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小学生でも分かる意匠法|意匠法第10条の2 意匠登録出願の分割 ― 1つの願書に2つの意匠が入っていたら、分けて出し直せる

小学生でもわかる意匠法 14:出願の分割(第10条の2)

小学生でも分かる意匠法 / B. 出願・審査・登録の手続 #14

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意匠登録出願は「一つの意匠につき一つの出願」が原則です。うっかり一つの出願に二つ以上の意匠を入れてしまった場合の救済が「分割」です。分けて出し直した新しい出願は、もとの出願の日に出したものとみなされます(例外あり)。特許法第44条の分割と似ていますが、できる時期や例外の中身が違います。

条文:意匠法第10条の2(第1項〜第3項)審査基準:意匠審査基準 第VIII部 第1章「意匠登録出願の分割」参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「1つの申込書に、1つのデザイン」がルール

意匠登録は、コップや椅子などの「かたち(デザイン)」を国に登録してもらう制度です。このとき、1枚の申込書(願書)に書いていいデザインは1つだけというルールがあります。

ところが、たとえば「マグカップ」の申込書に、うっかり取っ手が丸いカップと取っ手が四角いカップの2つの絵を描いてしまったとします。これでは「デザインが2つ入っている」ので、そのままでは登録してもらえません。

分けて出し直せる。しかも「最初の日付」のまま

こういうとき、2つ入りの申込書のうち1つを取り出して、別の新しい申込書として出し直すことができます。これが「分割」です。

ここで大事なのは日付です。意匠の世界では「早く出した人が勝ち」なので、出し直した日が遅くなると不利になります。そこで分割した新しい申込書は、もとの申込書を出した日に出したことにしてもらえます。

もとの出願(4月1日) 意匠に係る物品:マグカップ

意匠A(丸い取っ手)

意匠B(四角い取っ手) 2つ入り → このままでは登録できない

分割

もとの出願 意匠Aだけ

新しい出願(分割) 意匠Bだけ

出願日は どちらも「4月1日」 実線の枠=もとの出願 破線の枠=分割による新たな出願 塗りつぶし=出願日

図は左右にスクロールできます。

【図1】2つの意匠が入った出願を、1つずつの出願に分ける。新しい出願も、もとの出願の日に出したことになる(架空の例)。

できるのは「まだ審査などをしてもらっている間」だけ

分割は、いつでもできるわけではありません。もとの申込書が特許庁で審査・審判・再審のどれかを受けている最中だけです。登録が終わったり、取り下げたりした後では、もう分割できません。

分割ができるのはいつ?(イメージ)

分割できる

審査中 … 審判中 … 再審中

✕ 分割できない

もとの出願 登録・取下げ・却下 (係属の終わり) 時間

実線の帯=分割できる期間 破線の帯+✕=分割できない期間 丸=時点

図は左右にスクロールできます。

【図2】分割ができる時期のイメージ。「係属中」の正確な範囲はレベル3で扱う。「…」の部分(査定の後から審判請求までなど、係属していない場合がある期間)は省略している。(時間軸は縮尺なし)

分割=2つ入りの願書から1つを取り出して、新しい願書にする
新しい願書の日付は、もとの願書の日付のまま(例外あり)
できるのは審査・審判・再審の最中だけ
レベル1のまとめ

  • 願書には意匠を1つだけ書くのがルール。2つ以上入っていたら「分割」で分けて出し直せる。
  • 分割した新しい出願は、もとの出願の日に出したことにしてもらえる。
  • 分割できるのは、もとの出願が審査・審判・再審にかかっている間だけ。

※「2つ以上の意匠が入っている」といえる場合の範囲、日付がもとの日にならない例外、出願人が同じでなければならない点などは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

