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小学生でも分かる実用新案法|実用新案法第26条 特許法の準用(効力の制限・技術的範囲・共有・先使用権・登録の効果) ― 「特許法のルールを借りてくる」条文の地図・権利編

小学生でもわかる実用新案法:特許法の準用(26条)

小学生でも分かる実用新案法 / C. 実用新案権の効力・実施権・侵害 #21

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実用新案権の「効力がおよばない場合」「どこまでが権利の範囲か」「みんなで持つときのきまり」「先に使っていた人の権利」「登録しないと効かないこと」は、実用新案法には書かれていません。そのかわり、実用新案法第26条が特許法の条文を準用(じゅんよう=借りて使う)しています。この記事は、第26条が「どの条文を借りて」「どの条文は借りていないか」を、一覧表と相関図で整理します。特許法側の中身は特許法シリーズの各記事にゆずり、ここでは「読みかえ」と「特許法との差」に紙幅を使います。

条文:実用新案法第26条関連:特許法第69条〜第71条の2、第73条、第76条、第79条、第79条の2、第81条、第82条、第97条、第98条/実用新案法第18条、第19条、第20条、第25条参照時点:2026年9月

目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「じゅんよう(準用)」って、なに?

学校に「特許クラス」と「実用新案クラス」があるとします。特許クラスには、分厚いルールブック(特許法)があります。実用新案クラスのルールブック(実用新案法)はうすくて、権利を持ったあとの細かいきまりがあまり書いてありません。

そこで実用新案クラスは、「特許クラスのルールブックの、このページとこのページは、うちのクラスでも同じように使います」と決めました。これが準用です。ページをコピーして持ってくるのではなく、「特許」と書いてあるところを「実用新案」と読みかえて使います。

実用新案法第26条は、権利を持ったあとのルール(「どんなときは権利がおよばないか」「権利の範囲はどう決めるか」「みんなで持つとき」「先に使っていた人」「登録しないと効かないこと」)について、特許法のページを借りてくる条文です。

特許クラスのルールブック (特許法) 第69条 効力がおよばない場合 第70条〜第71条の2 権利の範囲 第73条 みんなで持つとき 第79条ほか 先に使っていた人 第97条・第98条 登録しないと効かない ×第69条第3項・第80条…(借りないページ) 第26条で借りる 「特許」→「実用新案」に読みかえ 実用新案クラスのルールブック (実用新案法) 第16条 権利のちから 第18条〜第25条 貸す・担保にする 第26条←ここに借りたページが入る 第27条〜 侵害されたときの請求 実用新案法第26条は、権利を持ったあとのきまりを特許法から借りてくる「窓口」の条文

図は左右にスクロールできます。

凡例
実線の矢印=第26条で借りる(準用する)
点線の枠=借りないページ
×準用していない印

【図1】準用のイメージ。実用新案法第26条は、特許法のいくつかの条文を「実用新案権に準用する」と書くことで、実用新案権にも同じルールを使えるようにしている。点線+×のページ(特許法第69条第3項・第80条など)は借りていない(→レベル2)。※説明の都合上、条文の一部だけを代表として示し、条文の並び順どおりには描いていない。(2026年9月時点)

借りてくる5つのページ

第26条が借りてくるページは、大きく5つのグループに分けられます。

  • 権利がおよばない場合(特許法第69条第1項・第2項)― 実験のために使うときや、日本を通りすぎるだけの船・飛行機などには、権利がおよびません。
  • 権利の範囲の決め方(特許法第70条〜第71条の2)― 「どこまでがこの権利か」は、願書につけた「実用新案登録請求の範囲」という書類をもとに決めます。特許庁に「判定」をたのむこともできます。
  • みんなで持つとき(特許法第73条)― 権利を2人以上で持っているとき、自分の分だけを売るには、ほかの人の同意がいります。
  • 先に使っていた人などの権利(特許法第76条、第79条、第79条の2、第81条、第82条)― 出願より前から同じくふうを使っていた人は、そのまま使い続けられます。
  • 登録しないと効かないこと(特許法第97条第1項、第98条第1項第1号・第2項)― 権利を人にゆずったり、やめたりするときは、特許庁の帳簿(原簿)に登録しないと効きません。
レベル1のまとめ

