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小学生でも分かる意匠法|意匠法第3条第2項 創作非容易性 ― 「誰でも思いつく組み合わせ」のデザインは登録できない

小学生でもわかる意匠法 3:創作非容易性(第3条第2項)

小学生でも分かる意匠法 / A. 登録要件・意匠 #3

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意匠法第3条第1項が「もう世の中にあるデザインはダメ」(新規性)を決めているのに対し、第2項は「世の中にあるものから、その道の人なら簡単に作れてしまうデザインもダメ」と決めています。特許法の「進歩性」に位置が似ていますが、意匠法では「創作非容易性」と呼び、中身も同じではありません。この記事では、条文の文言と令和元年改正での変化を中心に整理します。

条文:意匠法第3条第2項(第1項との関係を含む)審査基準:意匠審査基準 第III部 第2章 第2節「創作非容易性」改正:令和元年法律第3号(令和2年4月1日施行)参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「新しい」だけでは足りない

お店で売っている、よくある丸いコップがあるとします。そのコップに、みんなが知っているチェック柄(格子のもよう)をそのまま印刷しました。このコップは、たしかに「まったく同じものは今まで売っていなかった」かもしれません。

でも、コップをデザインする仕事の人から見たら、「よくある形」に「よくある模様」をのせただけです。こういう「その道の人なら、だれでも簡単に思いつく」デザインは、意匠登録(デザインの権利登録)を受けられません。これが意匠法第3条第2項のルールです。

みんなが知っている形 よくある丸いコップ

+

みんなが知っている模様 チェック柄(格子のもよう)

=

ただ足しただけ 「簡単に作れた」

意匠登録を受けられない(第3条第2項)

公然知られた形状等(創作のもとになる素材) 登録を受けられない意匠

図は左右にスクロールできます。

【図1】「みんなが知っている形」+「みんなが知っている模様」をただ足しただけのデザイン。その道の人なら簡単に作れるので、登録できない。凡例は図中(橙=素材/赤=登録を受けられない結果)。※例はいずれも架空。※判断のものさしは需要者ではなく当業者(→レベル1の次の項)。

「その道の人」が判断のものさし

ここで大事なのは、「簡単かどうか」を決めるのが、ふつうの買い物客ではなく、そのデザインの分野でふつうの知識を持っている人だということです。コップならコップをデザインする仕事の人、スマホの画面ならアプリの画面を作る仕事の人です。法律の言葉では「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」といい、受験生の間では「当業者(とうぎょうしゃ)」と呼びます。

こんなデザインが「簡単に作れた」といわれやすい

よくある形に、よくある模様をのせただけ
2つの有名な形を、そのままくっつけただけ
よくある形の、大きさの比率を変えただけ
よくある形の、部品の並び方を変えただけ
ほかの物でよく見る形を、そのままこの物に使っただけ

逆に、もとになる形や模様が知られていても、それらを組み合わせる発想そのものに新しさがあれば、「簡単に作れた」とはいえません。

レベル1のまとめ

  • 意匠法第3条第2項=「世の中にある形・模様・画像から、その道の人なら簡単に作れるデザイン」は登録できない。
  • 判断のものさしは、買い物客ではなく「その道でふつうの知識を持つ人(当業者)」。
  • 第1項(新規性)とはちがい、「もとになる形や模様」が知られているかどうかを見る。

※「もとになる形や模様」の範囲、「簡単に作れた」の判断の仕方、第1項との使い分けは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第3条第2項 ― 原文

意匠法第3条第2項(原文)
意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については、同項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