意匠法第10条の2は3つの項からできています。第1項が「誰が・いつ・何を」分割できるか、第2項が「分割の効果(出願日の遡及)とその例外」、第3項が「書面の提出みなし」です。

flowchart TB
  P1["第1項:分割の要件
出願人が/審査・審判・再審に係属中に限り/
二以上の意匠を包含する出願の一部を/新たな出願にできる"] --> P2["第2項:効果
新たな出願は「もとの出願の時にしたものとみなす」"] P2 --> P2b["第2項ただし書:例外
第4条第3項、第15条第1項で準用する特許法第43条第1項・第2項
(優先権証明書等の提出)については遡及しない"] P1 --> P3["第3項:書面の提出みなし
もとの出願で出した書面等は、新たな出願と同時に提出されたものとみなす"]

図は左右にスクロールできます。

【図3】意匠法第10条の2の3つの項の関係。

第1項 ― 分割の要件(誰が・いつ・何を)

意匠法第10条の2第1項(原文)
意匠登録出願人は、意匠登録出願が審査、審判又は再審に係属している場合に限り、二以上の意匠を包含する意匠登録出願の一部を一又は二以上の新たな意匠登録出願とすることができる。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
条文の言葉 意味 ポイント
「意匠登録出願人は」 分割できるのは出願人 もとの出願と新たな出願の出願人が同一であることが求められる(→レベル3、審査基準の要件)
「審査、審判又は再審に係属している場合に限り」 時期の限定 特許法第44条第1項のような「査定謄本送達日から30日・3月」といった期間は意匠法にはない(→レベル3の対比表)
「二以上の意匠を包含する意匠登録出願」 対象となる出願 一意匠一出願(意匠法第7条)に反して複数の意匠が入っている出願。1つの意匠しか含まない出願は分割できない
「一部を」 分ける単位 もとの出願に包含されていた意匠のうちの一部。全部を新たな出願にする「分割」ではない
「一又は二以上の新たな意匠登録出願とすることができる」 効果 3つの意匠が入っていれば2つの新たな出願にする、といった分け方も可能

〔表1〕第1項の要素分解。

第2項 ― 出願日の遡及と、その例外

意匠法第10条の2第2項(原文)
前項の規定による意匠登録出願の分割があつたときは、新たな意匠登録出願は、もとの意匠登録出願の時にしたものとみなす。ただし、第四条第三項並びに第十五条第一項において準用する特許法第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第十五条第一項において準用する同法第四十三条の二第二項(第十五条第一項において準用する同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、この限りでない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。

本文は「もとの出願の時にしたものとみなす」という出願日の遡及です。ただし書は、遡及させると意味がなくなる「手続の期間」に関する規定を例外にしています。

ただし書に挙げられた規定 内容(要旨) なぜ例外か(本記事作成者の整理)
意匠法第4条第3項 新規性喪失の例外の適用を受けるための「その旨を記載した書面」を出願と同時に、「証明書」を出願の日から30日以内に提出すること 出願日が遡及すると、分割の時点で30日がすでに過ぎていることになりかねない。そこで、この期間の起算については遡及させない
意匠法第15条第1項で準用する特許法第43条第1項・第2項 パリ条約による優先権主張の手続(主張の申立て、優先権証明書等の提出) 同上。優先権証明書等の提出期限を、分割出願の実際の出願日を基準にできるようにする
(かっこ書)同法第43条の2第2項、第43条の3第3項で準用する場合 優先期間経過後の優先権主張、パリ条約の例による優先権主張、についても同じ扱い 優先権主張の各バリエーションに同じ例外を及ぼす

〔表2〕第2項ただし書(遡及の例外)の分解。「内容」欄は要旨であり原文ではない。

もとの出願の日

分割(新たな出願)の日

原則:新規性・先願などの判断では、もとの出願の日に出したものとみなす(第2項本文)

例外(第2項ただし書) 証明書・優先権書類の提出期限は 分割の日を基準に数える 丸(青緑)=もとの出願の時点 丸(紫)=分割の時点 破線矢印=出願日の遡及(原則)

図は左右にスクロールできます。

【図4】出願日の遡及(原則)と、手続期間に関する例外の関係。紫の枠内に示した例外(第2項ただし書)の期限は、分割の日を基準に数える。※第3項により、もとの出願で提出済みの書面は、新たな出願と同時に提出されたものとみなされる(出し直しは不要)。参照時点:2026年9月。(時間軸は縮尺なし)

