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小学生でも分かる商標法|商標法第64条〜第68条 防護標章 ― 有名な商標は「にていない商品」の土地にも見はり旗を立てられる

小学生でもわかる商標法 第13回「防護標章」。有名な商標の保護を広げる。

小学生でも分かる商標法 / A. 登録要件・商標 #13

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商標権で他人を止められるのは、ふつうは「同じ・にている名前」を「同じ・にている商品」に使われたときまでです。けれども、日本じゅうで知られた商標は、ぜんぜんちがう商品に使われても、お客さんが「あの店の商品だ」とまちがえることがあります。そこで商標法は、にていない商品・役務についても、あらかじめ「防護標章(ぼうごひょうしょう)」として登録しておける制度を置いています。この記事では、第七章(商標法第64条〜第68条)を、イメージ → 条文の骨格 → 受験レベルの順に整理します。

条文:商標法第64条〜第68条(第七章 防護標章)審査基準:商標審査基準〔改訂第17版〕 第14 第64条 ほか参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

有名になりすぎた「ほしぞらパン」

「ほしぞらパン」というパン屋さんがあるとします(架空のお店です)。お店は、パンについて「ほしぞらパン」という商標(しょうひょう=お店や商品の「目じるし」)を登録しています。

登録すると、パンに「ほしぞらパン」を使えるのは自分だけになります。さらに、にている名前や、にている商品(たとえば、おかし)に使われたときも、「やめて」と言えます。これは、家のまわりに立てた「さく」のようなものです。

ところが、「ほしぞらパン」が日本じゅうで知られるほど有名になりました。すると、ある日、まったく知らない人が「ほしぞらパン」という名前のくつを売りはじめました。くつは、パンとはぜんぜんにていません。さくの外です。

でも、お客さんはどう思うでしょう。「あのパン屋さんが、くつも作りはじめたのかな」とまちがえるかもしれません。くつがすぐこわれたら、パン屋さんの評判(ひょうばん)まで下がってしまいます。

さくの外の土地に「見はり旗」を立てる

そこで商標法には、とくに有名な商標のために、さくの外の土地にも「見はり旗」を立てておけるしくみがあります。これが防護標章(ぼうごひょうしょう)の登録です。旗を立てた土地(たとえば「くつ」)で、他人が同じ名前を使うと、商標権をおかしたものとしてあつかわれます。

「ほしぞらパン」(商品:パン)が日本じゅうで有名なとき(架空の例) 自分だけが使える 同じ名前 × パン さく=他人を止められる にている名前・にている商品 (おかし など) 「くつ」の土地 見はり旗あり → 同じ名前を 使われたら止められる 「かばん」の土地 見はり旗あり → 同じ名前を 使われたら止められる 旗を立てていない土地 見はり旗の力はとどかない さくの外は、ふつうはとどかない

図は左右にスクロールできます。

  • 橙の円:自分だけが使える範囲(同じ名前 × パン)
  • 赤の破線の円:さく=他人を止められる範囲(にている名前・にている商品まで)
  • 青緑の楕円:見はり旗を立てた土地(防護標章登録をした商品・役務)
  • 藍の旗:見はり旗(防護標章登録)
  • 灰色の楕円:旗を立てていない土地(見はり旗の力はとどかない)

【図1】見はり旗(防護標章)の模式図。二重の輪は既刊「商標法第25条 専用権と禁止権」の図と同じ考え方で、その外がわに旗を立てた土地を描き加えたもの。店名・商品は架空の例で、「くつ」「かばん」がパンとにていないことは仮の設定。本記事作成者が条文を整理して図にしたもの。

見はり旗の4つの決まり

① とても有名な登録商標の持ち主だけ② 旗にかけるのは「同じ名前」だけ③ 旗は「見はり用」。自分が使うためではない④ 旗は、もとの商標権についていく

① 見はり旗を立てられるのは、もとの商標が、お客さんの間で広く知られているときだけです。しかも、その土地で他人が使うと、お客さんが「あの店の商品だ」とまちがえるおそれがあるときに限られます。

② 旗にかけるのは、登録してある商標と同じマークだけです。「ほしそらパン」のような、にているだけのマークでは旗を立てられません。

③ 旗は、他人が入ってこないように見はるためのものです。「その土地で自分が商売をする」ための登録ではありません。

④ 旗は、もとの商標権の「子ども」のようなものです。もとの商標権がなくなれば、旗もなくなります。もとの商標権がほかの人にうつれば、旗もいっしょにうつります。

くらべるところふつうの商標登録見はり旗(防護標章の登録)
だれが自分の商売に使う人とても有名な登録商標の持ち主
どの商品に自分が使う商品もとの商品とにていない商品(まちがえるおそれがあるもの)
どんなマーク自分が決めたマークもとの登録商標と同じマークだけ
何のため自分が使う+他人を止める他人を止めるため(見はり用)
10年たったら手続をすれば続けられる「まだ有名か」をもう一度しらべてもらってから続ける

〔表1〕ふつうの商標登録と見はり旗のちがい(やさしい言葉でまとめたもの。正確な要件はレベル2・レベル3)。

レベル1のまとめ
  • 商標権の「さく」は、にている名前・にている商品までしかとどかない。
  • 日本じゅうで有名な登録商標は、にていない商品の土地にも「見はり旗」(防護標章)を立てておける。
  • 旗にかけるのは、登録商標と同じマークだけ。旗は、もとの商標権についていく。
  • 旗は10年ごとに、もう一度しらべてもらって続ける。

※ 「とても有名」「まちがえるおそれ」は、正確には条文と審査基準に条件があります(→レベル3の1.)。「見はり旗」「土地」「さく」は本記事のたとえで、法律の言葉ではありません。旗の力がとどくのは、正確には「同じマーク」を「登録した商品・役務」に使う場合などに限られます(→レベル2、レベル3の6.)。

LEVEL 2条文の骨格

第64条第1項 ― だれが・どんなときに・何を登録できるか

商標法第64条第1項(原文) 商標権者は、商品に係る登録商標が自己の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合において、その登録商標に係る指定商品及びこれに類似する商品以外の商品又は指定商品に類似する役務以外の役務について他人が登録商標の使用をすることによりその商品又は役務と自己の業務に係る指定商品とが混同を生ずるおそれがあるときは、そのおそれがある商品又は役務について、その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。条見出しは「防護標章登録の要件」。

長い一文ですが、部品に分けると次のようになります。「需要者(じゅようしゃ)」は、その商品を買ったり使ったりする人たちのことです。「標章(ひょうしょう)」は、文字や図形などのマークそのもののことです。