  • 「準用」は、特許法のページを「特許」→「実用新案」と読みかえて使うこと。
  • 実用新案法第26条は、権利がおよばない場合・権利の範囲・共有・先に使っていた人の権利・登録の効果の5グループを特許法から借りている。
  • 借りていないページもある(例:くすりの調剤についての特許法第69条第3項)。

※どの条文を借り、どの条文を借りていないかは条文で決まっています。正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。


LEVEL 2条文の骨格

第26条の原文

実用新案法第26条(特許法の準用)特許法第六十九条第一項及び第二項、第七十条から第七十一条の二まで(特許権の効力が及ばない範囲及び特許発明の技術的範囲)、第七十三条(共有)、第七十六条(相続人がない場合の特許権の消滅)、第七十九条(先使用による通常実施権)、第七十九条の二(特許権の移転の登録前の実施による通常実施権)、第八十一条、第八十二条(意匠権の存続期間満了後の通常実施権)、第九十七条第一項(放棄)並びに第九十八条第一項第一号及び第二項(登録の効果)の規定は、実用新案権に準用する。

第26条は1項だけの条文で、内容は「準用する条文のリスト」です。したがって、この条文を理解するとは、リストの中身と、リストに入っていない条文の行き先を押さえることにほかなりません。

準用する特許法の条文一覧

グループ 準用される特許法の条文 特許法の見出し(原文のかっこ書き) 実用新案権に当てはめると(要旨)
① 効力の制限 第69条第1項 特許権の効力が及ばない範囲 試験又は研究のためにする登録実用新案の実施には効力が及ばない
第69条第2項 単に日本国内を通過するに過ぎない船舶・航空機等(第1号)、実用新案登録出願の時から日本国内にある物(第2号)には効力が及ばない
② 技術的範囲 第70条 特許発明の技術的範囲 登録実用新案の技術的範囲は「実用新案登録請求の範囲」の記載に基づいて定める。明細書・図面を考慮して用語を解釈し、要約書は考慮しない
第71条 登録実用新案の技術的範囲について特許庁に判定を求めることができる(3名の審判官)
第71条の2 裁判所からの鑑定の嘱託があれば特許庁長官は3名の審判官に鑑定させる
③ 共有 第73条 共有 持分の譲渡・質権設定には他の共有者の同意が必要。実施は同意なしで可(契約で別段の定めがある場合を除く)。専用実施権の設定・通常実施権の許諾には同意が必要
④ 消滅・法定通常実施権 第76条 相続人がない場合の特許権の消滅 民法第952条第2項の期間内に相続人である権利を主張する者がないときは実用新案権は消滅する
第79条 先使用による通常実施権 実用新案登録出願の際に日本国内で実施事業(または準備)をしていた者の先使用権
第79条の2 特許権の移転の登録前の実施による通常実施権 冒認等を理由とする移転請求(実用新案法第17条の2)で権利が移転する前に実施していた者の通常実施権
第81条 意匠権の存続期間満了後の通常実施権 抵触する意匠権の存続期間満了後の原意匠権者の通常実施権
第82条 同じ場合の意匠権の専用実施権者・通常実施権者の通常実施権(第2項:相当の対価)
⑤ 放棄・登録の効果 第97条第1項 放棄 専用実施権者・質権者があるときは、その承諾を得た場合に限り実用新案権を放棄できる
第98条第1項第1号・第2項 登録の効果 実用新案権の移転(相続その他の一般承継を除く)・信託による変更・放棄による消滅・処分の制限は登録しなければ効力を生じない。一般承継は遅滞なく届出

