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小学生でも分かる実用新案法|実用新案法第46条〜第48条の2 審決等に対する訴え・対価の額についての訴え ― 特許庁の「判定」に納得できないときは裁判所へ

小学生でもわかる実用新案法:審決取消訴訟(47条48条)

小学生でも分かる実用新案法 / D. 審判・訴訟 #29

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実用新案登録無効審判などの「審決」に納得できないときは、東京高等裁判所に訴えを起こすことができます(実用新案法第47条)。また、通常実施権の「裁定」で決まった対価(お金)の額に不満があるときは、裁判所に額の増減を求める訴えを起こせます(実用新案法第48条)。どちらも中身の大部分は特許法の規定を「準用」する形で書かれており、実用新案法だけの特徴は「どの審決が対象になるか」に現れます。なお、第46条と第48条の2は現在「削除」となっています。

条文:実用新案法第46条(削除)、第47条、第48条、第48条の2(削除)関連:実用新案法第40条第2項、第21条第2項、第22条第3項・第4項、第23条第2項、第37条/特許法第178条〜第184条参照時点:2026年9月

目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「審判」の次は「裁判」がある

実用新案の世界では、「この登録はまちがっているから取り消してほしい」というけんかを、まず特許庁の中の審判(しんぱん)という手続で決めます。審判の結果を審決(しんけつ)といいます。

でも、審決を見て「その答えはおかしい!」と思う人もいます。そんなとき、「もう一度、別の場所でちゃんと見てほしい」とお願いできるのが、審決に対する訴え(うったえ)です。お願いする先は、東京にある東京高等裁判所という裁判所です。学校でいえば、クラスの話し合いで決まったことに納得できないとき、校長先生に見てもらうようなイメージです。

「その審決はおかしい」と思ったら、次は裁判所 特許庁の審判 (無効審判 → 審決) 審決の謄本の送達から30日以内 (特許法第178条第3項の準用) 東京高等裁判所 (審決を取り消すかどうか) 上告等 (民事訴訟法による) 最高裁判所 (さらに上へ) 別ルート:対価の額についての訴え 裁定(対価の額を定める) 特許庁長官/経済産業大臣 裁定の謄本の送達から6月以内 (特許法第183条第2項の準用) 裁判所 対価の額の増減を求める (実用新案法第48条第1項) 被告は相手方当事者 (特許法第184条の準用) 管轄は民事訴訟の管轄による (本記事では扱わない) 実用新案法第47条:審決に対する訴えは東京高等裁判所だけが受けつける(専属管轄)

図は左右にスクロールできます。

凡例
特許庁・経済産業大臣(行政)がすること
点線の枠=別ルート(対価の額についての訴え)
裁判所がすること
手続の流れ(矢印の横は出訴期間)

【図1】左が主の流れ(審決 → 東京高等裁判所 → 最高裁判所)で、矢印の横に出訴期間を添えた。右は「対価の額についての訴え」(実用新案法第48条)の別ルート。審決に対する訴えは東京高等裁判所の専属管轄(実用新案法第47条第1項)で、出訴期間の「30日」は特許法第178条第3項を、対価の額についての訴えの「6月」は特許法第183条第2項を、それぞれ準用したもの(実用新案法第47条第2項、第48条第2項)。日数・月数は条文のとおり(2026年9月時点)。※説明の都合上、附加期間(特許法第178条第5項の準用)と上告等の手続は省略した。

「お金の額」だけにもんくがあるときの訴え

実用新案には、「他の人の考案を、決められたお金をはらって使わせてもらう」という裁定(さいてい)のしくみもあります。お金の額は特許庁長官(または経済産業大臣)が決めます。「その額は高すぎる/安すぎる」と思ったときは、裁判所に「額を増やして/減らして」とお願いできます。これが対価の額についての訴え(実用新案法第48条)です。

この訴えは「裁定そのものをやめさせる」のではなく、「金額だけ直してほしい」というものです。ここがポイントです。

レベル1のまとめ

  • 審判の結果(審決)に納得できないときは、東京高等裁判所に訴えを起こせる(実用新案法第47条)。
  • 訴えは、審決の書類がとどいた日から30日以内。
  • 裁定で決まったお金の額だけに不満があるときは、裁判所に額の増減を求める訴えを起こせる(実用新案法第48条)。
  • 第46条と第48条の2は、今は「削除」になっていて中身がない。

