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小学生でも分かる実用新案法|実用新案法第8条・第9条 実用新案登録出願等に基づく優先権主張(国内優先権) ― 先に出した出願を「土台」にして、1年以内にもう一度出す

小学生でもわかる実用新案法:国内優先権(8条9条)

小学生でも分かる実用新案法 / A. 登録要件・考案(実体規定) #7

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実用新案法第8条は、自分が先にした実用新案登録出願または特許出願を「先の出願」として、その内容にもとづく優先権を主張しながら、あらためて実用新案登録出願をできる制度(国内優先権)を定めています。第9条は、土台にした「先の出願」があとでどうなるか(取下げ擬制)と、優先権主張を取り下げられる期限を定めています。特許法第41条・第42条の「実用新案版」ですが、無審査で早く登録される実用新案ならではの違いがあります。

条文:実用新案法第8条、第9条関連:特許法第41条・第42条、実用新案法第3条の2、第10条、第11条第1項(準用特許法第44条)、第14条第2項、第32条第1項参照時点:2026年9月

目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「下書き」を先に出して、1年以内に「清書」を出せる

夏休みの自由研究を思いうかべてください。まず「こんな工作を考えました」という下書きを先生に出します。そのあと、もっとくふうを足して、清書を出したくなりました。ところが、清書を出したときに「新しく出したものとして、日付も新しくなります」と言われたら、先に下書きを出した意味がうすれてしまいます。

実用新案の世界にも、これと同じなやみがあります。アイデア(考案)は「早く出した人が勝ち」というルールなので、あとから内容を足して出しなおすと、最初の出願より日付が後になってしまうのです。

そこで、実用新案法第8条は、先に出した出願(先の出願)を土台にして、その日から1年以内なら、内容を足して出しなおしてもよいという制度を用意しました。これを国内優先権といいます。先の出願に書いてあった部分は、先の出願の日に出したものとして扱ってもらえます。

先の出願(下書き) 実用新案登録出願 または 特許出願 内容:A 後の出願(清書) 実用新案登録出願 (第8条第1項) 内容:A + B(足した分) ① 1年以内に「優先権を主張」して出す Aの部分は「先の出願の日」に出したものとして扱われる Bの部分は「後の出願の日」が基準 ② 先の出願(下書き)は、役目を終えると「取り下げたもの」とみなされる(第9条第1項) 先の出願がすでに登録されているときなどは別(例外あり) 凡例 先の出願(下書き) 後の出願(清書) あとで起こること ①②=できごとの順番  A=先の出願に書いてあった内容  B=後の出願で足した内容

図は左右にスクロールできます。

【図1】国内優先権のイメージ。先の出願に書いてあった内容Aは先の出願の日が基準、あとで足した内容Bは後の出願の日が基準になる。※説明の都合上、第8条第1項第1号〜第5号の除外、仮専用実施権者の承諾(同項ただし書き)、第9条第1項ただし書きの例外は図から省略した。(2026年9月時点)

土台にできるのは「自分の」出願で、「1年以内」

土台にできる「先の出願」は、自分が権利をもっている出願でなければなりません。友だちの下書きを勝手に土台にすることはできません。また、土台にできるのは、先の出願の日から1年以内です(うっかりおくれたときのための例外はありますが、原則は1年です)。

そして、先の出願が「実用新案登録出願」でも「特許出願」でも、土台にできます。特許の下書きを土台にして、実用新案の清書を出す、ということもできるのです。

下書きは、あとで「取り下げたこと」になる

清書を出したあとも下書きが生きていると、同じアイデアの出願が2つになってしまいます。そこで実用新案法第9条は、先の出願は、その日から決められた期間がたったときに取り下げたものとみなすとしています。ただし、実用新案は審査なしで早く登録されるので、先の出願が「もう登録されている」ということも起こります。そのときは取り下げたことにはなりません(例外あり)。

レベル1のまとめ

  • 自分が先に出した実用新案登録出願または特許出願を土台にして、1年以内にもう一度、実用新案登録出願ができる(実用新案法第8条)。
  • 先の出願に書いてあった内容は、先の出願の日に出したものとして扱われる。足した内容は後の出願の日が基準。
  • 土台にした先の出願は、あとで取り下げたものとみなされる(実用新案法第9条)。ただし、もう登録されているときなどは別。

