MENU

小学生でも分かる意匠法|意匠法第7条・第8条・第8条の2 一意匠一出願・組物の意匠・内装の意匠 ― 「1つの出願に1つの意匠」の原則と、まとめて出せる2つの例外

小学生でもわかる意匠法 7:一意匠一出願と・組物・内装(第7条・第8条・第8条の2)

小学生でも分かる意匠法 / A. 登録要件・意匠 #7

PR この記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

意匠登録出願は「意匠ごと」に、つまり1つの出願に1つの意匠が原則です(意匠法第7条)。ただし、セットで使う複数の物品等を「組物の意匠」として(意匠法第8条)、お店やオフィスの内部を「内装の意匠」として(意匠法第8条の2)、それぞれ「一意匠」としてまとめて出願できる道が用意されています。この記事では、原則と2つの例外の関係、審査基準が定める要件、特許法第37条(発明の単一性)との違いを整理します。

条文:意匠法第7条、第8条、第8条の2(関連:第17条、第48条)審査基準:第II部 第2章「意匠ごとの出願」、第IV部 第3章「組物の意匠」、第IV部 第4章「内装の意匠」参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「1つの願書に1つのデザイン」が基本ルール

意匠登録の願書は、デザインを入れる「箱」だと思ってください。基本ルールは「1つの箱に、1つのデザインだけ」です。たとえば「新しい形のコップ」と「新しい形のお皿」を考えたら、箱は2つ必要です。1つの箱にコップとお皿を両方入れると、「箱を分けてください」と言われてしまいます。これが意匠法第7条のルールです。

例外1:セットで使うものは「組物(くみもの)」としてまとめてよい

でも、ナイフ・フォーク・スプーンのように、いっしょに使うのが当たり前のセットがあります。セット全体で「おそろい感」がそろっているなら、1つの箱にまとめて入れてよい、というのが意匠法第8条の「組物の意匠」です。

例外2:お店の中全体は「内装(ないそう)」としてまとめてよい

カフェの中を思い浮かべてください。テーブル、椅子、照明、カウンター、壁の飾り……。ひとつひとつは別の物ですが、お店の中全体で1つの雰囲気を作っています。この「部屋の中全体のデザイン」を1つの箱に入れられるようにしたのが、意匠法第8条の2の「内装の意匠」です。これは令和2年(2020年)4月1日から始まった比較的新しいルールです。

原則(第7条) 1つの箱に1つのデザイン コップ 1つ コップとお皿なら箱は2つ

例外1:組物(第8条) セットで使う物をまとめて1つ ナイフ・フォーク・スプーン… 「セット全体でおそろい」が条件

例外2:内装(第8条の2) 部屋の中全体を1つ 机・椅子・照明・壁… 「全体で1つの雰囲気」が条件 どちらの例外も、まとめたものが「一意匠」(1つのデザイン)として扱われる

図は左右にスクロールできます。

【図1】原則(1つの箱に1つ)と、2つの例外(組物・内装)のイメージ。物品は架空の例。

なぜ例外があるの?

セットや部屋の中は、ひとつひとつのデザインよりも「全体の組み合わせ方」に工夫があります。バラバラに出願すると、「組み合わせの良さ」が守れません。そこで、全体がまとまっているときだけ、まとめて1つのデザインとして守れるようにしたのです。

原則:1つの箱に1つ
組物:いっしょに使うセット
内装:部屋の中全体
共通のキーワード:「全体としてまとまっている」
レベル1のまとめ

  • 意匠登録出願は、1つの出願に1つのデザインが原則(意匠法第7条)。
  • いっしょに使うセットは「組物」として1つにまとめられる(意匠法第8条)。
  • お店などの部屋の中全体は「内装」として1つにまとめられる(意匠法第8条の2)。
  • どちらも「全体としてまとまっていること」が条件。

※どんなセットが「組物」になるか、「まとまっている」とはどういうことか、ルール違反のときどうなるかは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第7条 ― 一意匠一出願の原則

