時に2種類の書面を提出。地域団体商標は譲渡不可(商標法第24条の2第4項)。
  • 専用使用権:団体商標は設定可、地域団体商標は設定不可(商標法第30条第1項ただし書)。
  • 出願の変更(商標法第11条):通常・団体・地域団体の3者間で相互に変更可。査定又は審決の確定後は不可。

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