※「土台にできない出願」(分割や変更でできた出願など)や、期間の細かい決まりがあります。正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。


LEVEL 2条文の骨格

第8条の構造 ― 「できる」(第1項)と「効果」(第2項・第3項)と「手続」(第4項)

項 役割 内容(要旨)
第1項 優先権を主張できる条件 自分が実用新案登録または特許を受ける権利をもつ「先の出願」(実用新案登録出願または特許出願)の願書に最初に添付した明細書・実用新案登録請求の範囲・特許請求の範囲・図面に記載された考案にもとづいて、優先権を主張できる。ただし第1号〜第5号の場合を除く。先の出願に仮専用実施権者がいるときは、その承諾が必要(ただし書き)。
第1項第1号 除外(期間) 後の出願が先の出願の日から1年以内にされたものでない場合(故意でない遅れで、省令期間内に省令の定めによりされたものは除く)。
第1項第2号 除外(先の出願の種類) 先の出願が、分割による新たな出願、出願の変更に係る出願、実用新案登録に基づく特許出願である場合。
第1項第3号 除外(先の出願の状態) 先の出願が、後の出願の際に、放棄・取下げ・却下されている場合。
第1項第4号 除外(先の出願の状態) 先の出願について、後の出願の際に、査定または審決が確定している場合。
第1項第5号 除外(先の出願の状態) 先の出願について、後の出願の際に、実用新案法第14条第2項の設定の登録がされている場合。
第2項 効果(新規性・先願など) 先の出願に記載されていた考案については、列挙された規定(実用新案法第3条、第3条の2本文、第7条第1項〜第3項など)の適用について、後の出願は先の出願の時にされたものとみなす。
第3項 効果(拡大先願の基礎) 先の出願に記載されていた考案については、後の出願の実用新案掲載公報発行の時に、先の出願について実用新案掲載公報の発行または出願公開がされたものとみなして、実用新案法第3条の2本文または特許法第29条の2本文を適用する。
第4項 手続 優先権を主張しようとする者は、その旨と先の出願の表示を記載した書面を、経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出する。

〔表1〕実用新案法第8条の項ごとの内容(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。

実用新案法第8条第1項(本文・ただし書き)実用新案登録を受けようとする者は、次に掲げる場合を除き、その実用新案登録出願に係る考案について、その者が実用新案登録又は特許を受ける権利を有する実用新案登録出願又は特許出願であつて先にされたもの(以下「先の出願」という。)の願書に最初に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲若しくは特許請求の範囲又は図面(先の出願が特許法第三十六条の二第二項の外国語書面出願である場合にあつては、同条第一項の外国語書面)に記載された考案に基づいて優先権を主張することができる。ただし、先の出願について仮専用実施権を有する者があるときは、その実用新案登録出願の際に、その承諾を得ている場合に限る。
実用新案法第8条第1項第1号その実用新案登録出願が先の出願の日から一年以内にされたものでない場合(その実用新案登録出願が故意に先の出願の日から一年以内にされなかつたものでないと認められる場合であつて、かつ、その実用新案登録出願が経済産業省令で定める期間内に経済産業省令で定めるところによりされたものである場合を除く。)
実用新案法第8条第1項第2号先の出願が第十一条第一項において準用する特許法第四十四条第一項の規定による実用新案登録出願の分割に係る新たな実用新案登録出願若しくは第十条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る実用新案登録出願又は同法第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、同法第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願若しくは同法第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合
実用新案法第8条第1項第3号〜第5号三 先の出願が、その実用新案登録出願の際に、放棄され、取り下げられ、又は却下されている場合
四 先の出願について、その実用新案登録出願の際に、査定又は審決が確定している場合
五 先の出願について、その実用新案登録出願の際に、第十四条第二項に規定する設定の登録がされている場合

第2項 ― 「先の出願の時にされたものとみなす」の範囲

第2項は長い条文ですが、骨組みは「先の出願に書いてあった考案については、次の規定を当てはめるときだけ、後の出願は先の出願の時にされたものとみなす」というものです。列挙された規定を表にすると、次のとおりです。