※「だれが訴えられるか」「だれを相手にするか」「いつまでか」には細かいルールがあります。正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。


LEVEL 2条文の骨格

第46条・第48条の2は「削除」

e-Gov法令検索で取得した現行の実用新案法では、第46条と第48条の2はいずれも「削除」と表示されており、条文の中身はありません。したがって、この記事で内容を扱うのは第47条と第48条の2か条です。

実用新案法第46条削除
実用新案法第48条の2削除

第47条(審決等に対する訴え)の構造

項 内容(要旨) ポイント
第1項 ①審決に対する訴え、②審判又は再審の請求書の却下の決定に対する訴えは、東京高等裁判所の専属管轄 訴えの対象が2種類。管轄裁判所は東京高等裁判所のみ
第2項 特許法第178条第2項〜第6項、第179条〜第182条の2を準用 原告適格・出訴期間・被告適格・出訴の通知・特許庁長官の意見・審決の取消し・裁判の正本等の送付・合議体の構成

〔表1〕実用新案法第47条の項ごとの内容(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。

実用新案法第47条第1項審決に対する訴え及び審判又は再審の請求書の却下の決定に対する訴えは、東京高等裁判所の専属管轄とする。
実用新案法第47条第2項特許法第百七十八条第二項から第六項まで(出訴期間等)及び第百七十九条から第百八十二条の二まで(被告適格、出訴の通知等、審決取消訴訟における特許庁長官の意見、審決又は決定の取消し、裁判の正本等の送付及び合議体の構成)の規定は、前項の訴えに準用する。

第47条第2項が準用する特許法の規定

第47条第2項は、細かいルールを特許法から「借りて」きています。借りてくる条文とその中身を一覧にすると次のとおりです。

準用される特許法の条文 見出し 中身(要旨)
第178条第2項 (審決等に対する訴え) 訴えを起こせるのは、当事者、参加人、参加を申請して拒否された者に限る(原告適格)
第178条第3項 同上 審決又は決定の謄本の送達があった日から30日を経過した後は提起できない(出訴期間)
第178条第4項 同上 30日の期間は不変期間
第178条第5項 同上 審判長は、遠隔又は交通不便の地にある者のため、職権で附加期間を定めることができる
第178条第6項 同上 審判を請求できる事項に関する訴えは、審決に対するものでなければ提起できない
第179条 (被告適格) 原則は特許庁長官を被告。ただし無効審判(及びその確定審決に対する再審)の審決に対する訴えは、審判・再審の請求人又は被請求人を被告とする
第180条 (出訴の通知等) 第179条ただし書の訴え(当事者系)があったときは、裁判所は遅滞なく特許庁長官に通知。請求項ごとの請求の場合は請求項特定の書類を送付
第180条の2 (審決取消訴訟における特許庁長官の意見) 裁判所は特許庁長官に意見を求めることができ、特許庁長官は裁判所の許可を得て意見を述べることができる
第181条 (審決又は決定の取消し) 請求に理由があるときは裁判所は審決又は決定を取り消す。取消判決が確定したら審判官は更に審理して審決又は決定をする
第182条 (裁判の正本等の送付) 第179条ただし書の訴えについて訴訟手続が完結したときは、裁判所は各審級の裁判の正本等を特許庁長官に送付
第182条の2 (合議体の構成) 5人の裁判官の合議体で審理・裁判する旨の決定をすることができる

〔表2〕実用新案法第47条第2項が準用する特許法の規定の一覧(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。見出しは特許法の条文見出し。