部品条文の文言意味
だれが商標権者はすでに商標登録を受けて商標権を持っている人。これから出願する人ではない
どんな商標について登録商標が自己の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合登録商標が、自分の商品の目じるしとして広く知られていること
どの商品・役務について指定商品及びこれに類似する商品以外の商品又は指定商品に類似する役務以外の役務もとの指定商品と同じでも、にてもいない商品・役務(=さくの外)
どんなおそれがあるとき他人が登録商標の使用をすることによりその商品又は役務と自己の業務に係る指定商品とが混同を生ずるおそれがあるとき他人が使うと、お客さんが出どころをまちがえるおそれがあること
何についてそのおそれがある商品又は役務について、その登録商標と同一の標章まちがえるおそれがある商品・役務に限って、登録商標と同一の標章だけ
どうなる防護標章登録を受けることができる防護標章登録という、商標登録とは別の登録を受けられる

〔表2〕商標法第64条第1項の部品分解。

flowchart TB
  A["出願人は商標権者か"] -- "はい" --> B{"登録商標が自己の業務に係る指定商品を表示するものとして
需要者の間に広く認識されているか"} A -- "いいえ" --> X["防護標章登録を受けられない"] B -- "はい" --> C{"指定商品・これに類似する商品/指定商品に類似する役務
以外の商品・役務か"} B -- "いいえ" --> X C -- "はい" --> D{"他人が登録商標の使用をすると
混同を生ずるおそれがあるか"} C -- "いいえ" --> Y["禁止権の範囲内。防護標章登録の対象ではない"] D -- "はい" --> E{"登録商標と同一の標章か"} D -- "いいえ" --> X E -- "はい" --> F["そのおそれがある商品・役務について
防護標章登録を受けることができる"] E -- "いいえ" --> X style F fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style X fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style Y fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図2】商標法第64条第1項の要件の流れ。本記事作成者が条文を整理してフロー化したもの。「禁止権」は講学上の呼称で、商標法第37条第1号により他人の使用を侵害とみなせる範囲のこと。

第64条第2項・第3項 ― 役務の商標、地域団体商標

商標法第64条第2項(原文) 商標権者は、役務に係る登録商標が自己の業務に係る指定役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合において、その登録商標に係る指定役務及びこれに類似する役務以外の役務又は指定役務に類似する商品以外の商品について他人が登録商標の使用をすることによりその役務又は商品と自己の業務に係る指定役務とが混同を生ずるおそれがあるときは、そのおそれがある役務又は商品について、その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる。 商標法第64条第3項(原文) 地域団体商標に係る商標権に係る防護標章登録についての前二項の規定の適用については、これらの規定中「自己の」とあるのは、「自己又はその構成員の」とする。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
項役割ひとこと
第64条第1項商品に係る登録商標の防護標章登録もとが商品の商標。登録先は、にていない商品・役務
第64条第2項役務に係る登録商標の防護標章登録第1項の「商品」と「役務」を入れかえた形
第64条第3項地域団体商標の場合の読替え「自己の」→「自己又はその構成員の」。組合などの構成員の業務で有名になった場合も入る

〔表3〕商標法第64条の項ごとの役割。

条文で見る「とどく範囲」 ― 第25条・第37条第1号・第67条第1号

防護標章登録をすると、どこまで他人を止められるのでしょうか。商標法第67条は、次の行為を当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなすとしています。第1号は指定商品又は指定役務についての登録防護標章の使用です。ここでの「指定商品又は指定役務」は、防護標章登録で指定した商品・役務のことです。

登録商標との関係でみた「とどく範囲」 指定商品・役務と同一 (例:パン) 類似する商品・役務 (例:おかし。仮の設定) 非類似の商品・役務 (例:くつ。仮の設定) 標章が同一 「ほしぞらパン」 標章が類似 「ほしそらパン」 第25条 使用をする権利を専有 (いわゆる専用権) 第37条第1号 (いわゆる禁止権) 第37条第1号 (いわゆる禁止権) 第37条第1号 (いわゆる禁止権) 第67条第1号 防護標章登録をした 商品・役務に限る (登録がなければとどかない) 第37条第1号にも 第67条にも文言上当たらない 「専用権」「禁止権」は講学上の呼称。色彩についての特則(第70条)は省略

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の枠:表の見出し(標章の関係・商品役務の関係)
  • 橙の太枠:使用をする権利を専有する範囲(第25条)
  • 赤の枠:侵害とみなされる範囲(第37条第1号)
  • 藍の太枠:防護標章登録をしていれば侵害とみなされる範囲(第67条第1号)
  • 灰色の破線の枠:第37条第1号にも第67条にも文言上当たらない

【図3】条文版の範囲図。左の4マスは既刊「商標法第25条 専用権と禁止権」の4マス図と同じで、右に「非類似」の列を加えたもの。本記事作成者が商標法第25条・第37条第1号・第67条第1号を整理して図にしたもの(架空の例。商品の類否は仮の設定)。

商標法第67条(原文。柱書と第1号・第2号) 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
一 指定商品又は指定役務についての登録防護標章の使用
二 指定商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録防護標章を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。第3号〜第7号は〔表4〕に要旨を示す。
号行為(要旨。原文はe-Govで確認)性質
第1号指定商品・指定役務についての登録防護標章の使用使用そのもの
第2号登録防護標章を付した指定商品を、譲渡・引渡し・輸出のために所持使用の一歩手前の行為(予備的な行為)
第3号役務の提供を受ける者の利用に供する物に登録防護標章を付したものを、その役務を提供するために所持・輸入
第4号同じ物を、その役務を提供させるために譲渡・引渡し、又はそのために所持・輸入
第5号登録防護標章の使用をするために、登録防護標章を表示する物を所持
第6号登録防護標章の使用をさせるために、登録防護標章を表示する物を譲渡・引渡し、又はそのために所持
第7号登録防護標章の使用をし、又は使用をさせるために、登録防護標章を表示する物を製造・輸入