法律 列挙されている規定(第8条第2項の原文どおり) ざっくり言うと
実用新案法 第3条、第3条の2本文、第7条第1項から第3項まで、第11条第1項において準用する特許法第30条第1項及び第2項、第17条、第26条において準用する特許法第69条第2項第2号・第79条・第81条・第82条第1項 新規性・進歩性、拡大先願、先願、新規性喪失の例外、他人の登録との関係、実施権の発生時点など
特許法 第39条第3項及び第4項、第72条 特許出願との先願関係、特許権との利用・抵触
意匠法 第26条、第31条第2項、第32条第2項 意匠権との利用・抵触、意匠の側の法定実施権
商標法 第29条、第33条の2第3項、第33条の3第3項(第68条第3項において準用する場合を含む) 商標権との利用・抵触、商標の側の法定使用権

〔表2〕実用新案法第8条第2項が「先の出願の時にされたものとみなす」対象として列挙する規定の一覧(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。「ざっくり言うと」欄は本記事作成者の整理。

実用新案法第8条第2項(末尾)…の規定の適用については、当該実用新案登録出願は、当該先の出願の時にされたものとみなす。
実用新案法第8条第2項(括弧書き:累積優先の除外部分)(当該先の出願が前項若しくは同法第四十一条第一項の規定による優先権の主張又は同法第四十三条第一項、第四十三条の二第一項(同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)若しくは第四十三条の三第一項若しくは第二項(これらの規定を第十一条第一項において準用する場合を含む。)の規定による優先権の主張を伴う出願である場合には、当該先の出願についての優先権の主張の基礎とされた出願に係る出願の際の書類(明細書、実用新案登録請求の範囲若しくは特許請求の範囲又は図面に相当するものに限る。)に記載された考案を除く。)

この括弧書きは、先の出願自身がさらに別の優先権(国内優先権やパリ条約の優先権)を主張していた場合に、その「そのまた先の出願」に書いてあった考案までは、後の出願の優先権の対象にしないという意味です(優先権の積み重ねはしない)。

第3項 ― 後の出願が「拡大先願」の基礎になるとき

実用新案法第8条第3項(末尾)…当該実用新案登録出願について実用新案掲載公報の発行がされた時に当該先の出願について実用新案掲載公報の発行又は出願公開がされたものとみなして、第三条の二本文又は同法第二十九条の二本文の規定を適用する。

実用新案法第3条の2(拡大先願)は、「先にされた出願で、あとで公報に載ったもの」を基準に、後から出された他人の出願をはじく規定です。国内優先権を使うと、先の出願は取り下げたものとみなされて公報に載らなくなります。そこで第3項は、後の出願の実用新案掲載公報が発行された時に、先の出願についても公報発行または出願公開があったものとみなし、先の出願の日を基準に拡大先願の効果をもたせています。

第4項 ― 優先権主張の書面

実用新案法第8条第4項第一項の規定による優先権を主張しようとする者は、その旨及び先の出願の表示を記載した書面を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければならない。

「経済産業省令で定める期間」は、実用新案法施行規則第23条第2項が特許法施行規則第27条の4の2を読み替えて準用しており、通常の場合の読替え後の文言は「当該実用新案登録出願の日から一月」です。回復の場合は別の期間が適用されます(→レベル3〔表6〕)。

第9条の構造 ― 先の出願の「取下げ擬制」と、主張の取下げ

項 内容(要旨) 期間
第1項本文 優先権主張の基礎とされた先の出願は、その出願の日から経済産業省令で定める期間を経過した時に取り下げたものとみなす 先の出願の日から省令期間(1年4月)
第1項ただし書き 先の出願が放棄・取下げ・却下されている場合、査定・審決が確定している場合、実用新案法第14条第2項の設定の登録がされている場合、先の出願に基づく全ての優先権主張が取り下げられている場合は、取下げ擬制は働かない ―
第2項 後の出願の出願人は、先の出願の日から省令期間を経過した後は、優先権主張を取り下げることができない 先の出願の日から省令期間(1年4月)
第3項 後の出願が先の出願の日から省令期間内に取り下げられたときは、同時に優先権主張も取り下げられたものとみなす 先の出願の日から省令期間(1年4月)

〔表3〕実用新案法第9条の項ごとの内容(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。「1年4月」は実用新案法施行規則第23条第2項で読み替えて準用する特許法施行規則第28条の4第2項による(2026年9月参照)。