意匠法第7条(原文)
意匠登録出願は、経済産業省令で定めるところにより、意匠ごとにしなければならない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
要素 意味 補足
意匠登録出願は 主語。すべての意匠登録出願に適用される 部分意匠、画像、建築物の出願も同じ
経済産業省令で定めるところにより 細かい決め方は意匠法施行規則に委ねる 「意匠ごと」の具体的な単位(物品等の単位)は省令が定める(→レベル3)
意匠ごとに 1つの出願に1つの意匠 「一意匠一出願の原則」と呼ばれる
しなければならない 義務規定 満たさないと拒絶理由(意匠法第17条第3号)

〔表1〕意匠法第7条の要素分解。

第7条の趣旨(逐条解説)。特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』1270頁は、第7条について、意匠ごとに出願するのは当然のことのようであるが、一つの図面に多くの意匠を記載して出願する場合があるため、それを防ぐ趣旨で注意的に規定したものだと説明しています。本条に違反した場合は拒絶の理由となる(第17条)ことも同頁で述べられています。
同書1270〜1271頁は、令和元年改正前は意匠に係る物品を経済産業省令で定める「物品の区分」に基づいて記載することとしていたと説明します。これは、物品の記載を出願人の自由に任せると、例えば「陶器」という記載を認めた場合に「花瓶」と記載した場合よりも非常に広範な意匠の出願を認めたのと同じ結果になるためでした。しかし令和元年改正では、急速な技術革新に伴って市場に多様な新製品が流通する中で、出願人の便宜の観点からより柔軟な出願手続が必要であるとして物品の区分を廃止し、一意匠の対象となる一物品・一建築物・一画像の範囲を経済産業省令で定めることとした、とされています。あわせて、同一のデザイン・コンセプトに基づく形状等を別々の物品に応用したもの等を一括して出願するニーズが高まっていることを踏まえ、複数の意匠に係る出願を一の願書により行う手続についても経済産業省令で定めることとした、と説明されています。

第8条 ― 組物の意匠

意匠法第8条(原文)
同時に使用される二以上の物品、建築物又は画像であつて経済産業省令で定めるもの(以下「組物」という。)を構成する物品、建築物又は画像に係る意匠は、組物全体として統一があるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
要素 意味 ポイント
同時に使用される二以上の物品、建築物又は画像 一緒に使われる複数の物品等 物品だけでなく建築物・画像も構成要素になれる(令和元年改正で追加)
経済産業省令で定めるもの(以下「組物」という。) 省令(意匠法施行規則)の表に載っている組物に限られる 何でもセットにできるわけではない。省令の別表に載っているものだけ
組物全体として統一があるとき 全体としてのまとまりがあること 審査基準 第IV部 第3章 3.3 で判断類型が示される(→レベル3)
一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる 第7条の例外として、まとめて1つの意匠にできる できる規定(任意)。バラバラに出願してもよい

〔表2〕意匠法第8条の要素分解。

第8条の趣旨(逐条解説)。青本〔第22版〕1271〜1272頁は、第8条が昭和34年の現行法制定時に新設された規定であり、旧法(大正10年法)には規定がなかったものの、ディナーセットのように物品が一組として取引の目的となるときは一組の物品全体を一出願ですることが実務上認められていたため、この実務を「組物の意匠」として明文化したものだと説明しています。「組物全体として統一がある」場合の例として、同書は、せん茶セットの個々の物品にそれぞれ松・竹・梅の模様を現した場合(松竹梅という観念上の関連性による統一)や、ディナーセットの個々の物品に同一の模様(例えばバラの花)を施した場合(同一の模様による統一)を挙げています。
沿革について同書は、平成10年改正で、システムデザインやセットもののデザインが創作活動の実態として広く見られるようになったことを踏まえ、改正前1項の「慣習上組物として販売され」という要件を削除し、「二種以上の物品」を「二以上の物品」に改めたこと、また、組物を構成する個々の物品の意匠がそれ自体意匠登録を受けることができるものであることを求めていた改正前2項を、組物の意匠が組物全体としてのみ権利行使できることとの不整合を解消するために削除したことを説明しています。令和元年改正については、建築物・画像を意匠の保護対象に追加したことに伴い組物の構成要素に建築物・画像を加えたこと、及び、それまで認めていなかった組物の意匠についての部分意匠の出願を認めることとしたことが述べられています。

