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小学生でも分かる意匠法|意匠法第50条・第52条 審査に関する規定の準用・特許法の準用 ― 審判の「ルールブック」を審査の章と特許法から借りてくるしくみ

小学生でもわかる意匠法 33:審判の手続と・準用ルール(第50条・第52条)

小学生でも分かる意匠法 / D. 審判・訴訟 #33

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意匠法の「審判」の章は、拒絶査定不服審判・補正却下決定不服審判・意匠登録無効審判の3つを置いていますが、審判の進め方(請求書の書き方、審判官、審理、審決、費用など)を自分では書いていません。意匠法第52条は、それらを特許法の審判規定から「準用」して借りてきます。意匠法第50条は、拒絶査定不服審判の中で審査の規定(補正の却下・査定・拒絶理由通知)を使えるようにする条文です。特許法との最大の違いは、意匠法には訂正審判・訂正の請求・審決の予告・前置審査がないため、これらの規定が準用されない点です。

条文:意匠法第50条(第1項〜第3項)・第52条関連:意匠法第17条の2・第17条の3・第18条・第46条〜第49条・第51条・第58条・第59条、特許法第131条〜第170条、実用新案法第41条参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「審判」のルールブックは、じつは薄い

特許庁の中で行う裁判のような手続を審判(しんぱん)といいます。意匠法にも「審判」の章がありますが、開いてみると、書いてあるのは「どんなときに審判を請求できるか」(拒絶査定不服審判・補正却下決定不服審判・意匠登録無効審判)がほとんどで、「審判をどう進めるか」はほとんど書いてありません。

では、どう進めるのでしょう。意匠法は、自分で全部のルールを書くかわりに、特許法の審判の章から必要なページを「借りて」使います。これを法律の言葉で準用(じゅんよう)といいます。「特許法の○条を、意匠の審判でもそのまま使ってね」という意味です。

もう一つ、拒絶査定不服審判(「登録できません」と言われたことに不服を言う審判)では、審査のときに使ったルール(補正の却下、登録の査定、拒絶理由の通知)も、そのまま審判で使えると便利です。これは意匠法の中の審査の章から借りてきます。

意匠法「審判」の章 ・拒絶査定不服審判(第46条) ・補正却下決定不服審判(第47条) ・意匠登録無効審判(第48条) 進め方のページが足りない!

意匠法「審査」の章 補正の却下(第17条の2) 新出願(第17条の3) 登録の査定(第18条) 第50条で借りる

特許法「審判」の章 請求書の書き方・審判官 審理の進め方・審決 訴訟との関係・費用 第52条で借りる

借りないページ:訂正審判・訂正の請求・審決の予告・前置審査など (意匠には「請求項」や「明細書」がないので、直す=訂正するしくみが要らない)

橙のぬりつぶし=意匠法「審判」の章 橙の枠=ルールを借りてくる先 灰の破線枠=借りないもの

図は左右にスクロールできます。

【図1】意匠法の審判が、審査の章(第50条)と特許法の審判の章(第52条)からルールを借りてくる相関図。借りないページもある。凡例は図中に記載。(2026年9月時点の意匠法による)

借りるときに「名前を書きかえる」=読み替え

特許法のページをそのまま持ってくると、「特許」「特許無効審判」「訂正審判」など、意匠にはない言葉が出てきます。そこで、借りるときに「この言葉はこう読んでね」と書きかえます。これを読み替え(よみかえ)といいます。たとえば、特許法には「拒絶査定不服審判と訂正審判の費用は請求人が払う」と書いてありますが、意匠法には訂正審判がないので、「拒絶査定不服審判と補正却下決定不服審判の費用は請求人が払う」と読みかえます。

借りないページもある

特許では、特許をとったあとに「請求項」(発明の範囲を書いた文章)をせまく直す「訂正」というしくみがあります。でも意匠は、図面で表した「形」そのものが登録されるので、あとから文章を直すしくみがありません。だから、訂正審判・訂正の請求に関するページは、意匠法は借りません。同じ理由で、「審決の予告」(無効審判で、結論を出す前に「こうなりそうです」と知らせて訂正のチャンスをあげる制度)も借りません。

準用=ほかの条文を「そのまま使ってね」と借りること
第50条=審査の章から借りる(拒絶査定不服審判用)
第52条=特許法の審判の章から借りる
読み替え=借りるときに言葉を書きかえる
訂正・審決の予告・前置審査は借りない
レベル1のまとめ

