小学生でも分かる実用新案法 / D. 審判・訴訟 #27
同じ実用新案権をめぐって、特許庁の「審判」と裁判所の「訴訟」が同時に進むことがあります。第40条は、そのときに片方が待つ(中止する)しくみと、裁判所と特許庁がおたがいに知らせ合う(通知する)しくみを定めています。第41条は、審判の進め方のルールを特許法からまとめて借りてくる(準用する)条文です。「何を借りて、何を借りていないか」がこの記事の中心です。
レベル2条文の骨格 ― 第40条の6つの項と、第41条が準用する特許法の条文リスト
レベル3要件・例外・試験での問われ方 ― 準用マップ、準用されていない条文の理由、特許法第168条との対比
LEVEL 1イメージでつかむ
同じけんかを、2人の先生が見ている
学校で、AさんとBさんがけんかをしたとします。担任の先生(特許庁)は「そもそもAさんの言い分は正しいのか」を調べています。いっぽう、校長先生(裁判所)は「BさんはAさんにあやまるべきか」を決めようとしています。2人の先生が同じけんかを、別々の部屋で調べているのです。
実用新案の世界でも同じことが起きます。特許庁では「この実用新案登録は無効ではないか」という審判が、裁判所では「相手は権利をおかしたのか」という訴訟(裁判)が、同時に進むことがあります。
図は左右にスクロールできます。
特許庁(審判)
裁判所(訴訟)
知らせ合い(通知)
同じ実用新案権を見ていることを表す線
①矢印の順番
【図1】同じ実用新案権を、特許庁(審判)と裁判所(訴訟)が同時に見ている。第40条は、両者が「待つ」「知らせ合う」ためのルール。①が裁判所から特許庁長官への通知(第40条第3項)、②が特許庁長官から裁判所への通知(同条第4項)にあたる。※説明の都合上、第40条第5項・第6項のやりとりは省略した(→【図3】)。
「待つ」ことと「知らせ合う」こと
2人の先生がバラバラに結論を出すと、こまったことになります。担任の先生が「Aさんの言い分はまちがいだった」と決めたのに、校長先生が「Bさんはあやまりなさい」と言ってしまうかもしれません。
そこで第40条は、2つのことを決めています。
- 待つ:必要なときは、審判も訴訟も、相手の結論が出るまで手続を止めて(中止して)待てる。
- 知らせ合う:裁判所は「権利をおかしたかどうかの裁判が始まったよ」と特許庁に知らせ、特許庁は「その権利について審判があるよ・ないよ」と裁判所に知らせる。
いわば、2人の先生のあいだの連絡帳です。
審判のルールは「特許法の本」から借りる
もう一つ、第41条という条文があります。実用新案の審判の進め方は、じつは実用新案法の中にはあまり書いてありません。そのかわり、「特許法の第○条と第○条を、実用新案の審判でもそのまま使います」と書いてあります。これを準用(じゅんよう)といいます。図書館で特許法という本を借りてきて、必要なページだけ使うイメージです。
ただし、全部のページを借りているわけではありません。「実用新案には無い手続」のページは借りていません。どのページを借りて、どのページを借りていないかは、レベル2・レベル3で見ていきます。
- 第40条:審判(特許庁)と訴訟(裁判所)が同時に進むとき、「待つ」ことと「知らせ合う」ことのルール。
- 第41条:審判の進め方のルールを、特許法から借りてくる(準用する)条文。借りていないページもある。
※「待つ」のは「できる」であって「しなければならない」ではありません。「知らせる」のは「しなければならない」です。正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。
LEVEL 2条文の骨格
第40条の構造(全6項)
| 項 | 主語 | 内容(要旨) | できる/するものとする |
|---|---|---|---|
| 第1項 | 審判(審判官) | 必要があると認めるときは、他の審判の審決が確定するまで、又は訴訟手続が完結するまで、審判の手続を中止できる | できる(裁量) |
| 第2項 | 裁判所 | 訴えの提起、仮差押命令・仮処分命令の申立てがあった場合に、必要があると認めるときは、審決が確定するまで訴訟手続を中止できる | できる(裁量) |