第8条の2 ― 内装の意匠

意匠法第8条の2(原文)
店舗、事務所その他の施設の内部の設備及び装飾(以下「内装」という。)を構成する物品、建築物又は画像に係る意匠は、内装全体として統一的な美感を起こさせるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
要素 意味 ポイント
店舗、事務所その他の施設の内部 人が使う施設の中 「その他の施設」の例示が広い(→レベル3)
設備及び装飾(以下「内装」という。) 家具・什器・照明・壁などの設備と飾り 「内装」の法律上の定義
を構成する物品、建築物又は画像に係る意匠 内装を作っている複数の物品等の意匠 組物と同じく、物品・建築物・画像のいずれも構成要素
内装全体として統一的な美感を起こさせるとき 全体として1つのまとまった美しさを感じさせること 第8条の「統一がある」と表現が異なる点に注意
一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる 第7条の例外 できる規定(任意)

〔表3〕意匠法第8条の2の要素分解。

第8条の2の趣旨(逐条解説)。青本〔第22版〕1273頁は、第8条の2が令和元年改正で新設された規定であり、店舗等の内装に特徴的な工夫を凝らしてブランド価値を創出した上でサービスの提供や製品の販売を行う企業が増加していることを受けて、内装デザインを意匠権で保護できるようにしたものだと説明しています。対象を「店舗、事務所その他の施設」と規定したのは、店舗デザインやオフィスデザイン等を内装の意匠の対象とするためであり、構成要素としては、店舗や事務所等の内部の什器(机、椅子、ソファ、棚、台、カウンター、照明等)や、床・壁・天井等の装飾及び画像が想定されるとされています。また、内装の意匠の本質は、家具や什器の組合せや配置、壁や床の装飾等によって統一的な美感が醸成される点にあることから、内装を構成する物品等に係る意匠が内装全体として統一的な美感を起こさせるときに限り、一意匠として出願・登録できることとした、と説明されています。内装の意匠についても組物の意匠と同様に部分意匠の登録が認められる旨も、同頁に記載があります。

3つの条文の関係

flowchart TB
  A["意匠登録出願をしたい"] --> B{"複数の物品等を
1つの出願にまとめたいか?"} B -- "はい" --> D{"どんなまとまりか?"} B -- "いいえ(意匠は1つ)" --> C["第7条どおり出願(原則)"] D -- "同時に使用されるセット(省令の組物)" --> E["第8条 組物の意匠として一意匠"] D -- "施設の内部の設備及び装飾" --> F["第8条の2 内装の意匠として一意匠"] D -- "どちらでもない" --> G["意匠ごとに分けて出願(第7条)"] style C fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style E fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style F fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style G fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図2】第7条(原則)と第8条・第8条の2(例外)の分岐図。凡例:緑=そのまま1つの出願として扱える/赤=意匠ごとに分けて出願する必要がある。

令和元年改正(令和2年4月1日施行)による変更:第8条の2(内装の意匠)は令和元年改正(令和元年法律第3号)で新設された条文です。また第8条は、改正前は組物の構成要素が「物品」に限られていましたが、現行法では「物品、建築物又は画像」となっています(改正前の条文は青本〔第22版〕1272頁の沿革の説明に基づく要旨であり、改正前の条文原文は本記事では引用していません)。改正前(令和2年3月31日以前の出願)と現行を区別してください。施行日は特許庁「令和元年意匠法改正特設サイト」(2026年9月参照)により、令和元年改正の規定の大半が令和2年4月1日に、残る一部が令和3年4月1日に施行されています。改正法附則第2条第1項により第8条・第8条の2の改正は2020年4月1日以後の出願に適用されます。第7条の出願手続の簡素化は附則第1条第4号に基づき2021年4月1日施行で、同日以後の出願に適用されます。
レベル2のまとめ

  • 第7条:意匠登録出願は「意匠ごとに」(一意匠一出願)。単位は経済産業省令が定める。
  • 第8条:「同時に使用される二以上の物品、建築物又は画像」で「経済産業省令で定めるもの」=組物。「組物全体として統一があるとき」に一意匠として出願・登録できる。
  • 第8条の2:「店舗、事務所その他の施設の内部の設備及び装飾」=内装。「内装全体として統一的な美感を起こさせるとき」に一意匠として出願・登録できる。
  • 第8条・第8条の2は「できる」規定であり、第7条の例外。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 第7条「意匠ごと」の判断(審査基準 第II部 第2章)