〔表1〕実用新案法第26条が準用する特許法の条文一覧(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。「実用新案権に当てはめると」の列は本記事作成者による要旨で、読みかえ(→レベル3)を前提とする。

準用マップ(相関図)

実用新案法(借りる側) 特許法(借りられる条文)

実用新案法第26条 「実用新案権に準用する」 準用先=実用新案権そのもの

第69条第1項・第2項(効力が及ばない範囲) 第70条(登録実用新案の技術的範囲) 第71条・第71条の2(判定・鑑定) 第73条(共有) 第76条(相続人がない場合の消滅) 第79条・第79条の2(先使用権・移転登録前の実施) 第81条・第82条(意匠権の存続期間満了後の通常実施権) 第97条第1項(放棄) 第98条第1項第1号・第2項(登録の効果)

① ② ③ ④ ⑤

第26条では準用していない条文(点線+×)と、実用新案法での行き先 第69条第3項(医薬の調剤) 第80条(無効審判請求登録前の実施) 第97条第2項・第3項(放棄) 第98条第1項第2号(専用実施権) 第98条第1項第3号(質権) ××××× 対応規定なし(実用新案は物品の考案のみが対象) 実用新案法第20条が直接規定(書き下ろし) 第18条第3項(専用実施権)・第19条第3項(通常実施権) 第18条第3項(専用実施権)で準用 第25条第3項(質権)で準用

図は左右にスクロールできます。

凡例
実線の矢印=実用新案法第26条が準用する
点線の矢印・点線の枠=第26条は準用しない
×第26条のリストに入っていない印
①〜⑤〔表1〕のグループ番号(①効力の制限/②技術的範囲/③共有/④消滅・法定通常実施権/⑤放棄・登録の効果)

【図2】実用新案法第26条の準用マップ。上半分の実線は第26条が「実用新案権に」準用する特許法の条文で、①〜⑤は〔表1〕のグループに対応する。下半分の点線+×は第26条のリストに入っていない条文で、それぞれ実用新案法の別の条文が受け持つ(第20条、第18条第3項、第19条第3項、第25条第3項)か、対応規定がない(第69条第3項)。各条の原文はe-Gov法令検索(2026年9月参照)。※説明の都合上、準用にともなう読みかえ(→レベル3)は図に描いていない。

準用していない条文は、どこへ行ったか

第26条に入っていない特許法の条文 実用新案法での扱い 根拠となる条文(取得原文)
第69条第3項(二以上の医薬を混合して製造される医薬の発明・その製造方法の発明に係る特許権は、処方せんによる調剤行為・調剤医薬に及ばない) 準用なし。実用新案の対象は「物品の形状、構造又は組合せ」に係る考案であり、医薬(物質)や方法は保護対象でないため、対応する場面がない 実用新案法第26条(リストに第69条第3項がない)。保護対象については知的財産権制度入門テキスト2025第2節「方法や物質は、実用新案法の保護対象となりません」
第80条(無効審判の請求登録前の実施による通常実施権=いわゆる中用権) 実用新案法第20条に書き下ろし。特許を無効にして実用新案権が残る場面(原特許権者等)についての通常実施権を定める 実用新案法第20条第1項・第2項
第97条第2項(専用実施権の放棄) 実用新案法第18条第3項で「専用実施権に」準用 実用新案法第18条第3項
第97条第3項(通常実施権の放棄) 実用新案法第19条第3項で「通常実施権に」準用 実用新案法第19条第3項
第98条第1項第2号(専用実施権の設定・移転等の登録の効果) 実用新案法第18条第3項で「専用実施権に」準用(第2項とともに) 実用新案法第18条第3項
第98条第1項第3号(質権の設定・移転等の登録の効果) 実用新案法第25条第3項で「実用新案権又は専用実施権を目的とする質権に」準用(第2項とともに) 実用新案法第25条第3項
第73条第1項(共有者の持分譲渡・質権設定の同意) 第26条で実用新案権に準用するほか、実用新案法第19条第3項で「通常実施権に」も準用(二重に出てくる) 実用新案法第26条、第19条第3項