〔表4〕商標法第67条各号の要旨(全7号)。「類似」の語がどの号にもない点が、商標法第37条第1号とのちがい。

第七章の全体 ― 条ごとの役割

条条見出し役割
第64条防護標章登録の要件だれが・どんなときに・何を登録できるか
第65条出願の変更商標登録出願 → 防護標章登録出願への変更(逆向きは商標法第12条)
第65条の2防護標章登録に基づく権利の存続期間設定の登録の日から10年。更新登録の出願により更新
第65条の3防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録願書の記載事項、出願できる期間、期間後の出願、みなし更新
第65条の4(更新登録の出願の査定)拒絶をすべき場合(2つ)と、更新登録をすべき旨の査定
第65条の5(審査についての準用)商標法第14条・第15条の2、特許法第48条・第52条を準用
第65条の6防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新の登録登録料の納付 → 更新した旨の登録 → 商標公報
第65条の7登録料設定の登録の登録料(第1項)、更新の登録料(第2項)
第65条の8登録料の納付期限査定・審決の謄本の送達があった日から30日以内 など
第65条の9利害関係人による登録料の納付納付すべき者の意に反しても納付できる
第65条の10過誤納の登録料の返還納付した日から1年を経過した後は請求できない
第66条防護標章登録に基づく権利の附随性分割で消滅・移転に随伴・商標権の消滅で消滅
第67条侵害とみなす行為登録防護標章の使用など7つの行為
第68条商標に関する規定の準用出願・審査・権利・異議と審判・再審と訴訟の各規定を、読替えつきで準用

〔表5〕商標法第七章(防護標章)の条ごとの役割。条見出しはe-Gov法令検索(2026年9月参照)による。第65条の4・第65条の5には条見出しがないため、( )内は本記事作成者による内容の要約。

第66条 ― 旗は、もとの商標権についていく(附随性)

商標法第66条第1項〜第3項(原文) 防護標章登録に基づく権利は、当該商標権を分割したときは、消滅する。
2 防護標章登録に基づく権利は、当該商標権を移転したときは、その商標権に従つて移転する。
3 防護標章登録に基づく権利は、当該商標権が消滅したときは、消滅する。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。項番号「2」「3」は読みやすさのために付したもの。第4項〜第6項はレベル3の8.で扱う。
もとの商標権(親)と、防護標章登録に基づく権利(子) ① 商標権を分割(第1項) ② 商標権を移転(第2項) ③ 商標権が消滅(第3項) 商標権 指定商品ごとに2つに分ける 防護標章登録に基づく権利 消滅する 商標権 甲 → 乙 へ移転 防護標章登録に基づく権利 商標権に従って乙へ移転 商標権 存続期間の満了などで消滅 防護標章登録に基づく権利 消滅する 防護標章登録に基づく権利だけを切りはなして動かす規定は、第七章に置かれていない (甲・乙は架空の商標権者)

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の枠:場面の見出し(第66条第1項〜第3項)
  • 橙の枠:もとの商標権(上段)と、消滅せずに商標権に従って移転する権利(②の下段)
  • 赤の枠:消滅する防護標章登録に基づく権利(①③の下段)

【図4】附随性の相関図。本記事作成者が商標法第66条第1項〜第3項を整理して図にしたもの。

項もとの商標権に起きたこと防護標章登録に基づく権利
第66条第1項分割したとき(商標権の分割は商標法第24条)消滅する
第66条第2項移転したときその商標権に従って移転する
第66条第3項消滅したとき消滅する
第66条第4項更新の申請をせずに消滅したものとみなされた後、商標法第21条により回復したとき回復した権利の効力は、一定の期間の商標法第67条各号の行為には及ばない
第66条第5項・第6項後期分割登録料を納付せずに消滅したものとみなされた後、商標法第41条の3により回復したとき同上

〔表6〕商標法第66条の項ごとの整理(第4項〜第6項の「一定の期間」はレベル3の8.)。

第65条の2〜第65条の6 ― 10年ごとの更新は「出願」

商標法第65条の2(原文) 防護標章登録に基づく権利の存続期間は、設定の登録の日から十年をもつて終了する。
2 防護標章登録に基づく権利の存続期間は、更新登録の出願により更新することができる。ただし、その登録防護標章が第六十四条の規定により防護標章登録を受けることができるものでなくなつたときは、この限りでない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。項番号「2」は読みやすさのために付したもの。

ふつうの商標権の更新は「更新登録の申請」です(商標法第20条)。これに対して、防護標章の更新は「更新登録の出願」です。出願なので、審査官が「いまも第64条の要件を満たしているか」をしらべます(商標法第65条の4)。有名でなくなっていれば、更新できません。

flowchart TB
  A["更新登録の出願
存続期間の満了前6月から満了の日まで
(第65条の3第2項)"] --> B["審査官による審査
(第65条の5で準用する第14条)"] B --> C{"拒絶の理由があるか
(第65条の4第1項)"} C -- "ある" --> G["拒絶理由の通知
(第65条の5で準用する第15条の2)"] G --> H["理由が解消しなければ
拒絶をすべき旨の査定(第65条の4第1項)"] C -- "ない" --> D["更新登録をすべき旨の査定
(第65条の4第2項)"] D --> E["登録料の納付
(第65条の7第2項・第65条の8第2項)"] E --> F["存続期間を更新した旨の登録・商標公報に掲載
(第65条の6)"] style F fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style H fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図5】防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新の流れ。本記事作成者が商標法第65条の3〜第65条の8を整理してフロー化したもの。拒絶をすべき旨の査定に対する不服の手続は省略(例外あり)。

更新登録の出願のタイムチャート 設定の 登録の日 (10年) 満了前6月 満了の日 経過後6月 出願できる期間 第65条の3第2項 期間後の出願(条件つき) 第65条の3第3項

図は左右にスクロールできます。

【図6】更新登録の出願のタイムチャート(縮尺は正確ではない)。期間・日数は商標法第65条の3、第65条の8第2項、商標法施行規則第2条第9項・第10項(e-Gov法令検索、2026年9月参照)による。本記事作成者が整理して図にしたもの。

【図6】の補足:
  • 期間後の出願:出願をすることができるようになった日から2月。ただし、その末日が「出願できる期間」の経過後6月を超えるときは、経過後6月まで(商標法施行規則第2条第9項)。回復理由書が必要(同条第10項)。
  • 故意に期間内に出願をしなかったと認められる場合は、期間後の出願はできない(第65条の3第3項ただし書)。
  • 出願があると、存続期間は満了の時(期間後の出願はその出願の時)に更新されたものとみなす(同条第4項)。ただし、拒絶をすべき旨の査定・審決が確定したとき、又は更新した旨の登録があったときを除く。
  • 更新の登録料:更新登録をすべき旨の査定・審決の謄本の送達があった日(満了前の送達なら満了の日)から30日以内(第65条の8第2項)。
レベル2のまとめ
  • 防護標章登録を受けられるのは商標権者。要件は、(1) 登録商標が需要者の間に広く認識されている、(2) 非類似の商品・役務について他人が使用すると混同を生ずるおそれがある、(3) 登録商標と同一の標章、の3つ(商標法第64条第1項・第2項)。
  • 商標法第67条は、登録防護標章の使用などを、もとの商標権(又は専用使用権)の侵害とみなす。各号に「類似」の語はない。
  • 防護標章登録に基づく権利は、商標権を分割すると消滅し、移転すると従って移転し、商標権が消滅すると消滅する(商標法第66条第1項〜第3項)。
  • 存続期間は設定の登録の日から10年。更新は「更新登録の出願」で、審査がある(商標法第65条の2〜第65条の4)。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 第64条の要件と商標審査基準