第7条は「意匠ごと」の単位を経済産業省令(意匠法施行規則)に委ねています。意匠は「物品等(物品・建築物・画像)の形状等」であるため(意匠法第2条第1項)、実務上は「1つの物品等について1つの形状等」が出願されているかという観点で判断されます。二以上の物品に係る意匠が1つの願書に含まれている場合や、部分意匠で物理的に離れた複数の部分が1つの意匠として認められない場合に、第7条の要件を満たさないとされます。

第7条が委任する経済産業省令は、意匠法施行規則です。同規則第7条(見出し「意匠に係る物品又は意匠に係る建築物若しくは画像の用途」)と第8条(見出し「組物」)は、それぞれ次のように定めています。

意匠法施行規則第7条(原文)
意匠法第七条の規定により意匠登録出願をするときは、意匠登録を受けようとする意匠ごとに、意匠に係る物品、意匠に係る建築物若しくは画像の用途、組物又は内装が明確となるように記載するものとする。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 335M50000400012)、2026年9月参照。
意匠法施行規則第8条(原文)
意匠法第八条の経済産業省令で定める組物は、別表のとおりとする。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 335M50000400012)、2026年9月参照。

つまり、「意匠ごと」であるかどうかは、願書において意匠に係る物品・建築物若しくは画像の用途・組物・内装が明確に記載され、それが一の意匠として特定できるかという形で判断されます。組物として出願できる組合せは、同規則の別表に掲げられたものに限られます(→レベル3の2.)。

審査基準第II部第2章2.1では、複数の構成物でも、特定の用途・機能を果たすために全てが必須なら一の物品等と判断します。例は容器付き固形のりやトランプです。用途・機能の結び付きがなくても、一体的に流通し、全構成物が形状等の密接な関連性を持って一体的に創作された場合は一の物品等と判断します。2.2では、離れた複数の登録対象部分は原則として別意匠ですが、形状等の一体性、機能的一体性、まとまりある部分を対象外にした場合、非開示部分で隔てられた場合という例外を定めています。 出典

2. 組物の意匠の3要件(審査基準 第IV部 第3章)

意匠審査基準 第IV部 第3章は、第8条の組物の意匠について、次の3つの要件を審査すると整理しています。

要件 内容(審査基準の整理) 満たさない場合
(1) 経済産業省令で定める組物の意匠に該当すること 意匠法施行規則の別表に掲げられた組物であること。表にない組み合わせは組物にならない 意匠法第8条違反として拒絶理由(意匠法第17条第1号)
(2) 同時に使用される二以上の物品、建築物又は画像であること 審査基準 3.2:現実に同一時刻にすべて使用される必要はなく、各構成物品等が組物の用途・機能や使用目的等に則した一連の使用の範囲内で用いられ、社会通念上一体的に流通するものであればよい。物品同士・建築物同士・画像同士のほか、これらを組み合わせたものも可 同上
(3) 組物全体として統一があること 審査基準 3.3:形状等の造形処理による統一、全体として一つのまとまった形状・模様、観念的関連による統一の3類型(下の〔表5〕) 同上

〔表4〕組物の意匠の3要件(意匠審査基準 第IV部 第3章 2.〜3.3 に基づく整理)。

類型(審査基準 3.3) 内容 架空の例
(1) 形状、模様、色彩の同じような造形処理による統一(3.3.1) 各構成物品等の形状が一定の秩序・基調で構成されている、同じような特徴を持った形状が表現されている、同じモチーフの模様が各物品に表現されている、形状と模様の組み合わせ、形状や模様と結びついた一定の色彩による統一 すべてのカトラリーの柄が同じ波形で、同じ縞模様が入っている
(2) 組物全体として一つのまとまった形状又は模様が表されている場合(3.3.2) 構成物品等が集合して一つのまとまりある形状を構成する、各物品の模様が集合して一つのまとまった模様を形成する、一定の色彩による統一 3つの小皿を並べると1枚の大きな花の絵になる
(3) 観念的関連による統一(3.3(3)) 物語性など、組物全体として観念的に関連がある印象を与えるもの 春・夏・秋・冬をテーマにした4つの湯のみ

