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小学生でも分かる実用新案法|実用新案法第12条・第13条 実用新案技術評価 ― 無審査で登録された権利の「あとから成績表」

小学生でもわかる実用新案法:実用新案技術評価(12条13条)

小学生でも分かる実用新案法 / B. 出願・登録・評価の手続 #12

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実用新案は中身を審査せずに登録されます。そのかわり、「この考案は本当に新しいのか」を特許庁の審査官があとから調べて成績表にしてくれる制度が実用新案技術評価です。だれでも、いつでも(権利が消えた後でも)請求でき、いったん請求したら取り下げられません。この成績表(実用新案技術評価書)を相手に見せて警告しなければ、権利を行使できません(第29条の2)。

条文:実用新案法第12条、第13条関連:実用新案法第3条、第3条の2、第7条、第14条の2、第29条の2、特許法第46条の2、第47条、第48条の3参照時点:2026年9月

目次

LEVEL 1イメージでつかむ

テストなしでもらえる「合格証」

特許は、特許庁の審査官という先生が「本当に新しいアイデアか」をテストしてから合格証(特許権)をくれます。ところが実用新案は、書類の形がととのっていれば、テストをせずにすぐ合格証(実用新案権)をくれます。はやくもらえるのはうれしいのですが、「テストをしていないのだから、本当はダメなアイデアかもしれない」という弱点があります。

そこで実用新案法には、あとから先生にチェックしてもらうしくみがあります。それが実用新案技術評価です。頼まれた審査官は、むかしの本や特許の資料を調べて、「このアイデアは新しいか、かんたんに思いつくものではないか」を成績表にまとめます。この成績表を実用新案技術評価書といいます。

請求人 何人も(他人でもよい) 特許庁長官 受付・公報掲載・通知 審査官 調べて評価書を作る 実用新案技術評価書 評価1〜6(→【図4】) 出願人・権利者 第三者が請求したとき ① 請求 ② 作成させる ③ 評価書の作成 ⑥ 謄本の送達 ④ 請求があった旨の通知 ⑤ 謄本の送達

図は左右にスクロールできます。

凡例
当事者(請求人・出願人・権利者)
特許庁の側(長官・審査官)
任意の手続(請求するかどうかは自由)
請求があれば必ず行われる手続
①〜⑥矢印の順番

【図1】実用新案技術評価の登場人物と順番。請求できるのは「何人も」(権利者本人でも他人でもよい)。④と⑥は、請求人が出願人・権利者でないときに加わる(第13条第2項・第3項)。※説明の都合上、実用新案公報への掲載(第13条第1項)は【図2】に、請求の取下げができないこと(第12条第6項)・権利消滅後も請求できること(第12条第2項)は本文に回した。

「だれでも」「いつでも」「取り消せない」

  • だれでも:権利を持っている本人だけでなく、ライバル会社など他の人も頼めます。「あの人の実用新案、本当は新しくないんじゃない?」と調べてもらえるのです。
  • いつでも:権利が終わったあとでも頼めます(ただし、無効審判で「はじめから無かったこと」にされた後はダメです)。
  • 取り消せない:いったん頼んだら、「やっぱりやめます」はできません。

成績表がないと、相手に文句を言えない

実用新案の権利者が「まねをやめて!」と相手に言う(権利を行使する)ときは、まずこの成績表を見せて警告しなければなりません(実用新案法第29条の2)。テストをしていない合格証だけで相手をおどかすのはフェアではないからです。だから、実用新案技術評価は「権利を使うための入場券」でもあります。

レベル1のまとめ

  • 実用新案は無審査で登録される。そのかわり、あとから審査官に「新しいか」を調べてもらう制度が実用新案技術評価(第12条・第13条)。
  • だれでも、権利が終わった後でも請求できる。請求は取り下げられない。
  • 成績表(実用新案技術評価書)を見せて警告しないと権利を行使できない(第29条の2)。

※「だれでも・いつでも」には例外があり、評価される項目も決まっています。正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。


