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小学生でも分かる商標法|商標法第3条第1項 識別力 ― 「だれの商品か見分けられない名前」は登録できない

小学生でもわかる商標法 第02回「識別力」。だれの商品か見分ける力。

小学生でも分かる商標法 / A. 登録要件・商標 #2

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商標(しょうひょう)は、お店や商品の「目じるし」です。目じるしなのに、だれの商品か見分けられないのでは役に立ちません。商標法第3条第1項は、そういう「見分ける力のない目じるし」を6つのグループに分けて、登録できないと決めています。この記事では、はじめにパン屋さんのたとえでイメージをつかみ、次に条文の骨格を読み、最後に審査基準・判例・ほかの条文との関係まで進みます。

条文:商標法第3条第1項(柱書・第1号〜第6号)審査基準:商標審査基準〔改訂第17版〕 第1 第3条第1項(一〜八)参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

商標は「目じるし」。見分けられなければ意味がない

商標(しょうひょう)とは、お店や商品の「目じるし」のことです。名前やマークがこれにあたります。

パン屋さんが3けん、ならんでいるとします。どのお店も、ふくろに「パン」とだけ書いて売っていたら、どうなるでしょう。買った人は、どのお店のパンだったか思い出せません。「パン」という言葉は、パンそのものの名前だからです。

では、「ほしぞらパン」「ミナトベーカリー」「こぐま堂」と書いてあったらどうでしょう。これなら「きのうおいしかったのは、ほしぞらパンだ」と見分けられます。この「見分ける力」のことを、商標の世界では識別力(しきべつりょく)とよびます(法律の条文にある言葉ではなく、勉強や実務で使うよび名です)。

見分けられない目じるし 見分けられる目じるし パンパンパン Aのお店Bのお店Cのお店 どのお店のパンか、わからない → 目じるしとして登録できない ほしぞらパン ミナトベーカリー こぐま堂 Aのお店Bのお店Cのお店 「あのお店のパンだ」と見分けられる → 目じるしの役目をはたせる

図は左右にスクロールできます。

【図1】見分けられない目じるしと、見分けられる目じるし。店名はすべて架空の例です。

もう一つの理由 ― みんなが使いたい言葉を、ひとりじめさせない

「パン」という言葉を、1けんのパン屋さんだけが使えることにしたら、ほかのパン屋さんはこまります。自分の商品を「パン」とよべなくなるからです。「おいしい」「北海道産」のような説明の言葉も同じです。みんなが使いたい言葉は、だれか一人のものにしないほうがよい、という考え方もあります。

登録できない「6つのグループ」

法律は、見分ける力のない目じるしを6つのグループに分けています。

見分ける力がなくて登録できない、6つのグループ ① 商品そのものの名前 ② みんなが使う呼び名 ③ 産地や品質の説明だけ ④ ありふれた名字など ⑤ かんたんすぎるマーク ⑥ そのほか見分けられない パンに「パン」 えんぴつに「えんぴつ」 同じ仕事の人たちが、みんな 使うようになった呼び名 ジュースに「あまい」 おかしに「東京」 「山田」のように 同じものがたくさんある名前 「○」「△」だけ かな1文字だけ など 「毎日をたのしく!」のような 宣伝(せんでん)の文句 など 第1号(普通名称) 第2号(慣用商標) 第3号(特徴などの表示) 第4号(ありふれた氏又は名称) 第5号(簡単でありふれた標章) 第6号(そのほか)

図は左右にスクロールできます。

【図2】商標法第3条第1項第1号〜第6号のイメージ。例は架空または一般的な言葉です。各号の( )内は本記事での短いよび名で、条文の見出しではありません。

大事なのは「何の商品に使うか」

同じ言葉でも、使う商品によって答えが変わります。「パン」はパンの目じるしにはなれません。でも、もしえんぴつに「パン」という名前をつけたら、それはえんぴつそのものの名前ではありません。見分ける力は、いつも「その商品・そのサービスとの関係」で考えます。

もう一つ。目じるしを登録できるのは、自分の商売で使う(これから使うつもりの)目じるしだけです。使う気のない名前を集めておくことはできません。

① 商標=目じるし② 見分ける力=識別力③ ダメな目じるしは6グループ④ 「何の商品か」との関係で決まる
レベル1のまとめ
  • 商標は、お店や商品の「目じるし」。だれの商品か見分けられない目じるしは登録できません。
  • 理由は2つ。目じるしの役目をはたせないこと。そして、みんなが使いたい言葉をひとりじめさせないこと。
  • 登録できない目じるしは、6つのグループに分かれています。
  • 見分ける力は、「その商品・サービスとの関係」で考えます。
  • 登録できるのは、自分の商売で使う目じるしだけです。

※ 「6グループに当たれば登録できない」は、正確には条件があります。説明の言葉やありふれた名字などでも、長く使われて有名になり、見分ける力がついたものは登録できる場合があります(商標法第3条第2項)。また、書き方が特別な場合や、ほかの文字・図とくっついている場合は、あつかいが変わります(→レベル3)。
※ 理由を2つにまとめたのは分かりやすくするための単純化です。裁判所がどう述べたかは、レベル3で判決文を引用します。

LEVEL 2条文の骨格

まず原文を読む

商標法第3条第1項(原文) 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
一 その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
二 その商品又は役務について慣用されている商標
三 その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
四 ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
五 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標
六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。条の見出しは「(商標登録の要件)」。

第1項の最初の一文(号に入る前の部分)を「柱書(はしらがき)」とよびます。柱書は「原則として登録を受けられる」と言い、第1号〜第6号が「ただし、これは除く」というリストになっています。