  • 意匠法の審判の章は「どんな審判があるか」が中心で、進め方は特許法から借りる(第52条)。
  • 拒絶査定不服審判では、審査の章のルール(補正却下・査定・拒絶理由通知)も借りる(第50条)。
  • 借りるときに言葉を書きかえる(読み替え)。意匠にない制度(訂正など)のページは借りない。

※どの条文を借りて、どの条文を借りないのか、読み替えの中身、実用新案法とのちがいは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第50条第1項 ― 拒絶査定不服審判での補正却下・新出願(審査規定の準用)

意匠法第50条第1項(原文)
第十七条の二及び第十七条の三の規定は、拒絶査定不服審判に準用する。この場合において、第十七条の二第三項及び第十七条の三第一項中「三月」とあるのは「三十日」と、第十七条の二第四項中「補正却下決定不服審判を請求したとき」とあるのは「第五十九条第一項の訴えを提起したとき」と読み替えるものとする。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』1366頁(以下「青本〔第22版〕」)は、第50条について、拒絶査定不服審判に審査の章の規定のうち必要なものを準用する規定で、特許法でいえば第159条に相当するが、意匠法に特許法第159条をそのまま準用することはできないので特別の規定を設けたと説明しています。第1項については、昭和60年の一部改正で追加された規定であり、特許法・実用新案法では補正却下後の新出願制度が廃止され、意匠法では存置されたことから設けられたこと、平成5年の一部改正で特許法第53条(補正の却下)が改正され、特許法第159条第1項をそのまま準用できなくなったため、これに相当する規定を第1項に置いたことを説明しています(青本〔第22版〕1366〜1367頁)。

準用される規定 審査での内容(原文) 審判での読み替え
意匠法第17条の2第1項 「願書の記載又は願書に添付した図面、写真、ひな形若しくは見本についてした補正がこれらの要旨を変更するものであるときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。」 読み替えなし(審判では審判官が却下する、と読む※)
意匠法第17条の2第2項 「前項の規定による却下の決定は、文書をもつて行い、かつ、理由を付さなければならない。」 読み替えなし
意匠法第17条の2第3項 「第一項の規定による却下の決定があつたときは、決定の謄本の送達があつた日から三月を経過するまでは、当該意匠登録出願について査定をしてはならない。」 「三月」→「三十日」
意匠法第17条の2第4項 「審査官は、意匠登録出願人が第一項の規定による却下の決定に対し補正却下決定不服審判を請求したときは、その審判の審決が確定するまでその意匠登録出願の審査を中止しなければならない。」 「補正却下決定不服審判を請求したとき」→「第五十九条第一項の訴えを提起したとき」
意匠法第17条の3第1項 「意匠登録出願人が前条第一項の規定による却下の決定の謄本の送達があつた日から三月以内にその補正後の意匠について新たな意匠登録出願をしたときは、その意匠登録出願は、その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす。」 「三月」→「三十日」
意匠法第17条の3第2項・第3項 もとの出願のみなし取下げ(第2項)、適用を受けたい旨の書面の同時提出(第3項) 読み替えなし

〔表1〕意匠法第50条第1項が準用する審査規定と読み替え。※「審査官」を「審判官」と読むことは条文上の読替え規定にはありませんが、青本〔第22版〕1367頁は、拒絶査定不服審判中に審判官によってなされた補正却下(第50条第1項において準用する第17条の2第1項)という形で説明しています。

ポイント:審判の中で補正が却下されたとき、出願人は「補正却下決定不服審判」を請求するのではなく、意匠法第59条第1項の審決等に対する訴え(東京高等裁判所の専属管轄)を提起することになります(第50条第1項の読替え)。期間も審査の「三月」ではなく「三十日」です。青本〔第22版〕1367頁は、平成20年の一部改正で審査段階の期間が3月に拡大された際も、審判段階の補正却下については読替規定により従来どおり30日としたこと、その理由を、審判では審査と比べてより慎重な審理が行われるため、取消訴訟を行うかどうかの判断は比較的容易にできると考えられることから、決定の謄本の送達があった日から30日とする制度を維持したと説明しています。なお、審判官がした却下決定を特許庁の審判で争わせない理由そのものについての説明は、青本〔第22版〕第50条の〔趣旨〕には見当たりませんでした。