第3項 ― もとの出願で出した書面の「提出みなし」

意匠法第10条の2第3項(原文)
第一項に規定する新たな意匠登録出願をする場合には、もとの意匠登録出願について提出された書面又は書類(第十五条第一項において準用する特許法第四十三条第二項(第十五条第一項において準用する同法第四十三条の二第二項(第十五条第一項において準用する同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出された場合には、電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によつては認識することができない方法をいう。)により提供されたものを含む。)であつて、新たな意匠登録出願について第四条第三項又は第十五条第一項において準用する同法第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第十五条第一項において準用する同法第四十三条の二第二項及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
要素 内容
対象となる書面 もとの出願について提出された書面・書類のうち、新たな出願についても第4条第3項(新規性喪失の例外)または特許法第43条第1項・第2項の準用(優先権主張)により提出しなければならないもの
電磁的方法で提供されたもの 優先権証明書等が電磁的方法により提供された場合(DAS等による電子的交換を想定)も含む ※「DAS」との対応関係は本記事作成者の理解
効果 新たな出願と「同時に特許庁長官に提出されたものとみなす」。出し直しは不要

〔表3〕第3項の要素分解。

第2項ただし書と第3項の関係:第2項ただし書で「期限は分割の日から数える」ことにしたうえで、第3項で「もとの出願で出した書面は分割と同時に出したことにする」。この2つが組み合わさることで、分割出願人は書面の出し直しをせずに新規性喪失の例外や優先権の主張を引き継げます。
レベル2のまとめ

  • 第1項:出願人は、出願が審査・審判・再審に係属している場合に限り、二以上の意匠を包含する出願の一部を新たな出願にできる。
  • 第2項:新たな出願はもとの出願の時にしたものとみなす。ただし、第4条第3項と優先権主張の手続(特許法第43条第1項・第2項の準用)の適用については遡及しない。
  • 第3項:もとの出願で提出した書面等は、新たな出願と同時に提出されたものとみなす。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 制度趣旨 ― 一意匠一出願の原則の「救済」

意匠審査基準 第VIII部 第1章「1. 概要」は、分割の制度を、一意匠一出願の原則(意匠法第7条。審査基準 第II部 第2章)に反して誤って複数の意匠を一つの出願に含めてしまった出願人を救済するものと位置づけています。また、同章の「新たな意匠登録出願」には国際意匠登録出願の分割による新たな意匠登録出願を含むと明記されています。

特許法第44条の分割が「補正では対応できない範囲の発明を別出願で保護する」積極的な活用も想定されるのに対し、意匠法の分割は一意匠一出願違反の救済という色彩が強い点が、両者の違いの背景にあります(この位置づけの説明は本記事作成者の整理です)。

逐条解説が説明する沿革:逐条解説は、第10条の2について次のように説明しています。本条は昭和45年の一部改正で新設された規定である。昭和34年に制定された意匠法は第15条で特許法第44条を準用していたが、昭和45年の一部改正により特許及び実用新案については分割の時期に制限が加えられることとなった。しかし意匠の分割については制限を加えないこととしたため特許法をそのまま準用することができなくなり、改正前の特許法第44条と同趣旨の規定を新たに設けたものである、というものです(特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』1287頁)。その後、平成8年の一部改正で、一部改正前第2項で査定又は審決が確定するまでとしていた分割ができる時期を、審査、審判又は再審に係属している場合に改めて第1項に規定し、旧第2項を削除して旧第3項を第2項に繰り上げた、とも述べています(青本〔第22版〕1287〜1288頁)。この改正は、商標登録出願の分割の時期の改正と同趣旨のものとされています(同1288頁)。
なぜ訴訟係属中の分割は認められないのか:逐条解説は、商標登録出願の分割については商標法条約への対応から拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合も分割を可能としているが、意匠登録出願の分割については、同条約の制約を受けないことに加え、実務上も訴訟係属中に分割を認める実益がほとんどないので、特許出願や実用新案登録出願の場合と同様に訴訟係属中の分割は認めないこととした、と説明しています(青本〔第22版〕1288頁)。第1項の「審査、審判又は再審に係属している場合」に訴訟係属中が含まれないことは、この説明と対応しています。
第3項の趣旨:逐条解説は、第3項について、平成11年の一部改正で新たに規定されたものであり、もとの出願に対して提出した書面又は書類の一部については、分割出願についてもその出願時に提出したものとみなすものである、と説明しています(青本〔第22版〕1288頁)。

