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小学生でも分かる実用新案法|実用新案法第38条〜第39条 審判の請求・請求書の補正・答弁書 ― 「もの申す手紙」と「返事の手紙」のルール

小学生でもわかる実用新案法:審判の請求と答弁(38条39条)

小学生でも分かる実用新案法 / D. 審判・訴訟 #26

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実用新案登録無効審判は、「この実用新案登録はおかしい」と特許庁に申し立てる手続です。実用新案法第38条は申立ての手紙(審判請求書)に何を書くか、第38条の2はその手紙をあとから書き直せるか(補正)、第39条は相手方に手紙のコピー(副本)を届けて返事(答弁書)を書く機会を与えることを定めています。特許法第131条・第131条の2・第134条とほぼ同じ骨格ですが、「実用新案法の審判は無効審判だけ」「訂正は訂正審判ではなく第14条の2の訂正」という違いが条文の細部に表れています。

条文:実用新案法第38条、第38条の2、第39条関連:実用新案法第14条の2、第37条、第41条、特許法第131条、第131条の2、第134条参照時点:2026年9月

目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「その登録、おかしいよ」と言いたいときの手紙

実用新案は、特許庁が中身をくわしく調べないまま登録されます(→実用新案法第14条の記事)。だから、あとから「この登録は本当はダメなはずだ」と思う人が出てきます。そういう人は、特許庁に「もの申す手紙」を出して、登録を取り消してもらう手続(実用新案登録無効審判)を申し立てることができます。

この「もの申す手紙」のことを、法律では審判請求書(しんぱんせいきゅうしょ)といいます。手紙には、決まったことを書かなければいけません。「だれが、だれに対して、どの登録について、どうしてほしいのか、その理由は何か」です。

先生がコピーを相手に渡し、相手が返事を書く

学校でたとえてみましょう。クラスのAさんが「Bさんが持っている『発明バッジ』は、本当はBさんが考えたものじゃない」と先生に手紙を出したとします。先生は、Aさんの手紙をこっそり読んで一人で決めたりはしません。手紙のコピーをBさんに渡して、「反論があれば、いつまでに書いてね」と言うのがルールです。

特許庁でも同じです。審判を進める責任者を審判長(しんぱんちょう)といいます。審判長は、請求書の副本(ふくほん=コピー)を相手方(被請求人=訴えられた側)に届けて、答弁書(とうべんしょ=返事の手紙)を出すチャンスを与えなければなりません(実用新案法第39条第1項)。

請求人 「もの申す」側(Aさん) 審判長 進行役(先生) 被請求人 実用新案権者(Bさん) ①請求書を出す ②請求書の副本を送達 ③答弁書を出す ④答弁書の副本を送達 両方の言い分がそろってから、審判長たち(合議体)が審理する 「相手の言い分を聞かずに決めない」がこの条文の大きな考え方

図は左右にスクロールできます。

凡例
請求人(「もの申す」側)の行為
審判長の行為
被請求人(実用新案権者)の行為
①矢印の順番

【図1】三者の相関図。請求人が出した請求書のコピー(副本)を審判長が被請求人に届け(実用新案法第39条第1項)、被請求人の答弁書のコピーを審判長が請求人に届ける(同条第3項)。※説明の都合上、補正・訂正があったときの枝(第38条の2、第39条第2項)は省略した(→【図2】)。

手紙を出したあとに「書き直し」はできる?

手紙を出したあとで、「字をまちがえた」「証拠の名前を書きわすれた」と気づくことがあります。小さな直しは補正(ほせい)といって、できます。

でも、「理由をまるごと別のものに取りかえる」ような大きな直し(法律では要旨の変更といいます)は、原則としてできません。相手は最初の手紙を読んで返事を準備しているのに、途中で中身がガラッと変わったら、ずるいし、話し合いが長引いてしまうからです。ただし、審判長が「これなら許す」と決めた場合だけ、大きな直しもできることがあります(実用新案法第38条の2)。

レベル1のまとめ

  • 「登録を取り消してほしい」と申し立てる手紙が審判請求書。だれが・どの登録を・なぜ、を書く(第38条)。
  • 審判長は、手紙のコピー(副本)を相手方に届け、答弁書を出すチャンスを与える(第39条)。
  • 手紙を出したあとの書き直し(補正)は、中身をガラッと変える「要旨の変更」は原則ダメ。審判長が許可したときだけOK(第38条の2)。

