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小学生でも分かる商標法|商標法第20条〜第23条 更新登録と回復 ― 「続けます」の届けは、いつまでに出せばよいか

小学生でもわかる商標法 第22回「更新登録と回復」。権利を続ける手続と期限。

小学生でも分かる商標法 / B. 出願・審査・登録の手続 #22

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商標権は10年で終わりますが、「続けます」と届け出れば、また10年つづけられます。この記事では、その届け(更新登録の申請)をいつ出すのか、出しそびれたらどうなるのか、消えてしまった権利は戻せるのか、戻った権利はだれに対して弱いのか、を順番に見ていきます。存続期間そのもの(商標法第19条)は既刊#21で扱いました。

条文:商標法第20条・第21条・第22条・第23条関係省令:商標法施行規則第10条審査基準:商標審査基準〔改訂第17版〕に第20条〜第23条の項目はありません(目次で確認)参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

目じるしの権利は10年。でも「続けます」と言えば続く

町のパン屋さん「ほしぞらパン」(架空のお店です)は、お店の名前を国に登録しています。商標(しょうひょう)=お店や商品の「目じるし」です。登録すると、その目じるしを自分だけが使える権利(商標権)がもらえます。

この権利は、登録の日から10年で終わります。でも、パン屋さんはまだまだお店を続けたい。そこで、「続けます」という届け(更新登録の申請(こうしんとうろくのしんせい))を出して、お金(登録料)をはらえば、また10年のびます。何回でものばせます。

図書館の本を「もう少し借ります」と延長するのに似ています。ただし、延長の手続には受付の期間があります。

届けを出せる「3つの窓口」

「ほしぞらパン」の目じるしの権利と、届けの窓口 10年目の終わりの 6か月前 10年目の終わりの日 終わりの日から 6か月 窓口① ふつうの窓口 届け+登録料 ここで出すのが基本 窓口② おくれた人の窓口 届け+登録料 +同じ額の「おくれ料」 窓口③ さいごの窓口 わざとでなければ、 理由を書いて出せる 終わりの日まで 権利はふつうに生きている (6か月前より早くは出せない) 窓口②でも出さなかったら 権利は「終わりの日」に消えていたことになる 窓口③は、それを元にもどすための特別な窓口

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑:窓口①(ふつうの窓口)と、権利がふつうに生きている時期
  • 橙の枠:窓口②(おくれた人の窓口)
  • 藍の枠:窓口③(さいごの窓口)
  • 赤:10年目の終わりの日と、権利が消えてしまう話

【図1】更新の届けを出せる3つの窓口(模式図)。「ほしぞらパン」は架空の店名です。条文を単純化して本記事作成者が図にしたもので、窓口③の受付期間など細かい条件は省いています(→レベル2・レベル3)。

① ふつうの窓口=終わりの日の6か月前〜終わりの日② おくれた人の窓口=そのあと6か月(お金は原則2倍)③ さいごの窓口=わざとでない人だけ

出しわすれたら、どうなる?

窓口①で出しわすれても、すぐにおしまいではありません。終わりの日から6か月のあいだは、窓口②が開いています。ただし、登録料のほかに、同じ額の「おくれ料」(割増登録料(わりましとうろくりょう))をはらうのが原則です。

窓口②でも出さなかったら、権利は「10年目の終わりの日」に消えていたことになります。「窓口②がしまった日」に消えるのではなく、時間をさかのぼって消える、というところが大切です。

消えた権利を元にもどす「さいごの窓口」

それでも、「わざと出さなかった」のでなければ、決められた短い期間のうちに、理由を書いた紙といっしょに届けを出すことができます。これが通ると、権利は消えなかったことになり、元にもどります(商標権の回復(かいふく))。

でも、ここで困る人がいます。となり町の「こぐま堂」(架空)が、「ほしぞらパンの権利は消えたんだな」と思って、同じ目じるしでパンを売りはじめていたらどうでしょう。あとから権利が元にもどったからといって、「消えていたあいだ」にしたことまで責められたら、こぐま堂はたまりません。

そこで法律は、元にもどった権利は、消えていたあいだ(窓口②がしまってから、元にもどす登録がされるまで)の行為には力がおよばない、と決めています。

レベル1のまとめ
  • 目じるしの権利(商標権)は10年。でも「続けます」の届け(更新登録の申請)とお金で、また10年のびる。
  • 届けの窓口は、①終わりの日の6か月前〜終わりの日、②そのあと6か月(お金は原則2倍)、③わざとでない人のためのさいごの窓口、の3つ。
  • 窓口②でも出さないと、権利は「終わりの日」にさかのぼって消える。
  • さいごの窓口で元にもどった権利は、消えていたあいだの他人の行為には力がおよばない。
  • 届けとお金がそろえば、国は「のばしました」と登録し、公報(こうほう=国のお知らせ)にのせる。

※ 「お金は2倍」「さいごの窓口の期間」「力がおよばない行為の中身」は、正確には条件があります(→レベル3)。「おくれ料」「窓口」は本記事のたとえで、法律の言葉ではありません。

LEVEL 2条文の骨格

第20条 ― 更新登録の申請(いつ・だれが・何を出すか)