〔表2〕第26条のリストに入っていない特許法の条文と、実用新案法での行き先。すべて取得した原文(e-Gov法令検索、2026年9月参照)で確認したもの。

実用新案法第18条第3項特許法第七十七条第三項から第五項まで(移転等)、第九十七条第二項(放棄)並びに第九十八条第一項第二号及び第二項(登録の効果)の規定は、専用実施権に準用する。
実用新案法第19条第3項特許法第七十三条第一項(共有)、第九十七条第三項(放棄)及び第九十九条(通常実施権の対抗力)の規定は、通常実施権に準用する。
実用新案法第25条第3項特許法第九十八条第一項第三号及び第二項(登録の効果)の規定は、実用新案権又は専用実施権を目的とする質権に準用する。
flowchart TD
  Q["特許法の『権利を持ったあと』の条文は、実用新案でどう扱われる?"] --> A{"第26条のリストに入っているか"}
  A -- "入っている" --> B["○ 実用新案権に準用(読みかえて適用)"]
  A -- "入っていない" --> C{"実用新案法の別の条文が受け持つか"}
  C -- "第18条第3項・第19条第3項・第25条第3項が準用" --> D["○ 専用実施権・通常実施権・質権に準用"]
  C -- "第20条が書き下ろし" --> E["△ 特許法第80条に相当する規定を実用新案法が直接定める"]
  C -- "どこにもない" --> F["× 適用なし(例:特許法第69条第3項)"]
  style B fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style D fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style E fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F
  style F fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
○ 準用される(実用新案法のどこかが借りる)
△ 準用ではなく実用新案法が自前で規定
× 実用新案法では適用がない

【図3】特許法の条文が実用新案法でどう扱われるかの分岐図。第26条は「実用新案権」に準用する窓口で、専用実施権・通常実施権・質権への準用は第18条・第19条・第25条がそれぞれ受け持つ。※説明の都合上、代表的な行き先のみを示した。

レベル2のまとめ

  • 実用新案法第26条は1項のみ。特許法第69条第1項・第2項、第70条〜第71条の2、第73条、第76条、第79条、第79条の2、第81条、第82条、第97条第1項、第98条第1項第1号・第2項を「実用新案権に」準用する。
  • 特許法第69条第3項(医薬の調剤)は準用されない。特許法第80条に相当する規定は実用新案法第20条が直接定める。
  • 特許法第97条第2項・第3項、第98条第1項第2号・第3号は、専用実施権・通常実施権・質権の条文(実用新案法第18条第3項、第19条第3項、第25条第3項)がそれぞれ準用する。


LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 「準用」の読みかえ ― 何を何に読むか

実用新案法第26条には、特許法第71条第3項のような明文の読替規定(「〜とあるのは〜と読み替える」)は置かれていません。したがって読みかえは、準用という法令用語の性質(対象の違いに応じて必要な修正を加えて適用すること)から導かれます。試験対策上は、次の対応関係を頭の中で置き換えられるようにしておくと、特許法の条文をそのまま実用新案権に当てはめて読めます。

特許法の条文中の語 実用新案権に準用するときの読み 読みの根拠となる実用新案法の条文
特許権 実用新案権 実用新案法第26条(「実用新案権に準用する」)
特許発明 登録実用新案 実用新案法第2条第2項(「登録実用新案」の定義)
発明 考案 実用新案法第2条第1項(「考案」の定義)
特許出願 実用新案登録出願 実用新案法第5条第1項
特許請求の範囲(第70条第1項・第2項) 実用新案登録請求の範囲 実用新案法第5条第2項(願書に「実用新案登録請求の範囲」を添付)
特許発明の技術的範囲(第70条・第71条・第71条の2) 登録実用新案の技術的範囲 同上
実施(第69条第1項、第73条第2項、第79条等) 実用新案法第2条第3項の「実施」(物品を製造・使用・譲渡・貸渡し・輸出・輸入・譲渡等の申出) 実用新案法第2条第3項
第74条第1項の規定による請求(第79条の2) 実用新案法第17条の2第1項の規定による請求(移転の特例) 実用新案法第17条の2第1項との対応(条文を照合)
第123条第1項第2号・第6号(第79条の2) 実用新案法第37条第1項第2号(共有違反部分)・第5号(冒認) 実用新案法第37条第1項第2号・第5号との対応(条文を照合)