一文が長いので、「いつ」「誰が」「何をもとに」「どうできたか」「どうなるか」に切り分けます。

切り分け 条文の文言 意味
いつ(時点) 「意匠登録出願前に」 出願の時点が基準。意匠審査基準 第III部 第2章 第3節は、意匠登録出願の前か否かの判断を時、分、秒まで考慮して行うとしており、外国で公知等となった場合は日本時間に換算した時刻で比較するとしています(日単位ではないので、出願日当日でも出願時刻より前の公知は「出願前」に当たります)。
誰が(判断主体) 「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」 いわゆる当業者。買い物客(需要者)ではない。
どこで(地域) 「日本国内又は外国において」 世界のどこで知られていてもよい。
何をもとに(基礎資料) 「公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた形状等又は画像」 ①公然知られたもの、②頒布された刊行物に記載されたもの、③インターネット等で公衆に利用可能となったもの、の3ルート。対象は「形状等」または「画像」(意匠そのものである必要はない)。
どうできたか(判断) 「容易に意匠の創作をすることができたとき」 当業者にとって容易であれば該当。実用新案法のような「きわめて容易」ではない。
対象から外すもの(括弧書き) 「その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)」 第1項第1号〜第3号(新規性なし)に当たる意匠は、第2項の対象から外す。
どうなるか(効果) 「同項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない」 第1項の要件を満たしていても登録されない。

〔表1〕意匠法第3条第2項の要素分解。

「形状等」と「画像」 ― 何をもとにするのか

第2項の基礎資料は「形状等又は画像」です。「形状等」は、意匠法第2条第1項で「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」の略として定義されている語で、同シリーズ #1(第1条・第2条)で扱いました。ここで大事なのは、基礎になるのが「意匠」ではなく「形状等」「画像」だという点です。第1項が「意匠」(物品等と結びついたデザイン)を比べるのに対し、第2項は物品等から切り離した形や模様、画像を材料にできます。

第1項との関係 ― 括弧書き「前項各号に掲げるものを除く」

意匠法第3条第1項(原文)
工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。
一 意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠
二 意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠
三 前二号に掲げる意匠に類似する意匠

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

第2項の括弧書きにより、第1項各号に当たる意匠(公知意匠・刊行物記載意匠・それらに類似する意匠)は、第2項ではなく第1項で登録が拒まれます。両方が重なって適用されることはなく、第2項は「第1項各号には当たらないが、当業者なら容易に創作できた意匠」を受け持ちます。

flowchart TB
  A["出願された意匠"] --> B{"第3条第1項各号に当たらないか?
(公知・刊行物記載・電気通信回線/
それらに類似、のいずれでもない)"} B -- "はい" --> C{"当業者が、公知等の形状等・画像から
容易に創作できたとはいえないか?"} C -- "はい" --> Y["第3条の要件はクリア
(他の要件へ)"] B -- "いいえ(各号に当たる)" --> N1["第3条第1項で登録不可
(新規性なし)"] C -- "いいえ(容易に創作できた)" --> N2["第3条第2項で登録不可
(創作非容易性なし)"] style N1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style Y fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図2】第3条第1項と第2項の受け持ちの分岐図(2026年9月参照時点の条文による)。括弧書きにより、第1項各号に当たるものは第2項の対象から外れる。「はい」が下へ進む主経路、「いいえ」は右の終端。凡例:緑=第3条の要件をクリア/赤=登録不可。

第1項(新規性)と第2項(創作非容易性)の比べ方

第3条第1項(新規性) 第3条第2項(創作非容易性)
比べる相手 「意匠」(第1号・第2号)と、それに「類似する意匠」(第3号) 「形状等」または「画像」(意匠でなくてよい)
問い 同じか、似ているか そこから容易に創作できたか
判断の立場 類否は「需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて」(意匠法第24条第2項) 「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」(当業者)
時点 意匠登録出願前 意匠登録出願前
地域 日本国内又は外国 日本国内又は外国
両方に当たるとき 第2項の括弧書きにより、第1項が適用される(第2項は適用されない)

〔表2〕新規性と創作非容易性の対比。「判断の立場」欄の第24条第2項は登録意匠の範囲についての規定で、審査での類否判断の観点として同シリーズ #21 で扱う。

レベル2のまとめ

  • 第2項の基礎資料は「公然知られ/頒布された刊行物に記載され/電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった」形状等または画像。地域は日本国内又は外国。
  • 判断主体は当業者。程度は「容易に」(実用新案法の「きわめて容易に」ではない)。
  • 括弧書きにより、第1項各号に当たる意匠は第2項の対象から外れる。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 令和元年改正 ― 「改正前」と「現行」を区別する