実用新案法第9条第1項前条第一項の規定による優先権の主張の基礎とされた先の出願は、その出願の日から経済産業省令で定める期間を経過した時に取り下げたものとみなす。ただし、当該先の出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されている場合、当該先の出願について査定若しくは審決が確定している場合、当該先の出願について第十四条第二項に規定する設定の登録がされている場合又は当該先の出願に基づく全ての優先権の主張が取り下げられている場合には、この限りでない。
実用新案法第9条第2項前条第一項の規定による優先権の主張を伴う実用新案登録出願の出願人は、先の出願の日から経済産業省令で定める期間を経過した後は、その主張を取り下げることができない。
実用新案法第9条第3項前条第一項の規定による優先権の主張を伴う実用新案登録出願が先の出願の日から経済産業省令で定める期間内に取り下げられたときは、同時に当該優先権の主張が取り下げられたものとみなす。
gantt
    dateFormat YYYY-MM-DD
    axisFormat %Y-%m
    title 国内優先権の期間(先の出願の日を起算点にそろえた模式図)
    section ① 先の出願
    先の出願をする(実用新案登録出願または特許出願)        :milestone, m1, 2026-01-01, 0d
    section ② 後の出願をするまで
    優先権を主張して後の出願ができる期間(1年)第8条第1項第1号   :active, a1, 2026-01-01, 2027-01-01
    後の出願をする(実用新案登録出願)=図では例として10月1日   :milestone, m2, 2026-10-01, 0d
    優先権主張の書面の提出期間(後の出願の日から1月)第8条第4項   :crit, a2, 2026-10-01, 2026-11-01
    section ③ 先の出願のゆくえ
    優先権の主張を取り下げられる期間(1年4月)第9条第2項      :done, a3, 2026-01-01, 2027-05-01
    先の出願を取り下げたものとみなす(1年4月経過時)第9条第1項   :milestone, m3, 2027-05-01, 0d

図は左右にスクロールできます。

凡例
◆時点(手続をする日・期限が来る日)
横棒=その手続ができる期間
①②③読む順番(群の見出し)

【図2】国内優先権の主な期間を1枚にしたガントチャート。①と③の横棒は先の出願の日が起算点、②の書面提出だけは後の出願の日が起算点である点に注意。「1年」は実用新案法第8条第1項第1号、「1年4月」は実用新案法施行規則第23条第2項で読み替えて準用する特許法施行規則第28条の4第2項、「後の出願の日から1月」は同規則第23条第2項で読み替えて準用する特許法施行規則第27条の4の2第3項による(いずれも2026年9月参照)。※図の日付は説明用の仮の日付で、先の出願の日を2026年1月1日、後の出願の日を2026年10月1日とした。※時間軸は縮尺なし。※説明の都合上、故意でない遅れの救済期間(第8条第1項第1号括弧書き)、第9条第1項ただし書きの例外、第9条第3項は図から省略した。(2026年9月時点)

レベル2のまとめ

  • 実用新案法第8条第1項:自分が権利をもつ先の出願(実用新案登録出願または特許出願)に基づき、その日から1年以内に、優先権を主張して実用新案登録出願ができる。第1号〜第5号の除外あり。
  • 第8条第2項:先の出願に記載された考案について、列挙された規定の適用上、後の出願は先の出願の時にされたものとみなす(累積優先は除外)。
  • 第8条第3項:後の出願の実用新案掲載公報発行時に、先の出願について公報発行・出願公開があったものとみなして拡大先願(実用新案法第3条の2本文・特許法第29条の2本文)を適用する。
  • 第8条第4項:優先権主張の書面は通常、後の出願の日から1月以内に提出する。回復の期間は別(表6)。
  • 第9条:先の出願は、その日から1年4月で取下げ擬制(例外あり)。優先権主張の取下げは1年4月まで。後の出願を1年4月内に取り下げると優先権主張も取下げ擬制。


LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 特許法第41条・第42条との対比 ― 同じところ・違うところ

実用新案法第8条・第9条は、特許法第41条・第42条と同じ設計です(特許法側の内容は関連記事「特許法第41条 国内優先権」「特許法第42条 先の出願の取下げ等」を参照)。ここでは違うところだけを整理します。