※「どんなときに審判長が許可できるか」「副本を送る前は許可できない」「訂正があったときの扱い」など、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。


LEVEL 2条文の骨格

前提:実用新案法の「審判」は無効審判だけ

実用新案法で請求できる審判は、実用新案法第37条第1項の実用新案登録無効審判です。特許法のような拒絶査定不服審判(審査がないので存在しない)や訂正審判(実用新案法では第14条の2の「訂正」という別の手続になっている)はありません。このことが、第38条第2項や第38条の2第2項第1号の書きぶりに表れています。

第38条 審判請求の方式(請求書に書くこと)

実用新案法第38条第1項審判を請求する者は、次に掲げる事項を記載した請求書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 当事者及び代理人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 審判事件の表示
三 請求の趣旨及びその理由
実用新案法第38条第2項前項第三号に掲げる請求の理由は、実用新案登録を無効にする根拠となる事実を具体的に特定し、かつ、立証を要する事実ごとに証拠との関係を記載したものでなければならない。
項・号 内容(要旨) たとえ
第1項柱書 審判を請求する者は、請求書を特許庁長官に提出する 手紙の宛先は「特許庁長官」
第1項第1号 当事者・代理人の氏名(名称)と住所(居所) だれが、だれに対して
第1項第2号 審判事件の表示 どの登録についての、どの審判か
第1項第3号 請求の趣旨とその理由 どうしてほしいのか、なぜか
第2項 第3号の「請求の理由」は、無効の根拠となる事実を具体的に特定し、立証を要する事実ごとに証拠との関係を記載する 「なんとなくダメ」ではなく、事実と証拠をひもづけて書く

〔表1〕実用新案法第38条の構造(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。

第38条の2 審判請求書の補正

実用新案法第38条の2第1項前条第一項の規定により提出した請求書の補正は、その要旨を変更するものであつてはならない。ただし、次項の規定による審判長の許可があつたときは、この限りでない。
実用新案法第38条の2第2項審判長は、前条第一項第三号に掲げる請求の理由の補正がその要旨を変更するものである場合において、当該補正が審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかなものであり、かつ、次の各号のいずれかに該当する事由があると認めるときは、決定をもつて、当該補正を許可することができる。
一 第十四条の二第一項の訂正があり、その訂正により請求の理由を補正する必要が生じたこと。
二 前号に掲げるもののほか当該補正に係る請求の理由を審判請求時の請求書に記載しなかつたことにつき合理的な理由があり、被請求人が当該補正に同意したこと。
実用新案法第38条の2第3項前項の補正の許可は、その補正に係る手続補正書が次条第一項の規定による請求書の副本の送達の前に提出されたときは、これをすることができない。
実用新案法第38条の2第4項第二項の決定又はその不作為に対しては、不服を申し立てることができない。
項 内容(要旨) ポイント
第1項 請求書の補正は要旨を変更してはならない。ただし第2項の審判長の許可があれば可 原則禁止・例外は「許可」のみ
第2項 審判長は、①「請求の理由」の補正で、②要旨変更にあたり、③審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかで、かつ④第1号(第14条の2第1項の訂正により補正の必要が生じた)または第2号(記載しなかったことに合理的理由があり、被請求人が同意)のいずれかにあたるとき、決定で許可できる 許可できるのは「請求の理由」の補正だけ
第3項 手続補正書が請求書の副本の送達前に提出されたときは、許可できない 副本送達がタイミングの基準
第4項 第2項の決定・不作為には不服申立てができない 許可しても、しなくても争えない