LEVEL 2条文の骨格

第12条(実用新案技術評価の請求)の7つの項

項 内容(要旨) キーワード
第1項 何人も、特許庁長官に、実用新案登録出願に係る考案または登録実用新案について、第3条第1項第3号・第2項(文献公知考案に基づくものに限る)、第3条の2、第7条第1項〜第3項・第6項に係る技術的な評価(=実用新案技術評価)を請求できる。二以上の請求項があるときは請求項ごとに請求できる 何人も/請求項ごと/評価の対象規定
第2項 実用新案権の消滅後も請求できる。ただし、実用新案登録無効審判により無効にされた後は不可 消滅後も可/無効後は不可
第3項 その実用新案登録に基づいて特許法第46条の2第1項の特許出願がされた後は請求できない 実用新案登録に基づく特許出願の後は不可
第4項 特許庁長官は、請求があったときは審査官に実用新案技術評価の報告書(=実用新案技術評価書)を作成させなければならない 審査官が作成
第5項 特許法第47条第2項(審査官の資格は政令で定める)を評価書の作成に準用 審査官の資格
第6項 請求は取り下げることができない 取下げ不可
第7項 出願人・権利者でない者が請求した後に、その実用新案登録に基づく特許出願(特許法第46条の2第1項)がされたときは、その請求はされなかったものとみなす。特許庁長官は請求人に通知 第三者請求の失効擬制

〔表1〕実用新案法第12条の項ごとの内容(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。

実用新案法第12条第1項実用新案登録出願又は実用新案登録については、何人も、特許庁長官に、その実用新案登録出願に係る考案又は登録実用新案に関する技術的な評価であつて、第三条第一項第三号及び第二項(同号に掲げる考案に係るものに限る。)、第三条の二並びに第七条第一項から第三項まで及び第六項の規定に係るもの(以下「実用新案技術評価」という。)を請求することができる。この場合において、二以上の請求項に係る実用新案登録出願又は実用新案登録については、請求項ごとに請求することができる。

ポイントは「技術的な評価であつて、…の規定に係るもの」という限定です。評価されるのは、第3条第1項第3号(刊行物等に載っている考案=文献公知考案の新規性)、第3条第2項(文献公知考案に基づく進歩性)、第3条の2(拡大先願)、第7条第1項〜第3項・第6項(先願)だけです。公然実施や公然知られた考案(第3条第1項第1号・第2号)に基づく新規性、明細書の記載要件、産業上利用可能性などは評価の対象ではありません。

実用新案法第12条第2項前項の規定による請求は、実用新案権の消滅後においても、することができる。ただし、実用新案登録無効審判により無効にされた後は、この限りでない。
実用新案法第12条第3項前二項の規定にかかわらず、第一項の規定による請求は、その実用新案登録に基づいて特許法第四十六条の二第一項の規定による特許出願がされた後は、することができない。
実用新案法第12条第4項特許庁長官は、第一項の規定による請求があつたときは、審査官にその請求に係る実用新案技術評価の報告書(以下「実用新案技術評価書」という。)を作成させなければならない。
実用新案法第12条第5項特許法第四十七条第二項の規定は、実用新案技術評価書の作成に準用する。
実用新案法第12条第6項第一項の規定による請求は、取り下げることができない。
実用新案法第12条第7項実用新案登録出願人又は実用新案権者でない者から第一項の規定による請求があつた後に、その請求に係る実用新案登録(実用新案登録出願について同項の規定による請求があつた場合におけるその実用新案登録出願に係る実用新案登録を含む。)に基づいて特許法第四十六条の二第一項の規定による特許出願がされたときは、その請求は、されなかつたものとみなす。この場合において、特許庁長官は、その旨を請求人に通知しなければならない。

第13条(公報掲載・通知・送達)の3つの項

項 内容(要旨) 相手
第1項 請求があった旨を実用新案公報に掲載する。実用新案掲載公報の発行前の請求なら発行の際またはその後遅滞なく、発行後の請求ならその後遅滞なく 世の中(公示)
第2項 出願人・権利者でない者から請求があったときは、その旨を出願人・権利者に通知する 出願人・権利者
第3項 評価書が作成されたら、その謄本を送達する。請求人が出願人・権利者なら請求人に。請求人が出願人・権利者でないなら請求人及び出願人・権利者に 請求人(+出願人・権利者)