第50条第2項 ― 請求に理由があるときの「登録審決」

意匠法第50条第2項(原文)
第十八条の規定は、拒絶査定不服審判の請求を理由があるとする場合に準用する。ただし、第五十二条において準用する特許法第百六十条第一項の規定によりさらに審査に付すべき旨の審決をするときは、この限りでない。
意匠法第18条(原文・準用元)
審査官は、意匠登録出願について拒絶の理由を発見しないときは、意匠登録をすべき旨の査定をしなければならない。
特許法第160条第1項・第2項(原文・第52条で準用)
拒絶査定不服審判において査定を取り消すときは、さらに審査に付すべき旨の審決をすることができる。
前項の審決があつた場合における判断は、その事件について審査官を拘束する。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
flowchart TB
  A["拒絶査定不服審判の請求"] --> B{"請求に理由があるか"}
  B -- "はい(査定を取り消す)" --> D{"審判官がどちらを選ぶか"}
  D -- "自ら登録する" --> E["意匠登録をすべき旨の審決
(第50条第2項で第18条を準用)"] D -- "審査に戻す" --> F["さらに審査に付すべき旨の審決
(第52条で特許法第160条第1項を準用)"] F --> G["審査官は審決の判断に拘束される
(特許法第160条第2項)"] B -- "いいえ" --> C["請求は成り立たない旨の審決(拒絶審決)"] style E fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style C fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図2】拒絶査定不服審判の結論の分岐。「登録審決」と「差戻し審決」のどちらもあり得るので、第50条第2項にただし書が付いている。二択は「はい=下(査定を取り消す)/いいえ=右(拒絶審決)」に揃えた。凡例:緑=意匠登録に向かう審決/赤=拒絶が維持される審決。(2026年9月時点の意匠法による)

第50条第3項 ― 審判で新しい拒絶理由を見つけたとき

意匠法第50条第3項(原文)
特許法第五十条(拒絶理由の通知)の規定は、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。

審査のときは意匠法第19条で特許法第50条(拒絶理由の通知)を準用しています。審判で「査定の理由とは別の拒絶理由」を見つけたときも、いきなり拒絶審決にするのではなく、拒絶理由を通知して意見書を出す機会を与えなければならない、という規定です。逆にいえば、査定と同じ理由で拒絶審決をするときは、改めて通知する必要はありません(第50条第2項が通知を求めるのは査定と異なる拒絶理由を発見した場合。審判で新たに加わった判断内容が異なる理由に当たるかは、通知された内容に即して区別します)。