特許法第178条第3項(実用新案法第47条第2項で準用)第一項の訴えは、審決又は決定の謄本の送達があつた日から三十日を経過した後は、提起することができない。
特許法第179条(実用新案法第47条第2項で準用)前条第一項の訴えにおいては、特許庁長官を被告としなければならない。ただし、特許無効審判若しくは延長登録無効審判又はこれらの審判の確定審決に対する第百七十一条第一項の再審の審決に対するものにあつては、その審判又は再審の請求人又は被請求人を被告としなければならない。
特許法第181条第1項(実用新案法第47条第2項で準用)裁判所は、第百七十八条第一項の訴えの提起があつた場合において、当該請求を理由があると認めるときは、当該審決又は決定を取り消さなければならない。
flowchart TD
  A["実用新案登録無効審判(実用新案法第37条)"] --> B["審決"]
  B --> C{"審決に納得できないか?"}
  C -- "はい" --> E["審決に対する訴え
東京高等裁判所の専属管轄(第47条第1項)
審決の謄本の送達から30日以内"] C -- "いいえ" --> D["○ 審決が確定(訴えなし)"] E --> F{"請求に理由があるか?"} F -- "はい" --> G["○ 審決を取り消す(特許法第181条第1項)
→ 取消判決確定後に審判官が更に審理して審決(同条第2項前段)"] F -- "いいえ" --> H["× 請求棄却(審決はそのまま)"] G --> I["最高裁判所へ上告等もありうる
(民事訴訟法による)"] H --> I style E fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F style D fill:#EEF0F4,stroke:#22303F,color:#22303F style G fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style H fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style I fill:#EEF0F4,stroke:#22303F,color:#22303F,stroke-width:2px

図は左右にスクロールできます。

凡例
○ 訴えた側の請求が通る(審決の取消し)
× 請求が通らない(棄却)
裁判所での手続
はい下へ進む
いいえ右へ出る(結論)

【図2】審決取消訴訟の流れ。審決 → 東京高等裁判所 → 最高裁判所という3段階を縦に並べ、判断は「はい」を下、「いいえ」を右にそろえた。「審決を取り消す」「更に審理」は特許法第181条(実用新案法第47条第2項で準用)。日数は条文のとおり(2026年9月時点)。最高裁判所への上告等の手続は民事訴訟法によるため本記事では扱わない。※説明の都合上、審判又は再審の請求書の却下の決定に対する訴え(第47条第1項後段)は省略した。

根拠資料との照合:知的財産高等裁判所設置法第2条は、知財高裁を東京高等裁判所の特別の支部として設置し、同条第2号は実用新案法第47条第1項の訴えを明示しています。したがって、第47条の東京高裁専属管轄と「知財高裁へ提訴」は矛盾しません。知的財産高等裁判所設置法第2条。
gantt
    title 審決に対する訴えの出訴期間(特許法第178条第3項〜第5項・実用新案法第47条第2項で準用)
    dateFormat YYYY-MM-DD
    axisFormat %m-%d
    todayMarker off
    section 起算点
    ● 審決の謄本の送達(起算点)          :milestone, m0, 2026-04-01, 0d
    section 原則(第178条第3項)
    訴えを提起できる30日(不変期間)      :active, a1, 2026-04-01, 30d
    × 経過後は提起できない                :crit, a2, 2026-05-01, 40d
    section 附加期間が定められたとき(第178条第5項)
    もとの30日                            :active, b1, 2026-04-01, 30d
    附加期間(審判長が職権で定める・仮の例):done, b2, 2026-05-01, 20d
    × 経過後は提起できない                :crit, b3, 2026-05-21, 20d

図は左右にスクロールできます。

凡例
●ひし形=時点(起算点)
▭横棒=期間(左端が起算点でそろえてある)
×「×」付きの横棒=訴えを提起できない期間
仮「仮の例」=長さが法定されていないもの

【図3】出訴期間。上段が原則、下段が附加期間を定めたときで、起算点(審決の謄本の送達)をそろえて並べた。30日は不変期間であり、附加期間の定めは遠隔・交通不便の地にある者のための審判長の職権による(特許法第178条第3項〜第5項、実用新案法第47条第2項で準用)。日数は条文のとおり(2026年9月時点)。※附加期間の長さは審判長が定めるもので、図の長さは説明のための仮の例。※図中の日付は説明のための仮の例であり、実際の日付ではない。※時間軸は縮尺なし。

第48条(対価の額についての訴え)の構造

項 内容(要旨) ポイント
第1項 実用新案法第21条第2項、第22条第3項若しくは第4項又は第23条第2項の裁定を受けた者は、裁定で定める対価の額に不服があるときは、訴えを提起して額の増減を求めることができる 対象は「対価の額」のみ。裁定そのものの取消しを求める訴えではない
第2項 特許法第183条第2項(出訴期間)及び第184条(被告適格)を準用 裁定の謄本の送達日から6月。被告は通常実施権者・実用新案権者等(相手方当事者)