商標法第64条第1項・第2項の要件は、条文上、(1) 出願人が商標権者であること、(2) 登録商標が自己の業務に係る指定商品(指定役務)を表示するものとして需要者の間に広く認識されていること、(3) 指定商品・指定役務と同一でも類似でもない商品・役務について、他人が登録商標の使用をすることにより混同を生ずるおそれがあること、(4) 登録商標と同一の標章であること、です。商標審査基準〔改訂第17版〕「第14 第64条(防護標章登録の要件)」は、これらを次のように整理しています(もとの登録商標を「原登録商標」と呼んでいます)。

審査基準の項目内容(要旨)対応する条文の文言
1.(1)「需要者の間に広く認識されている」とは、原登録商標権者の出所表示として、その商品又は役務の需要者の間で全国的に認識されているものをいう需要者の間に広く認識されている
1.(2)(ア) 原登録商標の使用状況に関する事実、(イ) 広告、宣伝等の程度又は普及度、(ウ) 原登録商標権者の企業規模等について商品又は役務との関連性、(エ) 著名であることが審決又は判決で認定されているなど特許庁において顕著な事実であること、を考慮して総合的に判断する同上
2.防護標章登録出願の標章は、原登録商標と同一の標章(縮尺のみ異なるものを含む。)でなくてはならないその登録商標と同一の標章
3.原登録商標と使用商標の同一性の判断には、同基準 第2(第3条第2項)の1.(1)を準用する(登録商標が広く認識されているかの判断の前提)
4.(1)「混同を生ずるおそれ」は、原登録商標権者の業務に係る商品等であると誤認する場合のみならず、原登録商標権者と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品等であると誤認する場合をもいう混同を生ずるおそれがあるとき
4.(2)例えば、① 原登録商標の周知度、② 造語性又は構成上顕著な特徴の有無、③ ハウスマークであるか否か、④ 企業における多角経営の可能性、⑤ 商品間、役務間又は商品と役務間の関連性、⑥ 需要者の共通性その他取引の実情、を総合勘案する同上
5.商品又は役務の普通名称等を含む商標を、その商品又は役務以外の商品又は役務について防護標章登録出願をした場合でも、商品の品質又は役務の質の誤認を生じるかは考慮せず、第64条の要件を具備している限り登録を認める(商標法第68条第2項の読替えにより、拒絶理由が「第64条」に置きかわることと対応。→5.)

〔表7〕商標審査基準〔改訂第17版〕(令和8年2月改訂)「第14 第64条」の整理。特許庁ウェブサイト掲載のPDFを2026年9月に参照。要旨は本記事作成者によるもので、正確な文言は同基準で確認のこと。

ポイント:条文の文言は商標法第4条第1項第10号と同じ「需要者の間に広く認識されている」ですが、審査基準は第64条について「全国的に認識されているもの」としています。これは審査基準(実務上の取扱い)の記述であり、条文に「全国的」の語があるわけではありません。「著名」という語も第64条の条文にはありません。
立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』(令和4年10月。以下「逐条解説〔第22版〕」)の説明の要旨は、次のとおりです。
なぜ非類似の商品・役務まで保護するのか。同書は第64条の解説で、商標法は保護の範囲を「類似」という技術的な概念で画し、類似範囲内での他人の使用は、実際に出所の混同を生ずるかを問わず混同を生ずるものと擬制している、と説明しています。ところが、商品・役務の類似が画一的な概念であるのに対し、出所の混同を生ずる範囲は商標の著名度などによって変動する流動的な概念であり、両者は必ずしも一致しない。混同を生ずる範囲が類似範囲を超えて広がっても、非類似である限り商標権の効力は及ばず、業務上の信用が害されても放置されることになるが、それは商標に化体した業務上の信用を保護するという立法趣旨からみて不適切である。不正競争防止法による保護もあり得るが、立証等の点で実際には容易でない。そこで現行法(昭和34年法)が救済手段として防護標章制度を設けた、とされています。
商標法第4条第1項第15号との関係。同書は、こうした範囲での他人の商標登録出願は本来第4条第1項第15号で拒絶されるはずであるが、念のためにあらかじめ混同を生ずる範囲を明確にして他人が商標登録を受ける危険を防止し、かつ、未登録商標であっても他人の使用を禁止し、使用した場合には商標権侵害とみなして迅速な救済を保障しようとするものである、と説明しています。この意味で防護標章登録の効力は非類似の商品・役務についての禁止権ともいえるが、禁止権が画一的であるのに対し、防護標章登録は個別的に実状を審査して設定される点が異なる、とされています。
「同一の標章」に限ることについて。同書は第67条の解説で、効力を類似部分にまで一律に及ぼすと、必ずしも出所の混同を生じない範囲まで保護の対象とすることになって行き過ぎであること、不正競争防止法も保護の対象を出所の混同を生ずる範囲に限っていること、防護標章制度自体が不正競争防止法で保護される範囲をより迅速・容易な手段で重ねて保護しようとするものであることを挙げ、第37条の場合と異なり保護の範囲を登録商標と同一の標章に限った、と説明しています。
その他の性質と附随性。同書は、防護標章登録に基づく権利は積極的にその部分を使用することを目的としないので、二以上の商標権について同一又は類似の商品・役務に重複して認めても差し支えないこと、本来的に使用する意思がないことを前提とするので不使用取消審判の対象にならないこと(他人の権利と抵触しない限り事実上使用するのは差し支えないこと)、使用許諾は認められないことを述べています。また、混同のおそれは指定商品・指定役務の一部について生ずれば足り、防護標章登録は全体としての商標権についての概念であるため、商標権を分割する場合の扱いが問題となり、それを第66条で定めている、とされています。第66条の解説は、防護標章登録に基づく権利は防護すべき商標権を論理的な前提としており、商標権と分離した独立の権利は考えられないこと、商標権を分割するとどの商標権に随伴するかが不明になるので消滅させることとしたこと(第64条の要件を満たす限り、分割後にあらためて防護標章登録を受けられること)、商標権が消滅すれば存在理由がなくなることを挙げています。平成8年の一部改正前は商標権を分割して移転した場合に消滅するとしていたが、同改正で移転を伴わない商標権の分割(第24条)を導入したことに伴い、移転の有無に関係なく分割した場合に消滅することとした、とされています。
制度を維持した理由。同書は第64条の〔参考〕で、平成17年の不正競争防止法の一部改正で著名表示冒用行為も刑事罰の対象とされ、水際でも同法違反の物品が規制の対象とされたことなどから、平成18年の一部改正の際に防護標章制度を廃止してもよいのではないかとする考え方もあった、と述べています。そのうえで、①登録によって権利が付与され、公示されることにより第三者が権利の所在を確認できること、②不使用取消審判の対象とはならず、権利を安定的に管理できること、③既に同一又は類似の他人の登録商標があっても防護標章登録が可能であること、等から現在も登録・更新が継続的に行われ一定の制度ユーザーが存在するため、引き続き維持することとした、と説明しています(同書は理由を3つ挙げたうえで「等」としています)。
逐条解説〔第22版〕1782頁〜1787頁(第64条)、1800頁〜1802頁(第66条)、1804頁〜1805頁(第67条)。