柱書を部品に分ける

部品条文の文言意味(やさしく)
だれの「自己の業務に係る」出願する人自身の仕事に関係する、ということ。他人の仕事のための商標ではない。
何について「商品又は役務について」役務(えきむ)=サービスのこと。商標は、願書で指定した商品・サービスとセットで考える。
どうする「使用をする商標」実際に使っている、またはこれから使うつもりの商標(審査基準の説明はレベル3)。
例外「次に掲げる商標を除き」第1号〜第6号に当たるものは除かれる。
どうなる「商標登録を受けることができる」原則は「登録できる」。ただし、商標法第4条第1項など、ほかの条文の要件も別に満たす必要がある(例外あり)。

〔表1〕商標法第3条第1項柱書の分解。「意味」欄は本記事作成者による説明です。

6つの号の役割一覧

号条文の核になる言葉ひとことで言うと本記事でのよび名
第1号その商品又は役務の「普通名称」その商品・サービスそのものの一般的な名前普通名称
第2号その商品又は役務について「慣用されている商標」同業者のあいだで、みんなが使うようになった商標慣用商標
第3号産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、……その他の特徴、数量若しくは価格(役務は、提供の場所、質、……)商品・サービスの中身や特徴を説明する言葉特徴等の表示(講学上「記述的商標」とよばれることがあります)
第4号「ありふれた氏又は名称」たくさんある名字や、ありふれた会社名・店名ありふれた氏又は名称
第5号「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章」単純すぎて、しかもどこにでもあるマーク極めて簡単で、かつ、ありふれた標章
第6号「前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」第1号〜第5号には当たらないが、やはり見分けられないものその他識別力のない商標

〔表2〕商標法第3条第1項各号の役割。「需要者(じゅようしゃ)」は、その商品を買う人・サービスを受ける人のこと。「何人(なんぴと)か」は「だれか」の意味です。よび名は本記事での整理で、条文の用語ではないものを含みます。

「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる」はどの号にあるか

6つの号をよく見ると、長い決まり文句が入っている号と、入っていない号があります。ここは条文を読み比べるだけで分かる、骨格上の大事なちがいです。

号「普通に用いられる方法で表示する」「標章のみからなる」条文の形
第1号ありあり普通名称を+普通に用いられる方法で表示する+標章のみからなる商標
第2号なしなし慣用されている商標
第3号ありあり産地等を+普通に用いられる方法で表示する+標章のみからなる商標
第4号ありありありふれた氏又は名称を+普通に用いられる方法で表示する+標章のみからなる商標
第5号なしあり極めて簡単で、かつ、ありふれた+標章のみからなる商標
第6号なしなし需要者が……認識することができない商標

〔表3〕決まり文句の有無。商標法第3条第1項各号の原文を本記事作成者が読み比べて整理したもの。

第1号・第3号・第4号の決まり文句を3つの部品に分ける A 中身 「〜を」 B 書き方 C 構成 普通名称(第1号) 産地・品質などの特徴等(第3号) ありふれた氏又は名称(第4号) 何を表しているか 「普通に用いられる方法で 表示する」 ふつうの書体・ふつうの構成か 「標章のみからなる」 それだけでできているか 3つがそろって、はじめてその号に当たる。1つでも欠ければ、その号には当たらない Aが欠ける例 特徴を「間接的に」表す だけの言葉(第3号) Bが欠ける例 特殊なレタリング、特殊な構成 一般的でない当て字 Cが欠ける例 識別力のある文字や図形と 結合している

図は左右にスクロールできます。

  • 青緑のベタ塗り:決まり文句を分けた3つの部品(A・B・C)
  • 青緑の枠:その部品が何を見ているか
  • 橙の枠:その部品が欠ける例(その号には当たらない)

【図3】決まり文句の分解。下段の「欠ける例」は商標審査基準の記載(レベル3の表5・表6参照)をもとに本記事作成者が模式化したものです。欠けた場合でも、第6号など別の号に当たる可能性は残ります。

審査での流れ

flowchart TB
  A["商標登録出願"] --> B{"柱書
自己の業務に係る商品又は役務について
使用をする商標か"} B -- "はい" --> C{"第1号〜第6号の
どれかに当たるか"} B -- "いいえ" --> N1["柱書の要件を満たさない
拒絶の理由になる(商標法第15条第1号)"] C -- "当たる" --> D{"第3号〜第5号に当たる場合で
使用をされた結果、需要者が
見分けられるようになっているか
(商標法第3条第2項)"} C -- "当たらない" --> O1["第3条第1項はクリア
(商標法第4条第1項など他の要件の審査へ)"] D -- "はい" --> O2["商標法第3条第2項により
登録を受けることができる"] D -- "いいえ・対象外の号" --> N2["拒絶の理由になる
(商標法第15条第1号)"] style O1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style O2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style N1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:商標法第3条第1項の関門を通る結論
  • 赤の箱:拒絶の理由になる結論

【図4】商標法第3条第1項の審査の流れ(全体像)。商標法第3条・第15条の条文をもとに本記事作成者がフロー化したもの。商標法第3条第2項の詳細は別記事で扱います。

レベル2のまとめ
  • 柱書は「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」なら原則登録できる、と定めています。
  • 第1号〜第6号は、そこから除かれる商標のリストです。第6号は「前各号に掲げるもののほか」で始まる、受け皿の号です。
  • 「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる」という決まり文句は、第1号・第3号・第4号にあります。第5号は「標章のみからなる」だけ。第2号・第6号にはどちらもありません。
  • どの号も「その商品又は役務」との関係で判断します(第1号〜第3号は条文に「その商品」「その役務」と書かれています)。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 趣旨 ― 最高裁判所は第3号について何と言ったか