〔表5〕「組物全体として統一がある」と認められる3類型。架空の例は本記事作成者による例示。

審査基準 第IV部 第3章 1. および 3.3 は、組物を構成する物品等の部分について意匠登録を受けようとする場合(組物の部分意匠)も認められるとし、その場合は「全ての構成物品等に意匠登録を受けようとする部分があり、かつ、全ての構成物品等の意匠登録を受けようとする部分に統一がある」ことを要件としています。

flowchart TB
  A["組物の意匠として出願"] --> B{"省令の別表に掲げる組物か?"}
  B -- "はい" --> C{"同時に使用される二以上の物品等か?"}
  B -- "いいえ" --> X1["第8条違反 → 拒絶理由(第17条第1号)"]
  C -- "はい" --> D{"組物全体として統一があるか?"}
  C -- "いいえ" --> X1
  D -- "はい" --> E["第8条の要件を満たす → 組物全体として新規性等を審査"]
  D -- "いいえ" --> X1
  style E fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style X1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図3】組物の意匠の審査の分岐図(意匠審査基準 第IV部 第3章の3要件をフロー化)。3つの要件を上から順に当てはめ、「はい」なら下へ、「いいえ」なら右の拒絶へ進む。凡例:緑=要件を満たす/赤=拒絶理由。

3要件を満たした組物の意匠は、審査基準 第IV部 第3章 4. により、組物全体として意匠法第3条第1項柱書(工業上利用性)、第3条第1項(新規性)、第3条第2項(創作非容易性)、第3条の2、第5条、第9条、第10条の各規定を審査されます。個々の構成物品等ごとに新規性を審査するのではない点が重要です。

3. 内装の意匠の3要件(審査基準 第IV部 第4章)

要件(審査基準 6.1.1) 内容 審査基準が挙げる例
(1) 店舗、事務所その他の施設の内部であること(6.1.1.1) その内部において人が一定時間を過ごすためのものであること。施設は不動産に限られず、簡易店舗・車両・旅客機・客船などの動産の内部も含む。床・壁・天井のいずれも開示されていない場合は要件を満たさない レストラン、カフェ、オフィス、映画館、ホテル客室、住宅のリビング・キッチン、学校の教室、診療室、航空機客室、客船客室など
(2) 複数の意匠法上の物品、建築物又は画像により構成されること(6.1.1.2) 二以上の構成物品等を含むこと。構成物には家具・什器・照明器具のほか、備え付けたモニターに表示される画像、プロジェクター投影画像、照明の点灯による模様・色彩も含めることができる 一つの物品等しか含まない場合は内装の意匠に該当しない
(3) 内装全体として統一的な美感を起こさせること(6.1.1.3) 審査基準は複数の類型を例示(要旨:構成物に共通の処理がされているもの/全体として一つの形状を表すもの/観念上の共通性があるもの/統一的な秩序に基づく配置がされているもの/統一的な創作思想に基づくもの) 統一的美感を起こさせない場合は第8条の2違反

〔表6〕内装の意匠の3要件(意匠審査基準 第IV部 第4章 6.1.1 に基づく整理。(3)の類型は要旨)。

審査基準 第IV部 第4章は、内装を構成する物として認められないもの(意匠法上の意匠を構成しないもの)として、人・動物、植物(造花を除く)、蒸気・煙・水などの不定形物、香りや音などの視覚以外の要素、自然の地形を挙げています。これらを含む出願は第8条の2の要件を満たさないとされます。

願書の「意匠に係る物品」の欄には「○○用内装」または「○○の内装」の形で記載し(例:「ホテルロビーの内装」「オフィスの執務室の内装」)、施設名だけで用途が不明確な記載(例:「ホテルの内装」)は避けるべきとされています。

第IV部第4章6.1.1.3は、共通の形状等の処理、全体として一つの形状・模様、観念上の共通性、統一的な秩序による配置、統一的な創作思想に基づく全体のまとまりを例示しています。列挙は限定ではなく、全体として視覚的なまとまりがあれば、全構成物への同じ処理までは求めません。部分意匠の場合は登録を受けようとする部分で判断します。 出典