知財高裁2010年2月25日判決(平成21年(行ケ)第10189号・JOURNAL STANDARD)は、第64条第1項の「広く認識されている」について、単に周知であるだけでなく、非類似の商品・役務でも出所の混同を生じるほどの強い識別力・著名性が必要と判断しました。この事件では防護標章登録の拒絶審決の取消請求を棄却しています。出典:判決原文・7〜8頁(第5・1)。

2. 通常の商標登録との比較

比較の軸商標登録(商標権)防護標章登録(防護標章登録に基づく権利)
主体自己の業務に係る商品・役務について使用をする商標について出願する者(商標法第3条第1項柱書)商標権者(商標法第64条)
対象商標登録商標と同一の標章
商品・役務出願人が指定する商品・役務もとの指定商品・指定役務と非類似で、混同を生ずるおそれがある商品・役務
主な登録要件(拒絶理由)商標法第3条、第4条第1項、第8条第2項・第5項 など(商標法第15条第1号)商標法第64条(商標法第68条第2項による第15条第1号の読替え)
先に出願された他人の商標が未登録である場合の拒絶理由の通知(商標法第15条の3)適用あり準用なし(商標法第68条第2項の列挙にない)
効力使用をする権利の専有(商標法第25条)+侵害とみなす行為(商標法第37条)商標法第67条各号の行為を、もとの商標権又は専用使用権の侵害とみなす。商標法第25条は準用されていない
類似範囲商標法第37条第1号で類似範囲に及ぶ商標法第67条各号に「類似」の語なし(色彩については商標法第70条第2項)
存続期間設定の登録の日から10年(商標法第19条第1項)設定の登録の日から10年(商標法第65条の2第1項)
更新更新登録の申請(商標法第20条)更新登録の出願(商標法第65条の3)。審査あり(商標法第65条の4)
不使用を理由とする取消審判(商標法第50条)あり準用なし(商標法第68条第4項の列挙にない)
無効審判の除斥期間(商標法第47条)あり準用なし(同上)
移転・分割移転できる(商標法第24条の2)。分割できる(商標法第24条)商標権に従って移転。商標権を分割すると消滅(商標法第66条)
他人の出願を排除する号商標法第4条第1項第11号(同一又は類似)商標法第4条第1項第12号(同一のみ)

〔表8〕通常の商標登録と防護標章登録の比較。各条はe-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127、2026年9月参照)による。「不使用を理由とする取消審判」は、いわゆる不使用取消審判(実務上の呼称)。

ポイント:防護標章登録は、その商品・役務について商標権者が自ら使用をすることを前提としていません(第64条の要件は「他人が登録商標の使用をすることにより」混同を生ずるおそれ、です)。条文上も、商標法第68条第4項の準用列挙に商標法第50条は入っていません。同じく、商標法第51条・第52条の2・第53条も列挙にありません(第53条の2・第53条の3は列挙にあります)。

特許法・実用新案法・意匠法には、防護標章に当たる章はありません。商標法固有の制度です。

3. 更新 ― 商標権の「申請」と防護標章の「出願」

比較の軸商標権の存続期間の更新防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新
手続の名前更新登録の申請(商標法第20条第1項)更新登録の出願(商標法第65条の2第2項、第65条の3第1項)
手続ができる期間満了前6月から満了の日まで(商標法第20条第2項)満了前6月から満了の日まで(商標法第65条の3第2項)
期間内にできなかったとき期間経過後6月以内(商標法第20条第3項、商標法施行規則第10条第2項)。理由は問われない。割増登録料(商標法第43条第1項)経済産業省令で定める期間内に限り出願できる。故意に出願をしなかったと認められる場合は不可(商標法第65条の3第3項)。期間は、出願できるようになった日から2月(上限は期間経過後6月)(商標法施行規則第2条第9項)
実体的な審査商標法第20条〜第23条に審査・査定の規定はない審査官が審査し、拒絶をすべき旨の査定又は更新登録をすべき旨の査定をする(商標法第65条の4、第65条の5)
拒絶される場合―① 登録防護標章が第64条の規定により防護標章登録を受けることができるものでなくなったとき、② 出願をした者が当該防護標章登録に基づく権利を有する者でないとき(商標法第65条の4第1項第1号・第2号)
登録料の納付時期更新登録の申請と同時(商標法第41条第5項。詳細は関連記事)更新登録をすべき旨の査定・審決の謄本の送達があった日(満了前の送達なら満了の日)から30日以内(商標法第65条の8第2項)
更新の効果が生じる時更新した旨の登録があったとき、満了の時に更新(商標法第19条第3項。回復の場合は商標法第21条第2項。関連記事)出願があったときは、満了の時(期間後の出願はその出願の時)に更新されたものとみなす。ただし、拒絶をすべき旨の査定・審決が確定したとき、又は更新した旨の登録があったときを除く(商標法第65条の3第4項)
出願公開―商標法第12条の2は「防護標章登録出願」に準用(商標法第68条第1項)。更新登録の出願の審査に準用されるのは商標法第65条の5に列挙された規定