商標法第3条第1項第3号の趣旨について、最高裁判所の判決があります(通称「ワイキキ事件」。通称であり、判決文に付された名称ではありません)。

項目内容
裁判所・裁判年月日最高裁判所第三小法廷 昭和54年4月10日判決
事件番号・事件名昭和53年(行ツ)第129号 審決取消
裁判要旨(裁判所ウェブサイト)「商標法三条一項三号に掲げる商標は、これを商品に使用した場合その産地、販売地その他の特性につき誤認を生じさせるおそれのあるものである必要はない。」
判決理由(原文)「商標法三条一項三号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であつて、取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であつて、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである。」

〔表4〕商標法第3条第1項第3号に関する最高裁判決。出典:裁判所ウェブサイト 裁判例検索(2026年9月参照)。

ポイント:判決が挙げる理由は2つです。①なんぴとも使用を欲する表示なので、特定人の独占使用を認めるのは公益上適当でないこと(講学上「独占適応性」とよばれることがあります)。②多くの場合、自他商品識別力を欠くこと。また同判決は、産地等について誤認を生じさせるかどうかは商標法第4条第1項第16号の問題であって、第3条第1項第3号の問題ではない、と述べています。
この判決は第3号についての判断です。第1号・第2号・第4号〜第6号の趣旨まで同じ判決が述べているわけではない点に注意してください。
立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』(令和4年10月。以下「逐条解説〔第22版〕」)は、第3条について次のように説明しています(以下はいずれも要約であり、原文の引用ではありません)。
①二つの要件:本条に規定する登録の要件は二つに分類できる。第一の要件は、自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標であること、第二の要件は、いわゆる特別顕著性があること、すなわち本条第1項各号に掲げられているような商標でないことである。
②第3条と第4条の違い:第4条も商標の不登録事由を列挙しており同様に登録要件ではあるが、第3条が、自他商品・自他役務の識別力あるいは出所表示機能というような商標の本質的機能を問題にした、言わば商標登録に当たっての商標としての一般的・普遍的な適格性を問題とするのに対し、第4条は、そのような商標としての適格性があることを前提とした上で、主として公益的見地や私益の保護の立場から、すなわち政策的な見地から商標をみるのであり、言わば商標登録に当たっての具体的適格性を問題とする点で差異がある。ただし、法律的効果としては同じである。
③特別顕著性と各号の関係:特別顕著性の意味については旧法(大正10年法)の時点から見解が分かれていたが、それは旧法が「特別顕著」を具体的に規定せず解釈に委ねたことによる。現行法(昭和34年法)は「特別顕著」という字句を使わずに、その具体的内容を本条第1項各号に列挙した。すなわち現行法の立場は、特別顕著とは商標の持つ自他商品又は役務の識別力であり、商標登録の要件であるとして、法文に明定したものである。
④第6号と第1号〜第5号の関係:第6号は、第1号から第5号までの総括条項である。逆にいえば、第1号から第5号までは第6号を導き出すための例示的列挙ともいえるのであり、特別顕著の一般的な意味を明らかにしている。第6号が意味するのは、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができないことであって、必ずしも需要者がその商品又は役務が特定の者の業務に係るものであることを認識することができるかどうかを問題にしているのではない。同書は、商標の持つべき本質的機能としては、自他商品又は自他役務を区別し、それが一定の出所から流出したものであることを一般的に認識させることができれば十分である、と説明しています。
⑤各号の趣旨:第1号(普通名称)は、取引界において特定の者の業務に係る商品・役務であることが意識されないようになった名称には出所表示機能あるいは識別力がないことによる。第2号(慣用商標)は、同種類の商品・役務に関して同業者間に普通に使われるに至った結果、識別力を失ったことによる(旧法は慣用商標に類似する商標も一律に登録しないこととしていたが、類似商標が必ずしも同様とは限らないため、現行法は本号から「類似」を削り、個々に判断して第6号で読むこととした)。第3号は、これらの表示は通常、商品又は役務を流通過程・取引過程におく場合に必要な表示であるから何人も使用をする必要があり、かつ何人もその使用を欲するものであるから一私人に独占を認めるのは妥当ではなく、また、多くの場合に既に一般的に使用がされ、あるいは将来的に必ず一般的に使用がされるものであるから識別力を認めることができないことによる。第1号・第3号・第4号については、特殊な態様で表示した場合や商標の一部として含む場合はその適用を免れる、とも述べています。
出典:逐条解説〔第22版〕1538頁〜1544頁。逐条解説は立法担当者による解説であり、条文解釈を確定するものではありません。
ポイント:第3号の趣旨として逐条解説〔第22版〕が挙げる理由(何人も使用を必要とし独占は妥当でない/識別力を認められない)は、上の〔表4〕の最高裁判決が挙げる2つの理由と同じ方向です。ただし、判決は判旨として述べたものであり、逐条解説は立法担当者の説明である点で位置づけが異なります。