商標法第20条(原文) 第1項 商標権の存続期間の更新登録の申請をする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を特許庁長官に提出しなければならない。
 一 申請人の氏名又は名称及び住所又は居所
 二 商標登録の登録番号
 三 前二号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項
第2項 更新登録の申請は、商標権の存続期間の満了前六月から満了の日までの間にしなければならない。
第3項 商標権者は、前項に規定する期間内に更新登録の申請をすることができないときは、その期間が経過した後であつても、経済産業省令で定める期間内にその申請をすることができる。
第4項 商標権者が前項の規定により更新登録の申請をすることができる期間内に、その申請をしないときは、その商標権は、存続期間の満了の時にさかのぼつて消滅したものとみなす。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
部品文言意味
だれが「商標権者」(第20条第3項・第4項)。第1項は「申請をする者」更新できるのは商標権者です(商標法第19条第2項も「商標権者の更新登録の申請により」)。
何を申請書(氏名等・登録番号・省令事項)「願書」ではなく「申請書」。出す相手は特許庁長官です。
いつ(原則)「満了前六月から満了の日までの間」満了の日の6月前から満了の日まで。これより早くても遅くても、この項の期間の外です。
いつ(期間経過後)「経済産業省令で定める期間内」商標法施行規則第10条第2項により、第20条第2項の期間の「経過後六月」。
どうなる(申請しないとき)「存続期間の満了の時にさかのぼつて消滅したものとみなす」消える時点は「満了の時」。期間経過後の6月が終わった時ではありません。

〔表1〕商標法第20条の部品分解。省令期間の出典:商標法施行規則(法令ID 335M50000400013)第10条第2項 商標法第二十条第三項の経済産業省令で定める期間は、同条第二項に規定する期間の経過後六月とする。(e-Gov、2026年9月参照)。

満了日の前後を1枚のタイムチャートで

更新登録の申請ができる期間(タイムチャート) 満了前6月 存続期間の満了の日 経過後6月 さらに6月 A 通常の申請期間 第20条第2項/登録料 B 期間経過後の申請 第20条第3項/+割増登録料 C 回復の申請 第21条/故意でないこと 権利は存続中 (10年の存続期間内) 申請して更新登録されれば 満了の時に更新(第19条第3項) Bでも申請しないと満了の時に 遡って消滅(第20条第4項) Cの期間(商標法施行規則第10条第3項) 更新登録の申請をすることができるようになった日から2月 ただし、その末日がBの期間の経過後6月を超えるときは、Bの期間の経過後6月まで =図のCの帯(6月)は「最長でここまで」という上限を示しています

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑の枠:A 通常の申請期間(第20条第2項)
  • 橙の枠:B 期間経過後の申請(第20条第3項)
  • 藍:C 回復の申請(第21条)。下の藍の帯はCの期間の決まり方
  • 赤の縦線:存続期間の満了の日

【図2】満了の日の前後のタイムチャート。商標法第19条第3項、第20条第2項〜第4項、第21条第1項、商標法施行規則第10条第2項・第3項を本記事作成者が図にしたもの(e-Gov、2026年9月参照)。時間軸に縮尺はありません。

申請期間の始まりの日に注意(特許庁の資料)特許庁の資料「商標権の更新 更新登録申請期間開始日にご注意ください!」は、存続期間満了日が12月26日の場合の更新登録申請期間を「6月27日〜12月26日」とし、6月26日の申請は期間外となり受理できない、と案内しています。期間の計算の一般ルールは商標法第77条第1項で準用する特許法第3条です(詳しくは既刊#21)。

第21条 ― 商標権の回復

商標法第21条(原文) 第1項 前条第四項の規定により消滅したものとみなされた商標権の原商標権者は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、その申請をすることができる。ただし、故意に、同条第三項の規定により更新登録の申請をすることができる期間内にその申請をしなかつたと認められる場合は、この限りでない。
第2項 前項の規定による更新登録の申請があつたときは、存続期間は、その満了の時にさかのぼつて更新されたものとみなす。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
部品文言意味
だれが「消滅したものとみなされた商標権の原商標権者」権利はもう消えた扱いなので「商標権者」ではなく「原商標権者」。
いつ「経済産業省令で定める期間内に限り」商標法施行規則第10条第3項:申請をすることができるようになった日から2月。ただし末日が第20条第3項の期間の経過後6月を超えるときは、その期間の経過後6月。
どうやって「経済産業省令で定めるところにより」商標法施行規則第10条第4項:上の期間内に「回復理由書」(様式第8の2)を提出。
できない場合「故意に、…その申請をしなかつたと認められる場合」わざと申請しなかったと認められると、回復できません。
どうなる「満了の時にさかのぼつて更新されたものとみなす」消滅のみなし(第20条第4項)がひっくり返り、権利がつながります。

〔表2〕商標法第21条の部品分解。省令の出典:商標法施行規則第10条第3項 商標法第二十一条第一項の経済産業省令で定める期間は、同法第二十条第一項に規定する商標権の存続期間の更新登録の申請をすることができるようになつた日から二月とする。ただし、当該期間の末日が同条第三項の規定により更新登録の申請をすることができる期間の経過後六月を超えるときは、その期間の経過後六月とする。、同条第4項(e-Gov、法令ID 335M50000400013、2026年9月参照)。

第22条 ― 回復した商標権の効力の制限

商標法第22条(原文) 前条第二項の規定により回復した商標権の効力は、第二十条第三項に規定する更新登録の申請をすることができる期間の経過後前条第一項の申請により商標権の存続期間を更新した旨の登録がされる前における次に掲げる行為には、及ばない。
 一 当該指定商品又は指定役務についての当該登録商標の使用
 二 第三十七条各号に掲げる行為
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。