〔表9〕更新の「申請」と「出願」の対比。商標権の更新の詳細は関連記事「商標法第20条〜第23条 更新登録と回復」。期間・日数は各条(e-Gov法令検索、2026年9月参照)による。

flowchart TB
  S["防護標章登録に基づく権利の存続期間がまもなく満了"] --> A{"満了前6月から満了の日までに
更新登録の出願をしたか"} A -- "した" --> R["審査(第65条の4)"] A -- "しなかった" --> B{"故意に出願をしなかったと
認められるか"} B -- "認められる" --> X["期間後の出願はできない
(第65条の3第3項ただし書)"] B -- "認められない" --> C{"省令で定める期間内か
(施行規則第2条第9項)"} C -- "期間内" --> R C -- "期間外" --> X R --> D{"登録防護標章が第64条により登録を
受けることができるものでなくなったか"} D -- "なくなった" --> N["拒絶をすべき旨の査定
(第65条の4第1項第1号)"] D -- "要件を満たしている" --> E{"出願をした者は
権利を有する者か"} E -- "有する者" --> OK["更新登録をすべき旨の査定
→ 登録料の納付 → 更新した旨の登録"] E -- "有する者でない" --> N2["拒絶をすべき旨の査定
(第65条の4第1項第2号)"] style OK fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style X fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図7】更新登録の出願の分岐図。本記事作成者が商標法第65条の3・第65条の4、商標法施行規則第2条第9項を整理してフロー化したもの。拒絶理由の通知(商標法第65条の5で準用する第15条の2)と不服の手続は省略(例外あり)。

場面期間・年数根拠(2026年9月時点)
存続期間設定の登録の日から10年商標法第65条の2第1項
更新登録の出願ができる期間満了前6月から満了の日まで商標法第65条の3第2項
期間後の出願出願をすることができるようになった日から2月。ただし末日が上記期間の経過後6月を超えるときは、経過後6月商標法第65条の3第3項、商標法施行規則第2条第9項
設定の登録の登録料防護標章登録をすべき旨の査定・審決の謄本の送達があった日から30日以内商標法第65条の8第1項
更新の登録料更新登録をすべき旨の査定・審決の謄本の送達があった日(満了前の送達なら満了の日)から30日以内商標法第65条の8第2項
納付期間の延長請求により30日以内を限り延長商標法第65条の8第3項
納付期間の経過後の納付期間(延長後の期間)の経過後2月商標法第65条の8第4項、商標法施行規則第18条第6項
責めに帰することができない理由があるとき理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内で、その期間の経過後6月以内商標法第65条の8第5項
過誤納の登録料の返還請求納付した日から1年を経過した後は請求できない(不責事由の例外は第3項)商標法第65条の10第2項・第3項

〔表10〕第七章の期間・年数の一覧。e-Gov法令検索(商標法 334AC0000000127、商標法施行規則 335M50000400013)を2026年9月に参照。2026年9月21日時点の登録料は設定登録が1区分32,900円、更新登録が1区分37,500円です。出典:特許庁・産業財産権関係料金一覧4(4)。

立法趣旨・改正経緯(逐条解説〔第22版〕):なぜ更新が「出願」なのか。逐条解説〔第22版〕は、平成8年の一部改正で、一般の商標権については、商標法条約が存続期間の更新の際に標章の使用に関する宣言書又は証拠の提出を求めることと、実体についての審査を禁止していることから、更新登録出願制度を廃止して更新登録申請制度に移行したが、防護標章制度については同条約の当該規定の留保が可能であることもあって、我が国における著名商標の保護強化の観点から更新登録出願制度を維持することとした、と説明しています。これに伴い、改正前の第68条第3項で準用していた商標権の存続期間の更新に関する規定を削除し、第65条の2から第65条の10までを新設した、とされています。
満了後6月の更新出願がない理由。同書は、防護標章登録に基づく権利については、商標権の場合(第20条第3項)と異なり、存続期間の満了後6月以内の更新出願は認められていないとし、その理由として、防護標章登録に基づく権利は通常の商標権とは性格を異にするので商標法条約上の要請がないこと、更新の手続を怠った場合でも通常は他人が同一又は類似の商標について登録を受けられることはない(第4条第1項第15号により拒絶される)であろうこと、本人が防護標章登録出願をし直すことで再度防護標章登録を受けられることを挙げています。
期間後の出願(第65条の3第3項)の改正経緯。同書は、平成23年の一部改正前は回復の要件を、その責めに帰することができない理由とその理由がなくなった日から14日以内と規定していたが、要件が非常に厳格で実質的な救済が図られていない等の理由から、同改正で正当な理由とその理由がなくなった日から2月以内とした、と説明しています。その後、平成27年の一部改正で手続期間を経済産業省令で定める期間内とし、令和3年の一部改正で要件を「正当な理由」からSTLT(商標法に関するシンガポール条約)第14条⑵に相当する「故意でない」に転換し、あわせて救済の申請に必要な手数料を規定した、とされています。
逐条解説〔第22版〕1789頁〜1790頁(第65条の2)、1791頁〜1792頁(第65条の3)。

回復要件は、令和3年法律第42号により「正当な理由」から「故意によるものでないこと」に変わりました。この部分の施行日は2023年4月1日です。同日以降に期間を徒過した手続に新基準を適用し、同年3月31日以前の期間徒過には旧基準を適用します。防護標章の更新出願では、出願できるようになった日から2月以内、かつ本来の出願期間経過後6月以内に、出願と回復理由書の提出を行います。回復手数料は86,400円で、責めに帰することができない理由について所定の申出・証明をした場合は免除の対象です。出典:特許庁・救済手続の対象、手数料、Q&A1、商標法施行規則第2条第9〜13項。2026年度弁理士試験は、各試験の実施日に施行されている法令を出題対象とします(受験案内2頁)。

4. 第68条 ― 準用される規定、されない規定

商標法第68条は5つの項で、商標登録に関する規定を防護標章登録に準用しています。どの規定が列挙され、どの規定が列挙されていないかが、そのまま防護標章の性質を表しています。