〔表3〕準用にともなう読みかえの対応表。上段の6行は取得した定義規定・出願規定から直接導かれる。下段2行(第79条の2の中で引用されている特許法の条番号を実用新案法のどの条項に読むか)は本記事作成者の整理であり、各条の要件を照合した対応を示す。

根拠資料との照合:特許法第79条の2の移転請求に対応するのは実用新案法第17条の2第1項です。共有違反に当たる特許法第123条第1項第2号の部分は実用新案法第37条第1項第2号、冒認の同第6号は実用新案法の同第5号に対応します。各条の要件を照合した対応であり、第26条に明示された読替え表ではありません。実用新案法第17条の2・第26条・第37条。

2. 第69条 ― 第1項・第2項は準用、第3項は準用なし

特許法第69条第1項特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない。
特許法第69条第2項特許権の効力は、次に掲げる物には、及ばない。
一 単に日本国内を通過するに過ぎない船舶若しくは航空機又はこれらに使用する機械、器具、装置その他の物
二 特許出願の時から日本国内にある物
特許法第69条第3項(第26条では準用されない)二以上の医薬(人の病気の診断、治療、処置又は予防のため使用する物をいう。以下この項において同じ。)を混合することにより製造されるべき医薬の発明又は二以上の医薬を混合して医薬を製造する方法の発明に係る特許権の効力は、医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する行為及び医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する医薬には、及ばない。

第3項が準用されない理由は条文には書かれていませんが、第3項の対象が「医薬の発明」「医薬を製造する方法の発明」であるのに対し、実用新案法の保護対象は物品の形状、構造又は組合せに係る考案に限られ、物質や方法は対象外である(知的財産権制度入門テキスト2025第2節)ことから、そもそも当てはめる場面がない、という整理ができます(この整理は本記事作成者によるもの)。第2項第2号の「特許出願の時」は「実用新案登録出願の時」と読みます。

3. 第70条・第71条・第71条の2 ― 技術的範囲と判定

特許法第70条第1項特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。
特許法第70条第2項前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。
特許法第70条第3項前二項の場合においては、願書に添付した要約書の記載を考慮してはならない。
特許法第71条第1項特許発明の技術的範囲については、特許庁に対し、判定を求めることができる。
特許法第71条第2項特許庁長官は、前項の規定による求があつたときは、三名の審判官を指定して、その判定をさせなければならない。
特許法第71条第4項前項において読み替えて準用する第百三十五条の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。

特許法第71条第3項は、判定の手続に審判の規定(第131条第1項ほか多数)を準用し、「審決」を「決定」に読み替えるなどの読替えを定める長文の項です(原文を照合し、ここでは手続規定の列挙を省略)。第26条は「第七十条から第七十一条の二まで」を丸ごと準用しているので、この第3項・第4項も実用新案権に準用されます。

特許法第71条の2第1項特許庁長官は、裁判所から特許発明の技術的範囲について鑑定の嘱託があつたときは、三名の審判官を指定して、その鑑定をさせなければならない。
特許法第71条の2第2項第百三十六条第一項及び第二項、第百三十七条第二項並びに第百三十八条の規定は、前項の鑑定の嘱託に準用する。

実用新案の特徴として、登録実用新案には「実用新案技術評価」(実用新案法第12条・第13条)という別の制度があります。技術的範囲の「判定」(第71条の準用)と「技術評価書」は別の制度で、判定は技術的範囲(ある物品がその権利の範囲に入るか)についての特許庁の見解、技術評価は登録性(新規性・進歩性等)についての評価です。混同しないよう注意してください(詳細は実用新案法第12条・第13条の記事、第29条の2の記事)。