第3条第2項は、令和元年法律第3号(令和2年4月1日施行)で基礎資料の範囲が広げられました。改正解説書(第2章「創作非容易性水準の明確化」)は、改正前の規定について、当業者が「日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」に基づいて容易に創作できた意匠は登録を受けられないとされていた、と説明しています。そのうえで、刊行物やインターネット上で公開された形状等について、必ずしも「現実に知られている」「現実に不特定又は多数の者に知られた」とはいえないと出願人が主張し、特許庁と出願人の間で規定の解釈に齟齬が生じる事態があったことを、改正の必要性として挙げています。

改正の概要について、改正解説書は、創作非容易性の水準を明確化し、刊行物やインターネット上で公開された形状等に基づいて当業者が容易に創作できた意匠も拒絶・無効の対象となるように規定した、と述べています。

改正前(令和2年3月31日以前の出願) 現行(令和2年4月1日以降の出願)
基礎資料の範囲 「日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」(改正解説書の記載による) 「日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた形状等又は画像」
刊行物・インターネット上の形状等 条文上は明示されず、「公然知られた」に当たるかが争点になり得た 条文に明記(第1項第2号と同じ3ルート)
「画像」 条文上の明示なし 「形状等又は画像」と明記(画像の意匠の導入と平仄)
判断主体・程度 「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」「容易に」は改正前後で共通

〔表3〕令和元年改正の新旧対照。改正前の文言は改正解説書の説明に基づく(改正前条文の全文は本記事作成時に原文照合できなかった)。

施行日の出典 令和元年意匠法改正の規定のほとんどは令和2年4月1日に施行され、残る一部の規定が令和3年4月1日に施行されました(特許庁「令和元年意匠法改正特設サイト」、2026年9月参照)。
令和元年法律第3号附則第2条第1項により、改正後の第3条第2項は2020年4月1日以後の出願に適用され、それより前の出願は従前の例によります。旧規定は基礎資料を国内外で公然知られた形状・模様・色彩又はその結合としており、現行法は刊行物・インターネット公開と画像を明記しています。 出典

2. 判断主体「当業者」と、判断の基礎資料

逐条解説は、第3条が意匠登録の要件を定めたものであるとしたうえで、第一に工業上利用できること、第二に新規であること(第1項各号)に続けて、第三に、意匠は容易に創作できる程度のものであってはならない(第2項)と位置づけています(特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』1254〜1255頁)。そのうえで、第2項の沿革と各改正の理由を次のように説明しています(青本〔第22版〕1255頁)。

時期 基礎資料 逐条解説が挙げる理由
昭和34年 現行法制定 日本国内において広く知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合 (制定時の規定)
平成10年の一部改正 日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合 創作性の高い意匠を的確に保護するため。日本産業が世界市場において製品競争力の優位性を保つには、創作性の高いデザインを適切に保護し、その創作を促すことが必要であることから、創作非容易性の要件を引き上げた
令和元年の一部改正 公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像 情報技術の発達により、より多くのデザインが刊行物やインターネット上で公開されるようになったところ、これらに基づいて容易に創作できた意匠は独自の創作性を有さず意匠権による保護に値しない。もっとも、単に刊行物やインターネット上で公開された意匠は必ずしも公然知られたとはいえないことから、これらに基づいて容易に創作できた意匠も登録を受けられない旨を明記し、創作非容易性の要件を引き上げた。また、画像を意匠の定義に追加したことに伴い、画像に基づいて容易に創作できた意匠も対象とした

〔表3-2〕第3条第2項の沿革と、逐条解説が挙げる改正理由(要約)。青本〔第22版〕は令和4年10月刊であり、令和5年以降の改正は反映されていません。

timeline
  title 第3条第2項の基礎資料の広がり(沿革)
  昭和34年 制定 : 「日本国内において広く知られた」形状・模様・色彩
  平成10年 改正 : 「日本国内又は外国において公然知られた」形状等
  令和元年 改正(令和2年4月1日施行) : 「公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた」形状等又は画像

図は左右にスクロールできます。

【図3】基礎資料の範囲の広がり(逐条解説の沿革説明(青本〔第22版〕1255頁)を時系列にしたもの。2026年9月参照時点)。丸=改正・施行の時点のみを並べたもので、期間の長さは表していない。(時間軸は縮尺なし)