項準用先準用される規定主な読替え列挙にない規定の例
第1項防護標章登録出願商標法第5条、第5条の2、第6条第1項・第2項、第9条の2から第10条まで、第12条の2、第13条第1項、第13条の2願書に「防護標章登録出願に係る商標登録の登録番号」を追加。商標法第13条の2第5項の「第37条」→「第67条(第1号に係る部分を除く。)」商標法第7条、第7条の2、第8条、第9条、第11条
第2項防護標章登録出願の審査商標法第14条から第15条の2まで、第16条から第17条の2まで商標法第15条第1号の列挙 →「第64条」。同条第3号 →「第6条第1項又は第2項」商標法第15条の3
第3項防護標章登録に基づく権利商標法第18条、第26条から第28条の2まで、第32条から第33条の3まで、第35条、第38条の2、第39条において準用する特許法第104条の3第1項及び第2項、第69条商標法第18条第2項の登録料 →「第65条の7第1項の規定による登録料」商標法第19条〜第25条、第29条〜第31条の2、第34条
第4項登録異議の申立て及び審判商標法第43条の2(第3号を除く。)から第45条まで、第46条(第1項第3号及び第7号を除く。)、第46条の2、第53条の2、第53条の3、第54条第1項、第55条の2から第56条の2まで異議理由・無効理由の列挙 →「第64条」。商標法第46条第1項第6号 →「その商標登録が第六十四条の規定に違反することとなつたとき」商標法第47条、第50条、第51条、第52条の2、第53条
第5項再審及び訴訟前章(第六章)の規定商標法第59条第2号の「第37条各号」→「第67条第2号から第7号まで」、商標法第60条の「…類似する商品若しくは役務について当該登録商標又はこれに類似する商標」→「について当該登録防護標章と同一の商標」ほか―

〔表11〕商標法第68条の準用一覧。各項の原文(e-Gov法令検索、2026年9月参照)を本記事作成者が整理したもの。「列挙にない規定の例」は、原文の列挙と照らして本記事作成者が拾ったもので、網羅ではない。

ポイント:商標法第68条第3項の列挙に、差止請求権(商標法第36条)や損害の額の推定等(商標法第38条)はありません。他方、商標法第67条は同条各号の行為を当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなすとしています。条文の文言からは、侵害とみなされるのは「もとの商標権(又は専用使用権)」であり、差止め・損害賠償はその商標権(又は専用使用権)の侵害として商標法第36条以下が適用される、と読むことができます。
立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は第67条について、第1号は商標権の効力に係る第25条に、第2号以下は第37条に対応するものであり、その侵害の効果は商標権と同様で、損害賠償、差止請求及び刑事責任等において同様の取扱いを受ける、と説明しています。上のポイントの読み方は、この説明と整合します。また同書は第68条について、防護標章の性質に反しない限りにおいて商標に関する規定を準用したもの、と説明しています。
使用権(商標法第30条・第31条)については、同書は第64条の解説で、防護標章について使用許諾が認められないことは言うまでもない、と述べています。
逐条解説〔第22版〕1784頁(第64条)、1804頁(第67条)、1808頁(第68条)。

第68条第3項は質権に関する第34条を準用していません。第71条第1項第4号が質権の登録対象として挙げるのも、商標権・専用使用権・通常使用権です。防護標章登録に基づく権利は、もとの商標権と切り離して移転する権利ではなく、商標権に従って移転し、その消滅とともに消滅します(第66条第2・3項)。したがって、この表では防護標章登録に基づく権利だけを独立に質入れできるとは扱いません。出典:商標法第66条・第68条・第71条、逐条解説〔第22版〕1801頁。

5. 拒絶理由・異議理由・無効理由・除斥期間の対応表

事由拒絶理由異議理由無効理由後発的な無効理由除斥期間
防護標章登録が商標法第64条の要件を満たさない該当 商標法第68条第2項で読み替えて準用する第15条第1号該当 商標法第68条第4項で読み替えて準用する第43条の2第1号該当 同項で読み替えて準用する第46条第1項第1号該当 同項で読み替えて準用する第46条第1項第6号(第64条の規定に違反することとなったとき)準用なし 商標法第47条は列挙にない
防護標章登録出願が商標法第6条第1項・第2項に違反該当 読替え後の第15条第3号非該当非該当――
防護標章登録出願についての商標法第3条・第4条第1項商標法第15条第1号・第43条の2第1号・第46条第1項第1号の列挙が「第64条」に読み替えられるため、条文上、これらは防護標章登録の拒絶理由・異議理由・無効理由として列挙されていない(商標審査基準 第14 の5.も参照)
他人の商標登録出願が商標法第4条第1項第12号に該当該当 商標法第15条第1号該当 商標法第43条の2第1号該当 商標法第46条第1項第1号非該当 商標法第46条第1項第6号の列挙にないあり 設定の登録の日から5年(商標法第47条第1項)

〔表12〕対応表。上3行は防護標章登録そのもの、最下行は「他人の登録防護標章と同一の商標」を出願された場面。商標法第15条第2号(条約)など、読替えの対象でない号は省略(例外あり)。第4条第1項第12号の判断時は、商標審査基準上、査定時(関連記事「商標法第4条第1項第12号・第14号・第17号」)。

6. 第4条第1項第12号・第15号、第67条との関係

商標法第4条第1項第12号・第15号(原文) 十二 他人の登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。以下同じ。)と同一の商標であつて、その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をするもの
十五 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。

非類似の商品・役務について他人の出願や使用を止める手がかりは、防護標章登録だけではありません。商標法第4条第1項第15号は、防護標章登録がなくても「混同を生ずるおそれ」があれば他人の出願を拒絶する理由になります。両者の分担を整理します。

比較の軸商標法第4条第1項第12号商標法第4条第1項第15号商標法第67条
場面他人の出願を拒絶他人の出願を拒絶他人の使用等を侵害とみなす
防護標章登録必要不要必要
標章の範囲登録防護標章と同一の商標同一・類似に限る文言はない登録防護標章(「類似」の語なし)
商品・役務の範囲防護標章登録に係る指定商品・指定役務限定する文言はない防護標章登録に係る指定商品・指定役務
混同のおそれの判断出願ごとの判断は不要(登録の時点で第64条の審査を経ている)出願ごとに判断事件ごとの判断は条文上の要件でない
色彩の特則商標法第70条第2項―商標法第70条第2項
号どうしの関係―括弧書で第十号から前号までに掲げるものを除く。=第12号に当たるものは第15号から除かれる―

〔表13〕第12号・第15号・第67条の分担(条文の文言による。本記事作成者が整理)。第15号の詳細は関連記事「商標法第4条第1項第10号・第15号・第19号」。

flowchart TB
  A["他人の商標(出願又は使用)"] --> B{"防護標章登録に係る
指定商品・指定役務についてのものか"} B -- "はい" --> C{"登録防護標章と同一か
(第70条第2項の色彩の特則を含む)"} B -- "いいえ" --> Z["第12号・第67条の文言に当たらない"] C -- "はい" --> D["出願:第4条第1項第12号
使用:第67条第1号"] C -- "いいえ(類似にとどまる)" --> Z Z --> E["出願について:第4条第1項第15号などを別に検討
(混同を生ずるおそれを個別に判断)"] style D fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style Z fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:第4条第1項第12号・第67条第1号の文言に当たる結論
  • 赤の箱:これらの文言に当たらない結論