第23条 ― 存続期間の更新の登録

商標法第23条(原文) 第1項 第四十条第二項の規定による登録料又は第四十一条の二第七項の規定により更新登録の申請と同時に納付すべき登録料の納付があつたときは、商標権の存続期間を更新した旨の登録をする。
第2項 第二十条第三項又は第二十一条第一項の規定により更新登録の申請をする場合は、前項の規定にかかわらず、第四十条第二項の規定による登録料及び第四十三条第一項の規定による割増登録料又は第四十一条の二第七項の規定により更新登録の申請と同時に納付すべき登録料及び第四十三条第二項の規定による割増登録料の納付があつたときに、商標権の存続期間を更新した旨の登録をする。
第3項 前二項の登録があつたときは、次に掲げる事項を商標公報に掲載しなければならない。
 一 商標権者の氏名又は名称及び住所又は居所
 二 登録番号及び更新登録の年月日
 三 前二号に掲げるもののほか、必要な事項
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
条何をいつのどうなる
第22条①指定商品・指定役務についての登録商標の使用
②商標法第37条各号に掲げる行為
第20条第3項の期間の経過後 〜 回復による更新登録がされる前回復した商標権の効力が及ばない
第23条第1項登録料(一括=第40条第2項/分割の前半=第41条の2第7項)の納付通常の申請期間の申請存続期間を更新した旨の登録をする
第23条第2項登録料+割増登録料(第43条第1項・第2項)の納付第20条第3項・第21条第1項の申請存続期間を更新した旨の登録をする
第23条第3項氏名等、登録番号・更新登録の年月日、その他必要な事項更新の登録があったとき商標公報に掲載

〔表3〕商標法第22条・第23条の部品分解(要約。原文は上の引用のとおり)。

flowchart LR
  A["更新登録の申請書を
特許庁長官に提出
(第20条第1項)"] --> B["申請と同時に
登録料を納付
(第41条第5項)"] B --> C["存続期間を更新した旨の登録
(第23条第1項・第2項)"] C --> D["商標公報に掲載
(第23条第3項)"] C --> E["存続期間は
満了の時に更新
(第19条第3項)"] style C fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style E fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:更新の登録と、それによって生じる存続期間の効果

【図3】更新の手続の流れ。商標法第19条第3項、第20条第1項、第23条、第41条第5項(前条第二項の規定による登録料は、更新登録の申請と同時に納付しなければならない。)を本記事作成者がフロー化したもの。審査官による審査・査定の段階がないことに注目してください。

条・項役割(ひとことで)
第20条第1項申請書の記載事項と提出先
第20条第2項通常の申請期間(満了前6月〜満了の日)
第20条第3項期間経過後の申請(省令期間=経過後6月)
第20条第4項申請しないとき=満了の時に遡って消滅とみなす
第21条第1項回復の申請(原商標権者・省令期間・故意の場合は不可)
第21条第2項回復の効果(満了の時に遡って更新されたものとみなす)
第22条回復した商標権の効力が及ばない行為(第1号・第2号)
第23条第1項登録料の納付 → 更新の登録
第23条第2項期間経過後・回復の場合は、登録料+割増登録料の納付 → 更新の登録
第23条第3項商標公報への掲載事項

〔表4〕商標法第20条〜第23条の項ごとの役割一覧。

レベル2のまとめ
  • 更新登録の申請は「満了前6月から満了の日まで」(第20条第2項)。過ぎても「経過後6月」は申請できる(第20条第3項、商標法施行規則第10条第2項)。
  • その期間にも申請しなければ、商標権は「満了の時」にさかのぼって消滅したものとみなされる(第20条第4項)。
  • 故意でなければ、原商標権者は省令期間内に回復の申請ができ、存続期間は満了の時にさかのぼって更新されたものとみなされる(第21条)。
  • 回復した商標権の効力は、「第20条第3項の期間の経過後〜回復による更新登録前」の使用等には及ばない(第22条)。
  • 登録料(場合により割増登録料も)の納付があれば更新の登録がされ、商標公報に掲載される(第23条)。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 3つの申請ルートを横に並べる

項目A 通常の申請B 期間経過後の申請C 回復の申請
根拠第20条第2項第20条第3項第21条第1項
申請できる者(条文の文言)商標権者(第19条第2項)商標権者原商標権者
期間満了前6月〜満了の日Aの期間の経過後6月(商標法施行規則第10条第2項)申請をすることができるようになった日から2月。ただし末日がBの期間の経過後6月を超えるときは、Bの期間の経過後6月(同規則第10条第3項)
申請できなかった理由の要件―条文は「申請をすることができないとき」とするのみで、理由の種類を限定する文言はない故意に申請しなかったと認められる場合は不可(第21条第1項ただし書)
追加の書面――回復理由書(同規則第10条第4項)
納付登録料(第40条第2項、又は分割の場合は第41条の2第7項)登録料+同額の割増登録料(第43条第1項・第2項。ただし書の例外あり)同左(第43条第1項は「第二十条第三項又は第二十一条第一項の規定により更新登録の申請をする者」を対象とする)
更新の登録の根拠第23条第1項第23条第2項第23条第2項
存続期間の扱い更新登録があったとき、満了の時に更新(第19条第3項)同左(第19条第3項)申請があったとき、満了の時にさかのぼって更新されたものとみなす(第21条第2項)
効力の制限なし第22条に当たる規定はない第22条