比べる点 特許法第41条・第42条 実用新案法第8条・第9条 違いのポイント
後の出願の種類 特許出願 実用新案登録出願 後の出願が何かで、どちらの条文を使うかが決まる
先の出願にできるもの 特許出願または実用新案登録出願(第41条第1項) 実用新案登録出願または特許出願(第8条第1項) どちらも両方を先の出願にできる
第1項本文の「外国語書面」の括弧書き 「(先の出願が外国語書面出願である場合にあつては、外国語書面)」がある 第1項本文にも、先の出願が特許法第36条の2第2項の外国語書面出願なら同条第1項の外国語書面を基礎とする括弧書きがある。第2項・第3項にもある いずれも先の外国語書面出願の原文を基礎とする
第1項第2号(先の出願にできない出願) 特許法の分割・変更・実用新案登録に基づく特許出願、実用新案法の分割・変更に係る出願 実用新案法の分割・変更に係る出願、特許法の分割・変更・実用新案登録に基づく特許出願 並び順が違うだけで、除外される出願の範囲は同じ
第1項第5号 「実用新案法第十四条第二項に規定する設定の登録」 「第十四条第二項に規定する設定の登録」 同じ内容。先の出願が実用新案登録出願で、すでに設定登録されていると使えない
第2項で列挙する規定 特許法第29条、第29条の2本文、第30条第1項及び第2項、第39条第1項から第4項まで、第69条第2項第2号、第72条、第79条、第81条、第82条第1項、第104条、第126条第7項、実用新案法第7条第3項及び第17条、意匠法・商標法の規定 実用新案法第3条、第3条の2本文、第7条第1項から第3項まで、準用特許法第30条第1項及び第2項、第17条、準用特許法第69条第2項第2号・第79条・第81条・第82条第1項、特許法第39条第3項及び第4項、第72条、意匠法・商標法の規定 それぞれの法律の「自分の側」の規定を列挙。実用新案法側には特許法第104条(生産方法の推定)、第126条第7項(訂正の独立特許要件)に当たるものが列挙されていない
第3項の「みなす」時点 後の特許出願について出願公開または特許掲載公報の発行がされた時(特許法第41条第3項) 後の実用新案登録出願について実用新案掲載公報の発行がされた時(第8条第3項) 実用新案には出願公開がないので、公報発行だけが基準
第4項の書面の提出期間 省令期間(特許法施行規則第27条の4の2第3項) 省令期間(実用新案法施行規則第23条第2項で読み替えて準用する同項:「当該実用新案登録出願の日から一月」) 実用新案は短い(→〔表6〕)
先の出願の取下げ擬制(第42条・第9条) 1年4月(特許法施行規則第28条の4第2項) 1年4月(実用新案法施行規則第23条第2項で読み替えて準用する同項) 同じ

〔表4〕特許法第41条・第42条と実用新案法第8条・第9条の対比(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。「違いのポイント」欄は本記事作成者の整理。

両法とも先の外国語書面出願の原文を基礎とし、そのことは実用新案法第8条第1項にも明記されています。優先権の効果が及ぶのは各第2項が列挙する規定です。特許法側の第104条は第65条第6項等による準用、第126条第7項は第17条の2第6項・第120条の5第9項・第134条の2第9項による準用も含みます。表4はこれらの準用先などを省略した対比です。 実用新案法第8条 特許法第41条第2項

2. 先の出願と後の出願の4つの組合せ

先の出願と後の出願は、それぞれ「特許出願」か「実用新案登録出願」のどちらかなので、組合せは4通りです。使う条文は、後の出願が何かで決まります。

先の出願 後の出願 根拠条文 気をつける点
特許出願 特許出願 特許法第41条 関連記事「特許法第41条 国内優先権」
実用新案登録出願 特許出願 特許法第41条 先の実用新案登録出願が、後の特許出願の際に設定登録済みなら不可(特許法第41条第1項第5号)
特許出願 実用新案登録出願 実用新案法第8条 先の特許出願に仮専用実施権者がいれば承諾が必要(第8条第1項ただし書き)。先の特許出願について査定・審決が確定していれば不可(第4号)
実用新案登録出願 実用新案登録出願 実用新案法第8条 先の実用新案登録出願が、後の出願の際に設定登録済みなら不可(第8条第1項第5号)。実用新案は無審査で早く登録されるため、この点が特許どうしの場合より重要