【図8】登録防護標章と他人の商標の関係の分岐図。本記事作成者が商標法第4条第1項第12号・第15号、第67条、第70条第2項を整理してフロー化したもの。使用の場面で第12号・第67条の文言に当たらない場合の扱いは、本記事の範囲外(例外あり)。

商標法第70条第2項(原文) 第四条第一項第十二号又は第六十七条における「登録防護標章」には、その登録防護標章に類似する標章であつて、色彩を登録防護標章と同一にするものとすれば登録防護標章と同一の標章であると認められるものを含むものとする。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。同条第4項により、色彩のみからなる登録商標については適用されない。なお、同条第1項の列挙に「第六十四条」があり、第64条の「登録商標」にも色彩の特則が及ぶ。

7. 出願の変更 ― 第65条と第12条

商標法第65条(原文) 商標登録出願人は、その商標登録出願を防護標章登録出願に変更することができる。
2 前項の規定による出願の変更は、商標登録出願について査定又は審決が確定した後は、することができない。
3 第十条第二項及び第三項並びに第十一条第五項の規定は、第一項の規定による出願の変更の場合に準用する。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。項番号「2」「3」は読みやすさのために付したもの。
比較の軸商標法第65条商標法第12条
向き商標登録出願 → 防護標章登録出願防護標章登録出願 → 商標登録出願
いつまで商標登録出願について査定又は審決が確定するまで防護標章登録出願について査定又は審決が確定するまで
出願の時もとの出願の時にしたものとみなす(商標法第10条第2項の準用。同項ただし書の例外あり)
書面の扱いもとの出願について提出された一定の書面等は、新たな出願と同時に提出されたものとみなす(商標法第10条第3項の準用)
もとの出願取り下げたものとみなす(商標法第11条第5項の準用)
国際商標登録出願適用しない(商標法第68条の13)(商標法第68条の13は第11条及び第65条を挙げる。第12条は原文で確認)

〔表14〕出願の変更の対比。商標法第10条第2項・第3項、第11条第5項、第12条、第65条、第68条の13(e-Gov法令検索、2026年9月参照)による。

8. 第66条第4項〜第6項 ― 商標権が回復したときの効力の制限

商標権が消滅したものとみなされると、防護標章登録に基づく権利も消滅します(商標法第66条第3項)。その後に商標権が回復した場合について、商標法第66条第4項は次のように定めています。

商標法第66条第4項(原文) 第二十条第四項の規定により商標権が消滅したものとみなされた場合において、第二十一条第二項の規定により回復した当該商標権に係る防護標章登録に基づく権利の効力は、第二十条第三項に規定する更新登録の申請をすることができる期間の経過後第二十一条第一項の申請により商標権の存続期間を更新した旨の登録がされる前における次条各号に掲げる行為には、及ばない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。

つまり、「期間経過後の申請期間がすぎた後」から「回復による更新の登録がされる前」までの間にされた商標法第67条各号の行為には、回復した防護標章登録に基づく権利の効力は及びません。商標権そのものについての同じ趣旨の規定は商標法第22条にあります(関連記事)。第5項・第6項は、後期分割登録料の不納付により消滅したものとみなされた商標権が商標法第41条の3により回復した場合について、同じ形の制限を定めています。

9. 試験での問われ方

型問われる点(例)根拠
要件の言いかえ「類似する標章」についても防護標章登録を受けられるか/商標登録出願人も受けられるか商標法第64条第1項・第2項(商標権者、同一の標章)
第12号の範囲登録防護標章と「類似」の商標が第12号に当たるか商標法第4条第1項第12号(同一)、第70条第2項
附随性商標権の分割・移転・消滅と防護標章登録に基づく権利商標法第66条第1項〜第3項
更新「申請」か「出願」か、審査の有無、拒絶される場合、願書の記載事項商標法第65条の2〜第65条の4
準用の有無不使用を理由とする取消審判、除斥期間、商標法第15条の3、出願公開商標法第68条各項
侵害とみなす行為登録防護標章に類似する標章の使用、類似する商品への使用商標法第67条各号

〔表15〕試験での問われ方の型(本記事作成者による一般的な整理。出題を予想するものではない)。

令和8年度短答式【商標】6の枝5は、防護標章登録に基づく権利の更新登録出願の出願公開を扱います。問7の枝5は、同出願の願書記載事項を扱います。各問題全体の公式正解は、問6が3、問7が5です。 出典:公式問題(商標1〜10)、公式解答。

Q. 防護標章登録に基づく権利の更新登録の出願の願書に、標章や指定商品・指定役務の記載は必要か。
A. 商標法第65条の3第1項各号が掲げるのは、① 出願人の氏名又は名称及び住所又は居所、② 防護標章登録の登録番号、③ 経済産業省令で定める事項、です。第3号の省令事項は、区分の数を減じて出願する場合の、更新登録を求める商品・役務の区分です(商標法施行規則第15条)。
Q. 商標権を指定商品ごとに分割して、一方を他人に移転した。防護標章登録に基づく権利はどうなるか。
A. 商標法第66条第1項により、商標権を分割したときに消滅します。第2項(移転に従って移転)が働くのは、分割をせずに商標権を移転した場合です。
Q. 防護標章登録について、無効審判は設定の登録の日から5年を経過した後も請求できるか。
A. 商標法第68条第4項の準用列挙に商標法第47条は含まれていません。したがって、条文上、防護標章登録の無効審判に除斥期間の定めは準用されません。
レベル3のまとめ
  • 審査基準は、第64条の「需要者の間に広く認識されている」を全国的な認識とし、標章の同一には縮尺のみ異なるものを含むとする。「混同」は、経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務と誤認する場合を含む。
  • 更新は「出願」。拒絶されるのは、第64条の要件を満たさなくなったとき、又は出願人が権利を有する者でないとき(商標法第65条の4第1項)。
  • 商標法第68条の列挙に、第15条の3、第47条、第50条はない。拒絶・異議・無効の理由は、読替えにより「第64条」が中心になる。
  • 商標法第4条第1項第12号は「同一」のみ。類似にとどまる商標は第12号に当たらず、第15号などを別に検討する。
  • 商標法第67条は、もとの商標権又は専用使用権の侵害とみなす規定で、各号に「類似」の語はない(色彩は商標法第70条第2項)。

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