〔表5〕更新登録の申請の3ルート比較。商標法・商標法施行規則の条文(e-Gov、2026年9月参照)から本記事作成者が整理。

ポイント:効果の発生の書き方が違うA・Bは「更新した旨の登録があつたとき」に「満了の時に更新されるものとする」(第19条第3項)。Cは「更新登録の申請があつたとき」に「満了の時にさかのぼつて更新されたものとみなす」(第21条第2項)。条文の文言が異なる点は、原文で確認しておくとよいでしょう。
立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』(令和4年10月。以下「逐条解説〔第22版〕」)の説明の要旨は、次のとおりです。
B(第20条第3項)について。同項および第4項は、平成8年の一部改正により更新登録申請制度を採用したことに伴って新設された規定である。第3項は、更新登録の申請を存続期間の満了後6月間についても更に認めるもので、これは商標法条約の要請による(同書は同条約第13条⑴⒞および同条約に基づく規則第8規則を挙げています)。また、同項は「申請をすることができないとき」と規定しているが、できないことについての理由のいかんは問わない。例えば商標権者本人の責めに帰することができない理由によるというような条件は一切課されない。なお平成27年の一部改正で、この手続期間がその期間の経過後6月以内という定め方から経済産業省令で定める期間内という定め方に改められた(同書は、条約の下位規則で定められている事項は従来から省令で規定してきたことによる、と説明しています)。
Bの期間の性質。同書は第20条第4項について、第2項の期間(満了前6月から満了の日まで)を経過しても商標権は当然には消滅せず存続期間は更新されたものとし、第3項の期間内に申請がないときに初めて遡及して消滅する、と説明しています。したがって第3項の期間内であれば、更新登録の申請がなくとも商標権者としての地位が認められ、その期間内に申請がなければ逆に遡及してその地位を失うことになる、とされています。
逐条解説〔第22版〕1629頁。
flowchart TB
  S["更新登録の申請を
いつしたか"] --> Q1{"満了前6月から
満了の日までの間?"} Q1 -- "はい" --> A1["登録料を納付
(第41条第5項)"] A1 --> A2["更新の登録(第23条第1項)
満了の時に更新(第19条第3項)"] Q1 -- "それより前" --> X0["第20条第2項の期間の外
(特許庁資料:受理できない)"] Q1 -- "満了の日より後" --> Q2{"第20条第2項の期間の
経過後6月以内?"} Q2 -- "はい" --> B1["登録料+割増登録料を納付
(第43条第1項・第2項。例外あり)"] B1 --> B2["更新の登録(第23条第2項)
満了の時に更新(第19条第3項)"] Q2 -- "いいえ" --> D["満了の時に遡って消滅とみなす
(第20条第4項)"] D --> Q3{"故意に申請しなかったと
認められる?"} Q3 -- "はい" --> X1["回復できない
(第21条第1項ただし書)"] Q3 -- "いいえ" --> Q4{"省令期間内?
(できるようになった日から2月、
かつ経過後6月の上限内)"} Q4 -- "はい" --> C1["回復理由書を提出
登録料+割増登録料を納付"] Q4 -- "いいえ" --> X2["回復できない"] C1 --> C2["満了の時に遡って更新とみなす
(第21条第2項)
ただし効力の制限あり(第22条)"] style A2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style B2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style C2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style X0 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style X1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style X2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style D fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:更新の登録がされる(存続期間がつながる)結論
  • 赤の箱:申請できない・回復できない、又は権利が消滅するという結論

【図4】「いつ申請したらどうなるか」の分岐図。商標法第19条第3項、第20条〜第23条、第41条第5項、第43条、商標法施行規則第10条を本記事作成者がフロー化したもの。「受理できない」は特許庁資料「商標権の更新 更新登録申請期間開始日にご注意ください!」の表現です。

2. 割増登録料(商標法第43条)との関係

場面根拠内容例外(ただし書)
B・Cの申請(一括納付)第43条第1項第40条第2項の登録料のほか、その登録料と同額の割増登録料申請をする者がその責めに帰することができない理由により第二十条第二項に規定する期間内にその登録料を納付することができないときは不要
B・Cの申請(分割納付)第43条第2項第41条の2第7項により申請と同時に納付すべき登録料のほか、同額の割増登録料同趣旨のただし書あり
後期分割登録料の追納(参考)第43条第3項満了前5年までに納付すべき登録料を追納する場合、同額の割増登録料同趣旨のただし書あり

〔表6〕割増登録料の整理(商標法第43条、e-Gov、2026年9月参照)。更新登録料は一括1区分43,600円、前期分割1区分22,800円で、割増登録料はそれぞれと同額です(2026年9月21日確認)。後期分割登録料は第41条の2の記事で扱います。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、商標法第43条について、平成8年の一部改正で更新出願制度を廃止して更新申請制度を導入したこと、および登録料の分割納付制度を導入したことに伴って新設された規定である、と説明しています(同改正前の第43条は、利害関係人による納付に関する特許法の準用規定でした)。
また同書は、第43条第1項ただし書は令和3年の一部改正で新設された救済規定であり、特許法と同様に、商標権者の責めに帰することができない理由により納付期間内に登録料を納付することができなかった場合には割増登録料の納付を免除する旨を整備したものである、第2項・第3項のただし書も同じである、と説明しています。
逐条解説〔第22版〕1709頁。
回復手数料について(逐条解説〔第22版〕・令和3年改正解説書):逐条解説〔第22版〕は、商標法第21条第1項について、令和3年の一部改正で更新登録の申請の要件を「正当な理由」からSTLT(商標法に関するシンガポール条約)第14条⑵に相当する「故意でない」に転換し、あわせて第76条の別表において救済の申請に必要な手数料を規定した、と説明しています。
特許庁「令和3年法律改正(令和3年法律第42号)解説書」第1章は、回復手数料を設けた理由を、改正により権利等の回復が容易となるところ、制度の濫用を防ぐとともに手続期間の遵守を引き続き促進する必要があるためと説明し、その金額の水準は、消滅した権利を出願して再取得すると擬制した場合に特許庁に納付すべき金額(出願から権利化までに要する平均的な手数料額)に相当するものとした、としています。金額は上限額のみを法律に規定し、具体的金額は政令で定めることとされています。さらに同章は、災害や感染症等によって手続期間の徒過が出願人等の責めに帰することができない場合に回復手数料を免除する規定を設けた旨を述べています。
逐条解説〔第22版〕1631頁/令和3年改正解説書 第1章 13頁(PDF p.5)。現行の回復手数料は86,400円です(免除の条件は本文参照)。
回復手続でも、責めに帰することができない理由について所定の申出・証明をすれば、割増登録料の免除を受けられます。第23条第2項の登録料等の納付要件は、第43条のただし書による免除と併せて読みます。回復手数料の免除との併用も可能ですが、それぞれの免除要件を満たす必要があります。特許庁の救済案内・FAQ2・商標法施行規則第18条第8項・第9項。