4. 第73条 ― 共有。第26条と第19条第3項の二重準用

特許法第73条第1項特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。
特許法第73条第2項特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる。
特許法第73条第3項特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない。

実用新案権が共有の場合は第26条で第73条全体(第1項〜第3項)が準用され、通常実施権が共有の場合は実用新案法第19条第3項で第73条第1項のみが準用されます。「実用新案権の共有=3項すべて」「通常実施権の共有=第1項のみ」という差は、特許法(第73条=特許権、第94条で通常実施権に第73条第1項を準用)の構造と同じです。

5. 第76条・第79条・第79条の2・第81条・第82条 ― 消滅と法定通常実施権

特許法第76条特許権は、民法第九百五十二条第二項の期間内に相続人である権利を主張する者がないときは、消滅する。
特許法第79条特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。
特許法第79条の2第1項第七十四条第一項の規定による請求に基づく特許権の移転の登録の際現にその特許権、その特許権についての専用実施権又はその特許権若しくは専用実施権についての通常実施権を有していた者であつて、その特許権の移転の登録前に、特許が第百二十三条第一項第二号に規定する要件に該当すること(その特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に規定する要件に該当することを知らないで、日本国内において当該発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているものは、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。
特許法第79条の2第2項当該特許権者は、前項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。
特許法第81条特許出願の日前又はこれと同日の意匠登録出願に係る意匠権がその特許出願に係る特許権と抵触する場合において、その意匠権の存続期間が満了したときは、その原意匠権者は、原意匠権の範囲内において、当該特許権又はその意匠権の存続期間の満了の際現に存する専用実施権について通常実施権を有する。
特許法第82条第1項特許出願の日前又はこれと同日の意匠登録出願に係る意匠権がその特許出願に係る特許権と抵触する場合において、その意匠権の存続期間が満了したときは、その満了の際現にその意匠権についての専用実施権又はその意匠権若しくは専用実施権についての通常実施権を有する者は、原権利の範囲内において、当該特許権又はその意匠権の存続期間の満了の際現に存する専用実施権について通常実施権を有する。
特許法第82条第2項当該特許権者又は専用実施権者は、前項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。

ここで注目すべきは、特許法第80条が第26条のリストにないことです。第80条に相当する内容は、実用新案法第20条が直接書いています。

特許法第80条第1項(第26条では準用されない)次の各号のいずれかに該当する者であつて、特許無効審判の請求の登録前に、特許が第百二十三条第一項各号のいずれかに規定する要件に該当することを知らないで、日本国内において当該発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているものは、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許を無効にした場合における特許権又はその際現に存する専用実施権について通常実施権を有する。
一 同一の発明についての二以上の特許のうち、その一を無効にした場合における原特許権者
二 特許を無効にして同一の発明について正当権利者に特許をした場合における原特許権者
三 前二号に掲げる場合において、特許無効審判の請求の登録の際現にその無効にした特許に係る特許権についての専用実施権又はその特許権若しくは専用実施権についての通常実施権を有する者
実用新案法第20条第1項次の各号のいずれかに該当する者であつて、特許法第百二十三条第一項の特許無効審判(以下この項において単に「特許無効審判」という。)の請求の登録前に、特許が同条第一項各号のいずれかに規定する要件に該当することを知らないで、日本国内において当該発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているものは、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許を無効にした場合における実用新案権又はその際現に存する専用実施権について通常実施権を有する。
一 実用新案登録に係る考案と特許に係る発明とが同一である場合において、特許を無効にした場合における原特許権者
二 特許を無効にしてその発明と同一の考案について正当権利者に実用新案登録をした場合における原特許権者
三 前二号に掲げる場合において、特許無効審判の請求の登録の際現にその無効にした特許に係る特許権についての専用実施権又はその特許権若しくは専用実施権についての通常実施権を有する者
実用新案法第20条第2項当該実用新案権者又は専用実施権者は、前項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。