2. 柱書 ― 「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする」

商標審査基準〔改訂第17版〕 第1 二 第3条第1項柱書 の整理は次のとおりです(審査実務上の取扱いであり、条文そのものではありません)。

論点商標審査基準の記載(要約)
「自己の業務」出願人本人の業務に加え、出願人の支配下にあると実質的に認められる者の業務を含む。例:①出願人が総株主の議決権の過半数を有する株式会社の業務、②①に当たらないが資本提携の関係があり、事業活動が事実上出願人の支配下にある会社の業務、③出願人がフランチャイザーである場合の加盟店の業務。
「使用をする」現に使用している場合のみならず、将来において使用する意思(使用の意思)を有している場合を含む。
使用できない蓋然性が高い場合指定役務に係る業務を行うために法令上国家資格等が義務づけられており、願書の記載から出願人がその業務を行い得ることを確認できない場合は、柱書の拒絶理由を通知して確認する。
使用・使用の意思に合理的な疑義がある場合(ア)小売等役務:①総合小売等役務を個人が指定した場合、②法人が指定したが調査しても行っていると認められない場合、③類似の関係にない複数の小売等役務を指定した場合。(イ)それ以外:1区分内での商品・役務の指定が広い範囲に及んでいる場合。→ 柱書の拒絶理由を通知して確認する(出願当初から確認できる場合を除く)。
確認の単位・方法類似群ごとに明らかにする必要がある。業務を行っているか、行う予定があるかを通じて確認する(カタログ、店舗写真、取引書類、記事など)。
業務を行う予定出願後3〜4年以内(登録後3年に相当する時期まで)に使用を開始する意思がある場合に、予定があると判断する。使用の意思を明記した文書と、準備状況を示す書類の提出を求める。
団体商標団体のみが使用し構成員が使用をするものでないときも、柱書(商標法第7条第2項により読み替えて適用)を満たさないと判断する。
新しいタイプの商標・立体商標願書に「立体商標」「音商標」「色彩のみからなる商標」等と記載しても、願書に記載した商標や商標の詳細な説明から、そのタイプの商標を構成するものと認められない場合は、柱書を満たさないと判断する。
国際商標登録出願国際登録に係る商標が商標法第2条第1項に規定する商標に該当しないことが明らかなときは、柱書を満たさないと判断する。

〔表5〕柱書に関する審査基準の整理。出典:商標審査基準〔改訂第17版〕 第1 二 第3条第1項柱書(2026年9月参照)。「3〜4年以内」等の数値は同基準の記載どおりです。

ポイント:柱書は「識別力」の要件ではなく、「使用をする商標であること」の要件です。特許法第29条第1項柱書(産業上利用することができる発明)や意匠法第3条第1項柱書(工業上利用することができる意匠)と同じ位置にありますが、中身はまったくちがいます。商標は使うことで信用がたまる「目じるし」なので、使う意思のないものは登録の対象にならない、という構造です。柱書違反も「第3条」違反として、拒絶理由・異議理由・無効理由になります(後掲の表9)。

3. 各号の要件と審査基準の例

号審査基準の判断の要点審査基準・特許庁資料が挙げる例
第1号取引者において、その商品又は役務の一般的な名称であると認識されるに至っている場合に該当する。略称・俗称も含まれ得る。ローマ字又は仮名文字での表示は「普通に用いられる方法で表示する」に該当し、取引者において一般的に使用されていない漢字(当て字)での表示は該当しない。一般的な名称:商品「サニーレタス」に商標「サニーレタス」、役務「美容」に商標「美容」
略称:商品「スマートフォン」に「スマホ」、役務「損害保険の引受け」に「損保」
俗称:商品「塩」に「波の花」
第2号特許庁の解説ページは、もともとは他人の商品(役務)と区別することができる商標であったものが、同業者間で普通に使用されるようになったため区別することができなくなった商標、と説明する。指定商品「清酒」に「正宗」(特許庁ウェブサイト「出願しても登録にならない商標」)
第3号指定商品・指定役務に使用されたときに、取引者又は需要者が商品又は役務の特徴等を表示するものと一般に認識する場合に該当する。現実に特徴等の表示として用いられていることは要しない。特徴等を間接的に表示する場合は該当しない。図形・立体的形状で特徴等を表示する場合も該当する。長音符号:「コクナール」「スグレータ」「うまーい」等は長音符号を除いて考察
品質:商品「書籍」に「商標法」「小説集」
質:役務「放送番組の制作」に「ニュース」
色彩:商品「木炭」に「黒色」、商品「自動車用タイヤ」に「黒色」
音:商品「炭酸飲料」に「シュワシュワ」という泡のはじける音
第4号「ありふれた氏又は名称」とは、原則として、同種の氏又は名称が多数存在するものをいう。著名な地理的名称、ありふれた氏、業種名等やこれらを結合したものに、「商店」「屋」「堂」等や「株式会社」「Co.」等を結合したものは、原則として「ありふれた名称」に該当する(例外あり:国家名又は行政区画名+業種名+会社の種類名で、他に同一のものが現存しないと認められるとき)。ローマ字・仮名文字で表示しても該当する。著名な地理的名称:「日本」「東京」「薩摩」「フランス」等
業種名:「工業」「製薬」「製菓」「放送」「運輸」「生命保険」等
特許庁ウェブサイトの例:山田、スズキ、田中屋
第5号条文上、「極めて簡単」かつ「ありふれた」の両方が必要。特許庁ウェブサイト「出願しても登録にならない商標」の例:仮名文字1字、数字、ありふれた輪郭(○、△、□等)、ローマ字1字又は2字 など
第6号第1号〜第5号に当たらないが、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標(類型は表7)。宣伝広告・企業理念のみと認識されるもの、単位、元号、地模様、店名として多数使用されているもの 等

〔表6〕各号の要点と例。出典:商標審査基準〔改訂第17版〕 第1 三(第1号)、五(第3号)、六(第4号)、八(第6号)、および特許庁ウェブサイト「出願しても登録にならない商標」(2024年8月26日更新版)。いずれも2026年9月参照。例はすべて審査基準・特許庁資料に挙げられているものです。