2. 審査基準が示す分割の4要件

意匠審査基準 第VIII部 第1章「2. 意匠登録出願の分割の要件」は、適法な分割と認めるための要件を次のように整理しています。

# 要件 審査基準の説明(要旨、「」内は原文) 根拠
(1) 時期 分割の手続は、意匠登録出願が「審査、審判又は再審に係属中」にしなければならない 意匠法第10条の2第1項
(2) 出願人の同一性 もとの出願の出願人と新たな出願の出願人が同一であること。「意匠登録を受ける権利の承継が適法になされている場合は、審査官は出願人が同一であると判断する」 意匠法第10条の2第1項「意匠登録出願人は」
(3) 二以上の意匠の包含 もとの出願の「願書の記載及び願書に添付した図面等に二以上の意匠が表されている場合」であること 意匠法第10条の2第1項「二以上の意匠を包含する」
(4) 意匠の同一性 「分割による新たな意匠登録出願に係る意匠は、もとの意匠登録出願に包含されていた二以上の意匠のうちいずれかと同一の意匠であること」 意匠法第10条の2第1項「一部を」

〔表4〕意匠審査基準 第VIII部 第1章 2. の4要件。

3. 「二以上の意匠を包含する」とは

審査基準は、「二以上の意匠を包含する」場合の具体例として次の3つを挙げています。

類型 審査基準の例 イメージ(架空)
願書の記載 願書の「意匠に係る物品」の欄に二以上の物品を並列して記載した場合 物品欄に「マグカップ、皿」と書いた
図面等の記載 願書に添付した図面等に二以上の形状等を表している場合 取っ手が丸いカップと四角いカップの図面を両方添付した
部分意匠 一つの物品等の部分意匠について、「形状等の一体性あるいは機能的な一体性が認められない物理的に分離した二以上の『意匠登録を受けようとする部分』」が包含されている場合 カップの「取っ手」と「底の模様」を、一体性なく2か所ばらばらに実線で示した

〔表5〕「二以上の意匠を包含する」の具体例(意匠審査基準 第VIII部 第1章 2.)。

① 物品欄に2物品 意匠に係る物品 マグカップ、皿 「、」で2つ並べている → 2意匠を包含

② 図面に2つの形状 形の違う2つが描かれている → 2意匠を包含

③ 分離した2つの部分 取っ手と底、一体性なし → 2意匠を包含

③の線種: 実線=意匠登録を受けようとする部分 破線=その他の部分

図は左右にスクロールできます。

【図5】「二以上の意匠を包含する」3類型の模式図(架空の物品)。線種の意味は図中の凡例のとおり(実線と破線の2値。意匠の作図規約による)。①②は全体意匠の例のため線種の区別を用いていない。

4. 適法な分割と認められない場合(5類型)

意匠審査基準 第VIII部 第1章「3. 適法な意匠登録出願の分割の手続とは認められない場合の例」は、次の5つを挙げています。いずれも「二以上の意匠を包含する」または「同一の意匠」の要件を欠く例です。