〔表3〕実用新案法第48条の項ごとの内容(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。

実用新案法第48条第1項第二十一条第二項、第二十二条第三項若しくは第四項又は第二十三条第二項の裁定を受けた者は、その裁定で定める対価の額について不服があるときは、訴えを提起してその額の増減を求めることができる。
実用新案法第48条第2項特許法第百八十三条第二項(出訴期間)及び第百八十四条(被告適格)の規定は、前項の訴えに準用する。
特許法第183条第2項(実用新案法第48条第2項で準用)前項の訴えは、裁定の謄本の送達があつた日から六月を経過した後は、提起することができない。

第48条が対象にする3種類の裁定

裁定の根拠条文 見出し(実用新案法) 裁定をする者
第21条第2項 (不実施の場合の通常実施権の設定の裁定) 特許庁長官
第22条第3項・第4項 (自己の登録実用新案の実施をするための通常実施権の設定の裁定) 特許庁長官
第23条第2項 (公共の利益のための通常実施権の設定の裁定) 経済産業大臣

〔表4〕実用新案法第48条第1項が列挙する裁定(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。第23条第2項の裁定だけは経済産業大臣が行う。

実用新案法第21条第2項前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その登録実用新案の実施をしようとする者は、特許庁長官の裁定を請求することができる。
レベル2のまとめ

  • 実用新案法第46条・第48条の2は「削除」。
  • 第47条第1項:審決に対する訴え、審判・再審の請求書の却下決定に対する訴えは東京高等裁判所の専属管轄。
  • 第47条第2項:特許法第178条第2項〜第6項、第179条〜第182条の2を準用。出訴期間は謄本送達日から30日(不変期間)、被告は原則特許庁長官・無効審判系は相手方当事者。
  • 第48条:3種類の裁定の「対価の額」について増減を求める訴え。出訴期間は裁定の謄本送達日から6月(特許法第183条第2項の準用)、被告は特許法第184条の準用。


LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 特許法第178条第1項との対比 ― 「訴えの対象」が実用新案では少ない

特許法第178条第1項と実用新案法第47条第1項を並べると、実用新案法の側には「取消決定」「特許異議申立書の却下の決定」「訂正の請求書の却下の決定」がありません。実用新案法には特許異議の申立て制度がなく、無効審判の中での訂正の請求もないためです。

訴えの対象 特許法第178条第1項 実用新案法第47条第1項
審決に対する訴え あり あり
取消決定(特許異議の申立て)に対する訴え あり なし(特許異議の申立て制度がない)
特許異議申立書の却下の決定に対する訴え あり なし
審判又は再審の請求書の却下の決定に対する訴え あり あり
訂正の請求書(第120条の5第2項・第134条の2第1項)の却下の決定に対する訴え あり なし(無効審判中の訂正の請求がない)
管轄 東京高等裁判所の専属管轄 東京高等裁判所の専属管轄

〔表5〕特許法第178条第1項と実用新案法第47条第1項の対比(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。特許法側の細かい内容は関連記事「特許法第178条」を参照。

2. 準用規定の「読み替え」に注意

実用新案法第47条第2項には、読替え規定が置かれていません。準用される特許法の条文には「特許無効審判若しくは延長登録無効審判」(第179条ただし書)や「特許異議の申立てについての審理」(第178条第2項)、「訂正の請求がされた一群の請求項」(第181条第2項後段)など、実用新案法に対応する制度がない文言が含まれています。これらは実用新案法の制度に合わせて(実用新案登録無効審判など)読むことになりますが、条文上どう読み替えるかは明文で示されていません。