| 第3項 | 裁判所→特許庁長官 | 実用新案権・専用実施権の侵害に関する訴えの提起があったこと、及びその訴訟手続が完結したことを通知 | するものとする |
| 第4項 | 特許庁長官→裁判所 | 第3項の通知を受けたときに、その実用新案権についての審判の請求の有無を通知。その後の請求書の却下の決定・審決・請求の取下げも通知 | するものとする |
| 第5項 | 裁判所→特許庁長官 | 審判の請求があった旨の通知を受けた場合に、訴訟で第30条で準用する特許法第104条の3第1項の攻撃防御方法を記載した書面が通知前に既に提出され、又は通知後に最初に提出されたときは、その旨を通知 | するものとする |
| 第6項 | 特許庁長官→裁判所 | 第5項の通知を受けたときに、訴訟記録のうち審判官が必要と認める書面の写し(電磁的訴訟記録の場合は出力した書面)の送付を求めることができる | できる |
〔表1〕実用新案法第40条の項ごとの内容(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。第1項・第2項が「中止」、第3項〜第6項が「通知・記録送付」。
審判において必要があると認めるときは、他の審判の審決が確定し、又は訴訟手続が完結するまでその手続を中止することができる。
訴えの提起又は仮差押命令若しくは仮処分命令の申立てがあつた場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、審決が確定するまでその訴訟手続を中止することができる。
裁判所は、実用新案権又は専用実施権の侵害に関する訴えの提起があつたときは、その旨を特許庁長官に通知するものとする。その訴訟手続が完結したときも、また同様とする。
特許庁長官は、前項に規定する通知を受けたときは、その実用新案権についての審判の請求の有無を裁判所に通知するものとする。その審判の請求書の却下の決定、審決又は請求の取下げがあつたときも、また同様とする。
裁判所は、前項の規定によりその実用新案権についての審判の請求があつた旨の通知を受けた場合において、当該訴訟において第三十条において準用する特許法第百四条の三第一項の規定による攻撃又は防御の方法を記載した書面がその通知前に既に提出され、又はその通知後に最初に提出されたときは、その旨を特許庁長官に通知するものとする。
特許庁長官は、前項に規定する通知を受けたときは、裁判所に対し、当該訴訟の訴訟記録のうちその審判において審判官が必要と認める書面の写し又は当該訴訟の電磁的訴訟記録に記録されている事項のうちその審判において審判官が必要と認めるものを出力した書面の送付を求めることができる。
第1項・第2項の「待つ」(中止)の関係
中止は、どちらか一方の手続を止めるものです。「審判を止めて訴訟の結果を待つ」場合(第1項)と、「訴訟を止めて審決の確定を待つ」場合(第2項)を、同じ形の2本のレーンで並べると次のようになります。
図は左右にスクロールできます。
特許庁:審判のレーン
裁判所:訴訟のレーン
●時点(できごと)
▭点線の枠の帯=中止している期間
中止の終わりとなる時点をそろえる線
【図2】中止の2つの場合を同じ形の2レーンで並べたもの。(a)は審判を中止して「他の審判の審決の確定」または「訴訟手続の完結」を待つ場合(第40条第1項)、(b)は訴訟を中止して「審決の確定」を待つ場合(第40条第2項)。いずれも「必要があると認めるとき」に「できる」(裁量)であり、両方を同時に中止することを示す図ではない。※説明の都合上、中止の取消しや再開の手続は省略した。※時間軸は縮尺なし。
第3項〜第6項の「連絡帳」の流れ
sequenceDiagram
participant C as 裁判所
participant J as 特許庁長官
C->>J: ①侵害訴訟が提起された旨を通知(第40条第3項前段)
J->>C: ②その実用新案権についての審判の請求の有無を通知(第40条第4項前段)
Note over C,J: 以後、請求書の却下の決定・審決・請求の取下げがあれば同様に通知(第40条第4項後段)
C->>J: ③第30条で準用する特許法第104条の3第1項の書面が提出された旨を通知(第40条第5項)