3. 「故意に」― 回復の要件と改正前後

現行の商標法第21条第1項ただし書は、「故意に」申請をしなかったと認められる場合に回復を認めない、という書き方です(条文上の帰結)。手続としては、省令期間内に回復理由書を提出します(商標法施行規則第10条第4項)。特許庁長官は、回復理由書の記載事項について必要があると認めるときは、証明する書面の提出を命ずることができます(同条第5項)。

改正前現行
回復の要件(キーワード)「正当な理由」「故意に…しなかつたと認められる場合」でないこと
手がかりとなる特許庁の資料名特許庁ウェブサイト「『正当な理由』による期間徒過後の救済について(令和5年3月31日以前に期間徒過した手続)」特許庁ウェブサイト「『故意によるものでないこと』による期間徒過後の救済について」
改正法令和3年法律第42号。特許庁「令和3年法律改正(令和3年法律第42号)解説書」第1章の表題は「特許権等の権利回復の要件の変更」

〔表7〕回復要件の改正前/現行。現行の文言は商標法第21条第1項(e-Gov、2026年9月参照)。改正前の欄は特許庁の資料名から分かる範囲にとどめています。

要件の変遷(逐条解説〔第22版〕):逐条解説〔第22版〕は、商標法第21条第1項の要件について、次のように説明しています(要旨)。
平成23年の一部改正前は、回復の要件としてその責めに帰することができない理由があること、およびその理由がなくなった日から14日以内であることを規定していた(青本1630〜1631頁に示された改正経緯の要約)。その要件が非常に厳格であって実質的な救済が図られていないこと等の理由から、平成23年の一部改正により正当な理由があること、およびその理由がなくなった日から2月以内であることと規定した。その後、平成27年の一部改正において、救済に係る手続期間について、第20条第3項と同じ理由(条約の下位規則で定める事項は従来から省令で規定してきたこと)により「経済産業省令で定める期間内」として規定することとした。さらに令和3年の一部改正において、要件を「正当な理由」からSTLT第14条⑵に相当する「故意でない」に転換し、第76条の別表に救済の申請に必要な手数料を規定した。
また同書は〔参考〕として、平成23年の一部改正では改正後の特許法で最長回復期間を6月以内から1年以内としたが、商標法でこれを1年以内とすると、救済の有無によって後願の審査に影響が及ぶ期間が延び、結果として審査が遅延して早期の権利化というユーザーニーズに応えられない事態になりかねないこと、国際的にも欧米主要国では6月を超える例がないことなどから、特許法に準拠せず、その期間の経過後6月以内としたと説明しています。
逐条解説〔第22版〕1630頁〜1632頁。
令和3年改正の理由(令和3年改正解説書 第1章):特許庁「令和3年法律改正(令和3年法律第42号)解説書」第1章の説明の要旨は、次のとおりです。特許法条約(PLT)および商標法に関するシンガポール条約(STLT)は、権利等の回復の判断基準として「相当な注意基準」と「故意でない基準」のいずれかを締約国が選択することとしている。日本は平成28年のPLT・STLT加入に際しても「相当な注意基準」を採用し、平成23年改正で定めた「正当な理由」を維持した(手数料を徴収せずに「故意でない基準」を選択すると制度の濫用を招くおそれがあると考えられたため)。しかし、日本では「正当な理由」を慎重に解して運用してきた結果、国内外の出願人等から判断基準・立証負担が欧米諸国に比して厳格に過ぎるとの指摘を受けており、諸外国の権利回復申請の認容率が故意でない基準の国で90%以上、相当な注意基準の国でも60%以上であるのに対し、日本の認容率は10〜20%程度と突出して低い。そこで「故意でない基準」へ転換することとした、と説明されています。
令和3年改正解説書 第1章 9頁〜13頁(PDF p.1〜p.5)。
回復要件は2023年4月1日から「正当な理由」から「故意によるものでないこと」へ変更されました。新基準は同日以降に期間を徒過した手続に適用し、同年3月31日以前に期間を徒過した手続には旧基準を用います。更新では、通常の満了日ではなく第20条第3項の満了後6月の申請期間を過ぎた日を区別します。特許庁の新基準案内・旧基準案内。
flowchart TB
  A["第20条第4項により
消滅したものとみなされた"] --> B{"申請人は
原商標権者?"} B -- "はい" --> C{"故意に申請しなかったと
認められる?"} B -- "いいえ" --> N1["第21条第1項の
申請はできない"] C -- "はい" --> N2["回復できない
(ただし書)"] C -- "いいえ" --> D{"申請できるようになった日から
2月以内?"} D -- "はい" --> E{"第20条第3項の期間の
経過後6月以内?"} D -- "いいえ" --> N3["期間外"] E -- "はい" --> F["更新登録の申請+回復理由書
(商標法施行規則第10条第4項)"] E -- "いいえ" --> N3 F --> G["登録料+割増登録料の納付
→ 更新の登録(第23条第2項)"] style G fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style N1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N3 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:回復が認められ、更新の登録に至る結論
  • 赤の箱:回復の申請ができない・回復できないという結論