第52条 ― 特許法の審判規定の準用と読み替え

意匠法第52条(原文・前段)
特許法第百三十一条第一項及び第二項、第百三十一条の二(第一項第三号及び第二項第一号を除く。)から第百三十四条まで、第百三十五条から第百五十四条まで、第百五十五条第一項及び第二項、第百五十六条第一項、第三項及び第四項、第百五十七条、第百五十八条、第百六十条第一項及び第二項、第百六十一条並びに第百六十七条から第百七十条まで(審判の請求、審判官、審判の手続、訴訟との関係及び審判における費用)の規定は、審判に準用する。
意匠法第52条(原文・後段=読み替え)
この場合において、同法第百五十六条第一項中「特許無効審判以外の審判においては、事件が」とあるのは「事件が」と、同法第百六十一条中「拒絶査定不服審判」とあり、及び同法第百六十九条第三項中「拒絶査定不服審判及び訂正審判」とあるのは「拒絶査定不服審判及び補正却下決定不服審判」と読み替えるものとする。
準用される特許法の条文 見出し(e-Gov) ひとことで
第131条第1項・第2項 審判請求の方式 請求書の記載事項(第1項)、無効審判の請求理由の具体的特定(第2項)
第131条の2(第1項第3号・第2項第1号を除く) 審判請求書の補正 請求書の補正は要旨変更不可が原則。例外の一部を除く
第132条 共同審判 複数請求人の共同請求、共有者全員を被請求人に、共有者全員で請求、中断・中止の効力
第133条 方式に違反した場合の決定による却下 補正命令と却下決定
第133条の2 不適法な手続の却下 補正できない不適法な手続の却下
第134条 答弁書の提出等 請求書副本の送達、答弁書提出の機会、審尋
第135条 不適法な審判請求の審決による却下 補正できない不適法な請求は審決で却下
第136条〜第138条 審判の合議制、審判官の指定、審判長 3人又は5人の合議体、審判官の指定、審判長
第139条〜第144条の2 審判官の除斥・忌避、審判書記官 除斥・忌避の事由と手続、審判書記官
第145条〜第147条 審判における審理の方式、調書 口頭審理・書面審理、調書
第148条・第149条 参加 参加の要件・手続(査定系審判には適用しない→第161条)
第150条〜第152条 証拠調及び証拠保全、職権による審理 証拠調べ、職権審理
第153条・第154条 (見出しなし)、審理の併合又は分離 当事者が申し立てない理由の審理、併合・分離
第155条第1項・第2項 審判の請求の取下げ 審決確定まで取下げ可(第1項)、答弁書提出後は相手方の承諾が必要(第2項)
第156条第1項・第3項・第4項 審理の終結の通知 審理終結通知(第1項)、審理の再開(第3項)、審決までの期間(第4項)
第157条 審決 審決の方式・記載事項・謄本送達
第158条 拒絶査定不服審判における特則 審査でした手続は審判でも効力を有する
第160条第1項・第2項 (見出しなし) 差戻し審決と審査官への拘束力
第161条 (見出しなし) 答弁書・訂正の請求・参加の規定は査定系審判に適用しない
第167条 審決の効力 一事不再理(同一の事実・同一の証拠)
第167条の2 審決の確定範囲 審決は審判事件ごとに確定する
第168条 訴訟との関係 審判・訴訟手続の中止、侵害訴訟と審判の相互通知
第169条 審判における費用の負担 当事者系は審決で職権決定、査定系は請求人負担
第170条 費用の額の決定の執行力 費用額の確定決定は債務名義と同一の効力

〔表2〕意匠法第52条が準用する特許法の条文の一覧。「ひとことで」の欄は作成者の要約。見出しは e-Gov 法令検索の表示による(第153条・第159条〜第164条には見出しがない)。

読み替えの対象 特許法の原文 意匠法での読み方 なぜ
特許法第156条第1項 「審判長は、特許無効審判以外の審判においては、事件が審決をするのに熟したときは、審理の終結を当事者及び参加人に通知しなければならない。」 「審判長は、事件が審決をするのに熟したときは、審理の終結を…通知しなければならない。」 特許法の第156条第2項(無効審判で審決の予告後に訂正請求の機会を経てから終結する場合の規定)を意匠法は準用しないため、無効審判も含めて第1項だけで足りる
特許法第161条 「第百三十四条第一項から第三項まで、第百三十四条の二、第百三十四条の三、第百四十八条及び第百四十九条の規定は、拒絶査定不服審判には、適用しない。」 「…拒絶査定不服審判及び補正却下決定不服審判には、適用しない。」 意匠法には査定系審判が2種類あるので、答弁書・参加の規定を両方に適用しないようにする
特許法第169条第3項 「拒絶査定不服審判及び訂正審判に関する費用は、請求人の負担とする。」 「拒絶査定不服審判及び補正却下決定不服審判に関する費用は、請求人の負担とする。」 意匠法に訂正審判はなく、代わりに補正却下決定不服審判がある

〔表3〕意匠法第52条後段の読み替え3か所。「なぜ」欄は条文構造からの作成者の整理。

特許法 第六章 審判 第131条〜第170条 請求の方式/審判官/審理 審決/訴訟との関係/費用 ✕ 訂正の請求(第134条の2) ✕ 審決の予告(第164条の2) ✕ 前置審査(第162条〜第164条) ✕ 訂正審判の特則(第165条・第166条)

通す条文を選ぶ 第52条 +読み替え

意匠法の審判 拒絶査定不服審判 補正却下決定不服審判 意匠登録無効審判 請求の方式/審判官/審理 審決/訴訟との関係/費用 ✕ 訂正・予告・前置は通らない 第50条は、これとは別に意匠法「審査」の章から第17条の2・第17条の3・第18条・特許法第50条を借りる

緑の枠=条文のまとまり 六角形=第52条(通す条文を選ぶフィルタ) ✕ =意匠法に準用されない

図は左右にスクロールできます。

【図3】第52条を「フィルタ」として見た模式図。特許法の審判規定のうち、意匠に必要な条文だけを通し、通すときに言葉を読み替える。灰色の字に「✕」を付けたものが意匠法に準用されない規定(→〔表4〕)。凡例は図中に記載。(2026年9月時点の意匠法による)