基礎資料のルート 第3条第1項での対応 第3条第2項
①公然知られた 第1号「公然知られた意匠」 「公然知られ…た形状等又は画像」
②頒布された刊行物に記載された 第2号「頒布された刊行物に記載された意匠」 「頒布された刊行物に記載され…た形状等又は画像」
③電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった 第2号「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠」 「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた形状等又は画像」

〔表4〕3ルートの対応関係。令和元年改正で第1項と第2項のルートが揃った。

3. 審査基準における「容易に創作できた」の判断類型

意匠審査基準 第III部 第2章 第2節「創作非容易性」は、1. 概要/2. 創作非容易性の判断主体/3. 創作非容易性の判断に係る基本的な考え方/4. 創作非容易性の具体的な判断/5. 創作非容易性の判断の基礎となる資料の提示/6. 創作容易な意匠の事例という構成をとっています。当業者の立場から見て、公然知られた形状等や画像を基礎に、ありふれた手法で創作された意匠を「容易に創作をすることができた」ものとして扱う考え方が示されています。

同節が示す判断類型は次の7つです(名称と定義は審査基準の記載を記事作成者が要約したものです)。

類型(審査基準の名称) 定義(要約) レベル1の例(架空)
置き換え 意匠の構成要素の一部を、他の意匠等に置き換えること 椅子の脚だけを、よくある別の脚の形に替えた
寄せ集め 複数の既存の意匠等を組み合わせて、一の意匠を構成すること よくあるコップの形+よくある模様
一部の構成の単なる削除 意匠の創作の一単位として認められる部分を、単純に削除すること 取っ手つきカップの取っ手を取っただけ
配置の変更 意匠の構成要素の配置を、単に変更すること スマホ画面のボタンの並び順を入れ替えただけ
構成比率の変更 意匠の特徴を保ったまま、大きさを拡大・縮小したり、縦横比などの比率を変更すること 同じ形のまま、縦長にしただけ
連続する単位の数の増減 繰り返し表される意匠の創作の一単位を、増減させること 3段の棚を4段にしただけ
物品等の枠を超えた構成の利用・転用 既存の様々なものをモチーフとし、ほとんどそのままの形状等で種々の物品に利用・転用すること よくある車の形を、そのままおもちゃの車にした

〔表5〕意匠審査基準 第III部 第2章 第2節が示す創作非容易性の判断類型(名称は審査基準のもの。定義は記事作成者の要約で、逐語引用ではありません)。7つの類型名は、短答式で名称そのものを問われ得るところです。

「ほとんどそのまま」「軽微な改変」は、7つの類型の名称ではありません 下の【図4】には、判断の流れを追いやすくするために「ほとんどそのまま表しただけ」「軽微な改変にとどまる」という分岐を置いていますが、これらは上記7類型の名称ではなく、本記事作成者が判断の流れを説明するために置いた表現です。7つの類型名は〔表5〕のとおり覚えてください(「物品等の枠を超えた構成の利用・転用」は、モチーフをほとんどそのままの形状等で転用する場合を含む類型として定義されています)。
flowchart TB
  A["出願意匠と、公知の形状等・画像(基礎資料)"] --> B{"基礎資料に創作上の改変が
加えられているか?"} B -- "はい" --> C{"ありふれた手法による創作か?
置き換え/寄せ集め/一部の削除/
配置の変更/構成比率の変更/
連続する単位の数の増減/転用 など"} C -- "はい" --> D{"その組み合わせ・改変に創作の着想の
新しさ・独創性が認められるか?
(角の丸め等の軽微な改変にとどまらないか)"} D -- "はい" --> Y["容易性を否定する事情を考慮
他の事情も含め総合判断"] C -- "いいえ(ありふれた手法ではない)" --> Y B -- "いいえ(ほとんどそのまま表しただけ)" --> N1["容易性を肯定する事情を検討
着想の新しさ等も考慮"] D -- "いいえ(軽微な改変にとどまる)" --> N2["容易性を肯定する事情を検討
着想の新しさ等も考慮"] style N1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style Y fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図4】創作非容易性の判断の分岐図(本記事作成者の整理。C分岐に並べた7つは〔表5〕のとおり審査基準の類型名ですが、B分岐「ほとんどそのまま表しただけ」・D分岐「軽微な改変」は説明のための表現で、審査基準の類型名ではありません。2026年9月参照時点)。「はい」が下へ進む主経路、「いいえ」は右の終端。凡例:緑=容易性を否定する事情の検討/赤=容易性を肯定する事情の検討。各終端は考慮事項を示し、登録可否の確定結論ではありません。※類型に当てはまれば自動的に登録不可となるものではない(下の注意書きを参照)。