〔表5〕先の出願と後の出願の4つの組合せと根拠条文(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。「気をつける点」欄は本記事作成者の整理。

flowchart TD
  A{"後の出願は
実用新案登録出願か"} A -->|"はい"| D{"先の出願は、自分が実用新案登録又は
特許を受ける権利をもつ出願か
第8条第1項本文"} A -->|"いいえ(特許出願)"| B1["→ 特許法第41条・第42条による
(本記事の対象外)"] D -->|"はい"| E{"後の出願は先の出願の日から
1年以内にされたか 第8条第1項第1号"} D -->|"いいえ"| X1["× 優先権を主張できない"] E -->|"はい"| F{"先の出願は、分割・変更に係る出願、
実用新案登録に基づく特許出願の
いずれでもないか 第8条第1項第2号"} E -->|"いいえ"| E2{"故意に1年以内としなかったものでなく、
省令期間内に省令の定めによりされたか
第8条第1項第1号括弧書き"} E2 -->|"はい"| F E2 -->|"いいえ"| X1 F -->|"はい"| G{"後の出願の際に、先の出願が放棄・取下げ・却下、
査定・審決の確定、設定の登録の
いずれの状態でもないか 第8条第1項第3号〜第5号"} F -->|"いいえ"| X1 G -->|"はい"| H{"先の出願に仮専用実施権を有する者が
あるときは、その承諾を得ているか
第8条第1項ただし書き"} G -->|"いいえ"| X1 H -->|"はい(仮専用実施権者がいない場合を含む)"| OK["○ 優先権を主張できる
第8条第1項"] H -->|"いいえ"| X1 style OK fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style X1 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style B1 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
○ 優先権を主張できる
× 主張できない
→ 別の条文(特許法)へ
必須の確認

【図3】実用新案法第8条第1項の要件の分岐図。分岐は「はい」を下、「いいえ」を右に統一し、終端の結論をそろえた(本記事作成者の整理)。※説明の都合上、第8条第2項・第3項の効果、第8条第4項の書面提出は図から省略した。(2026年9月時点)

3. 省令で定める期間の整理

実用新案法第8条・第9条には「経済産業省令で定める期間」が3か所あります。実用新案法施行規則第23条第2項が、特許法施行規則の該当条文を読み替えて準用しています。

条文 何の期間か 省令の根拠(実用新案法施行規則第23条第2項で準用) 期間
第8条第1項第1号括弧書き 故意でない遅れの場合に、優先権主張を伴う出願ができる期間 特許法施行規則第27条の4の2第1項(読替え) 通常の1年の優先期間の経過後2月。回復理由書も同期間内に提出(同条第4項)
第8条第4項 優先権主張の書面の提出期間 特許法施行規則第27条の4の2第3項(読替え) 通常は「当該実用新案登録出願の日から一月」。回復の場合は同条第3項第3号の期間
第9条第1項〜第3項 先の出願の取下げ擬制/優先権主張の取下げ期限/後の出願の取下げに伴う擬制 特許法施行規則第28条の4第2項(「特許法第四十二条第一項から第三項」を「実用新案法第九条第一項から第三項」と読替え) 1年4月

〔表6〕実用新案法第8条・第9条の「経済産業省令で定める期間」(実用新案法施行規則第23条第2項、特許法施行規則第27条の4の2・第28条の4、e-Gov法令検索、2026年9月参照)。

特許法施行規則第28条の4第2項(実用新案法施行規則第23条第2項による読替え前の原文)特許法第四十二条第一項から第三項までの経済産業省令で定める期間は、一年四月とする。
実用新案法施行規則第23条第2項(読替え部分の抜粋)…特許法施行規則第二十八条の四第二項中「特許法第四十二条第一項から第三項」とあるのは「実用新案法第九条第一項から第三項」と読み替えるものとする。

国内優先権の回復では、通常の1年の優先期間の経過後2月以内に、後の実用新案登録出願・優先権主張と回復理由書(様式第36の3)の提出が必要です。これは実用新案法施行規則第23条第2項で読み替えて準用する特許法施行規則第27条の4の2第1項・第3項第3号・第4項によります。通常の主張書面は後の出願日から1月ですが、回復の場合を同じ1月で処理しません。 実用新案法施行規則第23条第2項 特許法施行規則第27条の4の2