第2号の慣用商標は、同業者が一般的に使うようになって、自他の商品・役務を区別できなくなったものです。審査基準は、清酒の「正宗」、カステラの「オランダ船」の図形、旅館の「観光ホテル」などを例示しています。第5号は「極めて簡単」と「ありふれた」の両方が必要で、数字、ローマ字1字又は2字、単純な図形などを原則的な例とします。ただし、特殊なデザインにした場合や、ローマ字2字を「&」で結合した場合など、同号に当たらない例もあります。字数だけで機械的に決めるものではありません。審査基準・第1四、第1七、PDF58・66〜68頁

4. 第3号をもう一歩 ― 産地・販売地、内容表示、形状

場面商標審査基準 第1 五 の取扱い(要約)
地理的名称取引者又は需要者が、その土地で指定商品が生産され若しくは販売され、又は指定役務が提供されているであろうと一般に認識するときは、産地・販売地・提供の場所に該当する。国家名その他著名な国内外の地理的名称からなる場合も該当する。
書籍・録音済みCD等の題号著作物の分類・種別等の一定の内容を明らかに認識させる場合は「品質」の表示。題号として広く認識され、かつ特定の内容を認識させる場合も同様。新聞、雑誌等の定期刊行物の題号は、特定の内容を認識させないため、該当しないと判断する。
歌手名・音楽グループ名商品「録音済みのコンパクトディスク」等について、需要者に歌手名又は音楽グループ名として広く認識されている場合は、「品質」を表示するものと判断する。
飲食物の提供国家名その他の地理的名称が特定の料理(フランス料理等)を表示するものと認められるときは、役務の「質」の表示。
商品等の形状(立体商標)指定商品の形状(包装の形状を含む)そのものの範囲を出ないと認識されるにすぎない場合は「形状」の表示。機能又は美感に資する目的のために採用された形状は、特段の事情のない限り、この範囲を出ない。特徴があっても、需要者が機能又は美感上の理由による変更・装飾と予測し得る範囲なら同じ。
小売等役務商標が取扱商品を表示する標章と認められるときは、役務の「提供の用に供する物」の表示。
「のみからなる」特徴等を表示する2以上の標章からなる商標は、原則として、第3号に該当する。

〔表7〕第3号の場面別の整理。出典:商標審査基準〔改訂第17版〕 第1 五 第3条第1項第3号(2026年9月参照)。

5. 第6号の類型

類型商標審査基準 第1 八 の取扱い(要約)
宣伝広告、企業理念・経営方針等宣伝広告又は企業理念・経営方針等を普通に用いられる方法で表示したものとしてのみ認識させる場合に該当。全体から生じる観念、指定商品・役務との関連性、取引の実情、構成及び態様等を総合的に勘案する。
単位等商慣習上、数量を表示する場合に一般的に用いられる表記(「メートル」「グラム」「Net」「Gross」等)として認識される場合に該当。
元号元号として認識されるにすぎない場合に該当。
国内外の地理的名称事業者の設立地・事業所の所在地、指定商品の仕向け地・一時保管地、指定役務の提供に際する立ち寄り地(港・空港等)等を表す地理的名称として認識される場合に該当。(産地・販売地・提供の場所なら第3号。)
地模様模様的に連続反復する図形等により構成され、単なる地模様として認識される場合に該当。ただし、構成に特徴的な形態が見いだされる等の事情があれば考慮する。
店舗等の形状(立体商標)指定商品・役務を取り扱う店舗等の形状にすぎないと認識される場合に該当。
店名として多数使用指定役務において店名として多数使用されていることが明らかな場合に該当。
色彩のみからなる商標第2号及び第3号に該当するもの以外は、原則として、第6号に該当すると判断する。
使用による識別力使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるに至っているものは、第6号に該当しないと判断する。

〔表8〕第6号の主な類型。出典:商標審査基準〔改訂第17版〕 第1 八 第3条第1項第6号(2026年9月参照)。項目の全部ではありません(小売等役務の取扱商品の産地等の表示、音商標の類型などは省略)。

ポイント:第6号は商標法第3条第2項の対象(第3号〜第5号)に入っていません。しかし、第6号はもともと「認識することができない商標」という要件なので、使用の結果として認識できるようになっていれば、第6号の要件そのものに当たらなくなります。審査基準もこの考え方で整理しています。「第6号は第3条第2項の適用がない」ことと、「第6号でも使用の事実は考慮される」ことを、混同しないようにしてください。

6. 号の当てはめの分岐図

flowchart TB
  S["出願商標と指定商品・指定役務を
セットで見る"] --> Q1{"その商品・役務の
普通名称か"} Q1 -- "はい" --> P1{"普通に用いられる方法で表示する
標章のみからなるか"} P1 -- "はい" --> R1["第1号に該当"] P1 -- "いいえ" --> Q6 Q1 -- "いいえ" --> Q2{"その商品・役務について
慣用されている商標か"} Q2 -- "はい" --> R2["第2号に該当"] Q2 -- "いいえ" --> Q3{"商品・役務の特徴等を
直接的に表示するか"} Q3 -- "はい" --> P3{"普通に用いられる方法で表示する
標章のみからなるか"} P3 -- "はい" --> R3["第3号に該当"] P3 -- "いいえ" --> Q6 Q3 -- "いいえ" --> Q4{"ありふれた氏又は名称か"} Q4 -- "はい" --> P4{"普通に用いられる方法で表示する
標章のみからなるか"} P4 -- "はい" --> R4["第4号に該当"] P4 -- "いいえ" --> Q6 Q4 -- "いいえ" --> Q5{"極めて簡単で、かつ、
ありふれた標章のみからなるか"} Q5 -- "はい" --> R5["第5号に該当"] Q5 -- "いいえ" --> Q6{"ほかに、需要者が何人かの業務に係る
商品・役務であることを
認識することができない事情があるか"} Q6 -- "はい" --> R6["第6号に該当"] Q6 -- "いいえ" --> OK["第1号〜第6号のいずれにも該当しない"] R3 --> X{"使用をされた結果
識別力を獲得したか
(商標法第3条第2項)"} R4 --> X R5 --> X X -- "はい" --> OK2["登録を受けることができる"] style OK fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style OK2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style R1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style R2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style R3 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style R4 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style R5 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style R6 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:商標法第3条第1項の関門を通る結論
  • 赤の箱:いずれかの号に該当するという結論