審査基準第III部第2章第2節4.2.1は、置き換え・寄せ集め・一部の構成の単なる削除・配置の変更・構成比率の変更・連続する単位の数の増減・物品等の枠を超えた構成の利用・転用を例示しています。具体例は6.1〜6.7に対応します。たとえば、配置の変更は構成要素の配置を単に変えること、構成比率の変更は特徴を保ったまま大きさや縦横比を変えることです。どれも、その分野の創作の実態に照らして判断します。 出典
注意:類型に当てはまれば自動的に登録不可、ではない審査基準第III部第2章第2節3.及び4.3は、意匠の視覚的な特徴に独自の創意工夫に基づく着想の新しさや独創性が認められる場合、その点も考慮するとしています。それだけで登録できると決まるわけではありません。特徴記載書や意見書を参酌する場合も、出願当初の願書・図面等から導き出される範囲に限られます。

4. 拒絶理由・無効理由への該当関係

意匠法第17条(原文・柱書と第1号)
審査官は、意匠登録出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
一 その意匠登録出願に係る意匠が第三条、第三条の二、第五条、第八条、第八条の二、第九条第一項若しくは第二項、第十条第一項、第四項若しくは第六項、第十五条第一項において準用する特許法第三十八条又は第六十八条第三項において準用する同法第二十五条の規定により意匠登録をすることができないものであるとき。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
場面 条文 第3条第2項の扱い
審査(拒絶理由) 意匠法第17条第1号 「第三条」に含まれるので、第2項違反は拒絶理由。第17条は限定列挙(同シリーズ #16)。
無効審判(無効理由) 意匠法第48条第1項第1号 「第三条」に含まれるので、第2項違反は無効理由。
無効審判の請求人 意匠法第48条第2項 第3条違反を理由とする無効審判は「何人も請求することができる」(ただし書の制限は第15条第1項で準用する特許法第38条違反と第3号の場合に限られる)。
意匠権消滅後 意匠法第48条第3項 「意匠権の消滅後においても、請求することができる」。

〔表6〕第3条第2項違反の、拒絶理由・無効理由への該当関係。

5. 特許法第29条第2項・実用新案法第3条第2項との対比

特許法第29条第2項(原文)
特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
実用新案法第3条第2項(原文)
実用新案登録出願前にその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる考案に基いてきわめて容易に考案をすることができたときは、その考案については、同項の規定にかかわらず、実用新案登録を受けることができない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000123)、2026年9月参照。
特許法第29条第2項 実用新案法第3条第2項 意匠法第3条第2項
通称 進歩性 進歩性(程度が異なる) 創作非容易性(「進歩性」とは呼ばない)
判断主体 「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者」 「その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者」 「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」(「技術の」がない)
基礎資料 「前項各号に掲げる発明」(第1項各号の発明そのもの) 「前項各号に掲げる考案」 「公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた形状等又は画像」(意匠でなくてよい)
程度 「容易に」 「きわめて容易に」 「容易に」
第1項各号該当物の除外 括弧書きなし(第1項各号に当たるものは第1項で拒絶) 括弧書きなし 括弧書きあり「(前項各号に掲げるものを除く。)」
地域的範囲 第1項各号で「日本国内又は外国において」 同左 第2項自体に「日本国内又は外国において」
拒絶理由/無効理由 特許法第49条第2号(同号は「第二十九条」を掲げる)/第123条第1項第2号(同号も「第二十九条」を掲げる) 無審査のため拒絶理由なし/無効理由は実用新案法第37条第1項第2号(同号は「第三条」を掲げる) 意匠法第17条第1号/第48条第1項第1号(いずれも「第三条」を掲げる)