# 認められない例(要旨、「」内は原文) 欠けている要件
(1) 一意匠一出願の原則(意匠法第7条)の要件を満たしている出願を、部品ごとなどに分割した場合 (3) 二以上の意匠の包含
(2) 「意匠法第8条に規定する要件を満たしている組物の意匠の意匠登録出願を、構成物品等ごとに分割した場合」 (3) 二以上の意匠の包含(組物は全体で一意匠)
(3) 「意匠法第8条の2に規定する要件を満たしている内装の意匠の意匠登録出願を、構成物品等ごとに分割した場合」 (3) 二以上の意匠の包含(内装は全体で一意匠)
(4) 「新たな意匠登録出願に表された意匠がもとの意匠登録出願に包含されていた二以上の意匠のいずれからみても要旨を変更するものである場合」 (4) 意匠の同一性
(5) 一意匠と認められる全体意匠または部分意匠の出願を、それとは異なる部分意匠の出願に分割した場合 (3)・(4)

〔表6〕適法な分割と認められない5類型(意匠審査基準 第VIII部 第1章 3.)。「欠けている要件」欄は〔表4〕との対応を本記事作成者が整理したもの。

組物・内装と分割:組物の意匠(意匠法第8条)や内装の意匠(第8条の2)は、複数の物品等から成っていても「全体として一つの意匠」として出願されているので、要件を満たしている限り「二以上の意匠を包含する」出願ではありません。したがって構成物品ごとの分割は認められません。逆に、第8条の要件を満たさず全体として一意匠と認められない組物の出願は、第10条の2に基づく分割が認められます。時期など他の分割要件も満たすことが必要です(審査基準第IV部第3章7.2)。

5. 分割の判断フロー

flowchart TB
  S["新たな出願が「分割」として提出された"] --> Q1{"もとの出願は
審査・審判・再審に
係属中か?"} Q1 -- "はい" --> Q2{"出願人は同一か?
(適法な承継を含む)"} Q2 -- "はい" --> Q3{"もとの出願は
二以上の意匠を包含するか?"} Q3 -- "はい" --> Q4{"新たな出願の意匠は
もとの出願に包含されていた
意匠のいずれかと同一か?"} Q4 -- "はい" --> OK["適法な分割
→ もとの出願の時にしたものとみなす
(第4条第3項・優先権手続は例外)"] Q1 -- "いいえ" --> NG["分割の要件を満たさない
→ 分割のあった時にしたものとして取り扱う"] Q2 -- "いいえ" --> NG Q3 -- "いいえ(要件を満たす組物・内装等の一意匠)" --> NG Q4 -- "いいえ(要旨変更)" --> NG style OK fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style NG fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図6】分割の適法性判断の分岐図(意匠審査基準 第VIII部 第1章 2.〜4. を本記事作成者がフロー化)。「はい」で下(主経路)、「いいえ」で右の終端に進む。凡例:緑=適法な分割(出願日が遡及する)/赤=要件を満たさない分割(出願日が遡及しない)。要件不備自体は拒絶理由ではない(〔表7〕)。

6. 要件を満たさない場合の効果 ― 「分割の時にしたもの」として扱う

意匠審査基準 第VIII部 第1章「4.」は、分割の要件を満たさない場合、「審査官は、新たな意匠登録出願は、もとの意匠登録出願の時にしたものとはみなさず、分割のあった時にしたものとして取り扱う」としています。つまり、新たな出願そのものが却下・拒絶されるのではなく、出願日の遡及効だけが失われ、その日付を前提に通常どおり審査されます。

場面 適法な分割 要件を満たさない「分割」
新たな出願の出願日 もとの出願の日(意匠法第10条の2第2項本文) 実際に分割の手続をした日
新規性(第3条第1項)・創作非容易性(第3条第2項)の判断基準時 もとの出願の日 分割の日。もとの出願の日から分割の日までに公知になった意匠が引用され得る
先願(第9条)・先願意匠の一部との関係(第3条の2) もとの出願の日を基準(第2項ただし書に第9条・第3条の2は挙げられていない) 分割の日を基準。もとの出願との先後関係が問題になり得る
存続期間(第21条第1項「意匠登録出願の日から二十五年」) もとの出願の日から起算(本記事作成者の整理。第2項ただし書に第21条は挙げられていない) 分割の日から起算
新規性喪失の例外の証明書・優先権証明書の提出期限 いずれの場合も分割の日を基準(第2項ただし書) 分割の日を基準