〔表2〕実用新案法第38条の2の構造(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。

第39条 答弁書の提出等

実用新案法第39条第1項審判長は、審判の請求があつたときは、請求書の副本を被請求人に送達し、相当の期間を指定して、答弁書を提出する機会を与えなければならない。
実用新案法第39条第2項審判長は、前条第二項の規定により請求書の補正を許可するときは、その補正に係る手続補正書の副本を被請求人に送達し、相当の期間を指定して、答弁書を提出する機会を与えなければならない。ただし、被請求人に答弁書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるときは、この限りでない。
実用新案法第39条第3項審判長は、第一項若しくは前項本文の答弁書を受理したとき、又は実用新案登録無効審判が特許庁に係属している場合において第十四条の二第一項若しくは第七項の訂正があつたときは、その副本を請求人に送達しなければならない。
実用新案法第39条第4項審判長は、審判に関し、当事者及び参加人を審尋することができる。
実用新案法第39条第5項審判長は、実用新案登録無効審判の請求があつた場合において、その請求後にその実用新案登録に基づいて特許法第四十六条の二第一項の規定による特許出願がされたときは、その旨を請求人及び参加人に通知しなければならない。
項 だれが 何を だれに 義務か裁量か
第1項 審判長 請求書の副本を送達し、相当の期間を指定して答弁書提出の機会を与える 被請求人 「なければならない」(義務)
第2項 審判長 補正を許可するとき、手続補正書の副本を送達し、答弁書提出の機会を与える(例外あり:機会を与える必要がない特別の事情) 被請求人 原則義務・ただし書で例外
第3項 審判長 答弁書を受理したとき、または無効審判係属中に第14条の2第1項・第7項の訂正があったとき、その副本を送達 請求人 「なければならない」(義務)
第4項 審判長 当事者・参加人を審尋(しんじん=質問して答えさせる) 当事者・参加人 「できる」(裁量)
第5項 審判長 請求後に、その実用新案登録に基づく特許出願(特許法第46条の2第1項)がされたとき、その旨を通知 請求人・参加人 「なければならない」(義務)

〔表3〕実用新案法第39条の構造(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。

手続の流れ(請求 → 副本送達 → 答弁 → 審理)

flowchart TD
  subgraph LA["請求人"]
    A["審判請求書を特許庁長官に提出
(第38条第1項・第2項)"] P["請求の理由の補正(要旨変更)
(第38条の2第2項第1号)"] end subgraph LB["審判長・審判官(特許庁)"] B["請求書の副本を被請求人に送達
相当の期間を指定(第39条第1項)"] D["答弁書の副本を請求人に送達
(第39条第3項)"] D2["訂正の副本を請求人に送達
(第39条第3項)"] Q["補正を許可し手続補正書の副本を送達
答弁の機会(第39条第2項)"] end subgraph LC["被請求人(実用新案権者)"] C["答弁書を提出"] T["訂正をする
(第14条の2第1項、同項第2号の期間制限)"] end A --> B B --> C C --> D B -. "任意" .-> T T --> D2 D2 -. "任意" .-> P P --> Q D --> E Q --> E E["○ 審理へ(審尋は第39条第4項)
以降は第41条で準用する特許法の規定"] style A fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style P fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style C fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style T fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style B fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F style D fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F style D2 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F style Q fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F style E fill:#EEF0F4,stroke:#22303F,color:#22303F,stroke-width:2px

図は左右にスクロールできます。

凡例
請求人がする手続
審判長(特許庁)がする手続
被請求人がする手続
必須の手続
任意の手続(するときだけ進む枝)

【図2】実用新案登録無効審判の入口の流れを、手続をする主体で3つのレーンに分けたもの。請求(第38条)→請求書の副本送達(第39条第1項)→答弁書→答弁書の副本送達(第39条第3項)→審理、が必須の流れ。点線は「訂正をしたときの枝」で、訂正(第14条の2第1項)→副本送達(第39条第3項)→請求の理由の補正(第38条の2第2項第1号)→手続補正書の副本送達・答弁の機会(第39条第2項)とつながる。終端は下段の「審理へ」の1つ。※説明の都合上、参加(第41条で準用する特許法第148条等)・審尋の往復は省略した。

レベル2のまとめ

  • 第38条:請求書は特許庁長官に提出。当事者等・事件の表示・請求の趣旨と理由を記載し、理由は無効の根拠事実を具体的に特定し証拠との関係を記載する。
  • 第38条の2:請求書の補正は要旨変更が原則禁止。「請求の理由」の補正に限り、遅延のおそれがないことが明らかで、①第14条の2第1項の訂正で必要が生じた、または②合理的理由+被請求人の同意、のとき審判長が決定で許可できる。副本送達前は許可できず、決定・不作為には不服申立てできない。
  • 第39条:審判長は請求書の副本を被請求人に送達し答弁の機会を与える(第1項)。補正許可時も同様(第2項、例外あり)。答弁書や訂正の副本は請求人に送達(第3項)。審尋ができる(第4項)。請求後に実用新案登録に基づく特許出願がされたら請求人・参加人に通知(第5項)。


LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 要旨変更となる補正が許可されるための要件(第38条の2第2項)

# 要件 条文上の根拠 備考
① 補正の対象が「請求の理由」(第38条第1項第3号)であること 第38条の2第2項本文 当事者の表示や請求の趣旨の要旨変更は、この許可の対象にならない
② その補正が要旨を変更するものであること 第38条の2第2項本文 要旨変更でなければ、そもそも許可なしに補正できる(第1項本文の反対解釈)
③ 審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかであること 第38条の2第2項本文 「明らか」まで求められている
④-1 第14条の2第1項の訂正があり、それにより請求の理由を補正する必要が生じたこと 第38条の2第2項第1号 特許法では「第134条の2第1項の訂正の請求」に相当
④-2 審判請求時に記載しなかったことに合理的な理由があり、かつ被請求人が同意したこと 第38条の2第2項第2号 「合理的理由」と「同意」の両方が必要
⑤ 手続補正書が請求書の副本の送達後に提出されたこと 第38条の2第3項 送達前に提出された補正書は許可できない
— 許可は決定による。決定・不作為への不服申立ては不可 第38条の2第2項・第4項 効果・争い方

〔表4〕要旨変更補正の許可要件の整理(条文から直接読み取れる範囲)。①〜③と⑤は必須、④は1号・2号のいずれか。

flowchart TD
  S["請求書の補正をしたい"] --> Q1{"要旨を変更する
補正か?"} Q1 -- "はい" --> Q2{"『請求の理由』の
補正か?"} Q1 -- "いいえ" --> OK1["○ 許可なしに補正できる
(第38条の2第1項本文)"] Q2 -- "はい" --> Q3{"請求書の副本の
送達後に提出したか?"} Q2 -- "いいえ" --> NG1["× 許可の対象外
(第38条の2第2項は『請求の理由』限定)"] Q3 -- "はい" --> Q4{"遅延のおそれがないことが明らかで、かつ
第1号(訂正により必要が生じた)または
第2号(合理的理由+被請求人の同意)にあたるか?"} Q3 -- "いいえ" --> NG2["× 許可できない
(第38条の2第3項)"] Q4 -- "はい" --> OK2["○ 審判長が決定で許可できる
→ 手続補正書の副本送達・答弁の機会(第39条第2項)"] Q4 -- "いいえ" --> NG3["× 許可されない
(要旨変更の補正の禁止:第38条の2第1項本文)"] style OK1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style OK2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style NG1 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style NG2 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style NG3 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
○ 補正できる/許可されうる
× 補正できない/許可されない
はい下へ進む
いいえ右へ出る(終わり)

【図3】請求書の補正の分岐図(実用新案法第38条の2第1項〜第3項)。判断は「はい」を下、「いいえ」を右にそろえ、結論の箱を右側に置いた。「できる」は審判長の裁量であり、要件を満たしても必ず許可されるわけではない(○の箱も「許可されうる」の意味)。

2. 「訂正」との連動 ― 第39条第1項の期間が訂正の締切になる

実用新案法には訂正審判がなく、実用新案権者は実用新案法第14条の2第1項の訂正(一回限り)をします。この訂正には時期の制限があり、第14条の2第1項第2号は、実用新案登録無効審判について「第三十九条第一項の規定により最初に指定された期間を経過したとき」は訂正できない、と定めています。つまり、審判長が第39条第1項で指定する「最初の答弁書提出期間」が、訂正のタイムリミットになります。

実用新案法第14条の2第1項(柱書・第2号)実用新案権者は、次に掲げる場合を除き、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正を一回に限りすることができる。
(第一号略)
二 実用新案登録無効審判について、第三十九条第一項の規定により最初に指定された期間を経過したとき。
審判請求 第38条 副本送達・期間指定 第39条第1項 最初に指定された答弁書提出期間 × 訂正できない 期間満了 ここまでが第14条の2第1項の訂正の期限 (第14条の2第1項第2号) 副本送達「前」に出した手続補正書 → 要旨変更の許可はできない(第38条の2第3項) 訂正があったら → 副本を請求人へ送達(第39条第3項) ※時間軸は縮尺なし(長さは日数を表さない)