〔表2〕実用新案法第13条の項ごとの内容(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。

実用新案法第13条第1項特許庁長官は、実用新案掲載公報の発行前に実用新案技術評価の請求があつたときは当該実用新案掲載公報の発行の際又はその後遅滞なく、実用新案掲載公報の発行後に実用新案技術評価の請求があつたときはその後遅滞なく、その旨を実用新案公報に掲載しなければならない。
実用新案法第13条第2項特許庁長官は、実用新案登録出願人又は実用新案権者でない者から実用新案技術評価の請求があつたときは、その旨を実用新案登録出願人又は実用新案権者に通知しなければならない。
実用新案法第13条第3項特許庁長官は、実用新案技術評価書の作成がされたときは、その謄本を、請求人が実用新案登録出願人又は実用新案権者であるときは請求人に、請求人が実用新案登録出願人又は実用新案権者でないときは請求人及び実用新案登録出願人又は実用新案権者に送達しなければならない。

手続の流れ

flowchart LR
  subgraph R["請求人(何人も)"]
    A["実用新案技術評価の請求
第12条第1項"] A6["評価書の謄本を受け取る
第13条第3項"] end subgraph C["特許庁"] B1["請求があった旨を
実用新案公報に掲載
第13条第1項"] B2["審査官が実用新案技術評価書を作成
第12条第4項・第5項"] end subgraph H["出願人・実用新案権者"] D1["請求があった旨の通知を受ける
第13条第2項"] D2["評価書の謄本を受け取る
第13条第3項"] end A -. "① 任意の請求" .-> B1 B1 --> |"②"| B2 B1 --> |"③ 請求人が出願人・権利者でないときだけ"| D1 B2 --> |"④"| A6 B2 --> |"⑤ 請求人が出願人・権利者でないときだけ"| D2 style A6 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style D2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
任意の手続(請求するかどうかは自由)
請求があれば必ず行われる手続
評価書の謄本を受け取る(手続の終わり)
①〜⑤手続の順番

【図2】請求から評価書の謄本送達までの流れを、請求人/特許庁/出願人・権利者のレーンに分けたもの。第三者が請求したときだけ、権利者への「通知」(③)と「謄本の送達」(⑤)が加わる。※説明の都合上、第12条第3項・第7項(実用新案登録に基づく特許出願との関係)は【図6】に回した。

レベル2のまとめ

  • 第12条第1項:何人も、請求項ごとに請求できる。評価の対象は第3条第1項第3号・第2項(文献公知考案)、第3条の2、第7条第1項〜第3項・第6項に限られる。
  • 第12条第2項・第3項:権利消滅後も可。ただし無効審判で無効にされた後、実用新案登録に基づく特許出願がされた後は不可。
  • 第12条第4項〜第6項:審査官が作成(資格は特許法第47条第2項の準用)。請求は取下げ不可。第7項:第三者請求の後に実用新案登録に基づく特許出願があれば請求はされなかったものとみなす。
  • 第13条:公報掲載(第1項)、第三者請求のときは権利者に通知(第2項)、評価書の謄本を請求人(と権利者)に送達(第3項)。


LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 請求の可否の分岐(第12条第1項〜第3項・第7項)

flowchart TD
  S["実用新案技術評価を請求したい"] --> Q1{"実用新案登録無効審判により
無効にされていないか"} Q1 -- "はい(無効にされていない)" --> Q2{"その実用新案登録に基づく特許出願
(特許法第46条の2第1項)が
されていないか"} Q1 -- "いいえ(無効にされた後)" --> N1["× 請求できない
(第12条第2項ただし書)"] Q2 -- "はい(されていない)" --> Q3{"実用新案権は存続しているか"} Q2 -- "いいえ(された後)" --> N2["× 請求できない
(第12条第3項)"] Q3 -- "はい(存続中)" --> Y2["○ 請求できる(第12条第1項)
請求項ごとでも可"] Q3 -- "いいえ(消滅後)" --> Y1["○ 消滅後でも請求できる
(第12条第2項本文)"] Y2 --> P["第三者の請求後に実用新案登録に基づく特許出願がされたら、
その請求はされなかったものとみなす(第12条第7項)"] style N1 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style N2 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style Y1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style Y2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
○ 請求できる
× 請求できない
はい下へ進む/いいえ右へ出る