レベル2のまとめ

  • 第50条第1項:拒絶査定不服審判に第17条の2(補正の却下)・第17条の3(補正後の新出願)を準用。「三月」→「三十日」、「補正却下決定不服審判を請求したとき」→「第五十九条第一項の訴えを提起したとき」に読み替え。
  • 第50条第2項:請求に理由があるときは第18条を準用して登録審決。ただし特許法第160条第1項の差戻し審決をするときは除く。
  • 第50条第3項:査定の理由と異なる拒絶理由を発見したときは特許法第50条(拒絶理由の通知)を準用。
  • 第52条:特許法第131条第1項・第2項〜第170条のうち列挙された条文を「審判に準用」。読み替えは第156条第1項・第161条・第169条第3項の3か所。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 準用「されない」特許法の規定と、その理由

受験生にとって重要なのは、準用される条文よりも「準用されない条文」と「その理由」です。意匠法第52条の列挙から抜けている条文を、特許法第131条〜第170条の範囲で整理します。

準用されない特許法の規定 内容 意匠法で準用されない理由(青本〔第22版〕1369〜1370頁) 意匠法に対応規定は
第131条第3項・第4項 訂正審判の請求書の記載方法、訂正した明細書等の添付 訂正審判がない なし
第131条の2第1項第3号 第133条第1項の補正命令に応じた補正は要旨変更でも可(ただし書の例外) 平成23年改正で新設された審判における訂正に係る規定であり、意匠法には訂正制度がない なし
第131条の2第2項第1号 無効審判での訂正の請求に伴う請求理由の補正の許可事由 訂正の請求がない なし
第134条の2・第134条の3 特許無効審判における訂正の請求、取消判決後の訂正の請求 訂正の請求がない なし
第155条第3項・第4項 請求項ごとの取下げ、訂正審判の取下げ 意匠法では二以上の意匠を包含する出願を認めなかったため なし
第156条第2項 無効審判で審決の予告後の訂正請求の機会を経た後の審理終結通知 平成23年改正で新設された訂正に係る規定であり、意匠法には訂正制度がない(同じ理由で審決の予告を導入する必要がないため、第1項を読み替える) 第156条第1項を読み替えて準用
第159条 拒絶査定不服審判への審査規定(特許法第53条・第50条・第51条等)の準用 意匠法に相当する規定がある 意匠法第50条
第160条第3項 差戻し審決をするときは第159条第3項(登録審決)を適用しない 意匠法に相当する規定がある 意匠法第50条第2項ただし書
第162条〜第164条 前置審査 昭和45年の一部改正で、特許法で採用された審査前置制度を意匠法では採用しないこととした なし
第164条の2 特許無効審判における特則(審決の予告) 訂正制度がないため、審決の予告の制度を導入する必要がない なし
第165条・第166条 訂正審判における特則 訂正審判がない なし

〔表4〕意匠法第52条が準用しない特許法の規定。「理由」欄は青本〔第22版〕第52条の〔趣旨〕(1369〜1370頁)の説明の要約。第131条第3項・第4項、第165条・第166条は訂正審判に関する規定、第131条の2第2項第1号・第134条の2・第134条の3は審判における訂正に係る規定として説明されている。

第131条の2第1項第3号の除外:青本〔第22版〕1370頁は、平成23年の一部改正で特許法に新設された第131条の2第1項第3号と第156条第2項は審判における訂正に係る規定であり、意匠法には訂正制度が設けられていないため準用から除外していると説明しています。

2. 意匠法が「自前で」持っている審判規定

特許法の審判の章のうち、審判の種類や効果に関する規定は、意匠法が自分で条文を置いています。第52条の準用範囲が「第131条第1項及び第2項」から始まり、第121条〜第130条を含まないのはこのためです。青本〔第22版〕1369頁は、特許法第121条〜第125条、第159条、第160条第3項は意匠法に相当する規定があるため準用されず、第126条〜第128条、第131条第3項・第4項、第165条・第166条は訂正審判に関する規定で、訂正審判がない意匠法には準用の余地がないと説明しています。