【図5】回復(商標法第21条)の要件チェック。第21条第1項と商標法施行規則第10条第3項・第4項を本記事作成者がフロー化したもの。

4. 第22条 ― 効力が及ばない「期間」と「行為」

回復した商標権の効力が及ばない期間(第22条) 満了の日 第20条第3項の 期間の経過 回復による 更新の登録 期間経過後の申請期間 第22条の対象期間ではない 効力が及ばない期間 この間の第1号・第2号の行為 登録後の行為 第22条の対象外 第1号 指定商品・指定役務についての 登録商標の使用 第2号 商標法第37条各号に掲げる行為 (侵害とみなす行為)

図は左右にスクロールできます。

  • 橙の枠:第20条第3項の申請期間(第22条の対象期間ではない)
  • 赤:効力が及ばない期間(第22条の対象)と、満了の日を示す縦線
  • 青緑の枠:回復による更新の登録より後(第22条の対象外)
  • 藍の帯:効力が及ばない行為(第1号・第2号)

【図6】商標法第22条の「期間」と「行為」。条文の文言(「第二十条第三項に規定する更新登録の申請をすることができる期間の経過後…更新した旨の登録がされる前」)を本記事作成者が図にしたもの。

ポイント:条文から読み取れること
  • 対象期間の始まりは「満了の日」ではなく、「第20条第3項の期間の経過後」です。満了の日から経過後6月までの間は、第22条の文言上の対象期間に入っていません。
  • 対象期間の終わりは、回復の「申請」の時ではなく、「更新した旨の登録がされる前」です。
  • 第22条が定めるのは、その期間「における」行為に効力が及ばないことです。更新の登録がされた後の行為について定める文言はありません。
  • 第1号は指定商品・指定役務についての登録商標の使用(講学上「専用権」と呼ばれる範囲)、第2号は商標法第37条各号(類似範囲での使用や予備的行為など、侵害とみなす行為。詳細は第37条の記事)です。
Q. 期間経過後の申請(第20条第3項)で更新された場合、満了の日〜申請の間の第三者の使用はどう扱われますか。
A. 条文上、第22条は「前条第二項の規定により回復した商標権」だけを対象にしており、第20条第3項の申請で更新された商標権について効力を制限する規定は、第20条〜第23条の中には置かれていません。その場合は第19条第3項により「満了の時に更新」されます。ここから先の評価(侵害の成否など)は本記事では踏み込みません。
逐条解説〔第22版〕は、第20条第4項の解説で、同条第3項の期間内に更新登録の申請がされた場合は同項の反対解釈として、更新登録がされるまでは第3項の期間が経過した後であってもその存続期間は更新されたものとみなす効果が維持される、と説明しています(1629頁〜1630頁)。同書の第20条〜第23条の解説には、この場合の第三者の行為との調整を述べた記載は見当たりませんでした。

5. 更新は「申請」、防護標章の更新は「出願」

項目商標権の存続期間の更新防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新
手続の名前更新登録の申請(第20条第1項)更新登録の出願(第65条の3第1項)
提出する書面申請書願書
期間(原則)満了前6月〜満了の日(第20条第2項)満了前6月〜満了の日(第65条の3第2項)
期間を過ぎたとき経過後6月は申請可(第20条第3項。条文上、理由を限定する文言なし)+割増登録料。その後は回復(第21条)省令期間内に限り出願可。ただし故意に出願しなかったと認められる場合は不可(第65条の3第3項)
審査官による審査第20条〜第23条に審査・査定の規定なし。登録料の納付があれば更新の登録(第23条)あり。第65条の4第1項各号に当たれば拒絶査定、拒絶の理由を発見しないときは更新登録をすべき旨の査定(第65条の4第2項)
拒絶の理由―①登録防護標章が第64条により防護標章登録を受けることができるものでなくなったとき、②出願をした者が権利を有する者でないとき(第65条の4第1項)
存続期間の扱い更新登録があったとき満了の時に更新(第19条第3項)出願があったとき満了の時に更新されたものとみなす。ただし拒絶査定・審決の確定、又は更新の登録があったときを除く(第65条の3第4項)
商標審査基準項目なし商標審査基準〔改訂第17版〕「第65条の2、3及び4(防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録)」

〔表8〕「申請」と「出願」の対比。商標法第19条〜第23条、第65条の3、第65条の4(e-Gov、2026年9月参照)と商標審査基準の目次(特許庁ウェブサイト、2026年5月27日更新、2026年9月参照)から本記事作成者が整理。防護標章の詳細は防護標章の記事で扱います。