4. 組物の意匠と内装の意匠の対比

観点 組物の意匠(第8条) 内装の意匠(第8条の2)
対象 同時に使用される二以上の物品、建築物又は画像 店舗、事務所その他の施設の内部の設備及び装飾
省令の限定 あり(「経済産業省令で定めるもの」に限られる) なし(条文に省令への委任がない)
統一性の要件の文言 「組物全体として統一があるとき」 「内装全体として統一的な美感を起こさせるとき」
構成要素 物品・建築物・画像(令和元年改正で建築物・画像を追加) 物品・建築物・画像
審査基準 第IV部 第3章 第IV部 第4章
制度の沿革 昭和34年の現行法制定時に新設。改正前は構成要素が物品のみ(青本〔第22版〕1271〜1272頁) 令和元年改正で新設(青本〔第22版〕1273頁)。施行日は令和2年4月1日(特許庁 令和元年意匠法改正特設サイト)
要件不備の効果 拒絶理由(第17条第1号)。無効理由ではない 拒絶理由(第17条第1号)。無効理由ではない
効果 一意匠として出願・登録(1つの意匠権) 一意匠として出願・登録(1つの意匠権)

〔表7〕組物の意匠と内装の意匠の対比表。

第7条・第8条・第8条の2 違反の効果 第7条違反 意匠ごとでない 第8条違反 組物の要件不備 第8条の2違反 内装の要件不備 拒絶理由:第17条第3号 拒絶理由:第17条第1号(第8条・第8条の2 が列挙されている) 無効理由(第48条第1項)には 第7条・第8条・第8条の2 のいずれも列挙されていない

条文違反の種類 拒絶理由(第17条)に当たる 破線=無効理由(第48条第1項)には当たらない

図は左右にスクロールできます。

【図4】拒絶理由と無効理由の該当関係(意匠法第17条・第48条第1項の条文に基づく。e-Gov法令検索、2026年9月参照)。

5. 拒絶理由・無効理由への該当関係

意匠法第17条第1号は「第三条、第三条の二、第五条、第八条、第八条の二、第九条第一項若しくは第二項……の規定により意匠登録をすることができないものであるとき」を、同条第3号は「その意匠登録出願が第七条に規定する要件を満たしていないとき」を拒絶理由として列挙しています。一方、意匠法第48条第1項第1号は「第三条、第三条の二、第五条、第九条第一項若しくは第二項、第十条第六項……」を無効理由とし、第7条・第8条・第8条の2は含まれていません。つまり、一意匠一出願・組物・内装の要件はいずれも拒絶理由ではあるが無効理由ではないことになります。審査基準 第IV部 第3章も、第8条の要件が無効理由とされていない旨を注記しています。

第7条違反の場合、出願人は補正(意匠法第9条の2、第17条の2、第17条の3 が関係)や分割(意匠法第10条の2)で対応することが考えられます。審査基準 第IV部 第3章 7.、第IV部 第4章 8.2 は、第8条・第8条の2の要件を満たさない場合に意匠法第10条の2に基づく分割が認められる旨を示しています。詳細は「補正・分割」の記事(第9条の2・第17条の2・第17条の3、第10条の2)で扱います。

6. 特許法第37条(発明の単一性)との対比

特許法第37条(原文)
二以上の発明については、経済産業省令で定める技術的関係を有することにより発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するときは、一の願書で特許出願をすることができる。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
観点 意匠法第7条・第8条・第8条の2 特許法第37条
原則 一意匠一出願(「意匠ごとに」) 一発明一出願が出発点だが、条文は「二以上の発明」を一の願書で出願できる場合を定める
複数をまとめる基準 組物(同時使用・省令指定・全体の統一)、内装(施設内部・統一的美感)。まとめたものは「一意匠」になる 「技術的関係」による発明の単一性。二以上の発明は二以上の発明のまま一の願書に含まれる
まとめた結果の権利 1つの意匠権(組物・内装全体として1つ) 請求項ごとに特許発明が存在(複数の発明に特許)
省令への委任 「意匠ごと」の単位(第7条)、組物の範囲(第8条) 「技術的関係」の内容(特許法施行規則)
要件不備の効果 拒絶理由(意匠法第17条第1号・第3号)。無効理由ではない 拒絶理由(特許法第49条第4号が「第三十七条に規定する要件を満たしていないとき」を掲げる)。無効理由ではない(特許法第123条第1項に第37条の列挙なし)。いずれもe-Gov法令検索、2026年9月参照
審査基準 意匠審査基準 第II部 第2章、第IV部 第3章・第4章 特許・実用新案審査基準 第II部 第3章「発明の単一性」