特許法第80条第1項第1号は「同一の発明についての二以上の特許のうち、その一を無効にした場合の原特許権者」で、無効になる権利も残る権利も特許です。これに対し、取得した実用新案法第20条第1項の各号は、「特許を無効にした場合の原特許権者等」が、残った実用新案権について通常実施権を持つ場面を定めています。無効になる権利(特許)と残る権利(実用新案権)の種類が異なるため、特許法第80条をそのまま準用するのではなく、実用新案法が独自に書き下ろしている、と読めます(青本第22版・第20条、冊子1005頁は、実体審査を経ない原実用新案権者等に中用権を認めない旨を説明)。

根拠資料との照合:第20条第1項の三つの号はいずれも、特許を無効にした場合の原特許権者等を対象にしています。実用新案登録を無効にされた原実用新案権者は列挙されていません。無効理由を知らず、日本国内で事業として実施又はその準備をしているなど、柱書の要件も必要です。実用新案法第20条。

6. 第97条第1項・第98条第1項第1号・第2項 ― 放棄と登録の効果は3つの条文に分散

特許法第97条第1項特許権者は、専用実施権者又は質権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その特許権を放棄することができる。
特許法第98条第1項次に掲げる事項は、登録しなければ、その効力を生じない。
一 特許権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、信託による変更、放棄による消滅又は処分の制限
二 専用実施権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同又は特許権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
三 特許権又は専用実施権を目的とする質権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同又は担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
特許法第98条第2項前項各号の相続その他の一般承継の場合は、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届け出なければならない。
特許法の条文 対象 実用新案法で準用する条文 準用先の権利
第97条第1項 特許権の放棄(専用実施権者・質権者の承諾) 第26条 実用新案権
第97条第2項 専用実施権の放棄 第18条第3項 専用実施権
第97条第3項 通常実施権の放棄 第19条第3項 通常実施権
第98条第1項第1号 特許権の移転等は登録が効力発生要件 第26条 実用新案権
第98条第1項第2号 専用実施権の設定・移転等 第18条第3項 専用実施権
第98条第1項第3号 質権の設定・移転等 第25条第3項 実用新案権・専用実施権を目的とする質権
第98条第2項 一般承継の届出 第26条・第18条第3項・第25条第3項(それぞれ) 上記各権利

〔表4〕特許法第97条・第98条が実用新案法のどの条文で準用されているか。「号」ごとに準用先が異なる点が第26条の読み方のポイント(各原文はe-Gov法令検索、2026年9月参照)。

flowchart LR
  P98["特許法第98条第1項"] --> N1["第1号 実用新案権の移転・放棄等"]
  P98 --> N2["第2号 専用実施権の設定・移転等"]
  P98 --> N3["第3号 質権の設定・移転等"]
  N1 --> J26["○ 実用新案法第26条(実用新案権)"]
  N2 --> J18["△ 実用新案法第18条第3項(専用実施権)"]
  N3 --> J25["△ 実用新案法第25条第3項(質権)"]
  style J26 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style J18 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F
  style J25 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
○ 第26条が受け持つ
△ 第26条以外の条文が受け持つ

【図4】特許法第98条第1項の各号が実用新案法の3つの条文に分かれて準用されている様子。第26条が受け持つのは第1号(実用新案権自体)だけ。※説明の都合上、第98条第2項(一般承継の届出)は図に描いていない(→〔表4〕)。