特許法(準用されない) 内容 意匠法の自前規定 意匠法固有の点
第113条〜第120条の8 特許異議の申立て なし 意匠法には登録異議の申立制度がない
第121条 拒絶査定不服審判 意匠法第46条 謄本送達日から3月以内(第46条第1項)
(対応なし) ― 意匠法第47条 補正却下決定不服審判は意匠法固有(特許法にはない)
第123条 特許無効審判 意匠法第48条 原則「何人も」請求可(第48条第2項)
第125条 無効審決の効果(遡及) 意匠法第49条 第4号の後発的無効理由は「該当するに至つた時」から
第125条の2・第125条の3 延長登録無効審判 なし 意匠権に存続期間の延長制度がない
第126条〜第128条 訂正審判 なし 訂正の対象(請求項・明細書)がない
(対応なし) ― 意匠法第51条 補正却下決定不服審判で決定を取り消す審決の判断は審査官を拘束する(特許法第160条第2項の補正却下版)

〔表5〕意匠法が自前で置いている審判規定と、意匠法にない制度。第46条〜第49条・第51条の詳細は各記事を参照。

意匠法第51条(原文・参考)
補正却下決定不服審判において決定を取り消すべき旨の審決があつた場合における判断は、その事件について審査官を拘束する。

3. 第50条第1項の読み替えが意味すること ― 審査と審判で「補正却下」の争い方が変わる

flowchart TB
  subgraph S1["審査の段階(第17条の2)"]
    A1["審査官が補正を却下"] --> B1{"出願人の選択(三月以内)"}
    B1 -- "決定に不服" --> C1["補正却下決定不服審判(第47条)"]
    B1 -- "補正後の意匠で出し直す" --> D1["補正後の意匠についての新出願(第17条の3)"]
    C1 --> E1["審判の審決確定まで審査は中止(第17条の2第4項)"]
  end
  subgraph S2["拒絶査定不服審判の段階(第50条第1項で準用)"]
    A2["審判官が補正を却下"] --> B2{"出願人の選択(三十日以内)"}
    B2 -- "決定に不服" --> C2["第59条第1項の訴え(審決等に対する訴え)"]
    B2 -- "補正後の意匠で出し直す" --> D2["補正後の意匠についての新出願(第17条の3の準用)"]
    C2 --> E2["訴えの判決確定まで審理は中止(第17条の2第4項の読み替え)"]
  end
  style C1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style C2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style D1 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F
  style D2 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図4】補正却下に対する争い方の対比。上下2段とも同じ形の枝分かれ(箱は各段とも5つ)で描いており、箱の数も分岐ラベルも同じで、差は「争う先」と「期間」だけ。審査段階は「補正却下決定不服審判・三月」、審判段階は「第59条第1項の訴え・三十日」。「三十日」は第17条の2第3項(査定禁止期間)と第17条の3第1項(新出願の期間)の両方に及ぶ。凡例:緑=却下の決定そのものを争うルート/紫=補正後の意匠で出し直すルート。(2026年9月時点の意匠法による)

ポイント:第47条の記事で扱った「補正却下決定不服審判と第17条の3の新出願の択一関係」は、審判段階でも同じ構造で成り立ちます。ただし選択肢の一方が「第59条第1項の訴え」に置き換わり、期間が「三十日」になります。短答式では「拒絶査定不服審判において補正が却下された場合、補正却下決定不服審判を請求することができる」という誤りの枝が作れる構造です。