〔表8〕意匠法の一意匠一出願と特許法の発明の単一性の対比表。

特許法の「発明の単一性」は、性質の異なる複数の発明を1つの願書に「同居」させる制度です。これに対し意匠法の組物・内装は、複数の物品等をまとめて「1つの意匠」に「合体」させる制度です。「同居」と「合体」の違いを押さえると、権利の数(複数の特許発明 vs 1つの意匠権)の違いが理解しやすくなります。

7. 改正前と現行の区別

項目 改正前(令和2年3月31日以前の出願) 現行(令和2年4月1日以降の出願)
第8条 組物の構成要素 物品のみ(青本〔第22版〕1272頁の沿革の説明による要旨。改正前条文の原文は未引用) 物品、建築物又は画像
第8条の2 内装の意匠 規定なし。施設の内装全体を一意匠として出願する制度はなかった 新設。内装全体として統一的な美感を起こさせるときは一意匠として出願・登録可
意匠審査基準 改正前の審査基準 令和5年12月改訂の意匠審査基準(令和6年1月1日以降の出願に適用)

〔表9〕令和元年改正(令和元年法律第3号、令和2年4月1日施行)による新旧の区別。改正前の条文は要旨。

8. 試験での問われ方

試験種別 学習で整理したい論点 気をつける点
短答式 「組物の意匠は経済産業省令で定めるものに限られるか」「内装の意匠に省令の限定はあるか」「第8条違反は無効理由か」「組物の構成要素に建築物・画像は含まれるか」の正誤 省令限定の有無(組物:あり、内装:なし)、拒絶理由と無効理由の区別(〔表7〕【図4】)
論文式 複数物品を含む出願をどのように出願すべきか(第7条の原則→第8条・第8条の2の適用可否→分割)を検討させる事例 3要件を順に当てはめる(【図3】)。要件を満たさない場合の分割(意匠法第10条の2)まで書く
口述 「組物の意匠の要件を述べよ」「内装の意匠とは何か」 条文の文言(「組物全体として統一があるとき」「内装全体として統一的な美感を起こさせるとき」)を区別して述べる

〔表10〕学習時の論点整理。実際の出題例は下記の過去問紹介に示しています。

直近の出題例(令和8年度 弁理士試験 短答式〔意匠〕)。問2は「組物の意匠と内装の意匠についての出願」に関し正しいものを選ばせる問題で、枝1は異なる物品からなる組物、枝2は内装に画像の意匠を加えた場合、枝3は公知意匠から構成される内装、枝4は組物の一部のみについての通常実施権の許諾、枝5は統一性がないとされた場合の分割に関する枝です。また、問1(意匠法上の意匠及び意匠の実施に関し誤っているものを選ぶ問題)の枝2は組物の意匠の部分、枝3は内装の意匠の部分に関する枝です。
出典:特許庁「令和8年度弁理士試験 短答式筆記試験問題」(2026年9月参照)。枝の要旨は本記事作成者によるもので、枝の文言をそのまま引用したものではありません。公式正解は問2は4、問1は5です。 問題PDF/公式解答
レベル3のまとめ

  • 第7条「意匠ごと」の単位は省令が定める。違反は拒絶理由(第17条第3号)。
  • 組物の意匠の3要件:省令で定める組物であること/同時に使用される二以上の物品等であること/組物全体として統一があること(審査基準 第IV部 第3章)。統一の3類型は造形処理・一つのまとまった形状等・観念的関連。
  • 内装の意匠の3要件:施設の内部であること/複数の物品等で構成されること/内装全体として統一的な美感を起こさせること(審査基準 第IV部 第4章 6.1.1)。省令の限定はない。
  • 第7条・第8条・第8条の2違反はいずれも拒絶理由だが無効理由ではない(第48条第1項に列挙なし)。
  • 特許法第37条は複数の発明を一の願書に「同居」させる制度。意匠法の組物・内装は複数の物品等を「一意匠」に「合体」させる制度で、権利は1つ。

関連記事


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次