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小学生でも分かる実用新案法|実用新案法第3条の2 拡大先願 ― 「先に出た書類の中身」と同じ考案は登録できない

小学生でもわかる実用新案法:拡大先願(3条の2)

小学生でも分かる実用新案法 / A. 登録要件・考案(実体規定) #3

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自分より先に出された実用新案登録出願や特許出願があって、その「最初の書類」のどこかに自分と同じ考案が書いてあったら、あとから出した人は登録を受けられません。請求の範囲に書かれていなくても、明細書や図面に書いてあればアウト、というのがポイントです。特許法第29条の2の「実用新案版」ですが、実用新案には出願公開がないので「実用新案掲載公報の発行」が引き金になります。

条文:実用新案法第3条の2関連:特許法第29条の2、特許法第44条第2項、第46条第6項、実用新案法第10条第3項、第12条第1項、第37条第1項第2号参照時点:2026年9月

目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「先に出した人のノート」に書いてあったら

学校の自由研究コンテストを想像してください。Aさんが4月に「じょうぶな筆箱」の研究ノートを先生に出しました。ノートの表紙(=特許でいう「請求の範囲」)には「筆箱」とだけ書いてありますが、ノートの中のページ(=明細書や図面)には、ついでに「消しゴムのカバー」のアイデアも書いてありました。

そのあと6月に、Bさんが「消しゴムのカバー」を研究として出しました。Bさんは自分で考えたのですが、Aさんのノートの中にもう同じものが書いてあります。このとき、先生(特許庁)は「それは先にAさんのノートに書いてあったから、Bさんの登録はできません」と言います。これが拡大先願(かくだいせんがん)のしくみです。

「拡大」というのは、ふつうの「先願(さきに出した人が勝ち)」のルールが、表紙だけでなくノートの中身まで広がって効く、という意味です。

Aさんのノート(4月に提出) 表紙:じょうぶな筆箱 (=実用新案登録請求の範囲) 中のページ:筆箱のこと + 「消しゴムのカバー」も書いてある Bさんの出願(6月に提出) 考案:消しゴムのカバー Aさんのノートを見たわけではない 同じ! × Aさんのノートの「中身」に書いてあるので、Bさんは登録を受けられない

図は左右にスクロールできます。

凡例
先に出された出願(Aさん・4月)
あとの出願(Bさん・6月)/× 登録を受けられない
中身が同じであることを示す線

【図1】拡大先願のイメージ。先に出された出願の「最初の書類の中身」(明細書・実用新案登録請求の範囲・図面)に同じ考案が書いてあれば、あとの出願は登録を受けられない。※説明の都合上、公報の発行等の時点と除外(考案者同一・出願人同一)は省略した(→【図2】【図4】)。

ただし「ノートがみんなに見える状態になること」が必要

先生は、Aさんのノートをあとでみんなに見せる(=公報を発行する)ことにしています。このルールが働くのは、Aさんのノートがちゃんとみんなに見える状態になったときだけです。Aさんが途中でノートを引っこめて、みんなに見せられずに終わったら、Bさんは登録できます。

もうひとつ、AさんとBさんが同じ人(同じ考案者、または同じ出願人)なら、このルールは使いません。自分のノートで自分がじゃまされる、というのはおかしいからです。

レベル1のまとめ

  • 先に出された実用新案登録出願や特許出願の「最初の書類の中身」に、自分と同じ考案が書いてあると、登録を受けられない(実用新案法第3条の2)。
  • 先の出願の中身が「公報」でみんなに見えるようになることが必要。
  • 考案者が同じ人のとき、出願人が同じ人のときは、このルールは使わない。

※「同じ人」かどうかをいつの時点で見るか、どの書類が「中身」に当たるかなど、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。


LEVEL 2条文の骨格

条文の原文

実用新案法第3条の2(本文・ただし書)実用新案登録出願に係る考案が当該実用新案登録出願の日前の他の実用新案登録出願又は特許出願であつて当該実用新案登録出願後に第十四条第三項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した実用新案公報(以下「実用新案掲載公報」という。)の発行又は特許法第六十六条第三項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した特許公報の発行若しくは出願公開がされたものの願書に最初に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲若しくは特許請求の範囲又は図面(同法第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあつては、同条第一項の外国語書面)に記載された考案又は発明(その考案又は発明をした者が当該実用新案登録出願に係る考案の考案者と同一の者である場合におけるその考案又は発明を除く。)と同一であるときは、その考案については、前条第一項の規定にかかわらず、実用新案登録を受けることができない。ただし、当該実用新案登録出願の時にその出願人と当該他の実用新案登録出願又は特許出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない。