J-->>C: ④訴訟記録のうち審判官が必要と認める書面の写しの送付を求める(第40条第6項)
C->>J: ⑤訴訟手続が完結した旨を通知(第40条第3項後段)
図は左右にスクロールできます。
実線=「通知するものとする」(第40条第3項〜第5項)
点線=「求めることができる」任意(第40条第6項)
①やりとりの順番
【図3】実用新案法第40条第3項〜第6項の通知の往復。裁判所→特許庁長官(第3項・第5項)、特許庁長官→裁判所(第4項・第6項)が交互に並ぶ。④だけが「求めることができる」(任意)で、他は「通知するものとする」。※説明の都合上、通知の宛先内部の事務手続は省略した。
第41条:特許法の審判規定の準用
特許法第百二十五条、第百三十二条から第百三十三条の二まで、第百三十五条から第百五十四条まで、第百五十六条第一項、第三項及び第四項、第百五十七条、第百六十七条、第百六十七条の二、第百六十九条第一項、第二項、第五項及び第六項並びに第百七十条の規定は、審判に準用する。この場合において、同法第百五十六条第一項中「特許無効審判以外の審判においては、事件が」とあるのは、「事件が」と読み替えるものとする。
| 準用される特許法の条文 | 内容(見出し・要旨) |
|---|---|
| 第125条 | 無効審決が確定したときの効果(権利は初めから存在しなかったものとみなす。ただし書あり) |
| 第132条〜第133条の2 | 共同審判(第132条)、方式に違反した場合の決定による却下(第133条)、不適法な手続の却下(第133条の2) |
| 第135条〜第154条 | 不適法な審判請求の審決による却下(第135条)から、審判の合議体、審判官の除斥・忌避、審理の方式、参加、証拠調べ・証拠保全、職権審理、審理の併合・分離(第154条)まで |
| 第156条第1項・第3項・第4項 | 審理の終結の通知(第1項)、審理の再開(第3項)、通知後20日以内の審決(事件が複雑なとき等は例外)(第4項) |
| 第157条 | 審決(審決の方式) |
| 第167条 | 確定審決の効力(同一の事実・同一の証拠に基づく再請求の禁止) |
| 第167条の2 | 審決の確定範囲 |
| 第169条第1項・第2項・第5項・第6項 | 審判における費用の負担 |
| 第170条 | 費用の額の決定の執行力 |
〔表2〕実用新案法第41条が準用する特許法の条文リスト(条文番号は第41条の原文どおり。内容欄は現行特許法の原文を照合した要旨)。
第156条第1項の読替え
特許法第156条第1項は「特許無効審判以外の審判においては」という限定がついています。特許法では、特許無効審判だけ第2項(審決の予告と結びついた終結通知)で別扱いするからです。実用新案法には審決の予告がないので、この限定を外して「事件が審決をするのに熟したときは」と読み替えます。
審判長は、特許無効審判以外の審判においては、事件が審決をするのに熟したときは、審理の終結を当事者及び参加人に通知しなければならない。
| 文言 | |
|---|---|
| 特許法第156条第1項(原文) | 審判長は、特許無効審判以外の審判においては、事件が審決をするのに熟したときは、審理の終結を当事者及び参加人に通知しなければならない。 |
| 実用新案法第41条による読替え後 | 審判長は、事件が審決をするのに熟したときは、審理の終結を当事者及び参加人に通知しなければならない。 |
〔表3〕実用新案法第41条後段による特許法第156条第1項の読替え。太字部分が置き換わる。
- 第40条第1項・第2項:審判・訴訟の中止は「必要があると認めるとき」に「できる」(裁量)。
- 第40条第3項〜第6項:裁判所と特許庁長官の間の通知(侵害訴訟の提起・完結、審判請求の有無、第104条の3の書面)と、訴訟記録の送付要求。
- 第41条:特許法第125条・第132条〜第133条の2・第135条〜第154条・第156条第1項・第3項・第4項・第157条・第167条・第167条の2・第169条第1項・第2項・第5項・第6項・第170条を審判に準用。第156条第1項は「特許無効審判以外の審判においては、事件が」→「事件が」と読替え。
LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方
1. 準用マップ ― 特許法第125条〜第170条のどこを借り、どこを借りていないか
実用新案法第41条を読むときのコツは、「準用されている条文」より「飛ばされている条文」に注目することです。飛ばされている条文には、それぞれ理由があります。
| 特許法の条文 | 内容 | 実用新案法第41条での扱い | 飛ばされている理由(本記事作成者の整理) |
|---|---|---|---|
| 第125条 | 無効審決確定の効果 | 準用 | ― |
| 第131条、第131条の2 | 審判請求の方式、請求書の補正 | 準用なし | 実用新案法第38条・第38条の2に書き下ろしがある(第45条の読替え文が「実用新案法第三十八条第一項、同法第三十八条の二第一項本文」を指すことから確認できる) |
| 第132条〜第133条の2 | 共同審判、方式違反の却下、不適法な手続の却下 | 準用 | ― |
| 第134条 | 答弁書の提出等 | 準用なし | 実用新案法第39条に書き下ろしがある(第39条第1項「答弁書を提出する機会を与えなければならない」を確認済み) |
| 第134条の2、第134条の3 | 特許無効審判における訂正の請求 | 準用なし | 実用新案法には無効審判中の訂正の請求の制度がない(訂正は第14条の2による。審判便覧51-23) |
| 第135条〜第154条 | 審決却下、合議体、除斥・忌避、審理、参加、証拠調べ、職権審理、併合・分離 | 準用 | ― |
| 第155条 | 審判の請求の取下げ | 準用なし | 実用新案法第39条の2に書き下ろしがある(後述) |
| 第156条第1項・第3項・第4項 | 審理終結の通知、審理の再開、審決の期限 | 準用(第1項は読替え) | ― |
| 第156条第2項 | 特許無効審判における審理終結の通知(審決の予告をしないとき等) | 準用なし | 審決の予告(第164条の2)が実用新案法にないため、第2項の場面が生じない |
| 第157条 | 審決 | 準用 | ― |
| 第158条〜第163条 | 拒絶査定不服審判の特則(審査の効力、審査規定の準用、審査官による前置審査 等) | 準用なし | 実用新案は無審査登録であり、拒絶査定不服審判が存在しない |
| 第164条の2 | 審決の予告 | 準用なし | 実用新案法に審決の予告の制度がない |
| 第165条、第166条 | 訂正審判の特則 | 準用なし | 実用新案法に訂正審判がない(訂正は第14条の2。審判便覧51-23) |
| 第167条、第167条の2 | 確定審決の効力、審決の確定範囲 | 準用 | ― |
| 第168条 | 訴訟との関係 | 準用なし | 実用新案法第40条に書き下ろしがある |
| 第169条第1項・第2項・第5項・第6項、第170条 | 費用の負担、費用額決定の執行力 | 準用(第169条第3項・第4項を除く) | 第3項は拒絶査定不服審判・訂正審判の請求人負担、第4項はその共同負担 |
〔表4〕準用マップ。「準用」「準用なし」は実用新案法第41条の原文から確定。「理由」欄は現行特許法・実用新案法と審判便覧51-23を照合した整理。
図は左右にスクロールできます。
準用する条文(実線の枠・塗りつぶし)
準用しない条文(点線の枠・×)
実線の矢印=準用する
点線の矢印+×=準用しない
【図4】準用の地図。左の実用新案法第41条から、準用する特許法の条文群(上)と、第41条に挙げられていない条文群(下)に分けた。上段は第41条の原文どおりの範囲、下段は〔表4〕で「準用なし」と整理した条文(拒絶査定不服審判の特則である第158条〜第163条、審決の予告の第164条の2、訂正審判の特則である第165条・第166条など)。第156条は第1項・第3項・第4項が準用され、第2項は準用されない(第1項は読替えあり→〔表3〕)。準用されない理由は〔表4〕を参照。※説明の都合上、本記事の〔表2〕〔表4〕に挙げた条文だけを図示した。
flowchart TD
A["特許法の審判規定を実用新案の審判で使いたい"] --> B{"特許法の条文を借りる必要があるか?