【図3】請求の可否の分岐図。存続期間満了・登録料不納などで権利が「消滅」した後は請求できるが、無効審判で「無効」にされた後は請求できない。

無効審決の確定と評価請求評価請求ができなくなる「無効にされた後」は、無効審決が確定した後です。41条が準用する特許法125条は、無効審決の確定による権利の消滅を定めています。訂正ができなくなる時期(14条の2)とは別の制限です。実用新案法12条2項・41条/特許法125条。

2. 評価の6区分(審査基準 第X部第2章・審査ハンドブック附属書C)

審査基準 第X部第2章「実用新案技術評価」は、審査官が請求項に係る考案について「(i) 文献公知考案に基づく新規性(第3条第1項第3号)、(ii) 文献公知考案に基づく進歩性(第3条第2項)、(iii) 拡大先願(第3条の2)、(iv) 先願(第7条)」の4つの要件のみを評価し、「新規性、進歩性等の評価を請求項ごとに示す」と定めています。評価書には「調査範囲(先行技術調査をした文献の範囲)、評価、引用文献等の表示及び評価についての説明」を記載します。また、出願人・権利者に「反論の機会が設けられていない」ため、審査官は「確信し得る根拠をもって評価を行わなければならない」とされています。

評価の区分は、審査ハンドブック附属書C「実用新案技術評価書作成のためのハンドブック」に次の6区分で示されています。

実用新案技術評価の6区分 × 評価1 新規性なし 第3条第1項第3号 × 評価2 進歩性なし 第3条第2項 × 評価3 拡大先願 第3条の2 × 評価4 先願と同一 第7条第1項・第3項 × 評価5 同日出願と同一 第7条第2項・第6項 △ 評価6 新規性等を否定する先行技術文献等を発見できない場合 (記載が不明瞭であること等により有効な調査が困難と認められる場合も含む)

図は左右にスクロールできます。

凡例
×否定的評価(評価1〜5。引用文献等により新規性等が否定される)
△否定する文献を発見できない(評価6)

【図4】実用新案技術評価の6区分。評価1〜5は「否定的評価」、評価6は「否定する文献を発見できない」。※評価6は「権利が有効である」というお墨付きではない。※公然実施等(第3条第1項第1号・第2号)は評価の対象外。※評価4・5の根拠条項の割り当ては審査ハンドブック附属書Cの記載(評価4:第7条第1項又は第3項、評価5:同日出願)に基づく(評価5:第7条第2項又は第6項)。(2026年9月時点)

区分 意味(審査ハンドブック附属書Cの記載) 根拠条文
評価1 「請求項に係る考案について、引用文献の記載からみて、新規性がない旨の評価を行う場合」 実用新案法第3条第1項第3号
評価2 「請求項に係る考案について、引用文献の記載からみて、進歩性がない旨の評価を行う場合」 実用新案法第3条第2項
評価3 「その出願の日前の出願であって、その出願後に実用新案公報の発行又は特許公報の発行若しくは出願公開がされた出願の願書に最初に添付した明細書等に記載された考案又は発明と同一である旨の評価」 実用新案法第3条の2
評価4 「その出願の日前の出願に係る考案又は発明と同一である旨の評価を行う場合」 実用新案法第7条第1項又は第3項
評価5 「同日に出願された出願に係る考案又は発明と同一である旨の評価を行う場合」 実用新案法第7条第2項又は第6項
評価6 「新規性等を否定する先行技術文献等を発見できない場合(記載が不明瞭であること等により、有効な調査が困難と認められる場合も含む)」 ―

〔表3〕評価の6区分(審査ハンドブック附属書C、2026年9月参照)。附属書Cの7頁で評価5の根拠条文(第7条第2項又は第6項)を確認した。

評価区分の根拠附属書Cの7頁は、評価1〜6の定義を示しています。評価5の根拠は第7条第2項又は第6項です。評価6には、記載が不明瞭で有効な調査が難しい場合も含まれます。番号が大きいほど権利が強いという点数ではありません。実用新案技術評価書作成のためのハンドブック・7頁。