図は左右にスクロールできます。

凡例
●時点(できごと)
最初に指定された答弁書提出期間(帯=期間)
その経過後(× 第14条の2第1項第2号により訂正できない)
注記の引き出し線

【図4】第39条第1項で指定される「最初の答弁書提出期間」と、第14条の2第1項の訂正の期限、第38条の2第3項の「副本送達前」の関係。第14条の2第1項第1号(技術評価書送達から2月)との先後は本記事の範囲外(→第14条の2の記事)。※説明の都合上、期間の延長・附加期間は省略した。※時間軸は縮尺なし。

3. 特許法との対比(ここが「実用新案法らしさ」)

項目 特許法第131条 実用新案法第38条 違いの理由(条文構造から)
提出先・記載事項(第1項) 特許庁長官/当事者等・事件の表示・請求の趣旨及び理由 同じ —
請求の理由の具体的特定(第2項) 「特許無効審判を請求する場合における」前項第3号の理由は、特許を無効にする根拠事実を具体的に特定し、証拠との関係を記載 「前項第三号に掲げる請求の理由は」実用新案登録を無効にする根拠事実を…(審判の種類を限定する文言がない) 実用新案法の審判は無効審判のみなので、限定する必要がない
延長登録無効審判の特則 特許法第131条第3項(原文照合済み) 該当規定なし 実用新案法に延長登録制度がない

〔表5〕特許法第131条と実用新案法第38条の対比。特許法第131条第3項は延長登録無効審判の請求理由について、第2項の規定を準用する。

項目 特許法第131条の2 実用新案法第38条の2
原則(第1項本文) 要旨変更禁止 要旨変更禁止
例外(第1項ただし書) 3つ:①特許無効審判以外の審判における請求の理由の補正、②審判長の許可、③第133条第1項の補正命令に係る事項の補正 1つ:審判長の許可のみ
許可の対象(第2項本文) 「特許無効審判を請求する場合における」請求の理由の補正 請求の理由の補正(審判の種類の限定なし)
許可事由第1号 当該特許無効審判において第134条の2第1項の訂正の請求があり、補正の必要が生じた 第14条の2第1項の訂正があり、補正の必要が生じた
許可事由第2号 合理的理由+被請求人の同意 同じ
時期の制限(第3項) 第134条第1項の副本送達前は許可不可 第39条第1項の副本送達前は許可不可
不服申立て(第4項) 決定・不作為に不服申立て不可 同じ

〔表6〕特許法第131条の2と実用新案法第38条の2の対比(いずれもe-Gov法令検索、2026年9月参照)。特許法第131条の2第1項第1号は「無効審判以外の審判」が前提なので、無効審判しかない実用新案法には置かれていない。

根拠資料との照合:第41条による特許法第133条の準用は、方式違反について補正を命じる根拠です。一方、請求書の要旨を変更する補正の制限は第38条の2によります。特許法第131条の2第1項第3号のような「補正命令に係る補正」を一括して除外する規定はありません。誤記の訂正など要旨を変えない補正と、要旨を変える補正を分け、後者は第38条の2第2項の許可要件で判断します。補正命令があれば新たな無効理由を自由に追加できる、という意味ではありません。実用新案法第38条の2・第41条/青本第22版・第38条の2(冊子1039〜1040頁)。
項 特許法第134条 実用新案法第39条 違い
第1項 請求書副本の送達・答弁の機会 同じ —
第2項 第131条の2第2項の許可時の手続補正書副本の送達・答弁の機会(特別の事情の例外あり) 第38条の2第2項の許可時(同じ構造) 参照条文番号のみ
第3項 答弁書を受理したとき、その副本を請求人に送達 答弁書を受理したとき又は無効審判係属中に第14条の2第1項若しくは第7項の訂正があったとき、その副本を請求人に送達 実用新案法は「訂正の副本送達」を第39条第3項に組み込んでいる(特許法では訂正の請求は第134条の2で扱う)
第4項 当事者・参加人の審尋 同じ —
第5項 (第134条は全4項であり、第5項はない) 請求後に実用新案登録に基づく特許出願(特許法第46条の2第1項)がされたとき、請求人・参加人に通知 実用新案法特有。無効審判の請求人にとって「相手が特許に乗り換えた」ことは重要な情報だから