〔表7〕三法の「容易創作」規定の対比。特許法第49条第2号・第123条第1項第2号、実用新案法第37条第1項第2号の各号が掲げる条文は、e-Gov法令検索(特許法 334AC0000000121/実用新案法 334AC0000000123)で照合済み(2026年9月参照)。いずれも条単位で引用しているため、進歩性・創作非容易性の規定は独立には列挙されていません。

なぜ意匠法は「意匠」ではなく「形状等又は画像」を基礎にできるのか特許法第29条第2項の基礎資料は「前項各号に掲げる発明」で、発明として公知になったものに限られます。一方、意匠法第3条第2項は「形状等又は画像」を基礎にできるので、物品等と結びついた「意匠」として公知でなくても、たとえば自然物の形や有名な模様そのものを基礎にして容易性を判断できます。審査基準第III部第2章第2節4.1も、形状等や画像を具体的に識別できれば、その構成要素を判断の基礎にでき、資料は同一又は類似の分野に限られないとしています。

6. 試験での問われ方

試験種別 学習で整理したい論点 気をつける点
短答式 「公然知られた意匠に類似する意匠は第3条第2項で拒絶される」等、第1項第3号と第2項の取り違えを問う正誤問題。基礎資料が「意匠」か「形状等・画像」かを問う枝。実用新案法との「きわめて容易」の違い。 括弧書き「前項各号に掲げるものを除く」を正確に。第1項各号に当たるなら第1項で処理する。
論文式 事例で、出願意匠が公知の形状や模様の組み合わせにすぎない場合の登録可否と、拒絶理由・無効理由の条文を挙げさせる。 当業者の立場、基礎資料の3ルート、令和元年改正で拡大した点を条文の文言で書く。
口述 「意匠法第3条第2項の要件を述べよ」「特許法第29条第2項との違いは」 基礎資料の違い(発明/形状等・画像)と括弧書きの有無を即答できるように。

〔表8〕学習時の論点整理。実際の出題例は下記の過去問紹介に示しています。

関連する過去問(令和8年度 短答式〔意匠〕問1〜問10)

令和8年度弁理士試験 短答式〔意匠〕問1〜問10を確認した範囲では、第3条第2項(創作非容易性)を正面から問う枝は見当たりませんでした。近い素材としては、問4(意匠法に関して正しいものを選ぶ問題)の枝2が、先願の全体意匠の一部に類似する部品の後出願に関する枝で、これは第3条第2項ではなく第3条の2(同シリーズ #4)の論点です。第2項と第3条の2を混同しないよう注意してください。問4の公式正解は1です。ここで紹介した第3条の2は、創作非容易性を定める第3条第2項とは別の規定です。

出典:令和8年度弁理士試験 短答式筆記試験問題(特許庁)、2026年9月参照。上記は枝の論点の要約であり、枝の文言そのものではありません。公式解答の番号と、条文に基づく個々の肢の検討は区別してください。

レベル3のまとめ

  • 令和元年改正(令和2年4月1日施行。特許庁「令和元年意匠法改正特設サイト」による)で、基礎資料が「公然知られた形状等」から「公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像」に広がった。改正法附則第2条第1項により、2020年4月1日以後の出願に改正後の規定を適用し、それより前の出願は従前の例による。
  • 審査基準 第III部 第2章 第2節は、当業者の立場から「容易に創作できた」かを判断し、置き換え/寄せ集め/一部の構成の単なる削除/配置の変更/構成比率の変更/連続する単位の数の増減/物品等の枠を超えた構成の利用・転用の7類型を示している。
  • 第2項違反は意匠法第17条第1号の拒絶理由、第48条第1項第1号の無効理由。無効審判は何人も請求できる。
  • 特許法第29条第2項との違いは、基礎資料(発明/形状等・画像)、括弧書きの有無、判断主体の文言(「技術の」の有無)。実用新案法は「きわめて容易」。

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