【図5】号の当てはめの分岐図。商標法第3条第1項・第2項の条文と商標審査基準をもとに本記事作成者がフロー化したもの。検討の順序は学習用の整理であり、審査でこの順に判断すると定められているわけではありません。1つの商標が複数の号に同時に当たることもあります。

7. 新しいタイプの商標・立体商標の「全体」判断

タイプ商標審査基準 第1 一 の取扱い(要約)
立体商標立体的形状に識別力を有する文字、図形等の標章を結合し、かつ、その標章が出所を表示する識別標識としての使用態様で用いられていると認識できる場合は、商標全体としても各号に該当しない。各号に該当する文字に単に厚みをもたせたにすぎない立体的形状のみからなる場合は、該当する。
動き商標・ホログラム商標・位置商標構成する文字や図形等の標章が各号に該当しない場合は、商標全体としても該当しない(位置商標は「原則として」)。該当するもののみからなる場合は、原則として、全体としても該当する。
色彩のみからなる商標2以上の色彩を組み合わせてなる場合は、商標全体として考察する。位置を特定したものは、その位置は考慮せず、色彩が各号に該当するか否かを判断する。
音商標音の要素と言語的要素(歌詞等)を総合して全体として考察する。言語的要素又は音の要素のいずれかが各号に該当しない場合は、全体としても該当しない。各号に該当する標章を単に読み上げたにすぎないと認識させる音商標は、該当する。

〔表9〕商標のタイプ別の判断。出典:商標審査基準〔改訂第17版〕 第1 一 第3条第1項全体(2026年9月参照)。

8. 判断時 ― いつの時点で見るか

商標法第3条第1項の条文には、判断の基準時を直接定める文言はありません。商標審査基準〔改訂第17版〕 第1 一 は、「本項に該当するか否かの判断時期は、査定時とする。なお、拒絶査定不服審判請求がなされた場合の判断時期は、審決時である。」としています(審査実務上の取扱い)。

flowchart LR
  A["商標登録出願"] --> B["審査
拒絶理由の通知"] B --> C["査定
★判断時=査定時"] C -- "拒絶査定" --> D["拒絶査定不服審判
★判断時=審決時"] C -- "登録査定" --> E["商標権の設定の登録"] E --> F["商標掲載公報の発行"] F --> G["登録異議の申立て
公報発行の日から2月以内
(商標法第43条の2)"] E --> H["商標登録の無効の審判
設定の登録の日から5年を経過した後は
請求できない(商標法第47条第1項)"] style C fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style D fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:★判断時となる場面(査定時・審決時)。【図4】【図5】の緑とは意味がちがいます
  • 白い箱:そのほかの手続の節目

【図6】商標法第3条第1項が問題になる場面の時系列。判断時(★)は商標審査基準の記載、期間は商標法第43条の2・第47条第1項の条文(2026年9月時点)による。本記事作成者がフロー化したもの。

特許法第29条第1項・意匠法第3条第1項 ― ものさしは「出願前に知られていないか」 出願 この範囲(出願前)に公然知られた等があるか 出願後のできごとは新しさに影響しない 商標法第3条第1項 ― ものさしは「その時点で、見分ける力があるか」 出願 査定(審査基準上の判断時) 新しい言葉かどうかは問わない この時点の取引者・需要者の認識で判断

図は左右にスクロールできます。

  • 藍の枠(上段):特許法第29条第1項・意匠法第3条第1項
  • 青緑の枠(下段):商標法第3条第1項
  • 太い縦線:そのものさしの基準となる時点(上段=出願、下段=査定)
  • 藍の帯:新しさを見る範囲(出願前)

【図7】「新しさ」のものさしと「見分ける力」のものさし。上段は特許法第29条第1項・意匠法第3条第1項の「出願前に」という文言、下段は商標審査基準の判断時の記載をもとに、本記事作成者が模式化したもの。

9. 拒絶理由・異議理由・無効理由・除斥期間との対応

場面根拠条文第3条違反は該当するか条文の文言・注意点
拒絶理由商標法第15条第1号該当「第三条、第四条第一項、……の規定により商標登録をすることができないものであるとき」。「第三条」とあるので、柱書違反も各号該当も含まれる。
異議理由商標法第43条の2第1号該当「何人も、商標掲載公報の発行の日から二月以内に限り」申立てができる。
無効理由商標法第46条第1項第1号該当「商標登録が第三条、……の規定に違反してされたとき」。
後発的無効理由商標法第46条第1項第6号非該当同号が挙げるのは商標法第4条第1項第1号から第3号まで、第5号、第7号又は第16号。第3条は挙げられていない。登録後に識別力を失っても、この号の無効理由にはならない(条文上の帰結)。
除斥期間商標法第47条第1項該当「商標登録が第三条、……の規定に違反してされたとき」は、無効審判は「商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない。」

〔表10〕商標法第3条違反と各手続の対応。出典:e-Gov法令検索(商標法第15条、第43条の2、第46条第1項、第47条第1項)、2026年9月参照。「二月」「五年」は条文の数値です。