(実用新案法に書き下ろしがない)"}
B -- "はい" --> D{"その手続が実用新案に
存在するか?"}
B -- "いいえ" --> C["○ 実用新案法の条文を使う
例:第38条 請求の方式、第39条 答弁書、第39条の2 取下げ、第40条 訴訟との関係"]
D -- "はい" --> F["○ 第41条で準用
例:第125条、第132条〜第133条の2、第135条〜第154条、第156条第1項・第3項・第4項、第157条、第167条、第167条の2、第169条第1項・第2項・第5項・第6項、第170条"]
D -- "いいえ" --> E["× 準用されない
例:第158条〜第163条 拒絶査定不服審判、第164条の2 審決の予告、第156条第2項"]
F --> G{"文言をそのまま
使えるか?"}
G -- "はい" --> H["○ そのまま準用"]
G -- "いいえ" --> I["○ 読替えて準用
第156条第1項:特許無効審判以外の審判においては、事件が → 事件が"]
style C fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
style E fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F
style F fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
style H fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
style I fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
○ その条文を使える(準用する・実用新案法の条文を使う)
× 準用されない
読替えて準用する
はい下へ進む
いいえ右へ出る(結論)
【図5】「この特許法の条文は実用新案の審判で使えるか」の分岐図。判断は「はい」を下、「いいえ」を右にそろえた。準用の有無は実用新案法第41条の原文どおり。読替えは第41条後段による(→〔表3〕)。
2. 第155条が準用されない理由 ― 実用新案法第39条の2の書き下ろし
特許法第155条(審判の請求の取下げ)は準用されていません。実用新案法には第39条の2として取下げの規定が独自に置かれているからです。両者を並べると、実用新案法だけにある項が見えてきます。
審判の請求は、審決が確定するまでは、取り下げることができる。
審判の請求は、審決が確定するまでは、取り下げることができる。
審判の請求人が前条第五項の規定による通知を受けたときは、前項の規定にかかわらず、その通知を受けた日から三十日以内に限り、その審判の請求を取り下げることができる。
審判長は、実用新案登録無効審判の請求があつた場合において、その請求後にその実用新案登録に基づいて特許法第四十六条の二第一項の規定による特許出願がされたときは、その旨を請求人及び参加人に通知しなければならない。
| 項目 | 特許法第155条 | 実用新案法第39条の2 |
|---|---|---|
| 取下げの時期(原則) | 審決が確定するまで(第1項) | 審決が確定するまで(第1項) |
| 答弁書提出後の取下げ | 相手方の承諾が必要(第2項) | 相手方の承諾が必要(第2項) |
| 実用新案登録に基づく特許出願(特許法第46条の2)がされた場合 | 規定なし | 第39条第5項の通知を受けた日から30日以内に限り、相手方の承諾なく取り下げられる(第3項)。期間は特許法第4条を準用し「特許庁長官」を「審判長」と読替え(第4項)。責めに帰することができない理由による救済あり(第5項:理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内で、期間経過後6月以内) |
| 請求項ごとの取下げ | 可能(第3項) | 可能(第6項) |
〔表5〕特許法第155条と実用新案法第39条の2の対比。実用新案法第39条の2第3項〜第5項は、実用新案登録に基づく特許出願がされた場合の特則で、特許法にはない。
3. 特許法第168条(訴訟との関係)との対比
実用新案法第40条は、特許法第168条と同じ構造(全6項)です。特許法第168条の原文は本記事では取得していないため、要旨レベルでの対比にとどめます。
| 項 | 特許法第168条(要旨) | 実用新案法第40条(原文で確認) | 違い |