根拠資料との照合:第47条第2項は特許法第179条〜第182条の2を準用しますが、実用新案には延長登録無効審判も、特許法第134条の2の訂正請求もありません。そこで、第179条ただし書は実用新案登録無効審判等の当事者系手続に対応させ、第181条第2項後段の一群の請求項の規定に該当する訂正請求の場面はありません。これは現行の第14条の2・第37条・第41条・第47条と準用先を照合した制度上の整理です。青本第47条の解説は平成23年改正による第181条の準用範囲の変化を説明していますが、この二つの文言についての個別解説ではありません。実用新案法/特許法第179条・第181条/青本第22版・第47条(冊子1053〜1054頁)。
flowchart TD
  S["実用新案法第47条第1項の訴えを起こす"] --> Q{"実用新案登録無効審判の審決に対する訴えか?
(その確定審決に対する再審の審決を含む)"} Q -- "はい" --> P1["被告:審判又は再審の請求人又は被請求人
(特許法第179条ただし書の準用)"] Q -- "いいえ(請求書の却下の決定 など)" --> P2["被告:特許庁長官
(特許法第179条本文の準用)"] P1 --> N["裁判所は遅滞なく特許庁長官に通知
(特許法第180条の準用)"] N -. "任意" .-> O["特許庁長官は裁判所の許可を得て意見を述べられる
(特許法第180条の2の準用)"] style P1 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style P2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
被告は相手方当事者(第179条ただし書の準用)
被告は特許庁長官(第179条本文の準用)
必ず行う手続
任意の手続(「述べることができる」)
はい下へ進む
いいえ右へ出る(結論)

【図4】被告適格の分岐図。判断は「はい」を下、「いいえ」を右にそろえた。特許法第179条・第180条・第180条の2の準用関係(実用新案法第47条第2項)。出訴の通知と特許庁長官の意見は「第179条ただし書に規定する訴え」(当事者系)を対象とする。※説明の都合上、対価の額についての訴え(第48条、被告は特許法第184条の準用)は別の図(→【図1】)に分けた。

3. 特許法第181条との対比 ― 審決の取消しと差戻し後の審理

項目 特許法第181条 実用新案法(第47条第2項による準用)
第1項:取消し 請求に理由があると認めるときは審決又は決定を取り消さなければならない 同じ
第2項前段:差戻し後の審理 取消判決が確定したときは、審判官は更に審理を行い、審決又は決定をしなければならない 同じ
第2項後段:一群の請求項の扱い 訂正の請求がされた一群の請求項のうち一部について取消判決が確定したときは、その他の請求項についての審決又は決定を取り消す 実用新案法には無効審判中の訂正の請求がないため、対応する場面がない(第14条の2・第41条と特許法第134条の2・第181条を照合)

〔表6〕特許法第181条と実用新案法での準用の対比(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。特許法側の詳細は関連記事「特許法第181条」を参照。

4. 第40条第2項との関係 ― 侵害訴訟と審決取消訴訟は別の道

審決取消訴訟(第47条)は「審決の当否」を東京高等裁判所で争うものです。これに対し、実用新案権の侵害訴訟は別の裁判所で別に進みます。実用新案法第40条第2項は、訴えの提起等があった場合に、裁判所が必要と認めるときは審決が確定するまでその訴訟手続を中止できると定めています。ここでいう「審決が確定するまで」には、審決に対する訴え(第47条)が提起されたときは、その訴訟が終わって審決が確定するまでが含まれることになります。

実用新案法第40条第2項訴えの提起又は仮差押命令若しくは仮処分命令の申立てがあつた場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、審決が確定するまでその訴訟手続を中止することができる。
項目 審決取消訴訟(第47条) 侵害訴訟(第40条第2項〜第6項が関係)
争うもの 特許庁の審決・却下決定の当否 実用新案権の侵害の有無・差止め・損害賠償など
裁判所 東京高等裁判所(専属管轄) 民事訴訟の管轄による(本記事では扱わない)
被告 特許庁長官/無効審判等の相手方当事者 侵害者とされる者
両者の関係 裁判所は必要があると認めるときは審決が確定するまで侵害訴訟の手続を中止できる(第40条第2項)。侵害訴訟の提起は特許庁長官に通知され、特許庁長官は審判請求の有無等を裁判所に通知する(第40条第3項・第4項)

〔表7〕審決取消訴訟と侵害訴訟の関係(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。

5. 実用新案技術評価書は「訴え」の対象になるか

実用新案技術評価書(実用新案法第12条)は、審決でも決定でもないため、第47条第1項の訴えの対象には挙げられていません。ただし、技術評価書の法的性質(行政処分にあたらないこと等)について、審査基準 第X部 第2章「実用新案技術評価」には直接の記述がありませんでした。