ポイント:識別力のない商標が誤って登録され、設定の登録の日から5年が過ぎると、商標法第3条違反を理由とする無効審判は請求できなくなります。その場合でも、商標法第26条第1項により、普通名称や産地等を普通に用いられる方法で表示する商標などには商標権の効力が及びません(次の表)。「登録の入口(第3条第1項)」と「効力の出口(第26条第1項)」が対になっている、と整理すると覚えやすいです(この対の見方は学習上の整理です)。

10. 商標法第26条第1項との対応

第3条第1項(登録の場面)第26条第1項(効力が及ばない範囲)ちがい
第1号 普通名称第2号・第3号(普通名称を普通に用いられる方法で表示する商標)第26条は「当該指定商品若しくはこれに類似する商品」「類似する役務」まで対象を広げている。第26条には「のみからなる」の文言がなく、柱書に「他の商標の一部となつているものを含む。」とある。
第2号 慣用商標第4号(慣用されている商標)第26条は類似する商品・役務まで含む。
第3号 特徴等の表示第2号・第3号(産地、販売地、品質……を普通に用いられる方法で表示する商標)同上。なお、第3条第1項第3号の「形状」の括弧書き(包装の形状を含む。)は、第26条第1項第2号及び第3号でも同じとされている。
第4号 ありふれた氏又は名称第1号(自己の肖像、自己の氏名若しくは名称等を普通に用いられる方法で表示する商標)対応は部分的。第26条は「自己の」氏名・名称が対象で、「ありふれた」かどうかは問わない。
第5号 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章(直接対応する号なし)第26条第1項第6号で処理される余地がある。
第6号 その他第6号(需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標)第3条は「商標」そのものの性質、第26条は「使用の態様」に着目している。
(対応なし)第5号(商品等が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標)登録の場面では商標法第4条第1項第18号が対応する。

〔表11〕商標法第3条第1項と第26条第1項の対応。両条文の原文(e-Gov、2026年9月参照)を本記事作成者が読み比べて整理したもの。対応関係は学習上の整理で、条文に「対応する」と書かれているわけではありません。

11. 「救済」のルート ― 第3条第2項と地域団体商標

号商標法第3条第2項
(使用による識別力)
商標法第7条の2第1項
(地域団体商標)
根拠
第1号対象外例外とならない第3条第2項は「前項第三号から第五号まで」。第7条の2第1項は「第三条の規定(同条第一項第一号又は第二号に係る場合を除く。)にかかわらず」。
第2号対象外例外とならない
第3号対象例外となる第7条の2第1項の括弧書きで除かれているのは第1号・第2号に係る場合のみ。したがって第3号〜第6号に係る場合は、同項の要件を満たせば第3条の規定にかかわらず登録を受けることができる。
第4号対象例外となる
第5号対象例外となる
第6号対象外(ただし表8の「使用による識別力」の欄を参照)例外となる

〔表12〕号ごとの救済ルート。出典:e-Gov法令検索(商標法第3条第2項、第7条の2第1項柱書)、2026年9月参照。各制度の要件の詳細は関連記事で扱います。

12. 特許法・実用新案法・意匠法との比較

比較の観点特許法第29条実用新案法第3条意匠法第3条商標法第3条
条の見出し特許の要件実用新案登録の要件意匠登録の要件商標登録の要件
第1項柱書の主語「産業上利用することができる発明をした者」「産業上利用することができる考案であつて物品の形状、構造又は組合せに係るものをした者」「工業上利用することができる意匠の創作をした者」(人ではなく商標が主題)「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」
第1項各号の中身出願前に公然知られた発明 等(第1号〜第3号)出願前に公然知られた考案 等(第1号〜第3号)出願前に公然知られた意匠 等、及びこれらに類似する意匠(第1号〜第3号)普通名称、慣用商標、特徴等の表示 等(第1号〜第6号)
ものさし出願前に知られていないか同左同左需要者が出所を見分けられるか
第2項の役割容易に発明をすることができたときは特許を受けることができない(要件を加える)きわめて容易に考案をすることができたとき(要件を加える)容易に意匠の創作をすることができたとき(要件を加える)第3号〜第5号に該当しても、使用により識別力を獲得すれば登録を受けることができる(第1項をゆるめる)

〔表13〕四法の登録要件の比較。出典:e-Gov法令検索(特許法第29条、実用新案法第3条、意匠法第3条、商標法第3条)、2026年9月参照。「ものさし」「加える/ゆるめる」は本記事作成者による整理です。

ポイント:商標は「選択物」であって、新しく生み出したことを保護するものではありません。だから商標法第3条には「公然知られた」といった文言がなく、出願人がその言葉を最初に考えたかどうかも要件ではありません。特許法・意匠法の感覚で「新しい造語なら識別力がある」「昔からある言葉だから登録できない」と考えると誤ります。見るのは、その商品・役務との関係で、需要者が出所を見分けられるかどうかです。

13. まちがえやすい点(Q&A)

Q. 普通名称に当たる言葉を、特殊なロゴで出願したら第1号に当たりますか。
A. 商標審査基準は、標章の表示の書体や全体の構成等が、取引者において一般的に使用する範囲にとどまらない特殊なものである場合には、「普通に用いられる方法で表示する」に該当しないと判断する、としています。この場合、第1号には当たりません。ただし、登録されても、普通名称を普通に用いられる方法で表示する他人の商標には、商標法第26条第1項第2号・第3号により商標権の効力は及びません。
Q. 産地でも販売地でもない地名なら、第3号にも第6号にも当たりませんか。
A. そうとは限りません。商標審査基準は、需要者がその土地で生産・販売・提供されているであろうと一般に認識する場合に第3号、事業者の設立地・事業所の所在地、仕向け地、立ち寄り地等を表す地理的名称として認識される場合に第6号に該当すると整理しています。現実にその土地が産地であることは、第3号の要件ではありません(審査基準は、特徴等の表示として現実に用いられていることを要しないとしています)。
Q. 登録時には識別力があったが、その後に普通名称化した場合、無効審判で無効にできますか。
A. 商標法第46条第1項第1号は「違反してされたとき」、つまり登録の時点で第3条に違反していた場合の規定です。後発的な事由を定める同項第6号に、第3条は挙げられていません。したがって、条文上、登録後の普通名称化はこれらの号の無効理由になりません。この場面では商標法第26条第1項が働きます。