4. 実用新案法第41条との対比 ― 三法のマトリクス

実用新案法第41条(原文)
特許法第百二十五条、第百三十二条から第百三十三条の二まで、第百三十五条から第百五十四条まで、第百五十六条第一項、第三項及び第四項、第百五十七条、第百六十七条、第百六十七条の二、第百六十九条第一項、第二項、第五項及び第六項並びに第百七十条の規定は、審判に準用する。この場合において、同法第百五十六条第一項中「特許無効審判以外の審判においては、事件が」とあるのは、「事件が」と読み替えるものとする。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000123)、2026年9月参照。
特許法の規定 意匠法第52条 実用新案法第41条 差が出る理由(作成者の整理)
第125条(無効審決の効果) 準用せず(意匠法第49条が自前) 準用 実用新案法は自前規定を置かず準用で処理
第131条第1項・第2項(審判請求の方式) 準用 準用せず(実用新案法第38条が自前) 実用新案法は無効審判のみなので自前で書く
第131条の2(請求書の補正) 準用(第1項第3号・第2項第1号を除く) 準用せず(実用新案法第38条の2が自前) 同上
第132条〜第133条の2(共同審判・却下) 準用 準用 共通
第134条(答弁書の提出等) 準用 準用せず(実用新案法第39条が自前) 実用新案法は評価書・特許出願との関係で独自の項がある
第134条の2・第134条の3(訂正の請求) 準用せず 準用せず 両法とも無効審判中の訂正の請求はない(実用新案は第14条の2の訂正)
第135条〜第154条(審決却下・審判官・審理・参加・証拠・職権審理・併合分離) 準用 準用 共通
第155条第1項・第2項(取下げ) 準用 準用せず(実用新案法第39条の2が自前) 実用新案法は自前規定
第156条第1項・第3項・第4項(審理終結通知) 準用(第1項読み替え) 準用(第1項読み替え) 共通。第2項は両法とも準用せず
第157条(審決) 準用 準用 共通
第158条・第160条第1項・第2項・第161条(査定系審判の特則) 準用(第161条読み替え) 準用せず 実用新案法には拒絶査定不服審判がない(無審査登録)
第162条〜第164条(前置審査)・第164条の2(審決の予告)・第165条・第166条(訂正審判の特則) 準用せず 準用せず 両法ともこれらの制度がない
第167条・第167条の2(一事不再理・確定範囲) 準用 準用 共通
第168条(訴訟との関係) 準用 準用せず(実用新案法第40条が自前) 実用新案法は自前規定
第169条(費用の負担) 準用(全項。第3項読み替え) 準用(第1項・第2項・第5項・第6項のみ) 実用新案法には査定系審判がないので第3項・第4項が不要
第170条(費用額の決定の執行力) 準用 準用 共通

〔表6〕特許法の審判規定の準用マトリクス(意匠法第52条/実用新案法第41条)。実用新案法の自前規定(第38条「審判請求の方式」・第38条の2「審判請求書の補正」・第39条「答弁書の提出等」・第39条の2「審判の請求の取下げ」・第40条「訴訟との関係」)の条番号は、e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000123、2026年9月参照)の条見出しで確認。

特許法 意匠法 実用新案法

特許異議の申立て 拒絶査定不服審判(前置審査) 特許無効審判(審決の予告) 延長登録無効審判 訂正審判・訂正の請求

(異議申立てなし) 拒絶査定不服審判(第46条) 意匠登録無効審判(第48条) 補正却下決定不服審判(第47条) (訂正なし)

(異議申立てなし) (無審査のため査定系なし) 実用新案登録無効審判(第37条) (補正却下決定不服審判なし) (訂正審判なし・第14条の2の訂正)

手続規定は 意匠法第52条/実用新案法第41条 で特許法から準用 審判の種類が少ないほど準用の範囲もせまくなる(実用新案法は査定系の特則を準用しない)

紫の実線枠=その法律にある審判・制度 ぬりつぶし=意匠法だけにある審判 灰の破線枠=ない制度

図は左右にスクロールできます。

【図5】三法の審判の種類と準用構造の比較図(3列とも同じ5段のレーン構造で並べ、差のある段だけが破線枠になる)。実用新案法の欄は実用新案法シリーズの記事で取得した条文構造による。凡例は図中に記載。(2026年9月時点の特許法・意匠法・実用新案法による)

5. 拒絶査定不服審判の流れの中で、第50条・第52条がどこで働くか

flowchart TB
  A["拒絶査定の謄本送達"] --> B["3月以内に審判請求
(第46条第1項)"] B --> C["請求書の方式審査
(特許法第131条・第133条 準用)"] C --> D["合議体の審理
(特許法第136条〜第157条 準用)
審査の手続は審判でも有効(第158条)"] D --> E{"補正は適法か(要旨変更でないか)"} E -- "はい(補正なし・適法)" --> G{"査定と異なる拒絶理由があるか"} E -- "いいえ(要旨変更)" --> F["補正却下(第17条の2 準用)
→ 30日 → 第59条の訴え or 新出願"] G -- "はい" --> H["拒絶理由通知(第50条第3項)"] H --> I["意見書・補正"] I --> J{"請求に理由があるか"} G -- "いいえ" --> J J -- "はい" --> L["登録審決(第50条第2項)
or 差戻し審決(特許法第160条)"] J -- "いいえ" --> K["拒絶審決"] K --> M["30日以内に第59条の訴え"] style L fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style K fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図6】拒絶査定不服審判の流れと、第50条・第52条の各準用規定が働く場面。二択は「はい=下(審理が進む主経路)/いいえ=右(却下・拒絶に向かう枝)」に揃えた。「3月」「30日」は意匠法第46条第1項、意匠法第59条第2項で準用する特許法第178条第3項の期間で、詳細は各記事を参照。凡例:緑=意匠登録に向かう審決/赤=拒絶が維持される審決。(2026年9月時点の意匠法による)