〔表7〕適法な分割と、要件を満たさない分割の効果の違い。「判断基準時」以下の行は条文の帰結を本記事作成者が整理したもの。

分割には、出願が特許庁の審査・審判・再審に係属していることが必要です。設定登録後や、取下げ・却下によって出願が終了した後は、この要件を満たしません。訴訟に係属しているだけの場合も含みません(第10条の2第1項、青本〔第22版〕1287〜1288頁)。また、意匠審査便覧17.02・17.03によれば、もとの出願から分割した意匠を削除する補正を分割と同時に行います。この削除は要旨変更と扱われません。なお二以上の意匠が残る場合には、一意匠になるまで不要なものを除けます。同時に補正しなかったときも、係属中なら補正できます。二以上の意匠を残したままでは第7条違反の拒絶理由が残り、拒絶査定に先立ち意見書提出の機会が与えられます(第19条が準用する特許法第50条)。分割の要件を満たさない新出願は実際の分割日にした出願として扱い、その日を基準に登録要件を審査します(審査基準第VIII部第1章)。

7. 特許法第44条・実用新案法との対比

特許法第44条は、e-Gov法令検索(2026年9月参照)では第1項〜第7項から成ります。意匠法第10条の2と並べると、時期・例外・救済規定の有無に大きな違いがあります。

項目 意匠法第10条の2 特許法第44条 実用新案法(第11条第1項で特許法第44条を準用)
対象 「二以上の意匠を包含する意匠登録出願の一部」 「二以上の発明を包含する特許出願の一部」 二以上の考案を包含する実用新案登録出願の一部(準用)
できる時期 「審査、審判又は再審に係属している場合に限り」(第1項)。手続の補正の時期(意匠法第60条の24「事件が審査、審判又は再審に係属している場合に限り」)と同じ枠組み 第1項各号:①明細書等を「補正をすることができる時又は期間内」(第1号)、②特許査定謄本送達日から「三十日以内」(第2号、一部の査定を除く)、③「拒絶をすべき旨の最初の査定」謄本送達日から「三月以内」(第3号) 特許法第44条第1項を準用。実用新案は査定を経ず設定登録する制度であり(実用新案法第14条)、査定後の第2号・第3号に対応する場面はない。第1号の「補正をすることができる時」は実用新案法第2条の2第1項本文・ただし書(「経済産業省令で定める期間」)による
査定後の分割期間の延長・追完 規定なし 第5項・第6項(期間延長時のみなし延長)、第7項(責めに帰することができない理由による追完:理由がなくなった日から14日〈在外者は2月〉以内で期間経過後6月以内) 準用条文には特許法第44条第5項〜第7項も含まれるが、これらは査定後の分割期間に関する規定。査定を経ない実用新案登録について、この査定後期間の延長・追完を用いる場面はない(実用新案法第11条第1項・第14条)
出願日の遡及(原則) 「もとの意匠登録出願の時にしたものとみなす」(第2項本文) 「もとの特許出願の時にしたものとみなす」(第2項本文) 同左(準用)
遡及の例外 第4条第3項(新規性喪失の例外の手続)、第15条第1項で準用する特許法第43条第1項・第2項(優先権主張の手続) 新たな出願が第29条の2の「他の特許出願」または実用新案法第3条の2の「特許出願」に該当する場合、および第30条第3項(新規性喪失の例外の手続) 同左(準用)
拡大先願(意匠法第3条の2/特許法第29条の2)との関係 第2項ただし書に第3条の2は挙げられていない 新たな出願が第29条の2の「他の特許出願」となる場面では遡及しない(ただし書) 同左(準用)
優先権証明書の提出期限の調整 第2項ただし書で第43条第2項の適用について遡及させない方法による 第3項で「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」と読み替える方法による 同左(準用)
書面の提出みなし 第3項(第4条第3項・優先権関係の書面) 第4項(第30条第3項・第41条第4項・第43条第1項・第2項関係の書面) 同左(準用)
審査基準上の位置づけ 一意匠一出願違反の救済(意匠審査基準 第VIII部 第1章 1.) 特許・実用新案審査基準 第VI部 第1章 第1節「特許出願の分割の要件」 ―