根拠資料との照合:技術評価書は登録の有効・無効を確定する処分ではなく、権利の有効性を判断するための資料です。特許庁の審議会議事録でも、評価書の作成自体は行政処分でなく行政訴訟にならないと説明されています。評価内容の誤りは、登録の有効性を争う無効審判や侵害訴訟で問題となり得ますが、評価書自体について第47条の審決取消訴訟を提起する制度ではありません。特許庁・実用新案制度ワーキンググループ第3回議事録(技術評価の行政処分性の説明)。

6. 対価の額についての訴え ― 特許法第183条・第184条との対比

項目 特許法第183条・第184条 実用新案法第48条(第2項で第183条第2項・第184条を準用)
対象となる裁定 第83条第2項、第92条第3項若しくは第4項、第93条第2項の裁定 第21条第2項、第22条第3項若しくは第4項、第23条第2項の裁定
求めるもの 対価の額の増減 対価の額の増減(同じ)
出訴期間 裁定の謄本の送達があった日から6月 同じ(第183条第2項の準用)
被告 第83条第2項・第92条第4項・第93条第2項の裁定:通常実施権者又は特許権者若しくは専用実施権者
第92条第3項の裁定:通常実施権者又は第72条の他人
第184条の準用(実用新案法の対応条文に読み替えて適用。読替えの明文はない)
審決取消訴訟との違い 被告が特許庁長官ではなく相手方当事者であること、出訴期間が30日ではなく6月であること、管轄が「東京高等裁判所の専属管轄」と定められていないこと

〔表8〕対価の額についての訴えの特許法との対比(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。

特許法第184条(実用新案法第48条第2項で準用)前条第一項の訴えにおいては、次に掲げる者を被告としなければならない。
一 第八十三条第二項、第九十二条第四項又は第九十三条第二項の裁定については、通常実施権者又は特許権者若しくは専用実施権者
二 第九十二条第三項の裁定については、通常実施権者又は第七十二条の他人

7. 試験での問われ方

試験種別 問われ方の傾向 気をつける点
短答式 「審決に対する訴えは東京高等裁判所の専属管轄か」「出訴期間は何日か」「被告はだれか」「対価の額の訴えの出訴期間は何月か」といった、数値・主体を入れ替える正誤問題 30日(審決取消訴訟)と6月(対価の額)の区別。特許法と違って「取消決定」「訂正の請求書の却下決定」が対象にないこと
論文式 無効審判の審決に不服がある者がとり得る手段、侵害訴訟との関係(第40条第2項)を問う形 準用元の特許法の条文番号(第178条〜第182条の2)と、実用新案法第47条第2項を併せて示す
口述 「実用新案法における審決に対する訴えの被告は」「出訴期間の性質は」などの一問一答 不変期間であること、附加期間は審判長の職権であること

〔表9〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

根拠資料との照合:問5の正解は4、問6は3、問16は3です。審決取消訴訟・裁定の対価の訴えを直接主題とする肢はありません。問5の肢イの出願却下は拒絶査定ではなく、それに対する拒絶査定不服審判はできません。出願却下の不服手続と、第47条の審決等に対する訴えを区別します。 令和8年度の問題/公式解答。肢ごとの説明は条文との照合によるもので、公式解答が示す正解番号と区別しています。
レベル3のまとめ

  • 実用新案法第47条第1項の訴えの対象は「審決」と「審判・再審の請求書の却下決定」の2種類。特許法第178条第1項にある取消決定・異議申立書却下決定・訂正請求書却下決定は含まれない。
  • 第47条第2項の準用:原告適格(特許法第178条第2項)、出訴期間30日・不変期間・附加期間(同第3項〜第5項)、審決前置(同第6項)、被告適格(第179条)、出訴の通知(第180条)、特許庁長官の意見(第180条の2)、審決の取消しと差戻し後の審理(第181条)、裁判の正本等の送付(第182条)、5人合議体(第182条の2)。
  • 読替え規定がないため、特許法の「特許無効審判」等の文言は実用新案法の制度に合わせて読む(第14条の2・第41条と特許法第134条の2・第181条を照合)。
  • 第48条:3種類の裁定の対価の額について増減を求める訴え。出訴期間は裁定の謄本送達日から6月、被告は相手方当事者(特許法第183条第2項・第184条の準用)。
  • 侵害訴訟との関係:裁判所は審決確定まで侵害訴訟の手続を中止できる(第40条第2項)。

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