ポイント:「更新は実体審査なし」の根拠の示し方条文上の帰結として言えるのは、「第20条〜第23条には審査官の審査・拒絶の査定の規定がなく、登録料(と割増登録料)の納付があったときに更新の登録をすると定められている(第23条)」という点です。防護標章の更新には第65条の4があるので、並べると違いがはっきりします。なぜそのような仕組みにしたのか(立法の経緯)は、次の解説をご覧ください。
改正の経緯(逐条解説〔第22版〕)― 更新「出願」から更新「申請」へ:逐条解説〔第22版〕の説明の要旨は、次のとおりです。
①改正前(平成8年の一部改正前)の制度。更新は、商標権者による更新登録の出願に基づき、更新登録の要件について審査が行われ、要件を具備していないと更新ができないこととされていた。同書はその要件として、(ⅰ)その登録商標が公益的不登録事由(同書は第4条第1項第1号から第3号まで、第5号、第7号又は第16号を挙げています。)に該当するものとなっていないこと、(ⅱ)その登録商標が使用されていること、の2つを挙げています。
②改正の理由。平成8年の一部改正において、商標法条約が、更新に際して標章の使用に関する宣言書または証拠の提出および実体についての審査をそれぞれ明確に禁じていること(同書は同条約第13条⑷・⑹を挙げています)に対応して、いわゆる使用チェックおよび実体審査を伴う更新出願制度を廃止し、更新登録の申請と料金納付のみにより、使用チェックや実体審査を行うことなく更新を認める更新申請制度を導入することとした。
③申請書の記載事項が少ない理由。同書は第20条第1項について、更新登録の申請では商標登録出願と異なり商標や指定商品・指定役務の記載は不要であるとし、その理由を、更新登録は権利の創設と異なり、既存の権利を実体の同一性を保持しつつさらに10年間効力を存続させる意味を持つにすぎず、更新によって更新される権利の実体には変更がないので、その権利を確定するための資料は不要であるから、単に既存の権利と更新登録に係る権利との関係を明らかにできれば足りる、と説明しています。
④登録料の同時納付。同書は第41条について、平成8年の一部改正で更新登録出願制度を廃止して更新登録申請制度に移行したことに伴い、更新登録出願に基づく更新登録料の納付期限を定めていた改正前の規定を削除し、更新登録料の納付は更新登録の申請と同時に行わなければならないことを新たに規定して、更新登録の申請だけでは更新の登録は認められないことを明らかにした、と説明しています。あわせて第41条の5(利害関係人による登録料の納付)の解説では、更新の手続が商標権者の意図のみをもって行われ、登録料の納付を同時に行わなければならない申請とされたことから、更新登録の申請と同時に納付すべき登録料については利害関係人による納付を考慮する余地はない、としています。
⑤申請の主体。同書は、更新登録の申請は商標権者のみがすることができ、使用権者や質権者などの利害関係を有する者であってもすることができない、としています。
⑥申請期間の延長。同書は第20条第2項について、平成3年の一部改正で、出願人の便宜の向上および国際的趨勢等を考慮して、満了前6月から満了前3月までを満了前6月から満了の日までに延長したこと、この期間は平成8年の一部改正で更新申請制度に移行した後も同様であることを説明しています。
逐条解説〔第22版〕1626頁、1628頁、1696頁、1705頁。
あわせて廃止されたもの(逐条解説〔第22版〕の第48条・第49条の〔参考〕):逐条解説〔第22版〕は、商標法第48条および第49条(いずれも平成8年法律第68号により削除)について、平成8年の一部改正で使用チェックおよび実体審査を行う更新出願制度を廃止し、更新登録の申請と料金納付のみにより更新を認める更新申請制度を導入したことに伴って、商標権の存続期間の更新登録の無効審判についての規定(第48条)および当該審判の除斥期間についての規定(第49条)を削除した、と説明しています。更新に実体審査がなくなった結果、更新の登録そのものを無効にする審判も不要になった、という関係です。
逐条解説〔第22版〕1742頁(第47条の次に置かれた〔参考〕)。
参考:更新の単位(逐条解説〔第22版〕の第19条の〔参考〕):同書は、指定商品または指定役務の一部のみについての更新を認めたらどうかという意見に対し、制度および事務手続がいたずらに複雑化する半面、同様の効果は権利の一部を放棄することにより可能であるので採用しなかった、と説明しています。そのうえで、平成8年の一部改正により一出願多区分制が導入されたことに伴い、複数区分に係る商標権については更新を求める区分についてのみの申請(区分単位の申請)を可能とした、としています(同書は商標法施行規則第11条を挙げています。)。
逐条解説〔第22版〕1627頁。

6. 拒絶理由・異議理由・無効理由・除斥期間との対応

条文拒絶理由
(第15条)
異議理由
(第43条の2)
無効理由
(第46条第1項)
除斥期間
(第47条)
備考
第20条非該当非該当非該当―第20条〜第23条は、登録後の存続期間の更新の手続を定める規定で、第15条・第43条の2・第46条第1項の各号に挙げられていません(各条をe-Govで確認)。
第21条非該当非該当非該当―
第22条非該当非該当非該当―
第23条非該当非該当非該当―

〔表9〕対応表(商標法第15条、第43条の2、第46条第1項、e-Gov、2026年9月参照)。更新の申請には審査官の審査がないため、「更新時に識別力や不登録事由をもう一度審査される」という構造にはなっていません。

7. 国際登録に基づく商標権には適用されない

商標法第68条の22第1項は、国際登録に基づく商標権については、第十九条から第二十二条まで並びに第二十三条第一項及び第二項の規定は、適用しない。と定めています。第23条第3項(公報掲載)だけは、同条第2項の読替えのうえで適用されます(「前二項の登録」→「国際登録の存続期間の更新」など)。詳細はマドリッド協定の議定書に基づく特例の記事で扱います。

8. 特許法・実用新案法・意匠法との比較

商標法の「更新」は四法の中で商標法だけの制度です。ただし「期間を過ぎて消えた権利を回復する」仕組みは、他の三法にも、特許料・登録料の追納の場面にあります。

項目商標法特許法実用新案法意匠法
回復の条文第21条第112条の2第33条の2第44条の2
何をしそびれた場面か存続期間の更新登録の申請特許料・割増特許料の追納登録料・割増登録料の追納登録料・割増登録料の追納
回復を求める者原商標権者原特許権者原実用新案権者原意匠権者
回復できない場合故意に申請をしなかったと認められる場合故意に納付しなかったと認められる場合故意に納付しなかったと認められる場合故意に納付しなかったと認められる場合
期間の定め方「経済産業省令で定める期間内」→商標法施行規則第10条第3項(2月/経過後6月)納付できるようになった日から2月。ただし追納期間の経過後1年が上限(特許法施行規則第69条の2第1項)納付できるようになった日から2月以内、かつ追納期間の経過後1年以内(実用新案法第33条の2第1項)e-Gov掲載の条文では、納付することができるようになった日から2月以内で、追納期間の経過後1年以内
回復の効果満了の時にさかのぼって更新されたものとみなす(第21条第2項)さかのぼって存続していたもの(又は初めから存在していたもの)とみなす(第112条の2第2項)さかのぼって存続していたもの又は初めから存在していたものとみなす(第33条の2第2項)さかのぼって存続していたものとみなす(第44条の2第2項)