〔表8〕意匠法第10条の2・特許法第44条・実用新案法(特許法第44条準用)の対比表。条文の文言は e-Gov法令検索(2026年9月参照)による。

分割ができる期間の比較(イメージ)

査定の謄本送達(共通の基準日)

意匠法第10条の2第1項 審査に係属している間 (出願〜査定) 審判・再審に係属している間 (請求後〜審決等の確定まで) 条文上の期間の定めはなく、「係属している場合に限り」という状態が基準。箱は2つ。

特許法第44条第1項 補正をすることができる 時又は期間内(第1号) 特許査定の謄本送達から30日 (第2号) 最初の拒絶査定の謄本送達から3月 (第3号)

箱の数=分割ができる「窓」の数。意匠法は2つ(係属という状態が基準)、特許法は3つ(補正期間+査定の種類ごとの固定期間)。

紫の箱=意匠法で分割できる期間 青緑の箱=特許法で分割できる期間 縦の破線=共通の基準日

図は左右にスクロールできます。

【図7】分割ができる期間の比較(イメージ図。意匠法では「係属中」であることが基準で、査定後の固定期間はない。拒絶査定後も無条件に3月間分割できるという制度ではなく、特許庁での係属が要件)。意匠法のレーンの2つの箱の間には、係属していない期間があり得るため、連続した1本の帯としては描いていない。特許法第44条第1項第2号・第3号は査定の種類に応じた枝であり、両方が同時に走るわけではない。参照時点:2026年9月。(時間軸は縮尺なし)

8. 令和元年改正(令和2年4月1日施行)との関係

本記事で引用した意匠法第10条の2の条文は、e-Gov法令検索の現行法(2026年9月参照)です。令和元年改正では、意匠の定義(画像・建築物・内装)や関連意匠制度の拡充が行われましたが、第10条の2の「係属中に限り」「二以上の意匠を包含する」という骨格自体は改正前から引き継がれています。逐条解説は、令和元年の一部改正において、第15条でパリ条約の例による優先権の主張についての救済措置を規定している特許法第43条の2を新たに準用することとしたことに伴い、第10条の2について所要の改正を行った、と説明しています(青本〔第22版〕1288頁)。つまり令和元年改正が第10条の2に及ぼした変更は、第2項ただし書・第3項が引用する特許法の準用条文の整理にとどまり、第1項の分割の要件そのものは変わっていません。なお、令和元年改正の施行日が令和2年4月1日であること(一部の規定は令和3年4月1日施行)は、特許庁「令和元年意匠法改正特設サイト」(2026年9月参照)によります。第10条の2第2項ただし書・第3項のこの改正は、改正法附則第1条第4号により2021年4月1日に施行されました。新設された内装の意匠の保護は2020年4月1日以後の出願に適用されます(附則第2条第1項)。ただし、内装の意匠(第8条の2)が新設されたことに伴い、審査基準の「認められない例」に内装の意匠の分割が加わっている点(〔表6〕(3))は、令和2年4月1日以降の出願に関する取扱いです。

9. 補正・補正後の新出願(第17条の3)・変更との整理

制度 条文 場面 新たな出願の出願日
分割 意匠法第10条の2 二以上の意匠を包含する出願の一部を別出願にする もとの出願の日(例外あり)
補正 意匠法第60条の24、第9条の2、第17条の2 同じ出願の中で願書・図面等を直す。要旨変更は却下される (出願日は変わらない)
補正後の新出願 意匠法第17条の3 補正が要旨変更として却下された後、その補正後の意匠を新たな出願にする 手続補正書を提出した時(→ 記事 b13)
出願の変更 意匠法第13条 特許出願・実用新案登録出願を意匠登録出願に変える もとの出願の日(例外あり)(→ 記事 b15)