4. 実用新案ならではの論点 ― 「早く登録される」ことの影響

実用新案登録出願は、基礎的要件の審査のみで設定登録されます(無審査登録制度。関連記事「実用新案法第14条 設定登録」)。このため、国内優先権では次の点が特許と違ってきます。

場面 条文 何が起こるか
先の実用新案登録出願が、後の出願の前に設定登録された 第8条第1項第5号 その先の出願を基礎に優先権主張はできない
先の実用新案登録出願が、後の出願のあと1年4月より前に設定登録された 第9条第1項ただし書き 取下げ擬制は働かない(先の出願は登録されたまま)
後の実用新案登録出願をするとき 実用新案法第32条第1項 第1年から第3年までの登録料は、後の出願と同時に納付が必要(関連記事「実用新案法第31条〜第32条 登録料」)
後の実用新案登録出願の実用新案掲載公報が発行された 第8条第3項 先の出願について公報発行・出願公開があったものとみなし、先の出願の日を基準に拡大先願(実用新案法第3条の2本文・特許法第29条の2本文)を適用

〔表7〕無審査登録制度と国内優先権の関係(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。「何が起こるか」欄は条文からの帰結を本記事作成者が整理したもの。先の出願が実際にいつ登録されるかは個別の手続による。

特許庁の案内では、書類に不備がなければ出願から平均2〜3か月で設定登録されます。これは登録時期の目安であり、1年間待つ制度ではありません。後の出願をする時点ですでに先の実用新案登録出願が設定登録されていれば、1年以内でも、その先の出願を基礎とする国内優先権は主張できません(第8条第1項第5号)。後の出願をした後、先の出願が取下げ擬制の時点より前に設定登録された場合は、第9条第1項ただし書により先の出願の取下げ擬制が働きません。 特許庁・実用新案出願のいろは「審査結果はいつわかる?」 実用新案法第8条・第9条

5. 試験での問われ方

試験種別 問われ方の傾向(本記事作成者の整理) 気をつける点
短答式 「先の出願が実用新案登録出願で、後の出願が特許出願(またはその逆)のとき、どの条文で、いつまでか」「分割・変更に係る出願を先の出願にできるか」「先の出願の取下げ擬制の時期と例外」の正誤 後の出願の種類で条文を選ぶ。第8条第1項第2号の除外と、第9条第1項ただし書きの4つの例外
論文式 変更(実用新案法第10条・特許法第46条)や分割(準用特許法第44条)と組み合わせて、出願日の基準や優先権の可否を問う事例 第8条第2項の「みなす」は列挙規定に限られること、累積優先が除外されること
口述 「実用新案法第9条の取下げ擬制はいつか」「例外は何か」を口頭で説明 1年4月が省令で定められていること、第9条第1項ただし書きを条文の順に言えること

〔表8〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

令和8年度短答式の問5(ホ)は変更・分割を経た出願からの再変更、問16の4は実用新案登録に基づく特許出願を扱います。この2問には国内優先権の成立や取下げ擬制を直接問う肢はありません。公式正答は問5が4、問16が3です。 令和8年度問題 公式解答

レベル3のまとめ

  • 使う条文は「後の出願」で決まる。後の出願が実用新案登録出願なら実用新案法第8条・第9条、特許出願なら特許法第41条・第42条。先の出願はどちらも特許出願・実用新案登録出願の両方が可能。
  • 実用新案法第8条第1項第1号〜第5号の除外は特許法第41条第1項各号と同じ構造。先の出願が設定登録済みだと使えない(第5号)ので、無審査で早く登録される実用新案では要注意。
  • 第8条第2項は列挙された規定に限って「先の出願の時にされたものとみなす」。累積優先は括弧書きで除外。第8条第3項は実用新案掲載公報の発行時を基準に拡大先願の効果を与える(出願公開のない実用新案の特徴)。
  • 省令期間:第8条第4項の書面は通常、後の出願の日から1月(回復は別)、第9条第1項〜第3項は1年4月(実用新案法施行規則第23条第2項で読み替えて準用する特許法施行規則第27条の4の2・第28条の4第2項)。
  • 後の実用新案登録出願には第1年〜第3年分の登録料の同時納付(実用新案法第32条第1項)が必要。

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