6. 意匠登録無効審判で第52条がどう働くか(当事者系審判の場面)

場面 働く特許法の規定(第52条で準用) 意匠での要点
請求書の記載 第131条第1項・第2項 第2項は、無効理由の根拠となる事実を具体的に特定し、証拠との関係を記載する規定。第52条による準用では、対応する意匠登録無効審判の請求書を対象として説明する。明文の読替え文言の引用ではない
請求書の補正 第131条の2(第1項第3号・第2項第1号を除く) 要旨変更は原則不可。審判長の許可による例外は第2項第2号(合理的理由+被請求人の同意)のみ。審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかであることも必要。請求書副本の送達前に提出した補正は第3項により許可不可
共有の意匠権 第132条第2項・第3項 共有者全員を被請求人に/共有者全員で請求
答弁書・審尋 第134条 副本送達・答弁書提出の機会・審尋
参加 第148条・第149条 当事者系審判なので参加可(査定系には第161条の読み替えで不適用)
取下げ 第155条第1項・第2項 答弁書提出後は相手方の承諾が必要
審理終結 第156条第1項(読み替え)・第3項・第4項 審決の予告はなく、熟したら終結通知
一事不再理 第167条 同一の事実・同一の証拠で当事者・参加人は再請求不可
侵害訴訟との関係 第168条 手続の中止、裁判所と特許庁長官の相互通知
費用 第169条第1項・第2項・第5項・第6項、第170条 審決で職権決定、費用額は特許庁長官が決定

〔表7〕意匠登録無効審判の各場面で働く第52条の準用規定。「意匠での要点」は作成者の整理。

7. 試験での問われ方

試験種別 問われ方の傾向 気をつける点
短答式 「意匠法に訂正審判/審決の予告/前置審査/登録異議の申立てがあるか」の正誤。「拒絶査定不服審判で補正が却下されたときに補正却下決定不服審判を請求できるか」(第50条第1項の読み替え)。「三十日」と「三月」の入れ替え 〔表4〕〔表5〕の「ない制度」を確実に。第50条第1項の読み替え2か所(三十日/第59条第1項の訴え)
論文式 拒絶査定不服審判の手続の流れ(補正却下→新出願、拒絶理由通知、登録審決・差戻し審決)を条文を挙げて説明させる 「意匠法第52条において準用する特許法第○条」の形で書く。差戻し審決の拘束力(特許法第160条第2項)
口述 「意匠法で訂正審判がないのはなぜか」「特許法の審判規定で意匠法に準用されないものを挙げよ」 理由(請求項・明細書がない)とセットで答える

〔表8〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

令和8年度意匠問1〜10の全文では、第50条・第52条の準用範囲自体を主題とする肢はありません。関連する問7の公式正解は5で、補正却下・補正後の新出願(第17条の2・第17条の3)を扱います。 令和8年度・問題PDF/公式解答PDF。肢の説明と公式の正解番号を区別して確認しています。
レベル3のまとめ

  • 準用されない特許法の規定=訂正審判(第131条第3項・第4項、第165条・第166条)、訂正の請求(第134条の2・第134条の3、第131条の2第2項第1号、第156条第2項)、審決の予告(第164条の2)、前置審査(第162条〜第164条)、請求項単位の取下げ(第155条第3項・第4項)。意匠法が自前で置くもの=第159条・第160条第3項(→意匠法第50条)。
  • 第50条第1項の読み替え:審判段階の補正却下は「三十日」「第59条第1項の訴え」。
  • 実用新案法第41条は査定系審判の特則(第158条・第160条・第161条)と第169条第3項・第4項を準用せず、第125条・第168条は準用(意匠法は自前)。
  • 意匠法には登録異議の申立て・延長登録無効審判・訂正審判がなく、補正却下決定不服審判が固有。

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