|---|---|---|---|
| 第1項 | 審判手続の中止。「特許異議の申立てについての決定」の確定も中止の終期に含まれる | 他の審判の審決確定、又は訴訟手続の完結まで中止できる | 実用新案法には特許異議の申立てがないので、その文言がない |
| 第2項 | 裁判所による訴訟手続の中止 | 同旨 | ― |
| 第3項 | 侵害訴訟の提起・完結の通知 | 「実用新案権又は専用実施権の侵害に関する訴え」 | 権利の名称のみ |
| 第4項 | 審判請求の有無等の通知 | 同旨 | ― |
| 第5項 | 特許法第104条の3第1項の書面の提出の通知 | 「第三十条において準用する特許法第百四条の三第一項」 | 実用新案法では第30条を通じて準用される点が文言に表れる |
| 第6項 | 訴訟記録の写し等の送付要求 | 同旨 | ― |
〔表6〕特許法第168条と実用新案法第40条の対比。双方の現行条文の原文を照合した要旨。
4. 要件の整理 ― 「できる」と「するものとする」
| 項 | 要件 | 効果 | 裁量か義務か |
|---|---|---|---|
| 第40条第1項 | 審判において「必要があると認めるとき」 | 他の審判の審決確定又は訴訟手続の完結まで中止 | 「できる」(裁量) |
| 第40条第2項 | 訴えの提起・仮差押命令・仮処分命令の申立てがあり、「必要があると認めるとき」 | 審決確定まで訴訟手続を中止 | 「できる」(裁量) |
| 第40条第3項 | 侵害に関する訴えの提起/訴訟手続の完結 | 特許庁長官へ通知 | 「するものとする」 |
| 第40条第4項 | 第3項の通知を受けたとき/却下決定・審決・取下げ | 裁判所へ審判請求の有無等を通知 | 「するものとする」 |
| 第40条第5項 | 審判請求ありの通知を受け、かつ第104条の3第1項の書面が「通知前に既に提出され、又は通知後に最初に提出された」とき | 特許庁長官へ通知 | 「するものとする」 |
| 第40条第6項 | 第5項の通知を受けたとき | 審判官が必要と認める書面の写し等の送付を裁判所に求める | 「できる」 |
〔表7〕実用新案法第40条の各項の要件・効果と、文末表現(裁量か義務か)の整理。
5. 試験での問われ方
| 試験種別 | 問われ方の傾向 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 短答式 | 第41条で準用される特許法の条文の有無(例:第155条、第164条の2、第158条〜第163条が準用されているか)、第40条の中止が「できる」か「しなければならない」か | 「準用なし」の条文について、実用新案法に書き下ろしがあるのか(第39条の2)、制度自体がないのか(審決の予告、拒絶査定不服審判)を区別する |
| 論文式 | 実用新案登録無効審判と侵害訴訟が並行する事例で、第40条の中止・通知、第30条で準用する特許法第104条の3との関係を書かせる | 第40条第5項が「第30条において準用する特許法第104条の3第1項」と書いている点を条文どおりに示す |
| 口述 | 「実用新案法で審判の請求の取下げはどこに規定されているか」「特許法第156条第1項はどう読み替えられるか」 | 第39条の2第3項の30日の特則と、第156条第1項の読替え文言を口頭で言えるようにする |
〔表8〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。
- 第41条の準用リストは「飛ばされた条文」で覚える:第131条・第131条の2・第134条(実用新案法第38条・第38条の2・第39条に書き下ろし)、第155条(第39条の2に書き下ろし)、第156条第2項・第164条の2(審決の予告がない)、第158条〜第163条(拒絶査定不服審判がない)、第168条(第40条に書き下ろし)。
- 第156条第1項の読替え:「特許無効審判以外の審判においては、事件が」→「事件が」。
- 第39条の2第3項:実用新案登録に基づく特許出願がされた旨の通知(第39条第5項)を受けた日から30日以内は、相手方の承諾なく取り下げられる(特許法第155条にはない特則)。
- 第40条の中止は裁量(「できる」)、通知は「するものとする」。第5項の書面は「第30条において準用する特許法第104条の3第1項」のもの。
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