3. 特許の出願審査請求(特許法第48条の3)との対比

特許法第48条の3第1項特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。
項目 実用新案技術評価(実用新案法第12条・第13条) 出願審査請求(特許法第48条の3)
性質 技術的な「評価」(報告書)。権利の発生・消滅を直接左右しない 「審査」の開始。特許査定・拒絶査定につながる
請求できる者 何人も 何人も
請求の時期 出願中でも登録後でも可。権利消滅後も可(無効にされた後、実用新案登録に基づく特許出願の後は不可) 特許出願の日から3年以内(期間経過後の救済は第48条の3第5項以下、要旨)
請求しなかった場合 権利は登録されたまま。ただし評価書を提示して警告しなければ権利行使できない(第29条の2) 出願は取り下げたものとみなされる(第48条の3第4項、要旨)
単位 請求項ごとに請求できる(第12条第1項後段) 出願ごと
取下げ できない(第12条第6項) できない(第48条の3第3項、要旨)
担当 審査官が評価書を作成(第12条第4項。資格は特許法第47条第2項の準用) 審査官が審査(特許法第47条第1項)
反論の機会 ない(審査基準 第X部第2章) 拒絶理由通知に対する意見書・補正の機会がある(特許法第50条等)
対象となる要件 第3条第1項第3号・第2項(文献公知考案)、第3条の2、第7条に限定 特許法第49条各号の拒絶理由すべて
結果の通知 評価書の謄本を請求人(第三者請求なら権利者にも)に送達(第13条第3項) 査定の謄本を出願人に送達

〔表4〕実用新案技術評価と特許の出願審査請求の対比。特許法第48条の3の現行原文を照合し、第3項〜第6項の内容を要旨として整理した。

特許の出願審査請求との違い特許法48条の3第3項は審査請求の取下げを認めず、第4項は請求期間内に審査請求がない出願を取り下げたものとみなします。実用新案には、この審査請求制度はありません。特許法48条の3。

4. 他の条文との接続(第29条の2・第14条の2・特許法第46条の2)

実用新案法第29条の2実用新案権者又は専用実施権者は、その登録実用新案に係る実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ、自己の実用新案権又は専用実施権の侵害者等に対し、その権利を行使することができない。
実用新案法第14条の2第1項(本文および各号)実用新案権者は、次に掲げる場合を除き、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正を一回に限りすることができる。一 第十三条第三項の規定による最初の実用新案技術評価書の謄本の送達があつた日から二月を経過したとき。二 実用新案登録無効審判について、第三十九条第一項の規定により最初に指定された期間を経過したとき。
接続先 技術評価との関係 起算点となる条文
実用新案法第29条の2(評価書提示義務) 評価書を提示して警告した後でなければ権利行使できない。評価書は権利行使の前提 ―
実用新案法第14条の2第1項第1号(訂正の制限) 最初の評価書謄本の送達日から2月を経過すると、明細書等の訂正(削除以外)ができない 第13条第3項の送達
特許法第46条の2第1項第2号 出願人・権利者自らが技術評価を請求したときは、実用新案登録に基づく特許出願ができない 第12条第1項の請求
特許法第46条の2第1項第3号 出願人・権利者でない者の請求について、第13条第2項の最初の通知を受けた日から30日を経過したときは、実用新案登録に基づく特許出願ができない 第13条第2項の通知
実用新案法第12条第3項・第7項 逆方向の遮断:実用新案登録に基づく特許出願がされた後は評価を請求できず、第三者の先行請求はされなかったものとみなす 特許法第46条の2第1項の出願

〔表5〕実用新案技術評価と他の条文の接続。「2月」「30日」の起算点がそれぞれ第13条第3項(送達)・第13条第2項(通知)であることに注意。

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gantt
    title 第三者が実用新案技術評価を請求したときに権利者が直面する2つの期限
    dateFormat YYYY-MM-DD
    axisFormat %m月
    todayMarker off
    section ①特許出願
    ◆ 第13条第2項の最初の通知(起算点) :milestone, m1, 2026-04-01, 0d
    ○ 実用新案登録に基づく特許出願ができる 通知の日から30日 :done, a1, 2026-04-01, 30d
    × できない 30日の経過後(特許法第46条の2第1項第3号) :crit, a2, after a1, 150d
    section ②訂正
    ◆ 第13条第3項の最初の評価書謄本の送達(起算点) :milestone, m2, 2026-05-01, 0d
    ○ 第1項の訂正ができる 送達の日から2月 :done, b1, 2026-05-01, 2026-07-01
    × できない 2月の経過後(第14条の2第1項第1号) :crit, b2, 2026-07-01, 2026-09-01