〔表10〕権利の回復の四法比較(各法e-Gov、2026年9月参照。特許法 法令ID 334AC0000000121、実用新案法 334AC0000000123、意匠法 334AC0000000125)。商標の上限は追申請期間の経過後6月、特許・実用新案・意匠の上限は追納期間の経過後1年です。特許の具体的期間は特許法施行規則第69条の2第1項に定められています。

項目商標法第22条特許法第112条の3実用新案法第33条の3意匠法第44条の3
「物」そのものに効力が及ばない旨の項なし(1項のみ・行為だけを列挙)第1項:追納期間経過後〜回復の登録前に輸入・国内で生産・取得した物第1項:同様に、輸入・国内で製造・取得した物品第1項:同様に、物品・建築物・画像等
効力が及ばない行為第1号:指定商品・指定役務についての登録商標の使用
第2号:第37条各号に掲げる行為
第2項:第1号 当該発明の実施、第2号〜第5号 予備的行為・所持第2項:第1号 当該考案の実施、第2号・第3号第2項:第1号 当該意匠又はこれに類似する意匠の実施、第2号〜第7号
対象期間の始まり第20条第3項の期間の経過後第112条第1項の追納期間の経過後第33条第1項の追納期間の経過後第44条第1項の追納期間の経過後
対象期間の終わり回復の申請により更新した旨の登録がされる前特許権の回復の登録前実用新案権の回復の登録前意匠権の回復の登録前
用語「使用」「実施」「実施」「実施」

〔表11〕回復した権利の効力の制限の四法比較(各法e-Gov、2026年9月参照)。他の三法の号の詳細は要約です。商標法第22条には、他の三法の第1項に当たる「物」についての項がない点が条文構造上の違いです。

9. 整理:条文の文言で取り違えやすいところ

取り違えやすい点条文の文言根拠
申請期間の終わり「満了の日まで」第20条第2項
期間経過後の申請の期間法律は「経済産業省令で定める期間内」。6月は省令第20条第3項、商標法施行規則第10条第2項
消滅の時点「存続期間の満了の時にさかのぼつて」第20条第4項
回復の主体「原商標権者」第21条第1項
回復できない場合「故意に」申請をしなかったと認められる場合第21条第1項ただし書
割増登録料の額と例外登録料と「同額」。責めに帰することができない理由のときは不要第43条第1項・第2項
効力制限の期間の始まり「第二十条第三項に規定する…期間の経過後」第22条
手続の名前商標権は「申請」、防護標章は「出願」第20条第1項、第65条の3第1項

〔表12〕条文の文言の整理(本記事作成者による。出題の予想ではありません)。

試験での問われ方

第20条〜第23条は、期間・主体・効果の時点といった条文の文言がそのまま正誤の分かれ目になりやすい構造です。短答式では、第19条(存続期間)や商標権の移転・消滅とまとめて問われることがあります。論文式・口述で問われる場合に備えるなら、図4の流れ(通常→期間経過後→遡及消滅→回復→効力の制限)を条文番号つきで説明できるようにしておくのが一つの方法です。

令和8年度【商標】問7の肢2は、存続期間満了後6月以内に更新申請した場合の扱いを問います。誤りは、通常の申請期間を過ぎると満了時に直ちに消滅する、としている点です。第20条第3項の満了後6月の申請期間中は直ちに消滅せず、その期間内にも申請しなかった場合に、同条第4項により満了時にさかのぼって消滅したものとみなされます。同問の公式正解は5です。 公式問題・公式解答。
回復の可否は「故意でなかった」と述べるだけで決まるものではありません。期間内の更新申請と回復理由書、回復手数料の納付等を要します。特許庁は、手続をしないと決めて期限を過ぎ、その後の方針転換で回復を求める例を、救済が認められない可能性のある事例として示しています。特許庁の救済案内・6〜7。
レベル3のまとめ
  • 申請のルートは、通常(第20条第2項)/期間経過後(第20条第3項・省令で経過後6月)/回復(第21条)の3つ。期間経過後と回復では、登録料と同額の割増登録料が原則として必要(第43条第1項・第2項。例外あり)。
  • 回復は、原商標権者が、省令期間内(できるようになった日から2月、上限は第20条第3項の期間の経過後6月)に、回復理由書を添えて申請する。故意に申請しなかったと認められる場合は不可。
  • 回復した商標権の効力は、第20条第3項の期間の経過後〜回復による更新の登録前の、登録商標の使用(第1号)と第37条各号の行為(第2号)に及ばない。他の三法と違い「物」についての項はない。
  • 商標権の更新は「申請」で、審査官の審査の規定がない。防護標章の更新は「出願」で、第65条の4の審査がある。平成8年の一部改正で、使用チェックと実体審査を伴う更新出願制度が廃止されて更新申請制度になった経緯(商標法条約への対応)と、それに伴って更新登録の無効審判(旧第48条)とその除斥期間(旧第49条)が削除されたことは、逐条解説〔第22版〕1626頁・1742頁。
  • 第20条〜第23条は拒絶・異議・無効の理由ではない。国際登録に基づく商標権には第19条〜第22条・第23条第1項・第2項は適用されない(第68条の22第1項)。

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