一文がとても長いので、5つの部品に分けて読みます。

部品 条文の文言(抜粋) 意味
① 本願 「実用新案登録出願に係る考案が」 いま登録を受けようとしている実用新案登録出願(本願)の考案
② 他の出願 「当該実用新案登録出願の日前の他の実用新案登録出願又は特許出願であつて」 本願の出願日より前に出された、別の実用新案登録出願、または特許出願。特許出願も引用される
③ 公報の発行等 「当該実用新案登録出願後に……実用新案掲載公報……の発行又は……特許公報の発行若しくは出願公開がされたもの」 他の出願が、本願の出願後に、実用新案掲載公報の発行、特許公報(特許法第66条第3項の公報)の発行、または出願公開のいずれかをされたこと
④ 当初明細書等の記載 「願書に最初に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲若しくは特許請求の範囲又は図面……に記載された考案又は発明」 他の出願の最初の書類に書かれていた考案・発明(補正で追加されたものは含まない)。他の出願が外国語書面出願なら外国語書面
⑤ 同一 「と同一であるときは……実用新案登録を受けることができない」 本願の考案が④と同一なら、第3条第1項の規定にかかわらず登録不可

〔表1〕実用新案法第3条の2本文の5つの部品(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。

2つの除外(考案者同一・出願人同一)

除外 条文上の位置 文言(抜粋) 判断の時点
考案者(発明者)同一 本文のかっこ書き 「その考案又は発明をした者が当該実用新案登録出願に係る考案の考案者と同一の者である場合におけるその考案又は発明を除く」 条文上、時点の限定なし(他の出願の考案者・発明者と本願の考案者を比べる)
出願人同一 ただし書 「当該実用新案登録出願の時にその出願人と当該他の実用新案登録出願又は特許出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない」 「当該実用新案登録出願の時」=本願の出願時

〔表2〕2つの除外の整理。出願人同一は「本願の出願時」で判断することが条文に明記されている。

時間の流れで見る

他の出願 (先に出された) ① 他の出願の出願日 当初書類に考案Xの記載 ③ 公報の発行等 実用新案掲載公報の発行など ① は ② より前 ③ は ② より後 本願 (あとの出願) ② 本願の出願日 考案Xを請求の範囲に記載 × 本願は実用新案登録を受けることができない(第3条の2)

図は左右にスクロールできます。

凡例
●丸=時点(①②③は説明用の番号)
横線=時間の流れ(上下の線は同じ目盛り)
縦の破線=上下の線をそろえる目盛り
× 本願が登録を受けられない結論

【図2】拡大先願の時間関係(他の出願が実用新案登録出願の例)。上下2本の線は同じ目盛りで、他の出願が「本願の出願日前」に出願され(①→②)、「本願の出願後」に公報の発行等がされた(②→③)ことが条件。公報の発行等が本願の出願前なら、それは第3条の2ではなく第3条第1項(新規性)の問題になる。※時間軸は縮尺なし。※説明の都合上、除外(考案者同一・出願人同一)は省略した(→【図4】)。

他の出願の種類と「公報の発行等」の対応

他の出願の種類 条文が求める「発行等」 根拠となる条文の指定
実用新案登録出願 実用新案掲載公報の発行 実用新案法第14条第3項の公報(実用新案には出願公開がない)
特許出願 特許公報(特許掲載公報)の発行、または出願公開 特許法第66条第3項の公報、または出願公開

〔表3〕他の出願の種類ごとの「公報の発行等」。実用新案登録出願は無審査で登録されるため、出願公開制度がなく、登録後の「実用新案掲載公報の発行」が引き金になる。

レベル2のまとめ

  • 本願の考案が、本願の出願日前の「他の実用新案登録出願又は特許出願」の当初明細書等に記載された考案・発明と同一なら登録不可(実用新案法第3条の2本文)。
  • 他の出願は、本願の出願後に「実用新案掲載公報の発行」「特許公報の発行」「出願公開」のいずれかがされたものであることが必要。
  • 除外は2つ。考案者同一(本文かっこ書き)と、本願の出願時における出願人同一(ただし書)。


LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 特許法第29条の2との対比

特許法第29条の2の中身そのものは、関連記事「特許法第29条の2 拡大先願」で扱っています。ここでは実用新案法第3条の2と異なるところだけを並べます。

特許法第29条の2(本文・ただし書)特許出願に係る発明が当該特許出願の日前の他の特許出願又は実用新案登録出願であつて当該特許出願後に第六十六条第三項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した特許公報(以下「特許掲載公報」という。)の発行若しくは出願公開又は実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第十四条第三項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した実用新案公報(以下「実用新案掲載公報」という。)の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあつては、同条第一項の外国語書面)に記載された発明又は考案(その発明又は考案をした者が当該特許出願に係る発明の発明者と同一の者である場合におけるその発明又は考案を除く。)と同一であるときは、その発明については、前条第一項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。ただし、当該特許出願の時にその出願人と当該他の特許出願又は実用新案登録出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない。
観点 実用新案法第3条の2 特許法第29条の2
本願 実用新案登録出願(考案) 特許出願(発明)
他の出願 「他の実用新案登録出願又は特許出願」(両方) 「他の特許出願又は実用新案登録出願」(両方)
公報の発行等 実用新案掲載公報の発行/特許公報の発行/出願公開 特許掲載公報の発行/出願公開/実用新案掲載公報の発行
「特許掲載公報」の略称 実用新案法の条文では定義していない(「特許公報の発行」と書く) 「特許掲載公報」を定義
除外の主体 他の出願の「考案又は発明をした者」=本願の「考案者」 他の出願の「発明又は考案をした者」=本願の「発明者」
出願人同一の判断時 「当該実用新案登録出願の時」(本願=実用新案登録出願の出願時) 「当該特許出願の時」(本願=特許出願の出願時)
外国語書面出願のかっこ書き 「同法(特許法)第三十六条の二第二項の外国語書面出願」=他の出願が特許出願である場合の話。実用新案法に外国語書面出願の制度はない 自法(特許法)第36条の2第2項の外国語書面出願
登録拒否の根拠 「前条第一項(実用新案法第3条第1項)の規定にかかわらず」 「前条第一項(特許法第29条第1項)の規定にかかわらず」
審査での扱い 実用新案は無審査登録。第3条の2は基礎的要件(第6条の2)に含まれず、実用新案技術評価(第12条第1項)の対象・無効理由(第37条第1項第2号)になる 拒絶理由(特許法第49条)・無効理由(特許法第123条)

〔表4〕実用新案法第3条の2と特許法第29条の2の対比。両者は互いに相手の出願を「他の出願」に含める「たすきがけ」の構造になっている。

本願 × 他の出願 4つの組合せと根拠条文 他の出願=実用新案登録出願 他の出願=特許出願 本願= 実用新案登録出願 本願= 特許出願 実用新案法第3条の2 引き金:実用新案掲載公報の発行 実用新案法第3条の2 引き金:特許公報の発行 or 出願公開 特許法第29条の2 引き金:実用新案掲載公報の発行 特許法第29条の2 引き金:特許掲載公報の発行 or 出願公開

図は左右にスクロールできます。

凡例
実用新案登録出願(見出しの帯)
特許出願(見出しの帯)
白います目適用条文と「引き金」になる公報

【図3】本願と他の出願の組合せ(2026年9月時点)。適用条文は「本願がどちらの出願か」で決まり、他の出願の種類は「公報の発行等」の中身を決める。※本願が実用新案登録出願なら常に実用新案法第3条の2、本願が特許出願なら常に特許法第29条の2で判断する。※説明の都合上、国際出願・外国語書面出願の特則は省略した。

2. 要件のチェックの流れ(分岐図)

flowchart TD
  A["本願の出願日前に出願された他の実用新案登録出願・特許出願があるか"] -->|ある| B["他の出願は、本願の出願後に実用新案掲載公報の発行・特許公報の発行・出願公開のいずれかがされたか"]
  A -->|ない| Z1["○ 第3条の2は不適用(この条では拒まれない)"]
  B -->|本願の出願後にされた| C["本願の考案は、他の出願の当初明細書・請求の範囲・図面に記載された考案・発明と同一か"]
  B -->|されていない| Z1
  B -->|本願の出願前にされていた| Z2["△ 第3条の2ではなく第3条第1項(新規性)等の問題"]
  C -->|同一| D["他の出願の考案者・発明者と本願の考案者は同一か"]
  C -->|同一でない| Z1
  D -->|異なる| E["本願の出願時に、本願の出願人と他の出願の出願人は同一か"]
  D -->|同一| Z3["○ 除外:かっこ書きにより第3条の2は不適用"]
  E -->|異なる| F["× 実用新案登録を受けることができない(第3条の2)"]
  E -->|同一| Z4["○ 除外:ただし書により第3条の2は不適用"]
  style F fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F
  style Z1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style Z3 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style Z4 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style Z2 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
○ 第3条の2では拒まれない
× 第3条の2により登録を受けることができない
△ 別の条文(第3条第1項など)の問題に移る
要件を満たす↓/満たさない→分岐の向きは図全体で統一