図は左右にスクロールできます。

凡例
○ その手続ができる期間
× できない期間
◆期間の起算点となる出来事

【図5】第三者請求の場合に権利者が直面する2つの期限。起算点が①は「第13条第2項の通知」、②は「第13条第3項の送達」で違う点に注意。自ら請求した場合は、請求した時点で実用新案登録に基づく特許出願の道が閉じる(特許法第46条の2第1項第2号)。※日付は説明用の例。※時間軸は縮尺なし。※説明の都合上、第14条の2第1項第2号(無効審判のルート)と第5項・第6項の救済は図に描いていない。(2026年9月時点)

flowchart LR
  A["実用新案技術評価の請求(第12条)"] --> B["評価書の謄本送達(第13条第3項)"]
  B --> C["提示して警告 → 権利行使(第29条の2)"]
  B --> D["送達から2月以内に訂正(第14条の2第1項第1号)"]
  A -. 自ら請求 .-> E["実用新案登録に基づく特許出願は不可(特許法第46条の2第1項第2号)"]
  A -. "第三者請求・最初の通知から30日経過(救済の例外あり)" .-> E
  E2["実用新案登録に基づく特許出願がされた"] --> F["以後、評価の請求不可(第12条第3項)/第三者の先行請求はされなかったものとみなす(第12条第7項)"]
  style C fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style D fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style E fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F
  style F fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
必ず生じる手続・効果
任意の請求をしたことで生じる効果
評価書があるからできること
できなくなること(道が閉じる)

【図6】技術評価を軸にした条文の接続図。「評価」と「実用新案登録に基づく特許出願」は互いに一方を選ぶと他方が閉じる関係にある。

5. 試験での問われ方

試験種別 問われ方の傾向 気をつける点
短答式 「何人も」「請求項ごと」「消滅後も可・無効後は不可」「取下げ不可」「第三者請求時の通知・送達の相手」「評価の対象規定(公然実施は含まれない)」を肢にした正誤問題。特許法第46条の2第1項各号との組合せ 「30日」の起算点は第13条第2項の通知、「2月」の起算点は第13条第3項の送達。無効「後」と権利「消滅後」を区別
論文式 実用新案権者が権利行使する場面で、評価書提示義務(第29条の2)と技術評価の請求手続を論じる。特許出願への乗り換え(特許法第46条の2)と技術評価のどちらを選ぶかの検討 自ら請求すると特許出願への道が閉じることを落とさない
口述 「実用新案技術評価の対象となる規定は」「請求できる時期は」「請求を取り下げられるか」などの条文確認 第12条第1項の対象規定を条文の言葉(第3条第1項第3号及び第2項、第3条の2、第7条第1項から第3項まで及び第6項)で答える

〔表6〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

令和8年度短答の関連問題問5ハは変更後の実用新案技術評価、問6の肢3は評価書未作成と刑事罰、問16の肢4は自ら一部請求項の評価を請求した後の登録に基づく特許出願を扱います。公式正解は問5=4、問6=3、問16=3です。 問題原文/公式正解。公式正解番号と、ここで示した肢の理由の条文照合は区別しています。
レベル3のまとめ

  • 請求:何人も、請求項ごとに、権利消滅後も可(第12条第1項・第2項)。不可となるのは無効審判で無効にされた後(第2項ただし書)と実用新案登録に基づく特許出願の後(第3項)。取下げ不可(第6項)。第三者請求は実用新案登録に基づく特許出願によりされなかったものとみなす(第7項)。
  • 対象:第3条第1項第3号・第2項(文献公知考案)、第3条の2、第7条第1項〜第3項・第6項のみ。公然実施等・記載要件は対象外。
  • 作成・通知:審査官が作成(第12条第4項・第5項)。公報掲載(第13条第1項)、第三者請求は権利者に通知(第2項)、謄本送達(第3項)。
  • 評価は6区分(評価1〜5は否定的評価、評価6は否定する文献を発見できない)。反論の機会がない。
  • 接続:第29条の2(提示して警告)、第14条の2第1項第1号(送達から2月)、特許法第46条の2第1項第2号・第3号(自ら請求/通知から30日)。
  • 特許の出願審査請求との違い:期限なし、請求項ごと、権利消滅後も可、請求しなくても取下げ擬制はない。

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