〔表7〕特許法第134条と実用新案法第39条の対比。実用新案法第39条第3項後段と第5項が実用新案法特有の規定。

4. 第39条第5項と「実用新案登録に基づく特許出願」

実用新案権者は、一定の条件のもとで、自分の実用新案登録に基づいて特許出願をすることができます(特許法第46条の2第1項。要件・期限は特許法第46条・第46条の2の記事に譲ります)。無効審判の請求後にこれがされると、審判の対象である実用新案権の扱いが変わる可能性があるため、第39条第5項は審判長に請求人・参加人への通知を義務づけています。通知の相手が「被請求人」ではなく「請求人及び参加人」である点に注意してください(被請求人=実用新案権者は、自分で特許出願をした本人なので通知は不要)。

5. 本記事で扱わないもの(第40条・第41条の記事へ)

論点 根拠 扱う記事
共同審判(共有者による請求・共有者に対する請求) 実用新案法第41条で準用する特許法第132条 実用新案法第41条の記事
方式違反の補正命令・請求書の却下(決定却下) 実用新案法第41条で準用する特許法第133条・第133条の2 実用新案法第41条の記事
不適法な審判請求の審決却下、審判官の指定・除斥忌避、審理方式、証拠調べ、審決 など 実用新案法第41条で準用する特許法第135条〜第154条ほか 実用新案法第41条の記事
訴訟との関係(手続の中止) 実用新案法第40条 実用新案法第40条の記事
無効理由・請求人適格・権利消滅後の請求 実用新案法第37条 実用新案法第37条の記事
訂正の要件・時期(技術評価書との関係を含む) 実用新案法第14条の2 実用新案法第14条の2の記事

〔表8〕隣接条文への振り分け。実用新案法第41条の準用条文の一覧(特許法第125条、第132条から第133条の2まで、第135条から第154条まで、第156条第1項・第3項・第4項、第157条、第167条、第167条の2、第169条第1項・第2項・第5項・第6項、第170条)は取得した第41条の条文による。

6. 試験での問われ方

試験種別 問われ方の傾向(作成者の整理) 気をつける点
短答式 特許法第131条の2との文言の違い(例外の数、「特許無効審判を請求する場合における」の有無、第1号が「第14条の2第1項の訂正」であること)、第39条第3項の「訂正の副本送達」、第39条第5項の通知先を問う正誤問題 「実用新案法には訂正審判がない」→ 第38条の2第2項第1号・第39条第3項の文言に反映される、と構造で覚える
論文式 無効審判の請求後に実用新案権者が訂正をした場面で、請求人がとりうる手段(請求の理由の補正と許可要件)、審判長の手続(副本送達・答弁の機会)を条文を引いて説明する 第38条の2第2項の要件(遅延のおそれなし+1号or2号)と第3項(副本送達後)をセットで書く
口述 「実用新案法で審判請求書の補正が許可される事由は?」「特許法第131条の2第1項ただし書と実用新案法第38条の2第1項ただし書の違いは?」 条文番号を法名付きで正確に言えるようにする

〔表9〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

根拠資料との照合:問5の肢ニは第39条第1項の答弁書提出期間と訂正可能時期を結び付けた出題です。その期間の後でも第14条の2第7項の請求項削除ができる場合があるため正しい記述です。問5の正解は4、問6は3、問16は3です。後二問には第38条〜第39条の請求書・補正・答弁の要件を直接問う肢はありません。 令和8年度の問題/公式解答。肢ごとの説明は条文との照合によるもので、公式解答が示す正解番号と区別しています。
レベル3のまとめ

  • 要旨変更補正の許可要件(第38条の2第2項・第3項):「請求の理由」の補正/要旨変更/遅延のおそれがないことが明らか/1号(第14条の2第1項の訂正による必要)または2号(合理的理由+被請求人の同意)/副本送達後の提出。許可は決定、不服申立て不可(第4項)。
  • 特許法第131条の2第1項ただし書の例外は3つ、実用新案法第38条の2第1項ただし書は「許可」の1つ。第2項第1号の訂正は「第14条の2第1項の訂正」。
  • 第39条第3項は答弁書だけでなく第14条の2第1項・第7項の訂正の副本も請求人に送達。第39条第5項は請求後の実用新案登録に基づく特許出願を請求人・参加人に通知(特許法第134条にない規定)。
  • 第39条第1項で最初に指定された答弁書提出期間の経過は、第14条の2第1項第2号により訂正の期限になる。
  • 共同審判・却下・審理・審決は第41条準用、訴訟との関係は第40条の記事へ。

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