【図4】実用新案法第3条の2の要件チェックの分岐図。条文の要件を順に当てはめた本記事作成者の整理(2026年9月時点)。要件を満たして次に進む枝を下、外れる枝を右に統一した。

3. 「同一」の判断と審査基準の参照先

実用新案登録出願は無審査で登録されるので、特許庁が第3条の2を実際に判断するのは、実用新案技術評価(実用新案法第12条第1項)と無効審判(実用新案法第37条第1項第2号)の場面です。「同一」の判断のしかたは、特許・実用新案審査基準 第III部第3章「拡大先願」に沿って行われます。同章の構成は次のとおりです。

審査基準 第III部第3章の見出し この記事との関係
1. 概要 「他の特許出願又は実用新案登録出願」が他の出願になること、実用新案登録出願の「出願公開等」が実用新案掲載公報の発行であること
2. 第29条の2の要件 2.(1)(ii):他の出願が本願の出願後に出願公開等がされたこと。本願の出願前に出願公開等がされていれば第29条の2は適用されない
3. 第29条の2の要件についての判断 3.1.1 発明者同一:願書に記載された発明者全員が表示上完全に一致する場合、または実質的に判断して全員が完全同一の場合以外は「異なる」と判断/3.1.2(1) 出願人同一:本願の出願時点で判断
4. 審査の進め方 ―
5. 特定の表現を有する請求項等の取扱い ―
6. 各種出願についての取扱い 6.1.1:他の出願が分割出願等の場合、他の出願の出願日は遡及せず現実の出願日/6.1.4:他の出願が外国語書面出願の場合、拡大先願の効果は原文(外国語書面)から発生

〔表5〕審査基準 第III部第3章「拡大先願」の構成と参照ポイント(03_0300.pdf、2026年9月参照)。実用新案技術評価では、この章の考え方に準じて第3条の2の評価がされる(審査基準 第X部第2章参照)。

審査基準第X部第2章2.は、拡大先願を含む技術評価を、対応する特許出願の審査基準に準じて行うと定めています。したがって第III部第3章3.1.1の発明者同一の判断を考案者・発明者について当てはめます。願書上の表示が一致する場合だけでなく、実質的に全員が完全同一と判断できる場合も含まれます。 審査基準第X部第2章 第III部第3章3.1.1

4. 分割出願・変更出願が「他の出願」になるとき

拡大先願で一番まぎらわしいのがここです。分割出願や変更出願は、ふつう「もとの出願の時にしたものとみなす」(出願日の遡及)という効果を受けます。しかし、その分割・変更出願が「他の出願」として引用される側に回るときは、出願日は遡及せず、現実の出願日で判断されます。実用新案法第3条の2を引用側の条文として名指ししているのは、次の3つの規定です。

特許法第44条第2項前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。
特許法第46条第6項第四十四条第二項から第四項までの規定は、第一項又は第二項の規定による出願の変更の場合に準用する。
実用新案法第10条第3項前二項の規定による出願の変更があつたときは、その実用新案登録出願は、その特許出願又は意匠登録出願の時にしたものとみなす。ただし、その実用新案登録出願が第三条の二に規定する他の実用新案登録出願又は特許法第二十九条の二に規定する実用新案登録出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び次条第一項において準用する同法第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。
引用される側(他の出願) その出願が受ける遡及効の根拠 拡大先願の「他の出願」になるときの出願日 本願が実用新案登録出願のとき使う条文
特許出願の分割出願(特許法第44条第1項) 特許法第44条第2項本文 遡及しない(同項ただし書が「実用新案法第三条の二に規定する特許出願」を明示)→現実の出願日 実用新案法第3条の2
実用新案登録出願・意匠登録出願から特許出願への変更出願(特許法第46条第1項・第2項) 特許法第46条第6項で第44条第2項を準用 遡及しない→現実の出願日 実用新案法第3条の2
特許出願・意匠登録出願から実用新案登録出願への変更出願(実用新案法第10条第1項・第2項) 実用新案法第10条第3項本文 遡及しない(同項ただし書が「第三条の二に規定する他の実用新案登録出願」を明示)→現実の出願日 実用新案法第3条の2
実用新案登録出願の分割出願 実用新案法第11条第1項で特許法第44条を準用 準用される第44条第2項ただし書により遡及しない→現実の分割出願日(第11条第1項に明文の読替え表はない) 実用新案法第3条の2