〔表9〕分割と隣接制度の整理。各制度の詳細は関連記事を参照。

10. 拒絶理由・無効理由との関係

論点 整理
分割の要件違反そのもの 意匠審査基準 第VIII部 第1章 4. によれば、効果は「分割のあった時にしたものとして取り扱う」ことであり、分割要件違反自体を理由に拒絶する扱いではない。分割要件違反は、意匠法第17条各号(拒絶理由)にも第48条第1項各号(無効理由)にも、独立の事由としては掲げられていません。第17条第1号が列挙するのは第3条・第3条の2・第5条・第8条・第8条の2・第9条第1項若しくは第2項・第10条第1項、第4項若しくは第6項・第15条第1項において準用する特許法第38条・第68条第3項において準用する同法第25条の各規定であり、第2号は条約違反、第3号は第7条(一意匠一出願)の要件不備、第4号は意匠登録を受ける権利を有しない者による出願です。第48条第1項第1号が列挙するのも第3条・第3条の2・第5条・第9条第1項若しくは第2項・第10条第6項・第15条第1項において準用する特許法第38条・第68条第3項において準用する同法第25条であり、いずれにも第10条の2は含まれていません(出典:e-Gov法令検索・法令ID 334AC0000000125、2026年9月参照)
遡及効を失った結果として生じる拒絶理由 分割の日を基準に、第3条第1項(新規性)・第3条第2項(創作非容易性)・第3条の2・第9条(先願)等が判断され、これらに該当すれば拒絶理由(第17条)・無効理由(第48条)となり得る(本記事作成者の整理)
もとの出願側 分割した意匠を削除する補正を分割と同時に行う。後から補正する場合も係属中に限る。二以上の意匠を残したままでは第7条違反の拒絶理由が残る(便覧17.02・17.03)

〔表10〕分割と拒絶理由・無効理由の関係。

11. 試験での問われ方

試験種別 学習用の問いの例 気をつける点
短答式 「拒絶査定謄本送達後30日以内に分割できる」といった特許法第44条の期間を意匠法に持ち込んだ枝/組物・内装の出願を構成物品ごとに分割できるかの枝/分割出願の出願日がいつになるかの枝 意匠法は「係属中に限り」で、査定後の固定期間はない。組物・内装は要件を満たす限り分割不可。遡及の例外は第4条第3項と優先権手続
論文式 一つの願書に複数の意匠が含まれる事例で、出願人が取り得る手段(補正・分割・第17条の3)を挙げさせ、出願日の扱いを説明させる 分割の4要件(時期・出願人同一・二以上の意匠の包含・同一性)を順に当てはめる。遡及の原則と例外を分けて書く
口述 「意匠登録出願の分割ができる時期は」「分割出願の出願日はいつとみなされるか、例外は」 第1項・第2項の文言を原文どおり言えるようにしておく

〔表11〕学習用の問いと確認点。出題実績や頻度の集計ではありません。

過去問との対応:令和8年度短答式〔意匠〕問2(公式正解4)の枝5は、組物全体として統一がないとの拒絶理由を受けた場合の分割を扱います。審査基準第IV部第3章7.2は、組物の要件を満たさない出願の分割を認めています。出典:公式問題・公式解答。正解番号は問題全体の答えです。
レベル3のまとめ

  • 審査基準の4要件:①審査・審判・再審に係属中、②出願人の同一(適法な承継を含む)、③もとの出願が二以上の意匠を包含、④新たな出願の意匠がもとの出願に包含されていた意匠のいずれかと同一。
  • 認められない5類型:一意匠の出願の分割、組物の構成物品ごとの分割、内装の構成物品ごとの分割、要旨変更となる分割、全体意匠・部分意匠を別の部分意匠に分割。
  • 要件を満たさない場合は却下ではなく「分割のあった時にしたものとして取り扱う」(遡及効の喪失)。
  • 特許法第44条との違い:意匠法には査定後の「30日・3月」の分割期間も、その延長・追完規定(特許法第44条第5項〜第7項)もない。遡及の例外の中身も異なる(意匠法:第4条第3項・優先権手続/特許法:第29条の2・実用新案法第3条の2・第30条第3項)。

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