14. 改正との関係

改正の経緯(平成26年改正解説書・逐条解説〔第22版〕):現行の商標法第3条第1項第3号にある「その他の特徴」の文言は、平成26年の一部改正(平成26年法律第36号)で追加されたものです。特許庁「平成26年法律改正(平成26年法律第36号)解説書」第4章は、その理由を次のように説明しています(要約)。今回の改正により、商標の定義に色彩のみの商標及び音の商標を追加するとともに政令委任規定を追加することとしたことに鑑み、自他商品等の識別力がない商標として、①商品等が通常有する色彩や発する音、及び②今後政令で定める可能性のある商標に係る商品等の特徴についても網羅的に捕捉する必要があることから、第3条第1項第3号の対象として、その商品又は役務の「その他の特徴」を追加することとした。これに伴い、商品又は役務の「特徴」とは性質の異なるものと考えられる「数量」及び「価格」については、「特徴」には含まれないものとして規定することとした。逐条解説〔第22版〕も同旨の説明をしており、商品等が通常有する色彩の例として指定商品がタイヤの場合の黒の色彩、発する音の例として指定役務が焼き肉の提供の場合の肉を焼く音を挙げています。
また、第3号が立体的形状にも及ぶことは平成8年の一部改正によるもので、逐条解説〔第22版〕は、第3号の「商品の形状」には商品の立体的形状も含まれ、「形状」に「(包装の形状を含む。)」を追加することにより商品の包装の形状も同様に扱うこととし、「役務の提供の用に供する物」にはその外観を立体的形状として表したものも含まれることとした、と説明しています。
施行期日について、平成26年改正解説書は、同法が平成26年5月14日に公布された(平成26年法律第36号)こと、地域団体商標の登録主体の拡充に係る部分が同年8月1日に施行されたこと(平成26年政令第207号)、その他の部分(主施行)は改正法の公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされたこと、を示しています。実際の主施行日は同解説書には記載がありません(本記事の「新しいタイプの商標」の出願の受付開始日=平成27年4月1日は、特許庁ウェブサイトの説明によっています)。
出典:平成26年法律改正(平成26年法律第36号)解説書 第4章 162頁・165頁〜167頁、序章 8頁。逐条解説〔第22版〕1542頁〜1543頁。いずれも立法担当者による解説であり、条文解釈を確定するものではありません。
新しいタイプの商標も、その全体から識別力を判断します。動き商標は構成する標章と動きを、音商標は音楽的要素と言語的要素を合わせて判断します。ホログラム商標は変化前後の表示も考慮し、位置商標は標章と付す位置を合わせて判断します。色彩のみからなる商標では、色彩を付す位置を識別力の判断に取り込みません。審査基準・第1一2〜7、PDF25〜27頁 令和8年の受験案内は、各試験の実施日に施行されている法令を出題の基準としています。短答試験は2026年5月17日でした。本記事の現行法の確認日(2026年9月21日)とは区別します。受験案内・表紙と冊子2頁

試験での問われ方

試験種別学習用の問いの例本記事の対応箇所
短答式各号の文言の正確な理解(「普通に用いられる方法で表示する」「のみからなる」の有無)、第3条第2項の対象号、地域団体商標との関係、拒絶・異議・無効・除斥期間との対応、柱書(使用の意思)表3、表10、表12
論文式事例の商標がどの号に当たるかの当てはめ、趣旨(独占に適さない・識別力を欠く)、第3条第2項による反論、登録後の場面での第26条第1項表4、図5、表11
口述条文の文言を正確に言えるか、号ごとの例条文原文、表6

〔表14〕試験種別ごとの問われ方。本記事作成者による一般的な整理であり、出題を予想するものではありません。

令和8年度短答式【商標】2は、普通名称の略称、音の慣用商標、使用意思、普通名称と産地名の組合せ、立体的形状と文字の結合を扱います。公式正解は1(正しいもの1つ)です。 出典:公式問題(商標1〜10)、公式解答。

レベル3のまとめ
  • 最高裁判所第三小法廷 昭和54年4月10日判決(昭和53年(行ツ)第129号)は、第3号の趣旨として、①特定人による独占使用を認めるのを公益上適当としないこと、②多くの場合自他商品識別力を欠くこと、を挙げています。
  • 柱書の「使用をする」には、将来の使用の意思を含みます(商標審査基準)。柱書違反も「第3条」違反です。
  • 判断時は査定時、拒絶査定不服審判では審決時(商標審査基準)。条文に明文はありません。
  • 第3条違反は、拒絶理由(商標法第15条第1号)、異議理由(商標法第43条の2第1号)、無効理由(商標法第46条第1項第1号)で、除斥期間(商標法第47条第1項、設定の登録の日から5年)の対象です。後発的無効理由(商標法第46条第1項第6号)には含まれません。
  • 商標法第3条第2項の対象は第3号〜第5号。地域団体商標(商標法第7条の2第1項)で例外とならないのは第1号・第2号に係る場合です。
  • 特許法第29条・意匠法第3条が「新しさ」を見るのに対し、商標法第3条第1項は「見分ける力」を見ます。

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