7. 特許法との対比

論点 特許法(特許権) 実用新案法(実用新案権) 差分・注意点
効力が及ばない範囲 第69条第1項〜第3項が直接適用 第26条で第69条第1項・第2項を準用 第3項(医薬の調剤)は準用なし。方法・物質は保護対象外のため
技術的範囲の決め方 第70条(特許請求の範囲) 第26条で第70条を準用(実用新案登録請求の範囲) 読みかえのみ。図面が必須(実用新案法第5条第2項)なので第70条第2項の「図面」は常に存在する
判定・鑑定 第71条・第71条の2 第26条で準用 実用新案には技術評価(第12条・第13条)が別にある。判定=技術的範囲、技術評価=登録性
共有 第73条(特許権)、第94条で通常実施権に第73条第1項準用 第26条で第73条準用、第19条第3項で通常実施権に第73条第1項準用 構造は同じ
相続人不存在 第76条 第26条で準用 差なし
先使用権 第79条 第26条で準用 「特許出願の際」→「実用新案登録出願の際」
無効審判請求登録前の実施(中用権) 第80条 第20条に書き下ろし(第26条では準用しない) 実用新案法第20条は「特許を無効にした場合」の原特許権者等を対象とする(取得原文どおり)
移転登録前の実施 第79条の2 第26条で準用 条文中の特許法の条番号は実用新案法の対応条文に読む(各条の要件を照合した〔表3〕参照)
意匠権満了後の通常実施権 第81条・第82条 第26条で準用 差なし
放棄 第97条第1項〜第3項 第1項→第26条、第2項→第18条第3項、第3項→第19条第3項 権利の種類ごとに準用条文が分かれる
登録の効果 第98条第1項第1号〜第3号・第2項 第1号→第26条、第2号→第18条第3項、第3号→第25条第3項(第2項は各条で) 同上

〔表5〕特許法との対比。実用新案法は、特許法で1条にまとまっている内容を「権利の種類ごとに別の条文で準用する」構造をとる(各原文はe-Gov法令検索、2026年9月参照)。

8. 試験での問われ方

試験種別 問われ方の傾向(本記事作成者の整理) 気をつける点
短答式 「実用新案権について特許法第○条は準用されるか」「専用実施権の設定は登録しなければ効力を生じないか」など、準用の有無と準用先の条文を問う枝 第69条第3項・第80条が第26条にないこと。第98条第1項第2号・第3号は第18条第3項・第25条第3項であること。「準用される」だけでなく「どの条文で」まで押さえる
論文式 実用新案権の侵害・権利行使の事例で、先使用権(第79条準用)・技術的範囲(第70条準用)・共有(第73条準用)を実用新案法第26条経由で論じる場面 答案に「実用新案法第26条で準用する特許法第79条」と根拠条文を必ず書く。第29条の2(技術評価書提示後の権利行使)との組合せ
口述 「実用新案法第26条が準用する特許法の条文を挙げよ」「準用されていないものは何か、なぜか」 第69条第3項が準用されない理由(物質・方法は保護対象外)を自分の言葉で説明できるようにする

〔表6〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

根拠資料との照合:問6の正解は3です。技術評価書が作成されていなくても侵害罪の処罰を免れるわけではありません。第26条の準用そのものを問う肢ではなく、民事上の権利行使と刑事罰の区別を確認する問題です。 令和8年度の問題/公式解答。肢ごとの説明は条文との照合によるもので、公式解答が示す正解番号と区別しています。
レベル3のまとめ

  • 第26条には明文の読替規定がない。「特許権→実用新案権」「特許発明→登録実用新案」「特許請求の範囲→実用新案登録請求の範囲」「特許出願→実用新案登録出願」と、実用新案法第2条・第5条の用語に置き換えて読む。
  • 特許法第69条第3項(医薬の調剤)は準用なし。実用新案の保護対象が物品の形状・構造・組合せに限られるため。
  • 特許法第80条は準用せず、実用新案法第20条が「特許を無効にした場合の原特許権者等」の通常実施権を書き下ろす。
  • 放棄(第97条)と登録の効果(第98条)は、実用新案権=第26条、専用実施権=第18条第3項、通常実施権=第19条第3項、質権=第25条第3項に分散して準用される。
  • 判定(第71条準用)は技術的範囲の見解、技術評価書(第12条・第13条)は登録性の評価。別制度。

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