〔表6〕分割出願・変更出願が「他の出願」(引用側)になるときの扱い。守られる側(本願)としての遡及効はそのまま働くが、攻める側(他の出願)としては現実の出願日で見る。

flowchart LR
  subgraph P["本願(守られる側)として使うとき"]
    direction TB
    P0["分割・変更出願"] --> P1["出願日は遡及する
もとの出願の時にしたものとみなす"] end subgraph Q["他の出願(引用側)として使うとき"] direction TB Q0["分割・変更出願"] --> Q1["出願日は遡及しない
現実の出願日で判断する"] end style P1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style Q1 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
出願日が遡及する(もとの出願の時)
出願日が遡及しない(現実の出願日)

【図5】分割・変更出願が「本願側」か「他の出願側」かで出願日の扱いが変わる。左右のレーンは段の数・箱の大きさ・語の並びをそろえ、下段の結論だけが異なる。引用側で遡及しない根拠は特許法第44条第2項ただし書、第46条第6項、実用新案法第10条第3項ただし書(2026年9月時点。→〔表6〕)。

実用新案法第11条第1項は特許法第44条を準用していますが、同項に明文の読替え表はありません。準用される第44条第2項ただし書により、分割出願を拡大先願の引用側として用いる場合は出願日が遡及せず、現実の分割出願日が基準です。青本第11条の解説も、実用新案の分割について特許と同様に出願日の遡及効の例外を設けた旨を説明しています。 実用新案法第11条 特許法第44条第2項 青本第22版981頁

5. 実用新案法での「使われ方」―拒絶理由ではなく評価・無効理由

場面 根拠条文 第3条の2の位置づけ
方式・基礎的要件の審査(補正命令) 実用新案法第6条の2 各号に第3条の2は含まれない(第4条違反は第2号に含まれる)
実用新案技術評価 実用新案法第12条第1項 「第三条第一項第三号及び第二項……、第三条の二並びに第七条第一項から第三項まで及び第六項の規定に係るもの」として評価対象
実用新案登録無効審判 実用新案法第37条第1項第2号 「……第三条、第三条の二、第四条……の規定に違反してされたとき」として無効理由

〔表7〕実用新案法における第3条の2の使われ方。特許法と違い、登録前に審査官が第3条の2で拒絶する場面はない。

実用新案法第12条第1項(前段)実用新案登録出願又は実用新案登録については、何人も、特許庁長官に、その実用新案登録出願に係る考案又は登録実用新案に関する技術的な評価であつて、第三条第一項第三号及び第二項(同号に掲げる考案に係るものに限る。)、第三条の二並びに第七条第一項から第三項まで及び第六項の規定に係るもの(以下「実用新案技術評価」という。)を請求することができる。

6. 試験での問われ方

試験種別 問われ方の傾向 気をつける点
短答式 「他の出願が特許出願である場合に実用新案法第3条の2が適用されるか」「出願人同一の判断時点」「分割・変更出願が他の出願になるときの出願日」などの正誤 「実用新案掲載公報の発行」が引き金であり出願公開がないこと、出願人同一は本願の出願時で見ること、引用側の分割・変更出願は遡及しないこと
論文式 特許出願と実用新案登録出願が前後して出願された事例で、どちらの条文(特許法第29条の2/実用新案法第3条の2)が適用されるか、除外事由の当てはめ 本願がどちらの出願かで条文を選ぶ。無審査登録なので「登録される→技術評価・無効審判で争われる」という流れで書く
口述 特許法第29条の2との違い(公報の種類、考案者・発明者の読み替え)を口頭で説明 「たすきがけ」の構造を短く言えるようにしておく

〔表8〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

令和8年度短答式の問5(ホ)は変更・分割を経た特許出願からの再変更、問16の4は技術評価請求後の実用新案登録に基づく特許出願を扱います。この2問で第3条の2の引用側分割出願の遡及を直接問う肢はありません。公式正答は問5が4、問16が3です。 令和8年度問題 公式解答

レベル3のまとめ

  • 実用新案法第3条の2と特許法第29条の2は、互いに相手の出願を「他の出願」に含める「たすきがけ」。適用条文は本願の種類で決まる。
  • 他の出願が実用新案登録出願なら「実用新案掲載公報の発行」、特許出願なら「特許公報の発行又は出願公開」が、本願の出願後にされていることが必要。
  • 考案者同一(本文かっこ書き)と本願出願時の出願人同一(ただし書)は除外。審査基準では発明者は全員完全同一が求められる。
  • 分割出願・変更出願が引用側(他の出願)になるときは出願日が遡及しない(特許法第44条第2項ただし書、第46条第6項、実用新案法第10条第3項ただし書)。
  • 実用新案では拒絶理由ではなく、実用新案技術評価(第12条第1項)の対象と無効理由(第37条第1項第2号)として働く。

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